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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003448
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】表面検査支援装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/47 20060101AFI20240105BHJP
   G01N 21/88 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
G01N21/47 B
G01N21/88 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102589
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】515086908
【氏名又は名称】株式会社トヨタプロダクションエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100114306
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 史郎
(74)【代理人】
【識別番号】100148655
【弁理士】
【氏名又は名称】諏訪 淳一
(72)【発明者】
【氏名】姫野 奨
【テーマコード(参考)】
2G051
2G059
【Fターム(参考)】
2G051AA90
2G051AB07
2G051CA04
2G051CB01
2G051CB05
2G051CC20
2G051EA12
2G059AA05
2G059BB08
2G059BB15
2G059EE02
2G059FF01
2G059JJ30
2G059KK04
2G059LL10
2G059MM01
(57)【要約】
【課題】部品の表面や塗装面に光を照射する光源が放射光であっても光学異方性を効率よく検査すること。
【解決手段】表面検査支援装置1は、カラーフィルタ部21を凸レンズ20の光軸線上に凸レンズ20から所定の距離Xに配設し、拡散光を照射する光源15を制御し、検査対象物100に照射した光の正反射光及び拡散光を、凸レンズ20を介してカラーフィルタ部21を配設した撮像カメラ24により受光し、検査画像D1を撮像する。そして、検査画像D1の赤成分及び青成分に基づいて連結画像D3を生成し、生成した連結画像D3を表示制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物の表面における光学異方性の検査を支援する表面検査支援装置であって、
前記検査対象物に対して光を照射する光源と、
前記検査対象物の表面で反射した正反射光及び拡散光が入射する凸レンズと、
前記凸レンズの光軸線上で該凸レンズから所定の距離だけ離隔した位置に配設され、複数の領域にそれぞれ異なる色付けがされた複数のカラーフィルタにより形成されたカラーフィルタ部と、
前記カラーフィルタ部を通過し着色された前記正反射光及び前記拡散光に基づいて形成された検査画像を撮像する撮像装置と、
前記撮像装置により撮像された前記検査画像に基づいて、前記検査対象物の表面における光学異方性に係る情報を所定の表示部に表示制御する端末装置と
を備えた表面検査支援装置。
【請求項2】
前記所定の距離は、
前記光源と前記検査対象物の距離をLとし、前記第1の凸レンズの焦点距離をfとした場合に、
X=(f2/L)+f
の関係に基づいて算出される請求項1に記載の表面検査支援装置。
【請求項3】
前記カラーフィルタ部は、
円周上の一点及び中心点を通る領域に形成され、前記拡散光を通過させる第1のカラーフィルタと、前記第1のカラーフィルタと直交する領域に形成され、前記拡散光を通過させる第2のカラーフィルタとを少なくとも含む十字構造である請求項1又は2に記載の表面検査支援装置。
【請求項4】
前記カラーフィルタ部は、
前記第1のカラーフィルタと前記第2のカラーフィルタとが直交する領域に形成され、前記第3の色の正反射光を通過させる第3のカラーフィルタをさらに含む請求項3に記載の表面検査支援装置。
【請求項5】
前記第1のカラーフィルタは、赤色の拡散光を通過させるカラーフィルタであり、
前記第2のカラーフィルタは、青色の拡散光を通過させるカラーフィルタであり、
前記第3のカラーフィルタは、緑色の正反射光を通過させるカラーフィルタであり、
前記検査画像は、赤成分、青成分、緑成分を画素ごとに持つカラー画像である請求項4に記載の表面検査支援装置。
【請求項6】
前記表示制御部は、
前記検査画像を形成する画素ごとに、前記赤成分及び青成分に基づいて算出されたベクトル方向を画素値としたベクトル画像を生成して前記所定の表示部に表示制御する請求項5に記載の表面検査支援装置。
【請求項7】
前記表示制御部は、
前記検査画像を形成する画素ごとに、前記赤成分と前記青成分を用いた逆正接関数により前記ベクトル画像を生成する請求項6に記載の表面検査支援装置。
【請求項8】
前記表示制御手段は、
前記ベクトル画像を形成する画素の画素値が示すベクトル方向に基づいて連結した連結画像を生成して前記所定の表示部に表示制御する請求項7に記載の表面検査支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品の表面や塗装面に照射する光源の光が平行光でなくとも光学異方性を効率よく検査することができる表面検査支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、射出成形部品の表面や車両の塗装面には、製造要件によって光学異方性が生じ、見る角度によって色合いが異なって見える場合がある。例えば、射出成形部品の場合には、金型内で溶融樹脂の合流部分が線状の跡となるウェルドラインという成型不良が発生する。
【0003】
このため、射出成型部品等の成型不良を検査する従来技術が知られており、例えば、テレセントリック性を有する光学系を用いて取得した画像データに基づいて物体に関する情報を取得する技術が知られている。例えば、特許文献1には、同心円状のカラーフィルタを介して画像データを取得し、撮像された光線の色を特定し、散乱角を算出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-203796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1によれば、光学異方性の検査にはテレセントリック性を有する光学系に入射する平行光が必要であり、平行光を得るために光源を検査対象物から遠方に設置する或いはレーザー光などを用いる必要がある。かかる光源を用いた場合は、前者では装置の規模が大きくなり、後者では面的に正反射光が得られないため効率良く光学異方性を検査することが難しい。
【0006】
本発明は、上記従来技術による問題点(課題)を解決するためになされたものであって、部品の表面や塗装面に照射する光源の光が平行光でなくとも光学異方性を効率よく検査することができる表面検査支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、検査対象物の表面における光学異方性の検査を支援する表面検査支援装置であって、前記検査対象物に対して光を照射する光源と、前記検査対象物の表面で反射した正反射光及び拡散光が入射する凸レンズと、前記凸レンズの光軸線上で該凸レンズから所定の距離だけ離隔した位置に配設され、複数の領域にそれぞれ異なる色付けがされた複数のカラーフィルタにより形成されたカラーフィルタ部と、前記カラーフィルタ部を通過し着色された前記正反射光及び前記拡散光に基づいて形成された検査画像を撮像する撮像装置と、前記撮像装置により撮像された前記検査画像に基づいて、前記検査対象物の表面における光学異方性に係る情報を所定の表示部に表示制御する端末装置とを備えた。
【0008】
また、本発明は、上記発明において、前記所定の距離は、前記光源と前記検査対象物の距離をLとし、前記第1の凸レンズの焦点距離をfとした場合に、X=(f2/L)+fの関係に基づいて算出される。
【0009】
また、本発明は、上記発明において、前記カラーフィルタ部は、円周上の一点及び中心点を通る領域に形成され、前記拡散光を通過させる第1のカラーフィルタと、前記第1のカラーフィルタと直交する領域に形成され、前記拡散光を通過させる第2のカラーフィルタとを少なくとも含む十字構造である。
【0010】
また、本発明は、上記発明において、前記カラーフィルタ部は、前記第1のカラーフィルタと前記第2のカラーフィルタとが直交する領域に形成され、前記第3の色の正反射光を通過させる第3のカラーフィルタをさらに含む。
【0011】
また、本発明は、上記発明において、前記第1のカラーフィルタは、赤色の拡散光を通過させるカラーフィルタであり、前記第2のカラーフィルタは、青色の拡散光を通過させるカラーフィルタであり、前記第3のカラーフィルタは、緑色の正反射光を通過させるカラーフィルタであり、前記検査画像は、赤成分、青成分、緑成分を画素ごとに持つカラー画像である。
【0012】
また、本発明は、上記発明において、前記表示制御部は、前記検査画像を形成する画素ごとに、前記赤成分及び青成分に基づいて算出されたベクトル方向を画素値としたベクトル画像を生成して前記所定の表示部に表示制御する。
【0013】
また、本発明は、上記発明において、前記表示制御部は、前記検査画像を形成する画素ごとに、前記赤成分と前記青成分を用いた逆正接関数により前記ベクトル画像を生成する。
【0014】
また、本発明は、上記発明において、前記表示制御手段は、前記ベクトル画像を形成する画素の画素値が示すベクトル方向に基づいて連結した連結画像を生成して前記所定の表示部に表示制御する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、部品の表面や塗装面に光を照射する光源が平行光でなくとも光学異方性を効率よく検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本実施形態に係る表面検査支援装置の光学系の概要を示す概要図である。
図2図2は、レンズの公式を説明するための説明図である。
図3図3は、図1に示す端末装置の構成を示す機能ブロック図である。
図4図4は、図1に示したカラーフィルタ部の構成の一例を示す図である。
図5図5は、撮像部の構成と正反射光の一例を示す図である。
図6図6は、拡散光の一例を示す図である。
図7図7は、検査対象物の表面の検査画像の撮像を説明するための説明図である。
図8図8は、検査画像及び連結画像の一例を示す図である。
図9図9は、ウェルドラインが存在する場合の検査画像及び連結画像の一例を示す図である。
図10図10は、端末装置の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る表面検査支援装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
<表面検査支援装置1の光学系>
まず、本実施形態に係る表面検査支援装置1の光学系の概要について説明する。図1は、本実施形態に係る表面検査支援装置1の光学系の概要を示す概要図である。図1に示すように、表面検査支援装置1に接続される光学系は、光源15、検査対象物100、凸レンズ20、カラーフィルタ部21及び撮像カメラ24を有する。また、表面検査支援装置1には、さらに端末装置10を有する。
【0019】
光源15は、平行光でない拡散光を照射する光源であり、光源15から照射された光は、検査対象物100で反射し、反射光REは凸レンズ20に入射される。そして、凸レンズ20を通過した反射光REは、カラーフィルタ部21で集束し撮像カメラ24に入射される。入射された反射光REは、撮像カメラ24の受光素子である撮像センサ23により受光され、検査画像D1が撮像される。
【0020】
かかる光学系は、光源15が平行光でない拡散光を検査対象物100に照射した場合でも光学異方性を検査できるようにした。具体的には、凸レンズ20の光軸線上の凸レンズ20とカラーフィルタ部21の距離Xの位置をレンズの公式から求め、凸レンズ20から所定の距離Xの位置にカラーフィルタ部21を配設する。
【0021】
次に、レンズの公式について説明する。図2に示すように、焦点距離fの凸レンズ20の焦点の外側に物体がある場合は、三角形ABOと三角形A'B’Oが相似であることより、AB:A'B'=BO:B'O=a:bとなる。また、三角形POFと三角形A'B'Fが相似であることより、PO:A'B'=OF:B'F=f:(b―f)となる。ここで、AB=POなので、a:b=f:(b―f)である。これより、1/f=(1/a)+(1/b)となる。
【0022】
かかるレンズの公式を図1の光学系に適用したならば、1/f=(1/(L+f))+(1/X)の関係式が成立する。「L」は光源15と凸レンズ20の光源側の焦点F'までの距離であり、「f」は凸レンズ20の焦点距離であり、「X」は凸レンズ20とカラーフィルタ部21までの距離である。上記の関係式を変形すると、距離Xは、X=(f2/L)+fの関係式により求められる。このため、カラーフィルタ部21が、凸レンズ20の光軸線上の凸レンズ20から距離X離れた位置に設置されたならば、光源15から照射された平行光ではない拡散光が、検査対象物100及び凸レンズ20を介してカラーフィルタ部21に集束することになる。
【0023】
<端末装置10の構成>
次に、端末装置10の構成について説明する。図3は、図1に示す端末装置10の構成を示す機能ブロック図である。図3に示すように、端末装置10は、入力部11、表示部12、記憶部13及び制御部14を有する。また、端末装置10は、光源15及び撮像カメラ24が接続されている。
【0024】
入力部11は、マウスやキーボードなどの入力デバイスである。表示部12は、各種情報を表示する液晶ディスプレイなどの表示デバイスである。記憶部13は、ハードディスク装置や不揮発性メモリなどの記憶デバイスである。
【0025】
制御部14は、端末装置10の全体を制御する制御部であり、画像取得処理部14a、画像処理部14b及び表示制御部14cを有する。実際には、これらのプログラムをCPUにロードして実行することにより、画像取得処理部14a、画像処理部14b及び表示制御部14cのそれぞれに対応するプロセスを実行させることになる。
【0026】
画像取得処理部14aは、光源15及び撮像カメラ24を操作して検査対象物100の表面Sの検査画像D1を取得する。画像取得処理部14aは、光源15から拡散光を照射させ、検査対象物100の表面Sで反射した正反射光及び拡散光を、物体側テレセントリック光学系を形成する凸レンズ20及びカラーフィルタ部21を介して撮像センサ23を用いて撮像し検査画像D1を取得する。
【0027】
図4に示すカラーフィルタ部21は、円周上の一点及び中心点を通る領域(X軸)に形成され、第1の色(赤色R)の拡散光を通過させる第1カラーフィルタ21aと、該第1カラーフィルタ21aと直交する領域(Y軸)に形成され、第2の色(青色B)の拡散光を通過させる第2カラーフィルタ21bと、該第1カラーフィルタ21aと該第2カラーフィルタ21bが直交する領域に形成され、第3の色(緑色G)の正反射光を通過させる第3カラーフィルタ21cが形成されている。
【0028】
そして、第1カラーフィルタ21a、第2カラーフィルタ21b及び第3カラーフィルタ21c以外の部分は正反射光及び拡散光を遮光する遮光フィルタ21dが形成されている。
【0029】
画像処理部14bは、画像取得処理部14aで取得した検査画像D1を形成する画素ごとに、第1カラーフィルタ21aを通過した第1の拡散光の赤成分及び第2カラーフィルタ21bを通過した第2の拡散光の青成分を用いた逆正接関数によりベクトル方向を画素値としたベクトル画像D2を生成する処理を行う。
【0030】
表示制御部14cは、ベクトル画像D2を形成する画素の画素値が示すベクトル方向に基づいてベクトルが連結した連結画像D3を生成し、生成された連結画像D3を所定の表示部12に表示制御する処理を行う。
【0031】
<撮像部16の構成>
次に、撮像部16の構成及び正反射光の一例について説明する。図5は、撮像部16の構成と正反射光RE1,RE2、RE3の一例を示す図である。
【0032】
図5に示すように、撮像部16は、凸レンズ20、カラーフィルタ部21、絞り凸レンズ22及び撮像センサ23を有する。撮像部16には、検査対象物100の表面Sからの正反射光をすべて入力できる大口径の入力領域を有して物体側テレセントリック光学系を形成する凸レンズ20が検査対象物100側に設けられる。凸レンズ20は、大口径であるため、光軸C方向の厚みが大きくなるため、フレネルレンズとすることが好ましい。
【0033】
凸レンズ20の像側の焦点には、カラーフィルタ部21が配置される。カラーフィルタ部21は、凸レンズ20の光軸Cに対して垂直に配置され、円周上の一点及び中心点(像側焦点位置)を通る領域(X軸)に形成され該第1の色(赤色R)を通過させる第1カラーフィルタ21aと、第1カラーフィルタ21aに直交し該第1の色とは異なる第2の色(青色B)を通過させる図示しない第2カラーフィルタ21bとが形成される。また、該第1カラーフィルタ21a及び該第2カラーフィルタ21bが直交する領域に該第3の色(緑色G)の正反射光を通過させる第3カラーフィルタ21cが形成され、該第1カラーフィルタ21a、該第2カラーフィルタ21b及び該第3カラーフィルタ21c以外の部分に光を遮光する遮光フィルタ21dを有する。
【0034】
絞り凸レンズ22は、カラーフィルタ部21を通過した光を撮像センサ23に結像させる。撮像センサ23は、拡散光(第1の色及び第2の色)と正反射光(第3の色)の光量を計測する。
【0035】
次に正反射光RE1,RE2、RE3の光路について説明する。図5に示すように、光源15から照射された照射光は、検査対象物100の表面Sにおいて正反射し、凸レンズ20に入射される。そして、正反射光RE1,RE2、RE3は、凸レンズ20の像側焦点に配置されているカラーフィルタ部21の第3カラーフィルタ21cを通過して絞り凸レンズ22に入射される。その後、正反射光RE1,RE2、RE3は、絞り凸レンズ22で光軸Cに平行な光となり撮像センサ23に到達する。
【0036】
次に拡散光の光路について説明する。ここでは、拡散光は、X軸方向に拡散することとする。図6は、拡散光RE4,RE5の一例を示す図である。図6に示すように、光源15から検査対象物100の表面Sの位置P1に照射された光は、表面Sにおいて、X軸方向に拡散光RE4、RE5のように拡散する。その後、拡散光RE4、RE5は、凸レンズ20を介して、カラーフィルタ部21のX軸方向に配置された第1カラーフィルタ21aを通過し、絞り凸レンズ22にて撮像センサ23の位置P2に結像される。
【0037】
<検査画像D1の撮像について>
次に、検査画像D1の撮像について説明する。図7は、検査対象物100の表面Sの検査画像D1の撮像を説明するための説明図である。図7に示すように、検査対象物100の表面Sからの正反射光RE1、RE2、RE3及び拡散光RE4、RE5は、凸レンズ20、カラーフィルタ部21、絞り凸レンズ22を介して撮像センサ23に結像される。正反射光RE1、RE2、RE3は、凸レンズ20に入射され、カラーフィルタ部21の第3カラーフィルタ21cを通過し、緑成分の光として撮像センサ23に結像される。
【0038】
また、拡散光RE4、RE5は、検査対象物100の表面Sの位置P1においてX軸方向のみに拡散した場合は、第1カラーフィルタ21aを通過し、赤成分の光として撮像センサ23の位置P2に結像する。
【0039】
<連結画像D3の生成>
次に連結画像D3の生成について説明する。図8は、検査画像D1及び連結画像D3の一例を示す図である。図8に示すように、検査画像D1は、第1カラーフィルタ21a及び第2カラーフィルタ21bを通過した拡散光の赤成分及び青成分からなる赤色及び青色とその中間色で構成されるカラー画像である。そして、端末装置10は、検査画像D1のすべての画素での赤成分及び青成分の比の逆正接関数を算出し、ベクトル画像D2を生成する。そして、生成されたベクトル画像D2の画素を連結処理することによって連結画像D3を生成する。
【0040】
次にウェルドラインが存在する場合の連結画像D3について説明する。図9は、ウェルドラインが存在する場合の検査画像D1及び連結画像D3の一例を示す図である。図9に示すように、検査画像D1は、第1カラーフィルタ21a及び第2カラーフィルタ21bを通過した拡散光からなる画像で、ウェルドラインWが存在する位置で不連続なカラー画像となる。
【0041】
そして、端末装置10は、検査画像D1のすべての画素で赤成分及び青成分の比の逆正接関数を算出し、ベクトル画像D2を生成する。そして、生成されたベクトル画像D2の画素を連結処理することによって連結画像D3を生成する。端末装置10は、生成された連結画像D3を表示部12に表示することによって、検査対象物100の表面Sの状況を表示することができる。なお、ここでは、連結画像D3を所定の表示部12に表示制御する場合を示したが、ベクトル画像D2を所定の表示部12に表示制御してもよい。
【0042】
<端末装置10の処理手順>
次に、端末装置10の処理手順について説明する。図10は、端末装置10の処理手順を示すフローチャートである。図10に示すように、端末装置10は、光源15を制御し検査対象物100に拡散光を照射する(ステップS101)。その後、端末装置10は、撮像センサ23により検査画像D1を取得する(ステップS102)。
【0043】
次に、端末装置10は、ベクトル画像D2を生成するために、検査画像D1の所定の画素を特定する(ステップS103)。そして、所定の画素を形成する緑成分が所定の閾値以上か否かを判定する(ステップS104)。その後、端末装置10は、所定の画素を形成する緑成分が所定の閾値以上で無い場合は(ステップ104;No)、ステップS106へ移行する。
【0044】
一方、所定の画素を形成する緑成分が所定の閾値以上であった場合は(ステップS104;Yes)、所定の画素を形成する赤成分及び青成分の比の逆正接関数を算出し、所定の画素の画素値とする(ステップS105)。その後、端末装置10は、未処理の画素が存在するか否かを判定する(ステップS106)。未処理の画素が存在する場合は(ステップS106;Yes)、次の画素を特定し(ステップS107)、ステップS104に移行する。
【0045】
一方、未処理の画素が存在しない場合は(ステップS106;No)、ベクトル画像D2から連結画像D3を生成する(ステップS108)。そして、端末装置10は、生成した連結画像D3を所定の表示部12に表示制御し(ステップS109)、一連の処理を終了する。
【0046】
上述してきたように、本実施形態では、表面検査支援装置1は、カラーフィルタ部21を凸レンズ20の光軸線上の凸レンズ20から所定の距離Xに配設し、拡散光を照射する光源15を制御し、検査対象物100に照射した光の正反射光及び拡散光を、凸レンズ20、カラーフィルタ部21を介して撮像カメラ24により受光し、検査画像D1を撮像する。そして、検査画像D1の赤成分及び青成分に基づいて連結画像D3を生成し、生成した連結画像D3を表示制御するようにしたので、部品の表面や塗装面に照射する光源の光が平行光でなくとも光学異方性を効率よく検査することができる。
【0047】
なお、上記実施形態では、カラーフィルタ部21の円周上の一点及び中心点(像側焦点位置)を通る領域(X軸)に形成された第1の色(赤色R)の第1カラーフィルタ21aと、第1カラーフィルタ21aに直交する第2の色(青色B)の第2カラーフィルタ21bと、該第1カラーフィルタ21a及び該第2カラーフィルタ21bが直交する領域に形成された第3の色(緑色G)の第3カラーフィルタ21cを用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、各フィルタの色は入れ替えてもよい。また、各色のフィルタをシャッタや局所的な絞り羽を配して正反射光RE1,RE2、RE3及び拡散光RE4、RE5の光量を計測するようにしてもよい。
【0048】
また、各色のカラーフィルタの代わりに透明で透過率が制御可能な液晶を利用し、不透過・透過の部位を順次高速に入れ替える構成にしてもよい。
【0049】
上記の各実施形態で図示した各構成は機能概略的なものであり、必ずしも物理的に図示の構成をされていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る表面検査支援装置は、部品の表面や塗装面に照射する光源の光が平行光でなくとも光学異方性を効率よく検査する場合に適している。
【符号の説明】
【0051】
1 表面検査支援装置
10 端末装置
11 入力部
12 表示部
13 記憶部
14 制御部
14a 画像取得処理部
14b 画像処理部
14c 表示制御部
15 光源
16 撮像部
20 凸レンズ
21 カラーフィルタ部
21a 第1カラーフィルタ
21b 第2カラーフィルタ
21c 第3カラーフィルタ
21d 遮光フィルタ
22 絞り凸レンズ
23 撮像センサ
24 撮像カメラ
100 検査対象物
C 光軸
D1 検査画像
D2 ベクトル画像
D3 連結画像
F、F' 焦点
f 焦点距離
L 距離
P1、P2 位置
RE、RE1、RE2、RE3 正反射光
RE4、RE5 拡散光
S 表面
X 距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10