(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034359
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】再配線層形成用樹脂シート
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20240306BHJP
C08L 35/00 20060101ALI20240306BHJP
C08L 79/08 20060101ALI20240306BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240306BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L35/00
C08L79/08 Z
C08K3/013
H05K1/03 610P
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138547
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪内 啓之
(72)【発明者】
【氏名】池平 秀
(72)【発明者】
【氏名】奥山 英恵
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA001
4J002AC032
4J002AC062
4J002BC032
4J002BG032
4J002BH022
4J002CC031
4J002CD001
4J002CF002
4J002CG002
4J002CH022
4J002CM021
4J002CM041
4J002CM042
4J002CP032
4J002DE076
4J002DE096
4J002DE106
4J002DE146
4J002DE186
4J002DE236
4J002DE286
4J002DG046
4J002DJ006
4J002DJ016
4J002DJ036
4J002DJ046
4J002DJ056
4J002DK006
4J002DL006
4J002GQ00
4J002GQ05
(57)【要約】
【課題】表面の算術平均粗さが5nm~100nmである平滑性の高い部材との間に発生するボイドの抑制、該部材との間の密着性に優れる硬化物を得ることが可能な再配線層形成用樹脂シート等の提供。
【解決手段】支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物で形成された樹脂組成物層とを有する、再配線層形成用樹脂シートであって、樹脂組成物が、(A)無機充填材、(B)熱硬化性樹脂、及び(C)エラストマー、を含有し、温度を90℃に維持し、周波数が1Hzの条件で樹脂組成物層の溶融粘度を測定したときの、測定開始時から500秒後の樹脂組成物層の溶融粘度をV500とし、温度を90℃に維持し、周波数が1Hzの条件で樹脂組成物層の溶融粘度を測定したときの、測定開始時から900秒後の樹脂組成物層の溶融粘度をV900としたとき、V900-V500が18000poise未満であり、V900/V500が3未満である、再配線層形成用樹脂シート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物で形成された樹脂組成物層とを有する、再配線層形成用樹脂シートであって、
樹脂組成物が、(A)無機充填材、(B)熱硬化性樹脂、及び(C)エラストマー、を含有し、
温度を90℃に維持し、周波数が1Hzの条件で樹脂組成物層の溶融粘度を測定したときの、測定開始時から500秒後の樹脂組成物層の溶融粘度をV500とし、
温度を90℃に維持し、周波数が1Hzの条件で樹脂組成物層の溶融粘度を測定したときの、測定開始時から900秒後の樹脂組成物層の溶融粘度をV900としたとき、
V900-V500が18000poise未満であり、
V900/V500が3未満である、再配線層形成用樹脂シート。
【請求項2】
樹脂組成物の最低溶融粘度が、2000poise以上60000poise以下である、請求項1に記載の再配線層形成用樹脂シート。
【請求項3】
V500が、5000poise以上100000poise以下である、請求項1に記載の再配線層形成用樹脂シート。
【請求項4】
V900が、5000poise以上100000poise以下である、請求項1に記載の再配線層形成用樹脂シート。
【請求項5】
(A)成分の含有量が、樹脂組成物の不揮発成分を100質量%とした場合、73.5質量%以上である、請求項1に記載の再配線層形成用樹脂シート。
【請求項6】
樹脂組成物が、(D)ラジカル重合性樹脂を含有する、請求項1に記載の再配線層形成用樹脂シート。
【請求項7】
(D)成分が、マレイミド樹脂を含有する、請求項6に記載の再配線層形成用樹脂シート。
【請求項8】
(C)成分が、ポリイミド樹脂を含む、請求項1に記載の再配線層形成用樹脂シート。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の再配線層形成用樹脂シートの樹脂組成物層の硬化物により形成された硬化物層と、該硬化物層上に搭載された半導体チップとを含む、半導体チップパッケージ。
【請求項10】
請求項9に記載の半導体チップパッケージを含む、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再配線層形成用樹脂シートに関する。さらには、本発明は、再配線層形成用樹脂シートを用いて製造される半導体チップパッケージ及び当該半導体チップパッケージを備える半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高性能化に伴い、半導体パッケージに用いる回路基板には更なる微細配線化が求められている。微細配線化に対応するために、例えば、ファンアウト型ウェハレベルパッケージ(FOWLP)と称される半導体パッケージが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
ファンアウト型ウェハレベルパッケージは、絶縁層及び配線層を積層させた多層構造の層である再配線層を有し、再配線層の絶縁層は、通常感光性の絶縁材料を用いて形成される(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-58520号公報
【特許文献2】特開2017-145379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、感光性の絶縁材料は、露光、現像性を向上させる観点から、感光性の絶縁材料に無機充填材を含有させることができないので電気特性及び熱膨張率(CTE)が劣り、絶縁性能に課題があった。
【0006】
感光性の絶縁材料の代わりに熱硬化性の絶縁材料を用いることで、電気特性及び熱膨張率(CTE)を改善させることができる。しかし、熱硬化性の絶縁材料を、表面の算術平均粗さ(Ra)が5nm~100nmである平滑性の高い部材に積層させると、該部材との間にボイドが発生することがあった。また、該部材の表面は平滑面であるから、該部材と絶縁材料との間の密着性が低くなり、接合面が剥離してしまうことがあった。特に、該部材がポリイミド及びポリベンゾオキサゾールのいずれかを含む部材である場合、時間経過により該部材に含まれている水分等がガスとして発生することもあり、該部材と絶縁材料との間のボイドの発生が顕著になる。以下、表面の算術平均粗さ(Ra)が5nm~100nmである平滑性の高い部材を「平滑性の高い部材」ということがある。
【0007】
本発明は、前記の課題に鑑みて創案されたもので、平滑性の高い部材との間に発生するボイドの抑制ができ、平滑性の高い部材との間の密着性に優れる硬化物を得ることが可能な再配線層形成用樹脂シート;当該樹脂シートを用いて製造される半導体チップパッケージ及び当該半導体チップパッケージを備える半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが鋭意検討した結果、支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物で形成された樹脂組成物層を含む、再配線層形成用樹脂シートであって、温度を90℃に維持し、周波数が1Hzの条件で樹脂組成物層の溶融粘度を測定したときの、測定開始時から500秒後の樹脂組成物層の溶融粘度をV500とし、温度を90℃に維持し、周波数が1Hzの条件で樹脂組成物層の溶融粘度を測定したときの、測定開始時から900秒後の樹脂組成物層の溶融粘度をV900としたとき、V900-V500が18000poise未満であり、V900/V500が3未満となるように樹脂組成物の溶融粘度の条件を調整することにより、平滑性の高い部材との間に発生するボイドの抑制ができ、平滑性の高い部材との間の密着性に優れる硬化物を得ることが可能になり、特に、平滑性の高い部材がポリイミド及びポリベンゾオキサゾールのいずれかを含む部材であってもボイドの発生が抑制でき、密着性に優れることを見出すことで本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] 支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物で形成された樹脂組成物層とを有する、再配線層形成用樹脂シートであって、
樹脂組成物が、(A)無機充填材、(B)熱硬化性樹脂、及び(C)エラストマー、を含有し、
温度を90℃に維持し、周波数が1Hzの条件で樹脂組成物層の溶融粘度を測定したときの、測定開始時から500秒後の樹脂組成物層の溶融粘度をV500とし、
温度を90℃に維持し、周波数が1Hzの条件で樹脂組成物層の溶融粘度を測定したときの、測定開始時から900秒後の樹脂組成物層の溶融粘度をV900としたとき、
V900-V500が18000poise未満であり、
V900/V500が3未満である、再配線層形成用樹脂シート。
[2] 樹脂組成物の最低溶融粘度が、2000poise以上60000poise以下である、[1]に記載の再配線層形成用樹脂シート。
[3] V500が、5000poise以上100000poise以下である、[1]又は[2]に記載の再配線層形成用樹脂シート。
[4] V900が、5000poise以上100000poise以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の再配線層形成用樹脂シート。
[5] (A)成分の含有量が、樹脂組成物の不揮発成分を100質量%とした場合、73.5質量%以上である、[1]~[4]のいずれかに記載の再配線層形成用樹脂シート。
[6] 樹脂組成物が、(D)ラジカル重合性樹脂を含有する、[1]~[5]のいずれかに記載の再配線層形成用樹脂シート。
[7] (D)成分が、マレイミド樹脂を含有する、[6]に記載の再配線層形成用樹脂シート。
[8] (C)成分が、ポリイミド樹脂を含む、[1]~[7]のいずれかに記載の再配線層形成用樹脂シート。
[9] [1]~[8]のいずれかに記載の再配線層形成用樹脂シートの樹脂組成物層の硬化物により形成された硬化物層と、該硬化物層上に搭載された半導体チップとを含む、半導体チップパッケージ。
[10] [9]に記載の半導体チップパッケージを含む、半導体装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、平滑性の高い部材との間に発生するボイドの抑制ができ、平滑性の高い部材との間の密着性に優れる硬化物を得ることが可能な再配線層形成用樹脂シート;当該樹脂シートを用いて製造される半導体チップパッケージ及び当該半導体チップパッケージを備える半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態及び例示物を示して、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に挙げる実施形態及び例示物に限定されるものでは無く、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0012】
[再配線層形成用樹脂シート]
本発明の再配線層形成用樹脂シートは、支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物で形成された樹脂組成物層とを有する再配線層形成用樹脂シートであって、樹脂組成物が、(A)無機充填材、(B)熱硬化性樹脂、及び(C)エラストマー、を含有し、温度を90℃に維持し、周波数が1Hzの条件で樹脂組成物層の溶融粘度を測定したときの、測定開始時から500秒後の樹脂組成物層の溶融粘度をV500とし、温度を90℃に維持し、周波数が1Hzの条件で樹脂組成物層の溶融粘度を測定したときの、測定開始時から900秒後の樹脂組成物層の溶融粘度をV900としたとき、V900-V500が18000poise未満であり、V900/V500が3未満である。このような要件を満たす再配線層形成用樹脂シートによれば、平滑性の高い部材との間に発生するボイドの抑制ができ、平滑性の高い部材との間の密着性に優れる硬化物を得ることができる。また、平滑性の高い部材がポリイミド及びポリベンゾオキサゾールのいずれかを含む部材であっても、ボイドの発生が抑制でき、密着性に優れる硬化物を得ることができる。なお、平滑性の高い部材の算術平均粗さ(Ra)は、後述する樹脂組成物層の表面の算術平均粗さ(Ra)と同じ測定方法により測定した値である。
【0013】
V900-V500は、18000poise未満であり、より好ましくは17000poise以下、16000poise以下、10000poise以下、7500poise以下である。下限は、好ましくは-5000poise以上、より好ましくは-2500poise以上、さらに好ましくは-2000poise以上である。V900-V500を斯かる範囲内となるように調整することで、平滑性の高い部材との間に発生するボイドの抑制ができ、平滑性の高い部材との間の密着性に優れる硬化物を得ることが可能になる。V900-V500の測定は、後述する実施例に記載の方法にて測定することができる。
【0014】
V900/V500(以下、V900/V500を「増粘率」ということがある)は、3未満であり、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.3以下、さらに好ましくは2以下である。下限は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.3以上、さらに好ましくは0.5以上、0.8以上である。増粘率を斯かる範囲内となるように調整することで、平滑性の高い部材との間に発生するボイドの抑制ができ、平滑性の高い部材との間の密着性に優れる硬化物を得ることが可能になる。増粘率の測定は、後述する実施例に記載の方法にて測定することができる。
【0015】
V500は、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは5000poise以上、より好ましくは10000poise以上、さらに好ましくは15000poise以上である。上限は特に限定されないが、好ましくは100000poise以下、より好ましくは80000poise以下、さらに好ましくは50000poise以下である。V500の測定は、後述する実施例に記載の方法にて測定することができる。
【0016】
V900は、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは5000poise以上、より好ましくは10000poise以上、さらに好ましくは15000poise以上である。上限は特に限定されないが、好ましくは100000poise以下、より好ましくは80000poise以下、さらに好ましくは50000poise以下である。V500の測定は、後述する実施例に記載の方法にて測定することができる。
【0017】
上記したが、再配線層の絶縁層として、熱硬化性の絶縁材料を用いることで電気特性等を向上させることができるが、平滑性の高い部材との間にボイドが発生し、平滑性の高い部材と熱硬化性の絶縁材料との間の密着性が劣ることがあった。本発明者らが鋭意検討した結果、樹脂組成物層の溶融粘度が高いと樹脂組成物の流動性が劣ることで密着性が低下するとともにボイドが発生しやすくなり、樹脂組成物層の溶融粘度が低いとタック性が大きくなることで平滑性の高い部材と均一に接合することができず、その結果、空気を巻き込んでボイドが発生しやすくなることを知見した。これにより、本発明者らは、ボイドの発生を抑制するには、再配線層形成用樹脂シートにおける樹脂組成物層を、封止層、半導体チップ等と積層させるときの溶融粘度を調整することが望ましいことを見出した。
【0018】
再配線層の絶縁層が熱硬化性である場合、通常、90℃以上の温度で加熱しながら、再配線層形成用樹脂シートを、封止層、半導体チップ等と積層させる。本発明者らの鋭意検討の結果、温度を90℃に維持してから500秒後の樹脂組成物層の溶融粘度と、温度を90℃に維持してから900秒後の樹脂組成物層の溶融粘度との差(V900-V500)、及び増粘率(V900/V500)が所定の範囲となるように樹脂組成物層の溶融粘度の上昇を抑制できれば、平滑性の高い部材との間のボイドの発生が抑制され、平滑性の高い部材との間の密着性を向上させることができることを見出した。本発明は、(A)~(C)成分を調整して、加熱温度を90℃に維持して500秒経過後の溶融粘度と、加熱温度を90℃に維持して900秒経過後の溶融粘度との差(V900-V500)、及び増粘率(V900/V500)が前記の範囲内となるようにすることで、平滑性の高い部材との間に発生するボイドの抑制、平滑性の高い部材との間の密着性に優れる硬化物を得ることができる。
【0019】
また、本発明では、V900-V500、及び増粘率が前記の範囲にある場合、通常、シリコン、シリコンナイトライド(窒化ケイ素)等のケイ素化合物との間の密着性及び重量減少率に優れる硬化物を得ることができ、最低溶融粘度、染み出し性、タック性及び算術平均粗さ(Ra)、及び十点平均粗さ(Rz)に優れる再配線層形成用樹脂シートを提供可能である。
【0020】
<支持体>
本発明の再配線層形成用樹脂シートは、支持体を有する。再配線層形成用樹脂シートにおける支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0021】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0022】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0023】
支持体は、樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理、帯電防止処理を施してあってもよい。
【0024】
また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」、東レ社製の「ルミラーT60」、帝人社製の「ピューレックス」、ユニチカ社製の「ユニピール」等が挙げられる。
【0025】
支持体の厚みとしては、特に限定されないが、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0026】
<樹脂組成物層>
本発明の再配線層形成用樹脂シートは、支持体上に樹脂組成物で形成された樹脂組成物層を有する。樹脂組成物層は熱硬化する機能を有する。樹脂組成物は、(A)無機充填材、(B)熱硬化性樹脂、及び(C)エラストマーを含有する。
【0027】
樹脂組成物は、(A)無機充填材、(B)熱硬化性樹脂、及び(C)エラストマーに組み合わせて、(D)ラジカル重合性樹脂、(E)硬化促進剤、及び(F)その他の添加剤を含んでいてもよい。以下、樹脂組成物に含まれうる各成分について詳細に説明する。
【0028】
-(A)無機充填材-
樹脂組成物は、(A)成分として無機充填材を含有する。(A)無機充填材は、粒子の状態で樹脂組成物に含まれる。
【0029】
(A)無機充填材の材料としては、無機化合物を用いる。(A)無機充填材の材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でも、シリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては球形シリカが好ましい。(A)無機充填材は、1種類単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0030】
(A)無機充填材の市販品としては、例えば、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」、「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」;デンカ社製の「UFP-30」、「DAW-03」、「FB-105FD」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;太平洋セメント社製の「セルフィアーズ」「MGH-005」;日揮触媒化成社製の「エスフェリーク」「BA-S」などが挙げられる。
【0031】
(A)無機充填材の平均粒径は、特に限定されるものではないが、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下、さらにより好ましくは2μm以下、特に好ましくは1.5μm以下である。(A)無機充填材の平均粒径の下限は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上、特に好ましくは0.2μm以上である。(A)無機充填材の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で無機充填材の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出した。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」等が挙げられる。
【0032】
(A)無機充填材の比表面積は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1m2/g以上、より好ましくは0.5m2/g以上、さらに好ましくは1m2/g以上、特に好ましくは3m2/g以上である。(A)無機充填材の比表面積の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは100m2/g以下、より好ましくは70m2/g以下、さらに好ましくは50m2/g以下、さらにより好ましくは30m2/g以下、特に好ましくは10m2/g以下である。無機充填材の比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで得られる。
【0033】
(A)無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤としては、例えば、フッ素含有シランカップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。また、表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0034】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。
【0035】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の分散性向上の観点から、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、無機充填材100質量%は、0.2質量%~5質量%の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量%~3質量%で表面処理されていることがより好ましく、0.3質量%~2質量%で表面処理されていることがさらに好ましい。
【0036】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m2以上が好ましく、0.1mg/m2以上がより好ましく、0.2mg/m2以上がさらに好ましい。一方、樹脂組成物の溶融粘度やシート形態での溶融粘度の上昇を防止する観点から、1.0mg/m2以下が好ましく、0.8mg/m2以下がより好ましく、0.5mg/m2以下がさらに好ましい。
【0037】
(A)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0038】
(A)無機充填材の含有量は、ボイドの発生を抑制する観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは73.5質量%以上、より好ましくは74質量%以上、さらに好ましくは75質量%以上、特に好ましくは76質量%以上であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下、80質量%以下である。
なお、本発明において、樹脂組成物中の各成分の含有量は、別途明示のない限り、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときの値であり、不揮発成分とは、樹脂組成物中の溶剤を除く不揮発成分全体を意味する。
【0039】
-(B)熱硬化性樹脂-
樹脂組成物は、(B)成分として熱硬化性樹脂を含有する。(B)熱硬化性樹脂は熱を加えられた場合に硬化可能な樹脂であり、(B)熱硬化性樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
熱硬化性樹脂の例としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、活性エステル樹脂、シアネート樹脂、カルボジイミド樹脂、酸無水物樹脂、アミン樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、及びチオール樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、カルボジイミド樹脂、活性エステル樹脂、及びフェノール樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種類を含むことが好ましい。
【0041】
特に、本発明の効果を顕著に得る観点からは、エポキシ樹脂と、そのエポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させうる樹脂とを組み合わせて用いることが好ましい。エポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させうる樹脂を、以下「硬化剤」と呼ぶことがある。硬化剤としては、例えば、フェノール樹脂、活性エステル樹脂、シアネート樹脂、カルボジイミド樹脂、酸無水物樹脂、アミン樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、チオール樹脂などが挙げられる。中でも、硬化剤としては、フェノール樹脂、活性エステル樹脂、及びカルボジイミド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種類を含むことが好ましい。また、硬化剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
エポキシ樹脂は、エポキシ基を有する熱硬化性樹脂である。エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、イソシアヌラート型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
(A)硬化性樹脂は、エポキシ樹脂として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。エポキシ樹脂の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0044】
エポキシ樹脂には、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。樹脂組成物は、エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、或いは固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、或いは液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含んでいてもよい。
【0045】
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましい。
【0046】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0047】
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「828EL」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」、「604」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「ED-523T」(グリシロール型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP-3950L」、「EP-3980S」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP-4088S」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル化学社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」、日本曹達社製の「JP-100」、「JP-200」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
【0049】
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂が好ましく、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0050】
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」、「HP-7200L」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3000FH」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN475V」、「ESN4100V」(ナフタレン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN485」(ナフトール型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN375」(ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YX4000HK」、「YL7890」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX7700」(フェノールアラルキル型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱ケミカル社製の「YX7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「WHR991S」(フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合、それらの質量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、好ましくは1:0.01~1:20、より好ましくは1:0.05~1:10、特に好ましくは1:0.1~1:7である。
【0052】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5,000g/eq.、より好ましくは60g/eq.~3,000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~2,000g/eq.、特に好ましくは110g/eq.~1,000g/eq.である。エポキシ当量は、エポキシ基1当量あたりの樹脂の質量を表す。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0053】
エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100~5,000、より好ましくは250~3,000、さらに好ましくは400~1,500である。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0054】
(B)成分としてのエポキシ樹脂の含有量は、良好な機械強度、絶縁信頼性を示す硬化物を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、特に好ましくは5質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
【0055】
フェノール樹脂としては、ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香環に結合した水酸基を1分子中に1個以上、好ましくは2個以上有する化合物を用いうる。フェノール樹脂は、エポキシ樹脂と組み合わせた場合にエポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させうるので、「フェノール系硬化剤」ということがある。高温リフロー膨れ耐性及び耐水性の観点からは、ノボラック構造を有するフェノール樹脂が好ましい。また、密着性の観点からは、含窒素フェノール樹脂が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール樹脂がより好ましい。中でも、高温リフロー膨れ耐性、耐水性、及び密着性を高度に満足させる観点から、トリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂が好ましい。フェノール樹脂の具体例としては、例えば、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SN-170」、「SN-180」、「SN-190」、「SN-475」、「SN-485」、「SN-495」、「SN-375」、「SN-395」、DIC社製の「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-3018」、「LA-3018-50P」、「LA-1356」、「TD2090」、「TD-2090-60M」、「KA-1163」等が挙げられる。
【0056】
活性エステル樹脂としては、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。活性エステル樹脂は、エポキシ樹脂と組み合わせた場合にエポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させうるので、「活性エステル系硬化剤」ということがある。当該活性エステル樹脂は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に高温リフロー膨れ耐性の向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル樹脂が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル樹脂がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0057】
具体的には、活性エステル樹脂としては、ジシクロペンタジエン型活性エステル樹脂、ナフタレン構造を含むナフタレン型活性エステル樹脂、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル樹脂、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル樹脂が好ましく、中でもジシクロペンタジエン型活性エステル樹脂、及びナフタレン型活性エステル樹脂から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。ジシクロペンタジエン型活性エステル樹脂としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル樹脂が好ましい。
【0058】
活性エステル樹脂の市販品としては、例えば、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル樹脂として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「EXB-8000L」、「EXB-8000L-65M」、「EXB-8000L-65TM」、「HPC-8000L-65TM」、「HPC-8000L-65T」、「HPC-8000」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H」、「HPC-8000H-65TM」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル樹脂として「HP-B-8151-62T」、「EXB-8100L-65T」、「EXB-8150-60T」、「EXB-8150-62T」、「EXB-9416-70BK」、「HPC-8150-60T」、「HPC-8150-62T」、「EXB-8」(DIC社製);りん含有活性エステル樹脂として、「EXB9401」(DIC社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル樹脂として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル樹脂として「YLH1026」、「YLH1030」、「YLH1048」(三菱ケミカル社製);スチリル基及びナフタレン構造を含む活性エステル樹脂として「PC1300-02-65MA」(エア・ウォーター社製)等が挙げられる。
【0059】
シアネート樹脂としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上のシアネート基を有する化合物を用いうる。シアネート樹脂は、エポキシ樹脂と組み合わせた場合にエポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させうるので、「シアネート系硬化剤」ということがある。シアネート樹脂としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート))、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネート樹脂の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(いずれもフェノールノボラック型多官能シアネート樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0060】
カルボジイミド樹脂としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上のカルボジイミド構造を有する化合物を用いうる。カルボジイミド樹脂は、エポキシ樹脂と組み合わせた場合にエポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させうるので、「カルボジイミド系硬化剤」ということがある。カルボジイミド樹脂の具体例としては、テトラメチレン-ビス(t-ブチルカルボジイミド)、シクロヘキサンビス(メチレン-t-ブチルカルボジイミド)等の脂肪族ビスカルボジイミド;フェニレン-ビス(キシリルカルボジイミド)等の芳香族ビスカルボジイミド等のビスカルボジイミド;ポリヘキサメチレンカルボジイミド、ポリトリメチルヘキサメチレンカルボジイミド、ポリシクロヘキシレンカルボジイミド、ポリ(メチレンビスシクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(イソホロンカルボジイミド)等の脂肪族ポリカルボジイミド;ポリ(フェニレンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(トリレンカルボジイミド)、ポリ(メチルジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(キシリレンカルボジイミド)、ポリ(テトラメチルキシリレンカルボジイミド)、ポリ(メチレンジフェニレンカルボジイミド)、ポリ[メチレンビス(メチルフェニレン)カルボジイミド]等の芳香族ポリカルボジイミド等のポリカルボジイミドが挙げられる。カルボジイミド樹脂の市販品としては、例えば、日清紡ケミカル社製の「カルボジライトV-02B」、「カルボジライトV-03」、「カルボジライトV-04K」、「カルボジライトV-07」及び「カルボジライトV-09」;ラインケミー社製の「スタバクゾールP」、「スタバクゾールP400」、「ハイカジル510」等が挙げられる。
【0061】
酸無水物樹脂としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上の酸無水物基を有する化合物を用いうる。酸無水物樹脂は、エポキシ基と組み合わせた場合にエポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させうるので、「酸無水物系硬化剤」ということがある。酸無水物樹脂の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。酸無水物樹脂の市販品としては、例えば、新日本理化社製の「HNA-100」、「MH-700」、「MTA-15」、「DDSA」、「OSA」;三菱ケミカル社製の「YH-306」、「YH-307」;日立化成社製の「HN-2200」、「HN-5500」;クレイバレイ社製「EF-30」、「EF-40」「EF-60」、「EF-80」等が挙げられる。
【0062】
アミン樹脂としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上のアミノ基を有する化合物を用いうる。アミン樹脂は、エポキシ基と組み合わせた場合にエポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させうるので、「アミン系硬化剤」ということがある。アミン樹脂としては、例えば、脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類等が挙げられ、中でも、芳香族アミン類が好ましい。アミン樹脂は、第1級アミン又は第2級アミンが好ましく、第1級アミンがより好ましい。アミン樹脂の具体例としては、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、等が挙げられる。アミン樹脂の市販品としては、例えば、セイカ社製「SEIKACURE-S」;日本化薬社製の「KAYABOND C-200S」、「KAYABOND C-100」、「カヤハードA-A」、「カヤハードA-B」、「カヤハードA-S」;三菱ケミカル社製の「エピキュアW」;住友精化社製「DTDA」等が挙げられる。
【0063】
ベンゾオキサジン樹脂は、エポキシ樹脂と組み合わせた場合にエポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させうるので、「ベンゾオキサジン系硬化剤」ということがある。ベンゾオキサジン樹脂の具体例としては、JFEケミカル社製の「JBZ-OP100D」、「ODA-BOZ」;昭和高分子社製の「HFB2006M」;四国化成工業社製の「P-d」、「F-a」などが挙げられる。
【0064】
チオール樹脂は、エポキシ樹脂と組み合わせた場合にエポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させうるので、「チオール系硬化剤」ということがある。チオール樹脂としては、例えば、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、トリス(3-メルカプトプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0065】
硬化剤の活性基当量は、好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、より好ましくは100g/eq.~1000g/eq.、さらに好ましくは100g/eq.~500g/eq.、特に好ましくは100g/eq.~300g/eq.である。活性基当量は、活性基1当量あたりの硬化剤の質量である。
【0066】
硬化剤の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100~5,000、より好ましくは250~3,000、さらに好ましくは400~1,500である。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0067】
エポキシ樹脂のエポキシ基数を1とした場合、硬化剤の活性基数は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.5以上であり、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.0以下、特に好ましくは3.0以下である。「エポキシ樹脂のエポキシ基数」とは、樹脂組成物中に存在するエポキシ樹脂の不揮発成分の質量をエポキシ当量で割り算した値を全て合計した値を表す。また、「硬化剤の活性基数」とは、樹脂組成物中に存在する硬化剤の不揮発成分の質量を活性基当量で割り算した値を全て合計した値を表す。
【0068】
(B)成分としての硬化剤の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、特に好ましくは5質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
【0069】
(B)熱硬化性樹脂の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、特に好ましくは10質量%以上であり、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、特に好ましくは18質量%以下である。
【0070】
樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(A)無機充填材の含有量をaとし、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(B)熱硬化性樹脂の含有量をbとしたとき、b/aは、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.15以上であり、好ましくは1以下、より好ましくは0.8以下、さらに好ましくは0.5以下である。
【0071】
-(C)エラストマー-
樹脂組成物は、(C)成分として(C)エラストマーを含有する。この(C)成分としての(C)エラストマーには、上述した(B)成分に該当するものは含めない。(C)成分を樹脂組成物に含有させることで、最低溶融粘度を低下させることができる。(C)成分は1種単独で用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0072】
(C)エラストマーは、柔軟性を有する樹脂を意味し、有機溶剤に溶解する不定形の樹脂成分であり、ゴム弾性を有する樹脂または他の成分と重合してゴム弾性を示す樹脂が好ましい。ゴム弾性としては、例えば、日本工業規格(JIS K7161)に準拠し、温度25℃、湿度40%RHにて、引っ張り試験を行った場合に、1GPa以下の弾性率を示す樹脂が挙げられる。
【0073】
(C)成分としては、平滑性の高い部材及びケイ素化合物に対する密着性に優れる硬化物を得る観点から、数平均分子量が高分子量であるものを使用することができる。このような成分としては、例えばポリイミド樹脂;分子内に、ポリブタジエン構造、ポリシロキサン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリアルキレン構造、ポリアルキレンオキシ構造、ポリイソプレン構造、ポリイソブチレン構造、ポリカーボネート構造、ポリスチレン構造、及びポリエステル構造から選択される1種以上の構造を有する樹脂等が挙げられる。中でも、(C)成分としては、誘電特性に優れる硬化物を得る観点から、ポリイミド樹脂、ポリエステル構造を有する樹脂であることが好ましく、ポリイミド樹脂がより好ましい。「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレート及びアクリレートを指す。
【0074】
(C)成分の数平均分子量(Mn)は、平滑性の高い部材及びケイ素化合物に対する密着性に優れる硬化物を得る観点から、好ましくは2000より大きく、より好ましくは3000以上、特に好ましくは5000以上であり、好ましくは100000以下、より好ましくは80000以下、特に好ましくは50000以下である。(C)成分の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0075】
(C)成分の重量平均分子量(Mw)は、平滑性の高い部材及びケイ素化合物に対する密着性に優れる硬化物を得る観点から、好ましくは5000より大きく、より好ましくは8000以上、さらに好ましくは10000以上、特に好ましくは20000以上であり、好ましくは100000以下、より好ましくは70000以下、さらに好ましくは60000以下、特に好ましくは50000以下である。(C)成分の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0076】
ポリイミド樹脂は、繰り返し単位中にイミド結合を持つ樹脂を用いることができる。ポリイミド樹脂は、一般に、ジアミン化合物と酸無水物とのイミド化反応により得られるものを含む。
【0077】
ポリイミド樹脂を調製するためのジアミン化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、脂肪族ジアミン化合物、及び芳香族ジアミン化合物を挙げることができる。
【0078】
脂肪族ジアミン化合物としては、例えば、1,2-エチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,5-ジアミノペンタン、1,10-ジアミノデカン等の直鎖状の脂肪族ジアミン化合物;1,2-ジアミノ-2-メチルプロパン、2,3-ジアミノ-2,3-ブタン、及び2-メチル-1,5-ジアミノペンタン等の分岐鎖状の脂肪族ジアミン化合物;1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂環式ジアミン化合物;ダイマー酸型ジアミン(以下「ダイマージアミン」ともいう)等が挙げられ、中でも、ダイマー酸型ジアミンが好ましい。
【0079】
ダイマー酸型ジアミンとは、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基(-COOH)が、アミノメチル基(-CH2-NH2)又はアミノ基(-NH2)に置換されて得られるジアミン化合物を意味する。ダイマー酸は、不飽和脂肪酸(好ましくは炭素数11~22のもの、特に好ましくは炭素数18のもの)を二量化することにより得られる既知の化合物であり、その工業的製造プロセスは業界でほぼ標準化されている。ダイマー酸は、とりわけ安価で入手しやすいオレイン酸、リノール酸等の炭素数18の不飽和脂肪酸を二量化することによって得られる炭素数36のダイマー酸を主成分とするものが容易に入手できる。また、ダイマー酸は、製造方法、精製の程度等に応じ、任意量のモノマー酸、トリマー酸、その他の重合脂肪酸等を含有する場合がある。また、不飽和脂肪酸の重合反応後には二重結合が残存するが、本明細書では、さらに水素添加反応して不飽和度を低下させた水素添加物もダイマー酸に含めるものとする。ダイマー酸型ジアミンは、市販品が入手可能であり、例えばクローダジャパン社製の「PRIAMINE1073」、「PRIAMINE1074」、「PRIAMINE1075」;コグニスジャパン社製の「バーサミン551」、「バーサミン552」等が挙げられる。
【0080】
芳香族ジアミン化合物としては、例えば、フェニレンジアミン化合物、ナフタレンジアミン化合物、ジアニリン化合物等が挙げられる。
【0081】
フェニレンジアミン化合物とは、2個のアミノ基を有するベンゼン環からなる化合物を意味し、さらに、ここにおけるベンゼン環は、任意で1~3個の置換基を有し得る。フェニレンジアミン化合物としては、具体的に、1,4-フェニレンジアミン、1,2-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、3,5-ジアミノビフェニル、2,4,5,6-テトラフルオロ-1,3-フェニレンジアミン等が挙げられる。
【0082】
置換基としては、特に制限はなく、例えば、ハロゲン原子、-OH、-O-C1-6アルキル基、-N(C1-10アルキル基)2、C1-20アルキル基、C2-30アルケニル基、C2-30アルキニル基、C6-10アリール基、-NH2、-CN、-C(O)O-C1-10アルキル基、-COOH、-C(O)H、-NO2等が挙げられる。ここで、「Cp-q」(p及びqは正の整数であり、p<qを満たす。)という用語は、この用語の直後に記載された有機基の炭素原子数がp~qであることを表す。例えば、「C1-10アルキル基」という表現は、炭素原子数1~10のアルキル基を示す。これら置換基は、互いに結合して環を形成していてもよく、環構造は、スピロ環や縮合環も含む。
【0083】
ナフタレンジアミン化合物とは、2個のアミノ基を有するナフタレン環からなる化合物を意味し、さらに、ここにおけるナフタレン環は、任意で1~3個の置換基を有し得る。置換基としては、フェニレンジアミン化合物が有していてもよい置換基と同様である。ナフタレンジアミン化合物としては、具体的に、1,5-ジアミノナフタレン、1,8-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、2,3-ジアミノナフタレン等が挙げられる。
【0084】
ジアニリン化合物とは、分子内に2個のアニリン構造を含む化合物を意味し、さらに、2個のアニリン構造中の2個のベンゼン環は、それぞれ、さらに任意で1~3個の置換基を有し得る。置換基としては、フェニレンジアミン化合物が有していてもよい置換基と同様である。ジアニリン化合物における2個のアニリン構造は、直接結合、並びに/或いは炭素原子、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれる1~100個の骨格原子を有する1又は2個のリンカー構造を介して結合し得る。ジアニリン化合物には、2個のアニリン構造が2個の結合により結合しているものも含まれる。
【0085】
ジアニリン化合物における「リンカー構造」としては、具体的に、-NHCO-、-CONH-、-OCO-、-COO-、-CH2-、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2CH2-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、-CH=CH-、-O-、-S-、-CO-、-SO2-、-NH-、-Ph-、-Ph-Ph-、-C(CH3)2-Ph-C(CH3)2-、-O-Ph-O-、-O-Ph-Ph-O-、-O-Ph-SO2-Ph-O-、-O-Ph-C(CH3)2-Ph-O-、-Ph-CO-O-Ph-、-C(CH3)2-Ph-C(CH3)2-、下記式(I)、(II)で表される基、及びこれらの組み合わせからなる基等が挙げられる。本明細書中、「Ph」は、1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基または1,2-フェニレン基を示す。
【0086】
【0087】
一実施形態において、ジアニリン化合物としては、具体的に、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジトリフルオロメチル-1,1’-ビフェニル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4-アミノフェニル4-アミノベンゾエート、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジアニリン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、α,α-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,3-ジイソプロピルベンゼン、α,α-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,4-ジイソプロピルベンゼン、4,4’-(9-フルオレニリデン)ジアニリン、2,2-ビス(3-メチル-4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-アミノフェニル)ベンゼン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチル-1,1’-ビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジメチル-1,1’-ビフェニル、9,9’-ビス(3-メチル-4-アミノフェニル)フルオレン、5-(4-アミノフェノキシ)-3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,3-トリメチルインダン等が挙げられ、好ましくは、5-(4-アミノフェノキシ)-3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,3-トリメチルインダンである。
【0088】
別の実施形態において、ジアニリン化合物としては、例えば、下記式(C-1)で表されるジアミン化合物等が挙げられる。
【0089】
【化2】
(式(C-1)中、R
1~R
8は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、-X
9-R
9、又は-X
10-R
10を示し、R
1~R
8のうち少なくとも1つが、-X
10-R
10であり、X
9は、それぞれ独立して、単結合、-NR
9’-、-O-、-S-、-CO-、-SO
2-、-NR
9’CO-、-CONR
9’-、-OCO-、又は-COO-を示し、R
9は、それぞれ独立して、置換又は無置換のアルキル基、又は置換又は無置換のアルケニル基を示し、R
9’は、それぞれ独立して、水素原子、置換又は無置換のアルキル基、又は置換又は無置換のアルケニル基を示し、X
10は、それぞれ独立して、単結合、-(置換又は無置換のアルキレン基)-、-NH-、-O-、-S-、-CO-、-SO
2-、-NHCO-、-CONH-、-OCO-、又は-COO-を示し、R
10は、それぞれ独立して、置換又は無置換のアリール基、又は置換又は無置換のヘテロアリール基を示す。)
【0090】
式(C-1)中のR9及びR9’が表すアルキル基は、直鎖、分枝鎖又は環状の1価の脂肪族飽和炭化水素基をいう。アルキル基としては、炭素原子数1~6のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~3のアルキル基がより好ましい。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0091】
式(C-1)中のR9及びR9’が表すアルケニル基は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する直鎖、分枝鎖又は環状の1価の不飽和炭化水素基をいう。アルケニル基としては、炭素原子数2~6のアルケニル基が好ましく、炭素原子数2又は3のアルケニル基がより好ましい。このようなアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、2-メチル-1-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、4-メチル-3-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、2-シクロヘキセニル基等が挙げられる。「置換又は無置換のアルケニル基」におけるアルケニル基の置換基としては、特に限定されるものではないが、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、アミノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基等が挙げられる。置換基数としては、1~3個であることが好ましく、1個であることがより好ましい。
【0092】
「置換又は無置換のアルキル基」におけるアルキル基の置換基、及び「置換又は無置換のアルケニル基」におけるアルケニル基の置換基としては、特に限定されるものではないが、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基等が挙げられる。置換基数としては、1~3個であることが好ましく、1個であることがより好ましい。
【0093】
アルコキシ基は、酸素原子にアルキル基が結合して形成される1価の基(アルキル-O-)をいう。アルコキシ基としては、炭素原子数1~6のアルコキシ基が好ましく、炭素原子数1~3のアルコキシ基がより好ましい。このようなアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基等が挙げられる。
【0094】
式(C-1)中のX10が表すアルキレン基は、直鎖、分枝鎖又は環状の2価の脂肪族飽和炭化水素基をいい、炭素原子数1~6のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1~3のアルキレン基がより好ましい。アルキレン基としては、例えば、-CH2-、-CH2-CH2-、-CH(CH3)-、-CH2-CH2-CH2-、-CH2-CH(CH3)-、-CH(CH3)-CH2-、-C(CH3)2-、-CH2-CH2-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH(CH3)-、-CH2-CH(CH3)-CH2-、-CH(CH3)-CH2-CH2-、-CH2-C(CH3)2-、-C(CH3)2-CH2-等が挙げられる。「置換又は無置換のアルキレン基」におけるアルキレン基の置換基としては、特に限定されるものではないが、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、アミノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基等が挙げられる。置換基数としては、1~3個であることが好ましく、1個であることがより好ましい。
【0095】
式(C-1)中のR10が表すアリール基としては、炭素原子数6~14のアリール基が好ましく、炭素原子数6~10のアリール基がより好ましい。このようなアリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられ、好ましくは、フェニル基である。「置換又は無置換のアリール基」におけるアリール基の置換基としては、特に限定されるものではないが、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、アミノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基等が挙げられる。置換基数としては、1~3個であることが好ましく、1個であることがより好ましい。
【0096】
式(C-1)中のR10が表すヘテロアリール基とは、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子から選ばれる1ないし4個のヘテロ原子を有する芳香族複素環基をいう。ヘテロアリール基は、5ないし12員(好ましくは5又は6員)の単環式、二環式又は三環式(好ましくは単環式)芳香族複素環基が好ましい。このようなヘテロアリール基としては、例えば、フリル基、チエニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、1,2,3-オキサジアゾリル基、1,2,4-オキサジアゾリル基、1,3,4-オキサジアゾリル基、フラザニル基、1,2,3-チアジアゾリル基、1,2,4-チアジアゾリル基、1,3,4-チアジアゾリル基、1,2,3-トリアゾリル基、1,2,4-トリアゾリル基、テトラゾリル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基等が挙げられる。「置換又は無置換のヘテロアリール基」におけるヘテロアリール基の置換基としては、「置換又は無置換のアリール基」におけるアリール基の置換基と同様である。
【0097】
R1~R8は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、-X9-R9、又は-X10-R10を示す。R1~R8は、好ましくは、それぞれ独立して、水素原子、又は-X10-R10である。
【0098】
R1~R8のうち少なくとも1つが-X10-R10である。好ましくは、R1~R8のうち1つ又は2つが-X10-R10であり、より好ましくは、R5~R8のうち1つ又は2つが-X10-R10であり、さらに好ましくは、R5及びR7のうち1つ又は2つが-X10-R10である。
【0099】
一実施形態では、好ましくは、R1~R8のうち1つ又は2つが-X10-R10であり、かつR1~R8のうちその他が水素原子であり、より好ましくは、R5~R8のうち1つ又は2つが-X10-R10であり、かつR1~R8のうちその他が、水素原子であり、さらに好ましくは、R5及びR7のうち1つ又は2つが-X10-R10であり、かつR1~R8のうちその他が、水素原子である。
【0100】
X9は、それぞれ独立して、単結合、-NR9’-、-O-、-S-、-CO-、-SO2-、-NR9’CO-、-CONR9’-、-OCO-、又は-COO-を示す。R9は、それぞれ独立して、置換又は無置換のアルキル基、又は置換又は無置換のアルケニル基を示す。X9は、好ましくは、単結合である。
【0101】
R9’は、それぞれ独立して、水素原子、置換又は無置換のアルキル基、又は置換又は無置換のアルケニル基を示す。R9は、好ましくは、置換又は無置換のアルキル基である。
【0102】
X10は、それぞれ独立して、単結合、-(置換又は無置換のアルキレン基)-、-NH-、-O-、-S-、-CO-、-SO2-、-NHCO-、-CONH-、-OCO-、又は-COO-を示す。X10は、好ましくは、単結合である。
【0103】
R10は、それぞれ独立して、置換又は無置換のアリール基、又は置換又は無置換のヘテロアリール基を示す。R10は、好ましくは、置換又は無置換のアリール基である。
【0104】
一実施形態において、式(C-1)で表されるジアミン化合物は、下記式(C-2)で表される化合物であることが好ましく、下記式(C-3)で表される化合物(4-アミノ安息香酸5-アミノ-1,1’-ビフェニル-2-イル)であることがより好ましい。
【化3】
(式中、R
1~R
6及びR
8は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、-X
9-R
9を示し、その他の記号は式(C-1)と同様である。)
【化4】
【0105】
ジアミン化合物は、市販されているものを用いてもよいし、公知の方法により合成したものを使用してもよい。例えば、式(C-1)で表されるジアミン化合物は、特許第6240798号に記載されている合成方法又はこれに準ずる方法により合成することができる。ジアミン化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0106】
ポリイミド樹脂を調製するための酸無水物は、特に限定されるものではないが、好適な実施形態においては、芳香族テトラカルボン酸二無水物である。芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、アントラセンテトラカルボン酸二無水物、ジフタル酸二無水物等が挙げられ、好ましくは、ジフタル酸二無水物である。
【0107】
ベンゼンテトラカルボン酸二無水物とは、4個のカルボキシ基を有するベンゼンの二無水物を意味し、さらに、ここにおけるベンゼン環は、任意で1~3個の置換基を有し得る。ここで、置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、及び-X13-R13(下記式(C-4)の定義と同じ)から選ばれるものが好ましい。ベンゼンテトラカルボン酸二無水物としては、具体的に、ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0108】
ナフタレンテトラカルボン酸二無水物とは、4個のカルボキシ基を有するナフタレンの二無水物を意味し、さらに、ここにおけるナフタレン環は、任意で1~3個の置換基を有し得る。ここで、置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、及び-X13-R13(下記式(C-4)の定義と同じ)から選ばれるものが好ましい。ナフタレンテトラカルボン酸二無水物としては、具体的に、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0109】
アントラセンテトラカルボン酸二無水物とは、4個のカルボキシ基を有するアントラセンの二無水物を意味し、さらに、ここにおけるアントラセン環は、任意で1~3個の置換基を有し得る。ここで、置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、及び-X13-R13(下記式(C-4)の定義と同じ)から選ばれるものが好ましい。アントラセンテトラカルボン酸二無水物としては、具体的に、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0110】
ジフタル酸二無水物とは、分子内に2個の無水フタル酸を含む化合物を意味し、さらに、2個の無水フタル酸中の2個のベンゼン環は、それぞれ、任意で1~3個の置換基を有し得る。ここで、置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、及び-X13-R13(下記式(C-4)の定義と同じ)から選ばれるものが好ましい。ジフタル酸二無水物における2個の無水フタル酸は、直接結合、或いは炭素原子、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれる1~100個の骨格原子を有するリンカー構造を介して結合し得る。
【0111】
ジフタル酸二無水物としては、例えば、式(C-4)で表される化合物が挙げられる。
【化5】
(式中、R
11及びR
12は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、又は-X
13-R
13を示し、
X
13は、それぞれ独立して、単結合、-NR
13’-、-O-、-S-、-CO-、-SO
2-、-NR
13’CO-、-CONR
13’-、-OCO-、又は-COO-を示し、
R
13は、それぞれ独立して、置換又は無置換のアルキル基、又は置換又は無置換のアルケニル基を示し、
R
13’は、それぞれ独立して、水素原子、置換又は無置換のアルキル基、又は置換又は無置換のアルケニル基を示し、
Yは、単結合、或いは炭素原子、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれる1~100個の骨格原子を有するリンカー構造を示し、
n1及びm1は、それぞれ独立して、0~3の整数を示す。)
【0112】
Yは、好ましくは、炭素原子、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれる1~100個の骨格原子を有するリンカー構造である。n1及びm1は、好ましくは、0である。
【0113】
Yにおける「リンカー構造」は、炭素原子、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれる1~100個の骨格原子を有する。「リンカー構造」は、好ましくは、-[A-Ph]a-A-[Ph-A]b-〔式中、Aは、それぞれ独立して、単結合、-(置換又は無置換のアルキレン基)-、-O-、-S-、-CO-、-SO2-、-CONH-、-NHCO-、-COO-、又は-OCO-を示し、a及びbは、それぞれ独立して、0~2の整数(好ましくは、0又は1)を示す。〕で表される二価の基である。
【0114】
Yにおける「リンカー構造」は、具体的に、-CH2-、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2CH2-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、-O-、-CO-、-SO2-、-Ph-、-O-Ph-O-、-O-Ph-SO2-Ph-O-、-O-Ph-C(CH3)2-Ph-O-等が挙げられる。
【0115】
ジフタル酸二無水物としては、具体的に、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物2,2’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシフェニル)スルホン二無水物、メチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,1-エチニリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、2,2-プロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,2-エチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,3-トリメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,4-テトラメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,5-ペンタメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ビスフタル酸二無水物等が挙げられる。
【0116】
芳香族テトラカルボン酸二無水物は、市販されているものを用いてもよいし、公知の方法又はこれに準ずる方法により合成したものを使用してもよい。芳香族テトラカルボン酸二無水物は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0117】
一実施形態において、ポリイミド樹脂を作製するための酸無水物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物に加えて、その他の酸無水物を含んでいてもよい。
【0118】
その他の酸無水物としては、具体的に、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、カルボニル-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、メチレン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、1,2-エチレン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、オキシ-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、チオ-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、スルホニル-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物等の脂肪族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0119】
ポリイミド樹脂を構成する酸無水物に由来する全構造中の芳香族テトラカルボン酸二無水物に由来する構造の含有量は、10モル%以上であることが好ましく、30モル%以上であることがより好ましく、50モル%以上であることがさらに好ましく、70モル%以上であることがなお一層好ましく、90モル%以上であることがなお一層より好ましく、100モル%であることが特に好ましい。
【0120】
ポリイミド樹脂は、下記一般式(C)で表される構造単位を有することが好ましい。
【化6】
(一般式(C)中、R
51は、単結合又は酸無水物に由来する残基を表し、R
52は、単結合又はジアミン化合物に由来する残基を表す。)
【0121】
R51は、単結合又は酸無水物に由来する残基を表し、酸無水物に由来する残基であることが好ましい。R51で表される酸無水物に由来する残基とは、酸無水物から2つの酸素原子を除いた2価の基をいう。酸無水物については、上記したとおりである。
【0122】
R52は、単結合又はジアミン化合物に由来する残基を表し、ジアミン化合物に由来する残基であることが好ましい。R52で表されるジアミン化合物に由来する残基とは、ジアミン化合物から2つのアミノ基を除いた2価の基をいう。ジアミン化合物については、上記したとおりである。
【0123】
ポリイミド樹脂は、従来公知の方法により調製することができる。公知の方法としては、例えば、ジアミン化合物、酸無水物及び溶媒の混合物を加熱して反応させる方法が挙げられる。ジアミン化合物の混合量は、例えば、酸無水物に対して、通常、0.5~1.5モル当量、好ましくは0.9~1.1モル当量であり得る。
【0124】
ポリイミド樹脂の調製に用いられる溶媒としては、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)及びシクロヘキサノン等のケトン系溶剤;γ-ブチロラクトン等のエステル系溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素系溶剤が挙げられる。また、ポリイミド樹脂の調製には、必要に応じて、イミド化触媒、共沸脱水溶剤、酸触媒等を使用してもよい。イミド化触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリエチレンジアミン、N-メチルピロリジン、N-エチルピロリジン、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン、ピリジン等の第三級アミン類が挙げられる。共沸脱水溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルシクロヘキサン等が挙げられる。酸触媒としては、例えば、無水酢酸等が挙げられる。イミド化触媒、共沸脱水溶剤、酸触媒等の使用量は、当業者であれば適宜設定することができる。ポリイミド樹脂の調製のための反応温度は、通常、100~250℃である。
【0125】
(C)成分は、別の一実施形態として、分子内に、ポリブタジエン構造、ポリシロキサン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリアルキレン構造、ポリアルキレンオキシ構造、ポリイソプレン構造、ポリイソブチレン構造、ポリカーボネート構造、ポリスチレン構造、及びポリエステル構造から選択されるから選択される1種以上の構造を有する樹脂であってもよい。
【0126】
(C)成分としては、例えば、ポリブタジエン構造を含有する樹脂が挙げられる。ポリブタジエン構造は、主鎖に含まれていてもよく、側鎖に含まれていてもよい。ポリブタジエン構造を含有する樹脂を「ポリブタジエン樹脂」ということがある。ポリブタジエン樹脂の具体例としては、クレイバレー社製の「Ricon 130MA8」、「Ricon 130MA13」、「Ricon 130MA20」、「Ricon 131MA5」、「Ricon 131MA10」、「Ricon 131MA17」、「Ricon 131MA20」、「Ricon 184MA6」(酸無水物基含有ポリブタジエン)等が挙げられる。また、ポリブタジエン樹脂の具体例としては、ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を原料とする線状ポリイミド(特開2006-37083号公報、国際公開第2008/153208号に記載のポリイミド)、フェノール性水酸基含有ブタジエン等が挙げられる。該ポリイミド樹脂のブタジエン構造の含有率は、好ましくは60質量%~95質量%、より好ましくは75質量%~85質量%である。該ポリイミド樹脂の詳細は、特開2006-37083号公報、国際公開第2008/153208号の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
(C)成分としては、例えば、ポリ(メタ)アクリレート構造を含有する樹脂が挙げられる。ポリ(メタ)アクリレート構造を含有する樹脂を「ポリ(メタ)アクリル樹脂」ということがある。ポリ(メタ)アクリル樹脂の具体例としては、ナガセケムテックス社製のテイサンレジン、根上工業社製の「ME-2000」、「W-116.3」、「W-197C」、「KG-25」、「KG-3000」等が挙げられる。
【0127】
(C)成分としては、例えば、ポリカーボネート構造を含有する樹脂が挙げられる。ポリカーボネート構造を含有する樹脂を「ポリカーボネート樹脂」ということがある。このような樹脂としては、反応基を持たないカーボネート樹脂、ヒドロキシ基含有カーボネート樹脂、フェノール性水酸基含有カーボネート樹脂、カルボキシ基含有カーボネート樹脂、酸無水物基含有カーボネート樹脂、イソシアネート基含有カーボネート樹脂、ウレタン基含有カーボネート樹脂、エポキシ基含有カーボネート樹脂等が挙げられる。ここで反応基とは、ヒドロキシ基、フェノール性水酸基、カルボキシ基、酸無水物基、イソシアネート基、ウレタン基、及びエポキシ基等他の成分と反応し得る官能基のことをいう。
【0128】
ポリカーボネート樹脂の具体例としては、三菱瓦斯化学社製の「FPC0220」、「FPC2136」、旭化成ケミカルズ社製の「T6002」、「T6001」(ポリカーボネートジオール)、クラレ社製の「C-1090」、「C-2090」、「C-3090」(ポリカーボネートジオール)等が挙げられる。またヒドロキシル基末端ポリカーボネート、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を原料とする線状ポリイミドを使用することもできる。該ポリイミド樹脂のカーボネート構造の含有率は、好ましくは60質量%~95質量%、より好ましくは75質量%~85質量%である。該ポリイミド樹脂の詳細は、国際公開第2016/129541号の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0129】
(C)成分としては、例えば、ポリシロキサン構造を含有する樹脂が挙げられる。ポリシロキサン構造を含有する樹脂を「シロキサン樹脂」ということがある。シロキサン樹脂の具体例としては、信越シリコーン社製の「SMP-2006」、「SMP-2003PGMEA」、「SMP-5005PGMEA」、アミン基末端ポリシロキサンおよび四塩基酸無水物を原料とする線状ポリイミド(国際公開第2010/053185号、特開2002-12667号公報及び特開2000-319386号公報等)等が挙げられる。
【0130】
(C)成分としては、例えば、ポリアルキレン構造又はポリアルキレンオキシ構造を含有する樹脂が挙げられる。ポリアルキレン構造を含有する樹脂を「アルキレン樹脂」ということがある。また、ポリアルキレンオキシ構造を含有する樹脂を「アルキレンオキシ樹脂」ということがある。ポリアルキレンオキシ構造は、炭素原子数2~15のポリアルキレンオキシ構造が好ましく、炭素原子数3~10のポリアルキレンオキシ構造がより好ましく、炭素原子数5~6のポリアルキレンオキシ構造が特に好ましい。アルキレン樹脂及びアルキレンオキシ樹脂の具体例としては、旭化成せんい社製の「PTXG-1000」、「PTXG-1800」等が挙げられる。
【0131】
(C)成分としては、例えば、ポリイソプレン構造を含有する樹脂が挙げられる。ポリイソプレン構造を含有する樹脂を「イソプレン樹脂」ということがある。イソプレン樹脂の具体例としては、クラレ社製の「KL-610」、「KL613」等が挙げられる。
【0132】
(C)成分としては、例えば、ポリイソブチレン構造を含有する樹脂が挙げられる。ポリイソブチレン構造を含有する樹脂を「イソブチレン樹脂」ということがある。イソブチレン樹脂の具体例としては、カネカ社製の「SIBSTAR-073T」(スチレン-イソブチレン-スチレントリブロック共重合体)、「SIBSTAR-042D」(スチレン-イソブチレンジブロック共重合体)等が挙げられる。
【0133】
(C)成分としては、例えば、ポリスチレン構造を含有する樹脂が挙げられる。ポリスチレン構造を含有する樹脂を「スチレン樹脂」ということがある。スチレン樹脂は、ポリスチレン樹脂は、スチレン単位に組み合わせて、前記のスチレン単位とは異なる任意の繰り返し単位を含む共重合体であってもよく、水添ポリスチレン樹脂であってもよい。
【0134】
任意の繰り返し単位としては、例えば、共役ジエンを重合して得られる構造を有する繰り返し単位(共役ジエン単位)、それを水素化して得られる構造を有する繰り返し単位(水添共役ジエン単位)等が挙げられる。共役ジエンとしては、例えば、ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチルブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等の脂肪族共役ジエン;クロロプレン等のハロゲン化脂肪族共役ジエン等が挙げられる。共役ジエンとしては、本発明の効果を顕著に得る観点から脂肪族共役ジエンが好ましく、ブタジエンがより好ましい。共役ジエンは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、ポリスチレン樹脂は、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。
【0135】
スチレン樹脂としては、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SBBS)、スチレン-ブタジエンジブロック共重合体、水素化スチレン-ブタジエンブロック共重合体、水素化スチレン-イソプレンブロック共重合体、水素化スチレン-ブタジエンランダム共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。スチレン樹脂の具体例としては、水添スチレン系熱可塑性エラストマー「H1041」、「タフテックH1043」、「タフテックP2000」、「タフテックMP10」(旭化成社製);エポキシ化スチレン-ブタジエン熱可塑性エラストマー「エポフレンドAT501」、「CT310」(ダイセル社製);ヒドロキシル基を有する変成スチレン系エラストマー「セプトンHG252」(クラレ社製);カルボキシル基を有する変性スチレン系エラストマー「タフテックN503M」、アミノ基を有する変性スチレン系エラストマー「タフテックN501」、酸無水物基を有する変性スチレン系エラストマー「タフテックM1913」(旭化成ケミカルズ社製);未変性スチレン系エラストマー「セプトンS8104」(クラレ社製);スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体「FG1924」(Kraton社製)、「EF-40」(CRAY VALLEY社製)が挙げられる。
【0136】
(C)成分としては、例えば、ポリエステル構造を含有する樹脂が挙げられる。ポリエステル構造を含有する樹脂をポリエステル樹脂という。ポリエステル樹脂としては、東洋紡社製の「バイロン600」、「バイロン560」、「バイロン230」、「バイロンGK-360」、「バイロンBX-1001」、三菱ケミカル社製の「LP-035」、「LP-011」、「TP-220」、「TP-249」、「SP-185」等が挙げられる。
【0137】
ポリエステル樹脂は、ポリエステルと、ジイソシアネート化合物、多官能フェノール化合物及び(メタ)アクリル化合物の少なくともいずれかの反応により得られるものも含む。
【0138】
ポリエステルとしては、例えば、ダイマー酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマール酸、アジピン酸、セバシン酸等が挙げられる。ダイマー酸とは、炭素原子数10~24の不飽和脂肪酸を二量化して得られた炭素原子数20~48の重合体脂肪酸を指し、それらの不飽和基を水添して得られる飽和ダイマー酸も含む。ダイマー酸由来のポリエステルは、市販品を用いることもできる。このような市販品としては、クローダジャパン社製のプリプラスト3196等が挙げられる。
【0139】
ジイソシアネート化合物は、分子内にイソシアネート基を2個有する化合物であり、例えば、トルエン-2,4-ジイソシアネート、トルエン-2,6-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネートなどが挙げられる。
【0140】
多官能フェノール化合物としては、例えば、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールAF、ビフェノール、フェノールノボラック樹脂、アルキルフェノールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン構造含有フェノールノボラック樹脂、トリアジン構造含有フェノールノボラック樹脂、ビフェニル骨格含有フェノールノボラック樹脂、フェニル基含有フェノールノボラック樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ポリビニルフェノール類等が挙げられる。
【0141】
(メタ)アクリル化合物としては、例えば、エチルジグリコールアセテート等が挙げられる。
【0142】
(C)成分は、平滑性の高い部材及びケイ素化合物に対する密着性に優れる硬化物を得る観点から、ガラス転移温度(Tg)が25℃以下の樹脂及び25℃以下で液状である樹脂から選択される1種以上であることが好ましい。ガラス転移温度(Tg)は、好ましくは20℃以下、より好ましくは15℃以下である。ガラス転移温度の下限は特に限定されないが、通常-15℃以上とし得る。また、25℃で液状である樹脂としては、好ましくは20℃以下で液状である樹脂、より好ましくは15℃以下で液状である樹脂である。ガラス転移温度は、DSC(示差走査熱量測定)により測定しうる。
【0143】
(C)成分の含有量としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上であり、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下である。
【0144】
樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(A)無機充填材の含有量をaとし、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(C)成分の含有量をcとしたとき、c/aは、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.03以上、さらに好ましくは0.05以上であり、好ましくは1以下、より好ましくは0.3以下、さらに好ましくは0.1以下である。
【0145】
樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(B)成分の含有量をbとしたとき、c/bは、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、さらに好ましくは0.3以上であり、好ましくは1.5以下、より好ましくは1以下、さらに好ましくは0.8以下である。
【0146】
<(D)ラジカル重合性樹脂>
樹脂組成物は、上述した(A)~(C)成分に組み合わせて、任意の成分としてさらに(D)ラジカル重合性樹脂を含んでいてもよい。この(D)成分としての(D)ラジカル重合性樹脂には、上述した(B)~(C)成分に該当するものは含めない。
【0147】
ラジカル重合性樹脂としては、1分子中に1個以上(好ましくは2個以上)のラジカル重合性不飽和基を有する限り、その種類は特に限定されない。ラジカル重合性樹脂としては、例えば、ラジカル重合性不飽和基として、マレイミド基、ビニル基、アリル基、スチリル基、ビニルフェニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、フマロイル基、及びマレオイル基から選ばれる1種以上を有する樹脂が挙げられる。中でも、本発明の効果を顕著に得る観点からは、ラジカル重合性樹脂は、マレイミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂及びスチリル樹脂から選ばれる1種以上が好ましく、マレイミド樹脂がより好ましい。
【0148】
マレイミド樹脂としては、1分子中に1個以上(好ましくは2個以上)のマレイミド基(2,5-ジヒドロ-2,5-ジオキソ-1H-ピロール-1-イル基)を有する限り、その種類は特に限定されない。マレイミド樹脂としては、例えば、(1)「BMI-3000J」、「BMI-5000」、「BMI-1400」、「BMI-1500」、「BMI-1700」、「BMI-689」(いずれもデジクナーモレキュールズ社製)、「SLK6895-T90」(信越化学工業社製)などの、脂肪族骨格(好ましくはダイマージアミン由来の炭素原子数36の脂肪族骨格)を含むマレイミド樹脂;(2)発明協会公開技報公技番号2020-500211号に記載される、インダン骨格を含むマレイミド樹脂;(3)「MIR-3000-70MT」(日本化薬社製)、「BMI-4000」(大和化成社製)、「BMI-80」(ケイアイ化成社製)などの、マレイミド基の窒素原子と直接結合している芳香環骨格を含むマレイミド樹脂が挙げられる。
【0149】
(メタ)アクリル樹脂としては、1分子中に1個以上(好ましくは2個以上)の(メタ)アクリロイル基を有する限り、その種類は特に限定されず、モノマー、オリゴマーであってもよい。ここで、「(メタ)アクリロイル基」という用語は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の総称である。メタクリル樹脂としては、(メタ)アクリレートモノマーのほか、例えば、「A-DOG」(新中村化学工業社製)、「DCP-A」(共栄社化学社製)、「NPDGA」、「FM-400」、「R-687」、「THE-330」、「PET-30」、「DPHA」(何れも日本化薬社製)などの、(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。
【0150】
スチリル樹脂としては、1分子中に1個以上(好ましくは2個以上)のスチリル基又はビニルフェニル基を有する限り、その種類は特に限定されず、モノマー、オリゴマーであってもよい。スチリル樹脂としては、スチレンモノマーのほか、例えば、「OPE-2St」、「OPE-2St 1200」、「OPE-2St 2200」(何れも三菱ガス化学社製)などの、スチリル樹脂が挙げられる。
【0151】
(D)成分の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0152】
樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(A)成分の含有量をaとし、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(D)成分の含有量をdとしたとき、d/aは、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、さらに好ましくは0.01以上であり、好ましくは0.1以下、より好ましくは0.05以下、さらに好ましくは0.03以下である。
【0153】
樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(B)成分の含有量をbとしたとき、b/dは、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは1以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは5以上、8以上であり、好ましくは1.5以下、より好ましくは25以下、さらに好ましくは20以下である。
【0154】
樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(B)成分としてのエポキシ樹脂の含有量をb1としたとき、b1/dは、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは1以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは5以上であり、好ましくは15以下、より好ましくは13以下、さらに好ましくは10以下である。
【0155】
樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(B)成分としての硬化剤の含有量をb2としたとき、b2/dは、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは1以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは5以上であり、好ましくは15以下、より好ましくは13以下、さらに好ましくは10以下である。
【0156】
樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(C)成分の含有量をcとしたとき、c/dは、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは3以上、5以上であり、好ましくは15以下、より好ましくは13以下、さらに好ましくは10以下である。
【0157】
<(E)硬化促進剤>
樹脂組成物は、上述した(A)~(D)成分に組み合わせて、任意の成分としてさらに(E)硬化促進剤を含んでいてもよい。この(E)成分としての(E)硬化促進剤には、上述した(B)~(D)成分に該当するものは含めない。(E)硬化促進剤は、(B)熱硬化性樹脂におけるエポキシ樹脂の硬化を促進させる硬化触媒としての機能を有する。
【0158】
(E)硬化促進剤としては、エポキシ樹脂の硬化を促進させる化合物を用いることができる。このような(E)硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、ウレア系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤等が挙げられる。(E)硬化促進剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0159】
リン系硬化促進剤としては、例えば、テトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムデカノエート、テトラブチルホスホニウムラウレート、ビス(テトラブチルホスホニウム)ピロメリテート、テトラブチルホスホニウムハイドロジェンヘキサヒドロフタレート、テトラブチルホスホニウム2,6-ビス[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノラート、ジ-tert-ブチルジメチルホスホニウムテトラフェニルボレート等の脂肪族ホスホニウム塩;メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、プロピルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、p-トリルトリフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラp-トリルボレート、トリフェニルエチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリス(3-メチルフェニル)エチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリス(2-メトキシフェニル)エチルホスホニウムテトラフェニルボレート、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等の芳香族ホスホニウム塩;トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン等の芳香族ホスフィン・ボラン複合体;トリフェニルホスフィン・p-ベンゾキノン付加反応物等の芳香族ホスフィン・キノン付加反応物;トリブチルホスフィン、トリ-tert-ブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、ジ-tert-ブチル(2-ブテニル)ホスフィン、ジ-tert-ブチル(3-メチル-2-ブテニル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等の脂肪族ホスフィン;ジブチルフェニルホスフィン、ジ-tert-ブチルフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、ブチルジフェニルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ-o-トリルホスフィン、トリ-m-トリルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、トリス(4-エチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-プロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4-イソプロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-tert-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,5-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4,6-トリメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチル-4-エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-tert-ブトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニル-2-ピリジルホスフィン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)アセチレン、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)ジフェニルエーテル等の芳香族ホスフィン等が挙げられる。
【0160】
ウレア系硬化促進剤としては、例えば、1,1-ジメチル尿素;1,1,3-トリメチル尿素、3-エチル-1,1-ジメチル尿素、3-シクロヘキシル-1,1-ジメチル尿素、3-シクロオクチル-1,1-ジメチル尿素等の脂肪族ジメチルウレア;3-フェニル-1,1-ジメチル尿素、3-(4-クロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(2-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジメチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-イソプロピルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メトキシフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-ニトロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-[4-(4-メトキシフェノキシ)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、3-[4-(4-クロロフェノキシ)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、3-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、N,N-(1,4-フェニレン)ビス(N’,N’-ジメチル尿素)、N,N-(4-メチル-1,3-フェニレン)ビス(N’,N’-ジメチル尿素)〔トルエンビスジメチルウレア〕等の芳香族ジメチルウレア等が挙げられる。
【0161】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられる。
【0162】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられる。イミダゾール系硬化促進剤の市販品としては、例えば、四国化成工業社製の「1B2PZ」、「2E4MZ」、「2MZA-PW」、「2MZ-OK」、「2MA-OK」、「2MA-OK-PW」、「2PHZ」、「2PHZ-PW」、「Cl1Z」、「Cl1Z-CN」、「Cl1Z-CNS」、「C11Z-A」;三菱ケミカル社製の「P200-H50」等が挙げられる。
【0163】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0164】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられる。アミン系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、味の素ファインテクノ社製の「MY-25」等が挙げられる。
【0165】
(E)硬化促進剤の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上、さらに好ましくは0.03質量%以上であり、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下である。
【0166】
<(F)任意の添加剤>
樹脂組成物は、上述した(A)~(E)成分に組み合わせて、更に任意の不揮発成分として、(F)任意の添加剤を含んでいてもよい。(F)任意の添加剤としては、例えば、熱可塑性樹脂((C)成分に該当するものは除く);重合開始剤;有機銅化合物、有機亜鉛化合物、有機コバルト化合物等の有機金属化合物;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオディングリーン、ジアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック等の着色剤;ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の重合禁止剤;シリコーン系レベリング剤、アクリルポリマー系レベリング剤等のレベリング剤;ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤;シリコーン系消泡剤、アクリル系消泡剤、フッ素系消泡剤、ビニル樹脂系消泡剤等の消泡剤;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;尿素シラン等の接着性向上剤;トリアゾール系密着性付与剤、テトラゾール系密着性付与剤、トリアジン系密着性付与剤等の密着性付与剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤等の酸化防止剤;スチルベン誘導体等の蛍光増白剤;フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤;リン系難燃剤(例えばリン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸化合物、赤リン)、窒素系難燃剤(例えば硫酸メラミン)、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤(例えば三酸化アンチモン)等の難燃剤;リン酸エステル系分散剤、ポリオキシアルキレン系分散剤、アセチレン系分散剤、シリコーン系分散剤、アニオン性分散剤、カチオン性分散剤等の分散剤;ボレート系安定剤、チタネート系安定剤、アルミネート系安定剤、ジルコネート系安定剤、イソシアネート系安定剤、カルボン酸系安定剤、カルボン酸無水物系安定剤等の安定剤;第三級アミン類等の光重合開始助剤;ピラリゾン類、アントラセン類、クマリン類、キサントン類、チオキサントン類等の光増感剤;が挙げられる。(F)任意の添加剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0167】
樹脂組成物層の溶融粘度及び重量減少率を調整する観点から、樹脂組成物層中の有機溶剤等の溶剤の量は少ないことが好ましい。樹脂組成物層中の溶剤の量(残留溶剤量)は、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下、さらにより好ましくは1.5質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。下限は特に制限はないが、0.0001質量%以上等とし得る。
【0168】
溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン等のケトン類、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルジグリコールアセテート等のエステル類、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0169】
樹脂組成物は、上記の成分のうち必要な成分を適宜混合し、また、必要に応じて三本ロール、ボールミル、ビーズミル、サンドミル等の混練手段、あるいはスーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の撹拌手段により混練または混合することにより調製することができる。
【0170】
樹脂組成物層の厚さは、プリント配線板の薄型化、及び当該樹脂組成物の硬化物が薄膜であっても絶縁性に優れた硬化物を提供できるという観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは55μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されないが、通常、5μm以上、10μm以上等とし得る。
【0171】
<その他の層>
一実施形態において、再配線層形成用樹脂シートは、さらに必要に応じて、その他の層を含んでいてもよい。斯かるその他の層としては、例えば、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)に設けられた保護フィルム等が挙げられる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを抑制することができる。
【0172】
<再配線層形成用樹脂シートの製造方法>
再配線層形成用樹脂シートは、例えば、溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーター等を用いて支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。溶剤については上述したものを用いることができる。
【0173】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂ワニス中の溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0174】
再配線層形成用樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。再配線層形成用樹脂シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0175】
<再配線層形成用樹脂シートの物性等>
本発明の再配線層形成用樹脂シートは、V900-V500、及び増粘率が前記の範囲にあるので、平滑性の高い部材と間の密着性に優れる硬化物を得ることができるという特性を示す。具体的には、樹脂組成物を180℃、90分間熱硬化させた硬化物は、表面の算術平均粗さ(Ra)が5nm~100nmである平滑性の高い部材との間の密着性に優れるという特性を示す。よって、前記硬化物は、平滑性の高い部材との間の密着性に優れる硬化物層をもたらす。密着性(ピール強度)は、好ましくは0.30kgf/cmを超える。密着性の上限値は、10kgf/cm以下等とし得る。密着性の測定は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0176】
本発明の再配線層形成用樹脂シートは、V900-V500、及び増粘率が前記の範囲にあるので、表面の算術平均粗さ(Ra)が5nm~100nmである平滑性の高い部材との間に発生するボイドを抑制できるという特性を示す。具体的には、樹脂組成物層を、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、温度100℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着することでポリイミドフィルムにラミネートする。ラミネート後、樹脂組成物層を180℃、90分間熱硬化させて硬化物を得る。このとき、硬化物の樹脂組成物層とポリイミドフィルムとの界面にボイドがない。ボイドの有無の評価は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0177】
本発明の再配線層形成用樹脂シートにおける樹脂組成物層は、通常、溶融粘度が低いという特性を示す。したがって、樹脂組成物層のラミネート時における埋め込み性及び密着性に優れる。樹脂組成物の60℃~200℃における最低溶融粘度は、好ましくは5000poise以下、より好ましくは3000poise以下、さらに好ましくは2000poise以下、さらにより好ましくは1600poise以下、特に好ましくは1400poise以下であり得る。その下限は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物層の厚み安定性を維持する観点から、好ましくは50poise以上、より好ましくは100poise以上、さらに好ましくは200poise以上、さらにより好ましくは300poise以上、特に好ましくは400poise以上であり得る。最低溶融粘度は、後述する実施例に記載の方法にて測定することができる。
【0178】
本発明の再配線層形成用樹脂シートにおける樹脂組成物層は、通常、シリコンナイトライドとの間の密着性に優れるという特性を示す。よって、シリコンナイトライドとの間の密着性に優れる硬化物層をもたらす。具体的には、樹脂組成物層を、シリコンナイトライド膜に接するようにラミネートする。ラミネート後、樹脂組成物層を180℃、90分間熱硬化させ、121.5℃、100%RHの環境下で放置する。100時間放置した後に室温に戻し、樹脂組成物層の硬化物表面にクロスカットを入れる。このとき、好ましくは、樹脂組成物層の硬化物及び下地界面に膨れが無く、クロスカット後の樹脂組成物層の硬化物に欠けが生じている状態であり、より好ましくは、樹脂組成物層の硬化物及び下地界面に膨れが無く、クロスカット後の樹脂組成物層の硬化物に欠けが生じていない状態である。シリコンナイトライドとの間の密着性の評価は、後述する実施例に記載の方法にて測定することができる。
【0179】
本発明の再配線層形成用樹脂シートにおける樹脂組成物層は、通常、樹脂組成物層中の樹脂の染み出しが抑制されるという特性を示す。よって、シリコンウエハ等と積層させても樹脂組成物層中の樹脂の染み出しが抑制されるので、取扱い性に優れる再配線層形成用樹脂シートをもたらす。染み出し性の測定方法の具体例は、再配線層形成用樹脂シートを、シリコンウエハにラミネートし、再配線層形成用樹脂シートの樹脂組成物層の外周部から染み出た樹脂がシリコンウエハの端部に接触するかを目視にて確認する。このとき、シリコンウエハにラミネート後、樹脂組成物層中の樹脂が染み出した部分がシリコンウエハの端部に接触しない。染み出し性は、後述する実施例に記載の方法にて測定することができる。
【0180】
本発明の再配線層形成用樹脂シートにおける樹脂組成物層は、溶剤の量が少ないので、通常、重量減少率が低いという特性を示す。よって、ボイドの発生が抑制された樹脂組成物層の硬化物層をもたらす。重量減少率は、好ましくは1.5%未満、より好ましくは1%未満である。下限は特に限定されないが、0.01%以上等とし得る。重量減少率は、後述する実施例に記載の方法にて測定することができる。
【0181】
本発明の再配線層形成用樹脂シートにおける樹脂組成物層は、通常、タック性が小さいという特性を示す。よって、ボイドの発生が抑制された樹脂組成物層の硬化物層をもたらす。具体的には、プローブタックテスターを用いて樹脂組成物層のタック力を測定する。その結果、好ましくは6N未満、より好ましくは5N以下、さらに好ましくは4N以下である。下限は特に限定されないが、0.1N以上等とし得る。タック性の評価は、後述する実施例に記載の方法にて測定することができる。
【0182】
本発明の再配線層形成用樹脂シートにおける樹脂組成物層は、通常、算術平均粗さ(Ra)が低くても、平滑性の高い部材との密着性に優れるという特性を示す。具体的には、樹脂組成物層の表面の算術平均粗さ(Ra)は、好ましくは500nm以下、より好ましくは450nm以下、さらに好ましくは400nm以下、300nm以下である。下限は特に限定されないが、1nm以上等とし得る。算術平均粗さは、後述する実施例に記載の方法にて測定することができる。
【0183】
本発明の再配線層形成用樹脂シートにおける樹脂組成物層は、通常、十点平均粗さ(Rz)が低くても、平滑性の高い部材との密着性に優れるという特性を示す。具体的には、樹脂組成物層の表面の十点平均粗さ(Rz)は、好ましくは10000nm以下、より好ましくは7500nm以下、さらに好ましくは5000nm以下である。下限は特に限定されないが、1nm以上等とし得る。十点平均粗さは、後述する実施例に記載の方法にて測定することができる。
【0184】
本発明の再配線形成用樹脂シートは、絶縁層及び配線層を積層させた多層構造からなる再配線層の絶縁層を形成するための樹脂シートとして好適に使用することができる。また、本発明の再配線形成用樹脂シートは、絶縁層上に形成される配線層を形成して再配線層を形成するための樹脂シートとして好適に使用することができる。本発明の再配線層形成用樹脂シートを用いて再配線層を形成することにより、半導体パッケージが、ファンイン(Fan-In)型パッケージであるかファンアウト(Fan-Out)型パッケージであるかの別を問わず、表面の算術平均粗さ(Ra)が5nm~100nmである平滑性の高い部材との間のボイドの発生の抑制及び該部材との間の密着性に優れる半導体パッケージを提供することができる。
【0185】
[半導体チップパッケージ及びその製造方法]
本発明の半導体チップパッケージは、本発明の再配線層形成用樹脂シートにおける樹脂組成物層の硬化物により形成された硬化物層と、該硬化物層上に搭載された半導体チップとを含む。一実施形態において、本発明の半導体チップパッケージは、ファンアウト(Fan-Out)型パッケージである。本発明の再配線層形成用樹脂シートは、ファンアウト型パネルレベルパッケージ(FOPLP)、ファンアウト型ウェハレベルパッケージ(FOWLP)の別を問わず適用できる。一実施形態において、本発明の半導体チップパッケージは、ファンアウト型ウェハレベルパッケージである。該硬化物層は、再配線層における絶縁層になり得る。
【0186】
本発明の半導体チップパッケージがファンアウト型ウェハレベルパッケージである場合、半導体パッケージは、例えば、チップファースト工法、又はRDL(Redistibution Layer)ファースト工法により製造することができる。
【0187】
チップファースト工法の第1実施形態は、
(1-1)基材に仮固定フィルムを積層する工程、
(1-2)金属ピラーを形成する工程、
(1-3)半導体チップのバンプ側とは反対側の面を、仮固定フィルム上に仮固定する工程、
(1-4)半導体チップ上に封止層を形成する工程、
(1-5)封止層を研磨する工程、及び
(1-6)研磨した封止層側の面に再配線層を形成する工程、を含む。
【0188】
また、チップファースト工法の第1実施形態は、
(1-7)基材及び仮固定フィルムを剥離する工程、
(1-8)再配線層上にソルダーレジスト層を形成する工程、
(1-9)複数の半導体チップパッケージを、個々の半導体チップパッケージにダイシングし、個片化する工程、を含んでいてもよい。
【0189】
工程(1-1)~(1-9)は、この順で行ってもよく、順序を適宜変更して行ってもよい。また、必要に応じて、工程(1-1)~(1-9)のいずれかを省略して行ってもよい。また、工程(1-3)~(1-9)における半導体チップは、金属ピラーが形成された半導体チップであってもよい。
【0190】
<工程(1-1)>
工程(1-1)は、基材に仮固定フィルムを積層する工程である。
【0191】
基材としては、例えば、シリコンウェハ;ガラスウェハ;ガラス基板;銅、チタン、ステンレス、冷間圧延鋼板(SPCC)等の金属基板;FR-4基板等の、ガラス繊維にエポキシ樹脂等をしみこませ熱硬化処理した基板;BT樹脂等のビスマレイミドトリアジン樹脂からなる基板;ポリイミド製の基板などが挙げられる。
【0192】
仮固定フィルムは、半導体チップから剥離でき、且つ、半導体チップを仮固定することができる任意の材料を用いうる。市販品としては、日東電工社製「リヴァアルファ」等が挙げられる。
【0193】
基材と仮固定フィルムとの積層は、例えば、仮固定フィルムを基材に加熱圧着することにより行うことができる。仮固定フィルムを基材に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール等)が挙げられる。なお、加熱圧着部材を仮固定フィルムに直接プレスするのではなく、基材の表面凹凸に仮固定フィルムが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0194】
基材と仮固定フィルムとの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施される。
【0195】
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター、バッチ式真空加圧ラミネーター等が挙げられる。
【0196】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を仮固定フィルム側からプレスすることにより、積層された仮固定フィルムの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0197】
<工程(1-2)>
工程(1-2)は、半導体チップのバンプ側に金属ピラーを形成する工程である。工程(1-2)は工程(1-3)を実施する前に行うことが好ましい。金属ピラーは、銅、金、白金、パラジウム、銀、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含むことが好ましい。金属ピラーは、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金から形成された層が挙げられる。中でも、金属ピラーの形成の汎用性の観点から、単金属層が好ましく、銅がより好ましい。
【0198】
金属ピラーが伸びる方向に対して垂直な断面形状としては、例えば、円形状、楕円状、矩形状等が挙げられ、円形状が好ましい。断面形状が円形状の場合、ピラー径は、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上であり、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下、さらに好ましくは100μm以下である。
【0199】
金属ピラーの高さは、半導体チップパッケージの大きさ等により適宜変更でき、例えば、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは5μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは75μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。
【0200】
金属ピラーは、例えば、半導体チップ上にドライフィルムを積層する工程、フォトマスクを用いてドライフィルムに対して所定の条件で露光及び現像を行ってパターンを形成してパターンドライフィルムを得る工程、現像したパターンドライフィルムをめっきマスクとして電解めっき法等のメッキ法によって金属ピラーを形成する工程、及び、パターンドライフィルムを剥離する工程を含む方法によって形成できる。ドライフィルムとしては、フォトレジスト組成物からなる感光性のドライフィルムを用いることができ、例えば、ノボラック樹脂、アクリル樹脂等の樹脂で形成されたドライフィルムを用いることができる。半導体チップとドライフィルムとの積層条件は、基材と仮固定フィルムとの積層の条件と同様でありうる。ドライフィルムの剥離は、例えば、水酸化ナトリウム溶液等のアルカリ性の剥離液を使用して実施することができる。
【0201】
金属ピラーを形成後、必要に応じて、金属ピラーが形成された半導体チップを個々にダイシングし、個片化してもよい。金属ピラーが形成された半導体チップをダイシングする方法は特に限定されない。
【0202】
<工程(1-3)>
工程(1-3)は、半導体チップのバンプ側とは反対側の面を、仮固定フィルム上に仮固定する工程である。半導体チップの仮固定は、例えば、フリップチップボンダー、ダイボンダー等の装置を用いて行うことができる。半導体チップの配置のレイアウト及び配置数は、仮固定フィルムの形状、大きさ、目的とする半導体チップパッケージの生産数等に応じて適切に設定できる。例えば、複数行で、かつ複数列のマトリックス状に半導体チップを整列させて、仮固定してもよい。
【0203】
<工程(1-4)>
工程(1-4)は、半導体チップ上に封止層を形成する工程である。封止層は、例えば、感光性樹脂組成物又は熱硬化性樹脂組成物等の封止用樹脂組成物によって形成しうる。この封止層は、上述した樹脂組成物の硬化物によって形成してもよい。
【0204】
封止層は、通常、半導体チップ上に、封止用樹脂組成物からなる封止用樹脂組成物層を形成する工程と、この封止用樹脂組成物層を熱硬化させて封止層を形成する工程とを含む方法で形成する。
【0205】
封止用樹脂組成物層の形成は、圧縮成型法によって行うことが好ましい。圧縮成型法では、通常、半導体チップ及び封止用樹脂組成物を型に配置し、その型内で封止用樹脂組成物に圧力及び必要に応じて熱を加えて、半導体チップを覆う封止用樹脂組成物層を形成する。
【0206】
圧縮成型法の具体的な操作は、例えば、下記のようにしうる。圧縮成型用の型として、上型及び下型を用意する。また、前記のように仮固定フィルム上に仮固定された半導体チップに、封止用樹脂組成物を塗布する。封止用樹脂組成物を塗布された半導体チップを、基材及び仮固定フィルムと一緒に、下型に取り付ける。その後、上型と下型とを型締めして、封止用樹脂組成物に熱及び圧力を加えて、圧縮成型を行う。
【0207】
また、圧縮成型法の具体的な操作は、例えば、下記のようにしてもよい。圧縮成型用の型として、上型及び下型を用意する。下型に、封止用樹脂組成物を載せる。また、上型に、半導体チップを、基材及び仮固定フィルムと一緒に取り付ける。その後、下型に載った封止用樹脂組成物が上型に取り付けられた半導体チップに接するように上型と下型とを型締めし、熱及び圧力を加えて、圧縮成型を行う。
【0208】
成型条件は、封止用樹脂組成物の組成により異なり、良好な封止が達成されるように適切な条件を採用できる。例えば、成型時の型の温度は、封止用樹脂組成物が優れた圧縮成型性を発揮できる温度が好ましく、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、特に好ましくは120℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは170℃以下、特に好ましくは150℃以下である。また、成形時に加える圧力は、好ましくは1MPa以上、より好ましくは3MPa以上、特に好ましくは5MPa以上であり、好ましくは50MPa以下、より好ましくは30MPa以下、特に好ましくは20MPa以下である。キュアタイムは、好ましくは1分以上、より好ましくは2分以上、特に好ましくは5分以上であり、好ましくは60分以下、より好ましくは30分以下、特に好ましくは20分以下である。通常、封止用樹脂組成物層の形成後、型は取り外される。型の取り外しは、封止用樹脂組成物層の熱硬化前に行ってもよく、熱硬化後に行ってもよい。
【0209】
封止用樹脂組成物層の形成は、封止用樹脂シートと半導体チップとを積層することによって行ってもよい。例えば、封止用樹脂シートの封止用樹脂組成物層と半導体チップとを加熱圧着することにより、半導体チップ上に封止用樹脂組成物層を形成することができる。封止用樹脂シートと半導体チップとの積層は、通常、基材の代わりに半導体チップを用いて、基材と仮固定フィルムとの積層と同様にして行うことができる。
【0210】
半導体チップ上に封止用樹脂組成物層を形成した後で、この封止用樹脂組成物層を熱硬化させて、半導体チップを覆う封止層を得る。これにより、封止用樹脂組成物の硬化物による半導体チップの封止が行われる。
【0211】
封止用樹脂組成物層の熱硬化条件は、封止用樹脂組成物の種類等によっても異なるが、硬化温度は好ましくは120℃~240℃、より好ましくは150℃~220℃、さらに好ましくは170℃~210℃である。硬化時間は好ましくは5分間~120分間、より好ましくは10分間~100分間、さらに好ましくは15分間~100分間とすることができる。
【0212】
封止用樹脂組成物層を熱硬化させる前に、封止用樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、封止用樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上115℃以下、より好ましくは70℃以上110℃以下)の温度にて、封止用樹脂組成物層を5分間以上(好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間、さらに好ましくは15分間~100分間)予備加熱してもよい。
【0213】
<工程(1-5)>
工程(1-5)は、封止層を研磨する工程であり、研磨を行うことで封止層の表面の平滑性を向上させる。工程(1-4)で形成された封止層が半導体チップのバンプ又は金属ピラーを覆っていた場合、工程(1-5)における研磨によって、バンプを露出させてもよい。
【0214】
研磨方法としては、例えば、CMP(化学的機械研磨)、バフ研磨、ベルト研磨等が挙げられる。市販されているバフ研磨装置としては石井表記社製「NT-700IM」等が挙げられる。研磨条件は当業者に公知の方法に従って実施してよい。
【0215】
<工程(1-6)>
工程(1-6)は、研磨した封止層側の面に再配線層を形成する工程であり、研磨により露出した半導体チップのバンプ又は金属ピラーに再配線層を接合する。再配線層とは、絶縁層及び配線層を積層させた多層構造の層をいい、絶縁層及び配線層を交互に積み上げた構造(ビルドアップ構造)の態様も含みうる。工程(1-6)の詳細は、封止層の研磨した側の面に絶縁層を形成後、該絶縁層上に配線層を形成し再配線層を形成する。通常、絶縁層にはビアホールが形成され、このビアホールを通じて配線層が半導体チップに電気的に接続される。再配線層における絶縁層は、通常、半導体チップ上に樹脂組成物層を形成する工程と、この樹脂組成物層を硬化させて絶縁層を形成する工程とを含む方法で形成できる。
【0216】
絶縁層は、本発明の再配線層形成用樹脂シートを用いて形成する。詳細は、封止層上に再配線層形成用樹脂シートを積層することによって、封止層上に樹脂組成物層を形成する。封止層と再配線層形成用樹脂シートとの積層は、支持体側から再配線層形成用樹脂シートを封止層に加熱圧着することにより行うことができる。再配線層形成用樹脂シートを封止層に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール等)が挙げられる。なお、加熱圧着部材を再配線層形成用樹脂シートに直接プレスするのではなく、封止層の表面凹凸に再配線層形成用樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスしてもよい。
【0217】
封止層と再配線層形成用樹脂シートとの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃以上、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは90℃以上であり、好ましくは160℃以下、より好ましくは140℃以下、さらに好ましくは100℃以下である。
【0218】
加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施される。
【0219】
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、基材と仮固定フィルムとの積層に用い得る市販の真空ラミネーターと同様のものを用いることができる。
【0220】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を再配線層形成用樹脂シート側からプレスすることにより、積層された再配線層形成用樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0221】
積層後、樹脂組成物層を硬化して、樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層を形成する。樹脂組成物層の硬化は、通常、熱硬化によって行う。樹脂組成物層の具体的な硬化条件は、樹脂組成物の種類によっても異なりうる。一例において、硬化温度は、好ましくは120℃~240℃、より好ましくは150℃~220℃、さらに好ましくは170℃~210℃である。硬化時間は、好ましくは5分間~120分間、より好ましくは10分間~100分間、さらに好ましくは15分間~100分間でありうる。
【0222】
工程(1-6)では、樹脂組成物層の熱硬化の前に、樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱することを含むことが好ましい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、通常50℃~150℃、好ましくは60℃~140℃、より好ましくは70℃~130℃の温度にて、樹脂組成物層を通常5分間以上、好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間、さらに好ましくは15分間~100分間予備加熱してもよい。
【0223】
絶縁層を形成した後、半導体チップと配線層とを層間接続するためのビアホールを、絶縁層に形成してもよい。ビアホールの形成方法としては、例えば、レーザー照射、エッチング、メカニカルドリリング等が挙げられる。中でも、レーザー照射が好ましい。レーザー照射は、炭酸ガスレーザー、UV-YAGレーザー、エキシマレーザー等の光源を用いる適切なレーザー加工機を用いて行うことができる。
【0224】
ビアホールの形状は、特に限定されないが、一般的には円形(略円形)とされる。ビアホールのトップ径は、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下であり、好ましくは3μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上である。ここで、ビアホールのトップ径とは、再配線層における絶縁層の表面でのビアホールの開口の直径をいう。
【0225】
再配線層形成用樹脂シートにおける支持体は、熱硬化の前に剥離してもよく、熱硬化の後に剥離してもよい。
【0226】
また、絶縁層と半導体チップとの間には、ポリイミド等の絶縁性の接着剤が介在していてもよい。
【0227】
絶縁層を形成した後、絶縁層上に配線層を形成することで再配線層を形成する。配線層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、配線層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。配線層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、配線層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
【0228】
配線層は、単層構造であってもよく、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。
【0229】
配線層の厚さは、所望のプリント配線板のデザインによるが、一般に3μm~35μm、好ましくは5μm~30μmである。
【0230】
配線層は、メッキによって形成することが好ましい。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の方法により絶縁層の表面にメッキして、所望の配線パターンを有する配線層を形成することができる。製造の簡便性の観点から、セミアディティブ法により形成することが好ましい。以下、配線層をセミアディティブ法により形成する例を示す。
【0231】
絶縁層の表面に、無電解メッキによりメッキシード層を形成する。次いで、形成されたメッキシード層上に、所望の配線パターンに対応してメッキシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出したメッキシード層上に、電解メッキにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なメッキシード層をエッチング等により除去して、所望の配線パターンを有する配線層を形成することができる。
【0232】
配線層は、パターン加工されていてもよい。この際、配線層のライン(回路幅)/スペース(回路間の幅)比は、特に制限されないが、好ましくは20/20μm以下(即ちピッチが40μm以下)、より好ましくは10/10μm以下、さらに好ましくは5/5μm以下、よりさらに好ましくは1/1μm以下、特に好ましくは0.5/0.5μm以上である。ピッチは、配線層の全体にわたって同一である必要はない。配線層の最小ピッチは、例えば、40μm以下、36μm以下、又は30μm以下であってもよい。
【0233】
また、工程(1-6)を繰り返し行い、絶縁層及び配線層を交互に積み上げて(ビルドアップ)もよい。
【0234】
<工程(1-7)>
工程(1-7)は、基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程である。剥離方法は、仮固定フィルムの材質に応じた適切な方法を採用することが望ましい。剥離方法としては、例えば、仮固定フィルムを加熱、発泡又は膨張させて剥離する方法が挙げられる。また、剥離方法としては、例えば、基材を通して仮固定フィルムに紫外線を照射して、仮固定フィルムの粘着力を低下させて剥離する方法が挙げられる。
【0235】
仮固定フィルムを加熱、発泡又は膨張させて剥離する方法において、加熱条件は、通常、100℃~250℃で1秒間~90秒間又は5分間~15分間である。また、紫外線を照射して仮固定フィルムの粘着力を低下させて剥離する方法において、紫外線の照射量は、通常、10mJ/cm2~1000mJ/cm2である。
【0236】
<工程(1-8)>
工程(1-8)は、再配線層上にソルダーレジスト層を形成する工程である。この工程は、半導体チップパッケージの態様によっては、必要に応じて省略することができる。
【0237】
ソルダーレジスト層の材料は、絶縁性を有する任意の材料を用いることができる。中でも、半導体チップパッケージの製造のしやすさの観点から、感光性樹脂及び熱硬化性樹脂が好ましい。
【0238】
また、工程(1-8)では、必要に応じて、バンプを形成するバンピング加工を行ってもよい。バンピング加工は、半田ボール、半田めっきなどの方法で行うことができる。また、バンピング加工におけるビアホールの形成は、工程(1-6)と同様に行うことができる。
【0239】
<工程(1-9)>
工程(1-9)は、複数の半導体チップパッケージを個々の半導体チップパッケージにダイシングし、個片化する工程である。半導体チップパッケージを個々の半導体チップパッケージにダイシングする方法は特に限定されない。
【0240】
チップファースト工法の第2実施形態は、例えば、
(2-1)基材に仮固定フィルムを積層する工程、
(2-2)金属ピラーを形成する工程、
(2-3)半導体チップのバンプ側の面を、仮固定フィルム上に仮固定する工程、
(2-4)半導体チップ上に封止層を形成する工程、
(2-5)基材及び仮固定フィルムを剥離する工程、及び
(2-6)半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に再配線層を形成する工程、を含む。
【0241】
また、チップファースト工法の第2実施形態は、
(2-7)再配線層上にソルダーレジスト層を形成する工程、
(2-8)複数の半導体チップパッケージを、個々の半導体チップパッケージにダイシングし、個片化する工程、を含んでいてもよい。
工程(2-1)~(2-8)は、この順で行ってもよく、順序を適宜変更して行ってもよい。また、必要に応じて、工程(2-1)~(2-8)のいずれかを省略して行ってもよい。また、工程(2-3)~(2-8)における半導体チップは、金属ピラーが形成された半導体チップであってもよい。
【0242】
<工程(2-1)>
工程(2-1)は、基材に仮固定フィルムを積層する工程であり、工程(1-1)と同じである。
【0243】
<工程(2-2)>
工程(2-2)は、半導体チップのバンプ側に金属ピラーを形成する工程であり、工程(1-2)と同じである。
【0244】
<工程(2-3)>
工程(2-3)は、半導体チップのバンプ側の面を、仮固定フィルム上に仮固定する工程であり、半導体チップを仮固定する面以外は工程(1-3)と同じである。
【0245】
<工程(2-4)>
工程(2-4)は、半導体チップ上に封止層を形成する工程であり、工程(1-4)と同じである。工程(2-4)後、必要に応じて封止層を研磨してもよい。
【0246】
<工程(2-5)>
工程(2-5)は、基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程であり、工程(1-8)と同じである。
【0247】
<工程(2-6)>
工程(2-6)は、半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に、再配線層を形成する工程である。再配線層の形成は、工程(1-6)と同じ方法にて形成することができる。再配線層における絶縁層を形成した後、半導体チップと配線層とを層間接続するために絶縁層にビアホールを形成してもよい。ビアホールの形成方法は上記したとおりである。通常、再配線層は、当該再配線層の配線層が半導体チップと電気的に接続されるように形成される。
【0248】
<工程(2-7)>
工程(2-7)は、再配線層上にソルダーレジスト層を形成する工程であり、工程(1-8)と同じである。この工程は、製造し得る半導体チップパッケージの態様によっては、必要に応じて省略することができる。
【0249】
<工程(2-8)>
工程(2-8)は、複数の半導体チップパッケージを、個々の半導体チップパッケージにダイシングし、個片化する工程であり、工程(1-9)と同じである。
【0250】
RDLファースト工法の第1実施形態は、例えば、
(3-1)基材上に再配線層を形成する工程、
(3-2)金属ピラーを形成する工程、
(3-3)半導体チップを再配線層と接合する工程、及び
(3-4)半導体チップ上に封止層を形成する工程、を含む。
【0251】
また、RDLファースト工法の第1実施形態は、
(3-5)複数の半導体チップパッケージを、個々の半導体チップパッケージにダイシングし、個片化する工程、を含んでいてもよい。
工程(3-1)~(3-5)は、この順で行ってもよく、順序を適宜変更して行ってもよい。また、必要に応じて、工程(3-1)~(3-5)のいずれかを省略して行ってもよい。また、工程(3-3)~(3-5)における半導体チップは、金属ピラーが形成された半導体チップであってもよい。
【0252】
<工程(3-1)>
工程(3-1)は、基材上に再配線層を形成する工程である。基材は、工程(1-1)における基材と同じである。
【0253】
再配線層の形成は、工程(1-6)と同じ方法にて形成することができる。再配線層における絶縁層を形成した後、半導体チップと配線層とを層間接続するために、絶縁層にビアホールを形成してもよい。ビアホールの形成方法は上記したとおりである。
【0254】
<工程(3-2)>
工程(3-2)は、半導体チップのバンプ側に金属ピラーを形成する工程であり、工程(1-2)と同じである。
【0255】
<工程(3-3)>
工程(3-3)は、半導体チップのバンプ側の面を再配線層の絶縁層と接合する工程である。半導体チップと再配線層との接合は、工程(1-6)と同じ方法にて行うことができる。また、再配線層の絶縁層と半導体チップとの間には、ポリイミド等の絶縁性の接着剤が介在していてもよい。通常、半導体チップは、再配線層の配線層と半導体チップとが電気的に接続されるように、再配線層に接合される。
【0256】
<工程(3-4)>
工程(3-4)は、半導体チップ上に封止層を形成する工程であり、工程(1-4)と同じである。工程(3-4)後、必要に応じて封止層を研磨してもよい。
【0257】
<工程(3-5)>
工程(3-5)は、複数の半導体チップパッケージを、個々の半導体チップパッケージにダイシングし、個片化する工程であり、工程(1-9)と同じである。
【0258】
RDLファースト工法の第2実施形態は、例えば、
(4-1)基材に仮固定フィルムを積層する工程、
(4-2)仮固定フィルム上に再配線層を形成する工程、
(4-3)金属ピラーを形成する工程、
(4-4)半導体チップを再配線層と接合する工程、
(4-5)半導体チップ上に封止層を形成する工程、及び
(4-6)基材及び仮固定フィルムを剥離する工程、を含む。
【0259】
また、RDLファースト工法の第2実施形態は、
(4-7)再配線層上にソルダーレジスト層を形成する工程、
(4-8)複数の半導体チップパッケージを、個々の半導体チップパッケージにダイシングし、個片化する工程、を含んでいてもよい。
工程(4-1)~(4-8)は、この順で行ってもよく、順序を適宜変更して行ってもよい。また、必要に応じて、工程(4-1)~(4-8)のいずれかを省略して行ってもよい。また、工程(4-4)~(4-8)における半導体チップは、金属ピラーが形成された半導体チップであってもよい。
【0260】
<工程(4-1)>
工程(4-1)は、基材に仮固定フィルムを積層する工程であり、工程(1-1)と同じである。
【0261】
<工程(4-2)>
工程(4-2)は、仮固定フィルム上に再配線層を形成する工程である。再配線層の形成は、工程(1-6)と同じ方法にて形成することができる。
【0262】
<工程(4-3)>
工程(4-3)は、半導体チップのバンプ側に金属ピラーを形成する工程であり、工程(1-2)と同じである。
【0263】
<工程(4-4)>
工程(4-4)は、半導体チップのバンプ側の面を再配線層における絶縁層と接合する工程である。半導体チップと絶縁層との接合は、工程(1-6)と同じ方法にて行うことができる。また、絶縁層と半導体チップとの間には、ポリイミド等の絶縁性の接着剤が介在していてもよい。通常、半導体チップは、再配線層の配線層と半導体チップとが電気的に接続されるように、再配線層に接合される。
【0264】
<工程(4-5)>
工程(4-5)は、半導体チップ上に封止層を形成する工程であり、工程(1-4)と同じである。工程(4-5)後、必要に応じて封止層を研磨してもよい。
【0265】
<工程(4-6)>
工程(4-6)は、基材及び仮固定フィルムを再配線層から剥離する工程であり、工程(1-7)と同じ方法にて剥離することができる。
【0266】
<工程(4-7)>
工程(4-7)は、再配線層上にソルダーレジスト層を形成する工程であり、工程(1-8)と同じである。この工程は、製造し得る半導体チップパッケージの態様によっては、必要に応じて省略することができる。
【0267】
<工程(4-8)>
工程(4-8)は、複数の半導体チップパッケージを、個々の半導体チップパッケージにダイシングし、個片化する工程であり、工程(1-9)と同じである。
【0268】
[半導体装置]
上述した半導体チップパッケージが実装される半導体装置としては、例えば、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、スマートフォン、タブレット型デバイス、ウェラブルデバイス、デジタルカメラ、医療機器、及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【実施例0269】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において、「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0270】
<合成例1:高分子樹脂Aの合成>
撹拌機、分水器、温度計及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、芳香族テトラカルボン酸二無水物(SABICジャパン社製「BisDA-1000」、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ビスフタル酸二無水物)65.0g、シクロヘキサノン266.5g、及びメチルシクロヘキサン44.4gを仕込み、溶液を60℃まで加熱した。次いで、ダイマージアミン(クローダジャパン社製「PRIAMINE 1075」)43.7g、及び1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン5.4gを滴下した後、140℃で1時間かけてイミド化反応させた。これにより、高分子樹脂A(不揮発分30質量%)を得た。また、高分子樹脂Aの重量平均分子量は、25,000であった。
【0271】
<合成例2:高分子樹脂Bの合成>
撹拌機、分水器、温度計及び窒素ガス導入管を備えた反応容器にプリプラスト3196(ヒドロキシル基末端、ダイマー酸骨格由来の炭化水素基を含有するポリエステルポリオール、数平均分子量=3000、ヒドロキシル基当量=1516g/eq.、固形分100質量%:クローダジャパン社製)69gと、イプゾール150(芳香族炭化水素系混合溶媒:出光石油化学社製)40g、ジブチル錫ラウレート0.005gを混合し均一に溶解させた。均一になったところで50℃に昇温し、更に撹拌しながら、イソホロンジイソシアネート(エボニックデグサジャパン社製、IPDI、イソシアネート基当量=113g/eq)8gを添加し約3時間反応を行った。次いで、この反応物を室温まで冷却してから、これにクレゾールノボラック樹脂(KA-1160、DIC社製、水酸基当量=117g/eq.)23gと、エチルジグリコールアセテート(ダイセル社製)60gを添加し、攪拌しながら80℃まで昇温し、約4時間反応を行った。FT-IRより2250cm-1のNCOピークの消失の確認を行った。NCOピーク消失の確認をもって反応の終点とみなし、反応物を室温まで降温してから100メッシュの濾布で濾過して、ダイマー酸骨格由来の炭化水素基及びフェノール性水酸基を有する高分子樹脂B(不揮発分50質量%)を得た。数平均分子量は7000であった。
【0272】
<合成例3:高分子樹脂Cの合成>
環流冷却器を連結した水分定量受器、窒素導入管、及び攪拌器を備えた、500mLのセパラブルフラスコを用意した。このフラスコに、4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)20.3g、γ-ブチロラクトン200g、トルエン20g、及び、5-(4-アミノフェノキシ)-3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,3-トリメチルインダン29.6gを加えて、窒素気流下で45℃にて2時間攪拌して、反応を行った。
【0273】
次いで、この反応溶液を昇温し、約160℃に保持しながら、窒素気流下で縮合水をトルエンとともに共沸除去した。水分定量受器に所定量の水がたまっていること、及び水の流出が見られなくなっていることを確認した。確認後、反応溶液を更に昇温し、200℃で1時間攪拌した。その後、冷却して、1,1,3-トリメチルインダン骨格を有するポリイミド樹脂を20質量%含むワニスを得た。得られた高分子樹脂Cは、下記式(X1)で表される繰り返し単位及び(X2)で示す繰り返し単位を有していた。また、前記の高分子樹脂Cの重量平均分子量は、12000であった。
【化7】
【0274】
<合成例4:高分子樹脂Dの合成>
反応容器にGI-1000(2官能性ヒドロキシ基末端水添ポリブタジエン、数平均分子量=1500、ヒドロキシ基当量=830g/eq.、日本曹達社製)46gと、イプゾール150(芳香族炭化水素系混合溶媒:出光石油化学社製)40g、ジブチル錫ラウレート0.005gを混合し均一に溶解させた。均一になったところで50℃に昇温し、更に撹拌しながら、イソホロンジイソシアネート(イソシアネート基当量=113g/eq.、エボニックデグサジャパン社製IPDI)14gを添加し約3時間反応を行った。次いで、この反応物を室温まで冷却してから、これにクレゾールノボラック樹脂KA-1160(水酸基当量=117g/eq.、DIC社製)40gと、エチルジグリコールアセテート(ダイセル社製)60gを添加し、攪拌しながら80℃まで昇温し、約4時間反応を行った。FT-IRより2250cm-1のNCOピークの消失の確認を行った。NCOピーク消失の確認をもって反応の終点とみなし、反応物を室温まで降温してから100メッシュの濾布で濾過して、高分子樹脂D(不揮発分50質量%)を得た。高分子樹脂Dの数平均分子量は3000であった。
【0275】
<使用したマレイミド化合物>
マレイミド化合物A:発明協会公開技報公技番号2020-500211号の合成例1に記載の方法で合成された下記式(1)で表されるマレイミド化合物A(Mw/Mn=1.81、t’’=1.47(主に1、2又は3))のMEK(メチルエチルケトン)溶液(不揮発成分62質量%)
【化8】
【0276】
<使用した無機充填材>
無機充填材1:平均粒径0.3μm、比表面積10m2/gの球状シリカ(アドマテックス社製「SO-C1」)にシランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理したもの。
無機充填材2:平均粒径0.5μm、比表面積5.7m2/gの球状シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」)にシランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理したもの。
【0277】
<実施例1>
ビスフェノール型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ZX-1059」、ビスフェノールA型とビスフェノールF型の1:1混合品、エポキシ当量169g/eq.)3部、ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製「HP-4032D」、1,6-ビス(グリシジルオキシ)ナフタレン、エポキシ当量約145g/eq.)3部、エポキシ樹脂(ナガセケムテックス社製「EX-991L」、エポキシ当量450g/eq.)1部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC-3100」、エポキシ当量258g/eq.)1部、無機充填材2 85部、カルボジイミド系硬化剤(日清紡ケミカル社製「V-03」、活性基当量約216g/eq.、不揮発成分50質量%のトルエン溶液)2部、活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC8150-62T」、活性基当量約229g/eq.、不揮発成分62%のトルエン溶液)4.8部、フェノール系硬化剤(DIC社製「LA-3018-50P」、活性基当量約151g/eq.、固形分50%の2-メトキシプロパノール溶液)6部、高分子樹脂A 23.3部、マレイミド化合物(信越化学工業社製液状ビスマレイミド「SLK-6895-M90」、不揮発成分90%質量%のMEK溶液、マレイミド基当量345g/eq.)1.1部、硬化促進剤(四国化成工業社製「1B2PZ」、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール)0.05部、シクロヘキサノン7部、メチルエチルケトン6部をミキサーを用いて均一に分散し、樹脂ワニスを得た。
【0278】
次いで、支持体としてのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製「ルミラーT6AM」、厚さ38μm)上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが50μmとなるように樹脂ワニスを均一に塗布し、80℃~120℃(平均100℃)で6分間乾燥させて、樹脂組成物層を形成した。粗面を有する保護フィルム(ポリプロピレンフィルム、王子エフテックス社製「アルファンMA-430」、厚さ20μm)を用意し、その保護フィルムの粗面を樹脂組成物層に貼り合わせて、支持体/樹脂組成物層/保護フィルムの層構成を有する樹脂シートを得た。
【0279】
<実施例2>
実施例1において、
高分子樹脂Aの量を、23.3部から30部に変え、
硬化促進剤(四国化成工業社製「1B2PZ」、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール)の量を、0.05部から0.1部に変えた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、樹脂ワニス及び樹脂シートを作製した。
【0280】
<実施例3>
ビスフェノール型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ZX-1059」、ビスフェノールA型とビスフェノールF型の1:1混合品、エポキシ当量169g/eq.)3部、ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製「HP-4032D」、1,6-ビス(グリシジルオキシ)ナフタレン、エポキシ当量約145g/eq.)3部、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(DIC社製「HP-6000L」、エポキシ当量215/eq.)3部、無機充填材2 90部、カルボジイミド系硬化剤(日清紡ケミカル社製「V-03」、活性基当量約216、不揮発成分50質量%のトルエン溶液)2部、活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC-8000L-65T」、活性基当量約223g/eq.、不揮発成分65質量%のMEK溶液)4.61部、フェノール系硬化剤(DIC社製「KA-1163」、フェノール性水酸基当量(活性基当量)118g/eq.)3部、高分子樹脂B 14部、マレイミド化合物(信越化学工業社製液状ビスマレイミド「SLK-6895-M90」、不揮発成分90%質量%のMEK溶液、マレイミド基当量345g/eq.)1.1部、硬化促進剤(四国化成工業社製「1B2PZ」、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール)0.05部、シクロヘキサノン7部、メチルエチルケトン6部をミキサーを用いて均一に分散し、樹脂ワニスを得た。次いで実施例1と同様の方法で樹脂シートを作製した。
【0281】
<実施例4>
実施例3において、高分子樹脂B 14部を、高分子樹脂C 35部に変えた。以上の事項以外は実施例3と同様にして、樹脂ワニス及び樹脂シートを作製した。
【0282】
<実施例5>
実施例4において、無機充填材2 90部を、無機充填材1 65部に変えた。以上の事項以外は実施例3と同様にして、樹脂ワニス及び樹脂シートを作製した。
【0283】
<実施例6>
ビスフェノール型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ZX-1059」、ビスフェノールA型とビスフェノールF型の1:1混合品、エポキシ当量169g/eq.)3部、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(DIC社製「HP-6000L」、エポキシ当量215/eq.)3部、グリシジルアミン型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「JER630」、エポキシ当量95g/eq.)1部、無機充填材2 90部、カルボジイミド系硬化剤(日清紡ケミカル社製「V-03」、活性基当量約216g/eq.、不揮発成分50質量%のトルエン溶液)4部、活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC8150-62T」、活性基当量約229g/eq.、不揮発成分62%のトルエン溶液)4.8部、フェノール系硬化剤(DIC社製「LA-3018-50P」、活性基当量約151g/eq.、固形分50%の2-メトキシプロパノール溶液)6部、高分子樹脂A 23.3部、マレイミド化合物(信越化学工業社製液状ビスマレイミド「SLK-6895-M90」、不揮発成分90%質量%のMEK溶液、マレイミド基当量345g/eq.)1.1部、硬化促進剤(四国化成工業社製「1B2PZ」、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール)0.05部、シクロヘキサノン7部、メチルエチルケトン6部をミキサーを用いて均一に分散し、樹脂ワニスを得た。次いで実施例1と同様の方法で樹脂シートを作製した。
【0284】
<実施例7>
実施例1において、
高分子樹脂Aの量を、23.3部から20部に変え、
マレイミド化合物(信越化学工業社製液状ビスマレイミド「SLK-6895-M90」、不揮発成分90%質量%のMEK溶液、マレイミド基当量345g/eq.)1.1部を、マレイミド化合物A 1.61部に変えた。
以上の事項以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス及び樹脂シートを作製した。
【0285】
<実施例8>
実施例7において、
高分子樹脂A 20部を、高分子樹脂B 12部に変え、
マレイミド化合物A 1.61部を、ビフェニルアラルキル型マレイミド樹脂(日本化薬製「MIR-3000-70MT」、マレイミド基当量:275g/eq.、不揮発分70%のMEK/トルエン混合溶液)1.43部に変えた。
以上の事項以外は、実施例7と同様にして樹脂ワニス及び樹脂シートを作製した。
【0286】
<実施例9>
実施例7において、
高分子樹脂A 20部を、高分子樹脂C 30部に変え、
マレイミド化合物A 1.61部を液状の脂肪族マレイミド化合物(デザイナーモレキュールズ社製「BMI-1500」、マレイミド基当量750g/eq.3部に変えた。
以上の事項以外は、実施例7と同様にして樹脂ワニス及び樹脂シートを作製した。
【0287】
<比較例1>
ビスフェノール型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ZX-1059」、ビスフェノールA型とビスフェノールF型の1:1混合品、エポキシ当量169g/eq.)3部、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(DIC社製「HP-6000L」、エポキシ当量215g/eq.)1部、グリシジルアミン型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「JER630」、エポキシ当量95g/eq.)4部、無機充填材2 90部、カルボジイミド系硬化剤(日清紡ケミカル社製「V-03」、活性基当量約216g/eq.、不揮発成分50質量%のトルエン溶液)2部、活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC8150-62T」、活性基当量約229g/eq.、不揮発成分62%のトルエン溶液)4.8部、フェノール系硬化剤(DIC社製「LA-3018-50P」、活性基当量約151g/eq.、固形分50%の2-メトキシプロパノール溶液)6部、高分子樹脂D 14部、マレイミド化合物(信越化学工業社製液状ビスマレイミド「SLK-6895-M90」、不揮発成分90%質量%のMEK溶液、マレイミド基当量345g/eq.)1.1部、硬化促進剤(四国化成工業社製「2E4MZ」、2-エチル-4-メチルイミダゾール)0.1部、シクロヘキサノン7部、メチルエチルケトン6部をミキサーを用いて均一に分散し、樹脂ワニスを得た。次いで実施例1と同様の方法で樹脂シートを作製した。
【0288】
<比較例2>
ビスフェノール型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ZX-1059」、ビスフェノールA型とビスフェノールF型の1:1混合品、エポキシ当量169g/eq.)4部、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学社製「ZX1658GS」、エポキシ当量約135g/eq.)2部、無機充填材2 55部、カルボジイミド系硬化剤(日清紡ケミカル社製「V-03」、活性基当量約216g/eq.、不揮発成分50質量%のトルエン溶液)2部、活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC8150-62T」、活性基当量約229g/eq.、不揮発成分62%のトルエン溶液)4.8部、フェノール系硬化剤(DIC社製「LA-3018-50P」、活性基当量約151g/eq.、固形分50%の2-メトキシプロパノール溶液)6部、マレイミド化合物(信越化学工業社製液状ビスマレイミド「SLK-6895-M90」、不揮発成分90%質量%のMEK溶液、マレイミド基当量345g/eq.)1.1部、硬化促進剤(四国化成工業社製「1B2PZ」、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール)0.05部、シクロヘキサノン4、メチルエチルケトン4部をミキサーを用いて均一に分散し、樹脂ワニスを得た。次いで実施例1と同様の方法で樹脂シートを作製した。
【0289】
<最低溶融粘度の測定>
実施例、比較例で作製した樹脂シートを、樹脂組成物層のみを剥離し、金型で圧縮することにより測定用ペレット(直径18mm、1.2~1.3g)を作製した。動的粘弾性測定装置(ユー・ビー・エム社製「Rheosol-G3000」)を用い、試料である樹脂組成物層1gについて、直径18mmのパラレルプレートを使用して、開始温度60℃から200℃まで昇温速度5℃/分にて昇温し、測定温度間隔2.5℃、振動数1Hz、ひずみ1degの測定条件にて動的粘弾性率を測定し、最低溶融粘度(poise)を算出した。
【0290】
<溶融粘度(V500、V900)、V900-V500、及び増粘率の測定>
実施例、比較例で作製した樹脂シートを、樹脂組成物層のみを剥離し、金型で圧縮することにより測定用ペレット(直径18mm、1.2~1.3g)を作製した。動的粘弾性測定装置(ユー・ビー・エム社製「Rheosol-G3000」)を用い、試料である樹脂組成物層1gについて、直径18mmのパラレルプレートを使用して、温度90℃に保持し、振動数1Hz、ひずみ1degの測定条件にて測定開始後500秒の動的粘弾性率を測定し、溶融粘度V500(poise)を算出した。
【0291】
また、同様にして温度90℃に保持し、振動数1Hz、ひずみ1degの測定条件にて測定開始後900秒の動的粘弾性率を測定し、溶融粘度V900(poise)を算出した。その後、V900-V500、及び増粘率(V900/V500)を算出した。
【0292】
<表面の算術平均粗さが5nm~100nmである平滑性の高い部材との間のボイドの有無の評価>
実施例及び比較例で作製した樹脂シートを、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)を用いて、樹脂組成物層をポリイミドフィルム(厚み25μm、東レ・デュポン社製「カプトン100EN」)にラミネートした。このラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、温度100℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着することにより、実施した。次いで、ラミネートされた樹脂シートを、大気圧下、100℃、圧力0.5MPaにて60秒間、熱プレスして平滑化した。支持体を剥がし180℃90分で熱硬化した。熱硬化後の樹脂組成物層をポリイミドフィルム側から観察し、以下の基準で評価した。
〇:熱硬化後の樹脂組成物層とポリイミドフィルムとの間にボイドがない。
×:熱硬化後の樹脂組成物層とポリイミドフィルムとの間にボイドが見られる。
【0293】
<表面の算術平均粗さが5nm~100nmである部材との間の密着性の評価>
実施例及び比較例で作製した樹脂シートを、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)を用いて、樹脂組成物層が内層基板(昭和電工マテリアルズ社製「MCL-E700G」、導体層の厚さ35μm、計0.4mm厚、残銅率40%)と接合するように、内層基板の両面にラミネートした。このラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、温度100℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着することにより、実施した。次いで、ラミネートされた樹脂シートを、大気圧下、100℃、圧力0.5MPaにて60秒間、熱プレスして平滑化した。その後、支持体を剥離して、樹脂組成物層、内層基板及び樹脂組成物層をこの順で含む「中間複層体I」を得た。
【0294】
他方、ポリイミドフィルム(厚み25μm、東レ・デュポン社製「カプトン100EN」)を用意した。このポリイミドフィルムを130℃30分乾燥させたのち、中間複層体Iの樹脂組成物層に接合するように、中間複層体Iの両面にラミネートした。このラミネートは、前述した内層基板への樹脂シートのラミネートと同じ条件で行った。これにより、ポリイミドフィルム、樹脂組成物層、内層基板、樹脂組成物層及びポリイミドフィルムをこの順で含む「中間複層体II」を得た。
【0295】
この中間複層体IIを、180℃のオーブンに投入して90分間加熱した。これにより、樹脂組成物層の熱硬化が行われて、ポリイミドフィルム、樹脂組成物層の硬化物としての絶縁層、内層基板、樹脂組成物層の硬化物としての絶縁層、及びポリイミドフィルムをこの順で含む「評価基板A」を得た。
【0296】
評価基板Aを用いて、ポリイミドフィルムと絶縁層との間の密着力(ピール強度)の測定を行った。このピール強度の測定は、JIS C6481に準拠して行った。具体的には、下記の操作によって、ピール強度の測定を行った。
【0297】
評価基板Aのポリイミドフィルムに、幅10mm、長さ100mmの矩形部分を囲む切込みをいれた。この矩形部分の一端を剥がして、つかみ具(ティー・エス・イー社製、オートコム型試験機「AC-50C-SL」)で掴んだ。前記矩形部分の長さ35mmの範囲を垂直方向に引き剥がし、この引き剥がし時の荷重(kgf/cm)を、ピール強度として測定した。前記の引き剥がしは、室温中にて、50mm/分の速度で行った。ポリイミドフィルムとの間の密着性は以下の基準で評価した。
〇:ピール強度が0.3kgf/cmを超える。
×:ピール強度が0.3kgf/cm未満。
【0298】
<シリコンナイトライドとの間の密着性の評価>
シリコンナイトライドが成膜された12インチウエハを用意し、実施例及び比較例で作製した樹脂シートを、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)を用いて、樹脂組成物層がシリコンナイトライド膜に接するようにラミネートした。その後、支持体を剥がし180℃90分間加熱させた後、高度加速寿命試験装置(ETAC社製、PM422)を使用し、121.5℃、100%RHの環境下で100時間放置するPCT試験(Pressure Cooker Test)を実施した。その後室温に戻し、樹脂組成物層の硬化物表面にクロスカット(幅1mmの格子状の切込み)を入れ、樹脂組成物層に欠けがあるかを確認し、以下の基準で評価した。
〇:樹脂組成物層の硬化物及び下地界面に膨れが無く、クロスカット後の樹脂組成物層の硬化物に欠けが生じていない。
△:樹脂組成物層の硬化物及び下地界面に膨れが無く、クロスカット後の樹脂組成物層の硬化物に欠けが生じている。
×:樹脂組成物層の硬化物及び下地界面に膨れがあり、クロスカット後の樹脂組成物層の硬化物に欠けが生じている。
【0299】
<染み出し性の評価>
実施例および比較例で作製した樹脂シートを、φ290mmの円形にカットし、バッチ式真空加圧ラミネーターを用いて、12インチシリコンウエハ(厚さ775μm)の片面に樹脂シートの中心がシリコンウエハの中心になるようセットして積層した。この積層は、樹脂組成物層とシリコンウエハとが接合するように行い、以下の基準で評価した。なお、積層は30秒間減圧して気圧を13hPa以下とし、その後30秒間、100℃、圧力0.74MPaで圧着することにより行った。
〇:ラミネート後、樹脂組成物層中の樹脂が染み出した部分がシリコンウエハの端部に接触しない。
×:ラミネート後、樹脂組成物層中の樹脂が染み出した部分がシリコンウエハの端部と接触する。
【0300】
<重量減少率の測定>
実施例及び比較例で作製した樹脂シートの樹脂組成物層を180℃で90分間加熱することで硬化体を作製し、加熱した際の300℃における熱重量減少量(%)を示差熱熱重量同時測定装置(日立ハイテクサイエンス社製「TG/DTA STA7200RV」)により測定した。本評価はアルミニウム製のサンプルパンに硬化体のサンプルをそれぞれ10mg秤量し、蓋をせずオープンの状態で、窒素雰囲気下で、25℃から300℃まで昇温速度20℃/分で昇温し、300℃で30分維持した。重量減少率は、下記式により算出し、以下の基準で評価した。
重量減少率(%)=100×(加熱前の質量(μg)-所定温度に達した時の質量(μg))/加熱前の質量(μg)
〇:重量減少率が1%未満
△:重量減少率が1%以上1.5%未満
×:重量減少率が1.5%以上
【0301】
<タック性の測定>
実施例及び比較例で作製した樹脂シートから保護フィルムを剥離し、樹脂組成物層について、プローブタックテスター(テスター産業社製、「TE-6002」)を用い、直径5mmのガラスプローブにて荷重1kgf/cm2、接触速度0.5mm/秒、引張速度0.1mm/秒、保持時間10秒、温度25℃でのタック力を測定し、さらに以下の基準で評価した。
〇:タック力が5.5N未満
×:タック力が5.5N以上
【0302】
<算術平均粗さ(Ra)、及び十点平均粗さ(Rz)の測定>
実施例、比較例で作製した樹脂シートの保護フィルムを剥がし、保護フィルムが接していた樹脂組成物層の表面を非接触型表面粗さ計(ビーコインスツルメンツ社製WYKO NT3300)を用いて、VSIモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして得られる数値により算術平均粗さ(Ra)、及び十点平均粗さ(Rz)を求めた(単位はすべてnm)。それぞれ、無作為に選んだ10点の平均値を求めることにより測定した。
【0303】
【0304】
実施例1~9において、(D)~(E)成分を含有しない場合であっても、程度に差はあるものの上記実施例と同様の結果に帰着することを確認している。