(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034511
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】積層体、積層体の製造方法、及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
B32B 25/08 20060101AFI20240306BHJP
B32B 25/14 20060101ALI20240306BHJP
B60C 7/00 20060101ALI20240306BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20240306BHJP
C08K 3/30 20060101ALI20240306BHJP
C08K 3/011 20180101ALI20240306BHJP
【FI】
B32B25/08
B32B25/14
B60C7/00 H
C08L21/00
C08K3/30
C08K3/011
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138776
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】松下 純子
【テーマコード(参考)】
3D131
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
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4J002AC001
4J002DA046
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】優れた接合強度を有する積層体を提供する。
【解決手段】加硫ゴムからなるゴム層2と、樹脂層3と、を具え、ゴム層2と樹脂層3とが接合されている積層体1であって、ゴム層2は、樹脂層3と接合されている表面に表面処理層4を含み、樹脂層3のゴム層2と接合されている表面は、X線回折における(010)面に由来するピークの高さと(100)面に由来するピークの高さとの比率[(010)面に由来するピークの高さ/(100)面に由来するピークの高さ]が1.1以上であることを特徴とする、積層体1である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加硫ゴムからなるゴム層と、樹脂層と、を具え、前記ゴム層と前記樹脂層とが接合されている積層体であって、
前記ゴム層は、前記樹脂層と接合されている表面に表面処理層を含み、
前記樹脂層の前記ゴム層と接合されている表面は、X線回折における(010)面に由来するピークの高さと(100)面に由来するピークの高さとの比率[(010)面に由来するピークの高さ/(100)面に由来するピークの高さ]が1.1以上であることを特徴とする、積層体。
【請求項2】
前記ゴム層の前記表面処理層が、塩素化された層である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記樹脂層の前記ゴム層と接合されている表面は、深さ250μmまでの領域の結晶サイズの平均長さが10μm以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前記樹脂層は、ポリエステル樹脂、変性ポリオレフィン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、及びポリオレフィン系熱可塑性エラストマーからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂成分を含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
前記樹脂層は、ポリエステル樹脂又はポリエステル系熱可塑性エラストマーを含む、請求項4に記載の積層体。
【請求項6】
前記樹脂層の前記ゴム層と接合されている表面は、X線回折における(010)面に由来するピークの面積と(100)面に由来するピークの面積との比率[(010)面に由来するピークの面積/(100)面に由来するピークの面積]が1.3以上である、請求項1に記載の積層体。
【請求項7】
加硫ゴムからなるゴム層と、樹脂層と、を具え、前記ゴム層と前記樹脂層とが接合されている積層体の製造方法であって、
前記ゴム層の前記樹脂層と接合させる表面の少なくとも一部に表面処理を施す工程と、
前記樹脂層の前記ゴム層と接合させる表面の少なくとも一部の、X線回折における(010)面に由来するピークの高さと(100)面に由来するピークの高さとの比率[(010)面に由来するピークの高さ/(100)面に由来するピークの高さ]が1.1以上になるように表面処理を施す工程と、
前記ゴム層の前記表面処理が施された面と、前記樹脂層の前記表面処理が施された面とを接着剤を介さずに接合させる工程と、
を含むことを特徴とする、積層体の製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載の積層体を含むことを特徴とする、タイヤ。
【請求項9】
前記タイヤは、ホイールに外装される内筒と、該内筒をタイヤ径方向の外側から囲繞する外筒と、前記内筒と前記外筒との間にタイヤ周方向に沿って複数配置された、前記両筒同士を連結する連結部材と、前記外筒のタイヤ径方向外側に設けられたトレッド部材と、を具える非空気入りタイヤであって、
前記外筒が、前記樹脂層であり、前記トレッド部材が、前記ゴム層である、請求項8に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、積層体の製造方法、及びタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パンクの発生を回避するために、内部に加圧空気を充填する必要の無いタイヤとして、樹脂製の骨格部材と、ゴム製のトレッド部材と、を具える非空気入りタイヤが提案されている。
また、資源の循環利用の観点から、摩耗したゴム製のトレッド部材を樹脂製の骨格部材から除去し、新品のトレッド部材を樹脂製の骨格部材に貼り付ける、所謂、リトレッドの必要性が高まっている。ここで、骨格部材に貼り付ける新品のトレッド部材は、一般に加硫ゴムからなるため、既に形成された樹脂製の骨格部材と、加硫ゴムからなるトレッド部材とを確実に接合することが必要となる。
例えば、ポリエステルと加硫ゴムとの接着については、下記特許文献1に開示のように、ポリエステル製の部材(樹脂層)と加硫ゴム製の部材(ゴム層)とを、ウレタン系接着剤又はエポキシ系接着剤からなる接着剤層を介して接着する方法が知られており、また、下記特許文献2に開示のように、表面処理した加硫ゴムを金型にインサートし、該金型に溶融したポリエステルを射出して接着する方法も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/105438号
【特許文献2】特開昭56-024146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示の方法では、樹脂製の部材(樹脂層)又はゴム製の部材(ゴム層)に接着剤を塗布して、接着剤層を形成するため、工程が煩雑である。また、上記特許文献2に開示の方法は、樹脂を溶融させて金型に射出する必要があるため、既に成形された樹脂製の部材(樹脂層)と、加硫ゴムかなるゴム製の部材(ゴム層)との接着には適用できない。
【0005】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題を解決し、予め成形された樹脂層と、加硫ゴムからなるゴム層とを接着剤を介さずに接合して得ることが可能で、優れた接合強度を有する積層体、及びかかる積層体の製造方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、かかる積層体を含み、優れた耐久性を有するタイヤを提供することを更なる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の積層体、積層体の製造方法、及びタイヤの要旨構成は、以下の通りである。
【0007】
[1] 加硫ゴムからなるゴム層と、樹脂層と、を具え、前記ゴム層と前記樹脂層とが接合されている積層体であって、
前記ゴム層は、前記樹脂層と接合されている表面に表面処理層を含み、
前記樹脂層の前記ゴム層と接合されている表面は、X線回折における(010)面に由来するピークの高さと(100)面に由来するピークの高さとの比率[(010)面に由来するピークの高さ/(100)面に由来するピークの高さ]が1.1以上であることを特徴とする、積層体。
上記[1]に記載の本発明の積層体は、ゴム層と樹脂層との間の接合強度が優れる。
【0008】
[2] 前記ゴム層の前記表面処理層が、塩素化された層である、[1]に記載の積層体。
上記[2]に記載の積層体は、ゴム層と樹脂層との間の接合強度がより一層向上している。
【0009】
[3] 前記樹脂層の前記ゴム層と接合されている表面は、深さ250μmまでの領域の結晶サイズの平均長さが10μm以下である、[1]又は[2]に記載の積層体。
上記[3]に記載の積層体は、ゴム層と樹脂層との間の接合強度が更に向上している。
【0010】
[4] 前記樹脂層は、ポリエステル樹脂、変性ポリオレフィン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、及びポリオレフィン系熱可塑性エラストマーからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂成分を含む、[1]~[3]のいずれか一つに記載の積層体。
上記[4]に記載の積層体は、タイヤに好適に使用できる。
【0011】
[5] 前記樹脂層は、ポリエステル樹脂又はポリエステル系熱可塑性エラストマーを含む、[4]に記載の積層体。
上記[5]に記載の積層体は、タイヤにより好適に使用できる。
【0012】
[6] 前記樹脂層の前記ゴム層と接合されている表面は、X線回折における(010)面に由来するピークの面積と(100)面に由来するピークの面積との比率[(010)面に由来するピークの面積/(100)面に由来するピークの面積]が1.3以上である、[1]~[5]のいずれか一つに記載の積層体。
上記[6]に記載の積層体は、ゴム層と樹脂層との間の接合強度が更に向上している。
【0013】
[7] 加硫ゴムからなるゴム層と、樹脂層と、を具え、前記ゴム層と前記樹脂層とが接合されている積層体の製造方法であって、
前記ゴム層の前記樹脂層と接合させる表面の少なくとも一部に表面処理を施す工程と、
前記樹脂層の前記ゴム層と接合させる表面の少なくとも一部の、X線回折における(010)面に由来するピークの高さと(100)面に由来するピークの高さとの比率[(010)面に由来するピークの高さ/(100)面に由来するピークの高さ]が1.1以上になるように表面処理を施す工程と、
前記ゴム層の前記表面処理が施された面と、前記樹脂層の前記表面処理が施された面とを接着剤を介さずに接合させる工程と、
を含むことを特徴とする、積層体の製造方法。
上記[7]に記載の本発明の積層体の製造方法によれば、優れた接合強度を有する積層体を簡便に得ることができる。
【0014】
[8] [1]~[6]のいずれか一つに記載の積層体を含むことを特徴とする、タイヤ。
上記[8]に記載の本発明のタイヤは、優れた耐久性を有する。
【0015】
[9] 前記タイヤは、ホイールに外装される内筒と、該内筒をタイヤ径方向の外側から囲繞する外筒と、前記内筒と前記外筒との間にタイヤ周方向に沿って複数配置された、前記両筒同士を連結する連結部材と、前記外筒のタイヤ径方向外側に設けられたトレッド部材と、を具える非空気入りタイヤであって、
前記外筒が、前記樹脂層であり、前記トレッド部材が、前記ゴム層である、[8]に記載のタイヤ。
上記[9]に記載のタイヤは、外筒とトレッド部材との間の接合強度が高く、優れた耐久性を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、予め成形された樹脂層と、加硫ゴムからなるゴム層とを接着剤を介さずに接合して得ることが可能で、優れた接合強度を有する積層体、及びかかる積層体の製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、かかる積層体を含み、優れた耐久性を有するタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態の積層体を模式的に示した、厚さ方向の断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る非空気入りタイヤの構成を模式的に示す、タイヤ側面から見た説明図である。
【
図3】実施例1で得られた樹脂製骨格部材の表面のX線回折チャートである。
【
図4】比較例1で得られた樹脂製骨格部材の表面のX線回折チャートである。
【
図5】比較例2で得られた樹脂製骨格部材の表面のX線回折チャートである。
【
図6】実施例2で得られた樹脂製骨格部材の表面のX線回折チャートである。
【
図7】実施例4で得られた樹脂製骨格部材の表面のX線回折チャートである。
【
図8】比較例2で得られた樹脂製骨格部材の表面の偏光顕微鏡画像である。
【
図9】実施例2で得られた樹脂製骨格部材の表面の偏光顕微鏡画像である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の積層体、積層体の製造方法、及びタイヤを、その実施形態に基づき、詳細に例示説明する。
【0019】
<定義>
本明細書に記載されている化合物は、部分的に、又は全てが化石資源由来であってもよく、植物資源等の生物資源由来であってもよく、使用済タイヤ等の再生資源由来であってもよい。また、化石資源、生物資源、再生資源のいずれか2つ以上の混合物由来であってもよい。
【0020】
また、本明細書において、(010)面に由来するピークの高さと(100)面に由来するピークの高さとの比率は、X線回折分析から求める。なお、(100)面に由来するピークが現れない場合は、回折角(2θ)が20~25°の範囲における回折強度(CPS)の最大値を、(100)面に由来するピークの高さとする。
また、本明細書において、(010)面に由来するピークの面積と(100)面に由来するピークの面積との比率は、X線回折分析を行い、得られるX線回折チャートに対して、フィッティングプログラムとして、擬フォークト(Pseudo Voigt)関数を使用してピーク分割を行って求める。
【0021】
また、本明細書において、樹脂層の深さ250μmまでの領域の結晶サイズの平均長さは、樹脂層の表面から採取した薄片を、偏光顕微鏡で分析し、得られた画像において、20個の結晶の長辺を測定し、その平均から求める。
【0022】
<積層体>
本実施形態の積層体は、加硫ゴムからなるゴム層と、樹脂層と、を具え、前記ゴム層と前記樹脂層とが接合されている。そして、本実施形態の積層体において、前記ゴム層は、前記樹脂層と接合されている表面に表面処理層を含み、前記樹脂層の前記ゴム層と接合されている表面は、X線回折における(010)面に由来するピークの高さと(100)面に由来するピークの高さとの比率[(010)面に由来するピークの高さ/(100)面に由来するピークの高さ]が1.1以上であることを特徴とする。
【0023】
上述の通り、摩耗したトレッド部材を樹脂製の骨格部材から除去し、新品のトレッド部材を樹脂製の骨格部材に貼り付ける、所謂、リトレッドの必要性が高まっている。これに対して、本発明者は、トレッド部材を除去した後(即ち、リトレッド後)の樹脂製の骨格部材の表面状態を詳細に検討した。その結果、リトレッド後の樹脂製の骨格部材の表面は、結晶化が進んでおり、X線回折における(100)面に由来するピークが大きくなっていることを見出した。ここで、結晶を含む樹脂をX線回折で分析すると、(010)面に由来するピークと、(100)面に由来するピークが観測されることが知られている(例えば、高分子論文集Vol.66, No.12, pp.598-604(Dec.2009)参照)。
本発明者は、ゴム層と樹脂層との間の接合強度と、X線回折における各ピークの強度について、鋭意検討した結果、樹脂層の表面のX線回折における(010)面に由来するピークの高さと(100)面に由来するピークの高さとの比率[(010)面に由来するピークの高さ/(100)面に由来するピークの高さ]が1.1以上の場合に、ゴム層と樹脂層との接合強度が向上することを見出した。
加えて、前記ゴム層の、前記樹脂層と接合される表面に表面処理を施して、ゴム層の表層部分を表面処理層とすることで、ゴム層と樹脂層との間の接合強度を更に向上させることができる。
従って、本実施形態の積層体は、ゴム層と樹脂層との間の接合強度が優れる。
【0024】
次に、
図1を参照しながら、本発明の一実施形態に係る積層体を説明する。
図1は、本実施形態の積層体を模式的に示した、厚さ方向の断面図である。
図1に示す積層体1は、ゴム層2と、樹脂層3と、を具え、ゴム層2と樹脂層3とが接合されている。
【0025】
本実施形態の積層体1は、加硫ゴムからなるゴム層2を具える。ゴム層2には、少なくともゴム成分を含む、種々のゴム組成物を使用することができ、該ゴム組成物を加硫して得られる加硫ゴムから、前記ゴム層2を形成することが好ましい。該ゴム組成物は、例えば、天然ゴムや合成ゴム(ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム等)からなるゴム成分に対して、カーボンブラック、シリカ等の充填剤、老化防止剤、ステアリン酸、硫黄、過酸化物等の架橋剤、架橋促進剤等を配合して、混練り、熱入れ、押出等することにより製造することができる。
【0026】
前記老化防止剤としては、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(6PPD)、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体(TMDQ)、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン(AW)、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(DPPD)、N,N’-ビス(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン(77PD)、N,N’-ビス(1-エチル-3-メチルペンチル)-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジシクロヘキシル-p-フェニレンジアミン(CCPD)等が挙げられる。
前記老化防止剤の含有量は、特に制限はなく、前記ゴム成分100質量部に対して、0.1~15質量部の範囲が好ましく、1~10質量部がより好ましい。
【0027】
前記軟化剤としては、化石資源由来(特には、石油由来)の軟化剤や、生物資源由来(特には、植物由来)の軟化剤が挙げられる。化石資源由来の軟化剤としては、アロマ系オイル、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル等が挙げられる。また、生物資源由来の軟化剤としては、パーム油、ひまし油、綿実油、大豆油等が挙げられる。また、軟化剤としては、ナフテン系オイルとアスファルトとの混合物を使用してもよい。
前記軟化剤の含有量は、特に制限は無く、ゴム成分100質量部に対して、1~150質量部の範囲が好ましく、5~100質量部含有することが更に好ましい。
【0028】
前記ゴム層2は、前記樹脂層3と少なくとも一部が接合されている。そして、該ゴム層2は、前記樹脂層3と接合されている表面に表面処理層4を含む。ここで、ゴム層2の表面処理層4は、樹脂層3との接合強度を向上させるための表面処理が施された層である。なお、ゴム層2において、表面処理層4とそれ以外の部分との界面は、施した表面処理の痕跡を特定することで判断でき、ゴム層2の表面(即ち、ゴム層2の、樹脂層3と接合される側の表面)から表面処理の痕跡までの距離の平均値が、表面処理層4の平均厚さとなる。表面処理層4の平均厚さは、特に限定されるものではないが、10μm以下が好ましい。
【0029】
前記ゴム層2に施す表面処理としては、塩素化処理が好ましく、即ち、前記ゴム層2の前記表面処理層4は、塩素化された層であることが好ましい。この場合、前記表面処理の痕跡は、ゴム層2中の塩素となり、ゴム層2の表面から、ゴム層2中の最も深い位置の塩素までの距離の平均値が、表面処理層4の平均厚さとなる。ゴム層2の表面処理層4が塩素化された層であると、ゴム層2と樹脂層3との間の接合強度がより一層向上する。
【0030】
前記塩素化処理に用いる薬品(表面処理剤)としては、次亜塩素酸水溶液、塩素化シアヌル酸が好ましい。これらの薬品で、表面処理することで、ゴム層2と樹脂層3との間の接合強度が更に向上する。
【0031】
なお、前記ゴム層(加硫ゴム)2の表面を塩素化処理した場合には、ゴム層2の表面の少なくとも一部において、オレフィン部分の酸化(クロロ化)反応が起きるものと考えられる。ここで、塩素化処理に、次亜塩素酸水溶液を使用した場合には、前記酸化(クロロ化)反応では、以下に示す機構で、ゴム層2の表面に存在するゴム分子中でC=C二重結合を形成していた炭素原子に、塩素基及び水酸基が導入されるものと考えられる。そして、これらの基の導入により、ゴム層2の表面の極性が高まり、濡れ性が高まることで、強固な接合に寄与できるものと考えられる。
【化1】
【0032】
前記表面処理剤としての次亜塩素酸水溶液のpH値は、2以上7以下であることが好ましい。pH値が2以上であると、塩素ガスの放出が少なく、次亜塩素酸水溶液を所望の有効塩素濃度の範囲内に保持し易い。また、pH値が7以下であると、ゴム層2と樹脂層3との間の接合強度がより一層向上し易い。また、次亜塩素酸水溶液のpH値は、安定性の観点から、4以上であることがより好ましい。
【0033】
前記次亜塩素酸水溶液の有効塩素濃度は、100ppm以上13000ppm以下であることが好ましい。有効塩素濃度が100ppm以上13000ppm以下であると、ゴム層2と樹脂層3との間の接合強度がより一層向上し易い。同様の観点から、次亜塩素酸水溶液の有効塩素濃度は、200ppm以上であることがより好ましく、300ppm以上であることがより一層好ましく、また、8000ppm以下であることがより好ましく、4000ppm以下であることが更に好ましく、1000ppm以下であることがより一層好ましく、500ppm以下であることが特に好ましい。
【0034】
前記次亜塩素酸水溶液の有効塩素濃度は、例えば、次亜塩素酸ナトリウム等の次亜塩素酸塩を水に溶解させて水溶液を得る際に、その希釈割合で調整することができる。
また、次亜塩素酸水溶液のpH値は、例えば、次亜塩素酸水溶液に塩酸を投入することで低下させることができ、塩酸の投入割合で調整することができる。なお、次亜塩素酸ナトリウムを水に溶解させて得られる水溶液のpH値は、およそ9~10である。また、次亜塩素酸水溶液に塩素を多量に又は急激に投入すると、塩素ガスが発生し、それに伴って有効塩素濃度が低下するので、調整の際には注意すべきである。
【0035】
前記塩素化シアヌル酸としては、特に限定されず、例えば、ジクロロイソシアヌル酸、トリクロロイソシアヌル酸が挙げられる。塩素化シアヌル酸は、一種単独であってもよいし、二種以上の組み合わせであってもよい。これらの中でも、塩素化シアヌル酸としては、ゴム層2と樹脂層3との間の接合強度をより向上させる観点からは、トリクロロイソシアヌル酸が好ましい。
【0036】
前記塩素化シアヌル酸は、水溶液として使用することが好ましい。水溶液中の塩素化シアヌル酸の濃度は、特に限定されるものではないが、ゴム層2と樹脂層3との間の接合強度や、作業性の観点から、0.5質量%以上10質量%以下が好ましい。
【0037】
本実施形態の積層体1は、樹脂層3を具える。なお、樹脂層3は、予め成形された樹脂層であってもよい。該樹脂層3は、前記ゴム層2と少なくとも一部が接合されている。そして、樹脂層3のゴム層2と接合されている表面は、X線回折における(010)面に由来するピークの高さと(100)面に由来するピークの高さとの比率[(010)面に由来するピークの高さ/(100)面に由来するピークの高さ]が1.1以上であり、1.3以上であることが好ましい。(010)面に由来するピークの高さと(100)面に由来するピークの高さとの比率が1.1以上であれば、樹脂層3のゴム層2と接合されている表面の結晶性が十分に低く、樹脂層3とゴム層2との間の接合強度が十分に優れたものとなる。
【0038】
X線回折において、樹脂層3に含まれる樹脂の(100)面に由来するピークは、回折角(2θ)が20~25°の範囲に観測され、一方、(010)面に由来するピークは、X線回折において、より低角側(例えば、2θが15~20°の範囲)に観測されることが知られている。但し、後述するように、樹脂層3を溶剤処理した場合、X線回折において、(100)面に由来するピークが現れない場合がある。そこで、X線回折において、(100)面に由来するピークが現れない場合は、回折角(2θ)が20~25°の範囲における回折強度(CPS)の最大値を、(100)面に由来するピークの高さと定義する。
【0039】
また、前記樹脂層3の前記ゴム層2と接合されている表面は、X線回折における(010)面に由来するピークの面積と(100)面に由来するピークの面積との比率[(010)面に由来するピークの面積/(100)面に由来するピークの面積]が1.3以上であることが好ましい。(010)面に由来するピークの面積と(100)面に由来するピークの面積との比率が1.3以上であれば、樹脂層3のゴム層2と接合されている表面の結晶性が更に低く、樹脂層3とゴム層2との接合強度が更に向上する。
【0040】
なお、後述するように、樹脂層3を溶剤処理した場合、X線回折において、(100)面に由来するピークが現れない場合があるが、(100)面に由来するピークが現れない場合は、(100)面に由来するピークの面積は0となり、(010)面に由来するピークの面積と、(100)面に由来するピークの面積との比率[(010)面に由来するピークの面積/(100)面に由来するピークの面積]は∞となるが、かかる態様も、本発明の好適実施態様の一つである。
【0041】
前記樹脂層3の前記ゴム層2と接合されている表面は、深さ250μmまでの領域5の結晶サイズの平均長さが10μm以下であることが好ましい。ここで、樹脂層3の表面から深さ250μmまでの領域5の結晶サイズは、偏光顕微鏡を用いて測定され、偏光顕微鏡で観測される結晶の長辺を測定し、観測した20個の結晶の長辺の長さの平均値を結晶サイズの平均長さとするが、樹脂層3の表面から深さ250μmまでの領域5には、結晶が無いこと(即ち、偏光顕微鏡で、結晶が観測されないこと)も好ましく、即ち、結晶サイズの平均長さが0μmであることも好ましい。長辺が10μmを超える樹脂の結晶は、ゴム層2との反応性が低い。そのため、樹脂層3の表面から深さ250μmまでの領域5の結晶サイズの平均長さが10μm以下であれば、ゴム層2と樹脂層3との間の接合強度が更に向上する。
【0042】
前記樹脂層3には、樹脂成分を単独で用いることもできるし、樹脂成分を含む組成物(樹脂組成物)を用いることもできる。ここで、樹脂成分としては、熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーが好ましく、熱可塑性エラストマーがより好ましい。また、該樹脂組成物には、樹脂成分の他に、各種添加剤を添加することができる。なお、樹脂組成物中の樹脂成分の含有率は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上が更に好ましい。
ここで、熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマーは、温度上昇と共に材料が軟化、流動し、冷却すると比較的硬く強度のある状態になる高分子化合物であり、本明細書では、このうち、温度上昇と共に材料が軟化、流動し、冷却すると比較的硬く強度のある状態になり且つゴム状弾性を有する高分子化合物を熱可塑性エラストマーとし、温度上昇と共に材料が軟化、流動し、冷却すると比較的硬く強度のある状態になり且つゴム状弾性を有しない高分子化合物を熱可塑性樹脂として、区別する。
また、「熱可塑性エラストマー」とは、分子中にハードセグメント及びソフトセグメントを有する熱可塑性樹脂材料であるが、詳細には、弾性を有する高分子化合物であって、結晶性で融点の高いハードセグメントを構成するポリマーと、非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成するポリマーとを有する共重合体からなる熱可塑性樹脂材料をいう。なお、本発明における熱可塑性エラストマーは、天然ゴムや合成ゴム等の加硫ゴムを包含しない。
【0043】
前記熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)等が挙げられる。
【0044】
前記ポリエステル樹脂は、主鎖にエステル結合を有する樹脂である。該ポリエステル樹脂としては、特に限定されるものではないが、結晶性のポリエステルが好ましい。該結晶性のポリエステルとしては、芳香族ポリエステルを用いることができる。芳香族ポリエステルは、例えば、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体と脂肪族ジオールとから形成することができる。
前記芳香族ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられ、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。
【0045】
前記芳香族ポリエステルの一つとしては、テレフタル酸及び/又はジメチルテレフタレートと1,4-ブタンジオールから誘導されるポリブチレンテレフタレートが挙げられ、更に、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ナフタレン-2,7-ジカルボン酸、ジフェニル-4,4’-ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5-スルホイソフタル酸、或いは、これらのエステル形成性誘導体等のジカルボン酸成分と、分子量300以下のジオール{例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール等の脂肪族ジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメチロール等の脂環式ジオール、キシリレングリコール、ビス(p-ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(2-ヒドロキシ)フェニル]スルホン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、4,4’-ジヒドロキシ-p-ターフェニル、4,4’-ジヒドロキシ-p-クオーターフェニル等の芳香族ジオール}等と、から誘導されるポリエステル、或いは、これらのジカルボン酸成分及びジオール成分を2種以上併用した共重合ポリエステルであってもよい。また、3官能以上の多官能カルボン酸成分、多官能オキシ酸成分及び多官能ヒドロキシ成分等を5モル%以下の範囲で共重合することも可能である。
【0046】
前記ポリエステル樹脂としては、市販品を用いることもでき、例えば、ポリプラスチック社製の「ジュラネックス」シリーズ(例えば、2000、2002、等)、三菱エンジニアリングプラスチック社製のノバデュランシリーズ(例えば、5010R5、5010R3-2等)、東レ社製の「トレコン」シリーズ(例えば、1401X06、1401X31、1401X70等)、東洋紡社製の「プラナック」シリーズ(例えば、BT-1000)等が挙げられる。
【0047】
前記ポリオレフィン樹脂は、主鎖が、エチレン、プロピレン、1-ブテン等のオレフィンのポリマーである。該ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、シクロオレフィン系樹脂、これらの樹脂の共重合体等が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体が好ましく、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体がより好ましい。
【0048】
前記ポリオレフィン樹脂としては、市販品を用いることもでき、例えば、プライムポリマー社製のプライムPP(登録商標)及び日本ポリプロピレン社製のノバテックPP(登録商標)、ウィンテック(登録商標)等を用いることができる。
【0049】
前記ポリオレフィン樹脂は、変性されていることが好ましく、即ち、変性ポリオレフィン樹脂であることが好ましい。変性ポリオレフィン樹脂としては、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂、アクリル酸変性ポリオレフィン樹脂、メタクリル酸変性ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
【0050】
前記変性ポリオレフィン樹脂としては、市販品を用いることもでき、例えば、マレイン酸変性ポリプロピレン系樹脂として三洋化成社製「ユーメックス」シリーズを、カルボン酸変性ポリプロピレン系樹脂としてクラレ社製「CBポリマー」シリーズを、無水マレイン酸変性ポリプロピレン系樹脂として三井化学社製の「アドマー」シリーズ等を用いることができる。
【0051】
前記ポリスチレン樹脂は、スチレンのポリマーである。該ポリスチレン樹脂としては、市販品を用いることもでき、例えば、出光興産社製のザレック(登録商標)、東洋スチレン社製のトーヨースチロール(登録商標)、ダイセルポリマー社製のセビアン等を用いることができる。
【0052】
前記アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)は、アクリロニトリルと、ブタジエンと、スチレンとのターポリマーである。該ABS樹脂としては、市販品を用いることもでき、例えば、東レ株式会社製のトヨラック(登録商標)等を用いることができる。
【0053】
前記熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPC)、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)等が挙げられる。
【0054】
前記ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPC)は、弾性を有する高分子化合物であり、結晶性で融点の高いハードセグメントを構成するポリマーと、非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成するポリマーと、を有する共重合体からなる熱可塑性の樹脂材料であって、ハードセグメントを構成するポリマーの主鎖にエステル結合を有するものを意味する。
【0055】
前記ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPC)のハードセグメントを形成する結晶性のポリエステルとしては、芳香族ポリエステルを用いることができる。芳香族ポリエステルは、例えば、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体と脂肪族ジオールとから形成することができる。ハードセグメントを形成する芳香族ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられ、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。
前記ハードセグメントを形成する好適な芳香族ポリエステルの一つとしては、テレフタル酸及び/又はジメチルテレフタレートと1,4-ブタンジオールから誘導されるポリブチレンテレフタレートが挙げられ、更に、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ナフタレン-2,7-ジカルボン酸、ジフェニル-4,4’-ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5-スルホイソフタル酸、或いは、これらのエステル形成性誘導体等のジカルボン酸成分と、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメチロール、キシリレングリコール、ビス(p-ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(2-ヒドロキシ)フェニル]スルホン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、4,4’-ジヒドロキシ-p-ターフェニル、4,4’-ジヒドロキシ-p-クオーターフェニル等のジオール成分と、から誘導されるポリエステル、或いは、これらのジカルボン酸成分及びジオール成分を2種以上併用した共重合ポリエステルであってもよい。
【0056】
前記ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPC)のソフトセグメントを形成するポリマーとしては、例えば、脂肪族ポリエーテル及び脂肪族ポリエステルから選択されたポリマーが挙げられる。
前記脂肪族ポリエーテルとしては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体等が挙げられる。
前記脂肪族ポリエステルとしては、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート等が挙げられる。
これらの脂肪族ポリエーテル及び脂肪族ポリエステルの中でも、得られる共重合体の弾性特性の観点から、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加重合体、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート等が好ましい。
【0057】
前記ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントを形成するポリマー及びソフトセグメントを形成するポリマーを公知の方法によって共重合することで合成することができる。また、前記ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、市販品を利用することができ、例えば、東洋紡社製の「ぺルプレン」シリーズ(P30B、P40B、P40H、P-46D01、P55B、P70B、P90B、P120B、P150B、P280B、P450B、P150M、S1001、S2001、S5001、S6001、S9001等)、東レ・デュポン社製の「ハイトレル」シリーズ(例えば、3046、5557、5577、5577R-07、6347、4047、4767、4767N、4777等)等が挙げられる。
【0058】
前記ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)とは、弾性を有する高分子化合物であり、結晶性で融点の高いハードセグメントを構成するポリマーと、非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成するポリマーと、を有する共重合体からなる熱可塑性樹脂材料であって、ハードセグメントを構成するポリマーが、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンであるものを意味する。
前記ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、少なくともポリオレフィンが結晶性で融点の高いハードセグメントを構成し、前記ポリオレフィンと該ポリオレフィン以外のオレフィンが非晶性でガラス転移点の低いソフトセグメントを構成している材料が挙げられる。
【0059】
前記ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーのハードセグメントを形成するポリオレフィンとしては、例えば、ポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ-1-ブテン等が挙げられる。
前記ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーのソフトセグメントを構成するポリマーとしては、例えば、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-4-メチル-ペンテン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、1-ブテン-1-ヘキセン共重合体、1-ブテン-4-メチル-ペンテン等が挙げられる。
【0060】
前記ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーは、上記ハードセグメントを構成するポリマー及びソフトセグメントを構成するポリマーを公知の方法によって共重合することで合成することができる。また、前記ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、市販品を利用することができ、例えば、プライムポリマー社製のプライムTPO(登録商標)、三井化学社製のタフマー(登録商標)、ノティオ(登録商標)等を用いることができる。
【0061】
前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)とは、弾性を有する高分子化合物であり、ハードセグメントを構成するポリマーと、非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成するポリマーと、を有する共重合体からなる熱可塑性樹脂材料であって、ハードセグメントを構成するポリマーが、ポリスチレンやポリスチレン誘導体であるものを意味する。
前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、特に限定されるものではないが、ポリスチレンがハードセグメントを構成し、非晶性のポリマーがガラス転移温度の低いソフトセグメント(例えば、ポリエチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレン、ポリ(2,3-ジメチル-ブタジエン)等)を構成している共重合体が挙げられる。
【0062】
前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーは、上記ハードセグメントを構成するポリマー及びソフトセグメントを構成するポリマーをブロック共重合等の公知の方法によって共重合することで合成することができる。また、前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、市販品を利用することができ、例えば、旭化成社製のタフプレン(登録商標)及びタフテック(登録商標)、クラレ社製のセプトン(登録商標)等を用いることができる。
【0063】
前記樹脂層3は、ポリエステル樹脂、変性ポリオレフィン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、及びポリオレフィン系熱可塑性エラストマーからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂成分を含むことが好ましい。ポリエステル樹脂、変性ポリオレフィン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、及びポリオレフィン系熱可塑性エラストマーは、荷重を支える上で十分な強度を有する。そのため、ポリエステル樹脂、変性ポリオレフィン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、及びポリオレフィン系熱可塑性エラストマーからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂成分を含む樹脂層3を具える積層体1は、後述するタイヤに好適に使用でき、また、かかる積層体1を含むタイヤは、乗り心地と耐久性のバランスに優れる。
【0064】
前記樹脂層3は、ポリエステル樹脂又はポリエステル系熱可塑性エラストマーを含むことが更に好ましい。熱可塑性ポリエステル又はポリエステル系熱可塑性エラストマーを含む樹脂層3を具える積層体1は、後述するタイヤにより好適に使用でき、また、かかる積層体1を含むタイヤは、乗り心地と耐久性のバランスに更に優れる。
【0065】
前記樹脂層3に用いる樹脂組成物は、分子中にハードセグメント及びソフトセグメントを有する熱可塑性エラストマーを含むことが好ましい。分子中にハードセグメント及びソフトセグメントを有する熱可塑性エラストマーを含む樹脂組成物を樹脂層3に用いた積層体1は、耐久性が向上する。
ここで、前記熱可塑性エラストマーが、ポリエステル系熱可塑性エラストマーであることが好ましい。ポリエステル系熱可塑性エラストマーを含む樹脂組成物を樹脂層3に用いた積層体1は、耐久性が更に向上する。
また、前記ポリエステル系熱可塑性エラストマーのハードセグメントが、ポリブチレンテレフタレートであることが更に好ましい。ハードセグメントがポリブチレンテレフタレートであるポリエステル系熱可塑性エラストマーを含む樹脂組成物は、強度が高く、かかる樹脂組成物を樹脂層3に用いた積層体1は、耐久性が特に良好である。
【0066】
前記樹脂層3に用いる樹脂組成物は、上述した熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマー等の樹脂成分の他に、添加剤を含んでもよい。樹脂組成物に添加する添加剤としては、耐候老化防止剤、耐熱老化防止剤、耐湿熱添加剤、帯電防止剤、滑剤、粘着性付与剤、防曇剤、離型剤、可塑剤、充填剤、顔料、染料、香料、難燃剤等が挙げられ、これらの中でも、耐候老化防止剤、耐熱老化防止剤、耐湿熱添加剤が好ましく、耐候老化防止剤、耐熱老化防止剤が更に好ましい。樹脂組成物に、耐候老化防止剤、耐熱老化防止剤を添加することで、樹脂組成物の安定性が向上し、かかる樹脂組成物を樹脂層3に用いた積層体1は、長期に亘って所望の特性を維持できる。これら添加剤の合計含有量は、樹脂成分100質量部に対して、20質量部以下が好ましく、10質量部以下が更に好ましい。
【0067】
前記耐候老化防止剤は、樹脂組成物の耐候性を向上させる作用を有する添加剤であり、該耐候老化防止剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物、アミン系化合物(ヒンダードアミン系化合物)が好ましい。
前記ベンゾトリアゾール系化合物としては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、ベンゼンプロパン酸及び3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ(C7-9側鎖及び直鎖アルキル)のエステル化合物、オクチル3-[3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル]プロピオネート及び2-エチルヘキシル-3-[3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル]プロピオネートの混合物、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、メチル-3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-〔5-クロロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル〕-4-メチル-6-(tert-ブチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ペンチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2,2’-メチレンビス〔6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール〕、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノール、2-[2-ヒドロキシ-3-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミド-メチル)-5-メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[6-(ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール]等が挙げられる。
前記アミン系化合物としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケートとメチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケートの混合物、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-N,N’-ジホルミルヘキサメチレンジアミン、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)ブタン-1,2,3,4-テトラカルボキシレート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブタン-1,2,3,4-テトラカルボキシレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジオールとβ,β,β’,β’-テトラメチル-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン-3,9-ジエタノールの反応物、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジオールとβ,β,β’,β’-テトラメチル-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン-3,9-ジエタノールの反応物、ビス(1-ウンデカノキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)カーボネート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルメタクリレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルメタクリレート等が挙げられる。
樹脂組成物に、耐候老化防止剤を添加することで、樹脂組成物の耐候性が向上し、かかる樹脂組成物を樹脂層3に用いた積層体1は、長期に亘って所望の特性を維持できる。耐候老化防止剤の添加量は、樹脂組成物の樹脂成分100質量部に対して、1~5質量部の範囲が好ましい。
【0068】
前記耐熱老化防止剤は、樹脂組成物の耐熱性を向上させる作用を有する添加剤であり、該耐熱老化防止剤としては、フェノール系化合物(ヒンダードフェノール系化合物)が好ましい。該フェノール系化合物としては、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、n-オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェノール、1,6-ヘキサンジオール-ビス-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレイト、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9-ビス-〔2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-プロピオニルオキシ]-1,1-ジメチルエチル〕-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2’-ブチリデンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェノールアクリレート、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,4-ジ-tert-ブチルフェノール、2,4-ジ-tert-ペンチルフェノール、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、ビス-[3,3-ビス-(4’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチルフェニル)-ブタノイックアシッド]-グリコールエステル、N,N’-ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンアミド]等が挙げられる。
樹脂組成物に、耐熱老化防止剤を添加することで、樹脂組成物の耐熱性が向上し、かかる樹脂組成物を樹脂層3に用いた積層体1は、長期に亘って所望の特性を維持できる。耐熱老化防止剤の添加量は、樹脂組成物の樹脂成分100質量部に対して、1~5質量部の範囲が好ましい。
【0069】
前記耐湿熱添加剤は、樹脂組成物の耐湿熱性を向上させる作用を有する添加剤であり、該耐湿熱添加剤としては、カルボジイミド化合物やエポキシ化合物が好ましく、エポキシ化合物がより好ましい。
該カルボジイミド化合物として、具体的には分子内に1個以上のカルボジイミド基を有する化合物であれば如何なるものでもよく、例えばN,N’-ジイソプロピルカルボジイミド、N,N’-ジ(o-トルイル)カルボジイミド、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド等の一官能カルボジイミド化合物;p-フェニレン-ビス(2,6-キシリルカルボジイミド)、p-フェニレン-ビス(t-ブチルカルボジイミド)、p-フェニレン-ビス(メシチルカルボジイミド)、テトラメチレン-ビス(t-ブチルカルボジイミド)、シクロヘキサン-1,4-ビス(メチレン-t-ブチルカルボジイミド)等の二官能カルボジイミド化合物;イソシアネート単量体の縮合物等の多官能カルボジイミド化合物等が挙げられ、その中でも多官能カルボジイミド化合物が好ましい。ここで、多官能カルボジイミド化合物とは、2個以上のカルボジイミド基を有する化合物をさす。該多官能カルボジイミド化合物としては、例えばカルボジライトLA-1(日清紡社製)、カルボジライトHMV-8CA(日清紡社製)、カルボジライトHMV-15CA(日清紡社製)、エラストスタブH01(日清紡社製)、Stabaxol P(RheinChemie社製)等の商品名で一般的に知られている多官能カルボジイミド化合物が挙げられる。これらのカルボジイミド化合物は、1種又は2種以上が使用できる。
また、前記エポキシ化合物として、具体的には、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシ-6'-メチルシクロヘキシルカルボキシレート、2,3-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、4-(3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキシル)ブチル-3’,4’-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルエチレンオキシド、シクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-6'-メチルシロヘキシルカルボキシレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAグリシジルエーテル、フタル酸のジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸のジグリシジルエステル、ビス-エポキシジシクロペンタジエニルエーテル、ビス-エポキシエチレングリコール、ビス-エポキシシクロヘキシルアジペート、ブタジエンジエポキシド、テトラフェニルエチレンエポキシド、オクチルエポキシタレート、エポキシ化ポリブタジエン、3,4-ジメチル-1,2-エポキシシクロヘキサン、3,5-ジメチル-1,2-エポキシシクロヘキサン、3-メチル-5-tert-ブチル-1,2-エポキシシクロヘキサン、オクタデシル-2,2-ジメチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、n-ブチル-2,2-ジメチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、シクロヘキシル-2-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、n-ブチル-2-イソプロピル-3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキシルカルボキシレート、オクタデシル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、2-エチルヘキシル-3’,4’-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、4,6-ジメチル-2,3-エポキシシクロヘキシル-3’,4’-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、4,5-エポキシ無水テトラヒドロフタル酸、3-tert-ブチル-4,5-エポキシ無水テトラヒドロフタル酸、ジエチル-4,5-エポキシ-シス-1,2-シクロヘキシルジカルボキシレート、ジ-n-ブチル-3-tert-ブチル-4,5-エポキシ-シス-1,2-シクロヘキシルジカルボキシレート等が挙げられる。これらのエポキシ化合物は、1種又は2種以上が使用できる。
樹脂組成物に、耐湿熱添加剤を添加することで、樹脂組成物の耐湿熱性が向上し、かかる樹脂組成物を樹脂層3に用いた積層体1は、長期に亘って所望の特性を維持できる。耐湿熱添加剤の添加量は、樹脂組成物の樹脂成分100質量部に対して、1~15質量部の範囲が好ましい。
【0070】
前記樹脂組成物の調製方法は、特に限定されず、樹脂成分を混合した後、添加剤を添加しても、樹脂成分と添加剤を一度に混合してもよいし、また、添加剤が予め添加された樹脂成分を複数混合しても、添加剤が添加された樹脂成分と添加剤が添加されていない樹脂成分を混合してもよい。
前記樹脂組成物は、種々の成形法を利用して、所望の形状の樹脂層3に加工できる。ここで、成形法としては、射出成型が好ましい。
【0071】
<積層体の製造方法>
本実施形態の積層体の製造方法は、加硫ゴムからなるゴム層と、樹脂層と、を具え、前記ゴム層と前記樹脂層とが接合されている積層体の製造方法である。そして、本実施形態の積層体の製造方法は、前記ゴム層の前記樹脂層と接合させる表面の少なくとも一部に表面処理を施す工程と、前記樹脂層の前記ゴム層と接合させる表面の少なくとも一部の、X線回折における(010)面に由来するピークの高さと(100)面に由来するピークの高さとの比率[(010)面に由来するピークの高さ/(100)面に由来するピークの高さ]が1.1以上になるように表面処理を施す工程と、前記ゴム層の前記表面処理が施された面と、前記樹脂層の前記表面処理が施された面とを接着剤を介さずに接合させる工程と、を含むことを特徴とする。なお、ゴム層に表面処理を施す工程と、樹脂層に表面処理を施す工程と、の順序は制限されない。
【0072】
前記ゴム層の、前記樹脂層と接合させる表面の少なくとも一部に表面処理を施すことで、ゴム層の、樹脂層に対する反応性を向上させることができる。
また、前記樹脂層の前記ゴム層と接合させる表面の少なくとも一部の、X線回折における(010)面に由来するピークの高さと(100)面に由来するピークの高さとの比率が1.1以上になるように表面処理を施すことで、樹脂層の、ゴム層に対する反応性を向上させることができる。
更に、前記ゴム層の前記表面処理が施された面と、前記樹脂層の前記表面処理が施された面とを接着剤を介さずに接合させることで、製造における煩雑さを排除しつつ、ゴム層と樹脂層との間の接合強度が高い積層体を得ることができる。
従って、本実施形態の積層体の製造方法によれば、優れた接合強度を有する積層体を簡便に得ることができる。
【0073】
本実施形態の積層体の製造方法によれば、上述した本実施形態の積層体が得られ、該積層体、並びに、その構成要素であるゴム層及び樹脂層の詳細については、上述の通りである。なお、本実施形態の積層体の製造方法は、予め成形された樹脂層と、加硫ゴムからなるゴム層とから、接着剤を使用せずに、積層体を得るのに特に有用である。
【0074】
本実施形態の積層体の製造方法は、前記ゴム層の前記樹脂層と接合させる表面の少なくとも一部に表面処理を施す工程を含む。ここで、ゴム層に施す表面処理としては、本実施形態の「積層体」の項で述べた通り、塩素化処理が好ましい。また、該塩素化処理に用いる薬品としては、次亜塩素酸水溶液、塩素化シアヌル酸が好ましい。
【0075】
本実施形態の積層体の製造方法は、前記樹脂層の前記ゴム層と接合させる表面の少なくとも一部の、X線回折における(010)面に由来するピークの高さと(100)面に由来するピークの高さとの比率[(010)面に由来するピークの高さ/(100)面に由来するピークの高さ]が1.1以上になるように表面処理を施す工程を含む。ここで、樹脂層に施す表面処理としては、熱処理と冷却処理との組み合わせや、溶剤処理が好ましい。
【0076】
上述の通り、樹脂製の骨格部材と、加硫ゴムからなるトレッド部材と、を具えるタイヤから、トレッド部材を除去した後(即ち、リトレッド後)の樹脂製の骨格部材の表面は、樹脂の結晶化が進んでいる。ここで、通常、トレッド部材を除去した後、樹脂製の骨格部材の表面を平滑にするため、バフ処理(研磨処理)が行われるが、このバフ処理により樹脂のスキン層が除去され、樹脂製の骨格部材の表面の結晶化が新品と比較して進むものと考えられる。
【0077】
これに対して、バフ処理後の樹脂製の骨格部材(樹脂層)を熱処理し、その後、冷却処理することで、樹脂層の表面の結晶性が低下し、X線回折における(100)面に由来するピークを小さくして、(010)面に由来するピークの高さと(100)面に由来するピークの高さとの比率を1.1以上にすることができる。
ここで、熱処理の温度(熱処理装置の設定温度)は、樹脂層に使用する樹脂成分の融点や、熱源から樹脂層までの距離等に応じて調整することが好ましく、例えば、樹脂層の溶融温度以上であることが好ましく、一例においては、430℃以上が好ましい。
また、冷却処理は、急冷であることが好ましく、例えば、冷却した金属板に、樹脂層を押し当てて行うことが好ましい。冷却処理することで、溶融していた樹脂が結晶性の低い状態で固化し、結晶性の低い樹脂層が得られる。冷却(急冷)処理の温度は、熱処理の温度にも依存するが、例えば、15℃以下が好ましく、10℃以下が更に好ましい。
【0078】
また、バフ処理後の樹脂製の骨格部材(樹脂層)を溶剤処理することでも、樹脂層の表面の結晶性が低下し、X線回折における(100)面に由来するピークを小さくして、(010)面に由来するピークの高さと(100)面に由来するピークの高さとの比率を1.1以上にすることができる。
ここで、溶剤処理に使用する溶剤は、樹脂層に使用する樹脂成分の種類に依存するが、例えば、ハロゲン化アルコール等が好ましく、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)等が特に好ましい。HFIPは、結晶性のポリマーの溶解性に優れ、樹脂層の表面の結晶性を低下させるのに特に有用である。樹脂層を溶剤処理することで、樹脂層の表面が一旦溶解し、溶剤の気化時(乾燥時)に、結晶性の低い状態で樹脂が析出し、結晶性の低い樹脂層が得られる。
【0079】
前記樹脂層の表面処理工程は、前記樹脂層の前記ゴム層と接合させる表面の少なくとも一部の、X線回折における(010)面に由来するピークの面積と(100)面に由来するピークの面積との比率[(010)面に由来するピークの高さ/(100)面に由来するピークの高さ]が1.3以上になるように行われることが更に好ましい。前記樹脂層の前記ゴム層と接合されている表面の少なくとも一部が、X線回折における(010)面に由来するピークの面積と(100)面に由来するピークの面積との比率[(010)面に由来するピークの面積/(100)面に由来するピークの面積]が1.3以上となることで、ゴム層と樹脂層との接合強度を更に向上させることができる。
【0080】
本実施形態の積層体の製造方法は、前記ゴム層の前記表面処理が施された面と、前記樹脂層の前記表面処理が施された面とを接着剤を介さずに接合させる工程を含む。該接合工程は、ゴム層の表面処理が施された面と、樹脂層の表面処理が施された面とを接触させた状態で、加熱して行うことが好ましい。ここで、加熱温度は、120℃~150℃が好ましい。加熱温度が120℃以上であると、ゴム層と樹脂層との間の接合強度が向上し易く、また、加熱温度が150℃以下であると、樹脂層の変形を抑制し易い。
一例においては、ゴム層の表面処理が施された面と樹脂層の表面処理が施された面とを接触させた状態で、積層体を袋体(エンベロープ)内に投入し、更に、該袋体をオートクレーブに投入し、袋体内を減圧にしつつ、オートクレーブにより加圧・加熱して、ゴム層と樹脂層とを接合することが好ましい。袋体内を減圧にすることで、ゴム層と樹脂層との密着性が向上し、また、オートクレーブにより加圧・加熱することで、ゴム層の表面処理が施された面と樹脂層の表面処理が施された面との反応がより進行して、ゴム層と樹脂層との間の接合強度が向上する。
ここで、袋体内の減圧度、オートクレーブ内の圧力及び温度は、使用する各材料の種類、適用した表面処理の種類・程度等に応じて、適宜変更することができる。
【0081】
本実施形態の積層体の製造方法は、更に他の工程を含んでもよい。他の工程としては、上述のバフ処理(研磨処理)等が挙げられる。バフ処理により樹脂層の表面を平滑にすることで、ゴム層との接触面積を増加させることができる。
【0082】
<タイヤ>
本実施形態のタイヤは、上述した本実施形態の積層体を含むことを特徴とする。本実施形態のタイヤは、上述した本実施形態の積層体を含むため、優れた耐久性を有する。
【0083】
本実施形態のタイヤは、空気入りタイヤでも、非空気入りタイヤでもよい。ここで、空気入りタイヤ及び非空気入りタイヤは、骨格部材が樹脂からなり、トレッド部材がゴムからなることが好ましく、骨格部材の少なくとも外周部分が上述の樹脂層に相当し、トレッド部材が上述のゴム層に相当する。
【0084】
本発明の一実施態様においては、前記タイヤは、ホイールに外装される内筒と、該内筒をタイヤ径方向の外側から囲繞する外筒と、前記内筒と前記外筒との間にタイヤ周方向に沿って複数配置された、前記両筒同士を連結する連結部材と、前記外筒のタイヤ径方向外側に設けられたトレッド部材と、を具える非空気入りタイヤであって、前記外筒が、前記樹脂層であり、前記トレッド部材が、前記ゴム層である。該非空気入りタイヤは、骨格部材としての、内筒、外筒及び連結部材の内の外筒と、トレッド部材との間の接合強度が高く、優れた耐久性を有する。
なお、骨格部材としての、内筒及び連結部材は、外筒と同じ材質(樹脂組成物)から形成されていてもよいし、外筒と異なる材質(樹脂組成物)から形成されていてもよいが、非空気入りタイヤの生産性の向上の観点からは、外筒と同じ材質(樹脂組成物)から形成されていることが好ましく、内筒、外筒及び連結部材が一体的に形成されていることが更に好ましい。
【0085】
次に、本発明の一実施形態に係る、非空気入りタイヤの構成について説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る非空気入りタイヤの構成を模式的に示す、タイヤ側面から見た説明図である。なお、以下の説明に用いる
図2では、各部材を認識可能な大きさとするため、縮尺を適宜変更している。
【0086】
図2に示すように、本実施形態の非空気入りタイヤ11は、ホイール(図示しない)に外装される内筒12と、内筒12をタイヤ径方向外側から囲繞する外筒13と、内筒12と外筒13との間にタイヤ周方向に沿って複数配置された、内筒12と外筒13とを相対変位可能に連結する弾性変形可能な連結部材14と、を具えている。外筒13の外周面には、トレッド部材15が嵌合されている。
【0087】
ここで、内筒12、外筒13、トレッド部材15は、環状に形成されており、各中心軸は、共通軸上に位置している。本明細書においては、この共通軸を中心軸Oといい、中心軸Oに沿う方向をタイヤ幅方向という。また、タイヤ幅方向から見た側面視において、中心軸Oを中心として周回する方向をタイヤ周方向といい、この中心軸Oに直交する方向をタイヤ径方向という。
【0088】
内筒12は、ホイールを介して、車両の車軸(図示しない)に取り付けられる。ホイールや車軸の材質としては、アルミニウム、アルミニウム合金、スチール等の金属材料を使用できる。内筒12及び外筒13の中心軸は、中心軸Oと同軸に配置されている。内筒12、外筒13、及び連結部材14は、タイヤ幅方向において、それぞれのタイヤ幅方向の中央部が互いに一致した状態で配置されている。
【0089】
本実施形態では、骨格部材としての、内筒12、外筒13、及び連結部材14は、樹脂組成物により一体に形成されている。これにより、内筒12、外筒13、及び連結部材14は、射出成形により成形することが可能であり、量産に適している。
なお、内筒12、外筒13、及び連結部材14は、それぞれ別体に形成されていてもよい。
【0090】
トレッド部材15は、上述した本実施形態の積層体のゴム層からなり、例えば、天然ゴム等を含むゴム組成物が加硫された加硫ゴムで形成されている。トレッド部材15を加硫ゴムで形成することで、トレッド部材15の耐摩耗性が向上する。
【0091】
連結部材14は、全体として湾曲した長方形状の板状に形成されており、表裏面がタイヤ周方向を向き、側面がタイヤ幅方向を向いている。連結部材14は、弾性変形可能な材質により形成され、内筒12の外周面側と外筒13の内周面側とを相対的に弾性変位可能に連結している。連結部材14は、タイヤ周方向に等間隔をあけて複数配置されている。
図2においては、連結部材14の枚数は30枚であるが、本発明のタイヤにおいて、連結部材14の枚数はこれに限られるものではない。
【0092】
複数の連結部材14は、それぞれ、内筒12に接続される内側部14aと、外筒13に接続される外側部14bと、を有する。内側部14aと外側部14bとは、連結部材14のタイヤ径方向の中央部において互いに接続されている。走行時には、荷重により連結部材14が弾性変形して、地面から車両に伝わる振動が吸収される。
【0093】
そして、本実施形態に係る非空気入りタイヤ11では、外筒13が、前記樹脂層に該当し、トレッド部材15が、前記ゴム層に該当する。該非空気入りタイヤ11は、骨格部材としての外筒13と、トレッド部材15との間の接合強度が高く、優れた耐久性を有する。
【実施例0094】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0095】
(実施例1)
(1)樹脂製骨格部材の作製
ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPC、東洋紡株式会社社製、ペルプレンPタイプ)を用いて樹脂組成物を調製した。該樹脂組成物を260℃で射出成型して、10インチサイズ用の樹脂製骨格部材を作製した。
【0096】
(2)ゴム製円環トレッド部材の作製
一方、ブタジエンゴム30質量部、天然ゴム70質量部に対して、カーボンブラックを50質量部、加硫薬品、加硫促進剤、軟化剤等の添加剤を適宜な量配合してゴム組成物を作製し、所定の形状に成形した後、160℃で15分間加硫して、10インチサイズ用のゴム製円環トレッド部材を作製した。該トレッド部材の内周面に、chemlok 7701(ロード・ジャパン・インク社製)を塗布して、塩素化処理を施した。
【0097】
(3)非空気入りタイヤの作製
前記トレッド部材及び前記樹脂製骨格部材を、トレッド部材の内周面(塩素化処理が施された面)と、樹脂製骨格部材の外周面(外筒の表面)とを接触させた状態で、エンベロープ内に投入し、更に、該エンベロープをオートクレーブ(羽生田鉄工所製)に投入し、温度130℃、圧力0.7MPaの条件下、エンベロープ内を-0.01MPa(大気圧対比)に減圧した状態を30分間保持して、トレッド部材と樹脂製骨格部材とを接合させて、10インチサイズ用の非空気入りタイヤを作製した。
作製した非空気入りタイヤは、タイヤ径方向の直径D(トレッド部材15の外径)が23.4cmであり、外筒12の外径が23.0cm、内筒13の内径が14.9cm、タイヤ幅方向の幅(外筒12、内筒13、連結部材14の幅)が5.6cmのタイヤであり、その構造は、
図2に示した模式図に準ずるものである。
【0098】
(比較例1)
実施例1と同様にして、樹脂製骨格部材を作製した後、樹脂製骨格部材の外周面(外筒の表面)にバフ処理を行った。
得られたバフ処理済の樹脂製骨格部材を使用する以外は、実施例1と同様にして、10インチサイズ用の非空気入りタイヤを作製した。
【0099】
(比較例2)
実施例1と同様にして、樹脂製骨格部材を作製した後、樹脂製骨格部材の外周面(外筒の表面)にバフ処理を行った。次に、該バフ処理済の樹脂製骨格部材にライスター(株式会社マキタ製)を用いて、設定温度450℃で、樹脂製骨格部材の外周面(外筒の表面)を加熱した後、放置して空冷した。
得られたバフ処理/加熱処理/空冷処理後の樹脂製骨格部材を使用する以外は、実施例1と同様にして、10インチサイズ用の非空気入りタイヤを作製した。
【0100】
(実施例2)
実施例1と同様にして、樹脂製骨格部材を作製した後、樹脂製骨格部材の外周面(外筒の表面)にバフ処理を行った。次に、該バフ処理済の樹脂製骨格部材にライスター(株式会社マキタ製)を用いて、設定温度450℃で、樹脂製骨格部材の外周面(外筒の表面)を加熱した後、10℃に冷却した金属板を押し当てて急冷した。
得られたバフ処理/加熱処理/急冷処理後の樹脂製骨格部材を使用する以外は、実施例1と同様にして、10インチサイズ用の非空気入りタイヤを作製した。
【0101】
(実施例3)
実施例1と同様にして、樹脂製骨格部材を作製した後、樹脂製骨格部材の外周面(外筒の表面)にバフ処理を行った。次に、該バフ処理済の樹脂製骨格部材にライスター(株式会社マキタ製)を用いて、設定温度450℃で、樹脂製骨格部材の外周面(外筒の表面)を加熱した後、0℃に冷却した金属板を押し当てて急冷した。
得られたバフ処理/加熱処理/急冷処理後の樹脂製骨格部材を使用する以外は、実施例1と同様にして、10インチサイズ用の非空気入りタイヤを作製した。
【0102】
(比較例3)
実施例1と同様にして、樹脂製骨格部材を作製した後、樹脂製骨格部材の外周面(外筒の表面)にバフ処理を行った。次に、該バフ処理済の樹脂製骨格部材にライスター(株式会社マキタ製)を用いて、設定温度420℃で、樹脂製骨格部材の外周面(外筒の表面)を加熱した後、10℃に冷却した金属板を押し当てて急冷した。
得られたバフ処理/加熱処理/急冷処理後の樹脂製骨格部材を使用する以外は、実施例1と同様にして、10インチサイズ用の非空気入りタイヤを作製した。
【0103】
(実施例4)
実施例1と同様にして、樹脂製骨格部材を作製した後、樹脂製骨格部材の外周面(外筒の表面)にバフ処理を行った。次に、該バフ処理済の樹脂製骨格部材の外周面(外筒の表面)をヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)で溶剤処理した。
得られたバフ処理/溶剤処理後の樹脂製骨格部材を使用する以外は、実施例1と同様にして、10インチサイズ用の非空気入りタイヤを作製した。
【0104】
<樹脂製骨格部材に対するX線回折分析>
作製した各樹脂製骨格部材の表面をX線回折装置(XRD、リガク社製、SmartLab)で分析し、(010)面に由来するピークの高さと、(100)面に由来するピークの高さを測定し、それらの比を求めた。また、X線回折で測定されたピークの分割のために、フィッティングプログラムとして、Pseudo Voigt関数を使用し、(010)面に由来するピークの面積と、(100)面に由来するピークの面積を算出し、それらの比を求めた。これらの結果を表1に示す。
また、実施例1で得られた樹脂製骨格部材の表面のX線回折チャートを
図3に示し、比較例1で得られた樹脂製骨格部材の表面のX線回折チャートを
図4に示し、比較例2で得られた樹脂製骨格部材の表面のX線回折チャートを
図5に示し、実施例2で得られた樹脂製骨格部材の表面のX線回折チャートを
図6に示し、実施例4で得られた樹脂製骨格部材の表面のX線回折チャートを
図7に示す。
【0105】
<樹脂製骨格部材に対する結晶サイズの測定>
ミクロトームを用いて、作製した各樹脂製骨格部材から10~12μmの薄片を作製し、偏光顕微鏡(KEYENCE社製、VHX5000)で分析した。得られた画像において、樹脂製骨格部材の表面から深さ5μm~250μmの領域内の20個の結晶の長辺を測定し、その平均から、深さ250μmまでの領域の結晶サイズの平均長さを求めた。なお、結晶を確認できない場合は、「ND」と表記する。結果を表1に示す。
また、比較例2で得られた樹脂製骨格部材の表面の偏光顕微鏡画像を
図8に示し、実施例2で得られた樹脂製骨格部材の表面の偏光顕微鏡画像を
図9に示す。
図8においては、結晶部分を曲線で囲んでおり、
図9においては、結晶は観察されなかった。
【0106】
<剥離試験(接合強度試験)>
上記のようにして作製した非空気入りタイヤに対して、樹脂製骨格部材部分からトレッド部材部分を剥離させて、その剥離形態を以下の基準で分類した。
ゴムの凝集破壊: 樹脂製骨格部材とトレッド部材との界面で剥離せず、トレッド部材内において、凝集破壊が観測された場合。樹脂製骨格部材とトレッド部材との間の接合強度が高いことを示す。
界面破壊: 樹脂製骨格部材とトレッド部材との界面で剥離が観測された場合。樹脂製骨格部材とトレッド部材との間の接合強度が低いことを示す。
【0107】
<クリートドラム試験(耐久性試験)>
実施例2で得られた非空気入りタイヤについて、ドラム耐久試験機に幅10mm、高さ5mmの突起を取り付け、室温環境下、一定荷重を掛け、15km/hで走行させた際の故障に至るまでの走行距離を測定した。結果については、以下の基準で分類した。
走行距離が10,000km以上の場合: 優良
走行距離が10,000km未満の場合: 不良
【0108】
【0109】
表1から、本発明に従う実施例の非空気入りタイヤは、樹脂製骨格部材(樹脂層)とトレッド部材(ゴム層)との間の接合強度が高く、耐久性が高いことが分かる。
一方、樹脂製骨格部材の表面のX線回折における(010)面に由来するピークの高さと(100)面に由来するピークの高さとの比率が1.1未満である比較例の非空気入りタイヤは、樹脂製骨格部材(樹脂層)とトレッド部材(ゴム層)との間の接合強度が低いことが分かる。
1:積層体、 2:ゴム層、 3:樹脂層、 4:表面処理層、 5:樹脂層の表面から深さ250μmまでの領域、 11:非空気入りタイヤ、 12:内筒、 13:外筒、 14:連結部材、 14a:内側部、 14b:外側部、 15:トレッド部材、 O:中心軸、 D:タイヤ径方向の直径