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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034428
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】生体情報測定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/02 20060101AFI20240306BHJP
   A61B 5/022 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
A61B5/02 310F
A61B5/022 400F
A61B5/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138657
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀山 愛樹
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA07
4C017AA08
4C017AA09
4C017AB02
4C017AC28
4C017BC08
4C017BC11
4C017BD05
4C017EE01
4C017FF05
4C017FF17
(57)【要約】
【課題】生体情報をより好適に測定できる生体情報測定装置を提供すること。
【解決手段】生体情報測定装置は、容積脈波を検出する光電脈波センサと、容積脈波を2階微分した加速度脈波の周期内の最大値または最小値をとる点である第1ピークに基づき、血管に関する生体情報を推定する推定部と、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容積脈波を検出する光電脈波センサと、
前記容積脈波を2階微分した加速度脈波の周期内の最大値または最小値をとる点である第1ピークに基づき、血管に関する生体情報を推定する推定部と、
を備える生体情報測定装置。
【請求項2】
前記推定部は、前記第1ピークが前記最大値をとる点であるとき、前記加速度脈波の極大値をピークとして検出し、前記第1ピークが前記最小値をとる点であるとき、極小値をピークとして検出するピーク検出を実行し、前記ピーク検出によって検出された複数のピークのうちの、隣り合う2つのピークの一方の値の絶対値と、前記隣り合う2つのピークの他方の値の絶対値と、の比である第1比に基づいて前記第1ピークを特定する、
請求項1に記載の生体情報測定装置。
【請求項3】
前記推定部は、前記複数のピークのうちのピークの値の絶対値と、前記複数のピークのうちのピークの値の絶対値の最大値と、の比である第2比と、前記第1比に基づいて前記第1ピークを特定する、
請求項2に記載の生体情報測定装置。
【請求項4】
前記推定部は、前記第1ピークの候補を前記第1比に基づいて複数点、検出し、前記複数点の候補の間隔と前記加速度脈波の前記周期の長さとの比較に基づいて、誤検出された前記第1ピークの候補を除外し、前記第1ピークを特定する、
請求項2に記載の生体情報測定装置。
【請求項5】
前記推定部は、前記容積脈波を1階微分した速度脈波の周期内の最大ピークである第2ピークを特定し、前記ピーク検出によって検出された複数のピークのうちの、前記第2ピークが現れるタイミングの直前に現れるピークを前記第1ピークとして特定する、
請求項2に記載の生体情報測定装置。
【請求項6】
前記推定部は、前記第1ピークと、前記第1ピークに後続する所定数のピークと、を含む複数の第3ピークを特定し、前記複数の第3ピークのそれぞれの値および現れたタイミングの間隔に基づいて特徴量を算出し、前記特徴量に基づいて前記生体情報を推定する、
請求項1から請求項5の何れか一項に記載の生体情報測定装置。
【請求項7】
前記生体情報は、血圧または動脈硬化の進行の度合いである、
請求項6に記載の生体情報測定装置。
【請求項8】
容積脈波を2階微分した加速度脈波の周期内の最大値または最小値をとる点最大ピークである第1ピークに基づき、血管に関する生体情報を推定する生体情報測定装置。
【請求項9】
前記第1ピークが前記最大値をとる点であるとき、前記加速度脈波の極大値をピークとして検出し、前記第1ピークが前記最小値をとる点であるとき、極小値をピークとして検出するピーク検出を実行し、前記ピーク検出によって検出された複数のピークのうちの、隣り合う2つのピークの一方の値の絶対値と、前記隣り合う2つのピークの他方の値の絶対値と、の比に基づいて前記第1ピークを特定する、請求項8に記載の生体情報測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、生体情報測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
脈波は、血管の容積変化を時間軸で表したものである。脈波を測定する手法には、光電センサ、圧電センサを使う方法、直接動脈圧を測る方法等、様々ある。
【0003】
この脈波は、容積脈波とも称される。容積脈波を2階微分して得られる情報は、加速度脈波と称される。加速度脈波の波形においては、心臓の収縮期、つまり心臓が血液を強く送り出す期間に、1周期の波形のうちの最大ピークが現れる。この最大ピークの情報を少なくとも含む情報から、血管に関する種々の生体情報を推定することできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-97242号公報
【特許文献2】特開2006-6897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、生体情報をより好適に測定できる生体情報測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、生体情報測定装置は、容積脈波を検出する光電脈波センサと、前記容積脈波を2階微分した加速度脈波の周期内の最大値または最小値をとる点である第1ピークに基づき、血管に関する生体情報を推定する推定部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、生体情報をより好適に測定できる生体情報測定装置を提供することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態の生体情報測定装置が、血管からの生体情報を取得し、その特徴点を説明するための図である。
図2図2は、実施形態の生体情報測定装置であるウェアラブル装置を人体に装着したときの外観図である。
図3図3は、図2において、ウェアラブル装置および腕のYZ平面における断面図である。
図4図4は、実施形態のウェアラブル装置の内部の構成の一例を示す模式的な図である。
図5図5は、実施形態のウェアラブル装置が備える推定部としてのプロセッサが実現する機能構成の一例を示す模式的な図である。
図6図6は、実施形態の生体情報測定装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、実施形態のフィルタ部によるフィルタ処理の前後の容積脈波の例を示す図である。
図8図8は、実施形態の加速度波形の一例を示すグラフである。
図9図9は、実施形態の特徴量算出部による特徴量の算出方法の一例を説明するための模式的な図である。
図10図10は、第1の変形例のウェアラブル装置が備えるプロセッサが実現する機能構成の一例を示す模式的な図である。
図11図11は、第1の変形例のウェアラブル装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図12図12は、第2の変形例のウェアラブル装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図13図13は、第3の変形例のウェアラブル装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図14図14は、図13に示すS401およびS402の処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、実施形態の生体情報測定装置が、血管からの生体情報を取得し、その特徴点を説明するための図である。
本図には、上から、容積脈波、容積脈波を1階微分して得られる速度脈波、および容積脈波を2階微分して得られる加速度脈波の波形が描画されている。
【0010】
容積脈波は、センサをあてた部分の血管の容積が脈拍に応じて大きくなるとき値が大きくなり、血管の容積が小さくなるとき値が小さくなる、血管の容積の推移を表す波形である。速度脈波は、血管の容積が増加するとき正の値をとり、血管の容積が減少するとき負の値をとる、血管の容積の速度の推移を表す波形である。加速度脈波は、血管の容積の増加速度が上昇するとき正の値をとり、血管の容積の増加速度が下降するとき負の値をとる、血管の容積の増加速度の変化率を表す波形である。
【0011】
容積脈波、速度脈波、および加速度脈波の一部または全部は、設計によっては、反転されて取得される場合がある。本明細書では、反転されていない状態の各脈波について言及することとする。容積脈波、速度脈波、および加速度脈波の一部または全部が反転して取得されるシステムに対しては、反転された脈波をさらに反転した波形、つまり反転前の波形で読み替えることで、本明細書に記載の技術を適用することが可能である。
【0012】
生体情報測定装置は、図1の上段の容積脈波をセンサによって取得する。容積脈波には、同じ波形が繰り返し現れる。よって、例えば、容積脈波において、極小点から次の極小点までの期間を脈波の周期と見なすことができる。このように脈波の周期を定義した場合、脈波の周期のうち、前半の期間は、心臓の収縮期に相当し、後半の期間は、心臓の拡張期に相当する。
【0013】
収縮期は、心臓が血液を強く送り出す期間であるため、収縮期の波形は、血管に関する生体情報、例えば血圧や血管のしなやかさ、を反映したものとなる。よって、収縮期の波形を分析することで、血圧や動脈硬化の進行の度合いを推定することができる。
【0014】
この生体情報測定装置は、加速度波脈波の1周期の波形のうち、最大値をとるピークと、最大値をとるピークに後続する4つのピークと、を特定する。ここでは、加速度波脈波の1周期の波形のうちの最大値をとるピークを、a点と称する。つまり、a点は、心臓の収縮期において血管の容積の増加速度が最も大きくなる点である。a点に後続する4つのピークを、順番に、b点、c点、d点、e点、と称する。b点は、加速度波脈波の1周期の波形のうちの最小値をとる点でもある。実施形態の生体情報測定装置は、a~e点の情報に基づき、血管に関する生体情報を推定する。なお、本明細書では、図1から読み取れるように、極大点だけでなく極小点をもピークとして扱う。
【0015】
従来は、加速度脈波からa~e点を特定するために、加速度脈波をさらに微分して得られる波形が使用される。この従来の方法によれば、高感度のセンサによってノイズの少ない容積脈波が得られている場合にはa~e点を精度よく特定でき、これによって生体情報を精度よく求めることができる。
【0016】
しかしながら、光電脈波センサのような外乱の影響を受けやすいセンサを用いた場合、脈波を微分すればするほど振動、振幅の変動、外乱光によるノイズ成分の影響が顕著に表れ、これによって、a~e点を精度よく特定することが困難になってしまう。また、通常は中心位置(基線ともいう)から信号が上下することで脈波が形成されるが、上記のような外乱の影響を受けやすいセンサを用いた場合、中心位置がゼロ点から変動し得る。そのような場合、脈波の微分によって基線の変動にも影響をうけて、a~e点の特定の精度が悪化する。
【0017】
また、この光電脈波センサを用いた場合、外乱光などによるノイズ成分をできるだけ低減しようとするためには、従来は、光電脈波センサを皮膚に強く押し当てる必要があった。例えば光電脈波センサが腕時計型のウェアラブル装置に実装された場合、ユーザは、腕時計型のウェアラブル装置のバンドをきつく締める必要があり、装着の快適性が損なわれる。
【0018】
そこで、光電脈波センサからの出力にノイズ成分が多く含まれていても好適に生体情報を検出できるように、実施形態では、加速度脈波を微分することなく、加速度脈波で、a~e点を特定する。以下に、実施形態の生体情報測定装置について詳細に説明する。
【0019】
ここでは一例として、生体情報測定装置は腕時計型のウェアラブル装置(例えばスマートウォッチ)を採用し、その構成について説明する。また、生体情報測定装置は、血管に関する生体情報の一例として、血圧を測定する。また、生体情報測定装置は、容積脈波を取得するためのセンサとして、光電脈波センサを備える。
【0020】
なお、生体情報測定装置は、スマートグラス、スマートリング、またはワイヤレスイヤホンなど、腕時計型のウェアラブル装置と異なるウェアラブル装置として構成されてもよい。また、生体情報測定装置は、血管に関する生体情報として、動脈硬化の進行の度合いを測定するように構成されてもよい。
【0021】
図2は、実施形態の生体情報測定装置であるウェアラブル装置1を人体に装着したときの外観図である。
【0022】
ウェアラブル装置1は、扁平な形状の筐体10と、この筐体の表面に取り付けられた表示装置11と、筐体の側面に取り付けられたバンド12と、を備える。筐体10は、上面、下面、前記上面の周囲と前記下面の周囲をつなぐ側面とから成る。図では、ほぼ直方体から成る筐体で、4つの側面から成る。
【0023】
筐体10の一方の側面と、もう一方の側面にバンド12が取りつけられている。バンド12が装着者の腕200に巻きつけられることで筐体10の下面が腕200に固定される。筐体10の上面には表示装置11が設けられており、ウェアラブル装置1は、表示装置11に種々の画像情報を出力する。装着者は、表示装置11に出力された種々の画像情報を視覚的に確認することができる。
この画像情報とは、血圧や脈拍の数値、図1の波形、そして解析後の生体情報などである。
【0024】
なお、以降では、腕の延びる向きを+X軸の向き、筐体10の2つの面のうち、下面から上面に向かう向きを+Z軸の向きとし、X軸とZ軸との両方に直交する軸をY軸として説明する。
【0025】
図3は、図2において、ウェアラブル装置1および腕200のYZ平面における断面図である。
【0026】
腕200の内部には、橈骨211および尺骨212がX軸方向に延びる。橈骨211の下方には橈骨動脈213、尺骨212の下方には尺骨動脈214が通っている。腕200の断面の最も下方の皮下には、腱215が通っている。
【0027】
筐体10の下面には、光電脈波センサ13が設けられる。光電脈波センサ13は、センサ基板130と、1以上の受光素子131と、1以上の発光素子132と、を備える。ここでは一例として、ウェアラブル装置1が装着されたときに、皮膚201に対向するセンサ基板130の面の中央に1つの受光素子131が設けられ、受光素子131からY軸の正方向に離間した位置、および負方向に離間した位置のそれぞれに1つの発光素子132が設けられている。つまり受光素子131を囲む位置に2つの発光素子132が設けられる。
【0028】
なお、センサ基板130に設けられる受光素子131の数および発光素子132の数と、各素子の配置は、上記の例に限定されない。また、図3に示す例では、受光素子131および2つの発光素子132は装着時に皮膚201に接触するように構成されているが、受光素子131および2つの発光素子132は皮膚201に直接接触しないように透光部材、ガラス基板や透明樹脂基板によって覆われていてもよい。
【0029】
各発光素子132は、血中ヘモグロビンによって吸収されやすい特性を有する波長帯、例えば緑色から近赤外までの波長帯、から選択された光を発する。各発光素子132は、いずれも同一の波長の光を発する。受光素子131は、発光素子132が発する光を検出することができる。
【0030】
ウェアラブル装置1が装着者に装着されているとき、2つの発光素子132は、皮膚201に向けて光を照射する。受光素子131は、皮膚201の下に侵入し、皮下の組織で反射または散乱して戻ってきた光を含め、受光素子131に入射する光を検出する。皮下には橈骨動脈213などを含む血管が存在するので、受光素子131が受光する光の量は血管の容積脈波の影響を受けて増減する。光電脈波センサ13は、受光素子131が受光する光の量の時間変化を容積脈波として取得する。つまり、光電脈波センサ13は、容積脈波を検出する。
【0031】
図4は、実施形態のウェアラブル装置1の内部構成の一例を示す模式的な図である。
【0032】
ウェアラブル装置1は、表示装置11と光電脈波センサ13とのほかに、プロセッサ14とメモリ15を備える。プロセッサ14、メモリ15、光電脈波センサ13、および表示装置11はバス16に電気的に接続されている。
【0033】
光電脈波センサ13は、受光素子131と、2つの発光素子132と、マイクロコンピュータユニット133と、ゲイン回路134と、を備える。
【0034】
ゲイン回路134は、受光素子131からの信号を増幅する回路である。
【0035】
マイクロコンピュータユニット133は、発光素子132を点灯させたり、ゲイン回路134を介して受光素子131からの信号の時間推移を記憶して容積脈波として出力したりする。
【0036】
メモリ15は、コンピュータプログラムやデータを記憶したり、プロセッサ14の作業領域として機能したりする。メモリ15は、例えば、揮発性メモリと不揮発性メモリとの組み合わせである。揮発性メモリは、例えば、RAM(Random Access Memory)であり、プロセッサ14の作業領域として機能し得る。不揮発性メモリは、例えばSSD(Solid State Drive)またはHDD(Hard Disk Drive)などのストレージメモリであり、コンピュータプログラムやデータを不揮発に記憶し得る。なお、メモリ15の構成はこの例に限定されない。
【0037】
プロセッサ14は、コンピュータプログラムに従って種々の機能を実現する演算装置であり、例えばCPU(Central Processing Unit)である。プロセッサ14は、メモリ15に予め格納されたコンピュータプログラムを実行することにより、ウェアラブル装置1の制御を実行する。実施形態では、プロセッサ14は、ウェアラブル装置1の制御の一環として、光電脈波センサ13によって検出された容積脈波に基づいた血圧の推定を行う。
【0038】
なお、プロセッサ14は、実施形態における推定部の一例である。推定部は、光電脈波センサ13によって検出された容積脈波を2階微分した加速度脈波の周期内の最大値をとるピークであるa点または最小値をとるピークであるb点に基づき、血管に関する生体情報を推定する。推定部の機能の一部または全部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、または任意のハードウェア回路によって実現されてもよい。また、推定部の機能の一部または全部は、光電脈波センサ13が備えるマイクロコンピュータユニットによって実現されてもよい。
【0039】
図5は、実施形態のウェアラブル装置1が備える推定部としてのプロセッサ14が実現する機能構成の一例を示す模式図である。ここでは、各機能構成要素についてはおおまかに説明し、詳細は動作説明の際に説明する。
【0040】
プロセッサ14は、取得部140、フィルタ部141、微分部142、ピーク検出部143、特徴点特定部144、特徴量算出部145、血圧推定部146、および出力部147として機能する。
【0041】
取得部140は、容積脈波のデータを光電脈波センサ13から取得する。取得部140は、時間的に連続して検出された1以上の周期の分の容積脈波を含むデータを取得する。
【0042】
フィルタ部141は、バンドパスフィルタを用いて容積脈波のデータにフィルタ処理を実行する。光電脈波センサ13から取得した容積脈波のデータには、装着者の呼吸や体動などに応じた基線の変動や、外乱光によるノイズが含まれ得る。フィルタ部141は、バンドパスフィルタによって、基線の変動やノイズを除去する。
【0043】
微分部142は、バンドパスフィルタにかけられた後の容積脈波のデータに対して2階微分を行うことによって、加速度脈波のデータを取得する。
【0044】
ピーク検出部143は、加速度脈波のデータから、加速度脈波のピークを検出する。ピーク検出部143は、極大点および極小点をピークとして検出する。
【0045】
特徴点特定部144は、検出されたピークのうちから、a~e点を特定する。なお、以降では、a~e点のそれぞれを特徴点と表記することがある。容積脈波のデータが複数の周期を含む場合、特徴点特定部144は、各周期において特徴点のセット、つまりa~e点のセット、を特定する。
【0046】
特徴量算出部145は、2つの特徴点の値の比、2つの特徴点が現れる時間の間隔、またはこれら両方を、特徴量として算出する。特徴量算出部145は、1周期あたり、1種類以上の特徴量のセットを算出する。容積脈波のデータが複数の周期を含む場合、特徴量算出部145は、各周期から特徴量のセットを算出し、その後、全周期で特徴量の平均を種類毎にとる。なお、特徴量算出部145は、必ずしも全周期で特徴量の平均をとらなくてもよい。特徴量算出部145は、全周期から取得した特徴量の集合を特徴量のセットとして次に説明する血圧推定部146に渡してもよい。
【0047】
血圧推定部146は、特徴量のセットに基づき、血圧を推定する。各種類の特徴量の平均が算出された場合には、血圧推定部146は、血圧の推定に、特徴量の平均値のセットを使用する。一例では、血圧推定部146は、特徴量のセットが入力された場合に血圧の推定値を出力するように構成された、学習済みニューラルネットワークモデルである。
【0048】
なお、特徴量のセットに基づき血圧の推定値を出力する方法は任意に構成される。血圧推定部146は、特徴量のセットに基づき、既知の、または今後開発される任意のアルゴリズムに基づいて血圧を推定する。
【0049】
出力部147は、血圧の推定値を出力する。血圧の推定値の出力の方法は特定の方法に限定されない。一例では、出力部147は、表示装置11に、血圧の推定値を画像情報として出力する。別の例では、出力部147は、血圧の推定値を記録したデータをメモリ15に格納する。
【0050】
続いて、実施形態の生体情報測定装置としてのウェアラブル装置1の動作を説明する。
【0051】
図6は、実施形態のウェアラブル装置1の動作の一例を示すフローチャートである。ここでは、光電脈波センサ13によって容積脈波の検出が完了した後の動作を説明する。また、ウェアラブル装置1が、最初にa点を検出し、検出したa点に基づき、b~e点を特定する方法について説明する。ウェアラブル装置1は、最初にb点を検出し、検出したb点に基づき、a、c~e点を特定してもよい。
【0052】
まず、取得部140は、光電脈波センサ13から容積脈波のデータを取得する(S101)。
【0053】
フィルタ部141は、容積脈波のデータに対し、バンドパスフィルタを用いたフィルタ処理を実行する(S102)。
【0054】
図7は、実施形態のフィルタ部141によるフィルタ処理の前後の容積脈波の例を示す図である。本図の例では、容積脈波のデータは、時間に対するセンサ出力値のデータである。センサ出力値は、例えば、受光素子131が受光した光の量が、ゲイン回路134によって増幅された後、マイクロコンピュータユニット133によって取り込まれ、この取り込んだ光の量に基づきマイクロコンピュータユニット133によって計算された吸光度であって、血管によって吸収された光の量、即ち血管の容積に対応する。
【0055】
フィルタ処理の前は、図7の(A)に示すように、容積脈波は、基線の変動と、高周波ノイズとを含む。フィルタ処理によって、図7の(B)に示すように、基線の変動と、高周波ノイズとが除去されて、滑らかな波形を得ることができる。
【0056】
仮に、図7の(A)に示す容積脈波から加速度脈波が算出されて、その後ピーク検出が行われた場合、高周波ノイズの影響によって多数のピークが誤検出されたり、基線の変動によってピーク位置がずれて検出されたりする。フィルタ部141のフィルタ処理によって、基線の変動および高周波ノイズが除去されるので、後に実行されるピーク検出の精度が向上する。
【0057】
図6に説明を戻す。
S102に続いて、微分部142は、フィルタ処理後の容積脈波のデータに対し、1回目の微分を行うことで、速度脈波のデータを取得する(S103)。さらに、微分部142は、速度脈波のデータに対し、2回目の微分を行うことで、加速度脈波のデータを取得する(S104)。
【0058】
ピーク検出部143は、加速度脈波のデータに対し、ピーク検出を実行する(S105)。ピーク検出部143は、値が極大値をとる点、つまり値が時間に応じて上昇から下降に転じる点と、値が極小値をとる点、つまり値が時間に応じて下降から上昇に転じる点と、のいずれか一方をピークとして検出する。以降、値が極大値をとる点を正側のピークとも呼び、値が極小値をとる点を負側のピークとも呼ぶ。このピーク検出時に、正側のピークと負側のピークの両方をピークとして検出してもよい。
【0059】
S105に続いて、特徴点特定部144は、ピーク検出によって検出した複数のピークのうちからa点を特定する。a点は、容積脈波が立ち上がる期間において立ち上がり速度が加速する特徴を表す特徴点であり、加速度脈波においては正の数値として現れる。ここでは、複数の正側のピークのうちからa点を特定する。
【0060】
特徴点特定部144がa点を特定するよう構成されている場合、ピーク検出部143は、値が極大値をとる点、つまり正側のピーク、をピークとして検出する。これによって、特徴点特定部144は、複数の正側のピークのうちからa点を特定する。
【0061】
なお、特徴点特定部144は、複数の負側のピークのうちからb点を特定するよう構成されてもよい。そのような場合、ピーク検出部143は、値が極小値をとる点、つまり負側のピーク、をピークとして検出する。
【0062】
特徴点特定部144は、検出した正側のピークから、1つのピークを選択する(S106)。S106によって選択したピークを、対象ピークと表記する。
【0063】
特徴点特定部144は、S107~S109によって、対象ピークがa点に該当するか否かを判定する。
【0064】
具体的には、特徴点特定部144は、まず、加速度脈波のデータの最大値に対する対象ピークの値の比と所定の第1しきい値と比較し、当該比が第1しきい値を超えるか否かを判定する(S107)。
【0065】
a点は、加速度脈波における1周期の波形のうちの最大値をとる点である。従って、対象ピークがa点に該当する場合、加速度脈波のデータの最大値に対する対象ピークの値の比は1に近くなると考えられる。よって、第1しきい値を適切に設定することによって、値が極端に小さいピークをa点として誤検出することを抑制できる。
【0066】
加速度脈波のデータの正側の最大値に対する対象ピークの値の比が第1しきい値を超えると判定された場合(S107:Yes)、特徴点特定部144は、対象ピークの1つ前の正側のピークに対する対象ピークの値の比と、対象ピークの1つ後の正側のピークに対する対象ピークの値の比と、がともに第2しきい値を超えるか否かを判定する(S108)。
【0067】
a点は加速度脈波における1周期の波形のうちの最大値をとる点であるだけでなく、正側のピークに限れば、a点の値は他のピークに比べて突出して高い。そのため、正側のピークに限れば、a点の1つ前およびa点の1つ後のピークのそれぞれに対するa点の値の比は、1を大きく超えると考えられる。よって、第2しきい値を適切に設定することによって、対象ピークがa点に該当するか否かを判定することができる。
【0068】
図8は、実施形態の加速度波形の一例を示すグラフである。
【0069】
本図に示す加速度波形の例では、ピークp1の値は95ポイント、ピークp2の値は98ポイント、ピークp3の値は205ポイント、ピークp4の値は110ポイント、ピークp5の値は230ポイントである。そして、ピークp5の値である230ポイントが加速度波形のデータの最大値とされている。
【0070】
加速度波形のデータの最大値に対する値の比は、ピークp1の場合は約0.41、ピークp2の場合は約0.42、ピークp3の場合は約0.89、ピークp4の場合は約0.47、ピークp5の場合は1となる。例えば第1しきい値が0.4に設定されている場合、特徴点特定部144は、ピークp1~p5のいずれが対象ピークであっても加速度波形のデータの最大値に対する対象ピークの値の比は第1しきい値を超えると判定する。つまり、ピークp1~p5のいずれが対象ピークであっても、S107の判定処理において、Yesと判定される。
【0071】
例えばピークp2が対象ピークである場合、対象ピークの1つ前の正側のピークであるピークp1に対する対象ピークの値の比は約1.0であり、対象ピークの1つ後の正側のピークであるp3に対する対象ピークの値の比は約0.48である。
【0072】
例えばピークp3が対象ピークである場合、対象ピークの1つ前の正側のピークであるピークp2に対する対象ピークの値の比は約2.1であり、対象ピークの1つ後の正側のピークであるピークp4に対する対象ピークの値の比は約1.9である。
【0073】
よって、第2しきい値が例えば1.5に設定されているケースでは、ピークp2が対象ピークである場合はS108の判定処理においてNoと判定される。ピークp3が対象ピークである場合はS108の判定処理においてYesと判定される。
【0074】
なお、b点は、加速度脈波における1周期の波形のうちの最小値をとる点である。また、負側のピークに限れば、他のピークに比べて突出して低い。
【0075】
よって、a点に替えてb点を検出する場合、特徴点特定部144は、S107では、加速度脈波のデータの最小値に対する対象ピークの値の比と所定の第1しきい値と比較し、当該比が第1しきい値を超えるか否かを判定する。また、特徴点特定部144は、S108では、対象ピークの1つ前の正側のピークに対する対象ピークの値の比と、対象ピークの1つ後の正側のピークに対する対象ピークの値の比と、がともに第2しきい値を超えるか否かを判定する。
【0076】
図6に説明を戻す。
S108の判定処理においてYesと判定された場合、特徴点特定部144は、対象ピークをa点として決定する(S109)。
【0077】
S109の後、またはS107の判定処理においてNoと判定した場合、またはS108の判定処理においてNoと判定した場合、特徴点特定部144は、正側のピークのうち未選択のピークが残っているか否かを判定する(S110)。
【0078】
未選択のピークが残っている場合(S110:Yes)、特徴点特定部144は、未選択のピークのうちから1つのピークを選択し(S111)、選択したピークを新たな対象ピークとしてS107からの処理を繰り返し実行する。
【0079】
未選択のピークが残っていない場合(S110:No)、特徴点特定部144は、各a点に後続して現れる4つのピークを、現れる順番に、b点、c点、d点、およびe点として特定する(S112)。
【0080】
なお、特徴点特性部144は、S109においてa点に替えてb点を決定した場合、b点のひとつ前のピークをa点として特定し、b点に後続して現れる3個のピークを、現れる順番に、c点、d点、およびe点として特定する。
【0081】
S112までの処理によって、周期毎にa~e点が特定される。特徴量算出部145は、周期毎に特徴量のセットを算出する(S113)。なお、a点から次のa点の直前までの期間は、1周期とおよそ対応する。よって、特徴量算出部145は、a点から次のa点の直前までを1つの周期と見なして周期毎の特徴量のセットを算出し得る。
【0082】
図9は、実施形態の特徴量算出部145による特徴量の算出方法の一例を説明するための模式的な図である。
【0083】
特徴量算出部145は、まず、或る周期において、a点からb点までの時間間隔bx、a点からc点までの時間間隔cx、a点からd点までの時間間隔dx、およびa点からe点までの時間間隔exのそれぞれを特徴量として算出する。
【0084】
また、特徴量算出部145は、a点に対するb点の値の比by/ay、a点に対するc点の値の比cy/ay、a点に対するd点の値の比dy/ay、およびa点に対するe点の値の比ey/ayのそれぞれを特徴量として算出する。
【0085】
そして、特徴量算出部145は、bx、cx、dx、ex、by/ay、cy/ay、dy/ay、およびey/ayを、この周期における特徴量のセットとする。
【0086】
なお、図9を用いて説明した特徴量の算出方法はあくまでも一例である。設計者は、a~e点の時間および値に基づく任意の数値情報を特徴量として使用することが可能である。
【0087】
図6に説明を戻す。
S113に続いて、特徴量算出部145は、全周期で特徴量の平均値を種類毎に算出する(S114)。上述した特徴量の算出方法の例に従えば、特徴量算出部145は、bx、cx、dx、ex、by/ay、cy/ay、dy/ay、およびey/ayのそれぞれについて、全周期で平均値を算出する。
【0088】
続いて、血圧推定部146は、特徴量の平均値のセットに基づき、血圧を推定する(S115)。出力部147は、血圧の推定値を出力する(S116)。そして、実施形態のウェアラブル装置1の動作が終了する。
【0089】
以上述べたように、実施形態によれば、生体情報測定装置としてのウェアラブル装置1は、容積脈波を検出する光電脈波センサ13と、容積脈波を2階微分した加速度脈波の周期内の最大値であるa点または最小値であるb点に基づき血管に関する生体情報としての血圧を推定する推定部としてのプロセッサ14と、を備える。
【0090】
よって、加速度脈波をさらに微分することなくa点を特定するため、精度が高いa点の特定が可能である。その結果、生体情報の推定精度が向上する。たとえ装着者がウェアラブル装置1のバンド12を緩めて装着し、これによって検出された容積脈波のデータに大きなノイズ成分が含まれていたとしても、精度よく生体情報を推定できる。つまり、ウェアラブル装置1は、生体情報を好適に測定できる。
【0091】
また、実施形態によれば、図6のS102~S105に示したように、プロセッサ14は、容積脈波をバンドパスフィルタにかけて、バンドパスフィルタにかけた後の容積脈波を2階微分することによって加速度脈波を取得する。そして、プロセッサ14は、加速度脈波に対し、極大値および極小値をピークとして検出するピーク検出を実行する。
【0092】
バンドパスフィルタによって装着者の呼吸や体動などに応じた基線の変動や高周波ノイズの影響が抑制された後にピーク検出が実行されるので、a~e点を精度よく特定することが可能である。その結果、生体情報の推定精度が向上する。つまり、ウェアラブル装置1は、生体情報を好適に測定できる。
【0093】
また、実施形態によれば、図6のS108に示したように、プロセッサ14は、ピーク検出によって検出された複数のピークのうちの、隣り合う2つのピークの値の比に基づいてa点を特定する。
【0094】
よって、加速度脈波をさらに微分することなくa点を特定することが可能である。
【0095】
また、実施形態では、プロセッサ14は、ピーク検出によって検出された複数のピークのうちの値が正の複数のピークのうちの隣り合う2つのピークの値の比に基づき、a点を特定する。
【0096】
加速度脈波のデータにおいて、a点は値が正のピークに属するため、値が正のピークに候補を絞ってa点の特定を行うことで、特定の処理の効率が向上する。
【0097】
なお、前述したように、プロセッサ14は、値が負のピークに候補を絞ってb点の特定を行い、特定したb点に基づいてa点を特定するよう、構成されてもよい。
【0098】
また、実施形態によれば、図6のS107に示したように、プロセッサ14は、隣り合う2つのピークの値の比に加えて、値と正側および負側のうちのピークが属する側の加速度脈波の最大振幅との比に基づいてa点を特定する。
【0099】
よって、a点と異なる著しく小さいピークをa点として誤検出することを抑制でき、a点の特定の精度がさらに向上する。
【0100】
なお、プロセッサ14は、図6のS107の判定処理を省略し、S108の処理によってのみa点を特定するよう、構成されてもよい。
【0101】
また、実施形態によれば、図6のS115に示したように、プロセッサ14は、a点と、a点に後続するb~e点と、を特定し、a~e点のそれぞれの値および現れたタイミングの間隔に基づいて特徴量を算出する。そして、プロセッサ14は、算出した特徴量に基づいて生体情報を推定する。実施形態では、プロセッサ14は、生体情報の一例として、血圧を推定するが、動脈硬化の進行の度合いを推定してもよい。他にも、隣り合う2つのa点の間隔から、心拍数変動の状態や、自律神経機能の異常を推定する等の機能を有してよい。
【0102】
a点を決定するためのアルゴリズムは、種々に変形が可能である。以下にいくつかの変形例を説明する。
【0103】
(第1の変形例)
まず、実施形態の変形例のひとつとして、第1の変形例について説明する。第1の変形例のウェアラブル装置を、ウェアラブル装置1aと表記する。第1の変形例の説明では、実施形態と異なる事項について説明する。実施形態と同じ事項については説明を省略するかまたは簡略的に説明する。
【0104】
図10は、第1の変形例のウェアラブル装置1aが備えるプロセッサ14が実現する機能構成の一例を示す模式的な図である。
【0105】
プロセッサ14は、取得部140、フィルタ部141、微分部142、ピーク検出部143、特徴点特定部144、特徴量算出部145、血圧推定部146、出力部147、および周期特定部148として機能する。
【0106】
周期特定部148は、脈波の周期境界を特定し、周期境界に基づき、各周期を特定する。例えば、周期特定部148は、フィルタ処理後の容積脈波の極小点を特定し、特定した極小点を脈波の周期境界とする。そして、周期特定部148は、2つの周期境界で区分される期間を、1つの周期として特定する。容積脈波が複数周期分の長さを有する場合には、周期特定部148は、上記の方法で各周期を特定する。なお、この周期の特定方法は一例である。周期特定部148は、任意の方法で各周期と特定し得る。
【0107】
図11は、第1の変形例のウェアラブル装置1aの動作の一例を示すフローチャートである。
【0108】
第1の変形例では、S102の処理に続いて、周期特定部148は、容積脈波から周期境界を特定する(S201)。そして、周期特定部148は、周期境界に基づき、周期長さの平均値を算出する(S202)。つまり、周期特定部148は、それぞれ周期境界で区分された複数の周期の長さを全周期で平均する。
【0109】
S202の処理の後、S103~S108の処理が実行される。
【0110】
なお、S201およびS202の処理の実行タイミングは、必ずしもS102とS103の処理の間でなくてもよい。後述するS206の処理の実行タイミングよりも前であれば、S201およびS202の処理は任意のタイミングで実行され得る。
【0111】
S108の判定処理においてYesと判定された場合、特徴点特定部144は、対象ピークをa点候補として決定する(S203)。そして、特徴点特定部144は、正側のピークのうちに未選択のピークが残っているか否かを判定する(S204)。
【0112】
未選択のピークが残っている場合(S204:Yes)、特徴点特定部144は、未選択のピークのうちから1つのピークを選択し(S205)、選択したピークを新たな対象ピークとしてS107からの処理を繰り返し実行する。
【0113】
未選択のピークが残っていない場合(S204:No)、特徴点特定部144は、隣り合う2つのa点候補の間隔とS202で算出した周期長さの平均値との比較に基づき、誤検出されたa点候補を除外する(S206)。
【0114】
例えば、隣り合う2つのa点候補の間隔が周期長さの平均値よりも著しく短い場合、当該隣り合う2つのa点候補のうちの一方は本来の2つのa点の間の誤検出された点であると考えられる。そのようなケースでは、特徴点特定部144は、当該隣り合う2つのa点候補のうちの一方を誤検出された点であると特定し、誤検出された点として特定したa点候補はa点ではないと決定する。
【0115】
より具体的には、隣り合う2つのa点候補の間隔が周期長さの平均値の所定パーセントの長さを超える場合には、特徴点特定部144は、当該隣り合う2つのa点候補はともにa点に該当すると判定する。隣り合う2つのa点候補の間隔が周期長さの平均値の所定パーセントの長さに満たない場合には、特徴点特定部144は、当該隣り合う2つのa点候補の何れか一方は誤検出された点であると判定する。
【0116】
一例では、特徴点特定部144は、隣り合う2つのa点候補の間隔と周期長さの平均値との比較を、a点候補が現れたタイミングの順番で実行する。そして、隣り合う2つのa点候補の間隔が周期長さの平均値の所定パーセントの長さに満たないと判定した場合には、特徴点特定部144は、当該隣り合う2つのa点候補のうちの現れたタイミングが後のa点候補を除外する。
【0117】
なお、所定パーセントは、設計者が実験または計算に基づき、任意に決定することができる。一例では、設計者は、所定パーセントを70パーセントと設定することができる。
【0118】
隣り合う2つのa点候補の間隔が周期長さの平均値よりも著しく大きい場合、当該隣り合う2つのa点候補のうちの間にa点候補の検出漏れがあったと考えられる。そのようなケースでは、特徴点特定部144は、当該隣り合う2つのa点候補の間隔と、周期長さの平均値の2倍の長さと、の比較に基づいて、誤検出された点の特定を行う。
【0119】
なお、上記したa点候補の除外方法は一例である。特徴点特定部144は、a点候補が現れたタイミングの間隔と周期長さの平均値との比較に基づく任意の方法で誤検出されたa点候補を特定し得る。
【0120】
特徴点特定部144は、残ったa点候補をa点として決定する(S207)。そして、S112以降の処理が実行される。
【0121】
このように、プロセッサ14は、a点候補の間隔と周期長さの平均値との比較に基づいて誤検出されたa点候補を特定して除外するよう、構成されてもよい。
【0122】
これによって、特徴点の特定精度が向上する。
【0123】
なお、S107の処理は省略されてもよい。S107の処理は、a点の特定の精度を向上されるための処理である。S206の処理によれば、S107の処理が無くてもa点を高精度に特定することが可能である。
【0124】
(第2の変形例)
実施形態の変形例の別のひとつとして、第2の変形例について説明する。
【0125】
実施形態および第1の変形例では、一例として、正側のピークから対象ピークが選択され、正側のピークのみに基づいて値の比に基づく判定が実行された。第2の変形例では、正側のピークおよび負側のピークの区別なく対象ピークが選択され得る。また判定のための値の比は、正側のピークおよび負側のピークの区別なくの値が比較されるピークが選択され得る。
【0126】
以下、第2の変形例のウェアラブル装置を、ウェアラブル装置1bと表記する。第2の変形例の説明では、実施形態および第1の変形例と異なる事項について説明する。実施形態または第1の変形例と同じ事項については説明を省略するかまたは簡略的に説明する。
【0127】
図12は、第2の変形例のウェアラブル装置1bの動作の一例を示すフローチャートである。
【0128】
第2の変形例では、第1の変形例と同様、S102の処理に続いて、周期境界の特定(S201)と、周期長さの平均値の算出(S202)とが実行される。
【0129】
S202の処理の後、S103~S105の処理が実行される。
【0130】
S105のピーク検出の後、特徴点特定部144は、検出したピークのうちから1つのピークを選択する(S301)。S301では、特徴点特定部144は、正側か負側かに関わらずの全てのピークのうちから1つのピークを対象ピークとして選択する。
【0131】
続いて、特徴点特定部144は、対象ピークの1つ前のピークに対する対象ピークの値の絶対値の比と、対象ピークの1つ後のピークに対する対象ピークの値の絶対値の比と、がともに第3しきい値を超える(S302)。S302では、特徴点特定部144は、対象ピークの1つ前のピークが正側のピークであるか負側のピークであるかに関わらず、対象ピークの1つ前のピークに対する対象ピークの値の絶対値の比を算出する。また、特徴点特定部144は、対象ピークの1つ後のピークが正側のピークであるか負側のピークであるかに関わらず、対象ピークの1つ後のピークに対する対象ピークの値の絶対値の比を算出する。第3しきい値は、第2しきい値と同じ値であってもよく、第2しきい値と異なる値であってもよい。
【0132】
S302の判定処理においてYesと判定された場合、特徴点特定部144は、対象ピークをa点候補として決定する(S303)。
【0133】
そして、特徴点特定部144は、未選択のピークが残っているか否かを判定する(S304)。S304では、特徴点特定部144は、正側か負側かに関わらずの全てのピークのうちに未選択のピークが残っているか否かを判定する。
【0134】
未選択のピークが残っている場合(S304:Yes)、特徴点特定部144は、未選択のピークのうちから1つのピークを選択し(S305)、選択したピークを新たな対象ピークとしてS302からの処理を繰り返し実行する。
【0135】
未選択のピークが残っていない場合(S304:No)、S206~S207の処理と、S112~S116の処理と、が実行される。
【0136】
このように、プロセッサ14は、ピーク検出によって検出された複数のピークのうちの、正側のピークと負側のピークとを区別することなく隣り合う2つのピークの値比に基づいてa点を特定するよう、構成されてもよい。
【0137】
なお、プロセッサ14は、図12のS206~S207の処理を省略し、S302の処理のみによってa点を特定するよう、構成されてもよい。
【0138】
(第3の変形例)
実施形態の変形例のさらに別のひとつとして、第3の変形例について説明する。第3の変形例のウェアラブル装置を、ウェアラブル装置1cと表記する。第3の変形例の説明では、実施形態、第1の変形例、および第2の変形例と異なる事項について説明する。実施形態、第1の変形例、または第2の変形例と同じ事項については説明を省略するかまたは簡略的に説明する。
【0139】
図13は、第3の変形例のウェアラブル装置1cの動作の一例を示すフローチャートである。
【0140】
第3の変形例では、第1の変形例と同様、S102の処理に続いて、周期境界の特定(S201)と、周期長さの平均値の算出(S202)とが実行される。
【0141】
S202の処理の後、S103~S105の処理が実行される。
【0142】
S105のピーク検出の後、特徴点特定部144は、速度脈波の最大ピークを周期毎に特定する(S401)。そして、特徴点特定部144は、ピーク検出によって検出された加速度脈波のピークのうちの、速度脈波の最大ピークが出現したタイミングの直前に現れたピークをa点候補として決定する(S402)。或るタイミングの直前に現れたピークは、当該タイミングの前に現れた全てのピークのうちの現れたタイミングが最も遅いピークをいう。
【0143】
図14は、図13に示すS401およびS402の処理を説明するための図である。本図には、第n周期と第(n+1)周期の2周期分の容積脈波、速度脈波、および加速度脈波が描画されている。
【0144】
S401では、特徴点特定部144は、ピークpvを第n周期の最大ピーク、ピークpvn+1を第(n+1)周期の最大ピークとして特定する。ピークpvが現れたタイミングは時刻t1であり、ピークpvn+1が現れたタイミングは時刻t2である。
【0145】
S402では、特徴点特定部144は、第n周期において時刻t1の直前に現れたピークであるピークpaを第n周期におけるa点として特定し、第(n+1)周期において時刻t2の直前に現れたピークであるピークpan+1を第(n+1)周期におけるa点として特定する。
【0146】
図13に説明を戻す。
S402に続いて、特徴点特定部144は、S206~S207、S112~S116の処理を実行する。
【0147】
このように、プロセッサ14は、容積脈波を1階微分した速度脈波の周期内の最大ピークを特定し、速度脈波の周期内の最大ピークが現れるタイミングの直前に現れる加速度脈波のピークをa点として特定するよう、構成されてもよい。
【0148】
第3の変形例においても加速度脈波をさらに微分することなくa点を特定するため、精度が高いa点の特定が可能である。その結果、生体情報の推定精度が向上する。つまり、ウェアラブル装置1cは、生体情報を好適に測定できる。
【符号の説明】
【0149】
1,1a,1b,1c ウェアラブル装置、10 筐体、11 表示装置、12 バンド、13 光電脈波センサ、14 プロセッサ、15 メモリ、16 バス、130 センサ基板、131 受光素子、132 発光素子、133 マイクロコンピュータユニット、134 ゲイン回路、140 取得部、141 フィルタ部、142 微分部、143 ピーク検出部、144 特徴点特定部、145 特徴量算出部、146 血圧推定部、147 出力部、148 周期特定部、200 腕、201 皮膚、211 橈骨、212 尺骨、213 橈骨動脈、214 尺骨動脈、215 腱。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14