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特開2024-34515椅子及びそのクッション材、身体支持ユニット
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  • 特開-椅子及びそのクッション材、身体支持ユニット 図1
  • 特開-椅子及びそのクッション材、身体支持ユニット 図2
  • 特開-椅子及びそのクッション材、身体支持ユニット 図3
  • 特開-椅子及びそのクッション材、身体支持ユニット 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034515
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】椅子及びそのクッション材、身体支持ユニット
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/12 20060101AFI20240306BHJP
   A47C 7/02 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
A47C27/12
A47C7/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138781
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】十文字 みなみ
(72)【発明者】
【氏名】山本 秀人
【テーマコード(参考)】
3B096
【Fターム(参考)】
3B096AA01
3B096AB05
3B096AD04
3B096BA01
(57)【要約】
【課題】曲がった繊維を絡まらせてなるクッション材を椅子用に適用するにおいて、組み立ての手間軽減と寸法精度の向上とを図る。
【解決手段】座クッション材10は、等厚の平板プレートを材料にして製造されている。座クッション材10は座インナーシェル9に上から重なっており、座インナーシェル9には、座アウターシェル11との関係で、内向き膨らみ部19が形成されている。座クッション材10には、座インナーシェル9の内向き膨らみ部19と嵌合するサイド凹所21と、座インナーシェル9の後端縁9aが入り込むリア凹所22とが予め加圧によって形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲した合成樹脂繊維の多数本を絡ませて成る多孔質材料によって作られた椅子用クッション材であって、
等厚の素材プレートを材料としており、少なくとも人の身体が当たる表面は湾曲面に形成されて、裏面又は外周面若しくは両方に、他の部材が入り込む逃がし部を予め形成している、
椅子用クッション材。
【請求項2】
裏側からシェル状のサポート材で支持されるようになっており、少なくとも裏面に、前記逃がし部として、前記サポート材に設けた突部と嵌合する凹所が形成されている、
請求項1に記載した椅子用クッション材。
【請求項3】
座に使用するものであり、
上面は全体として上向きに凹むように正面視で緩く湾曲して、
前部は前端に向けて低くなるように湾曲し、
左右側部に、前記逃がし部として、座板の左右側部に設けた上向きの土手状側枠部が入り込む前後長手のサイド凹所が下方と側方とに開放されるように形成されて、
後端部に、前記逃がし部として、前記座板の後端に設けてリア土手部が入り込むリア凹所が下方と後方とに開口するように形成されている、
請求項1又は2に記載した椅子用クッション材。
【請求項4】
等厚の素材プレートを材料にして加圧加工によって前記湾曲面と凹所とが形成されており、前記凹所の箇所では密度が高くなっている、
請求項1又は2に記載した椅子用クッション材。
【請求項5】
請求項1又は2に記載したクッション材と、前記クッション材が張られた荷重受け板と、前記クッション材を覆う張地と、を有しており、
座と背もたれと肘当てとヘッドレストとのうちのいずれかである、
椅子の身体支持ユニット。
【請求項6】
前記クッション材の少なくとも表面側に、前記張地で覆われた緩衝シートを配置している、
請求項5に記載した椅子の身体支持ユニット。
【請求項7】
請求項5に記載した身体支持ユニットを備えている椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、椅子及びそのクッション材、身体支持ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
オフィス用回転椅子などの椅子において、座や背もたれにクッション材を配置することは広く行われている。クッション材としては発泡ウレタンフォームが広く使用されているが、ウレタンフォームは、通気性が悪いために蒸れやすい問題や、発泡品としての性質上弾性に限度があって凹み過ぎやすい問題、或いは、使用しているうちに反発力が低下するへたりの現象が現れやすいといった問題があった。
【0003】
そこで、湾曲した合成樹脂繊維の多数本を絡ませて成る多孔質材料を椅子のクッション材として使用することが検討されており、その例が特許文献1~4に開示されている。特許文献1では、多孔質材料は等厚に形成されており、張地(表皮材)で覆うことにより、外周部に丸みを持たせている。他方、特許文献2では、材料の繊維群を型にして加熱しつつ加圧することにより、所望の形状に成型している。
【0004】
また、特許文献3では、低反発のクッション層と高反発のクッション層とを、高反発のクッション層が表面側になるようにして積層するが開示されている。特許文献1において、積層されたクッション材はカバーで覆われている。
【0005】
更に、特許文献4には、無数の弾性糸を絡ませてなる支持体(クッション材)を第1収容体で包み込み、第1収容体に多数の通気穴を空けているマットレスが開示されている。特許文献4において、第1収容体はそれ自体としては通気性が乏しい外装材と思われ、多数の通気穴を空けておくことにより、支持体の伸縮を許容していると解される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3666564号公報
【特許文献2】特開平7-137060号公報
【特許文献3】特開2020-199042号公報
【特許文献4】実用新案登録第3213907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
さて、無数の繊維を絡ませたクッション材は、繊維の弾性変形を利用してクッション性を持たせるものであるため、発泡樹脂品に比べて高い反発力を得ることが可能であり、繊維の材質や線径を選択することにより、反発力が異なるクッション材を得ることも容易に行える。
【0008】
そして、特許文献1は、平シートをそのまま使用するものであるためコスト面では有利であるが、椅子を構成する部材がクッション材に食い込む状態になっていると、クッション材をその部材に強く押しつけて、部分的に圧縮変形させた状態で椅子を組み立てなければならないため、椅子の組み立て作業に手間が掛かったり、寸法精度にバラツキが生じやすくなったりすることが懸念される。
【0009】
他方、特許文献2は所定の形状に予め成型されているため、高い寸法精度を確保できて椅子の組み立ても迅速に行えるが、専用の金型が必要になるためコストが嵩むという問題がある。
【0010】
他方、請求項3のように、クッション材を反発力が異なる複数層の積層品に構成すると、反発力が高い層と低い層との特質を有効利用して品質を向上できるが、多数の繊維を絡ませたクッション材は繊維の端が表面に露出していることがあるため、特許文献3のように高反発層を外側に配置すると、身体への当たりの柔らかさを確保し難いおそれがある。
【0011】
すなわち、織地や編地のような張地(表皮材)でクッション材を外側から覆っても、繊維の端が張地を貫通して露出したり、或いは、貫通しなくてもゴツゴツとした感触が張地を介して使用者の身体に伝わったりして、使用者に違和感を与えるおそれがある。
【0012】
特許文献4において、第1収容体の素材は明記されていないが、クッション材を構成する線材が第1収容体の表面側に露出することはないと推測される。従って、身体への当たりの柔らかさの点では特許文献3よりも優れていると思われるが、第1収容体に多数の通気穴を空けておくのは手間が掛かるため、コスト面において不利であると解される。
【0013】
本願発明はこのような現状を背景になされたものであり、無数の繊維を絡めて形成されたクッション材を椅子に適用するにおいて、改良された技術を開示せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願発明は様々な構成を含んでおり、その例を各請求項で特定している。このうち請求項1の発明は、
「湾曲した合成樹脂繊維の多数本を絡ませて成る多孔質材料によって作られた椅子用クッション材であって、
等厚の素材プレートを材料としており、少なくとも人の身体が当たる表面は湾曲面に形成されて、裏面又は外周面若しくは両方に、他の部材が入り込む逃がし部を予め形成している」
という構成になっている。
【0015】
請求項2の発明は、請求項1において、
「裏側からシェル状のサポート材で支持されるようになっており、少なくとも裏面に、前記逃がし部として、前記サポート材に設けた突部と嵌合する凹所が形成されている」
という構成になっている。
【0016】
請求項3の発明は請求項1又は2の展開例であり、
「座に使用するものであり、
上面は全体として上向きに凹むように正面視で緩く湾曲して、
前部は前端に向けて低くなるように湾曲し、
左右側部に、前記逃がし部として、座板の左右側部に設けた上向きの土手状側枠部が入り込む前後長手のサイド凹所が下方と側方とに開放されるように形成されて、
後端部に、前記逃がし部として、前記座板の後端に設けてリア土手部が入り込むリア凹所が下方と後方とに開口するように形成されている」
という構成になっている。
【0017】
請求項4の発明も請求項1又は2の展開例であり、
「等厚の素材プレートを材料にして加圧加工によって前記湾曲面と凹所とが形成されており、前記凹所の箇所では密度が高くなっている」
という構成になっている。
【0018】
請求項5の発明は身体支持ユニットを対象にしている。すなわち、
「請求項1又は2に記載したクッション材と、前記クッション材が張られた荷重受け板と、前記クッション材を覆う張地と、を有しており、
座と背もたれと当てとヘッドレストとのうちのいずれかである」
という構成になっている。
【0019】
請求項6の発明は請求項5の展開例であり、
「前記クッション材の少なくとも表面側に、前記張地で覆われた緩衝シートを配置している」
という構成になっている。
【0020】
請求項7の発明は椅子を対象にしており、この椅子は、請求項5に記載した身体支持ユニットを備えている。
【発明の効果】
【0021】
本願発明のクッション材は、凹所等の逃がし部は予め形成されているので、椅子を組み立てるに際して人が押し込んで圧縮させる必要はない。組み立てが容易であると共に、寸法精度が高くなって品質も安定する。
【0022】
繊維を絡ませたクッション材は、繊維の種類や外径、繊維などを調整することによって反発力の強さを容易に調整できるが、本願発明では、高反発のクッション材であって、組み立てが容易でかつ高い寸法精度できる。従って、立体構造の繊維製クッション材を、椅子用クッション材に展開することを容易に実現できると云える。
【0023】
また、本願発明では、繊維材料を投入して加工する金型は不要であり、市販されている素材プレートを材料にして製造できるので、コストを抑制できる。少量品も対応が容易である。
【0024】
椅子の座や背もたれは、クッション材が裏側からシェル状のサポート材で支持された構造になっていることが多いが、請求項2の発明では、少なくとも裏面に逃がし部がとしての凹所が形成されている。従って、座のクッション材や背もたれのクッション材として好適である。もとより、本願発明は肘当てやヘッドレストのクッション材にも適用できる。
【0025】
請求項3では座用のクッション材に適用しているが、これにより、通気性やクッション性に優れたクッション材を有する座を、組み立て容易で寸法精度も高い状態で提供できる。
【0026】
材料の線材を金型に投入して成型する場合は、薄い部分の強度が低下してしまうが、請求項3のように湾曲や凹所が加圧加工によって形成されていると、加圧された部分はが密度が高くなっているため、強度低下はなくて張地の取り付けなどを支障なく行える利点がある。
【0027】
請求項5では座等の身体支持ユニットを対象にしているが、請求項1のとおり、身体支持ユニットは組み立てが容易であると共に、寸法精度も優れている。椅子に組み付けるに当たっても、作業は容易で椅子の高精度で品質を向上できる。
【0028】
樹脂繊維製のクッション材は、通気性や反発力の点でウレタンフォームを凌駕するものの、繊維の端が外に露出して身体への当たりのソフトさに問題があることがあるが、本願請求項6の発明を採用すると、クッション材の少なくとも表面側に緩衝シートが配置されているため、ゴツゴツとした感触を無くして柔らかい当たり感を提供できる。
【0029】
すなわち、高い通気性や反発力、耐久性を確保しつつソフトな感触を得ることができるのであり、これにより、座や背もたれの品質を格段に向上できる。身体への当たりのソフトさは緩衝層が担っているため、張地は美粧性に基づいて選択したらよい。従って、張地の選択の幅も拡大できる。
【0030】
緩衝シートを袋に形成すると、クッション材への取り付けの手間を軽減できる。また、クッション材を構成する線材が折れて落下した場合、落下片は緩衝シートで受けられるため、美感の悪化は生じない。
【0031】
さて、特許文献1,2では、クッション材は張地で直接覆われていると云えるが、この場合は、既述のように繊維が張地を突き抜けたり張地に裏側から突っ張ったりして、ソフトさを得ることが難しいことがある。特許文献3も同様である。特許文献4では、ゴツゴツ感は生じないと思われるが、収容体の加工に手間が掛かるという問題がある。
【0032】
これに対して請求項6の発明は、クッション材を構成する線材が太かったり強靭であったりしても、ゴツゴツした感触が外に現れることはないため、高い反発力や通気性を確保しつつ、ソフトな当たり感を得ることができる効果がある。そして、請求項6の効果は緩衝層に起因して奏せられるものであるため、請求項6の発明は請求項1の逃がし部とは関係なく独立した発明たり得る。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】座部を分離した状態での椅子の斜視図である。
図2】(A)は座の上方斜視図、(B)は座の下方斜視図である。
図3】(A)は座の分離斜視図、(B)は座の分離正面図、(C)は座の分離側面図である。
図4図2(A)の IV-IV視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下では方向を特定するために前後・左右の文言を使用するが、この方向は、椅子に普通に腰掛けた人から見た方向として定義している。正面図は着座者と対向した方向から見た図である。
【0035】
(1).全体の概要
まず、椅子の概要を説明する。本実施形態は、オフィス用のリクライニング式回転椅子に適用している。図1に示すように、椅子は、基本要素として脚装置1と座2と背もたれ3とを備えている。図では脚装置1として脚支柱4しか表示していないが、脚支柱4が嵌着する基部を有しており、基部は、5本の脚羽根を有して各脚羽根の先端にはキャスタを設けている。
【0036】
脚支柱4の上端にはベース5が固定されており、ベース5に左右の傾動フレーム6が後傾動可能に連結されて、傾動フレーム6に背もたれ3が一体に連結されている。背もたれ3は前後に開口した背フレーム7にエラストマ製の背板8を取り付けた構造であり、背フレーム7の下半部の左右メンバーは傾動フレーム6と一体に連続している。
【0037】
座2は、座インナーシェル(座板)9とその上面に重なった座クッション材10とを備えており、座インナーシェル9は座アウターシェル11にビス等で固定されている。座クッション材10は、織地や編地からなる張地(表紙材)12で覆われている。座インナーシェル9は荷重受け板の一例である。
【0038】
座アウターシェル11は、その下方に配置された中間部材13に前後動自在に装着されている。中間部材13は土手状の左右側枠部13aを有しており、左右の側枠部13aは、上向きのフロントリンク14及びリアリンク15に相対回動可能に連結されている。
【0039】
フロントリンク14は、ベース5の前端部に回動可能に連結されたフロント部材16に設けており、リアリンク15は、傾動フレーム6から横向きに突設した張り出し部に設けている。中間部材13の左側部には、座2の奥行き(前後位置)を調節するためのハンドル17が配置されている。
【0040】
中間部材13の左右側枠部13aは、前後に長い土手状の形態になっている。そこで、座アウターシェル11の左右には、中間部材13の左右側枠部13aに上から嵌まり込む内向き膨らみ部18が形成されている。そして、座インナーシェル9の左右側部は、座アウターシェル11の内向き膨らみ部18に嵌合する前後長手の内向き膨らみ部19になっている。
【0041】
(2).座の構造
座クッション材10は座インナーシェル9の上面に嵌合している。そこで、図3(A)に示すように、座クッション材10の左右側部に、座インナーシェル9の内向き膨らみ部(突部)18と嵌まり合う前後長手のサイド凹所21が形成されて、座クッション材10の後端部に、座インナーシェル9の後端縁9aと嵌まり合う左右長手のリア凹所22が形成されている。これら凹所(切欠き部)21,22は、請求項に記載した逃がし部の一例である。
【0042】
また、座クッション材10の基本形態として、図3(B)に示すように、正面視では上面が全体として上向きに緩く凹んでおり、図3(C)に示すように、側面視では、前部が前下がりに湾曲している。従って、使用者の身体のプロフィールに倣った形態になっている。
【0043】
座クッション材10は、曲がった樹脂繊維(例えばポリエステル繊維)を材料として、これを絡ませて互いに結合して製造されており、材料には等厚の平板プレートが使用されている。すなわち、メーカーから平板として出荷されたものを切断・加工して座クッション材10と成している。
【0044】
そして、上面は上記のとおりのプロフィールに形成されて、左右側部と後端部とに凹所21,22が形成されているが、これらの加工は加熱下での加圧によって行われているため、凹所21,22の箇所は、圧縮によって密度は高くなっている。また、座クッション材10の前部は先端に向けて厚さが小さくなっているが、この場合も、密度は前端に向けて高くなっている。
【0045】
また、図4に示すように、実施形態の座クッション材10は、上面部10aとその下方の基部10bとの積層構造になっている。上面部10aは基部10bよりも細い繊維が使用されて密度は高くなっている。反発力は、基部10bが高くて上面部10aは低くなっている。
【0046】
図4に示すように、本実施形態では、座クッション材10は、緩衝シート23で全体が覆われている。図3(C)に一点鎖線で示すように、緩衝シート23は袋体に作られており、その内部に座クッション材10を収納してから開口部を縫着等で封止している。緩衝シート23は可撓性があるので、凹所21,22にぴったり重なっている。
【0047】
緩衝シート23は、張地12の表面に座クッション材10の樹脂繊維が貫通して露出することを防止するために設けられている。また、座インナーシェル9及び座アウターシェル11に設けられた開口を通じて千切れた樹脂繊維の欠片が外部に落ちてしまうことを防ぐこともできる。本実施形態では、緩衝シート23は、座クッション10の通気性を阻害しない不織布製のものを採用しているが、他にも様々な素材を使用できる。
【0048】
例えば、編地又は織地の単層品又は積層品などを使用できる。編地や織地では、樹脂繊維が貫通しやすいものの、張地12と二重で被せることで、座クッション材10の樹脂繊維が貫通して露出することは十分に防止することができる。緩衝シート23には、座クッション材10の表面の凹凸(樹脂繊維からなるクッション材特有のゴツゴツ感)を感じにくくさせる効果もあり、ある程度の厚さを持たせることで、さらにその効果を高めることが可能であり、ダブルラッセル編地やパイル編地なども好適である。
【0049】
緩衝シート23は、袋状に形成することなく座クッション材10の上面のみに設けることも可能であるし、上面と下面に別々の緩衝シートを設けることも可能である。緩衝シート23は、座クッション材10の通気性を阻害しにくいものを採用することが好ましい。
【0050】
緩衝シート23を座クッション材10の上面のみ又は上下両面に別々に設ける場合、緩衝シート23を座クッション材10又は座インナーシェル9に接着しておくと、ずれ動きを防止できて好適である。
【0051】
張地12は、座クッション材10の表面の凹凸感(樹脂繊維からなるクッション材特有のゴツゴツ感)を緩和させるようダブルラッセル編地を使用しているが、前述の緩衝シート23を設けることで、薄手の張地を使用することも可能になる。従って、緩衝シート23を設けるは張地12の選択の幅が広がる利点がある。緩衝シート23を積層構造に構成することも可能である。
【0052】
張地12も、座クッション材10の通気性を阻害しにくいものを採用することが好ましいことはいうまでもない。図4に示すように、本実施形態では、張地12の外周縁は座インナーシェル9の下面に巻き込まれており、タッカーで座インナーシェル9の下面に固定されている。但し、張地12の取り付け手段としては、紐で縛る方式や、樹脂シートよりなる縁部材を縫着してこれを座インナーシェル9の下面に係止する方式など、様々な方式を採用できる。
【0053】
本実施形態では、座クッション材10には、座インナーシェル9と噛み合う部位に予め凹所21,22が形成されているため、座インナーシェル9と座クッション材10と張地12とで座2を構成するにおいて、座クッション材10を押しつけて圧縮させておく必要はなく、従って、張地12の取り付けを容易かつ正確に行える。
【0054】
また、上記のとおり、座クッション材10は緩衝シート23で抱持されているため、座クッション材10の表面に繊維の端が露出していても、これらを緩衝シート23で覆って身体へのソフトな当たりを確保できる。従って、座クッション材10については、必要な反発力を得るように線径や材質を選択できる。すなわち、必要な弾性力や通気性を確保しつつ、ソフトな当たりを実現できる。
【0055】
実施形態のように緩衝シート23を袋体に構成すると、座クッション材10への取り付けが容易である利点や、座クッション材10を構成する繊維の欠片が床に落ちることを防止できる利点がある。
【0056】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。適用対象は座には限らず、背もたれや肘掛け、ヘッドレスなどにも適用可能である。逃がし部の形態は、相手部材との関係で任意に設定できる。張地の裏面に緩衝シートを予め接着しておくことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本願発明は椅子の技術に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0058】
2 身体支持ユニットの一例として座
9 座インナーシェル
9a 座インナーシェルの後端縁
10 座クッション材
11 座アウターシェル
12 張地(表皮材)
13 中間部材
13 土手状の側枠部
18 座アウターシェルの内向き膨らみ部
19 座インナーシェルの内向き膨らみ部
21,22 逃がし部の一例としての凹所
23 緩衝シート
図1
図2
図3
図4