(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034458
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】積層セラミックコンデンサおよび実装構造体
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
H01G4/30 201N
H01G4/30 513
H01G4/30 201F
H01G4/30 512
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138690
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 恒
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 祐太
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AF06
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE01
5E082FF05
5E082FG26
5E082GG10
(57)【要約】
【課題】 基板の音鳴きを低減し得る積層セラミックコンデンサを提供する。
【解決手段】 積層セラミックコンデンサ1は、第1面7a及び第2面7b、第1端面8a及び第2端面8b、並びに、第1側面9a及び第2側面9bを有する積層体2と、第1側面9aに位置し、第1外側面3aaを有する第1サイドマージン部3aと、第1外部電極4a及び第2外部電極4bとを含む。第1外部電極4a及び第2外部電極4bはそれぞれ、第1面7aに位置する第1部分41と、第1外側面3aaに位置する第2部分42とを有する。第1部分41は、第1電極面41aを有し、第2部分42は、第2電極面42aを有する。第1外側面3aaは、第2部分42で覆われていない露出領域3acを有する。第2電極面42aと露出領域3acとの間隔s1が、第1電極面41aと第1面7aとの間隔s2より小さい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層と内部電極層とが交互に積層されてなる略直方体状の積層体であって、互いに対向する第1面および第2面、互いに対向する第1側面および第2側面、ならびに、互いに対向する第1端面および第2端面を有する積層体と、
前記第1側面に位置し、前記第1側面側とは反対側の第1外側面を有する第1サイドマージン部と、
前記第2側面に位置し、前記第2側面側とは反対側の第2外側面を有する第2サイドマージン部と、
前記第1端面から、前記第1面、前記第2面、前記第1外側面および前記第2外側面にかけて位置する第1外部電極と、
前記第2端面から、前記第1面、前記第2面、前記第1外側面および前記第2外側面にかけて位置する第2外部電極と、を含み、
前記第1外部電極および前記第2外部電極は、前記内部電極層のそれぞれ異なる内部電極層に接続され、
前記第1外部電極および前記第2外部電極はそれぞれ、前記第1面に位置する第1部分と、前記第1外側面に位置する第2部分とを有し、
前記第1部分は、前記第1面側とは反対側の第1電極面を有し、
前記第2部分は、前記第1外側面側とは反対側の第2電極面を有し、
前記第1外側面は、前記第2部分で覆われた被覆領域と、前記第2部分で覆われていない露出領域とを有し、
前記第1側面に垂直な方向における前記第2電極面と前記露出領域との間隔が、前記第1面に垂直な方向における前記第1電極面と前記第1面との間隔より小さい、積層セラミックコンデンサ。
【請求項2】
前記第1側面は、前記積層セラミックコンデンサが基板に実装される際、前記基板に対向するように位置付けられる、請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項3】
前記第1側面に垂直な方向において、前記露出領域と前記第1側面との間隔が、前記被覆領域と前記第1側面との間隔より大きい、請求項1または2に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項4】
前記第1外側面は、2つの屈曲部を有しており、前記第1外部電極および前記第2外部電極はそれぞれ、前記2つの屈曲部まで延びている、請求項3に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項5】
前記第1側面に垂直な方向における前記第2電極面と前記被覆領域との間隔が、前記第1面に垂直な方向における前記第1電極面と前記第1面との間隔より小さい、請求項1または2に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項6】
請求項1に記載の積層セラミックコンデンサと、
実装面を有する基板と、を含み、
前記積層セラミックコンデンサは、前記第1側面が前記実装面に対向するように、前記基板に実装されている、実装構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層セラミックコンデンサおよび実装構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサは、誘電体層と内部電極層とが交互に積層されてなる積層体を含んで構成される。積層セラミックコンデンサは、通常、基板に実装されて使用されるが、積層セラミックコンデンサの駆動時に誘電体層が電歪効果によって伸縮することで、基板に撓みが発生し、基板の音鳴きが発生することがある。近年、積層セラミックコンデンサの小型化が進められているが、小型化された積層セラミックコンデンサであっても、薄層化および高積層化された積層セラミックコンデンサである場合、基板の音鳴きを引き起こすことがある。
【0003】
基板の音鳴きを低減する積層セラミックコンデンサが種々提案されている。例えば特許文献1は、基板に対向する側の外層部の厚みを、基板に対向する側とは反対側の外層部の厚みより厚くすることで、基板の音鳴きを低減する積層セラミックコンデンサを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の積層セラミックコンデンサは、基板の音鳴きを低減することにおいて、改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の積層セラミックコンデンサは、誘電体層と内部電極層とが交互に積層されてなる略直方体状の積層体であって、互いに対向する第1面および第2面、互いに対向する第1側面および第2側面、ならびに、互いに対向する第1端面および第2端面を有する積層体と、
前記第1側面に位置し、前記第1側面側とは反対側の第1外側面を有する第1サイドマージン部と、
前記第2側面に位置し、前記第2側面側とは反対側の第2外側面を有する第2サイドマージン部と、
前記第1端面から、前記第1面、前記第2面、前記第1外側面および前記第2外側面にかけて位置する第1外部電極と、
前記第2端面から、前記第1面、前記第2面、前記第1外側面および前記第2外側面にかけて位置する第2外部電極と、を含み、
前記第1外部電極および前記第2外部電極は、前記内部電極層のそれぞれ異なる内部電極層に接続され、
前記第1外部電極および前記第2外部電極はそれぞれ、前記第1面に位置する第1部分と、前記第1外側面に位置する第2部分とを有し、
前記第1部分は、前記第1面側とは反対側の第1電極面を有し、
前記第2部分は、前記第1外側面側とは反対側の第2電極面を有し、
前記第1外側面は、前記第2部分で覆われた被覆領域と、前記第2部分で覆われていない露出領域とを有し、
前記第1側面に垂直な方向における前記第2電極面と前記露出領域との間隔が、前記第1面に垂直な方向における前記第1電極面と前記第1面との間隔より小さい。
【0007】
本開示の実装構造体は、上記の積層セラミックコンデンサと、
実装面を有する基板と、を備え、
前記積層セラミックコンデンサは、前記第1側面が前記実装面に対向するように、前記基板に実装されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示の積層セラミックコンデンサおよび実装構造体によれば、基板の音鳴きを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態に係る積層セラミックコンデンサを示す斜視図である。
【
図2】
図1の切断面線II-IIから見た断面図である。
【
図3】
図1の切断面線III-IIIから見た断面図である。
【
図4】本開示の実施形態に係る積層セラミックコンデンサの他の例を示す断面図である。
【
図5】本開示の実施形態に係る積層セラミックコンデンサの他の例を示す断面図である。
【
図6】本開示の実施形態に係る積層セラミックコンデンサの他の例を示す断面図である。
【
図7C】母積層体を切断して得た複数の積層体前駆体を示す斜視図である。
【
図8A】積層体前駆体の側面にサイドマージン部を形成するための装置の構成を示す側面図である。
【
図8B】積層体前駆体の側面にサイドマージン部を形成する工程を示す側面図である。
【
図8C】積層体前駆体の側面にサイドマージン部を形成する工程を示す側面図である。
【
図10】本開示の実施形態に係る実装構造体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本開示の積層セラミックコンデンサおよび実装構造体の実施形態について説明する。以下で参照する図面は、模式的なものであり、図面に示された寸法比率等は、必ずしも正確に図示されたものではない。また、本明細書においては、便宜的に、直交座標系XYZを定義する。X軸方向は、第1方向または長さ方向とも称される。Y軸方向は、第2方向または幅方向とも称される。Z軸方向は、第3方向または高さ方向とも称される。
【0011】
図1は、本開示の実施形態に係る積層セラミックコンデンサを示す斜視図であり、
図2は、
図1の切断面線II-IIから見た断面図であり、
図3は、
図1の切断面線III-IIIから見た断面図である。
図4~6は、本開示の実施形態に係る積層セラミックコンデンサの他の例を示す断面図である。
図4,5に示す断面図は、
図2に示した断面図に対応し、
図6に示す断面図は、
図3に示した断面図に対応する。
図7Aは、仮積層体の作製工程を示す斜視図であり、
図7Bは、母積層体を示す斜視図であり、
図7Cは、母積層体を切断して得た複数の積層体前駆体を示す斜視図である。
図8Aは、積層体前駆体の側面にサイドマージン部を形成するための装置の構成を示す側面図であり、
図8B,8Cは、積層体前駆体の側面にサイドマージン部を形成する工程を示す側面図である。
図9は、本体部を示す斜視図である。
図10は、本開示の実施形態に係る実装構造体を示す斜視図であり、
図11は、
図10の切断面線XI-XIから見た断面図である。
【0012】
本実施形態の積層セラミックコンデンサ1は、
図1~3に示すように、積層体2と、第1サイドマージン部3aと、第2サイドマージン部3bと、第1外部電極4aと、第2外部電極4bとを備える。以下では、積層体2、第1サイドマージン部3aおよび第2サイドマージン部3bを纏めて本体部2,3a,3bと記載することがある。また、第1サイドマージン部3aおよび第2サイドマージン部3bを纏めてサイドマージン部3a,3bと記載することがある。さらに、第1外部電極4aおよび第2外部電極4bを纏めて外部電極4a,4bと記載することがある。
【0013】
積層体2は、略直方体状の形状を有している。積層体2は、第3方向に互いに対向する第1面7aおよび第2面7b、第1方向に互いに対向する第1端面8aおよび第2端面8b、ならびに、第2方向に互いに対向する第1側面9aおよび第2側面9bを有している。以下では、第1面7aおよび第2面7bを纏めて主面7a,7bと記載することがあり、第1端面8aおよび第2端面8bを纏めて端面8a,8bと記載することがあり、第1側面9aおよび第2側面9bを纏めて側面9a,9bと記載することがある。主面7a,7bは第3方向に垂直であってよく、端面8a,8bは第1方向に垂直であってよく、側面9a,9bは、第2方向に垂直であってよい。
【0014】
積層体2は、誘電体層5と内部電極層6とが交互に積層されて構成されている。誘電体層5と内部電極層6とは、第3方向に積層されている。内部電極層6は、第1側面9aおよび第2側面9bに露出している。また、内部電極層6は、極性別に第1端面8aまたは第2端面8bに露出している。
【0015】
誘電体層5は、絶縁性を有する材料で構成されている。誘電体層5は、例えばBaTiO3(チタン酸バリウム)、CaTiO3(チタン酸カルシウム)、SrTiO3(チタン酸ストロンチウム)、BaZrO3(ジルコン酸バリウム)等を主成分とするセラミック材料で構成されていてもよい。なお、本明細書において、「主成分」とは、着目する材料または部材等において最も構成比率の高い成分のことを言う。構成比率は、含有濃度(mol%)であってよい。
【0016】
内部電極層6は、導電性を有する材料で構成されている。内部電極層6は、例えばNi(ニッケル)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Cu(銅)等を主成分とする金属材料で構成されていてもよい。
【0017】
誘電体層5の第3方向における厚みが薄いほど、積層セラミックコンデンサ1の静電容量(以下、単に、容量ともいう)を増加させることが可能となる。誘電体層5は、例えば0.1μm以上10μm以下の厚みを有していてもよい。また、コンデンサとしての特性が確保できる限りにおいて、内部電極層6の第3方向における厚みが薄いほど、内部応力に起因する内部欠陥を抑制し、積層セラミックコンデンサ1の信頼性を向上させることができる。内部電極層6は、例えば1.5μm以下の厚みを有していてもよい。
【0018】
第3方向における積層体2の両端部は、カバー層で構成されていてもよい。カバー層は、絶縁性を有する材料で構成される。カバー層は、例えば1層または複数層の誘電体層5で構成されていてもよい。
【0019】
第1サイドマージン部3aは、積層体2の第1側面9aに位置し、第1側面9a側とは反対側の第1外側面3aaを有している。第1サイドマージン部3aは、第1側面9aに露出した極性の異なる内部電極層6同士を電気的に絶縁している。また、第1サイドマージン部3aは、第1側面9aに露出した内部電極層6の端部を物理的に保護している。
【0020】
第2サイドマージン部3bは、積層体2の第2側面9bに位置し、第2側面9b側とは反対側の第2外側面3baを有している。第2サイドマージン部3bは、第2側面9bに露出した極性の異なる内部電極層6同士を電気的に絶縁している。また、第2サイドマージン部3bは、第2側面9bに露出した内部電極層6の端部を物理的に保護している。以下では、積層体2とサイドマージン部3a,3bとで構成される部品を本体部2,3a,3bと記載することがある。
【0021】
サイドマージン部3a,3bは、絶縁性を有する材料で構成されている。サイドマージン部3a,3bは、セラミック材料で構成されていてもよい。この構成により、サイドマージン部3a,3bは、絶縁性および比較的高い機械的強度を有することができる。また、サイドマージン部3a,3bがセラミック材料で構成されている場合、積層体2とサイドマージン部3a,3bとを同時に焼成することが可能となる。サイドマージン部3a,3bは、例えばBaTiO
3、CaTiO
3、SrTiO
3、BaZrO
3等を主成分とするセラミック材料で構成されていてもよい。
図1では、積層体2とサイドマージン部3a,3bとの境界を二点鎖線で示しているが、実際の境界は明瞭に現われるわけではない。
【0022】
サイドマージン部3a,3bの第2方向における厚みが薄いほど、積層セラミックコンデンサ1を小型大容量化することができる。第1サイドマージン部3aおよび第2サイドマージン部3bはそれぞれ、例えば30μm程度以下の厚みを有していてもよい。
【0023】
第1外部電極4aは、第1端面8aから第1面7a、第2面7b、第1外側面3aaおよび第2外側面3baにかけて位置している。第1外部電極4aは、第1端面8aに露出した内部電極層6と電気的に接続されている。第2外部電極4bは、第2端面8bから第1面7a、第2面7b、第1外側面3aaおよび第2外側面3baにかけて位置している。第2外部電極4bは、第2端面8bに露出した内部電極層6と電気的に接続されている。
【0024】
第1外部電極4aおよび第2外部電極4bは、第1部分41と、第2部分42とを有している。第1部分41は、第1面7aに位置し、第1面7aの第1端面8a寄りの部位および第1面7aの第2端面8b寄りの部位を覆っている。第1部分41は、第1面7a側とは反対側の第1電極面41aを有している。第2部分42は、第1外側面3aaに位置し、第1外側面3aaの第1端面8a寄りの部位および第1外側面3aaの第2端面8b寄りの部位を覆っている。第2部分42は、第1外側面3aa側とは反対側の第2電極面42aを有している。第1外側面3aaは、第2部分42で覆われた被覆領域3abと、第2部分42から露出した露出領域3acとを有している。
【0025】
外部電極4a,4bは、1層または複数層の導電層で構成されている。外部電極4a,4bは、
図2,3に示すように、第1層43と、第2層44とで構成されていてもよい。第1層43は、下地層とも称される。第2層44は、外層とも称される。下地層43は、本体部2,3a,3bに直接接しており、端面8a,8bに露出した、内部電極層6の端部と接続されている。外層44は、下地層43における積層体2側とは反対側の面を覆っている。外部電極4a,4bを複数層の導電層で構成することで、外部電極4a,4bと本体部2,3a,3bとの密着性を高めることができる。さらに、積層セラミックコンデンサ1を基板に実装する際に用いる導電性接合材に対する外部電極4a,4bの濡れ性を高めることができる。その結果、積層セラミックコンデンサ1および積層セラミックコンデンサ1を含む実装構造体の信頼性を向上させることができる。
【0026】
下地層43は、金属材料から構成されている。下地層43に用いられる金属材料としては、例えば、Ni、Cu、Ag、Pd、Au等の金属またはこれらの金属から成る合金が挙げられる。下地層43は、例えば、めっき法、スパッタリング法、蒸着法等の薄膜形成技術を用いて形成されていてもよく、ディップ法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法等の厚膜形成技術を用いて形成されていてもよい。
【0027】
外層44は、金属材料から構成されている。外層44に用いられる金属材料としては、例えば、Ni、Cu、Au、Sn等の金属が挙げられる。外層44は、例えば、無電解めっき法、電解めっき法等の薄膜形成技術を用いて形成されていてもよい。
【0028】
積層セラミックコンデンサ1は、
図2,3に示すように、第1側面9aに垂直な方向における第2電極面42aと露出領域3acとの間隔s1が、第1面7aに垂直な方向における第1電極面41aと第1面7aとの間隔s2より小さい構成である。この構成により、積層セラミックコンデンサ1を基板10に実装する際、第1側面9aが基板10の実装面10aに対向するように実装することで(
図10,11参照)、第1面7aが実装面10aに対向するように実装する場合と比べて、積層セラミックコンデンサ1と実装面10aとの間隔を小さくすることができる。その結果、積層セラミックコンデンサ1を駆動した際、積層セラミックコンデンサ1と基板10とを実質的に面接触させることができ、基板10の撓みを抑えることができる。ひいては、基板10の撓みによる基板10の振動を低減することができ、基板10の音鳴きを低減することができる。なお、本明細書において、積層セラミックコンデンサ1と実装面10aとの間隔とは、本体部2,3a,3bにおける外部電極4a,4bで覆われていない部位と実装面10aとの間隔を指す。また、第2電極面42aと露出領域3acとの間隔が一定でない場合、第2電極面42aと露出領域3acとの間隔の平均値を間隔s1としてよい。また、第1電極面41aと第1面7aとの間隔が一定でない場合、第1電極面41aと第1面7aとの間隔の平均値を間隔s2としてよい。
【0029】
積層セラミックコンデンサ1は、第2電極面42aと露出領域3acとが面一である構成であってもよい。この構成により、積層セラミックコンデンサ1を基板10に実装する際、第1側面9aが実装面10aに対向するように実装することで、積層セラミックコンデンサ1と実装面10aとの間の間隔を実質的になくすことができる。その結果、積層セラミックコンデンサ1を駆動した際の基板10の撓みを効果的に低減することができ、基板10の音鳴きを効果的に低減できる。
【0030】
積層セラミックコンデンサ1によれば、間隔s1と間隔s2とが異なることで、第1面7a側から見たときの視認性と、第1外側面3aa側から見たときの視認性とが異なるため、第1外側面3aaを容易に判別できる。その結果、積層セラミックコンデンサ1を基板10に実装する際、第1側面9aを実装面10aに対向させて実装することが容易になる。
【0031】
本開示の積層セラミックコンデンサ1において、第2サイドマージン部3bは、第1サイドマージン部3aと同様に構成されてよく、外部電極4a,4bにおける第2外側面3baに位置する部分は、外部電極4a,4bの第2部分42と同様に構成されてよい。また、第2面7bは、第1面7aと同様に構成されてよく、外部電極4a,4bにおける第2面7bに位置する部分は、外部電極4a,4bの第1部分41と同様に構成されてよい。
【0032】
次に、本開示の積層セラミックコンデンサ1の他の例について説明する。
【0033】
積層セラミックコンデンサ1は、
図4に示すように、第1側面9aに垂直な方向において、第1外側面3aaの露出領域3acと第1側面9aとの間隔(中央側サイドマージンともいう)s3が、第1外側面3aaの被覆領域3abと第1側面9aとの間隔(端面側サイドマージンともいう)s4より大きい構成であってもよい。中央側サイドマージンs3が比較的大きいことで、本体部2,3a,3bの第1外側面3aa側の機械的強度を高めることができる。その結果、例えば積層セラミックコンデンサ1を基板10に実装する際に、露出領域3acに衝撃が加わった場合であっても、露出領域3acを起点とするクラックの発生を低減できるため、積層セラミックコンデンサ1の信頼性を向上させることができる。中央側サイドマージンs3の大きさは、例えば30μm程度以下であってもよい。また、所定寸法の積層セラミックコンデンサ1に所定大きさの中央側サイドマージンs3を確保する必要がある場合であっても、第3方向に沿って見たときの内部電極層6の広い面積を確保することができる。その結果、小型かつ大容量の積層セラミックコンデンサ1を提供することが可能となる。なお、露出領域3acと第1側面9aとの間隔が一定でない場合、露出領域3acと第1側面9aとの間隔の平均値を間隔s3としてよい。また、被覆領域3abと第1側面9aとの間隔が一定でない場合、被覆領域3abと第1側面9aとの間隔の平均値を間隔s4としてよい。
【0034】
端面側サイドマージンs4は、第1外部電極4aと第2外部電極4bに接続された内部電極層6とを電気的に絶縁し、第2外部電極4bと第1外部電極4aに接続された内部電極層6とを電気的に絶縁し得る大きさであればよい。端面側サイドマージンs4の大きさは、中央側サイドマージンs3の大きさの5%~80%程度であってもよい。端面側サイドマージンs4の大きさは、例えば1μm程度以上であってもよい。被覆領域3abは外部電極4a,4bによって覆われているため、端面側サイドマージンs4が比較的小さい場合であっても、被覆領域3abを起点とするクラックは発生し難い。
【0035】
積層セラミックコンデンサ1は、
図4に示すように、第1面7aと平行な断面において、第1外側面3aaが少なくとも2つの屈曲部3adを有し、第1外部電極4aおよび第2外部電極4bがそれぞれ2つの屈曲部3adまで延びている構成であってもよい。この構成により、外部電極4a,4bと第1サイドマージン部3aとの接触面積を増加させ、外部電極4a,4bと本体部2,3a,3bとの接続強度を高めることができる。その結果、外部電極4a,4bが本体部2,3a,3bから剥離する虞を低減できるため、積層セラミックコンデンサ1の信頼性を向上させることができる。
【0036】
第1サイドマージン部3aは、2つの屈曲部3adのそれぞれにおいて、第2方向における厚みが、本体部2,3a,3bの端面8a,8b側から本体部2,3a,3bの第1方向における中央側に向かって、厚くなっていてもよい。これにより、第1サイドマージン部3aおよび外部電極4a,4bは、
図4に示すように、凹部22を形成することができる。その結果、積層セラミックコンデンサ1を基板10に実装する際、多量の導電性接合材12が積層セラミックコンデンサ1と基板10との間に流れ込んだとしても、余分な導電性接合材12が凹部22に溜まるので、積層セラミックコンデンサ1の第1方向における中央側に流れにくくなる(
図10,11参照)。ひいては、第1外部電極4aと第2外部電極4bとが電気的に短絡する虞を低減できるため、積層セラミックコンデンサ1を含む実装構造体の信頼性を向上させることができる。
【0037】
積層セラミックコンデンサ1は、
図5,6に示すように、第1側面9aに垂直な方向における第2電極面42aと露出領域3acとの間隔s5が、第1面7aに垂直な方向における第1電極面41aと第1面7aとの間隔s6より小さい構成であってもよい。言い換えると、積層セラミックコンデンサ1は、外部電極4a,4bの第2部分42の厚みが、外部電極4a,4bの第1部分41の厚みより薄い構成であってもよい。この構成により、積層セラミックコンデンサ1を基板10に実装する際、第1側面9aが基板10の実装面10aに対向するように実装することで(
図10,11参照)、外部電極4a,4bが電気的に接続される基板電極11a,11bと内部電極層6との距離を短くすることができる。その結果、積層セラミックコンデンサ1を含む実装構造体の等価直列インダクタンス(Equivalent Series Inductance)を低減することができる。ひいては、基板10の音鳴きを低減するとともに、高周波領域で使用し得る積層セラミックコンデンサ1を提供することができる。なお、第2電極面42aと露出領域3acとの間隔が一定でない場合、第2電極面42aと露出領域3acとの間隔の平均値を間隔s5としてよい。また、第1電極面41aと第1面7aとの間隔が一定でない場合、第1電極面41aと第1面7aとの間隔の平均値を間隔s6としてよい。
【0038】
第2部分42の厚みを第1部分41の厚みより薄くすることで、第1サイドマージン部3aの厚みが一定である場合であっても、間隔s1を間隔s2より小さくすることができる(
図2,3参照)。したがって、積層セラミックコンデンサ1の製造におけるサイドマージン部3a,3bを形成する工程を簡単化することができる。
【0039】
次に、積層セラミックコンデンサ1の製造方法の一例について説明する。
【0040】
先ず、誘電体層5の材料として、BaTiO3、CaTiO3、SrTiO3等の誘電体材料またはこれらの混合物を主成分とする粉末を準備し、当該粉末に有機ビヒクルを加えて、セラミックスラリーを調製する。次いで、ドクターブレード法、ダイコーター法等のシート成形法を用いて、セラミックグリーンシート(以下、単に、グリーンシートともいう)13を作製する。グリーンシート13の厚みは、例えば、0.5~10μm程度であってもよい。
【0041】
次に、内部電極層6の材料として、Ni、Cu、Ag等の金属材料またはこれらの混合物を主成分とする粉末を用いて、導電性ペーストを調製する。続いて、調整した導電性ペーストを用いて、グリーンシート13の主面上に内部電極層となる電極パターンが印刷されたパターンシート14を形成する。電極パターンの印刷には、例えばスクリーン印刷法、グラビア印刷法等の印刷法を用いることができる。
【0042】
次に、所定枚数積層したグリーンシート13の上に、パターンシート14を所定枚数積層し、さらに、グリーンシート13を所定枚数積層することによって(
図7A参照)、仮積層体を作製する。次に、仮積層体を積層方向にプレスして、母積層体15を得る(
図7B参照)。仮積層体のプレスは、例えば静水圧プレス装置を用いて行うことができる。母積層体15を仮想分割ライン16に沿って切断し、積層体2となる積層体前駆体2pを作製する(
図7C参照)。母積層体15の切断は、例えば押切切断機、ダイシングソウ装置等を用いて行うことができる。なお、積層体前駆体2pは積層体2と同一構造であるため、以下では、積層体前駆体2pについても、主面7a,7b、端面8a,8bおよび側面9a,9b等の用語および参照符号を用いる。
【0043】
次に、積層体前駆体2pの側面9a,9bにサイドマージン部3a,3bとなるセラミックグリーンシートを形成する。
図8Aは、側面9a,9bにサイドマージン部3a,3bとなるグリーンシートを形成するための装置の構成の一例を示している。積層体前駆体2pは、第2側面9bが、粘着および剥離が可能な支持シート17を介して、第1台座18aの下面に固定されている。第1台座18aに固定されている積層体前駆体2pの下方には、第2台座18bが配置されている。第1台座18aおよび第2台座18bは、第1台座18aの下面と第2台座18bの上面とが略平行となるように配置されている。第2台座18bの上面には、複数の帯状部材19が配置されている。複数の帯状部材19は、積層体前駆体2pの第1面7aに垂直な方向に延びるように配置されている。隣り合う帯状部材19同士の間隔は、積層体前駆体2pの長さ(第1端面8aと第2端面8bとの距離)より短くされている。第2台座18bの上方には、弾性を有する材料で構成された樹脂シート20が複数の帯状部材19を覆うように配置されている。樹脂シート20の上面には、第1サイドマージン部3aとなるグリーンシート21が配置されている。
【0044】
先ず、
図8Bに示すように、第1台座18aを下方に移動させ、積層体前駆体2pをグリーンシート21に押圧することで、第1側面9aにグリーンシート21を圧着させる。その際、積層体前駆体2pを、樹脂シート20が第2台座18bと複数の帯状部材とによって形成されたストライプ状段差の形状に応じて変形する程度の押圧力で押圧する。これにより、第1側面9aに圧着されるグリーンシート21を、長さ方向(
図9Bにおける左右方向)における中央側の厚みが端面側の厚みより厚いグリーンシート21とすることができる。
【0045】
次に、
図8Cに示すように、積層体前駆体2pの第1側面9aにグリーンシート21が圧着された状態で、第1台座18aを上方に移動させる。グリーンシート21における第1側面9aに接触していない部分は樹脂シート20上に残るため、第1側面9aに第1サイドマージン部3aとなるグリーンシート21を形成することができる。同様にして、第2側面9bに第2サイドマージン部3bとなるグリーンシート21を形成することができ、本体部2,3a,3bとなる本体部前駆体を作製することができる。
【0046】
次に、本体部前駆体に、大気雰囲気、不活性ガス雰囲気または還元雰囲気で、大気圧または減圧で脱脂処理を行った後、還元雰囲気で焼成する。焼成温度は、例えば1100℃~1300℃程度であってよい。続いて、焼成後の本体部前駆体に窒素雰囲気で再酸化処理を行う。再酸化処理後の本体部前駆体を研磨粉、研磨メディア等が入ったポットの中に入れて回転させて研磨することによって、本体部前駆体の角およびバリを取り除き、
図9に示すような本体部2,3a,3bを得る。得られた本体部2,3a,3bに外部電極4a,4bを形成することによって、積層セラミックコンデンサ1を製造することができる。
【0047】
積層セラミックコンデンサ1は、前述したように、外部電極4a,4bの第2部分42の厚みが、外部電極4a,4bの第1部分41の厚みより薄い構成であってもよい(
図5,6参照)。このような積層セラミックコンデンサ1は、以下のようにして製造することができる。
【0048】
先ず、本体部2,3a,3bを上記方法と同様の方法で作製する。なお、サイドマージン部3a,3bは、中央側サイドマージンs3が端面側サイドマージンs4より大きくてもよく(
図4参照)、中央側サイドマージンs3と端面側サイドマージンs4とが同じ大きさであってもよい。言い換えれば、側面9a,9bにサイドマージン部3a,3bとなるセラミックグリーンシート21を形成する際、
図9Aに示した構成の装置を用いてもよく、複数の帯状部材19が配置されておらず、第2台座18bの上面に樹脂シート20を介してセラミックグリーンシート21が配置されている構成の装置を用いてもよい。
【0049】
次に、下地層43となる導電性ペーストを調製し、調製した導電性ペーストを本体部2,3a,3bにおける第1端面8a寄りの部位および第2端面8b寄りの部位に一定の厚みで塗布する。続いて、第1外側面3aaに塗布された導電性ペーストにブロット処理を施す。ブロット処理は、第1外側面3aaに塗布された導電性ペーストをプレートに押し付けた後引き離すことによって、第1外側面3aaに塗布された導電性ペーストの一部を除去する(拭い取る)処理である。導電性ペーストが塗布された本体部2,3a,3bを焼成し、下地層43を形成した後、外層44を形成することによって、第2部分42の厚みが第1部分41の厚みより薄い外部電極4a,4bを形成することができる。
【0050】
次に、本開示の実装構造体について説明する。
【0051】
本実施形態の実装構造体100は、
図10,11に示すように、積層セラミックコンデンサ1および基板10を備える。基板10は、実装面10aを有している。実装面10aには、第1基板電極11aおよび第2基板電極11bが位置している。第1基板電極11aおよび第2基板電極11bには、第1外部電極4aおよび第2外部電極4bがそれぞれ電気的に接続される。実装面10aには、積層セラミックコンデンサ1と電気的に接続される電気回路が位置していてもよい。
【0052】
積層セラミックコンデンサ1は、第1側面9aが実装面10aに対向するように、実装面10aに実装されている。第1外部電極4aおよび第2外部電極4bは、導電性接合材12を介して、第1基板電極11aおよび第2基板電極11bにそれぞれ接合されている。導電性接合材12としては、はんだ、ろう材等を用いることができる。
【0053】
実装構造体100は、積層セラミックコンデンサ1と実装面10aとの間隔が小さいため、積層セラミックコンデンサ1の駆動時の基板10の音鳴きを低減することができる。
【0054】
以上、本開示の実施形態について詳細に説明したが、本開示は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。
【0055】
本開示の積層セラミックコンデンサおよび実装構造体は、以下の構成(1)~(6)の態様で実施可能である。
【0056】
(1)誘電体層と内部電極層とが交互に積層されてなる略直方体状の積層体であって、互いに対向する第1面および第2面、互いに対向する第1側面および第2側面、ならびに、互いに対向する第1端面および第2端面を有する積層体と、
前記第1側面に位置し、前記第1側面側とは反対側の第1外側面を有する第1サイドマージン部と、
前記第2側面に位置し、前記第2側面側とは反対側の第2外側面を有する第2サイドマージン部と、
前記第1端面から、前記第1面、前記第2面、前記第1外側面および前記第2外側面にかけて位置する第1外部電極と、
前記第2端面から、前記第1面、前記第2面、前記第1外側面および前記第2外側面にかけて位置する第2外部電極と、を含み、
前記第1外部電極および前記第2外部電極は、前記内部電極層のそれぞれ異なる内部電極層に接続され、
前記第1外部電極および前記第2外部電極はそれぞれ、前記第1面に位置する第1部分と、前記第1外側面に位置する第2部分とを有し、
前記第1部分は、前記第1面側とは反対側の第1電極面を有し、
前記第2部分は、前記第1外側面側とは反対側の第2電極面を有し、
前記第1外側面は、前記第2部分で覆われた被覆領域と、前記第2部分で覆われていない露出領域とを有し、
前記第1側面に垂直な方向における前記第2電極面と前記露出領域との間隔が、前記第1面に垂直な方向における前記第1電極面と前記第1面との間隔より小さい、積層セラミックコンデンサ。
【0057】
(2)前記第1側面は、前記積層セラミックコンデンサが基板に実装される際、前記基板に対向するように位置付けられる、上記(1)に記載の積層セラミックコンデンサ。
【0058】
(3)前記第1側面に垂直な方向において、前記露出領域と前記第1側面との間隔が、前記被覆領域と前記第1側面との間隔より大きい、上記(1)または(2)に記載の積層セラミックコンデンサ。
【0059】
(4)前記第1外側面は、2つの屈曲部を有しており、前記第1外部電極および前記第2外部電極はそれぞれ、前記2つの屈曲部まで延びている、上記(3)に記載の積層セラミックコンデンサ。
【0060】
(5)前記第1側面に垂直な方向における前記第2電極面と前記被覆領域との間隔が、前記第1面に垂直な方向における前記第1電極面と前記第1面との間隔より小さい、上記(1)~(4)のいずれかに記載の積層セラミックコンデンサ。
【0061】
(6)上記(1)~(5)のいずれかに記載の積層セラミックコンデンサと、
実装面を有する基板と、を含み、
前記積層セラミックコンデンサは、前記第1側面が前記実装面に対向するように、前記基板に実装されている、実装構造体。
【符号の説明】
【0062】
1 積層セラミックコンデンサ
2 積層体
2p 積層体前駆体
3a 第1サイドマージン部
3a サイドマージン部
3aa 第1外側面
3ab 被覆領域
3ac 露出領域
3ad 屈曲部
3b 第2サイドマージン部
3ba 第2外側面
4a 第1外部電極
4b 第2外部電極
41 第1部分
41a 第1電極面
42 第2部分
42a 第2電極面
43 第1層(下地層)
44 第2層(外層)
5 誘電体層
6 内部電極層
7a 第1面
7b 第2面
8a 第1端面
8b 第2端面
9a 第1側面
9b 第2側面
10 基板
10a 実装面
11a 第1基板電極
11b 第2基板電極
12 導電性接合材
13 セラミックグリーンシート
14 パターンシート
15 母積層体
16 仮想分割ライン
17 支持シート
18a 第1台座
18b 第2台座
19 帯状部材
20 樹脂シート
21 セラミックグリーンシート
22 凹部
100 実装構造体