(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034421
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】姿勢判定装置、測定システム、及び、姿勢判定方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/107 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
A61B5/107 300
A61B5/107 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138643
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西口 絵里子
(72)【発明者】
【氏名】梶 雄登
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038VA03
4C038VA04
4C038VB03
4C038VC01
4C038VC05
(57)【要約】
【課題】対象者に非接触で、プライバシーに配慮して、対象者が適切な姿勢であることを判定すること。
【解決手段】姿勢判定装置20は、対象者の表面温度の分布を示す画像を取得する温度分布取得部23と、温度分布取得部23が取得した画像に基づいて、対象者の顔の向きが所定の向きであるか否かを判定する顔向き判定部24と、顔向き判定部24によって対象者の顔の向きが所定の向きであると判定され場合、温度分布取得部23が取得した画像に基づいて、対象者の頭部を検知する頭部検知部25と、温度分布取得部23が取得した画像に基づいて、対象者の肩幅を計測する肩幅計測部27と、肩幅計測部27の計測結果に基づいて、対象者の肩幅から身体の向きが所定の向きであるか否かを判定する肩幅判定部28と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の表面温度の分布を示す画像を取得する温度分布取得部と、
前記温度分布取得部が取得した前記画像に基づいて、前記対象者の顔の向きが所定の向きであるか否かを判定する顔向き判定部と、
前記顔向き判定部によって前記対象者の顔の向きが所定の向きであると判定された場合、前記温度分布取得部が取得した前記画像に基づいて、前記対象者の頭部を検知する頭部検知部と、
前記温度分布取得部が取得した前記画像に基づいて、前記対象者の肩幅を計測する肩幅計測部と、
前記肩幅計測部の計測結果に基づいて、前記対象者の肩幅から身体の向きが所定の向きであるか否かを判定する肩幅判定部と、
を備える、姿勢判定装置。
【請求項2】
対象者までの距離を示すセンサデータを取得する距離取得部と、
前記距離取得部が取得した前記センサデータに基づいて、前記対象者が静止しているか否かを判定する静止判定部と、
を備え、
前記顔向き判定部は、前記静止判定部によって前記対象者が静止していると判定された場合、前記対象者の顔の向きを判定し、
前記肩幅判定部は、前記静止判定部によって前記対象者が静止していると判定された場合、前記対象者の身体の向きを判定する、
請求項1に記載の姿勢判定装置。
【請求項3】
前記肩幅判定部は、前記対象者がバイタルデータの測定装置に対して正面を向いているか否かを判定する、
請求項1に記載の姿勢判定装置。
【請求項4】
前記肩幅判定部は、前記肩幅計測部によって計測された前記肩幅の計測値と、前記距離に応じて推測される、正面を向いている前記対象者の肩幅の推測値とが一致している場合、前記対象者が正面を向いていると判定する、
請求項2に記載の姿勢判定装置。
【請求項5】
前記肩幅判定部は、前記肩幅計測部によって計測された前記肩幅を示す直線と、水平を示す直線との傾きのずれか閾値角度以下である場合、前記対象者の身体の向きが所定の向きであると判定する、
請求項1に記載の姿勢判定装置。
【請求項6】
前記頭部検知部は、前記温度分布取得部が取得した前記画像から、前記対象者の顔の頂点および顔の輪郭を検知する、
請求項1に記載の姿勢判定装置。
【請求項7】
前記肩幅計測部は、前記温度分布取得部が取得した前記画像から、前記顔の頂点より下方かつ前記顔の輪郭より外側の輪郭を形成する近似点を結んで身体の輪郭として検知し、前記身体の輪郭上の近似点から肩幅の計測する、
請求項6に記載の姿勢判定装置。
【請求項8】
前記対象者の表面温度の分布を示す画像を撮影可能な赤外線センサと、
請求項1に記載の姿勢判定装置と、
を備える測定システム。
【請求項9】
対象者の表面温度の分布を示す画像を取得する温度分布取得ステップと、
前記温度分布取得ステップによって取得された前記画像に基づいて、前記対象者の頭部を検知する頭部検知ステップと、
前記温度分布取得ステップによって取得された前記画像に基づいて、前記対象者の肩幅を検知する肩幅検知ステップと、
前記頭部検知ステップの検知結果に基づいて、前記対象者の顔の向きが所定の向きであるか否かを判定する顔向き判定ステップと、
前記肩幅検知ステップの検知結果に基づいて、前記対象者の肩幅から身体の向きが所定の向きであるか否かを判定する肩幅判定ステップと、
を含む姿勢判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、姿勢判定装置、測定システム、及び、姿勢判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、バイタルデータの測定時、または、レントゲン画像の撮影時などにおいては、対象者が適切な姿勢をとる必要がある。被検者の日常行動における自然な立居振舞から身体の様々な部位について姿勢、その歪みを3次元的に検出する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の技術では、被検者の身体の異なる測定部位に配置されたセンサから取得される加速度に基づいて、被検者の身体の初期姿勢に対する姿勢などを3次元的に判定する。被検者の体のバイタルデータの非接触測定を実行する第1の測定部と、第1の測定部に対する体の動きを測定する第2の測定部を備える測定装置に係る技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載の技術では、画像を用いて体の動きを測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-054433号公報
【特許文献2】特表2021-510100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、対象者の身体にセンサを装着する必要がある。このように、対象者の身体に装着したセンサを用いて姿勢を判定する方法は、例えば、高齢者または幼児などには身体に負担がかかり適用が難しいおそれがある。
【0005】
また、特許文献2に記載の技術のように撮影した画像を使って対象者の体の動きを判定する方法では、プライバシーを侵害しないように十分に留意する必要がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、対象者に非接触で、プライバシーに配慮して、対象者が適切な姿勢であることを判定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る姿勢判定装置は、対象者の表面温度の分布を示す画像を取得する温度分布取得部と、前記温度分布取得部が取得した前記画像に基づいて、前記対象者の顔の向きが所定の向きであるか否かを判定する顔向き判定部と、前記顔向き判定部によって前記対象者の顔の向きが所定の向きであると判定され場合、前記温度分布取得部が取得した前記画像に基づいて、前記対象者の頭部を検知する頭部検知部と、前記温度分布取得部が取得した前記画像に基づいて、前記対象者の肩幅を計測する肩幅計測部と、前記肩幅計測部の計測結果に基づいて、前記対象者の肩幅から身体の向きが所定の向きであるか否かを判定する肩幅判定部と、を備える。
【0008】
本発明に係る測定システムは、前記対象者の表面温度の分布を示す画像を撮影可能な赤外線センサと、上記の姿勢判定装置と、を備える。
【0009】
本発明に係る姿勢判定方法は、対象者の表面温度の分布を示す画像を取得する温度分布取得ステップと、前記温度分布取得ステップによって取得された前記画像に基づいて、前記対象者の頭部を検知する頭部検知ステップと、前記温度分布取得ステップによって取得された前記画像に基づいて、前記対象者の肩幅を検知する肩幅検知ステップと、前記頭部検知ステップの検知結果に基づいて、前記対象者の顔の向きが所定の向きであるか否かを判定する顔向き判定ステップと、前記肩幅検知ステップの検知結果に基づいて、前記対象者の肩幅から身体の向きが所定の向きであるか否かを判定する肩幅判定ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、対象者に非接触で、プライバシーに配慮して、対象者が適切な姿勢であることを判定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態に係る測定システムの構成例の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、ミリ波センサおよび赤外線センサと対象者との位置関係を説明する模式図である。
【
図3】
図3は、対象者の顔および身体の輪郭の検知を説明する模式図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る姿勢判定装置における処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、実施形態に係る姿勢判定装置における処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、実施形態に係る姿勢判定装置における処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る姿勢判定装置、測定システム、及び、姿勢判定方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0013】
[実施形態]
<測定システム>
図1は、実施形態に係る測定システムの構成例の一例を示すブロック図である。測定システム1は、例えば、バイタルデータの測定時、または、レントゲン画像の撮影時などにおいて、対象者が適切な姿勢であると判定された場合に、バイタルデータの測定を行ったり、レントゲン画像の撮影を行ったりする。本実施形態では、一例として、ミリ波センサ(バイタルデータの測定装置)11を用いた非接触でのバイタルデータの測定について説明する。本実施形態では、測定システム1は、対象者がミリ波センサ11に正対している状態で、言い換えると、対象者がミリ波センサ11の正面90°を向いている状態で、バイタルデータを測定する。測定システム1は、ミリ波センサ11と、赤外線センサ12と、肩幅推定値記憶部13と、通知部18と、通信部19と、姿勢判定装置20とを備える。
【0014】
対象者とは、ミリ波センサ11によってバイタルデータを測定される被測定者である。
【0015】
図2は、ミリ波センサおよび赤外線センサと対象者との位置関係を説明する模式図である。
図2において、ミリ波センサ11および赤外線センサ12と正対した状態における左右方向をX方向という。
図2において、X方向と直交し、ミリ波センサ11および赤外線センサ12から離間する方向をY方向という。ミリ波センサ11は、ミリ波を照射する非接触のセンサである。本実施形態では、ミリ波センサ11は、ミリ波を照射して対象者のバイタルデータを測定する。ミリ波センサ11は、対象者がミリ波センサ11に正対している状態で、バイタルデータを取得する。
【0016】
本実施形態では、ミリ波センサ11は、ミリ波を照射して、ミリ波センサ11から対象者までの距離Lを測定する。本実施形態では、ミリ波センサ11は、ミリ波センサ11からから対象者の心臓までの距離Lを測定する。
【0017】
赤外線センサ12は、対象者の顔および身体の輪郭、および、顔の向きを検知可能なセンサの一例である。赤外線センサ12は、赤外線を照射して物体の表面の温度を検知するセンサである。本実施形態では、赤外線センサ12は、対象者の顔および身体の表面温度の分布を示す画像を撮影する。赤外線センサ12は、撮影した画像を温度分布取得部23へ出力する。赤外線センサ12は、ミリ波センサ11と左右方向または上下方向に近接して配置される。
【0018】
本実施形態では、ミリ波センサ11および赤外線センサ12は、例えば、高齢者用の居室内に設置されている。
【0019】
肩幅推定値記憶部13は、対象者の肩幅の推定値K´を記憶しているデータベースである。肩幅推定値記憶部13は、ミリ波センサ11からの距離Lごとに、ミリ波センサ11に正対している対象者の肩幅の推定値である肩幅の推定値K´を記憶する。肩幅の推定値K´は、距離Lに応じて変化する。肩幅の推定値K´は、距離Lが長くなるほど狭くなる。肩幅推定値記憶部13は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリなどの半導体メモリ素子などの記録媒体である。肩幅推定値記憶部13は、図示しない通信部を介して接続される、外部の記憶装置であってもよい。
【0020】
通知部18は、一例としては、測定システム1に固有の音声出力装置、または、他のシステムと共用した音声出力装置などである。通知部18は、例えば、スピーカである。通知部18は、通知制御部28から出力された音声信号に基づいて、例えば、対象者の姿勢が適切になったこと、または、バイタルデータの測定を開始することを音声で通知する。通知部18は、通知制御部28から出力された音声信号に基づいて、例えば、対象者の姿勢が適切ではないこと、または、バイタルデータの測定を開始できないことを音声で通知する。通知部18は、例えば、表示部である液晶ディスプレイまたはLED等表示器である。通知制御部28から出力された信号に基づいて、例えば、対象者の姿勢が適切になったこと、または、バイタルデータの測定を開始することを画像または光で通知してもよい。通知制御部28から出力された信号に基づいて、例えば、対象者の姿勢が適切ではないこと、または、バイタルデータの測定を開始できないことを画像または光で通知してもよい。
【0021】
<姿勢判定装置>
姿勢判定装置20は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などで構成された演算処理装置(制御装置)である。姿勢判定装置20は、記憶されているプログラムをメモリにロードして、プログラムに含まれる命令を実行する。姿勢判定装置20には図示しない内部メモリが含まれ、内部メモリは姿勢判定装置20におけるデータの一時記憶などに用いられる。姿勢判定装置20は、対象者の姿勢が所定の姿勢であることを判定する。本実施形態では、姿勢判定装置20は、対象者がバイタルデータを測定するミリ波センサ11の正面90°を向いていることを判定する。
【0022】
姿勢判定装置20は、距離取得部21と、静止判定部22と、温度分布取得部23と、顔向き判定部24と、頭部検知部25と、肩幅推定値取得部26と、肩幅計測部27と、肩幅判定部28と、バイタルデータ取得部31と、通知制御部32と、通信制御部33とを備える。
【0023】
距離取得部21は、ミリ波センサ11から対象者までの距離Lを示すセンサデータを取得する。本実施形態では、距離取得部21は、ミリ波センサ11から対象者の心臓までの距離Lを示すセンサデータを取得する。
【0024】
温度分布取得部23は、赤外線センサ12から対象者の表面温度の分布を示す画像を取得する。本実施形態では、温度分布取得部23は、赤外線センサ12から対象者の顔および身体の表面温度の分布を示す画像を取得する。
【0025】
静止判定部22は、距離取得部21が取得した距離Lに基づいて、対象者が静止しているか否かを判定する。本実施形態では、静止判定部22は、距離Lの変化量が指定範囲内であるか否かを判定することによって、静止状態か否かを判定する。静止判定部22は、距離Lの変化量が指定範囲内である場合、静止状態であると判定する。
【0026】
指定範囲は、例えば、対象者の肩幅の範囲内である。対象者の肩幅は、対象者がミリ波センサ11に正対した状態の肩幅である。対象者の肩幅は、あらかじめ記憶部に記憶されている。対象者の肩幅は、距離Lが長くなるほど狭くなるように設定してもよい。
【0027】
顔向き判定部24は、温度分布取得部23が取得した画像に基づいて、対象者の顔の向きが所定の向きであるか否かを判定する。顔向き判定部24は、赤外線センサ12の画像から、対象者以外である、画像の背景の物体からの反射をノイズとして除去する。ノイズを除去する方法は公知の方法を使用可能であり、限定されない。そして、顔向き判定部24は、ノイズを除去した画像、言い換えると、対象者の顔および身体の表面温度の分布を示す画像に、人体の体温に近い温度、例えば、35℃以上38℃以下の温度を示す、所定範囲の面積の領域があるか否かを判定する。所定範囲の面積とは、例えば、画像中において、人物の顔の面積として妥当な面積としてあらかじめ図示しない記憶部に記憶されている。顔向き判定部24は、対象者の顔および身体の表面温度の分布を示す画像に、人体の体温に近い温度の領域があると判定される場合、ミリ波センサ11に対して正面を向いていると判定する。
【0028】
本実施形態では、顔向き判定部24は、静止判定部22によって対象者が静止していると判定された場合、対象者の顔の向きを判定する。
【0029】
図3は、対象者の顔および身体の輪郭の検知を説明する模式図である。
図3に示すように、頭部検知部25は、温度分布取得部23が取得した画像に基づいて、対象者の頭部を検知する。より詳しくは、まず、頭部検知部25は、赤外線センサ12の画像から、対象者以外である、画像の背景の物体からの反射をノイズとして除去する。ノイズを除去する方法は公知の方法を使用可能であり、限定されない。そして、頭部検知部25は、ノイズを除去した画像、言い換えると、対象者の顔および身体の表面温度の分布を示す画像から、最も温度が高い部分と最も高い温度から所定温度範囲内の温度の部分とを顔の温度分布を示す画像として取得する。そして、頭部検知部25は、顔の温度分布を示す画像にエッジ検出処理を行って、顔の輪郭LHを検知する。頭部検知部25は、顔の輪郭LHから、上下方向に最も高い点を顔の頂点PHとして検知する。
【0030】
肩幅推定値取得部26は、肩幅推定値記憶部13に記憶された肩幅の推定値K´を取得する。本実施形態では、肩幅推定値取得部26は、距離取得部21によって取得された距離Lに応じた肩幅の推定値K´を肩幅推定値記憶部13から取得する。
【0031】
肩幅計測部27は、温度分布取得部23が取得した画像に基づいて、対象者の肩幅を検知する。肩幅計測部27は、頭部検知部25が処理を実行し、顔の輪郭LHおよび顔の頂点PHが検知された後に実行される。
図3ないし
図5を用いて、肩幅検知部25による頭部の検知処理について説明する。まず、
図3に示すように、肩幅計測部27は、頭部検知部25によってノイズを除去した、対象者の顔および身体の表面温度の分布を示す画像から、顔の頂点PHより下方かつ顔の輪郭LHより外側の輪郭を身体の輪郭LBとして検知する。肩幅計測部27は、身体の輪郭LBを少ない点で近似することが好ましい。
【0032】
図4は、肩幅の検知を説明する図である。次に、
図4に示すように、肩幅計測部27は、身体の輪郭LBから、顔の頂点PHを中心にしてA方向を輪郭LBA、B方向を輪郭LBBとする。
【0033】
図5は、肩幅の検知を説明する図である。次に、
図5に示すように、肩幅計測部27は、輪郭LA上において黒丸で示される近似点と、その両隣の近似点とをそれぞれ結ぶ直線を引く。そして、肩幅計測部27は、2本の直線が成す角度θAとして、角度θA>40°の条件を満たす場合、2本の直線の交点である近似点を肩幅算出の為の点PAとする。B方向についても同様にして、肩幅算出の為の点PBを決定する。
【0034】
図6は、肩幅の検知を説明する図である。次に、
図6に示すように、肩幅計測部27は、点PAと点PBとの間の距離を肩幅の計測値Kとする。
【0035】
肩幅判定部28は、肩幅計測部27の検知結果に基づいて、対象者の肩幅から身体の向きが所定の向きであるか否かを判定する。本実施形態では、肩幅判定部28は、静止判定部22によって対象者が静止していると判定された場合、対象者の身体の向きを判定してもよい。本実施形態では、肩幅判定部28は、肩幅計測部27によって検知された肩幅の計測値Kと、肩幅推定値取得部26によって取得された肩幅の推定値K´とを比較して、計測値Kと推定値K´とが一致する場合、対象者の身体の向きが正面90°であると判定する。
【0036】
バイタルデータ取得部31は、対象者の姿勢がバイタルデータの取得に適切な姿勢であると判定された場合、バイタルデータを取得する。本実施形態では、バイタルデータ取得部31は、対象者の姿勢がミリ波センサ11に対して正面90°を向いていると判定された場合、ミリ波センサ11によってバイタルデータを取得する。
【0037】
通知制御部32は、対象者の姿勢の判定結果などを、通知部18により音声、画像または光などで通知する。通知制御部32は、例えば、対象者の姿勢が適切になったこと、または、バイタルデータの測定を開始することを通知部18により音声で通知するよう音声信号を出力する。通知制御部32は、例えば、対象者の姿勢が適切ではないこと、または、バイタルデータの測定を開始できないことを通知部18により音声で通知するよう音声信号を出力する。通知制御部32は、例えば、対象者の姿勢が適切になったこと、または、バイタルデータの測定を開始することを通知部18により画像または光で出力する信号を出力する。通知制御部32は、例えば、対象者の姿勢が適切ではないこと、または、バイタルデータの測定を開始できないことを通知部18により画像または光で出力する信号を出力する。
【0038】
<姿勢判定方法>
次に、
図7ないし
図9を用いて、測定システム1における姿勢判定方法について説明する。
図7は、実施形態に係る姿勢判定装置における処理の流れを示すフローチャートである。
図8は、実施形態に係る姿勢判定装置における処理の流れを示すフローチャートである。
図9は、実施形態に係る姿勢判定装置における処理の流れを示すフローチャートである。姿勢判定装置20は、測定システム1の起動中、常時、ミリ波センサ11から照射されたミリ波の反射波が距離取得部21によって取得され、赤外線センサ12から照射された赤外線の反射波が温度分布取得部23によって取得される。
【0039】
<静止判定方法>
図7を用いて、姿勢判定装置20における静止判定処理について説明する。姿勢判定装置20は、測定システム1の起動中、常時、
図7に示すフローチャートの処理を実行する。
【0040】
姿勢判定装置20は、距離取得部21によって、ミリ波センサ11から対象者の心臓までの距離Lを示すセンサデータを取得する(ステップS101)。姿勢判定装置20は、ステップS102へ進む。
【0041】
姿勢判定装置20は、静止判定部22によって、距離Lの変化量が指定範囲内であるか否かを判定する(ステップS102)。姿勢判定装置20は、静止判定部22によって、距離Lの変化量が指定範囲内であると判定する場合(ステップS102でYes)、ステップS103へ進む。姿勢判定装置20は、静止判定部22によって、距離Lの変化量が指定範囲内であると判定しない場合(ステップS102でNo)、ステップS101の処理を再度実行する。
【0042】
静止判定部22によって、距離Lの変化量が指定範囲内であると判定する場合(ステップS102でYes)、姿勢判定装置20は、静止判定部22によって、静止状態であると判定する(ステップS103)。姿勢判定装置20は、処理を終了する。
【0043】
このようにして、姿勢判定装置20は、対象者が静止状態であることを判定する。
【0044】
<頭部検知方法>
図8を用いて、姿勢判定装置20における正面判断処理のうち頭部検知処理について説明する。姿勢判定装置20は、
図7に示すフローチャートの処理の実行後、
図8に示すフローチャートの処理を実行する。
【0045】
姿勢判定装置20は、静止判定部22による静止判定後、時間tが経過したか否かを判定する(ステップS111)。時間tは、例えば1分程度である。ステップS111において、静止状態が時間t以上継続していることを判定する。姿勢判定装置20は、静止判定後、時間tが経過したと判定する場合(ステップS111でYes)、ステップS112へ進む。姿勢判定装置20は、静止判定後、時間tが経過したと判定しない場合(ステップS111でNo)、ステップS111の処理を再度実行する。
【0046】
静止判定後、時間tが経過したと判定する場合(ステップS111でYes)、姿勢判定装置20は、温度分布取得部23によって、頭部温度分布を取得する(ステップS112)。より詳しくは、姿勢判定装置20は、温度分布取得部23によって、赤外線センサ12から対象者の顔および身体の表面温度の分布を示す画像を取得する。姿勢判定装置20は、ステップS113へ進む。
【0047】
姿勢判定装置20は、顔向き判定部24によって、頭部が体温に近いか否かを判定する(ステップS113)。より詳しくは、姿勢判定装置20は、顔向き判定部24によって、温度分布取得部23が取得した画像からノイズを除去した画像、言い換えると、対者の顔および身体の表面温度の分布を示す画像に、人体の体温に近い温度、例えば、35℃以上38℃以下の温度を示す、所定範囲の面積の領域があるか否かを判定する。姿勢判定装置20は、顔向き判定部24によって、対象者の顔および身体の表面温度の分布を示す画像に、人体の体温に近い温度の領域があると判定される場合、頭部が体温に近いと判定して(ステップS113でYes)、ステップS114へ進む。ステップS113でYesと判定される場合、対象者は、ミリ波センサ11に対して正面を向いていると判定される。姿勢判定装置20は、顔向き判定部24によって、対象者の顔および身体の表面温度の分布を示す画像に、人体の体温に近い温度の領域があると判定されない場合、頭部が体温に近くないと判定して(ステップS113でNo)、ステップS112の処理を再度実行する。
【0048】
頭部が体温に近いと判定して(ステップS113でYes)、姿勢判定装置20は、頭部検知部25によって、対象者の顔の輪郭LHを検知する(ステップS114)。より詳しくは、姿勢判定装置20は、頭部検知部25によって、ノイズを除去した対象者の顔および身体の表面温度の分布を示す画像から、最も温度が高い部分と最も高い温度から所定温度範囲内の温度の部分とを顔の温度分布を示す画像として取得する。そして、姿勢判定装置20は、頭部検知部25によって、顔の温度分布を示す画像にエッジ検出処理を行って、顔の輪郭LHを検知する。姿勢判定装置20は、ステップS115へ進む。
【0049】
姿勢判定装置20は、頭部検知部25によって、頂点PHを検知する(ステップS115)。より詳しくは、姿勢判定装置20は、頭部検知部25によって、顔の輪郭LHから、上下方向に最も高い点を顔の頂点PHとして検知する。姿勢判定装置20は、処理を終了する。
【0050】
このようにして、姿勢判定装置20は、赤外線センサ12の画像から、対象者の顔の輪郭LHおよび顔の頂点PHを検知する。
【0051】
<肩幅検知方法>
図9を用いて、姿勢判定装置20における正面判断処理のうち肩幅検知処理について説明する。姿勢判定装置20は、
図8に示すフローチャートの処理の実行後、
図9に示すフローチャートの処理を実行する。
【0052】
姿勢判定装置20は、静止判定部22による静止判定後、時間tが経過したか否かを判定する(ステップS121)。姿勢判定装置20は、静止判定後、時間tが経過したと判定する場合(ステップS121でYes)、ステップS122へ進む。姿勢判定装置20は、静止判定後、時間tが経過したと判定しない場合(ステップS121でNo)、ステップS121の処理を再度実行する。
【0053】
静止判定後、時間tが経過したと判定する場合(ステップS121でYes)、姿勢判定装置20は、
図8に示すフローチャートの頭部検知処理において、頂点PHが検知できたか否かを判定する(ステップS122)。姿勢判定装置20は、頂点PHが検知できたと判定する場合(ステップS122でYes)、ステップS123へ進む。姿勢判定装置20は、頂点PHが検知できたと判定しない場合(ステップS122でNo)、処理を終了する。
【0054】
頂点PHが検知できたと判定する場合(ステップS122でYes)、姿勢判定装置20は、距離取得部21によって、ミリ波センサ11から対象者の心臓までの距離Lを示すセンサデータを取得する(ステップS123)。姿勢判定装置20は、ステップS124へ進む。
【0055】
姿勢判定装置20は、肩幅の推定値K´を取得する(ステップS124)。より詳しくは、姿勢判定装置20は、肩幅推定値取得部26によって、距離取得部21により取得された距離Lに応じた肩幅の推定値K´を肩幅推定値記憶部13から取得する。姿勢判定装置20は、ステップS125へ進む。
【0056】
姿勢判定装置20は、肩幅計測部27によって、肩幅を計測する(ステップS125)。より詳しくは、姿勢判定装置20は、肩幅計測部27によって、
図3に示すように、頭部検知部25によってノイズを除去した、対象者の顔および身体の表面温度の分布を示す画像から、顔の頂点PHより下方かつ顔の輪郭LHより外側の輪郭を身体の輪郭LBとして検知する。そして、
図4に示すように、姿勢判定装置20は、肩幅計測部27によって、身体の輪郭LBから、顔の頂点PHを中心にしてA方向を輪郭LBA、B方向を輪郭LBBとする。そして、
図5に示すように、姿勢判定装置20は、肩幅計測部27によって、輪郭LA上において黒丸で示される近似点と、その両隣の近似点とをそれぞれ結ぶ直線を引く。そして、姿勢判定装置20は、肩幅計測部27によって、2本の直線が成す角度θAとして、角度θA>40°の条件を満たす場合、2本の直線の交点である近似点を肩幅算出の為の点PAとする。B方向についても同様にして、肩幅算出の為の点PBを決定する。そして、
図6に示すように、姿勢判定装置20は、肩幅計測部27によって、点PAと点PBとの間の距離を肩幅の計測値Kとする。姿勢判定装置20は、ステップS126へ進む。
【0057】
姿勢判定装置20は、肩幅判定部28によって、計測値Kと推定値K´とを比較する(ステップS126)。姿勢判定装置20は、肩幅判定部28によって、肩幅計測部27によって検知された肩幅の計測値Kと、肩幅推定値取得部26によって取得された肩幅の推定値K´とを比較する。姿勢判定装置20は、ステップS127へ進む。
【0058】
姿勢判定装置20は、肩幅判定部28によって、計測値Kと推定値K´とが一致するか否かを判定する(ステップS127)。姿勢判定装置20は、肩幅判定部28によって、計測値Kと推定値K´とが一致すると判定する場合(ステップS127でYes)、ステップS128へ進む。姿勢判定装置20は、肩幅判定部28によって、計測値Kと推定値K´とが一致すると判定しない場合(ステップS127でNo)、処理を終了する。
【0059】
計測値Kと推定値K´とが一致すると判定する場合(ステップS127でYes)、姿勢判定装置20は、肩幅判定部28によって、対象者がミリ波センサ11の正面90°を向いていると判定する(ステップS128)。姿勢判定装置20は、ステップS129へ進む。
【0060】
姿勢判定装置20は、バイタルデータ取得部31によって、ミリ波センサ11によってバイタルデータを取得する(ステップS129)。
【0061】
このようにして、姿勢判定装置20は、赤外線センサ12の画像から、対象者の肩幅の計測値Kを計測する。姿勢判定装置20は、計測値Kと推定値K´とが一致する場合、バイタルデータを取得する。
【0062】
<効果>
上述したように、本実施形態では、対象者の表面温度の分布を示す画像から、対象者の顔の向きを判定する。本実施形態では、対象者の顔の向きが所定の向きであると判定される場合、対象者の表面温度の分布を示す画像から、対象者の肩幅を計測して、肩幅から身体の向きが所定の向きであるか否かを判定する。本実施形態は、対象者の表面温度の分布を示す画像から、対象者が適切な姿勢であることを判定することができる。このようにして、本実施形態によれば、対象者に非接触で、プライバシーに配慮して、対象者が適切な姿勢であることを判定することができる。
【0063】
特に、非接触で行うバイタルデータの測定では、対象者が測定機器に正対していない場合、正確な測定が難しい。本実施形態では、対象者がミリ波センサ11の正面90°を向いていることを判定できる。本実施形態によれば、バイタルデータを正確に測定することができる。
【0064】
本実施形態は、対象者が静止していると判定された場合、対象者の顔の向きを判定する。本実施形態は、対象者が静止していると判定された場合、対象者の身体の向きを判定する。本実施形態によれば、対象者が静止しているときに、対象者の姿勢を判定することができる。
【0065】
本実施形態は、対象者がバイタルデータの測定装置であるミリ波センサ11に対して正面を向いているか否かを判定することができる。
【0066】
本実施形態は、計測された肩幅の計測値と、距離に応じて推測される、正面を向いている対象者の肩幅の推測値とが一致している場合、対象者が正面を向いていると判定することができる。本実施形態は、肩幅から、対象者が正面を向いていると判定することができる。
【0067】
本実施形態は、対象者の表面温度の分布を示す画像から、対象者の顔の頂点および顔の輪郭を検知する。本実施形態は、対象者の顔の頂点および顔の輪郭を用いて、対象者が適切な姿勢であることを判定することができる。
【0068】
本実施形態は、対象者の表面温度の分布を示す画像から、顔の頂点より下方かつ顔の輪郭より外側の輪郭を形成する近似点を結んで身体の輪郭として検知し、身体の輪郭上の近似点から肩幅を計測する。本実施形態は、対象者の顔の頂点および顔の輪郭を用いて、肩幅を計測することができる。
【0069】
さて、これまで本発明に係る測定システム1について説明したが、上述した実施形態以外にも種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0070】
図示した測定システム1の各構成要素は、機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていなくてもよい。すなわち、各装置の具体的形態は、図示のものに限られず、各装置の処理負担や使用状況等に応じて、その全部または一部を任意の単位で機能的または物理的に分散または統合してもよい。
【0071】
測定システム1の構成は、例えば、ソフトウェアとして、メモリにロードされたプログラム等によって実現される。上記実施形態では、これらのハードウェアまたはソフトウェアの連携によって実現される機能ブロックとして説明した。すなわち、これらの機能ブロックについては、ハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、または、それらの組み合わせによって種々の形で実現できる。
【0072】
上記した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものを含む。さらに、上記した構成は適宜組み合わせが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において構成の種々の省略、置換または変更が可能である。
【0073】
<変形例1>
肩幅判定部28は、肩幅計測部27によって計測された肩幅を示す直線と、水平を示す直線との傾きのずれが閾値角度以下である場合、対象者の身体が所定の向きを向いていると判定する。
図6において、肩幅を示す直線である点PAと点PBとを結ぶ直線と、水平を示す直線との傾きのずれが閾値角度以下である場合、対象者の身体が所定の向きを向いていると判定する。
図6に示す例では、点PAと点PBとを結ぶ直線と、水平を示す直線とは傾きのずれが閾値角度以下であるので、対象者が正面90°を向いていると判定する。
【0074】
本変形例は、計測された肩幅を示す直線と、水平を示す直線との傾きが一致している場合、対象者の身体が所定の向きを向いていると判定することができる。本変形例は、実施形態と異なり、肩幅を計測せずに、対象者の表面温度の分布を示す画像から、対象者の身体が所定の向きを向いていることを容易に判定することができる。
【0075】
<変形例2>
肩幅推定値記憶部13は、ミリ波センサ11からの距離Lごとに、ミリ波センサ11に対して横向き90°になっている対象者の肩幅の推定値である肩幅の推定値K2´を記憶する。
【0076】
肩幅判定部28は、肩幅計測部27によって検知された肩幅の計測値Kと、肩幅推定値取得部26によって取得された、横向きの肩幅の推定値K2´とを比較して、計測値Kと推定値K2´とが一致する場合、対象者の身体の向きが横向き90°であると判定する。
【0077】
本変形例は、実施形態と同様にして、対象者の身体の向きが横向き90°であることを判定することができる。
【0078】
<その他の変形例>
上記において、バイタルデータ取得部31および通知制御部32は必須の構成ではない。
【0079】
上記において、赤外線センサ12は、対象者の顔および身体の輪郭、および、顔の向きを検知可能な他のセンサでもよい。他のセンサは、例えば、対象者の個人を特定不可能な程度の低解像度の画像でもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 測定システム
11 ミリ波センサ(バイタルデータの測定装置)
12 赤外線センサ
13 肩幅推定値記憶部
18 通知部
19 通信部
20 制御装置(姿勢判定装置)
21 距離取得部
22 静止判定部
23 温度分布取得部
24 顔向き判定部
25 頭部検知部
26 肩幅推定値取得部
27 肩幅計測部
28 肩幅判定部
31 バイタルデータ取得部
32 通知制御部