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特開2024-34467ステーターユニットおよび電動弁、ならびに、ステーターユニットの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034467
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】ステーターユニットおよび電動弁、ならびに、ステーターユニットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/08 20060101AFI20240306BHJP
   F16K 31/04 20060101ALI20240306BHJP
   H02K 37/14 20060101ALI20240306BHJP
   H02K 15/14 20060101ALI20240306BHJP
   H02K 11/02 20160101ALI20240306BHJP
【FI】
H02K5/08 A
F16K31/04 Z
H02K37/14 535B
H02K15/14 Z
H02K11/02
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138705
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110002608
【氏名又は名称】弁理士法人オーパス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安本 祐太
(72)【発明者】
【氏名】荒井 裕介
(72)【発明者】
【氏名】吉田 竜也
(72)【発明者】
【氏名】成川 文太
【テーマコード(参考)】
3H062
5H605
5H611
5H615
【Fターム(参考)】
3H062AA02
3H062BB07
3H062CC02
3H062DD01
3H062EE06
3H062GG02
5H605AA11
5H605BB05
5H605BB10
5H605BB14
5H605CC01
5H605FF06
5H605GG18
5H611AA03
5H611BB01
5H611BB07
5H611BB08
5H611UA04
5H611UB02
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB07
5H615BB14
5H615BB17
5H615PP01
5H615PP28
5H615SS44
(57)【要約】
【課題】ステーターから放出される電磁波を抑制できかつ電子部品の動作の不具合を抑制できるステーターユニットおよび電動弁、ならびに、ステーターユニットの製造方法を提供する。
【解決手段】ステーターユニット8は、ステーター80と、ステーター80と一体的に成形される合成樹脂製のハウジング100と、を有する。また、ステーターユニット8は、ステーター80とハウジング100との間に配置された電磁波抑制膜90を有する。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステーターと、前記ステーターと一体的に成形される合成樹脂製のハウジングと、を有するステーターユニットであって、
前記ステーターと前記ハウジングとの間に配置された電磁波抑制膜を有することを特徴とするステーターユニット。
【請求項2】
前記ステーターが、A相ステーターと、B相ステーターと、を有し、
前記A相ステーターが、中空円環形状のA相ヨークと、前記A相ヨークの内側に配置されるA相ボビンと、前記A相ボビンに巻回されるA相コイルと、を有し、
前記B相ステーターが、中空円環形状のB相ヨークと、前記B相ヨークの内側に配置されるB相ボビンと、前記B相ボビンに巻回されるB相コイルと、を有し、
前記A相ステーターと前記B相ステーターとが同軸に配置され、
前記A相ヨークの第1端面と前記B相ヨークの第1端面とが接しており、
前記A相ヨークの第2端面、前記A相ヨークの外周面、前記B相ヨークの第2端面および前記B相ヨークの外周面が、ヨーク外面を構成し、
前記電磁波抑制膜が、前記ヨーク外面と前記ハウジングとの間に配置される、請求項1に記載のステーターユニット。
【請求項3】
前記ステーターが、前記A相ステーターおよび前記B相ステーターと一体的に成形される樹脂部材をさらに有し、
前記樹脂部材が、端子支持部を有し、
前記端子支持部が、前記A相ヨークおよび前記B相ヨークから軸方向と直交する方向に延びており、
前記A相コイルおよび前記B相コイルに接続されたコイル端子が、前記端子支持部の先端面から突出され、
前記電磁波抑制膜が、前記端子支持部と前記ハウジングとの間に配置される、請求項2に記載のステーターユニット。
【請求項4】
前記樹脂部材が、円環形状の環状部をさらに有し、
前記環状部が、前記A相ヨークの第2端面または前記B相ヨークの第2端面に配置され、
前記電磁波抑制膜が、前記環状部と前記ハウジングとの間に配置される、請求項3に記載のステーターユニット。
【請求項5】
前記端子支持部における前記先端面を含む一部が、前記ハウジングに設けられた基板収容空間に配置され、
前記コイル端子が、前記基板収容空間に配置された基板と接続され、
前記端子支持部の前記一部の表面全体が、前記基板収容空間に直接的に面している、請求項3に記載のステーターユニット。
【請求項6】
前記ハウジングを構成する合成樹脂が、電磁波抑制材を含む、請求項1に記載のステーターユニット。
【請求項7】
ステーターと、前記ステーターと一体的に成形される合成樹脂製のハウジングと、を有するステーターユニットであって、
前記ハウジングを構成する合成樹脂が、電磁波抑制材を含むことを特徴とするステーターユニット。
【請求項8】
弁本体アセンブリと、請求項1または請求項7に記載されたステーターユニットと、を有する電動弁であって、
前記弁本体アセンブリが、円筒形状のケースと、前記ケースの内側に配置されるマグネットローターと、を有し、
前記ステーターが、前記ケースの外側に配置される、電動弁。
【請求項9】
ステーターと、前記ステーターと一体的に成形される合成樹脂製のハウジングと、を有するステーターユニットの製造方法であって、
前記ステーターの表面に電磁波抑制膜を形成し、
前記ハウジングが前記電磁波抑制膜を覆うように当該ハウジングを射出成形することを特徴とするステーターユニットの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステーターユニットおよび電動弁、ならびに、ステーターユニットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、エアコンシステムに組み込まれる従来の電動弁を開示している。特許文献1の電動弁は、収容空間が設けられたハウジングを有する。収容空間には、キャンと、ステーターと、制御基板と、が配置される。キャンの内側には、マグネットローターが配置される。マグネットローターとステーターとは、ステッピングモーターを構成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6826727号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ステーターにはマグネットローターを回転させるための電流が流れる。ステーターを流れる電流によって、ステーターから電磁波が放出されることがある。電磁波は、制御基板および電動弁の近傍にある電子機器に影響を及ぼすおそれがある。ステーターに電磁波抑制塗料を塗布することで、ステーターから放出される電磁波を抑制することができる。電磁波抑制塗料はステーターから剥離することがある。電磁波抑制塗料は導電性を有している。そのため、剥離した電磁波抑制塗料は、制御基板または電子機器において短絡を引き起こすおそれがあり、それらに実装された電子部品の動作の不具合の原因となり得る。
【0005】
そこで、本発明は、ステーターから放出される電磁波を抑制できかつ電子部品の動作の不具合を抑制できるステーターユニットおよび電動弁、ならびに、ステーターユニットの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係るステーターユニットは、ステーターと、前記ステーターと一体的に成形される合成樹脂製のハウジングと、を有するステーターユニットであって、前記ステーターと前記ハウジングとの間に配置された電磁波抑制膜を有することを特徴とする。
【0007】
本発明において、前記ステーターが、A相ステーターと、B相ステーターと、を有し、前記A相ステーターが、中空円環形状のA相ヨークと、前記A相ヨークの内側に配置されるA相ボビンと、前記A相ボビンに巻回されるA相コイルと、を有し、前記B相ステーターが、中空円環形状のB相ヨークと、前記B相ヨークの内側に配置されるB相ボビンと、前記B相ボビンに巻回されるB相コイルと、を有し、前記A相ステーターと前記B相ステーターとが同軸に配置され、前記A相ヨークの第1端面と前記B相ヨークの第1端面とが接しており、前記A相ヨークの第2端面、前記A相ヨークの外周面、前記B相ヨークの第2端面および前記B相ヨークの外周面が、ヨーク外面を構成し、前記電磁波抑制膜が、前記ヨーク外面と前記ハウジングとの間に配置される、ことが好ましい。
【0008】
本発明において、前記ステーターが、前記A相ステーターおよび前記B相ステーターと一体的に成形される樹脂部材をさらに有し、前記樹脂部材が、端子支持部を有し、前記端子支持部が、前記A相ヨークおよび前記B相ヨークから軸方向と直交する方向に延びており、前記A相コイルおよび前記B相コイルに接続されたコイル端子が、前記端子支持部の先端面から突出され、前記電磁波抑制膜が、前記端子支持部と前記ハウジングとの間に配置される、ことが好ましい。
【0009】
本発明において、前記樹脂部材が、円環形状の環状部をさらに有し、前記環状部が、前記A相ヨークの第2端面または前記B相ヨークの第2端面に配置され、前記電磁波抑制膜が、前記環状部と前記ハウジングとの間に配置される、ことが好ましい。
【0010】
本発明において、前記端子支持部における前記先端面を含む一部が、前記ハウジングに設けられた基板収容空間に配置され、前記コイル端子が、前記基板収容空間に配置された基板と接続され、前記端子支持部の前記一部の表面全体が、前記基板収容空間に直接的に面している、ことが好ましい。
【0011】
本発明において、前記ハウジングを構成する合成樹脂が、電磁波抑制材を含む、ことが好ましい。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の他の一態様に係るステーターユニットは、ステーターと、前記ステーターと一体的に成形される合成樹脂製のハウジングと、を有するステーターユニットであって、前記ハウジングを構成する合成樹脂が、電磁波抑制材を含むことを特徴とする。
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の他の一態様に係る電動弁は、弁本体アセンブリと、前記ステーターユニットと、を有する電動弁であって、前記弁本体アセンブリが、円筒形状のケースと、前記ケースの内側に配置されるマグネットローターと、を有し、前記ステーターが、前記ケースの外側に配置される。
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係るステーターユニットの製造方法は、ステーターと、前記ステーターと一体的に成形される合成樹脂製のハウジングと、を有するステーターユニットの製造方法であって、前記ステーターの表面に電磁波抑制膜を形成し、前記ハウジングが前記電磁波抑制膜を覆うように当該ハウジングを射出成形することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
ステーターユニットは、ステーターとハウジングとの間に配置された電磁波抑制膜を有する。このようにしたことから、電磁波抑制膜がステーターとハウジングとによって保持され、電磁波抑制膜の脱落を抑制できる。そのため、ステーターから放出される電磁波を抑制できかつ電子部品の動作の不具合を抑制できる。
【0016】
ステーターユニットのハウジングを構成する合成樹脂が、電磁波抑制材を含む。このようにしたことから、電磁波抑制材がハウジングを構成する合成樹脂に含まれており、電磁波抑制材が脱落することがない。そのため、ステーターから放出される電磁波を抑制できかつ電子部品の動作の不具合を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施例に係る電動弁の断面図である。
図2図1の電動弁が有する弁本体アセンブリの断面図である。
図3図1の電動弁が有するステーターユニットの断面図である。
図4図3のステーターユニットが有する、電磁波抑制膜が表面に形成されたステーターの断面図である。
図5】電磁波抑制膜を形成する前のステーターの断面図である。
図6】電磁波抑制膜が表面に形成されたステーターの斜視図である。
図7】電磁波抑制膜を形成する前のステーターを示す斜視図である。
図8】電磁波抑制膜が表面に形成されたステーターの側面図である。
図9】電磁波抑制膜を形成する前のステーターの側面図である。
図10図1の電動弁の変形例の構成を示す断面図である。
図11図10の電動弁が有するステーターユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施例に係る電動弁について、図1図11を参照して説明する。電動弁は、例えば、車両に搭載されたエアコンシステム、または、屋内に設置されたエアコンシステムに組み込まれる。本実施例に係る電動弁は、例えば、冷媒流量を調整するために使用される。
【0019】
図1は、本発明の一実施例に係る電動弁の断面図である。図2は、図1の電動弁が有する弁本体アセンブリの断面図である。図3は、図1の電動弁が有するステーターユニットの断面図である。図4図9は、図3のステーターユニットが有するステーターを示す図である。図4図5は、ステーターの断面図である。図6図7は、ステーターの斜視図である。図8図9は、ステーターの側面図である。図4図6図8は、電磁波抑制膜が表面に形成されたステーターを示す。図5図7図8は、電磁波抑制膜が形成される前のステーターを示す。図10は、図1の電動弁の変形例の構成を示す断面図である。図11は、図10の電動弁が有するステーターユニットの断面図である。図3図4図11において、電磁波抑制膜を太線で模式的に示している。図6図8において、電磁波抑制膜をドット領域で模式的に示している。各図において、矢印Xで示すX方向が左右方向であり、矢印Yで示すY方向が前後方向であり、矢印Zで示すZ方向が上下方向である。矢印Xにおいて「X」の文字がある方が右方であり、矢印Yにおいて「Y」の文字がある方が後方であり、矢印Zにおいて「Z」の文字がある方が上方である。
【0020】
図1に示すように、本実施例に係る電動弁1は、弁本体アセンブリ5と、ステーターユニット8と、を有している。
【0021】
図2に示すように、弁本体アセンブリ5は、弁本体10と、ホルダー20と、弁体支持部材25と、キャン30と、駆動機構40と、弁体70と、を有している。
【0022】
弁本体10は、直方体形状を有している。弁本体10は、弁室13と、弁室13に接続された弁口14と、を有している。弁本体10は、第1通路17と、第2通路18と、を有している。第1通路17の一端は弁室13と接続され、第1通路17の他端は弁本体10の後面10aに開口している。第2通路18の一端は弁口14を介して弁室13と接続され、第2通路18の他端は弁本体10の前面10bに開口している。弁本体10は、取付孔19を有している。取付孔19は、弁本体10の上面10cに配置されている。取付孔19の内周面には、雌ねじが形成されている。取付孔19の下端には、弁室13が接続されている。
【0023】
ホルダー20は、円筒形状を有している。ホルダー20の下部は、取付孔19に配置されている。ホルダー20の外周面には、雄ねじが形成されている。ホルダー20の雄ねじは、弁本体10の取付孔19の雌ねじに螺合される。ホルダー20は、弁本体10にねじ構造で取り付けられている。ホルダー20の上部は、上面10cから突出している。
【0024】
弁体支持部材25は、円筒形状を有している。弁体支持部材25は、取付孔19の内側において、弁本体10とホルダー20との間に配置されている。弁体支持部材25の下部は、弁室13に圧入されている。弁体支持部材25の外周面には、環状平面25aが設けられている。環状平面25aは、下方に向いている。環状平面25aは、取付孔19の底面19aに当接されている。弁体支持部材25は、弁体70を上下方向に移動可能に支持する。
【0025】
キャン30は、上端が塞がれかつ下端が開口した円筒形状を有している。キャン30の下端は、円環板形状の接合部材35の外周縁に接合されている。接合部材35の内側にはホルダー20の上部が配置されている。接合部材35の内周縁は、ホルダー20に接合されている。キャン30は、ケースである。
【0026】
駆動機構40は、弁体70を上下方向に移動させる。駆動機構40は、マグネットローター41と、遊星歯車機構50と、案内部材60と、駆動軸65と、ボール68と、を有している。
【0027】
マグネットローター41は、円筒形状を有している。マグネットローター41は、キャン30の内側に配置されている。マグネットローター41の外径は、キャン30の内径より若干小さい。マグネットローター41の外周面には、複数のN極および複数のS極が設けられている。複数のN極および複数のS極は、上下方向に延在している。複数のN極および複数のS極は、周方向に等間隔でかつ交互に配置されている。本実施例において、マグネットローター41は、N極を12個、S極を12個有している。
【0028】
マグネットローター41の上端には、円板形状の連結部材42が接合されている。連結部材42は、マグネットローター41の上端を塞いでいる。連結部材42の中央をローター軸43が貫通している。マグネットローター41は、連結部材42を介してローター軸43に連結されている。
【0029】
遊星歯車機構50は、マグネットローター41の内側に配置されている。遊星歯車機構50は、歯車ケース51と、固定リング歯車52と、太陽歯車53と、複数の遊星歯車54と、キャリア55と、出力歯車56と、出力軸57と、を有している。
【0030】
歯車ケース51は、円筒形状を有している。歯車ケース51は、ホルダー20の上部に同軸に接合されている。固定リング歯車52は、内歯車である。固定リング歯車52は、歯車ケース51の上端に固定されている。太陽歯車53は、連結部材42と同軸に配置されている。太陽歯車53は、連結部材42と一体化されている。太陽歯車53をローター軸43が貫通している。太陽歯車53は、マグネットローター41および連結部材42とともに回転される。
【0031】
複数の遊星歯車54は、固定リング歯車52と太陽歯車53との間に配置されている。キャリア55は、円板形状を有している。キャリア55の中央をローター軸43が貫通している。キャリア55は、ローター軸43を中心として回転可能である。キャリア55は、複数の支持軸55aを有している。複数の支持軸55aは、複数の遊星歯車54を回転可能に支持する。出力歯車56は、有底円筒形状を有している。出力歯車56は内歯車である。出力歯車56と太陽歯車53との間に複数の遊星歯車54が配置されている。
【0032】
出力軸57は、円柱形状を有している。出力軸57の上部は、出力歯車56の底部に設けられた孔に配置されている。出力軸57は、出力歯車56に固定されている。出力軸57の下部には、上下方向に延びるスリット57aが設けられている。太陽歯車53の回転は、固定リング歯車52、複数の遊星歯車54、キャリア55および出力歯車56によって減速されて、出力軸57に伝達される。
【0033】
案内部材60は、円筒形状を有している。案内部材60は、ホルダー20の上部の内側に配置されている。案内部材60は、ホルダー20に固定されている。案内部材60の内周面の下部には、雌ねじが形成されている。案内部材60の内側には、出力軸57が配置されている。案内部材60は、出力軸57を回転可能に支持している。
【0034】
駆動軸65は、円柱部66と、平板部67と、を有している。平板部67は、円柱部66の上端に接続されている。円柱部66と平板部67とは、一体的に形成されている。円柱部66の外周面には、雄ねじが形成されている。円柱部66の雄ねじは、案内部材60の雌ねじと螺合される。平板部67は、出力軸57のスリット57aに上下方向に移動可能に配置されている。駆動軸65は、出力軸57によって回転され、ねじ送り作用によって上下方向に移動する。
【0035】
弁体70は、ステム71と、弁部72と、ばね受け部73と、ボール受け部74と、を有している。
【0036】
ステム71は、円柱形状を有している。ステム71は、弁体支持部材25の内側に配置されている。ステム71は、弁体支持部材25によって上下方向に移動可能に支持されている。
【0037】
弁部72は、ステム71の下端に配置されている。弁部72は、円環形状を有している。弁部72は、ステム71の外周面から径方向外方に突出している。弁部72は、弁口14と上下方向に向かい合っている。
【0038】
ばね受け部73は、円柱形状を有している。ばね受け部73は、ステム71の上端に接合されている。ばね受け部73は、径方向外方に突出するフランジ部73aを有している。
【0039】
ボール受け部74は、円形の平板部と、平板部の下面に接続された凸部と、を一体的に有している。凸部は、ばね受け部73の上端面に設けられた孔に嵌合している。ボール受け部74の平板部と駆動軸65との間には、ボール68が配置されている。ボール68は、駆動軸65の下端に接合されている。
【0040】
ばね受け部73のフランジ部73aと弁体支持部材25との間には、開弁ばね75が配置されている。開弁ばね75は、圧縮コイルばねである。開弁ばね75は、弁体70(フランジ部73a)を上方に押している。弁体70は、弁部72が弁口14に対して進退することにより、弁口14の開口面積を無段階(実質的に無段階を含む)に変更する。本実施例において、弁口14の最小面積は0である(すなわち、弁口14が閉じた状態)。弁口14の最小面積は0より大きくてもよい(すなわち、弁口14がわずかに開いた状態)。
【0041】
図3に示すように、ステーターユニット8は、ステーター80と、電磁波抑制膜90と、ハウジング100と、蓋部材110と、制御装置120と、を有している。
【0042】
図4図9に示すように、ステーター80は、円筒形状を有している。ステーター80は、A相ステーター81と、B相ステーター82と、樹脂部材83と、を有している。
【0043】
A相ステーター81は、A相ヨーク81aと、A相ボビン81bと、A相コイル81cと、を有している。
【0044】
A相ヨーク81aは、径方向断面が矩形状となる中空円環形状を有している。A相ヨーク81aは金属製である。A相ヨーク81aの内周には、複数のクローポール型の極歯81d、81eが設けられている。極歯81dの先端は下方に向いており、極歯81eの先端は上方に向いている。極歯81dと極歯81eとは、周方向に等角度間隔で交互に配置されている。本実施例において、A相ヨーク81aは、極歯81dを12個有し、極歯81eを12個有している。
【0045】
A相ボビン81bは、円筒部と、円筒部の上端および下端から径方向外方に突出するフランジ部と、を一体的に有している。A相ボビン81bは合成樹脂製である。A相ボビン81bは、A相ヨーク81aの内部空間に同軸に配置されている。A相コイル81cは、A相ボビン81bに巻回されている。A相コイル81cに電流が流れると、極歯81dと極歯81eとが互いに異なる極性となる。
【0046】
B相ステーター82は、B相ヨーク82aと、B相ボビン82bと、B相コイル82cと、を有している。
【0047】
B相ヨーク82aは、径方向断面が矩形状となる中空円環形状を有している。B相ヨーク82aは金属製である。B相ヨーク82aの内周には、複数のクローポール型の極歯82d、82eが設けられている。極歯82dの先端は下方に向いており、極歯82eの先端は上方に向いている。極歯82dと極歯82eとは、周方向に等角度間隔で交互に配置されている。本実施例において、B相ヨーク82aは、極歯82dを12個有し、極歯82eを12個有している。
【0048】
B相ボビン82bは、円筒部と、円筒部の上端および下端から径方向外方に突出するフランジ部と、を一体的に有している。B相ボビン82bは合成樹脂製である。B相ボビン82bは、B相ヨーク82aの内部空間に同軸に配置されている。B相コイル82cは、B相ボビン82bに巻回されている。B相コイル82cに電流が流れると、極歯82dと極歯82eとが互いに異なる極性となる。B相ステーター82は、A相ステーター81と同一(実質的に同一を含む)の構成を有している。
【0049】
A相ヨーク81aとB相ヨーク82aとは、同軸に配置されている。A相ヨーク81aの下面81fとB相ヨーク82aの上面82gとは、互いに接している。上下方向(軸線L方向)から見たときに互いに隣り合うA相ヨーク81aの極歯81dとB相ヨーク82aの極歯82dとの間の角度は、7.5度である。
【0050】
A相ヨーク81aの上面81g、A相ヨーク81aの外周面81h、B相ヨーク82aの外周面82hおよびB相ヨーク82aの下面82fは、ヨーク外面80bである。
【0051】
下面81fはA相ヨーク81aの第1端面であり、上面81gはA相ヨーク81aの第2端面である。上面82gはB相ヨーク82aの第1端面であり、下面82fはB相ヨーク82aの第2端面である。
【0052】
樹脂部材83は、A相ステーター81およびB相ステーター82と一体的に射出成形(インサート成形)される。樹脂部材83を構成する合成樹脂は、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)またはポリブチレンテレフタレート(PBT)である。
【0053】
樹脂部材83は、第1部分83aと、第2部分83bと、を有している。第1部分83aは、極歯81d、81e、82d、82eとともにステーター内周面80aを構成する。ステーター内周面80aの径は、キャン30の外径と同一(実質的に同一を含む)である。第2部分83bは、A相ヨーク81aの内側空間およびB相ヨーク82aの内側空間に充填されている。
【0054】
樹脂部材83は、端子支持部84と、環状部87と、をさらに有している。
【0055】
端子支持部84は、A相ヨーク81aの外周面81hおよびB相ヨーク82aの外周面82hにまたがって設けられたヨーク開口80cから前方(軸線Lと直交する方向)に延びている。端子支持部84は、複数のコイル端子88を支持している。コイル端子88は、A相コイル81cおよびB相コイル82cと接続されている。
【0056】
端子支持部84は、基部85と、先端部86と、を有している。基部85は、第2部分83bと接続されている。基部85は、ヨーク開口80cを通じてA相ヨーク81aおよびB相ヨーク82aの内側から外側に延びている。先端部86は、基部85の先端面85aに接続されている。先端部86の先端面86aには、複数のコイル端子88が突出している。
【0057】
環状部87は、円環形状を有している。環状部87の内径は、ステーター内周面80aの径と同一(実質的に同一を含む)である。環状部87は、B相ヨーク82aの下面82fに同軸に配置されている。環状部87は、A相ヨーク81aの上面81gに同軸に配置されていてもよい。環状部87は、樹脂部材83の第1部分83aと接続されている。ステーター80用の成形金型において、環状部87に対応するキャビティにゲートが接続されている。樹脂部材83を射出成形するとき、樹脂材料が当該キャビティ内を周方向に流れるとともに極歯81d、81e、82d、82eの間に進入して第1部分83aが成形される。樹脂部材83において、環状部87は省略されていてもよい。
【0058】
ステーター80は、キャン30の外側に配置される。ステーター80は、キャン30の内側に配置されたマグネットローター41とともにステッピングモーター46を構成する。
【0059】
電磁波抑制膜90は、電磁波を効果的に減衰させる性質を有する材料を含む塗料(電磁波抑制塗料)からなる膜である。銀、銅、ニッケルなどの金属は、電磁波を効果的に減衰させる性質を有する材料である。電磁波抑制塗料として、例えば、銀ペーストや銅ペーストと呼ばれる塗料を用いることができる。電磁波抑制膜90は、電磁波抑制塗料がステーター80の表面に塗布されることにより形成される。なお、電磁波抑制膜90は、電磁波を効果的に減衰させる性質を有する材料を含むシート(電磁波抑制シート)をステーター80の表面に貼り付けたものであってもよい。
【0060】
電磁波抑制膜90は、ヨーク外面80b(上面81g、外周面81h、外周面82h、下面82f)に配置されている。電磁波抑制膜90は、端子支持部84の基部85の周面85bにも配置されている。電磁波抑制膜90は、環状部87の下面87aおよび外周面87bにも配置されている。
【0061】
ハウジング100は、合成樹脂製である。ハウジング100を構成する合成樹脂は、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)またはポリブチレンテレフタレート(PBT)である。なお、ハウジング100を構成する合成樹脂として、電磁波を効果的に減衰させる性質を有する材料を含む合成樹脂(電磁波抑制合成樹脂)を用いてもよい。電磁波抑制合成樹脂として、例えば、PPSに銀粉、銀メッキ銅粉、ニッケル粉またはカーボンブラックを5~40重量パーセント含むものを用いる。銀粉、銀メッキ銅粉、ニッケル粉およびカーボンブラックは、電磁波を効果的に減衰させる性質を有する材料である電磁波抑制材である。ステーターユニット8において、ハウジング100が電磁波抑制合成樹脂で構成されている場合、電磁波抑制膜90を省略してもよい。
【0062】
ハウジング100は、ステーター80と制御装置120とを収容する。ハウジング100は、電磁波抑制膜90が表面に形成されたステーター80と一体的に射出成形(インサート成形)される。
【0063】
ハウジング100は、周壁部101と、上壁部102と、ケース部103と、コネクタ部104と、を一体的に有している。ハウジング100のケース部103には、蓋部材110が接合される。蓋部材110は、平板形状を有している。
【0064】
周壁部101は、円筒形状を有している。周壁部101には、ステーター80が埋め込まれている。ステーター80と周壁部101との間に電磁波抑制膜90が配置される。周壁部101の内周面101aの径は、ステーター内周面80aの径と同じである。内周面101aは、ステーター内周面80aに段差なく連なっている。上壁部102は、ドーム形状を有している。上壁部102は、周壁部101の上端に接続されている。周壁部101の内周面101a、上壁部102の内面102aおよびステーター内周面80aは、ステーターユニット8の内側空間106を形成している。内側空間106にはキャン30が配置される。
【0065】
ケース部103は、四角筒形状を有しており、周壁部101から前方に延びている。ケース部103の内側空間は、基板収容空間107である。ケース部103の先端103aには、基板収容空間107に通じる開口108が設けられている。蓋部材110は、開口108を覆うようにケース部103の先端103aに接合されている。蓋部材110は、開口108を塞いでいる。コネクタ部104は、ケース部103の上面に配置されている。コネクタ部104は、筒形状を有しており、前後方向に延びている。コネクタ部104の先端は、開口しており、前方に向いている。
【0066】
基板収容空間107は、内側空間106と隣り合っている。内側空間106と基板収容空間107との間には、ステーター80および周壁部101が配置されている。ステーター80および周壁部101は、内側空間106と基板収容空間107とを区画している。ステーター80の端子支持部84の先端部86は、周壁部101から突出しており、基板収容空間107に配置されている。先端部86の先端面86aおよび周面86bには電磁波抑制膜90が形成されておらず、先端面86aおよび周面86bは基板収容空間107に直接的に面している。ハウジング100には、複数のコネクタ端子109が埋め込まれている。コネクタ端子109の一端は、コネクタ部104の内側空間に配置されている。コネクタ端子109の他端は、基板収容空間107に配置されている。
【0067】
周壁部101には、ブラケット111が取り付けられている。ブラケット111は、弁本体10にねじ112で固定される。これにより、ステーターユニット8が弁本体アセンブリ5に固定される。
【0068】
制御装置120は、ハウジング100の基板収容空間107に配置される。制御装置120は、基板130と、マイクロコンピューター150と、を有している。
【0069】
基板130は、電子部品が実装されるプリント基板である。基板130は、基板収容空間107に配置される。基板130は、上下方向および左右方向と平行に(XZ平面と平行に)配置されている。基板130には、マイクロコンピューター150が実装されている。基板130には、ステーター80のコイル端子88が接続される。基板130には、コネクタ端子109の他端が接続される。
【0070】
マイクロコンピューター150は、例えば、中央演算装置、不揮発性メモリ、作業用メモリ、通信モジュール、モータードライバなどを1つのパッケージに集積した組み込み機器用のマイクロコンピューターである。マイクロコンピューター150は、電動弁1の制御を司る。なお、不揮発性メモリ、作業用メモリ、通信モジュールおよびモータードライバは、マイクロコンピューター150に外部接続される個別の電子部品であってもよい。
【0071】
制御装置120は、電動弁1が組み込まれるエアコンシステム(図示なし)の制御ユニットと通信可能に接続される。制御装置120は、ケーブルによって制御ユニットと接続される。ケーブルは、コネクタ部104(レセプタクル)に嵌合されるコネクタ(プラグ)を有している。制御ユニットは、外部機器である。制御装置120は、制御ユニットから送信される命令に応じてステッピングモーター46(すなわちマグネットローター41の回転)を制御する。なお、電動弁1は、制御装置120を省略して、エアコンシステムの制御ユニットによって直接的に制御されてもよい。
【0072】
電動弁1において、弁口14、ホルダー20、弁体支持部材25、キャン30、マグネットローター41、連結部材42、ローター軸43、太陽歯車53、出力軸57、案内部材60、駆動軸65、ボール68、弁体70(ステム71、弁部72、ばね受け部73、ボール受け部74)、ステーター80(A相ステーター81、B相ステーター82)は、それぞれの中心軸が軸線Lに一致する。軸線Lは、上下方向と平行である。
【0073】
次に、電動弁1の動作について説明する。
【0074】
電動弁1において、A相コイル81cおよびB相コイル82cに電流を流して、マグネットローター41を一方向に回転させる。マグネットローター41の回転は、遊星歯車機構50を介して駆動軸65に伝達される。駆動軸65と案内部材60とのねじ送り作用により、駆動軸65が下方に移動する。駆動軸65によって弁体70が下方に押され、弁口14の開口面積が小さくなる。
【0075】
電動弁1において、A相コイル81cおよびB相コイル82cに電流を流して、マグネットローター41を他方向に回転させる。マグネットローター41の回転は、遊星歯車機構50を介して駆動軸65に伝達される。駆動軸65と案内部材60とのねじ送り作用により、駆動軸65が上方に移動する。開弁ばね75によって弁体70が上方に押され、弁口14の開口面積が大きくなる。
【0076】
次に、電動弁1のステーターユニット8の製造方法について説明する。
【0077】
ステーター80用の成形金型にA相ステーター81およびB相ステーター82を設置し、A相ステーター81およびB相ステーター82と一体的に樹脂部材83を射出成形して、ステーター80を作製する。
【0078】
次に、ステーター80の表面に電磁波抑制膜90を形成する。具体的には、ヨーク外面80b、基部85の周面85b、環状部87の下面87aおよび環状部87の外周面87bに電磁波抑制塗料を塗布する。ステーター80におけるこれら以外の部分には、電磁波抑制塗料を塗布しない。すなわち、ステーター内周面80a、基部85の先端面85a、先端部86の先端面86aおよび先端部86の周面86bには、電磁波抑制塗料を塗布しない。電磁波抑制塗料が乾くと電磁波抑制膜90が形成される。
【0079】
次に、ハウジング100が電磁波抑制膜90を覆うように当該ハウジング100を射出成形する。具体的には、電磁波抑制膜90が表面に形成されたステーター80およびコネクタ端子109をハウジング100用の成形金型に設置する。そして、ステーター80(電磁波抑制膜90を含む)およびコネクタ端子109と一体的にハウジング100を射出成形する。これにより、ステーター80とハウジング100の周壁部101との間に電磁波抑制膜90が配置される。本実施例において、電磁波抑制膜90はステーター80と周壁部101との間のみに配置され、電磁波抑制膜90は内側空間106および基板収容空間107に露出しない。蓋部材110を、ハウジング100とは別工程で射出成形する。
【0080】
ハウジング100のケース部103の基板収容空間107に制御装置120を配置する。制御装置120の基板130にコイル端子88およびコネクタ端子109の他端をハンダ付けする。ケース部103の先端103aに蓋部材110を接合する。接合方法は、例えば、赤外線溶着、超音波溶着、または、接着剤による接合である。ハウジング100の周壁部101にブラケット111を取り付ける。このようにして、ステーターユニット8が完成する。
【0081】
本実施例の電動弁1は、弁本体アセンブリ5と、ステーターユニット8と、を有する。弁本体アセンブリ5が、円筒形状のキャン30と、キャン30の内側に配置されるマグネットローター41と、を有する。
【0082】
ステーターユニット8は、キャン30の外側に配置されるステーター80と、ステーター80と一体的に成形される合成樹脂製のハウジング100と、を有する。ステーターユニット8は、ステーター80とハウジング100との間に配置された電磁波抑制膜90を有する。このようにしたことから、電磁波抑制膜90がステーター80とハウジング100とによって保持され、電磁波抑制膜90の脱落を抑制できる。そのため、ステーター80から放出される電磁波を抑制できかつ電子部品の動作の不具合を抑制できる。
【0083】
また、ステーター80が、A相ステーター81と、B相ステーター82と、を有する。A相ステーター81が、中空円環形状のA相ヨーク81aと、A相ヨーク81aの内側に配置されるA相ボビン81bと、A相ボビン81bに巻回されるA相コイル81cと、を有する。B相ステーター82が、中空円環形状のB相ヨーク82aと、B相ヨーク82aの内側に配置されるB相ボビン82bと、B相ボビン82bに巻回されるB相コイルと82c、を有する。A相ステーター81とB相ステーター82とが同軸に配置される。A相ヨーク81aの下面81fとB相ヨーク82aの上面82gとが接している。A相ヨーク81aの上面81g、A相ヨーク81aの外周面81h、B相ヨーク82aの下面82fおよびB相ヨーク82aの外周面82hが、ヨーク外面80bを構成する。電磁波抑制膜90が、ヨーク外面80bとハウジング100との間に配置される。このようにしたことから、A相ヨーク81aおよびB相ヨーク82aを通過して放出される電磁波を効果的に抑制できる。
【0084】
また、ステーター80が、A相ステーター81およびB相ステーター82と一体的に成形される樹脂部材83をさらに有する。樹脂部材83が、端子支持部84を有する。端子支持部84が、A相ヨーク81aおよびB相ヨーク82aから前方に延びている。A相コイル81cおよびB相コイル82cに接続されたコイル端子88が、端子支持部84の先端部86の先端面86aから突出される。電磁波抑制膜90が、端子支持部84(基部85の周面85b)とハウジング100との間に配置される。このようにしたことから、端子支持部84を通過して放出される電磁波を効果的に抑制できる。
【0085】
また、樹脂部材83が、円環形状の環状部87をさらに有する。環状部87が、B相ヨーク82aの下面82fに配置される。電磁波抑制膜90が、環状部87(下面87a、外周面87b)とハウジング100との間に配置される。このようにしたことから、環状部87を通過して放出される電磁波を効果的に抑制できる。
【0086】
また、端子支持部84の先端部86が、ハウジング100に設けられた基板収容空間107に配置される。コイル端子88が、基板収容空間107に配置された基板130と接続される。先端部86の表面全体(先端面86a、周面86b)が、基板収容空間107に直接的に面している。このようにしたことから、基板収容空間107に配置される先端部86の表面には、電磁波抑制膜90が形成されていない。そのため、電磁波抑制膜90が、基板収容空間107内で脱落することがなく、基板130に実装された電子部品の動作の不具合をより効果的に抑制できる。先端部86は、端子支持部84における先端面86aを含む一部である。なお、先端部86の周面86bにも、電磁波抑制膜90が配置されていてもよい。
【0087】
また、ハウジング100を構成する合成樹脂が、電磁波抑制材を含んでいてもよい。このようにすることで、ステーター80から放出される電磁波をより効果的に抑制できる。
【0088】
図10に、電動弁1の変形例の構成を有する電動弁1Aを示す。電動弁1Aにおいて、電動弁1と同一(実質的に同一を含む)の構成には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0089】
電動弁1Aは、弁本体アセンブリ5と、ステーターユニット8Aと、を有している。図11に示すように、ステーターユニット8Aは、ステーター80と、電磁波抑制膜90と、ハウジング100Aと、を有している。
【0090】
ハウジング100Aは、ステーター80を収容する。ハウジング100Aは、電磁波抑制膜90が表面に形成されたステーター80と一体的に射出成形(インサート成形)される。ステーター80とハウジング100Aとの間に電磁波抑制膜90が配置される。なお、電動弁1Aのステーター80では、環状部87がA相ステーター81の上面に配置されている。
【0091】
ハウジング100Aは、周壁部101と、上壁部102と、コネクタ部104Aと、を一体的に有している。コネクタ部104Aは、筒形状を有しており、周壁部101から前方に延びている。コネクタ部104Aの内部空間には、端子支持部84の先端が配置されている。コイル端子88が端子支持部84の先端面から前方に延びている。コイル端子88は、コネクタ端子として機能する。
【0092】
電動弁1Aも、電動弁1と同一(実質的に同一を含む)の効果を奏する。
【0093】
本実施例の電動弁1は、マグネットローター41の回転を減速して駆動軸65に伝えるものであった。電動弁1は、マグネットローター41の回転を直接的に駆動軸65に伝える直動式の電動弁でもよい。
【0094】
本明細書において、「円筒」や「円柱」等の形状を示す各用語は、実質的にその用語の形状を有する部材や部材の部分にも用いられている。例えば、「円筒形状の部材」は、円筒形状の部材と実質的に円筒形状の部材とを含む。
【0095】
上記に本発明の実施例を説明したが、本発明は実施例の構成に限定されるものではない。前述の実施例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、実施例の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の趣旨に反しない限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0096】
1、1A…電動弁
5…弁本体アセンブリ、10…弁本体、10a…後面、10b…前面、10c…上面、13…弁室、14…弁口、17…第1通路、18…第2通路、19…取付孔、19a…底面、20…ホルダー、25…弁体支持部材、25a…環状平面、30…キャン、35…接合部材、40…駆動機構、41…マグネットローター、42…連結部材、43…ローター軸、46…ステッピングモーター、50…遊星歯車機構、51…歯車ケース、52…固定リング歯車、53…太陽歯車、54…遊星歯車、55…キャリア、55a…支持軸、56…出力歯車、57…出力軸、57a…スリット、60…案内部材、65…駆動軸、66…円柱部、67…平板部、68…ボール、70…弁体、71…ステム、72…弁部、73…ばね受け部、73a…フランジ部、74…ボール受け部、75…開弁ばね
8、8A…ステーターユニット、80…ステーター、80a…ステーター内周面、80b…ヨーク外面、80c…ヨーク開口、81…A相ステーター、81a…A相ヨーク、81b…A相ボビン、81c…A相コイル、81d…極歯、81e…極歯、81f…下面、81g…上面、81h…外周面、82…B相ステーター、82a…B相ヨーク、82b…B相ボビン、82c…B相コイル、82d…極歯、82e…極歯、82f…下面、82g…上面、82h…外周面、83…樹脂部材、83a…第1部分、83b…第2部分、84…端子支持部、85…基部、85a…先端面、85b…周面、86…先端部、86a…先端面、86b…周面、87…環状部、87a…下面、87b…外周面、90…電磁波抑制膜、100、100A…ハウジング、101…周壁部、101a…内周面、102…上壁部、102a…内面、103…ケース部、103a…先端、104、104A…コネクタ部、106…内側空間、107…基板収容空間、108…開口、109…コネクタ端子、110…蓋部材、111…ブラケット、112…ねじ、120…制御装置、130…基板、150…マイクロコンピューター、L…軸線

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11