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特開2024-3441印刷機用の紙押さえ装置、及び該紙押さえ装置用の紙押さえユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003441
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】印刷機用の紙押さえ装置、及び該紙押さえ装置用の紙押さえユニット
(51)【国際特許分類】
   B65H 3/56 20060101AFI20240105BHJP
   B65H 3/54 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
B65H3/56 310A
B65H3/54 310D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102581
(22)【出願日】2022-06-27
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年11月19日にエスピータック株式会社に提供 令和3年12月1日に株式会社クラウン・パッケージに提供 令和4年1月11日に日本印刷工業株式会社に提供 令和4年1月11日に株式会社ヤカグループに提供
(71)【出願人】
【識別番号】714000460
【氏名又は名称】リョービMHIグラフィックテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】寺本 一彦
(72)【発明者】
【氏名】居仙 勝彦
【テーマコード(参考)】
3F343
【Fターム(参考)】
3F343FA02
3F343FB05
3F343FC01
3F343GA01
3F343GB01
3F343GC01
3F343GD01
3F343HA17
3F343JD11
3F343KB05
3F343LA04
3F343LA15
(57)【要約】
【課題】枚葉紙に接触する押さえ部材の折損を抑制する印刷機用の紙押さえ装置の提供。
【解決手段】パイル載置部に載置されているパイルから最上の枚葉紙1を搬送方向下流側に送る搬送部1を有する給紙部を含む印刷機に用いられ、搬送方向における下流側に向けて配置される前面20と、前面20とは別の面である取付面24とを有する基台2と、基台2の前面20よりも搬送方向における下流側に進出した状態で取付面24に固定される押さえ部材3と、記基台2の取付面24に押さえ部材3をねじ止めするための固定部材4と、弾性を有する緩和部材5と、を備え、緩和部材5は、上下方向においては基台2の取付面24と固定部材4との間の範囲内に位置し、且つ搬送方向においては固定部材4による押さえ部材3のねじ止め位置から基台2の前面20までの範囲内に位置するように配置される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイル載置部に載置されているパイルから最上の枚葉紙を搬送方向における下流側に送り出す搬送部を有する給紙部を含む印刷機に用いられる紙押さえ装置であって、
前記搬送方向における下流側に向けて配置される前面と、前記前面とは別の面である取付面とを有する基台と、
前記基台の前記前面よりも搬送方向における下流側に進出した状態で前記取付面に固定される押さえ部材と、
前記基台の前記取付面に前記押さえ部材をねじ止めするための固定部材と、
弾性を有する緩和部材と、を備え、
前記緩和部材は、上下方向においては前記基台の前記取付面と前記固定部材との間の範囲内に位置し、且つ前記搬送方向においては前記固定部材による前記押さえ部材のねじ止め位置から前記基台の前記前面までの範囲内に位置するように配置される、
印刷機用の紙押さえ装置。
【請求項2】
前記緩和部材は、前記基台の前記取付面と前記上下方向において前記取付面と隣り合う前記押さえ部材との間であり、且つ前記搬送方向における前記ねじ止め位置から前記基台の前記前面までの基台側領域内と、前記固定部材と前記上下方向において前記固定部材と隣り合う前記押さえ部材との間であり、且つ前記搬送方向における前記ねじ止め位置から前記固定部材の前記搬送方向下流側の一端までの固定側領域内の少なくとも何れか一方に位置する、
請求項1に記載の印刷機用の紙押さえ装置。
【請求項3】
前記緩和部材は、前記基台側領域の全域と、前記固定側領域の全域の少なくとも何れか一方の領域に配置される、
請求項2に記載の印刷機用の紙押さえ装置。
【請求項4】
前記固定部材は、
前記基台とともに前記押さえ部材を挟み込むように配置される座金部材と、
前記基台に前記押さえ部材と前記座金部材とをねじ止めする雄ねじ部材とを有し、
前記緩和部材は、前記基台の前記取付面の全域と、前記座金部材の前記押さえ部材側に向けて配置される一面の全域の少なくとも何れか一方の領域に配置される、
請求項2に記載の印刷機用の紙押さえ装置。
【請求項5】
上記請求項1に記載の印刷機用の紙押さえ装置に用いられる紙押さえ装置用の紙押さえユニットであって、
前記押さえ部材と、
前記緩和部材と、を備える、
紙押さえ装置用の紙押さえユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイルから取り上げられた枚葉紙と該枚葉紙に貼り付いた別の枚葉紙とを分離する印刷機用の紙押さえ装置、及び該紙押さえ装置用の紙押さえユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
上記印刷機用の紙押さえ装置として、例えば特許文献1に開示されているような、取付け用シャフトと、取付け用シャフトに取り付けられる取付け金具と、取付け金具に取り付けられる取付けプレートと、取付けプレートに複数枚重ね合わせて取り付けられる押え用ばね体と、を備える紙押え治具が知られている。
【0003】
押え用ばね体は、細長い板状に形成されている。
【0004】
押え用ばね体は、長手方向における一端側(基端側)が取付け用プレートの下面にねじ止めされることで、取付け用プレートに取り付けられている。
【0005】
押え用ばね体の長手方向における他端側(先端側)は、取付け用プレートの前面(取付け用プレートのパイル側に向けて配置される一面)よりも前方に進出しており、パイルの最上の枚葉紙の外周縁部の上方に配置されている。
【0006】
上記構成の紙押え治具によれば、パイルから取り上げられた枚葉紙は外周縁部が押え用ばね体の先端側に接触するため、複数枚の枚葉紙が一斉に取り上げられたとしても、最も上に配置されている枚葉紙と、該枚葉紙に貼り付いている枚葉紙とが分離するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平6-56046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記従来の紙押え治具の押え用ばね体は、パイルから取り上げた枚葉紙が接触する度に撓むため、前記紙押え治具には、使用し続けていると押え用ばね体が折損するという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、かかる実情に鑑み、枚葉紙に接触する押さえ部材の折損を抑制する印刷機用の紙押さえ装置、及び該紙押さえ装置用の紙押さえユニットの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の印刷機用の紙押さえ装置は、
パイル載置部に載置されているパイルから最上の枚葉紙を搬送方向における下流側に送り出す搬送部を有する給紙部を含む印刷機に用いられる紙押さえ装置であって、
前記搬送方向における下流側に向けて配置される前面と、前記前面とは別の面である取付面とを有する基台と、
前記基台の前記前面よりも搬送方向における下流側に進出した状態で前記取付面に固定される押さえ部材と、
前記基台の前記取付面に前記押さえ部材をねじ止めするための固定部材と、
弾性を有する緩和部材と、を備え、
前記緩和部材は、上下方向においては前記基台の前記取付面と前記固定部材との間の範囲内に位置し、且つ前記搬送方向においては前記固定部材による前記押さえ部材のねじ止め位置から前記基台の前記前面までの範囲内に位置するように配置される。
【0011】
押さえ部材は、パイルから取り上げられた枚葉紙が接触することによって撓むと、搬送方向における固定部材による押さえ部材のねじ止め位置から基台の前面までの範囲内に配置されている部分に応力が集中しやすいが、上記構成の印刷機用の紙押さえ装置は、押さえ部材に応力が集中しやすい位置に合わせて緩和部材が配置されるため、パイルから取り上げられた枚葉紙が押さえ部材に接触した際に該押さえ部材の撓みが緩和され、これに伴い、該押さえ部材に生じる応力も緩和されるようになっている。
【0012】
このように、前記印刷機用の紙押さえ装置は、押さえ部材に生じる応力を緩和することによって、枚葉紙に接触する押さえ部材の折損を抑制できるようになっている。
【0013】
本発明の印刷機用の紙押さえ装置において、
前記緩和部材は、前記基台の前記取付面と前記上下方向において前記取付面と隣り合う前記押さえ部材との間であり、且つ前記搬送方向における前記ねじ止め位置から前記基台の前記前面までの基台側領域内と、前記固定部材と前記上下方向において前記固定部材と隣り合う前記押さえ部材との間であり、且つ前記搬送方向における前記ねじ止め位置から前記固定部材の前記搬送方向下流側の一端までの固定側領域内の少なくとも何れか一方に位置するようにしてもよい。
【0014】
かかる構成によれば、押さえ部材の基台側への撓みや、押さえ部材の固定部材側への撓みが緩和されるため、押さえ部材に生じる応力も緩和される。
【0015】
本発明の印刷機用の紙押さえ装置において、
前記緩和部材は、前記基台側領域の全域と、前記固定側領域の全域の少なくとも何れか一方の領域に配置されるようにしてもよい。
【0016】
かかる構成によれば、基台側領域の全域に対応する範囲や、固定側領域の全域に対応する範囲において押さえ部材の撓みが緩和されるため、押さえ部材に生じる応力も緩和される。
【0017】
本発明の印刷機用の紙押さえ装置において、
前記固定部材は、
前記基台とともに前記押さえ部材を挟み込むように配置される座金部材と、
前記基台に前記押さえ部材と前記座金部材とをねじ止めする雄ねじ部材とを有し、
前記緩和部材は、前記基台の前記取付面の全域と、前記座金部材の前記押さえ部材側に向けて配置される一面の全域の少なくとも何れか一方の領域に配置されるようにしてもよい。
【0018】
かかる構成によれば、基台と押さえ部材の間の全域や、座金部材と押さえ部材の間の全域に亘って押さえ部材の撓みが緩和されるため、押さえ部材に生じる応力も緩和される。
【0019】
本発明の紙押さえ装置用の紙押さえユニットは、
上記の印刷機用の紙押さえ装置に用いられる紙押さえ装置用の紙押さえユニットであって、
前記押さえ部材と、
前記緩和部材と、を備える。
【0020】
上記構成の紙押さえ装置用の紙押さえユニットによれば、押さえ部材と緩和部材とが固定部材によって基台に固定されると、押さえ部材に応力が集中しやすい位置に合わせて緩和部材が配置されるため、パイルから取り上げられた枚葉紙が押さえ部材に接触した際における押さえ部材の撓みが緩和され、これに伴い、押さえ部材に生じる応力も緩和されるようになっている。
【0021】
このように、紙押さえ装置用の紙押さえユニットも、押さえ部材に生じる応力を緩和することによって、枚葉紙に接触する押さえ部材の折損を抑制できるようになっている。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明の印刷機用の紙押さえ装置、及び該紙押さえ装置用の紙押さえユニットは、枚葉紙に接触する押さえ部材の折損を抑制するという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る印刷機用の紙押さえ装置を備える給紙部の概要を示す図である。
図2図2は、図1の領域IIの拡大図である。
図3図3は、同実施形態に係る印刷機用の紙押さえ装置の側面図である。
図4図4は、同実施形態に係る印刷機用の紙押さえ装置の分解図である。
図5図5において、(a)は印刷機用の紙押さえ装置の平面図であり、(b)は印刷機用の紙押さえ装置の底面図である。
図6図6において、(a)は押さえ部材の平面図であり、(b)は押さえ部材の側面図であり、(c)は(b)の領域VIの拡大図である。
図7図7は、同実施形態に係る印刷機用の紙押さえ装置の座金部材の平面図である。
図8図8は、同実施形態に係る印刷機用の紙押さえ装置の使用状態の説明図であり、搬送部によってパイルから取り上げた枚葉紙が押さえ部材に接触している状態の説明図である。
図9図9は、同実施形態に係る印刷機用の紙押さえ装置の使用状態の説明図であり、紙押さえ装置が搬送部によってパイルから取り上げた最上の枚葉紙と該枚葉紙に貼り付いていた下側の別の枚葉紙とを分離させた状態の説明図である。
図10図10は、本発明の別の実施形態の印刷機用の紙押さえ装置の説明図である。
図11図11は、本発明のさらに別の実施形態の印刷機用の紙押さえ装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態にかかる印刷機用の紙押さえ装置(以下、紙押さえ装置と称する)について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0025】
本実施形態に係る紙押さえ装置1は、図1に示すように、印刷機の給紙部M1に用いられるものであり、給紙部M1は、枚葉紙P1を積み重ねることによって構成されているパイルPを載置するパイル載置部M10と、パイル載置部M10に載置されているパイルPの最上の枚葉紙P1を取り上げて搬送方向における下流側に送り出す搬送部M11とを有する。
【0026】
搬送部M11は、例えば、パイルPの最上の枚葉紙P1の上面を吸引して取り上げる吸引搬装置によって構成されていればよい。
【0027】
紙押さえ装置1は、パイルPの最上の枚葉紙P1を取り上げて搬送方向における下流側に送る際に、最上の枚葉紙P1と最上の枚葉紙P1に付着した状態で取り上げられた別の枚葉紙P1とを分離するように構成されている。
【0028】
紙押さえ装置1は、図2に示すように、パイルPの搬送方向における下流側に向けて配置される前面20(図3参照)を有する基台2と、基台2の前面20よりも枚葉紙P1の搬送方向における下流側に進出した状態で基台2の前面20とは別の一面である取付面24に固定される押さえ部材3と、基台2に押さえ部材3をねじ止めする固定部材4と、押さえ部材3の撓みを緩和するための緩和部材5と、を有する。
【0029】
基台2は、図3図4に示すように、上記の前面20と、上面21、下面22、背面23を有する。
【0030】
基台2の前面20は上述のように搬送方向における下流側に向けて配置されており、基台2の背面23は搬送方向における上流側に向けて配置されている。基台2の上面21と下面22は搬送方向に延びている。以下の説明においては、基台2の前面20と背面23が並ぶ方向を前後方向と称する。
【0031】
基台2の上面21又は下面22は、押さえ部材3が取り付けられる取付面24を構成しており、本実施形態の基台2では、下面22が取付面24を構成している。
【0032】
基台2の取付面24側の前面20側は、丸みを帯びた曲面部25になっている。すなわち、取付面24と前面20の接続部には側面視でR形状からなる曲面部25が形成されている。
【0033】
基台2には、上下方向に延びるねじ孔26が形成されている。このねじ孔26は、取付面24(本実施形態では下面22)で開口するように形成されていればよい。なお、基台2には、後述する雄ねじ部材と同数のねじ孔26が形成され、本実施形態の基台2には二つのねじ孔26が形成されている。
【0034】
押さえ部材3は、弾性を有している。また、押さえ部材3は、薄板状に形成されている。具体的には、押さえ部材3は、熱処理を施したバネ用炭素鋼帯からなる。
【0035】
押さえ部材3は、基台2に固定される被固定部30(図5(b)参照)と、被固定部30が基台2に固定されている状態で基台2の前面20よりも搬送方向下流側に進出する進出部31(図5(a)参照)と、を有する。
【0036】
被固定部30には、図6(a)、図6(b)に示すように、後述する雄ねじ部材を挿通する挿通孔300が形成されている。挿通孔300は、長孔であり、押さえ部材3の長手方向に沿って延びている。進出部31は、図6(a)に示すように、先端側に向かって幅が狭くなるように形成されており、その先端部は丸められている。
【0037】
押さえ部材3は、挿通孔300に雄ねじ部材が挿通されている状態で前後方向に移動させることができるようになっている。そのため、押さえ部材3は、前後方向で移動させることによって、進出部31の進出量(基台2の前面20から搬送方向下流側への進出量)を変えることができるようになっている。
【0038】
進出部31の先端部は、先端側に向かうにつれて薄くなっている(図6(c)参照)。そのため、進出部31の先端部の下面は、先端側に向かうにつれて上方に向かうように傾斜している。
【0039】
なお、本実施形態の紙押さえ装置1は、複数の押さえ部材3を備えており、複数の押さえ部材3は、上下方向において下側に配置されているものであるほど基台2の前面20からの進出量が少なくなるように配置されている(図5(b)参照)。
【0040】
固定部材4は、図4に示すように、基台2とともに押さえ部材3を挟み込むように配置される座金部材40と、基台2に押さえ部材3と座金部材40とをねじ止めする雄ねじ部材41とを有する。
【0041】
座金部材40には、貫通孔400が形成されている(図7参照)。また、座金部材40は、押さえ部材3に対向配置される対向面401を有する。
【0042】
また、座金部材40は、搬送方向における下流側(前後方向における前方側)に向けて配置される前端が基台2の前面20よりも搬送方向における上流側(前後方向における後方側)に位置するように配置される。
【0043】
雄ねじ部材41は、頭部410と、頭部410から延出し且つ外周面にねじ山が形成されている軸部411と、を有する。
【0044】
本実施形態の固定部材4は、二つの雄ねじ部材41を備えており、また、座金部材40には、二つの貫通孔400が形成されている。
【0045】
緩和部材5は、弾性を有する。なお、緩和部材5は、例えば、シリコンゴムやウレタンゴムといったゴム等によって構成されていればよい。緩和部材5をゴムによって構成する場合は、ゴム硬度は高い方が好ましい。本実施形態では、緩和部材5は、ウレタンゴムからなる厚さ1mmのゴムシートとして構成されており、ゴム硬度は90°(タイプA)としている。
【0046】
緩和部材5は、上下方向においては前記基台2の取付面24と固定部材4との間の範囲内に位置し、且つ搬送方向においては固定部材4による押さえ部材3のねじ止め位置CLから基台2の前面20の位置FL1までの範囲内に位置するように配置されている。
【0047】
緩和部材5には、雄ねじ部材41の軸部411を挿通する取付孔50が形成されている。また、緩和部材5には、雄ねじ部材41の数に合わせて取付孔50が2つ形成されている。
【0048】
なお、ねじ止め位置CLとは、前後方向において基台2の前面20に最も近い雄ねじ部材41が押さえ部材3をねじ止めしている位置のことである。
【0049】
緩和部材5は、基台2の取付面24と、上下方向において該取付面24に隣り合う押さえ部材3との間であり、且つ搬送方向における前記ねじ止め位置CLから基台2の前面20の位置FL1までの領域(以下「基台側領域」という)内に位置している。
【0050】
また、緩和部材5は、基台側領域全域にわたって広がるように配置されているため、基台側領域内の前記ねじ止め位置CLに対応する場所や、基台2の前面20の位置FL1に対応する場所にも位置している。
【0051】
さらに、本実施形態の緩和部材5は、前記ねじ止め位置CLよりも後方(背面23側)の領域にも広がるように配置されており、より具体的には、基台2の取付面24に対向する領域全域に広がるように配置されている。
【0052】
本実施形態に係る紙押さえ装置1の構成は、以上の通りである。続いて、紙押さえ装置1の組み立て方を説明する。
【0053】
紙押さえ装置1を組み立てる場合は、座金部材40の貫通孔400、押さえ部材3の挿通孔300、緩和部材5の取付孔50に雄ねじ部材41の軸部411を挿通し、該軸部411を基台2のねじ孔26に螺合させる。そして、雄ねじ部材41を締めることによって、緩和部材5と押さえ部材3が固定部材によって基台2に固定される。これにより、紙押さえ装置1の組み立てが完了する。
【0054】
なお、軸部411への接着剤の塗布等による雄ねじ部材41の緩み止め処置を行っておけば、雄ねじ部材41の締め込みトルクを通常の締め切りトルクよりも低くした状態で紙押さえ装置1を組み立てることもできる。この場合、緩和部材5に加わる圧縮力が抑えられるため、緩和部材5が弾性変形しやすくなる分、緩和部材5による押さえ部材3の撓みを抑制する効果が高まる。
【0055】
続いて、紙押さえ装置1の使用状態を説明する。
【0056】
搬送部M11によってパイルPの最上の枚葉紙P1が取り上げられると、図8に示すように、該枚葉紙P1が進出部31に対して下方側から接触し、押さえ部材3が上方に撓む。
【0057】
押さえ部材3と基台2との間には緩和部材5が配置されているため、押さえ部材3が上方に撓むと、緩和部材5が圧縮されることにより、押さえ部材3の撓み量が抑制される。
【0058】
搬送部M11によって取り上げられるパイルPの最上の枚葉紙P1に下側の別の枚葉紙P1が貼り付いている場合、最上の枚葉紙P1と共に下側の別の枚葉紙P1が取り上げられる際に、上方に撓んだ押さえ部材3の進出部31が枚葉紙P1の縁に接触しながら元の形状に戻ることで、押さえ部材3の進出部31が下側の別の枚葉紙P1を掻き落とし、図9に示すように、搬送部M11によって取り上げられたパイルPの最上の枚葉紙P1と下側の別の枚葉紙P1とが分離するようになっている。そして、パイルPの最上の枚葉紙P1のみが搬送方向における下流側に送り出される。
【0059】
以上のように、押さえ部材3は、パイルPから取り上げられた枚葉紙P1が接触することによって撓むと、搬送方向における固定部材4による押さえ部材3のねじ止め位置から基台2の前面20までの範囲内に配置されている部分に応力が集中しやすいが、本実施形態の紙押さえ装置1は、押さえ部材3に応力が集中しやすい位置に合わせて緩和部材5が配置されているため、パイルPから取り上げられた枚葉紙P1が押さえ部材3に接触した際に該押さえ部材3の撓みが緩和され、これに伴い、該押さえ部材3に生じる応力も緩和されるようになっている。
【0060】
このように、紙押さえ装置1は、押さえ部材3に生じる応力を緩和することによって、枚葉紙P1に接触する押さえ部材3の折損を抑制できるという優れた効果を奏し得る。
【0061】
特に、緩和部材5は、基台側領域内に配置されているため、押さえ部材3の基台2側への撓みが緩和されやすくなっている。
【0062】
また、緩和部材5は、基台2の取付面24に対向する領域全域にわたって配置されているため、基台側領域内の前記ねじ止め位置CLに対応する場所や、基台2の前面20の位置FL1に対応する場所で押さえ部材3の撓みを緩和でき、また、基台側領域の外側の領域においても押さえ部材3の撓みを緩和できるようになっている。これにより、紙押さえ装置1では、押さえ部材3に生じる応力集中が緩和されやすくなっている。
【0063】
なお、本発明に係る印刷機用の紙押さえ装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0064】
上記実施形態の紙押さえ装置1において、基台2の下端部の前面20側は、丸みを帯びた曲面部25になっていたが、この構成に限定されない。基台2の下端部の前面20側は丸みを帯びていない角部となっていてもよい。ただし、基台2の下端部の前面20側が曲面部25になっている方が押さえ部材3の撓みを緩和しやすくなる。
【0065】
上記実施形態の紙押さえ装置1において、押さえ部材3は、二つの雄ねじ部材41によって基台2に固定されていたが、この構成に限定されない。例えば、押さえ部材3は、一つの雄ねじ部材41によって基台2に固定されていてもよいし、三つ以上の雄ねじ部材41によって基台2に固定されていてもよい。
【0066】
なお、基台2のねじ孔26の数、座金部材40の貫通孔400の数、緩和部材5の取付孔50の数は、雄ねじ部材41の数に合わせて設定すればよい。
【0067】
また、押さえ部材3を一つの雄ねじ部材41によって基台2に固定する場合は、押さえ部材3が基台2に対して該一つの雄ねじ部材41回りに回転しないように回り止め処置がされていればよい。
【0068】
上記実施形態の紙押さえ装置1では、基台2の下面22が取付面24となっていたが、例えば、基台2の上面21が取付面24となっていてもよい。この場合、押さえ部材3と緩和部材5は、固定部材4によって基台2の上面21に固定される。
【0069】
上記実施形態の紙押さえ装置1において、緩和部材5は、基台2の取付面24に対向する領域全域に亘って配置されていたが、この構成に限定されない。例えば、緩和部材5は、基台側領域と基台側領域よりも後方の領域の一部に位置するように配置されていてもよい。この場合、緩和部材5が配置される領域には、基台側領域内における基台2の前面20の位置FL1に対応する場所、及び前記ねじ止め位置CLに対応する場所の少なくとも何れか一方の場所が含まれていることが好ましい。
【0070】
このようにすれば、緩和部材5が基台側領域の外側の領域においても押さえ部材3の撓みを緩和できるようになり、押さえ部材3に生じる応力が緩和されやすくなる。
【0071】
また、緩和部材5は、基台側領域のみに配置されていてもよい。この場合においても、緩和部材5が配置される領域には、基台側領域内における基台2の前面20の位置FL1に対応する場所、及びねじ止め位置CLに対応する場所の少なくとも何れか一方の場所が含まれていることが好ましい。
【0072】
上記実施形態の紙押さえ装置1においては、緩和部材5は、基台2の取付面24と、上下方向において基台2の取付面24に隣り合う押さえ部材3との間に配置されていたが、この構成に限定されない。例えば、緩和部材5は、図10に示す別の実施形態のように、座金部材40と、上下方向において座金部材40に隣り合う押さえ部材3との間に配置されていてもよい。
【0073】
この場合、緩和部材5は、基台2の取付面24と、上下方向において基台2の取付面24に隣り合う押さえ部材3との間であり、且つ搬送方向(前後方向)におけるねじ止め位置CLから座金部材40の前端の位置FL2に対応する位置までの領域(以下「固定領域」という)内に位置するように配置されていればよい。
【0074】
図10に示す紙押さえ装置1では、緩和部材5が、座金部材40に対向する領域全域に亘って配置されているが、例えば、緩和部材5が、固定側領域全域と座金部材40に対向する領域内における固定側領域の外側の領域の一部に配置されていてもよいし、固定側領域の一部と座金部材40に対向する領域内における固定側領域の外側の領域の全域に配置されていてもよい。
【0075】
このようにすれば、緩和部材5が固定側領域の外側の領域においても押さえ部材3の撓みを緩和できるようになり、押さえ部材3に生じる応力が緩和されやすくなる。
【0076】
また、緩和部材5は、固定側領域のみに配置されていてもよい。
【0077】
いずれの場合においても、緩和部材5が配置される領域には、固定側領域内における座金部材40の前端の位置FL2に対応する場所と、ねじ止め位置CLに対応する場所の少なくとも何れか一方の場所が含まれていることが好ましい。
【0078】
また、例えば、更に別の実施形態として、緩和部材5は、上下方向において隣り合う二つの押さえ部材3の間であり、且つ基台2の前面20の位置FL1からねじ止め位置CLまでの間の中間領域に位置するように配置されていてもよい。
【0079】
この場合においても、複数の押さえ部材3のそれぞれの撓みが緩和部材5によって緩和されるため、複数の押さえ部材3のそれぞれに生じる応力も緩和される。
【0080】
なお、緩和部材5は、上下方向において隣り合う二つの押さえ部材3の間に配置される場合においても、基台2の前面20の位置FL1からねじ止め位置CLまでの間の領域と、かかる領域の外側に広がる領域とに位置するように配置されていてもよい。
【0081】
上記した紙押さえ装置1では、基台2と基台2に隣り合う押さえ部材3の間、座金部材40と座金部材40に隣り合う押さえ部材3の間、押さえ部材3同士の間の何れかのみに緩和部材5が配置されていたが、例えば、図11に示すように、基台2と基台2に隣り合う押さえ部材3の間と、座金部材40と座金部材40に隣り合う押さえ部材3の間の両方に別々の緩和部材5を配置してもよい。
【0082】
また、座金部材40と座金部材40に隣り合う押さえ部材3の間と、押さえ部材3同士の間の両方に別々の緩和部材5を配置したり、基台2と基台2に隣り合う押さえ部材3の間と、座金部材40と座金部材40に隣り合う押さえ部材3の間と、押さえ部材3同士の間のそれぞれに別々の緩和部材5を配置してもよい。
【符号の説明】
【0083】
1…紙押さえ装置、2…基台、3…部材、4…固定部材、5…緩和部材、20…前面、21…上面、22…下面、23…背面、24…取付面、25…曲面部、26…ねじ孔、30…被固定部、31…進出部、40…座金部材、41…部材、50…取付孔、300…挿通孔、400…貫通孔、401…対向面、410…頭部、411…軸部、CL…ねじ止め位置、FL1…基台の前面の位置、FL2…座金部材の前端の位置、M1…給紙部、M10…パイル載置部、M11…搬送部、P…パイル、P1…枚葉紙
図1
図2
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図4
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図9
図10
図11