(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034517
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】背もたれ及びこれを備えた椅子
(51)【国際特許分類】
A47C 7/40 20060101AFI20240306BHJP
A47C 7/42 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
A47C7/40
A47C7/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138783
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】上田 雄翔
(72)【発明者】
【氏名】河本 誠太郎
(72)【発明者】
【氏名】木村 翔
【テーマコード(参考)】
3B084
【Fターム(参考)】
3B084EA02
3B084EC01
3B084FA06
3B084GA01
(57)【要約】
【課題】背インナーシェルの取り付けが容易で美感や安全性にも優れた背もたれを開示する。
【解決手段】背インナーシェル16の後面には、後ろ向き横長リブ40と後ろ向き縦長リブ41とからなる前部枠体が形成されて、背アウターシェル12の前面には、アッパリブ26とサイドリブ23とから成る後部枠体が形成されて、後部枠体で前部枠を囲っている。枠体の内側に、背インナーシェル16を背アウターシェル12に取り付けるための規制部42~49を設けている。規制部42~49は外部から視認できないため美感に優れている。リブ23,26,40,41の内側に物が落ち込むことはなく、指先を挟むこともない。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
背板とその後ろに配置された板状の背支持体とを有して、
前記背支持体の上部に左右長手の水平方向に延びる前向き横長リブが突設されて、前記背板には、前記前向き横長リブと上下方向に重なるように配置された左右長手の水平方向に延びる後ろ向き横長リブが突設されており、
前記背板と背支持体との対向した部位でかつ前記両リブよりも下方の部位に、前記背板と前記背支持体との結合手段が設けられている、
椅子の背もたれ。
【請求項2】
前記前向き横長リブと後ろ向き横長リブとには、それぞれ左右端部から下方に延びる左右の縦長リブが一体に形成されており、
前記前向き横長リブ及び左右の縦長前向きリブよりなる後部枠体と、前記後ろ向き横長リブ及び左右の縦長後ろ向きリブより成る前部枠体とが、前後に嵌まり合っている、
請求項1に記載した椅子の背もたれ。
【請求項3】
前記前部枠体は前記後部枠体で外側から囲われている、
請求項2に記載した椅子の背もたれ。
【請求項4】
前記背板には手前から表皮材が重なっていて、前記表皮材の縁部は前記背板の後ろに回り込んで前記前部枠体の内部に固定されており、前記表皮材のうち前記前部枠体を囲っている部分が前記後部枠体によって後ろから押圧されている、
請求項3に記載した椅子の背もたれ。
【請求項5】
前記結合手段は、前記背板を上部において前後動しないように保持する上規制部と、前記背板を下部において前後動及び下降動しないように保持する下規制部とを備えており、
前記上規制部は、前記背板の上向き動で嵌合する係合部で構成されている、
請求項1~3のうちのいずれかに記載した椅子の背もたれ。
【請求項6】
請求項1~5のうちのいずれかに記載した背もたれを備えた椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、背もたれの着脱が容易な椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
椅子の背もたれは、一般に、その後ろに配置したバックサポートに取り付けられている。例えば事務用に多用されている回転椅子では、背もたれは樹脂製の背インナーシェルの前面にクッション材を配置した構造が多い。また、バックサポートの形態は、シェル状やフレーム構造など多岐に亙っている。
【0003】
そして、背もたれの取り付け構造として、ビスを使用せずに、係合部の弾性変形を利用して背もたれを背アウターシェルに取り付けることが行われている。その例として例えば特許文献1には、背板の後面と背アウターシェルの前面とに、背もたれを手前から重ねて下向きにずらすと互いに嵌まり合って背もたれを前後動不能に保持する上部係合部と、上部係合部が嵌まり合った状態で背もたれを背アウターシェルに向けて押しつけると係合して背もたれを上下動不能に保持する下部係合部とを設けることが開示されている。
【0004】
この特許文献1では、背板のうち下部係合部よりも下方の部位は手前に捲り返し可能な変形許容部になっており、背板の下部を手間に捲って手先を背板の後ろに下方から差し込むことにより、下部係合部の係合を解除できるようになっている。
【0005】
また、特許文献1では、アウターシェルの前面には、上係合部の上に配置された左右横長のアッパリブと、アウターシェルの左右側部に配置された上下長手のサイドリブとが形成されており、背板の後面がこれらアッパリブとサイドリブとで支持されている(当接している。)。
【0006】
他方、特許文献2には、背板の後ろにアウターシェルを配置してなる椅子において、アウターシェルの上部には前向きに突出した左右長手の第1リブを設ける一方、背板の上部には、第1リブの上に位置した左右長手の第2リブを設けて、第2リブの左右両端部に下向き突設した係合爪を第1リブに設けた係合穴に嵌め込む構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013-1062726公報
【特許文献2】特開2004-073218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1では、背板をアウターシェルに簡単に取り付けできるが、背板の下部は捲り返し可能に形成する必要があるため、適用対象が限定されて剛体構造の背板に適用できない問題がある。従って、適用対象を拡大できる構造が要請されていると云える。
【0009】
他方、特許文献2では、背板の上部に設けた第1リブとアウターシェルの上部に設けた第2リブとが平面視で重なり合っているため、物品(小物や薄物)が背板とアウターシェルとの間の空間に落ち込むことを防止できる利点や、人が誤って指先を背板とアウターシェルとの間に上から挿入しても、指を挟むことはない利点がある。しかし、背板の上向き動阻止機能を係合爪に担わせているため、係合爪の負担が大きくなるおそれがあり、従って、部材・係合部の信頼性を向上させた構造が要請されていると云える。
【0010】
本願発明はこのような現状を背景に成されたものであり、組み立てが容易で背もたれの取り付け強度にも優れ、かつ、美感や安全性にも配慮した背もたれを開示せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明は様々な構成を含んでおり、その典型例を各請求項で特定している。このうち請求項1の発明は背もたれの上位概念を成すもので、
「背板とその後ろに配置された板状の背支持体とを有して、
前記背支持体の上部に左右長手の水平方向に延びる前向き横長リブが突設されて、前記背板には、前記前向き横長リブと上下方向に重なるように配置された左右長手の水平方向に延びる後ろ向き横長リブが突設されており、
前記背板と背支持体との対向した部位でかつ前記両リブよりも下方の部位に、前記背板と前記背支持体との結合手段が設けられている」
という構成になっている。
【0012】
請求項2の発明は請求項1を具体化したもので、
「前記前向き横長リブと後ろ向き横長リブとには、それぞれ左右端部から下方に延びる左右の縦長リブが一体に形成されており、
前記前向き横長リブ及び左右の縦長前向きリブよりなる後部枠体と、前記後ろ向き横長リブ及び左右の縦長後ろ向きリブより成る前部枠体とが、前後に嵌まり合っている」
という構成になっている。
【0013】
請求項3の発明は請求項2を具体化したもので、
「前記前部枠体は前記後部枠体で外側から囲われている」
という構成になっている。
【0014】
請求項4の発明は請求項3を具体化したもので、
「前記背板には手前から表皮材が重なっていて、前記表皮材の縁部は前記背板の後ろに回り込んで前記前部枠体の内部に固定されており、前記表皮材のうち前記前部枠体を囲っている部分が前記後部枠体によって後ろから押圧されている」
という構成になっている。
【0015】
請求項5の発明は請求項1~3のうちのいずれかの展開例であり、
「前記結合手段は、前記背板を上部において前後動しないように保持する上規制部と、前記背板を下部において前後動及び下降動しないように保持する下規制部とを備えており、
前記上規制部は、前記背板の上向き動で嵌合する係合部で構成されている」
という構成になっている。
【0016】
この場合、上規制部と下規制部との個数は任意に設定できる。また、下規制部は1種類のものに前後動阻止機能と下向き動阻止機能とを担わせることも可能であるし、前後動阻止のための下規制部と下向き動阻止のための下規制部とを別々に設けることも可能である。
【0017】
本願発明は椅子も対象にしており、この椅子は、請求項6のとおり、請求項1~5のうちのいずれかに記載した背もたれを備えている。
【発明の効果】
【0018】
本願発明では、背板に設けた後ろ向きリブと背支持体に設けた前向きリブ背板とが平面視で重なるように配置されているため、人が背板と背支持体との間に上から指を差し入れても挟まれることはなくて安全性に優れている。また、背板と背支持体との間の内部空間に物が落ち込むことも防止できる。
【0019】
そして、前記背板と前記背支持体との結合手段は両横長リブよりも下方の部位に設けられているため、前向き横長リブと後ろ向き横長リブとの上下関係に限定がなくて、設計の自由性を向上できる。また、背板と背支持体(背アウターシェル)との間の空間は上方から視認できないため、美感が優れている。
【0020】
請求項2のように前部枠体と後部枠体とを設けてこれらを嵌合させると、背板と背支持体との間の空間は側方からも視認できないため、美感を更に向上できる。また、枠体の補強効果によって背板と背支持体との両方の強度を向上できる利点もある。
【0021】
前部枠体と後部枠体との関係としては、前部枠体で後部枠体を囲う態様と、後部枠体で前部枠体を囲う態様とがあるが、請求項3のように後部枠体によって前部枠体を囲うと、背支持体の前向き縦長リブを背板の下方(或いは座の下方)まで延長できるため、背支持体のデザインにとって有利である。
【0022】
また、背もたれ(背板)を背支持体(アウターシェル)取り付けるに際して、請求項5のうち背板を背支持体に重ねて上向き動させる構成を採用した場合、請求項3と組み合わせると、前向き横長リブと後ろ向き横長リブとを密着又は密接できるため、美感の向上効果や物品の落ち込み防止効果を的確に発揮できる。
【0023】
請求項4の構成を採用すると、後部枠体によって表皮材にテンションが掛けられるため、表皮材を張った状態に保持して美感を向上できる。この点、請求項3の構成を利用した効果である。
【0024】
請求項5の発明では、上規制部は、背もたれの上向き動又は下向き動によって嵌合・係合して機能するため、背もたれの取り付け作業の手間を軽減できる。また、上下の規制部によって結合機能を分担できるため、特定の規制部に負荷が掛かり過ぎることを防止して、高い品質・信頼性を確保できる。
【0025】
そして、下規制部を係脱させることによって背もたれを背支持体に取り付け・取り外しできるが、例えば、座を取り外すと人の手先を下規制部に容易にアクセスできるため、背もたれの取り付け・取り外しを容易に行える。
【0026】
この場合、下規制部を、実施形態のように、上向き動を阻止する規制部と前向き動を阻止する規制部とに分離構成すると、各規制部の負荷を更に軽減して信頼性・品質の向上に貢献できると共に、背もたれの組み付け・取り外しも容易化できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】実施形態に係る椅子の外観図で、(A)手前から見た斜視図、(B)は後ろから見た斜視図である。
【
図2】(A)は背板を裏返した状態での分離正面図、(B)は分離斜視図である。
【
図6】(A)はアウターシェルと傾動フレームとの分離斜視図、(B)は第2前部下規制部の斜視図、(C)は第2後部下規制部の斜視図、(D)は(C)のD-D視線で切断した平断面図である。
【
図7】(A)はアウターシェルを下方から見た斜視図、(B)は背板の上部の斜視図である。
【
図8】(A)は中央部の縦断側面図、(B)は(A)の部分拡大図、(C)は
図7の VIII-VIII視箇所で切った平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明では方向を特定するため「前後」「左右」の文言を使用するが、この前後左右の文言は着座した人を基準にしている。正面視方向は着座した人と対峙した方向であり、従って、正面視での左右と着座した人から見た左右とは逆になる。
【0029】
(1).椅子の概略
まず、椅子の概要を、主として
図1~
図3に基づいて説明する。本実施形態は、事務用等に多用されている回転椅子に適用しており、
図1に示すように、椅子は、脚支柱1及びキャスタを有する脚装置2と、脚支柱1の上端に固定したベース3と、ベース3の上に配置した座4と、着座した人がもたれ掛かり得る背もたれ5とを有している。
【0030】
ベース3の上には、図示しない中間部材(座受け部材)が配置されており、この中間部材に樹脂製の座アウターシェル6(
図3(A)参照)が取り付けられている。座4は、樹脂製の座インナーシェル(座板)7(
図2(B)参照)と、その上面に重ね配置した座クッション材とを有しているが、本願との直接の関係はないので説明は省略する。
【0031】
図3(B)に示すように、ベース3には傾動フレーム8が後傾動自在に連結されており、この傾動フレーム8に背アウターシェル9が取り付けられている。傾動フレーム8は、略前後方向に延びる左右のサイドアーム9と、その後端に一体に繋がった左右横長のリア部10と、リア部10の後端から略上向きに立ち上がった背支柱部11とを有しており、この背支柱部11に背アウターシェル12が取り付けられている。
【0032】
背支柱部11は概ね板状の状態で立ち上がっており、その左右両側部には、上向きに突出した背支柱13を一体に設けている(背支柱13も背支柱部11の一部であり、従って、背支柱部11は基部と左右背支柱13とを有する上向き開口コ字形になっている。)。左右サイドアーム9の前後中途部にはジョンイントバー14が一体に繋がっている。
【0033】
なお、本実施形態の椅子は、リクライニングに際して座が後退しつつ後傾するシンクロタイプであり、ジョンイントバー14には、中間部材に連結される連結軸15aが一体成形又は溶接で設けられている。
図3(B)に示すように、ベース3の前部に、上向きに突出したリンク15bが後傾動するように連結されている。既述の中間部材は、リンク15bと連結軸15aとに連結されていて、傾動フレーム8の後傾動に連動して後退動しつつ後傾する。
【0034】
傾動フレーム8は、ガラス繊維入りポリアミド系樹脂のようなエンジニアリングプラスチック製であるが、アルミ等の金属のダイキャスト品や板金製品も採用可能である。背アウターシェル12は、ポリプロピレン等の樹脂を素材にした成形品である。背アウターシェル12の上部は、側面視でカーブしながら背もたれ5の後ろにはみ出ており、このはみ出し部に、人が手先を挿入できる穴が開口している。
【0035】
図1(A)に表示するように、背もたれ5は、樹脂製の背インナーシェル(背板)16とその前面に張ったクッション17とを備えており、クッション17は、クロス等の表皮材(張地)18で覆われている。表皮材18は背インナーシェル16の後ろに回り込んでいるが、背インナーシェル16の裏面の全体は覆っていない。そして、本実施形態では、背アウターシェル12が請求項に記載した背支持体になっており、背インナーシェル16が背アウターシェル12に取り付けられている。以下、
図4以下の図面も参照して詳述する。
【0036】
(2).背フレームと背アウターシェルとの取り付け構造
まず、傾動フレーム8に対する背アウターシェル12の取り付け構造を説明する。
図5,6に示すように、背支柱13は概ね角柱のような外観を呈している。
図5に示すように、背支柱13の上端部に横向き部21が一体に形成されて、背支柱13と横向き部21との間には、上向き開口溝22(
図6(A)参照)が形成されている。
【0037】
他方、例えば
図6(A)に示すように、背アウターシェル12の左右側部には上下長手のサイドリブ23が形成されていると共に、サイドリブ23の内側には上下長手のミドルリブ24が形成されている。更に、ミドルリブ24の外側に下向きに開口したポケット部25を形成しており、ポケット部25が背支柱13の上端部に上から嵌まっている。これにより、背アウターシェル12は、背支柱13の上端部に対して左右動不能かつ前後移動不能に保持されている。
【0038】
ポケット部25とサイドリブ23との間の空間に、横向き部がきっちり嵌まっている。また、ポケット部25の外側板25a(
図6(A)、
図7(A)参照)が、背支柱13と横向き部21の間に形成された上向き開口溝22(
図6(A)参照)に嵌まっている。
【0039】
図6(A)や
図7(A)に示すように、サイドリブ23は、背アウターシェル12の側端からある程度の寸法だけ内側に寄った部位に設けている。また、左右サイドリブ23の上端には、左右横長のアッパリブ26が一体に繋がっている。請求項との関係では、アッパリブ26は前向き横長リブに該当して、サイドリブ23は前向き縦長リブに該当しており、これらアッパリブ26とサイドリブ23とによって後部枠体が構成されている。また、ミドルリブ24の内側には、上下長手のインナーリブ28が左右配置されており、インナーリブ28の上端はアッパリブ26に繋がっている。
【0040】
図5、
図6(A)(及び
図8(A)に参照)に示すように、背アウターシェル12の下部の左右中間部には、左右側板29aの前端にバー部29bが連結された下部ストッパー29を前向きに突設している一方、
図6(A)及び
図8(A)に示すように、傾動フレーム8の背支柱部11には、下部ストッパー29が嵌まるストッパー穴30を形成している。
【0041】
そして、下部ストッパー29のバー部29bに、側面視で斜め後ろ上に突出した爪片29cを形成している一方、ストッパー穴30の上内面には、
図8(A)に示すように、爪片29cが手前から引っ掛かり係合する係合段部31を形成している。このため、背アウターシェル12は上向き抜け不能に保持されている。なお、爪片29cは背アウターシェル12の一部であるが、ハッチングは細かなピッチにしている。
【0042】
背アウターシェル12を傾動フレーム8に対して上向き動不能及び後ろ向き離反不能に保持することは、背アウターシェル12の下端の左右コーナー部の箇所でも行われている。すなわち、
図6(A)に示すように、背アウターシェル12の左右コーナー部に、側面視で斜め後ろ上向きに突出したコーナー係合爪32を設けている一方、傾動フレーム8の左右後部のコーナー部には、コーナー係合爪32が嵌まるコーナー係合穴33を形成している。コーナー係合穴33には、コーナー係合爪32が弾性変形してから戻ることで引っ掛かる下向きのコーナー係合突起(図示せず)を形成している。
【0043】
図4や
図6(A)に示すように、ミドルリブ24及びインナーリブ28の下部には、左右長手の中間リブ35が交差姿勢で繋がっている。中間リブ35は補強のために設けている。なお、
図6(A)に示すように、背支柱部11における横向き部21の下端には、後ろ向きに開口した凹部34が形成されており、この凹部34に、固定式肘掛け(図示せず)の上端部を嵌め込んでビスで固定できる。
【0044】
(3).背インナーシェルと背アウターシェルとの結合構造
次に、背アウターシェル12に背インナーシェル16(背もたれ5)を取り付ける構造を説明する。背インナーシェル16は、ポリプロピレン等の樹脂を素材とした成形品である。
図4や
図5に示すように、背インナーシェル16の後面には、左右長手で水平方向に延びる後ろ向き横長リブ40と、後ろ向き横長リブ40の左右両端から下向きに延びる後ろ向き縦長リブ41とが形成されており、これら後ろ向き横長リブ40と後ろ向き縦長リブ41とにより、請求項に記載した前部枠体が構成されている。
【0045】
背インナーシェル16の後ろ向き横長リブ40及び後ろ向き縦長リブ41より成る前部枠体は、背アウターシェル12の後ろ向き横長リブ40及び後ろ向き縦長リブ41によって外側から囲われている。そして、背インナーシェル16の後ろ向き横長リブ40及び後ろ向き縦長リブ41の突出高さは、背アウターシェル12におけるアッパリブ26の突出高さよりも低くなっている。
【0046】
そして、例えば
図4から理解できるように、背アウターシェル12におけるミドルリブ24の上端部は、その高さが低くなるように切欠かかれている。インナーリブ28は、下端近くから上端に向けて高さが低くなるように形成しており、これらの配慮により、背インナーシェル16の後ろ向き横長リブ40が背アウターシェル12のミドルリブ24及びインナーリブ28の上部に当たることを防止している。
【0047】
本実施形態では、背もたれ5を背アウターシェル12に結合する(取り付ける)手段として、
図4,5に示すように、まず、背インナーシェル16の背面には、後ろ向き横長リブ40及び後ろ向き縦長リブ41で囲われた部位の上部に、第1前部上規制部42と第2前部上規制部43とが上下に離れた状態で形成され、後ろ向き縦長リブ41よりも低い高さ位置に(背インナーシェル16の下部に)、左右中間部に位置した第1前部下規制部44と、後ろ向き縦長リブ41の真下部に位置した左右一対の第2前部下規制部45とが形成されている。
【0048】
他方、背アウターシェル12には、第1前部上規制部42に対応した左右の第1後部上規制部46と、第2前部上規制部43に対応した左右の第2後部上規制部47と、第1前部下規制部44に対応した1つの第1後部下規制部48と、左右の第2前部下規制部45に対応した左右の第2後部下規制部49とが形成されている。
【0049】
(4).上部結合構造の詳細
図7から容易に理解できるように、第1前部上規制部42は上向き片42aを有するL字状に形成されて、補強リブ42bを設けている。他方、第1後部上規制部46は、前片46aと側片46bと上片46cと左右のストッパー片46dとを有しており、第1前部上規制部42の上向き片42aが、前片46aとストッパー片46dとの間の空間に下方から嵌入するようになっている。第1前部上規制部42の補強リブ42bとの衝突を回避するめ、前片46aは左右に分離している。
【0050】
第1前部上規制部42は上向き片42aは、第1後部上記載部46の前片46aによって前向き動不能に保持されて、第1後部上規制部46の上片46cによって上向き動不能に保持されている。上向き片42aの後ろ向き移動は、背アウターシェル12の基板で阻止されている。
【0051】
図7(B)に示すように、第2前部上規制部43は、背インナーシェル16から後ろ向きに突出した基部43aと、基部43aの下端から左右外向きに突出した規制爪43bと、規制爪43bの下端に連続したストッパー片43cとを有している。
【0052】
他方、
図7(A)に示すように、背アウターシェル12の第2後部上規制部47は、サイドリブ23とミドルリブ24との間に位置した上下長手の補助リブ51から左右内向きに突出させた前片47aと、前片47aの上端に一端に繋がった上片57bとを有しており、上片57bは背アウターシェル12の前面に至っている。従って、前片47aと背アウターシェル12との間には空間が空いている。
【0053】
第2前部上規制部43の規制爪43bは、第2後部上規制部47における前片47aの後ろの空間に位置して、上片57bに下方から近接している。従って、規制爪43bは前片47aによって前向き動不能に保持されて、上片57bによって上向き動不能に保持される。規制爪43bの後ろ向き移動は、背アウターシェル12の基板で阻止されている。
【0054】
図5から理解できるように、背アウターシェル12を背支柱13に上から嵌合させるためのポケット部25は、背アウターシェル12の補助リブ51とミドルリブ24とに繋がっている。このため、補助リブ51の剛性は高くなっている。ミドルリブ24の下端部24aはインナーリブ28の側に寄せられている。従って、ミドルリブ24の下部は正面視でクランク状に曲がっている。
【0055】
(5).下部結合構造の詳細
図4,5に示すように、第1前部下規制部44は、上下左右のリブ群によって左右長手の箱状に形成されており、上面には、側面視三角形のリブ44aを設けている。他方、第1後部下規制部48は、左右のインナーリブ28の下部を上板48a及び下板48bで繋ぐことにより、前向きに開口した角形箱状に形成されている。
【0056】
従って、本実施形態では、左右のインナーリブ28も第1後部下規制部48の構成要素になっている。第1後部下規制部48において、上板48aの上面と下板48bの下面には補強リブ48cを設けている。
図8(A)から理解できるように、第2前部下規制部45は、第1後部下規制部48によって上下動不能に保持されている。このため、背もたれ5は上下動不能に保持されている。
【0057】
また、第2前部下規制部45は第1下部下規制部48に対して左右動しない状態に嵌合している。このため、背インナーシェル16の下部は左右にガタつかない状態に保持されている。
【0058】
図6(A)に明示するように、第2前部下規制部45は、背インナーシェル16の後面から後ろ向きに突出した背面視L形の基枠45aと、基枠45aの先端から左右外側において後ろ向きに延びる係合爪45bと、係合爪45bと一体に繋がった先端(後端)は自由端と成した操作片45cとを有している。
【0059】
他方、
図6(C)に明示するように、第2後部下規制部49は、背アウターシェル12うちサイドリブ23の下部の内側に配置されており、側面視門型の規制枠49aと、背アウターシェル12のサイドリブ23の内面に突設したロック部49bとを有している。第2前部下規制部45における係合爪45bの端面45dが、第2後部下規制部49のロック部49bに後ろから当接することにより、背インナーシェル16の下部は前向き移動不能に保持されている。
【0060】
基枠45aは規制枠49aで内向きに倒れ不能に保持されているため、係合爪45bがロック部49bと係合した状態が保持されている。また、操作片45cを外側から内向きに押すと、ロック部49bに対する係合を解除できる。この場合、背アウターシェル12のサイドリブ23に切欠き部52を形成して、切欠き部52から細い部材(例えばマイナスドライバ)を差し込んで、操作片45cを押すことができるようになっている。
【0061】
例えば
図4,5に示すように、背インナーシェル16の後面のうち後ろ向き横長リブ40のやや下方でかつ左右中間部に、リブによって形成された左右横長の位置決め枠部53を後ろ向きに突設している。
【0062】
位置決め枠部53は、箱状の本体部53aと、その外側に配置した側板53bと、側板53bと本体部53aとを繋ぐ連結片53cとを有しており、左右の側板53bによって背アウターシェル12のインナーリブ28を外側から囲って、連結片53cがインナーリブ28に当接している。従って、背インナーシェル16の上部は、位置決め枠部53により、左右のガタ付きが阻止されると共に、背アウターシェル12との前後間隔が規制される。
【0063】
(6).張地の処理
既述のとおり、表皮材(張地)18は背インナーシェル16の裏側に巻き込まれており、上縁は背アウターシェル12の後ろ向き横長リブ40よりも内側に入り込んで、左右側縁は、背インナーシェル16の後ろ向き縦長リブ41の内側に入り込んでいる。背インナーシェル16の下部には横長リブは形成されていないため、表皮材18の下端縁は、背インナーシェル16の裏面の下部に巻き込まれているだけである。
【0064】
そして、表皮材18の上縁と左右側縁と下縁とに、
図4に簡略して示す縁部材(図示せず)を縫着して、縁部材(図示せず)を背アウターシェル12に設けたボス56に係止している。従って、縁部材には、ボス56に嵌まる穴が形成されている。この場合、上辺部と下辺部とのボス56とは茸形に形成されて、左右側部のボス56は、上端のものを除いて鉤形に形成されている。
【0065】
そして、表皮材18の上縁と左右側縁とはリブ40,41の内側に位置しているため、表皮材18はリブ40,41の先端で支えられてテントを張ったような状態になっているが、背アウターシェル12に設けたリブ23,26が背インナーシェル16のリブ40,41の外側に配置されているため、
図8(B)(C)に示すように、表皮材18は、背インナーシェル16のリブ40,41の外側において背アウターシェル12のリブ26,23で押される。
【0066】
この押し作用により、表皮材18に取り付け前の状態で多少の弛みがあっても、椅子として組み立てた後は、背インナーシェル16の裏面に重なった状態でピンと張った状態に保持される。従って、表皮材18の取り付けを容易に行えつつ、美感を向上できる。
【0067】
(7).まとめ
本実施形態では、背アウターシェル12の後部枠体(アッパリブ26及びサイドリブ23)によって背インナーシェル16の前部枠体(リブ40,41)が外側から囲われているため、結合手段が配置されている内部は視認できずに美感に優れていると共に、小物が内部に入り込むことも防止できる。
【0068】
また、既述のとおり、背アウターシェル12の後部枠体(23,26)によって表皮材18が押さえられているため美感に優れているが、表皮材18は後部枠体(23,26)に当接しているため、人が後部枠体(23,26)の内側に指先を挿入しようとしても挿入できず、従って、安全性に優れている。
【0069】
背もたれ5を取り付けは、まず、背もたれ5を、通常位置よりも少し下にずらした状態で背アウターシェル12に重ねてから上向きに移動させ、次いで、背もたれ5の下半部を背アウターシェル12に対して押しつける、という2アクションによって行われる。
【0070】
そして、背インナーシェル16を移動させる動作により、第1及び第2の前部上規制部42,43が第1及び第2の後部上規制部46,47に下方から係合し、これにより、背インナーシェル16の上部は前後動不能に保持される。
【0071】
また、背もたれ5の下半部を背アウターシェル12に対して押しつける動作により、第1前部下規制部44が第1後部下規制部48に嵌入すると共に、第2前部下規制部45が第2後部下規制部49に係合する。第2前部下規制部45が第1後部下規制部48に嵌入することにより、背インナーシェル16は上下動不能に保持されている。
【0072】
他方、第2前部下規制部45は、係合爪45bがいったん内側に回動するように弾性変形してから、背インナーシェル16を押し込みきると係合爪45bが戻り回動し、すると、係合爪45bの端面45dがロック部49bの後ろに位置して、背インナーシェル16は前向き動不能に保持される。
【0073】
このように、背インナーシェル16はごく簡単な作業で背アウターシェル12に取り付けられる。かつ、取り付けた後は、上下方向にも左右方向にも前後方向にもガタつかない状態に保持されている。各規制部42~49は機能を分担しているため、特定の規制部に負荷が集中することを防止できる。従って、各規制部を単純化して各機能をしっかりと実現できる。
【0074】
背もたれ5を取り外しする場合は、既述のとおり、背アウターシェル12のサイドリブ23に設けた切欠き52から棒材を挿入して、第2前部下規制部45の操作片45cを押し曲げることにより、ロック部49bに対する係合爪45bの係合状態を解除し、その状態を保持しつつ背もたれ5の下部をいったん手前に引き、次いで、第1後部下規制部48に対する第2前部下規制部45の嵌合を解除し、次いで、背もたれ5を下方にずらして、前部上規制部42,43を後部上規制部46,47から抜き外したらよい。
【0075】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。例えば、各規制部の構造は、その機能を有する限り任意に設定できる。配置位置や配置数も任意に設定できる。下規制部の結合手段としてビスやクリップを使用することも可能である。例えば実施形態において、第2下規制部45,49を使用せずに、下規制部44,48を下方から挿入したビスで締結することも可能である。
図8(A)に示すように、背アウターシェル12の上部に開口を設けることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本願発明は、椅子に具体化することができる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0077】
5 背もたれ
8 傾動フレーム
11 傾動フレームの背支柱部
12 背支持体の一例として背アウターシェル
16 背インナーシェル(背板)
18 表皮材
23 後部枠体を構成するサイドリブ
24 ミドルリブ
25 ポケット部
26 後部枠体を構成するアッパリブ
28 インナーリブ
40,41 前部枠体を構成するリブ
42,43 背インナーシェルに設けた上前部規制部
44,45 背インナーシェルに設けた下前部規制部
46,47 背アウターシェルに設けた上後部規制部
48,49 背アウターシェルに設けた下後部規制部