(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034413
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】超音波映像装置及びそのためのプログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 29/06 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
G01N29/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138631
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000243364
【氏名又は名称】本多電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114605
【弁理士】
【氏名又は名称】渥美 久彦
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 幸弘
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA06
2G047AA09
2G047AC10
2G047BB01
2G047BB06
2G047BC09
2G047CA01
2G047DA01
2G047DA02
2G047DA03
2G047EA12
2G047GH06
(57)【要約】
【課題】Bモード画像に基づいて所望とする深さ位置のCモード画像を容易に表示することができる超音波映像装置を提供する。
【解決手段】この超音波映像装置11は、検査対象物1への超音波の送受信に基づいてAモード画像G1、Bモード画像G2及びCモード画像G3を生成し、それらを表示画面52a上に並べて同時に表示しうる。境界面位置算出手段54aは、材料層2、3、4同士の境界面K1、K2の深さ位置を算出する。境界面可視化手段54bは、境界面K1、K2の深さ位置を示すマーカー画像L1、L2を生成する。境界面可視化手段54bは、マーカー画像L1をBモード画像G2上にて境界面K1、K2の深さ位置に対応する位置に重畳し、境界面K1、K2を可視化する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の材料層を積層した構造を有する検査対象物を対象とし、前記検査対象物への超音波の送受信に基づいて生成したAモード画像、Bモード画像及びCモード画像を表示画面上に並べて同時に表示しうる超音波映像装置であって、
前記材料層同士の境界面の深さ位置を算出する境界面位置算出手段と、
前記境界面の深さ位置を示すマーカー画像を生成し、そのマーカー画像を前記Bモード画像上にて前記境界面の深さ位置に対応する位置に重畳することで、前記境界面を可視化する境界面可視化手段と
を備えたことを特徴とする超音波映像装置。
【請求項2】
前記境界面位置算出手段は、前記検査対象物への超音波の送受信によって取得した対象物表面の位置情報と、前記材料層ごとの厚さ及び物性値に関する情報とに基づき、前記境界面の深さ位置を算出することを特徴とする請求項1に記載の超音波映像装置。
【請求項3】
前記対象物表面を起点として前記超音波が前記材料層を通過するのに要する時間を求め、その求めた通過所要時間と前記材料層の厚さ及び音速とから、前記境界面の深さ位置を算出することを特徴とする請求項2に記載の超音波映像装置。
【請求項4】
前記境界面可視化手段は、前記境界面の深さ位置を示すカラーのマーカーライン画像を生成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の超音波映像装置。
【請求項5】
前記境界面の深さ位置を含む所定範囲に前記Cモード画像を得るためのゲートを設定し、前記ゲートの設定範囲を表すゲート画像を生成し、そのゲート画像を前記Bモード画像上にて前記マーカーライン画像を跨ぐように重畳するゲート自動設定表示手段をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の超音波映像装置。
【請求項6】
複数の材料層を積層した構造を有する検査対象物を対象とし、前記検査対象物への超音波の送受信に基づいて生成したAモード画像、Bモード画像及びCモード画像を表示画面上に並べて同時に表示しうる超音波映像装置を作動させるためのプログラムであって、プロセッサに、
前記材料層同士の境界面の深さ位置を算出する境界面位置算出ステップと、
前記境界面の深さ位置を示すマーカー画像を生成するマーカー画像生成ステップと、
生成した前記マーカー画像を前記Bモード画像上にて前記境界面の深さ位置に対応する位置に重畳するマーカー画像重畳ステップと
を実行させるためのプログラム。
【請求項7】
前記境界面位置算出ステップは、
前記検査対象物への超音波の送受信によって対象物表面の位置情報を取得する表面情報取得ステップと、
前記材料層ごとの厚さ及び物性値に関する情報を取得する材料層情報取得ステップと、
前記表面情報取得ステップ及び前記材料層情報取得ステップにより取得した情報に基づき、前記境界面の深さ位置を算出する深さ位置算出ステップと
を含む
ことを特徴とする請求項6に記載のプログラム。
【請求項8】
前記深さ位置算出ステップでは、前記対象物表面を起点として前記超音波が前記材料層を通過するのに要する時間を求め、その求めた通過所要時間と前記材料層の厚さ及び音速とから、前記境界面の深さ位置を算出することを特徴とする請求項7に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波映像装置及びそのためのプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波を利用して検査対象物の内部の様子を映像化する超音波映像装置がよく知られている。この種の超音波映像装置では、検査対象物への超音波の送受信に基づいて、各種モードの超音波画像が生成される。これらの超音波画像は、通常、1つの表示画面上に並べて同時に表示されるようになっている。例えば、特許文献1に記載の超音波映像装置では、Bモード画像(断層画像)及びCモード画像(所定深さの平面画像)を生成して、表示画面上に並べて同時に表示している。また、特許文献2に記載の超音波映像装置では、Aモード画像(反射波形の画像)及びBモード画像を生成して、表示画面上に並べて同時に表示している。例えば、複数の材料層を積層した構造を有する検査対象物を対象とした場合、超音波映像装置を用いることで材料層同士の境界面の状態(剥離の有無など)を検出可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、材料層同士の境界面についてのCモード画像を得たい場合、装置のユーザは、Bモード画像を見ながら、目的とする境界面を探し出し、Bモード画像上に枠状のゲートを設定する必要がある。しかしながら、多層化や薄層化する傾向にある検査対象物からの反射信号には、多くの信号が含まれており、必要とする信号が埋もれやすい。それゆえ、Bモード画像に基づいて材料の境界面を正確に判別するためには、従来、慣れや経験が必要とされていた。従って、不慣れな者にとってはCモード画像を得る際のゲートを適切に設定できず、所望とする深さ位置のCモード画像を表示できないという問題があった。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、Bモード画像に基づいて所望とする深さ位置のCモード画像を容易に表示することができる超音波映像装置及びそのためのプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、複数の材料層を積層した構造を有する検査対象物を対象とし、前記検査対象物への超音波の送受信に基づいて生成したAモード画像、Bモード画像及びCモード画像を表示画面上に並べて同時に表示しうる超音波映像装置であって、前記材料層同士の境界面の深さ位置を算出する境界面位置算出手段と、前記境界面の深さ位置を示すマーカー画像を生成し、そのマーカー画像を前記Bモード画像上にて前記境界面の深さ位置に対応する位置に重畳することで、前記境界面を可視化する境界面可視化手段とを備えたことを特徴とする超音波映像装置をその要旨とする。
【0008】
従って、請求項1に記載の発明によれば、境界面位置算出手段が材料層同士の境界面の深さ位置を算出し、その算出結果に基づいて境界面可視化手段が境界面の深さ位置を示すマーカー画像を生成しかつBモード画像上に重畳する。その結果、複数の材料層の境界面が可視化されて判別しやすくなる。このため、経験や慣れがなくても所望とする深さ位置のCモード画像を表示することができ、また、超音波による画像解析を容易かつ正確に行うことができるようになる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記境界面位置算出手段は、前記検査対象物への超音波の送受信によって取得した対象物表面の位置情報と、前記材料層ごとの厚さ及び物性値に関する情報とに基づき、前記境界面の深さ位置を算出することをその要旨とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記対象物表面を起点として前記超音波が前記材料層を通過するのに要する時間を求め、その求めた通過所要時間と前記材料層の厚さ及び音速とから、前記境界面の深さ位置を算出することをその要旨とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項において、前記境界面可視化手段は、前記境界面の深さ位置を示すカラーのマーカーライン画像を生成することをその要旨とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4において、前記境界面の深さ位置を含む所定範囲に前記Cモード画像を得るためのゲートを設定し、前記ゲートの設定範囲を表すゲート画像を生成し、そのゲート画像を前記Bモード画像上にて前記マーカーライン画像を跨ぐように重畳するゲート自動設定表示手段をさらに備えることをその要旨とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、複数の材料層を積層した構造を有する検査対象物を対象とし、前記検査対象物への超音波の送受信に基づいて生成したAモード画像、Bモード画像及びCモード画像を表示画面上に並べて同時に表示しうる超音波映像装置を作動させるためのプログラムであって、プロセッサに、前記材料層同士の境界面の深さ位置を算出する境界面位置算出ステップと、前記境界面の深さ位置を示すマーカー画像を生成するマーカー画像生成ステップと、生成した前記マーカー画像を前記Bモード画像上にて前記境界面の深さ位置に対応する位置に重畳するマーカー画像重畳ステップとを実行させるためのプログラムをその要旨とする。
【0014】
従って、請求項6に記載の発明によれば、境界面位置算出ステップにより、材料層同士の境界面の深さ位置が算出された後、マーカー画像生成、重畳ステップにより、境界面の深さ位置を示すマーカー画像が生成されかつBモード画像上に重畳される。その結果、複数の材料層の境界面が可視化されて判別しやすくなる。このため、経験や慣れがなくても所望とする深さ位置のCモード画像を表示することができ、また、画像解析を容易かつ正確に行うことができるようになる。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項6において、前記境界面位置算出ステップは、前記検査対象物への超音波の送受信によって対象物表面の位置情報を取得する表面情報取得ステップと、前記材料層ごとの厚さ及び物性値に関する情報を取得する材料層情報取得ステップと、前記表面情報取得ステップ及び前記材料層情報取得ステップにより取得した情報に基づき、前記境界面の深さ位置を算出する深さ位置算出ステップとを含むことをその要旨とする。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項7において、前記深さ位置算出ステップでは、前記対象物表面を起点として前記超音波が前記材料層を通過するのに要する時間を求め、その求めた通過所要時間と前記材料層の厚さ及び音速とから、前記境界面の深さ位置を算出することをその要旨とする。
【発明の効果】
【0017】
以上詳述したように、請求項1~8に記載の発明によると、Bモード画像に基づいて所望とする深さ位置のCモード画像を容易に表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明を具体化した実施形態の超音波映像装置を示す概略構成図。
【
図2】実施形態の超音波映像装置の電気的構成を示すブロック図。
【
図3】実施形態の超音波映像装置の表示画面を示す写真。
【
図4】実施形態の超音波映像装置の動作を説明するためのフローチャート。
【
図5】実施形態の超音波映像装置の動作を説明するためのフローチャート。
【
図6】実施形態の超音波映像装置の動作を説明するためのフローチャート。
【
図7】表示装置に表示されたBモード画像を示す写真。
【
図8】表示装置に表示されたBモード画像を示す写真。
【
図9】表示装置に表示されたBモード画像を示す写真。
【
図10】表示装置に表示されたBモード画像を示す写真。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した実施形態の超音波探傷映像装置(SAT)11を
図1~
図10に基づき詳細に説明する。
【0020】
図1は、実施形態の超音波探傷映像装置11を示す概略構成図である。
図1に示されるように、本実施形態の超音波探傷映像装置11は、超音波を用いて検査対象物1の内部の様子を映像化して非破壊で観察するための装置であって、スキャナ部21とPC(パーソナルコンピュータ)51とによって構成されている。なお、
図1では本体部とディスプレイとが一体のPC51を示したが、本体部とディスプレイとが別体のPC51を用いて装置を構成しても勿論よい。
【0021】
スキャナ部21は、ベース22、水槽5、移動機構部30、超音波プローブ27等を備えている。水槽5は平板状のベース22の上面中央部に支持されている。水槽5には水などの超音波伝達媒体W1が溜められており、その中には検査対象物1が浸漬されている。本実施形態では、複数の材料層2、3、4を積層した構造を有する積層体を検査対象物1としている。検査対象物1の例としては、半導体(樹脂パッケージ、セラミックパッケージ、ICチップ、リードフレーム等)を挙げることができる。この超音波探傷映像装置11は、複数の材料層2、3、4における境界面K1、K2の剥離(層間剥離)、クラック、ボイドなどを検出する。なお、半導体以外に、セラミック製品、金属溶接製品、ロウ付け製品などにおける境界面K1、K2の剥離等を検出しても勿論よい。
【0022】
ベース22上には移動機構部30が設置されている。水槽5の左右両側には、Y軸方向に沿って延びる一対のレール26が敷設されている。一対のレール26上には、Y軸移動機構24がY軸方向に移動可能に案内支持されている。Y軸移動機構24は、略コ字状に形成されたZ軸移動機構25をZ軸方向に移動可能に支持している。Z軸移動機構25は、X軸移動機構23をX軸方向に移動可能に支持している。X軸移動機構23は水槽5の上方に位置するように構成されており、X軸移動機構23の下面には超音波プローブ27が下向きに取り付けられている。
【0023】
超音波プローブ27は、下端に圧電素子からなる超音波振動子28を備えている。超音波振動子28の下面にはロッド29が接続されている。そのロッド29の先端側は、検査対象物1の真上に配置された状態で超音波伝達媒体W1に浸漬される。超音波振動子28が発した超音波は、ロッド29及び超音波伝達媒体W1を介して検査対象物1に伝達される。
【0024】
超音波振動子28は、圧電素子からなり、10MHz~140MHz程度(本実施例では50MHz)の超音波を発生する。超音波振動子28は、発生した超音波を検査対象物1に向けて照射(送信)した後、検査対象物1から返ってくる反射波を受信する。
【0025】
図2は、本実施形態の実施形態の超音波探傷映像装置11の電気的構成を示すブロック図である。
【0026】
図2に示されるように、スキャナ部21は、超音波プローブ27、移動機構部30、パルス発生回路31、送受波分離回路33、受信回路34、検波回路35、A/D変換回路36、I/F回路37、コントローラ39、エンコーダ40等を備えている。
【0027】
移動機構部30は、上記のとおり、X軸移動機構23、Y軸移動機構24及びZ軸移動機構25を備えており、特にX軸移動機構23及びY軸移動機構24によりXY平面にて二次元走査を行う。これらの機構は、それぞれの軸方向へ移動するための駆動力を与えるモータ41、42、43を有している。これらのモータ41、42、43としては、例えばステッピングモータやリニアモータなどが使用される。各モータ41、42、43にはコントローラ39が電気的に接続されており、このコントローラ39の駆動信号に応答してモータ41、42、43が駆動される。
【0028】
また、本実施形態においては、X軸移動機構23に対応してエンコーダ40が設けられ、エンコーダ40によりX軸移動機構23の走査位置が検出される。具体的には、走査範囲を300個×300個の測定点に分割した場合、1回のX軸方向の走査が300分割される。そして、各測定点の位置がエンコーダ40によって検出されPC51に取り込まれる。PC51はそのエンコーダ40の出力に同期して駆動制御信号を生成し、その駆動制御信号をCPU54に供給する。CPU54は、この駆動制御信号に基づいてモータ41を駆動する。また、CPU54は、エンコーダ40の出力信号に基づきX軸方向の1ラインの走査が終了した時点でモータ42を駆動して、Y軸移動機構24をY軸方向に1個分移動させる。
【0029】
CPU54は、駆動制御信号に同期してトリガ信号を生成してパルス発生回路38に供給する。これにより、パルス発生回路38において、そのトリガ信号に同期したタイミングで励起パルスが生成される。その励起パルスが送受波分離回路33を介して超音波振動子28に供給される結果、超音波振動子28から超音波が送信される。
【0030】
超音波振動子28は、送受波兼用であるため、検査対象物1からの超音波の反射波を受信して電気信号に変換する。そして、その反射波の信号は、送受波分離回路33を介して受信回路34に供給される。受信回路34は、信号増幅回路を含んで構成されていて、反射波の信号を増幅して検波回路35に出力する。
【0031】
検波回路35は、検査対象物1からの反射波信号を検出するための回路であり、図示しないゲート回路を含んで構成されている。本実施形態の検波回路35は、超音波振動子28で受信した反射波信号のなかから、必要な信号のみを抽出する。そして、検波回路35で抽出された反射波信号は、A/D変換回路36に供給されてA/D変換された後、I/F回路37に入力される。I/F回路37は、PC51との間で信号の授受を行うためのインターフェースである。デジタル化された反射波信号は、I/F回路37を介してPC51側に転送される。なお、コントローラ39及びエンコーダ40もI/F回路37に電気的に接続されており、これらの出力信号はI/F回路37を介してPC51側に転送される。
【0032】
PC51は、表示装置52、I/F回路53、CPU54(中央処理装置)、メモリ55、記憶装置56及び入力装置57を備え、それらはバス58を介して相互に通信可能に接続されている。
【0033】
CPU54は、メモリ55を利用して制御プログラムを実行し、システム全体を統括的に制御する。制御プログラムとしては、移動機構部30による二次元走査を制御するためのプログラム、A、B、C各モードの画像を生成表示するためのプログラムなどが含まれる。なお、CPU54とは別に例えばDSP(Digital Signal Processor:デジタル信号プロセッサ)を設けて、そこでCPU54が行っている信号処理の一部を行わせてもよい。
【0034】
I/F回路53は、スキャナ部21との間で信号の授受を行うためのインターフェースである。I/F回路53は、超音波振動子28に制御信号(コントローラ39への駆動制御信号)を出力したり、超音波振動子28からの転送データを入力したりする役割を果たすものである。なお、超音波振動子28との間で信号の授受を行う場合には、上記のような物理的なインターフェースに限定されることはなく、無線インターフェースを用いても勿論よい。
【0035】
表示装置52は、例えば、液晶、プラズマ、有機EL(electroluminescence)等のモニタディスプレイである。表示装置52は、カラー表示、モノクロ表示を問わずに使用できるが、カラー表示であることが望ましい。この表示装置52は、検査対象物1への超音波の送受信に基づいて生成したAモード画像G1、Bモード画像G2及びCモード画像G3を表示画面52a上に並べて同時に表示可能とする装置である。
図1、
図3に示されるように、本実施形態では画面左側にAモード画像G1、画面中央にBモード画像G2、画面右側にCモード画像G3を配置している。
【0036】
ここで、Aモード画像G1(Aスコープ画像)は、超音波振動子28における受信音圧と超音波の伝播時間とを直角座標にとって表した波形の画像である。Aモードによると、検査対象物1内の異常発生部位の反射音圧や、検査対象物1の対象物表面60からの深さを把握しやすいという特徴がある。
【0037】
Bモード画像G2(Bスコープ画像)は、Aモードの波形を輝度変調して線で表し、超音波振動子28の検査対象物1上におけるX軸方向の位置(一次元)と音波伝播時間とを直角座標にとって表した断層画像である。Bモードによると、走査線下の異常発生部位の分布状態、存在、深さが表示されるので、深さ方向の内部構造を直感的に把握しやすいという特徴がある。
【0038】
Cモード画像G3(Cスコープ画像)は、超音波振動子28の検査対象物1におけるX軸方向及びY軸方向の所定深さ位置(二次元)を直角座標にとって表した平面画像である。Cモードによると、異常発生部位の平面的な広がりの分布が把握しやすいという特徴がある。なお、Cモード画像G3は、あらかじめ設定されたゲートの範囲に基づいて表示される。ゲートの深さ位置を変化させることにより、異常発生部位の深さ方向変化を知ることができる。
【0039】
入力装置57は、タッチパネル、マウス、キーボード、ポインティングデバイス等の入力ユーザインタフェースであって、ユーザからの要求や指示、パラメータの入力に用いられる。
【0040】
記憶装置56は、磁気ディスク装置や光ディスク装置などのHDD(ハードディスクドライブ)や、SSD(ソリッドステートドライブ)であり、各種の制御プログラム及び各種のデータを記憶している。メモリ55は、RAM(ランダムアクセスメモリ)やROM(リードオンリーメモリ)を含み、超音波画像生成のためにあらかじめ取得された反射波形や、それに基づく各種の計算結果などを一時的に保存する。CPU54は、入力装置57による指示に従い、プログラムやデータを記憶装置56からメモリ55へ転送し、それを逐次実行する。なお、CPU54が実行するプログラムとしては、メモリカード、フレキシブルディスク、光ディスクなどの記憶媒体に記憶されたプログラムや、通信媒体を介してダウンロードしたプログラムでもよく、その実行時には記憶装置56にインストールして利用する。
【0041】
本実施形態においてCPU54は、境界面位置算出手段54a、境界面可視化手段54b、ゲート自動設定表示手段54cとして機能する。境界面位置算出手段54aは、材料層2、3、4同士の境界面K1、K2の深さ位置を算出する。境界面可視化手段54bは、境界面K1、K2の深さ位置を示すマーカー画像を生成する。境界面可視化手段54bは、さらにそのマーカー画像をBモード画像G2上にて境界面K1、K2の深さ位置に対応する位置に重畳することで、境界面K1、K2を可視化する。本実施形態の境界面可視化手段54bは、上記マーカー画像として、カラーのマーカーライン画像L1、L2を生成する。ゲート自動設定表示手段54cは、境界面K1、K2の深さ位置を含む所定範囲にCモード画像G3を得るためのゲートを設定し、ゲートの設定範囲を表すゲート画像61、62を生成する。また、ゲート自動設定表示手段54cは、そのゲート画像61、62をBモード画像G2上にてマーカーライン画像L1、L2を跨ぐように重畳する。
【0042】
次に、本実施形態の超音波探傷映像装置11において、プロセッサであるCPU54が実行する演算処理について、
図4~
図6のフローチャートを用いて説明する。
【0043】
ここでは前提作業として、検査対象物1の材料層2、3ごとの厚さ及び物性値に関する情報とをメモリ55にあらかじめ記憶させておく。例えば、第1の材料層2が既知の金属Aからなり、第2の材料層3が既知の金属Bからなる場合、金属Aの厚さ(mm)、金属Aを進行する超音波の音速(mm/sec)、金属Bの厚さ(mm)、金属Bを進行する超音波の音速(mm/sec)、を記憶させておく。なお、これらはいずれも既知のパラメータである。既知パラメータの入力は、ユーザ自らが行ってもよく、あるいは所定のプログラムにより自動的に行ってもよい。
【0044】
まずCPU54は、スキャナ部21を駆動して、検査対象物1に対して超音波の送受信をしながらX軸及びY軸の2方向にスキャンする初期動作を実行させる(ステップS100)。次にCPU54は、ステップS110に移行して二次元的なスキャンが終了したか否かを判定する。スキャンが終了していないと判定した場合(ステップS110:N)、CPU54は、ステップS100に戻り、引き続きスキャナ部21にスキャンを実行させる。スキャンが終了したと判定した場合(ステップS110:Y)、CPU54は、ステップS116に移行してAモード画像G1及びBモード画像G2を生成し、さらにステップS118に移行して表示画面52aにAモード画像G1及びBモード画像G2を表示させる。なお、
図7はこのときのBモード画像G2の一例を示すものである。その後、CPU54は、ステップS120に移行して所定の境界面位置算出処理を実行する。
【0045】
境界面位置算出処理では、まず、先に行った検査対象物1への超音波の送受信の結果に基づいて、対象物表面60の位置情報を取得する(ステップS122)。具体的には、送信時のパルスの所定時間経過後に最初に現れる比較的大きなパルスが対象物表面60からの反射波であるので、そこを対象物表面60の位置として定義する。なお、このとき対象物表面60であることを示す何らかの識別画像を生成し、それをBモード画像G2における対象物表面60の部位に重畳してもよい。表面情報取得ステップを実行した後、CPU54はステップS124に移行して、材料層情報取得ステップを実行する。材料層情報取得ステップにおいて、CPU54は、材料層2、3ごとの厚さ及び物性値(即ち音速)に関する情報をメモリ55から読み出して取得する。次にCPU54はステップS126に移行して、深さ位置算出ステップを実行する。深さ位置算出ステップにおいて、CPU54は、表面情報取得ステップ及び材料層情報取得ステップにより取得した情報に基づき、材料層2、3同士の境界面K1の深さ位置を算出する。具体的には、対象物表面60を起点として超音波が第1の材料層2を通過するのに要する時間を求め、その求めた通過所要時間と第1の材料層2の厚さ及び音速とから、第1の材料層2と第2の材料層3との境界面K1(便宜上「第1境界面K1」とする。)の深さ位置を算出する。なお、第2の材料層3の下にさらに第3の材料層4が存在する場合であっても、同様の手順が適用される。即ち、対象物表面60を起点として超音波が第1の材料層2を通過するのに要する時間、第2の材料層3を通過するのに要する時間をそれぞれ求める。そして、求めた2つの通過所要時間と、第1の材料層2の厚さ及び音速、第2の材料層3の厚さ及び音速とから、第2の材料層3と第3の材料層4との境界面K2(便宜上「第2境界面K2」とする。)の深さ位置を算出する。
【0046】
次にCPU54は、ステップS130に移行してマーカー画像生成ステップを実行し、境界面K1、K2の深さ位置を示すマーカー画像を生成する。本実施形態では、マーカー画像として、カラーのマーカーライン画像L1、L2を生成する。次にCPU54は、ステップS140に移行してマーカー画像重畳ステップを実行する。即ち、先に生成したマーカーライン画像L1、L2をBモード画像G2上にて境界面K1、K2の深さ位置に対応する位置にそれぞれ重畳する。なお、
図8はこのときのBモード画像G2の一例を示している。同図では、第1境界面K1にマーカーライン画像L1を重畳して表示した状態が示されている。
【0047】
次にCPU54は、ステップS150に移行して、Cモード画像G3を得るためのゲートの算出及び設定を実行する。このときゲートの範囲は、あらかじめ決められた条件に基づいて自動的に設定される。具体的には、ゲートの範囲は、境界面K1の深さ位置を含む所定範囲(例えば、当該深さ位置を基準として深さ方向に±0.01mmの範囲)となるように自動的に設定される。
【0048】
次にCPU54は、ステップS160に移行して矩形枠状のゲート画像61、62を生成し、さらにステップS170に移行して表示画面52aのBモード画像G2上にゲート画像61、62を重畳させて表示する。なお、
図9はこのときのBモード画像G2の一例を示す。同図では、第1境界面K1に対応したマーカーライン画像L1を跨ぐようにゲート画像61が重畳して表示されている。また、
図10はこのときのBモード画像G2の別の例を示す。同図では、第1境界面K1に対応したマーカーライン画像L1を跨ぐようにゲート画像61が重畳して表示され、かつ、第2境界面K2に対応したマーカーライン画像L2を跨ぐようにゲート画像62が重畳して表示されている。なお、ゲート画像61、62はカラーの画像であることが好ましい。ゲート画像61、62の色は、上記のマーカーライン画像L1、L2と同じ色であってもよいほか、異なる色であってもよい。また、ゲート画像61、62が複数ある場合、それらを同じ色で表示してもよいほか、異なる色で表示してもよい。
【0049】
次にCPU54は、ステップS180に移行して、自動設定を経て現在表示されているゲートが複数であるか否かを判定する。ゲートが複数ではないと判定した場合、CPU54は、ステップS190、S200を飛ばしてステップS210に移行する(ステップS180:N)。ゲートが複数であると判定した場合、CPU54は、ステップS190に移行して、複数あるゲートのうちから任意の1つのものを選択することを促す文字等を表示画面52a上に表示する(ステップS180:Y)。ユーザは、このような文字等の表示を契機として入力装置57を操作し、1つのゲートを選択する。次にCPU54は、ステップS200に移行して、1つのゲートが選択済であるか否かを判定する。CPU54は、1つのゲートが選択済でない場合にステップS190に戻り(ステップS200:N)、1つのゲートが選択済である場合にステップS210に移行する(ステップS200:Y)。
【0050】
次にCPU54は、ステップS210に移行して、選択された1つのゲートの位置がこれで良いか否かをユーザに問う文字等を表示するとともに、ユーザからの応答結果に基づいて判定を行う。ゲートの位置がこれで良いと判定(即ち位置変更の必要なしと判定)した場合、CPU54は、ステップS220~240を飛ばしてステップS250に移行する(ステップS210:Y)。ゲートの位置が良くないと判定(即ち位置変更の必要ありと判定)した場合、CPU54は、ステップS220に移行し、ゲート位置の変更を促す文字等を表示画面52a上に表示する(ステップS210:N)。ユーザは、このような文字等の表示を契機として入力装置57を操作し、ゲート位置を画面上下方向に適宜変更する。次にCPU54は、ステップS230に移行して、ゲートの位置が変更済であるか否かを判定する。ゲート位置変更済であると判定した場合、CPU54はステップS240に移行する(ステップS230:Y)。ゲート位置変更済ではないと判定した場合、CPU54はステップS220に戻り、再びゲートの位置変更を促す(ステップS230:N)。
【0051】
ステップS240においてCPU54は、ゲートの位置がこれで良いか否かをユーザに問う文字等を表示するとともに、ユーザからの応答結果に基づいて判定を行う。ゲートの位置が良くないと判定した場合、CPU54は、ステップS220に戻り、再びゲートの位置変更を促す(ステップS240:N)。ゲートの位置がこれで良いと判定した場合、CPU54は、ステップS250に移行する(ステップS240:Y)。すると、CPU54はゲート設定範囲についてのCモード画像を生成し(ステップS250)、さらにその生成したCモード画像を表示画面上に表示する(ステップS260)。
【0052】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0053】
(1)本実施形態の超音波探傷映像装置11では、検査対象物1への超音波の送受信に基づいて、Aモード画像G1、Bモード画像G2及びCモード画像G3を生成し、それら画像G1~G3を表示画面52a上に並べて同時に表示しうる。この超音波探傷映像装置11は、境界面位置算出手段54aと境界面可視化手段54bとを備えたことを特徴とする。この構成によると、境界面位置算出手段54aが材料層2、3、4同士の境界面K1、K2の深さ位置を算出し、その算出結果に基づいて境界面可視化手段54bが境界面K1、K2の深さ位置を示すマーカー画像L1、L2を生成しかつBモード画像G2上に重畳する。その結果、複数の材料層2、3、4の境界面K1、K2が可視化されて判別しやすくなる。このため、経験や慣れがなくても所望とする深さ位置のCモード画像G3を表示することができ、また、超音波による画像解析を容易かつ正確に行うことができるようになる。例えば本実施形態においては、検査対象物1である半導体の境界面K1、K2にて発生しやすい異常(剥離、クラック、ボイドなど)を精度よく検出することができる。従って、半導体製造時の不良品検査に適した装置を提供することができる。
【0054】
(2)本実施形態では、境界面位置算出手段54aとして機能するCPU54が、検査対象物1への超音波の送受信によって取得した対象物表面60の位置情報と、材料層2、3、4ごとの厚さ及び物性値に関する情報とに基づき、境界面K1、K2の深さ位置を算出する。特には、対象物表面60を起点として超音波が材料層2、3を通過するのに要する時間を求め、その求めた通過所要時間と材料層2、3の厚さ及び音速とから、境界面K1、K2の深さ位置を算出する。この構成によると、境界面K1、K2の深さ位置を容易にかつ正確に算出することができる。
【0055】
(3)本実施形態では、境界面可視化手段54bとして機能するCPU54が、境界面K1、K2の深さ位置を示すカラーのマーカーライン画像L1、L2を生成する。従って、基本的にモノトーンで表示されたBモード画像G2に重畳したときに、見やすいマーカーライン画像L1、L2とすることができる。また、ライン状の画像であるため、境界面K1、K2がある深さ位置に沿って、いわば着色された状態となる。よって、境界面K1、K2の存在が感覚的に把握しやすくなるという利点がある。
【0056】
(4)本実施形態の超音波探傷映像装置11は、さらにゲート自動設定表示手段54cを備えたことを特徴とする。この構成によると、ゲート自動設定表示手段54cとして機能するCPU54が、境界面K1、K2の深さ位置を含む所定範囲にCモード画像G3を得るためのゲートを設定する。そして、ゲートの設定範囲を表すゲート画像61、62を生成し、そのゲート画像61、62をBモード画像G2上にてマーカーライン画像L1、L2を跨ぐように重畳する。この構成によると、ユーザ自身により行われる必要があったゲート設定作業が、かなりの程度まで自動化される。それゆえ、慣れや経験の有無を問わず、Cモード画像G3を得る際のゲートを適切に設定することが可能となる。よって、所望とする深さ位置のCモード画像G3を容易にかつ確実に表示することが可能となる。
【0057】
なお、上記実施形態を以下のように変更してもよい。
【0058】
・上記実施形態では、画面左側にAモード画像G1、画面中央にBモード画像G2、画面右側にCモード画像G3を配置したが、これとは異なる配置態様にて3つの画像を配置しても勿論よい。また、上記実施形態では、1台の表示装置52における同一の表示画面52a上に3つの画像を並べて同時に表示したが、2台の表示装置52を用いてもよい。この場合、一方の表示装置52にAモード画像G1及びBモード画像G2を表示するとともに、同時に他方の表示装置52にCモード画像G3を表示してもよい。
【0059】
・上記実施形態では、所定のプログラムにより、プロセッサであるCPU54を境界面位置算出手段54a、境界面可視化手段54b、ゲート自動設定表示手段54cとして機能させていたが、これに限定されない。例えば、境界面位置算出手段54aとして機能する回路、境界面可視化手段54bとして機能する回路、ゲート自動設定表示手段54cとして機能する回路をそれぞれ個別に備えたものとしてもよい。
【0060】
・上記実施形態では、境界面K1、K2の深さ位置を示すマーカー画像として、カラーのマーカーライン画像L1、L2を採用したが、これに限定されない。例えば、連続したライン状ではないマーカー画像を採用してもよく、例えば境界面K1、K2に沿って複数のドットを並べて配置したマーカー画像などであってもよい。あるいは、境界面K1、K2の深さ位置を示す矢印画像をマーカー画像としてもよい。なお、これらマーカー画像の近傍に、文字情報を付してもよい。
【0061】
・上記実施形態では、Cモード画像G3を得るためのゲートの設定範囲を表す矩形枠状のゲート画像61、62を生成、重畳するように構成したが、これに限定されない。例えば、ゲートの設定範囲が分かりやすいものであれば、ゲート画像61、62は矩形枠状でなくてもよく、別の形状でも構わない。
【0062】
・上記実施形態では、境界面K1、K2の深さ位置を示すマーカー画像をBモード画像G2上のみにおいて重畳したが、例えば、同様のマーカー画像をAモード画像G1上にも重畳してもよい。
【0063】
・上記実施形態では、二次元スキャンの終了後に、Aモード画像G1及びBモード画像G2を生成しかつ表示した状態で境界面位置算出処理を実行したが(
図4のステップS110~S120を参照)、これに限定されない。例えば、二次元スキャンの終了後に、Bモード画像G2のみを生成しかつ表示した状態で境界面位置算出処理を実行してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…検査対象物
2、3、4…材料層
11…超音波映像装置としての超音波探傷映像装置
52a…表示画面
54a…境界面位置算出手段
54b…境界面可視化手段
54c…ゲート自動設定表示手段
60…対象物表面
61、62…ゲート画像
G1…Aモード画像
G2…Bモード画像
G3…Cモード画像
K1、K2…境界面
L1、L2…マーカー画像としてのマーカーライン画像