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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034558
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】移植機
(51)【国際特許分類】
   A01C 23/00 20060101AFI20240306BHJP
   A01C 11/00 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
A01C23/00 F
A01C11/00 302
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138869
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081673
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100141483
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 生吾
(72)【発明者】
【氏名】大森 圭輔
(72)【発明者】
【氏名】難波 晟史
【テーマコード(参考)】
2B052
2B060
【Fターム(参考)】
2B052BC05
2B052BC07
2B052BC09
2B052BC16
2B052EA03
2B052EA06
2B060AA01
2B060AC03
2B060AE10
2B060BA04
2B060BA07
2B060BA09
2B060BB07
(57)【要約】
【課題】肥料を前後複数の肥料タンクに貯留できるとともに、各肥料タンクに肥料を供給する手間も軽減可能な移植機を提供することを課題とする。
【解決手段】走行機体の前側のタンクと、後側のタンクと、その後部に昇降可能に連結された植付作業機と、そこに設置された施肥部と、前側タンクの肥料の量を検出する貯留量検出手段と、後側タンクの肥料の量を検出する貯留量検出手段と、供給ポンプとを備え、制御部は、後側タンクの肥料の量がメイン側第1貯留用以下になり且つ前側のタンク側の肥料の量が供給可能量よりも多い場合、前側タンク内から後側タンク内への肥料供給を開始する一方で、その最中に後側のタンク内の肥料の量がメイン側第1貯留量よりも多いメイン側第2貯留量に達するか、或いは前側のタンク内の肥料の量が供給可能量以下になった場合、サブタンク内からメインタンク内への肥料供給を停止する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施肥作業及び植付作業機を行う移植機であって、
走行機体と、
走行機体の後部に昇降可能に連結され且つ圃場への植付作業を行う植付作業機と、
前記走行機体の前側に配置された肥料タンクであるサブタンクと、
前記走行機体側における前記サブタンクの後方に配置された肥料タンクであるメインタンクと、
前記植付作業機側に配置され且つ前記肥料タンク内から供給される肥料を圃場に施肥する施肥部と、
前記サブタンク側の肥料の量を検出するサブ側貯留量検出手段と、
前記メインタンク側の肥料の量を検出するメイン側貯留量検出手段と、
前記サブタンクから前記メインタンクに肥料を供給する供給ポンプと、
前記供給ポンプの駆動を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記メインタンク側の肥料の量が予め定めた所定の量であるメイン側第1貯留量以下になったことが前記メイン側貯留量検出手段によって検出されるとともに前記サブタンク側の肥料の量が予め定めた所定の量である供給可能量よりも多いことが前記サブ側貯留量検出手段によって検出された状態である補給必要状態が確認されたことを少なくとも1つの条件として、前記供給ポンプを駆動させて前記サブタンク内から前記メインタンク内への肥料供給を開始する一方で、
前記供給ポンプを駆動させている最中、前記メインタンク側の肥料の量が前記メイン側第1貯留量よりも多い予め定めた所定の量であるメイン側第2貯留量以上になったことが前記メイン側貯留量検出手段によって検出されるか、或いは、前記サブタンク側の肥料の量が前記供給可能量以下になったことが前記サブ側貯留量検出手段により検出された状態が確認された場合、前記供給ポンプの駆動を停止させて前記サブタンク内から前記メインタンク内への肥料供給を停止する、
ように構成された
ことを特徴とする移植機。
【請求項2】
前記走行機体の走行状態を検出する走行状態検出手段を備え、
前記制御部は、前記走行機体の走行停止状態を前記走行状態検出手段によって検出した場合には第1モードへの切替を行う一方で、前記走行機体が走行中である状態を前記走行状態検出手段によって検出した場合には第2モードへの切替を行うように構成され、
前記制御部は、
第1モードへの切替中、前記メインタンク内の肥料の量が前記メイン側第2貯留量に達していない状態が前記メイン側貯留検出手段によって検出された場合、前記補給必要状態が確認されなかった場合でも、前記供給ポンプを駆動させて前記サブタンク内から前記メインタンク内への肥料供給を開始する一方で、
第2モードへの切替中、前記メインタンク内の肥料の量が前記メイン側第2貯留量に達していない状態が前記メイン側貯留検出手段によって検出された場合でも、前記補給必要状態が確認されるまでの間は、前記供給ポンプの駆動を停止させる、
ように構成された
請求項1に記載の移植機。
【請求項3】
前記走行機体は、動力源と、走行部と、前記動力源から前記走行部に前進走行動力と後進走行動力とを切り換え可能に伝動する伝動装置と、前記伝動装置から取り出した動力によって前記供給ポンプを駆動する駆動装置とを有し、
前記伝動装置による後進走行状態又はその切換操作を検出する後進走行検出手段を備え、
前記駆動装置は、前記前進走行動力を前記伝動装置から取り出すことによって、前記サブタンクから前記メインタンクに肥料を供給する側である正転側に前記供給ポンプを駆動させるように構成され、
前記駆動装置は、前記供給ポンプへの動力の有無を切り換える切換クラッチと、前記切換クラッチを断続作動させ且つ前記制御部によって制御可能なアクチュエータとを含み、
前記制御部は、前記走行機体の後進走行状態又はその切換操作が前記後進走行検出手段によって検出された場合、前記アクチュエータによって前記切換クラッチを切断状態に切り換えて前記供給ポンプの駆動を停止させるように構成された
請求項1又は2に記載の移植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施肥作業及び植付作業機を行う移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
走行機体と、走行機体の後部に昇降可能に連結され且つ圃場への植付作業を行う植付作業機と、走行機体の前側に配置された肥料タンクである前側タンクと、走行機体側における前記肥料タンクのさらに後方に配置された肥料タンクである後側タンクと、植付作業機側に配置され且つ肥料タンク内から供給される肥料を圃場に施肥する施肥ノズル(施肥部)とを備えた移植機が公知になっている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
このような移植機によれば、より多くの肥料を前後複数の肥料タンクに貯留できるというメリットがある一方で、必要な量の肥料を各肥料タンクに供給する手間が増加するというデメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-032822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、肥料を前後複数の肥料タンクに貯留できるとともに、各肥料タンクに肥料を供給する手間も軽減可能な移植機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、施肥作業及び植付作業機を行う移植機であって、走行機体と、走行機体の後部に昇降可能に連結され且つ圃場への植付作業を行う植付作業機と、前記走行機体の前側に配置された肥料タンクであるサブタンクと、前記走行機体側における前記サブタンクの後方に配置された肥料タンクであるメインタンクと、前記植付作業機側に配置され且つ前記肥料タンク内から供給される肥料を圃場に施肥する施肥部と、前記サブタンク側の肥料の量を検出するサブ側貯留量検出手段と、前記メインタンク側の肥料の量を検出するメイン側貯留量検出手段と、前記サブタンクから前記メインタンクに肥料を供給する供給ポンプと、前記供給ポンプの駆動を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記メインタンク側の肥料の量が予め定めた所定の量であるメイン側第1貯留量以下になったことが前記メイン側貯留量検出手段によって検出されるとともに前記サブタンク側の肥料の量が予め定めた所定の量である供給可能量よりも多いことが前記サブ側貯留量検出手段によって検出された状態である補給必要状態が確認されたことを少なくとも1つの条件として、前記供給ポンプを駆動させて前記サブタンク内から前記メインタンク内への肥料供給を開始する一方で、前記供給ポンプを駆動させている最中、前記メインタンク側の肥料の量が前記メイン側第1貯留量よりも多い予め定めた所定の量であるメイン側第2貯留量以上になったことが前記メイン側貯留量検出手段によって検出されるか、或いは、前記サブタンク側の肥料の量が前記供給可能量以下になったことが前記サブ側貯留量検出手段により検出された状態が確認された場合、前記供給ポンプの駆動を停止させて前記サブタンク内から前記メインタンク内への肥料供給を停止する、ように構成されたことを特徴とする。
【0007】
前記走行機体の走行状態を検出する走行状態検出手段を備え、前記制御部は、前記走行機体の走行停止状態を前記走行状態検出手段によって検出した場合には第1モードへの切替を行う一方で、前記走行機体が走行中である状態を前記走行状態検出手段によって検出した場合には第2モードへの切替を行うように構成され、前記制御部は、第1モードへの切替中、前記メインタンク内の肥料の量が前記メイン側第2貯留量に達していない状態が前記メイン側貯留検出手段によって検出された場合、前記補給必要状態が確認されなかった場合でも、前記供給ポンプを駆動させて前記サブタンク内から前記メインタンク内への肥料供給を開始する一方で、第2モードへの切替中、前記メインタンク内の肥料の量が前記メイン側第2貯留量に達していない状態が前記メイン側貯留検出手段によって検出された場合でも、前記補給必要状態が確認されるまでの間は、前記供給ポンプの駆動を停止させる、ように構成されたものとしてもよい。
【0008】
前記走行機体は、動力源と、走行部と、前記動力源から前記走行部に前進走行動力と後進走行動力とを切り換え可能に伝動する伝動装置と、前記伝動装置から取り出した動力によって前記供給ポンプを駆動する駆動装置とを有し、前記伝動装置による後進走行状態又はその切換操作を検出する後進走行検出手段を備え、前記駆動装置は、前記前進走行動力を前記伝動装置から取り出すことによって、前記サブタンクから前記メインタンクに肥料を供給する側である正転側に前記供給ポンプを駆動させるように構成され、前記駆動装置は、前記供給ポンプへの動力の有無を切り換える切換クラッチと、前記切換クラッチを断続作動させ且つ前記制御部によって制御可能なアクチュエータとを含み、前記制御部は、前記走行機体の後進走行状態又はその切換操作が前記後進走行検出手段によって検出された場合、前記アクチュエータによって前記切換クラッチを切断状態に切り換えて前記供給ポンプの駆動を停止させるように構成されたものとしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
肥料を前後複数の肥料タンクに貯留できるとともに、前側のサブタンクに肥料を供給されば、供給ポンプによって後側のメインタンクにも肥料が供給されるため、各肥料タンクに肥料を供給する手間が軽減される他、所定の量の肥料がメインタンクに貯留されれば、供給ポンプの駆動も停止されるため、該供給ポンプの無駄な駆動も防止される。
【0010】
また、前記走行機体の走行状態を検出する走行状態検出手段を備え、前記制御部は、前記走行機体の走行停止状態を前記走行状態検出手段によって検出した場合には第1モードへの切替を行う一方で、前記走行機体が走行中である状態を前記走行状態検出手段によって検出した場合には第2モードへの切替を行うように構成され、前記制御部は、第1モードへの切替中、前記メインタンク内の肥料の量が前記メイン側第2貯留量に達していない状態が前記メイン側貯留検出手段によって検出された場合、前記補給必要状態が確認されなかった場合でも、前記供給ポンプを駆動させて前記サブタンク内から前記メインタンク内への肥料供給を開始する一方で、第2モードへの切替中、前記メインタンク内の肥料の量が前記メイン側第2貯留量に達していない状態が前記メイン側貯留検出手段によって検出された場合でも、前記補給必要状態が確認されるまでの間は、前記供給ポンプの駆動を停止させる、ように構成されたものによれば、走行停止している状態では、圃場外等からサブタンクに肥料を継続的に供給することによって、各肥料タンクに必要な量の肥料を迅速に供給できる一方で、走行中には、走行機体の左右や前後の揺れによって、供給ポンプの駆動と駆動停止とが繰り返される事態が防止され、耐久性の問題を改善できる。
【0011】
さらに、前記走行機体は、動力源と、走行部と、前記動力源から前記走行部に前進走行動力と後進走行動力とを切り換え可能に伝動する伝動装置と、前記伝動装置から取り出した動力によって前記供給ポンプを駆動する駆動装置とを有し、前記伝動装置による後進走行状態又はその切換操作を検出する後進走行検出手段を備え、前記駆動装置は、前記前進走行動力を前記伝動装置から取り出すことによって、前記サブタンクから前記メインタンクに肥料を供給する側である正転側に前記供給ポンプを駆動させるように構成され、前記駆動装置は、前記供給ポンプへの動力の有無を切り換える切換クラッチと、前記切換クラッチを断続作動させ且つ前記制御部によって制御可能なアクチュエータとを含み、前記制御部は、前記走行機体の後進走行状態又はその切換操作が前記後進走行検出手段によって検出された場合、前記アクチュエータによって前記切換クラッチを切断状態に切り換えて前記供給ポンプの駆動を停止させるように構成されたものによれば、供給ポンプが不測に逆転駆動させることが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明を適用した乗用型の移植機の平面図である。
図2】本発明を適用した乗用型の移植機の側面図である。
図3】走行機体を走行停止させて肥料タンクに肥料を供給する状態を示す側面図である。
図4】施肥装置の配管構造を概念的に説明する説明図である。
図5】本移植機に搭載された伝動装置の動力伝動系統図である。
図6】(a)は植付作業機側の動力伝動系統図であり、(b)は浅層施肥ポンプユニット側に動力伝動系統図であり、(c)は深層施肥ポンプユニット側に動力伝動系統図である。
図7】(a)はフロント操作部の平面図であり、(b)は操作パネルの平面図であり、(c)は主変速レバーの側面図である。
図8】制御部の構成を示すブロック図である。
図9】制御部による処理の手順を示すフロー図である。
図10】他の実施形態に係る施肥装置の配管構造を概念的に説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1図2は本発明を適用した乗用型の移植機の平面図及び側面図である。この移植機は、左右一対の前輪(走行部)1,1及び左右一対の後輪(走行部)2,2を有する走行機体3と、該走行機体3の後部に昇降リンク5を介して昇降可能に連結された植付作業機4とを備えている。
【0014】
上記走行機体2は、前後進1,2によって支持されたシャーシ3a上における前部に配置され且つその内部にエンジン(動力源)6(図5参照)を収容するボンネット7と、前記シャーシ3a上のボンネット7の真後ろ側に配置され且つオペレータが乗り込む操縦部8とを有している。
【0015】
操縦部8は、オペレータが着座するシート9と、該シート9の前方で且つボンネットの後端側に配置されたフロント操作部11とを有している。操縦部8は、その左右両側方が開放されて乗降が可能になっている。平面視でシート9とフロント操作部11との間には、操縦部8の床面であるメインステップ8aが形成されている。
【0016】
メインステップ8aの左右夫々の部分の前方には、該フロアステップ8aと同一の高さを有して面一となるサイドステップ12,12が配置されている。この左右のサイドステップ12,12は、ボンネット7を挟んだ対称位置に配置されている。メインステップ8aの左右夫々の部分の後方には、該メインステップ8aよりも階段状に高くなったリヤステップ13,13が配置されている。この左右のリヤステップ13,13は、シート9の後端側を挟んだ対称位置に配置されている。メインステップ8aと、左右のサイドステップ12,12と、左右のリヤステップ13,13とは、一体的に形成され、シャーシ3a上に支持されている。
【0017】
ボンネット7の左右夫々の側方には、その全長が前後方向に向けられた肥料タンク14,14が配置されている。サイドステップ12,12が平面視で肥料タンク14,14と重複せずに上方の空間が開放されるように、各肥料タンク14,14は、自身に近い側のサイドステップ12,12から左右外側に向かって斜め上方の位置に配置されている。
【0018】
これらの肥料タンク14,14は、シャーシ3aからサイドステップ13,13を超えてその左右外側まで延設され且つその延設された端側から上方に立ち上がる取付フレーム16によって、シャーシ3a側に取り付け固定されている。各肥料タンク14,14の上面の前部には、肥料を供給する供給部14a,14aが設けられている。サイドステップ12やメインステップ8aによれば、それらの箇所に作業者が立つことにより、肥料タンク14の供給部14aからの肥料供給を容易に行うことが可能になる。
【0019】
各リヤステップ13,13の後側且つ上側には、その全長が左右方向に向けられた肥料タンク17,17が配置されている。左右の肥料タンク17,17は、走行機体3の左右幅方向中心に対して対称な位置に対称な姿勢で設けられている。肥料タンク17の近い側のリヤステップ13と平面視で一部が重複している。言い換えると、リヤステップ13の前寄り部分は、それに近い側の肥料タンク17に上方を覆われることなく、上方に開放された状態になる。
【0020】
この肥料タンク17,17は、走行機体3の後端側に設けられた取付フレーム18、18によって、シャーシ3a側に取り付け固定されている。この肥料タンク17,17の上面における左右外側寄り部分には、肥料を供給する供給部17a,17aが設けられている。この肥料タンク17への肥料の供給は、供給部17aを介して手動で行うことも可能であるが、上述した肥料タンク14から自動で肥料を供給することも可能であり、詳細は後述する。
【0021】
上記植付作業機4は、アクチュエータ(本例では、伸縮作動する油圧式の昇降シリンダ19)によって、走行機体3に対して昇降駆動される。この植付作業機4には、その左右幅全体に亘って形成された横フレーム21と、横フレーム21から前方斜め上方に傾斜した苗載せ台22と、横フレーム21側に支持された複数の植付ユニット23と、を有している。
【0022】
横フレーム21は昇降リンク5側に左右にローリング可能に取り付け支持されている。このため、植付作業機4は、圃場面の左右傾斜に対応し、走行機体3に対して左右にローリング作動させることが可能である。
【0023】
各植付ユニット23は、横フレーム21の下側から後方に突出形成された植付ケース25と、該植付ケース25の一方又は両方の側部に作動可能に支持された植付部24等とを一体的に有している。すなわち、植付部24は、植付ユニット23毎に1個ずつ又は2個ずつ設けられている。この植付ユニット23は、左右に複数並べて配置されている。植付部24の数は、移植機の植付条数と同数に設定され、本例では、4つの植付ユニット23が設けられ、各植付ユニット23が左右一対の植付部24,24を有しているため、この植付作業機4には、合計8つの植付部24が設けられている。言い換えると、本例の植付作業機4は植付条数が8条に設定されている。
【0024】
苗乗せ台22の背面には、前方に向かって上方に急傾斜した苗載せ面22aが形成されている。この苗載せ面22aには、縦横に行列状に並べられて多数(複数)の苗がその根側に付着した土と共に方形板状の塊をなすマット苗を、上下及び左右に複数並べて配置している。本例の植付作業機4では、上下に並べてられた複数のマット苗の列を、上述した植付条数分左右に並べて配置している。このようにして苗載せ面22a上に載せられた個々のマット苗は、縦送り機構27によって順次下方に送られる。さらに、植付作業機4には、苗乗せ台22を、横フレーム21及びそこに支持された植付ユニット23に対して、左右に往復スライド作動させる横送り機構が設けられている。
【0025】
この縦送り機構27及び横送り機構によって、苗載せ面22a上のマット苗が、それに対応して配置された植付部23に対して上下及び左右に変位し、そのマット苗を構成する左右及び上下の苗が植付部23により順次圃場に植え付けられる。本移植機は、植付作業機4を下方位置(作業位置)に下降させ、縦送り機構27及び横送り機構を作動させ、各植付部23を植付作動させた状態で、走行機体4を前進走行させることによって植付作業を行う。
【0026】
この他、植付作業機4の植付部24側には、植付ユニット23毎に種類の異なる複数の施肥ノズル(施肥部)28A,28Bが設けられている。各施肥ノズル28A,28Bは、横フレーム21側(具体的には、植付ケース25側)から後方に向かって斜め下方に突出した状態で、該横フレーム21(具体的には、植付ケース25)側に取り付け支持されている。
【0027】
一の種類の施肥ノズル28Aは、圃場の表層側である浅層への施肥を行う浅層施肥ノズル(さらに具体的には、苗の株元側に施肥する側条施肥ノズル)であり、植付ユニット23毎に植付部24と同数(本例では2つ)設けられている。他の種類の施肥ノズル28Bは、圃場における浅層よりも深い層(具体的には、苗の株元よりも深い層)である深層に施肥を行う深層施肥ノズルであり、植付ユニット23毎に1つずつ設けられている。
【0028】
各植付ユニット23に設けられた施肥ノズル28A,28A,28Bの左右配置構成について説明すると、左右に並べられた浅層施肥ノズル28A,28Aの間に深層施肥ノズル28Bが配置されている。
【0029】
前後の肥料タンク14,17及び施肥ノズル28A,28Bを含む施肥装置31(図3参照)が本移植機に搭載されており、この施肥装置31によって圃場への施肥や、前側の肥料タンク14から後側の肥料タンク17への肥料の供給等を行う。本移植機は、植付作業機4を前記下方位置に下降させ、施肥ノズル28A,28Aから肥料が排出される状態に切り換え、走行機体3を前進走行させることにより、施肥作業を行う。この施肥作業は、上述した植付作業と同時並行的に行われる。
【0030】
ちなみに、施肥ノズル28A,28Bへの肥料供給は、後側の肥料タンク17のみから行われ、前側の肥料タンク14の肥料は、後述する構成によって、後側の肥料タンク17への肥料の補給(供給)のみに利用される。すなわち、後側の肥料タンク17はメインで利用されるメインタンクになる一方で、前側の肥料タンク14はメインタンク17のサブで補助的に利用されるサブタンクになる。
【0031】
さらには、左右一方(本例では、右側)のメインタンク17は浅層施肥ノズル28Aに肥料を供給する専用の浅層用メインタンク17Aとし、他方(本例では、左側)のメインタンク17は深層施肥ノズル28Bに肥料を供給する専用の深層用メインタンク17Bとしている。また、肥料タンク14,17に貯留され且つ圃場に施肥される肥料は、ある程度の粘土を有する液体状のペースト肥料である。
【0032】
図3は、走行機体を走行停止させて肥料タンクに肥料を供給する状態を示す側面図である。同図に示す例では、移植機が、その前方を畔側に向けた状態で、圃場の端側で走行停止されている。この状態で、作業者は、畔Bからサイドステップ12,12やメインステップ8aに乗り込み、箱や袋等の容器C内に収容された肥料を、サブタンク14,14の一方又は両方に供給する。この際、メインステップ8a側やリヤステップ13,13側からメインタンク17,17への肥料の供給を行うことも可能であるが、上述する構成によって、その必要性は低い。
【0033】
図4は、施肥装置の配管構造を概念的に説明する説明図である。施肥装置31は、左右のサブタンク14,14と、前記サブタンク14,14よりも高い位置に配置され且つ左右のメインタンク17,17と、前記サブタンク14,14よりも後方の位置であって且つ前記メインタンク17,17よりも前方の位置に配置された合流タンク32と、前記合流タンク32よりも後方の位置であって且つ前記メインタンク17,17よりも前方の位置に配置された供給ポンプ33と、左右のメインタンク17,17の下側にそれぞれ配置され且つ該メインタンク17,17と一体的に設けられた施肥ポンプユニット34A,34Bと、左右のサブタンク14,14と合流タンク32との間に配管された一対のサブタンク側パイプ(パイプ)37,37と、左右のメインタンク17,17の間に配管されたメインタンク側パイプ(パイプ)38と、合流タンク32と供給ポンプ33の吸込側とを接続する吸込側パイプ(パイプ)39と、メインタンク側パイプ38の中途部に設けられた分岐部38aと供給ポンプ33の吐出側とを接続する吐出側パイプ41と、吸込側パイプ39の中途部に設けられた分岐部39aから外部への流路を形成するドレインパイプ(パイプ)42と、吐出側パイプ41の中途部に設けられた分岐部41aとドレインパイプ42の中途部に設けられた分岐部42aとの間に配管された排出側パイプ(パイプ)43と、トレインパイプ42における分岐部42aよりも流動下流側に設けられた第1開閉弁(開閉弁)44と、排出側パイプ43の中途部に設けられた第2開閉弁(開閉弁)46と、メインタンク側パイプ38おける分岐部38aと深層用メインタンク17との間に設けられた第3開閉弁(開閉弁)47と、タンク13,17,32毎に設けられ且つその内部に貯留された肥料の量を検出するフロートセンサ(貯留量検出手段)48,49,51と、を備えている。
【0034】
左右のサブタンク14,14は、同一又は略同一の高さに配置されている。左右のメインタンク17,17は、同一又は略同一の高さに配置されている。合流タンク32は、サブタンク14及びメインタンク17よりも低く位置に配置されている供給ポンプ33は、合流タンク32よりも高く且つサブタンク14及びメインタンク17よりは低い位置に配置されている。ドレインパイプ42と、吸込側パイプ39における合流タンク32側の端部から分岐部39aまでの範囲とは、該合流タンク32の同一又は略同一の高さに配管されている。
【0035】
左右一方の施肥ポンプユニット34Aは浅層用メインタンク17A側に配置された浅層施肥ポンプユニット34になり、他方の施肥ポンプユニット34Bは深層用メインタンク17B側に配置された深層施肥ポンプユニット34Bになる。
【0036】
左右のサブタンク14,14内の肥料はサブタンク側パイプ37,37を介して合流タンク32内に送られる。左右のサブタンク14は上述した通り合流タンク32よりも高い位置に配置されているため、サブタンク14内から合流タンク32内への肥料の流動は、重力の作用によって自動的に行われる。
【0037】
また、左右のサブタンク14,14の肥料の貯留量に偏りが生じた場合、肥料の貯留量が多いサブタンク14内の肥料が、2つのサブタンク側パイプ37,37及び合流タンク32によって形成される流路を介して、肥料の貯留量が少ないサブタンク14内に流入し、その偏り是正され、2つのサブタンク14,14の肥料の貯留量が均一化される。
【0038】
同様に、左右のメインタンク17,17の肥料の貯留量に偏りが生じた場合、肥料の貯留量が多いメインタンク17内の肥料が、メインタンク側パイプ38を介して、肥料の貯留量が少ないメインタンク17内に流入し、その偏り是正され、2つのメインタンク17,17の肥料の貯留量が均一化される。ちなみに、この均一化作用は、第3開閉弁47に閉状態に切り換えることよって、停止させることが可能である。
【0039】
供給ポンプ33は、ハウジングと、該ハウジング内に収容され且つ弾性的に変形可能な複数の羽根を含むインペラとを有する自給式のポンプである。供給ポンプ33は、インペラを正転側に回転させる正転駆動時、吸込側パイプ39からの流体(ここでは、肥料)を吐出側パイプ41に圧送する一方で、駆動停止時には吐出側パイプ41から吸引側パイプ39への流動体の逆流を規制する。すなわち、この供給ポンプ33は、正転駆動されることを前提としており、逆転駆動は後述する手段によって防止される。
【0040】
第1開閉弁44及び第2開閉弁46が閉状態に切り換え且つ供給ポンプ33を駆動させた場合、合流タンク14の内部の肥料及びその流動上流側に配置されたサブタンク14の内部の肥料が、吸込側パイプ39→供給ポンプ33→吐出側パイプ41→分岐部38a→メインタンク側パイプ38の順に流動し、メインタンク17の内部まで圧送され、肥料の補給が実行される。
【0041】
一方、第1開閉弁44及び第2開閉弁46を開状態に切り換え且つ供給ポンプ33を駆動停止させた場合、サブタンク14内の肥料は、自重によって、サブタンク側パイプ37→合流タンク32→吸込側パイプ39→分岐部39a→ドレインパイプ42の順に流動して外部に排出されるとともに、メインタンク17内の肥料も、自重によって、メインタンク側パイプ38→分岐部38a→吐出側パイプ41→分岐部41a→排出側パイプ43→分岐部42a→ドレインパイプ42の順に流動して外部に排出される。外部に排出された肥料は作業者によって回収される。
【0042】
また、第1開閉弁44を開状態に切り換え、第2開閉弁46を閉状態に切り換え、供給ポンプ33を駆動停止させた場合、サブタンク14内の肥料は、上述した構成により、外部に排出される一方で、メインタンク17内から外部への流路は第2開閉弁46によって閉じられた状態になるため、その場に留められる。
【0043】
なお、第3開閉弁47が閉状態に切り換えられている場合、浅層用メインタンク17Aに対してのみ肥料の供給及び排出を行うことが可能であり、深層用メインタンク17Bに対しては肥料の供給及び排出を行うことができない状態になる。一方、第3開閉弁47が開状態に切り換えられている場合、浅層用メインタンク17A及び深層用メインタンク17Bの両方に対して肥料の供給及び排出を行うことが可能な状態になる。
【0044】
ちなみに、側条施肥及び深層への施肥を行う通常の施肥作業では、第1開閉弁44及び第2開閉弁46は閉状態に切り換えられるとともに第3開閉弁47は開状態に切り換えられる。側条施肥のみ行い深層への施肥を行わない施肥作業では、第1開閉弁44、第2開閉弁46及び第3開閉弁47の全てが閉状態に切り換えられる。
【0045】
サブタンク14の内部に貯留された肥料の量は、そこに設けられたフロートセンサ48によって検出可能である。この他、サブタンク14の内部に肥料が貯留されているか否かは、合流タンク32の内部に貯留された肥料の量を検出するフロートセンサ49によっても間接的に検出することが可能である。また、サブタンク14と合流タンク32との上下位置を調整すれば、フロートセンサ49によって、サブタンク14内の肥料の貯留量もある程度正確に検出することが可能になる。すなわち、これらのフロートセンサ48,49は、サブタンク14,14及び合流タンク32(サブタンク14側)に貯留された肥料の量が直接的又は間接的に検出するサブ側貯留量検出手段を構成している。
【0046】
一方、メインタンク14に設けられたフロートセンサ51は、該メインタンク14の内部に貯留された肥料の量を検出可能であるとともに、メインタンク側パイプ38内や吐出側パイプ41内の肥料の量も検出可能なメイン側貯留量検出手段になる。
【0047】
ちなみに、この施肥装置31は、エンジン6から動力を各部(具体的には、前後進1,2側及び植付作業機4側)に変速して伝動する伝動装置52(図4及び図5参照)から取り出された動力によって駆動される。
【0048】
図5は、本移植機に搭載された伝動装置の動力伝動系統図である。伝動装置52は、エンジン6の動力を無段階で変速するHST53と、HST53によって変速された動力が入力されるトランスミッション54と、を有している。
【0049】
HST53は、エンジン6からの回転動力を無段階で変速するとともに正転動力と逆転動力を切り換えてトランスミッション54に伝動する。トランスミッション54は、自身に伝動された正転動力を前進走行動力として前後進1,2側に伝動する一方で、自身に伝動された逆転動力を後進走行動力として前後進1,2側に伝動するように構成されている。すなわち、HST53によって走行機体3の前後進切換が実行される。
【0050】
トランスミッション54は、HST53から入力される動力を、有段で機械的に変速して前後進に伝動する走行変速機構56と、その動力を植付作業機4側に伝動する作業側伝動機構57とを有している。
【0051】
走行変速機構56は、HST53からの動力が伝動されて回転する走行側伝動軸58と、該走行側伝動軸と平行に並べて配置され且つ回転可能な走行駆動軸59と、走行側伝動軸に装着固定され且つ該走行伝動軸と一体で回転する複数の入力ギヤ61A,62Bと、走行駆動軸59と一体で回転する状態で該走行駆動軸59に軸方向にスライド可能に支持された切換部材62とを有している。
【0052】
入力ギヤとして、小径の第1入力ギヤ61Aと、大径の第2入力ギヤ61Bとが設けられている。切換部材62には、第1入力ギヤ61Aを噛み合う第1出力ギヤ63Aと、第2入力ギヤ63Bと噛み合う第2出力ギヤ63Bとが一体的に設けられ、これらの出力ギヤ63A,63Bも走行駆動軸59と一体で回転作動する。
【0053】
走行変速機構56は、切換部材62を走行駆動軸59の軸方向の一方にスライドさせることによって第1入力ギヤ61Aと第1出力ギヤ63Aとが噛み噛み合って該走行駆動軸59がエンジン6からの動力によって低速で回転駆動される低速状態に切り換えられる一方で、他方にスライドさせることによって第2入力ギヤ61Bと第2出力ギヤ63Bとが噛み噛み合って該走行駆動軸59がエンジン6からの動力によって高速で回転駆動される高速状態に切り換えられる。また、走行変速機構56は、切換部材62を走行駆動軸59の軸方向における中立位置にスライドさせることによって、走行駆動軸59への動力伝動が切断される切断状態に切り換えられる。
【0054】
走行駆動軸59の回転動力は、差動機構64によって左右の前輪1,1に伝動されるとともに、トランスミッション54が収容されるミッションケース54aから後方に突出する前後方向のプロペラシャフト66に伝動される。プロペラシャフト66の動力は、左右に分岐されて左右の後輪2,2毎に設けられた後進駆動軸67,67を回転駆動させる。左右の後輪2,2は、対応する後輪駆動軸67,67によって走行駆動される。後輪駆動軸67、67の回転数を検出する回転センサ68,68を、左右の後進駆動軸67,67毎に設けている。
【0055】
作業側伝動機構57は、HST53から入力された動力を、ミッションケース54aから突出し且つ回転可能に支持された作業側出力軸69に伝動するように構成されている。また、この作業側伝動機構57による作動側出力軸69への動力伝動経路の途中には、植付クラッチが配置されている。植付クラッチは、エンジンから作業側出力軸69(植付作業機4側)への動力伝動を断続させる。
【0056】
図6(a)は植付作業機側の動力伝動系統図であり、(b)は浅層施肥ポンプユニット側に動力伝動系統図であり、(c)は深層施肥ポンプユニット側に動力伝動系統図である。作業側出力軸69の動力は、その両端側にユニバーサルジョイント71,72が設けられた植付伝動軸73等によって、植付作業機4側に伝動され、植付部24を含む植付ユニット23を駆動させる。
【0057】
作業側出力軸69の動力は施肥ポンプ駆動装置(駆動装置)74Aにベルト伝動(伝動)される。第1駆動装置に伝動された動力はさらに施肥ポンプ駆動装置(駆動装置)74Bにベルト伝動(伝動)される。施肥ポンプ駆動装置74Aは、自身に入力された動力を変速して浅層施肥ポンプユニット34Aに伝動する浅層施肥ポンプ駆動装置である。浅層施肥ポンプ駆動装置74Aは、自身で変速あれる前、後又は途中の動力を上述した施肥ポンプ駆動装置74Bに伝動する。施肥ポンプ駆動装置74Bは、自身に入力された動力を変速して深層施肥ポンプユニット34Bに伝動する深層施肥ポンプ駆動装置である。
【0058】
浅層施肥ポンプユニット34Aには、複数の浅層施肥ノズル28A毎に個別で設けられ且つ対応する浅層施肥ノズル28Aに個別に肥料を圧送する複数の浅層施肥ポンプ(施肥ポンプ)76Aがユニット化して設けられている。浅層施肥ポンプユニット34A側に伝動された動力は、そこに設けられた全ての浅層施肥ポンプ76Aにベルト伝動(伝動)されて該浅層施肥ポンプ76Aを駆動させて各浅層施肥ノズル28Aに肥料を供給する。
【0059】
深層施肥ポンプユニット34Bには、複数の深層施肥ノズル28B毎に個別で設けられ且つ対応する深層施肥ノズル28Bに個別に肥料を圧送する複数の深層施肥ポンプ(施肥ポンプ)76Bがユニット化して設けられている。深層施肥ポンプユニット34B側に伝動された動力は、そこに設けられた全ての深層施肥ポンプ76Bにベルト伝動(伝動)され、各浅層施肥ポンプ76Aを駆動させて各深層施肥ノズル28Bに肥料を供給する。
【0060】
このように施肥ノズル28A,28Bによって施肥作業を行う施肥ポンプ76A,76Bは、HST53による無段階変速後の動力が伝動されるため、走行機体3の走行速度に合わせた速度で施肥ポンプ76A,76Bが駆動され、その駆動速度に対応した量の肥料が施肥ノズル28A,28Bから排出されるため、施肥する肥料の量を、走行速度に関わりなく、一定に保持することが容易になる。
【0061】
また、作業系の動力伝動経路中における植付クラッチよりも伝動下流部分(具体的には、プロペラシャフト66)から動力を取り出すため、植付作業機による植付作業が植付クラッチの切操作によって停止している状態では、施肥ポンプ76A,76Bの駆動も停止され、施肥作業も行われない状態になり、これら2つの作業の有無を機械的に連動させることが可能になる。
【0062】
さらに、2種類の施肥ポンプ76A,76B毎に異なる駆動装置74A,74Bを設けたので、圃場の浅層に施肥される肥料の量と、圃場の深層に施肥される肥料の量とを、異なる値に設定することが可能になり、施肥作業をよりきめ細かく管理することが可能になる。
【0063】
このようにして駆動される2つの施肥タンク76A,76Bに対して、供給ポンプ33は、図5に示す通り、供給ポンプ駆動装置(駆動装置)77によって駆動される。供給ポンプ駆動装置77は、伝動装置52から動力を取り出す取出機構78と、取出機構78から供給ポンプ33への動力伝動の有無を切り換える切換クラッチ79とを有している。
【0064】
取出機構78は、常時噛み合う一対のベベルギヤ81,82と、切換クラッチ79の入力軸83とを有している。
【0065】
一方のベベルギヤ81は、走行側伝動軸58と一体で回転するように、該走行側伝動軸58におけるミッションケース54aの外部に突出形成された一端部に装着固定されている。他方のベベルギヤ82は、入力軸83と一体で回転するように該入力軸83に装着固定されている。
【0066】
切換クラッチ79は、動力断続作動するメイン部分が収容されたケース79aと、ケース79aの内部から外部に突出し且つ回転可能に支持された前記入力軸83及び出力軸84と、ケース79aの内部から外部に突出し且つ回動可能に支持された切換軸86と、電動式のモータ(アクチュエータ)87と、を有している。
【0067】
切換クラッチ79は、切換操作軸86の一方向への回動操作によって、入力軸83から出力軸84に動力を伝動する状態(接続状態)に切り換えられ、切換軸86の他方向への回動操作によって、入力軸83から出力軸84への動力伝動が切断される状態(切断状態)に切り換えられるように構成されている。
【0068】
出力軸84の動力は、供給ポンプ33にベルト伝動(伝動)され、該供給ポンプ33を駆動する。すなわち、取出機構78は、走行変速機構56による変速前の動力を、走行側伝動軸58から取り出し、切換クラッチ79を介して供給ポンプ33に伝動するように構成されている。
【0069】
また、切換軸86には、それと一体で回動するセクタギヤ88が装着して固定されている。このセクタギヤ88は前記モータ87の出力軸87aに装着して固定された出力ギヤ89と常時噛み合う。すなわち、このモータ87は、供給ポンプ駆動装置77に設けられ且つ供給ポンプ33の駆動の有無を切り換えるように構成されている。
【0070】
HST53による切換によってエンジン6から走行前進用の動力が伝動されてくる場合、切換クラッチ79を接続状態に切り換え、供給ポンプ33を正転駆動させる。一方、HST53による切換によってエンジン6から走行後進用の動力が伝動されてくる場合、切換クラッチ79を接続状態に切り換え、供給ポンプ33が駆動停止させ、これによって供給ポンプ33の逆転駆動を防止する。
【0071】
また、上記構成によれば、エンジン6からの動力をトランスミッション54に伝動させないニュートラル状態にHST53を切り換えて走行機体3を走行停止させた場合、供給ポンプ33の駆動も停止される。これを避けるため、走行変速機構56を切断状態として走行機体3を走行停止させるとともに、HST53からは前進走行動力が出力されるようにして、走行停止中における供給ポンプ33の駆動を実行する。
【0072】
図7(a)はフロント操作部の平面図であり、(b)は操作パネルの平面図であり、(c)は主変速レバーの側面図である。フロント操作部11には、その中央側に配置され且つ走行機体3の前進又は後進走行時における向操操作を行うステアリングハンドル91と、ステアリングハンドル91の前方斜め下方に配置され且つシート9に着座したオペレータ側(後方側)に向かって各種の情報を表示する液晶モニタ(表示部)92と、ステアリングハンドル91の直下の左右一方寄りに配置され且つ各種の操作具がまとめて設置された操作パネル93と、ステアリングハンドル91の直下の左右他方寄りに配置され且つ上下に揺動操作可能に支持された操作レバー94と、ステアリングハンドル91よりも左右一方寄りに配置され且つ前後揺動操作可能に支持された副変速レバー(変速レバー)96と、ステアリングハンドル91よりも左右他方寄りに配置された主変速レバー(変速レバー)97と、が設けられている。
【0073】
主変速レバー97は、その揺動操作に連動してHST53のトラニオン軸が作動するように、該トラニオン軸と機械的又は電気的に連係されている。ちなみに、両者を機械的に連係させる場合、主変速レバー97とトラニオン軸とを連係機構によって機械的に連結させる。両者を電気的に連係させる場合、主変速レバー97の操作位置を一又は複数のポテンショメータによって検出し、その検出結果が入力され且つマイコンやRAMやROM等から構成された制御部98(図8参照)の出力側に接続されたモータ等によって、前記トラニオン軸の作動を制御する。
【0074】
この主変速レバー97を前後中立位置に揺動させる操作が、エンジン6からの動力をトランスミッション54に伝動させないニュートラル状態にHST53を切り換えるニュートラル操作になる。また、主変速レバー97を前後中立位置において左右一方に揺動させる操作が前進走行切換操作になる一方で、左右他方に揺動させる操作が後進走行切換操作になる。主変速レバー97を、前進走行切換操作した場合、前後中立位置から前方の範囲に揺動操作が可能になる一方で、後進走行切換操作した場合、前後中立位置から後方の範囲に揺動操作が可能になる。
【0075】
主変速レバー97を、前後中立位置からの前方に揺動操作した場合、前進走行動力がHST53からトランスミッション54に出力される一方で、前後中立位置からの後方に揺動操作した場合、後進走行動力がHST53からトランスミッション54に出力される。また、主変速レバー97の前後中立位置から前方への揺動操作量が多い程、HST53からトランスミッション54に出力される前進走行動力は、より高速になる一方で、主変速レバー97の前後中立位置から後方への揺動操作量が多い程、HST53からトランスミッション54に出力される後進走行動力は、より高速になる。
【0076】
この主変速レバー97の上端側に形成されたグリップ部97aの左右内側の側部には、上下一対の操作スイッチ99,101が設けられている。操作スイッチ99,101は、モーメンタリ式の押しボタンである。
【0077】
副変速レバー96は、走行変速機構56の切換部材62と連係機構等によって機械的に連結されている。副変速レバー96を前後中立位置に揺動させる操作が、走行変速機構56を切断状態に切り換えるニュートラル操作になる。副変速レバー96を前後一方の位置に揺動させる操作が走行変速機構56を低速状態に切り換える低速切換操作になり、前後の他方の位置に揺動させる操作が走行変速機構56を高速状態に切り換える高速切換操作になる。
【0078】
ちなみに、走行変速機構56を低速状態に切り換えて低速動力を前後進1,2に伝動する状態は、植付作業機6を作業位置に下降させ且つ植付クラッチを接続状態として植付作業を行いながら走行する作業走行状態を想定している。一方、走行変速機構56を高速状態に切り換えて高速動力を前後進1,2に伝動する状態は、植付作業機4を植付部が圃場と接触しない上方位置(非作業位置)まで上昇させ且つ植付クラッチを切断状態として植付作業機4を駆動停止させた状態で路上を走行する路上走行状態を想定している。
【0079】
操作レバー94は、図示しない付勢部材によって上下中立位置に弾性的に付勢されている。操作レバー94を付勢部材の弾性的な付勢力に抗して下方又は上方に揺動操作した場合でも、操作力が解除された場合(操作レバー94からオペレータが手を離した場合)、付勢部材の作用によって、操作レバー94が直ちに上下中立位置に復帰する。この操作レバー94の上下揺動操作によって、植付作業機4が非作業位置に上昇され且つ植付クラッチの切断状態への切換によって植付作業機4が植付駆動停止された状態である上昇状態と、植付作業機4が作業位置に下降され且つ植付クラッチの切断状態への切換によって植付作業機4が植付駆動停止された状態である下降状態と、植付作業機4が作業位置に下降され且つ植付クラッチの接続状態への切換によって植付作業機4が植付駆動された状態である植付状態と、との切換を行う。
【0080】
上昇状態時、操作レバー94の下方への揺動操作を1回行った場合、下降状態への切換が実行される。下降状態時、操作レバー94の下方への揺動操作を1回行った場合、植付状態への切換が実行される。植付状態時、操作レバー94の上方への揺動操作を1回行った場合、下降状態又は上昇状態の何れかへの切換が実行される。下降状態時、操作レバー94の上方への揺動操作を1回行った場合、上昇状態への切換が実行される。
【0081】
主変速レバー97のグリップ97aに設けられた上下の操作スイッチ99,101によっても、上昇状態と下降状態と植付状態との切換を行うことが可能である。具体的には、上昇状態時、下側の操作スイッチ101を1回押し操作した場合、下降状態への切換が実行される。下降状態時、下側の操作スイッチ101を1回押し操作した場合、植付状態への切換が実行される。植付状態時、上側の操作スイッチ99を1回押し操作した場合、下降状態又は上昇状態の何れかへの切換が実行される。下降状態時、上側の操作スイッチ99を1回押し操作した場合、上昇状態への切換が実行される。
【0082】
図8は、制御部の構成を示すブロック図である。制御部98には、マイコンのクロックス等を利用して経過時間を計測するタイマー98aが内蔵されている。
【0083】
制御部98の入力側には、植付作業機4の昇降高さを検出する昇降高さ検出手段102と、植付クラッチの断続を検出する植付クラッチ断続状態検出手段103と、走行機体3の後進走行状態又はその切換操作を検出する後進走行検出手段104と、走行機体3の走行状態を検出する走行状態検出手段106と、植付作業している状態であることを検出する植付作業検出手段107と、サブタンク14側の肥料の貯留量を検出する前記サブ側貯留量検出手段48,49と、メインタンク17側の肥料の貯留量を検出する前記メイン側貯留量検出手段51と、切換クラッチ79の断続を検出する切換クラッチ断続状態検出手段108と、操作スイッチ99,101と、操作レバー94を上下揺動させるレバー操作を検出するレバー操作検出手段109と、が接続されている。
【0084】
昇降高さ検出手段102は、本例では、植付作業機4の昇降高さを検出するポテンショメータから構成されている。
【0085】
植付クラッチ断続状態検出手段103は、例えば、植付クラッチの断続切換によって入切される検出スイッチから構成する。
【0086】
後進走行検出手段104は、本例では、主変速レバー97の後進走行切換操作によって入状態に切り換えられる一方で、主変速レバー97の前進走行切換操作や主変速レバー97を前後中立位置で左右中立位置に揺動させる操作等によって切状態に切り換えられる検出スイッチから構成されている。なお、回転センサ68によって後進走行検出手段を構成してもよい。この場合、回転センサ68は、回転数と共に回転方向も検出可能なように構成する必要がある。
【0087】
走行状態検出手段106は、本例では、主変速レバー97の前後揺動位置を検出するポテンショメータによって構成している。この他、回転センサ68を走行状態検出手段として利用することも可能である。また、これらの走行状態検出手段106を後進走行検出手段として利用することも可能である。
【0088】
植付作業検出手段107として、植付クラッチ断続状態検出手段103を用いることも可能であるが、本例では、走行変速機構56を低速状態に切り換える位置への切換部材62のスライド移動を検出するか、或いは、走行変速機構56を低速状態に切り換える操作位置への副変速レバー96の揺動操作を検出する検出スイッチから構成している。すなわち、本例の植付作業検出手段107によれば、作業走行状態の有無の検出によって、植付作業している状態であるか否かが把握される。
【0089】
サブ側貯留量検出手段として設けられた2種類のフロートセンサ48,49の内、合流タンク32側にフロートセンサ49を設ければ、サブタンク14側に設けたフロートセンサ48は上述した通り省略可能である。
【0090】
切換クラッチ断続状態検出手段108は、本例では、セクタギヤ88の作動範囲における両端側への回動を、その入切作動によって検出する一対の検出スイッチから構成されている。
【0091】
レバー操作検出手段109は、本例では、操作レバー94の上方位置への揺動操作を、その入切作動によって検出する検出スイッチと、下方位置への揺動操作を、その入切作動によって検出する検出スイッチとから構成されている。なお、操作レバー94の上下揺動位置を検出するポテンショメータによってレバー操作検出手段を構成してもよい。
【0092】
一方、制御部98の出力側には、昇降シリンダ19と、植付クラッチの断続状態を切り換える電動モータ等のアクチュエータ111と、切換クラッチ79の断続状態を切り換えるアクチュエータである前記モータ87と、前記液晶モニタ92と、ブザー音等を出力して報知する報知装置112と、が接続されている。
【0093】
以上のように構成される制御部98は、操作スイッチ99,101又はレバー操作検出手段109と、昇降高さ検出手段102と、植付クラッチ断続状態検出手段103とからの検出結果に基づいて、上述した内容を実現するように、昇降シリンダ19及びアクチュエータ111を制御する。
【0094】
また、制御部98は、後進走行検出手段104によって走行機体3の後進走行状態又はその切換操作を検出した場合、前記上昇状態に切り換えられるように、昇降シリンダ19及びアクチュエータ111を制御してもよい。
【0095】
さらに、制御部98は、各種の状態によって、モータ87に作動も制御し、肥料タンク13,17内に貯留された肥料の量を制御する。
【0096】
図9は、制御部による処理の手順を示すフロー図である。制御部98は処理が開始されると、ステップS1に進む。ステップS1では、操作スイッチ99,101又はレバー操作検出手段109による検出によって植付クラッチの切断状態への切換操作が確認されるか、或いは、植付クラッチ断続状態検出手段103によって植付クラッチの切断状態が確認された場合には、ステップS2に処理を進める。
【0097】
ステップS2では、切換クラッチ79の断続状態を切換クラッチ断続状態検出手段108の検出によって確認し、切換クラッチ79が接続状態であれば、ステップS3に処理を進める。ステップS3では、モータ87によって切換クラッチ79を切断状態に切り換え、供給ポンプ33の駆動を停止し、ステップS4に処理を進める。ステップS4では、供給ポンプ33によってサブタンク14からメインタンク14に肥料が供給されている最中であることを、液晶モニタ92及び報知装置112の一方又は両方を用いて報知する報知処理の実行を停止し、ステップS1の処理を戻す。
【0098】
ステップS2において、切換クラッチ79の切断状態が確認された場合、ステップS5に処理を進める。ステップS5では、切換クラッチ79の切断状態を維持し、ステップS1に処理を戻す。
【0099】
すなわち、ステップS1~ステップS5の処理によれば、植付作業機4が駆動停止されている場合、供給ポンプ33の駆動を停止し、サブタンク14からメインタンク14への肥料の供給を停止する。
【0100】
ステップS1において、植付クラッチの接続状態への切換操作が確認されるか、或いは、植付クラッチ断続状態検出手段103によって植付クラッチの接続状態が確認された場合には、ステップS6に処理を進めるステップS6では、後進走行検出手段104によって、走行機体3が後進走行する状態又は後進走行している最中であることが検出された場合、ステップS2に処理を進める。
【0101】
すなわち、ステップS6→ステップS2→・・・と続く処理によれば、走行機体3が後進走行する状態又は後進走行している最中であることが確認された場合、供給ポンプ33の駆動を停止し、サブタンク14からメインタンク14への肥料の供給を停止する。すなわち、後進走行動力が供給ポンプ33に伝動され、逆転駆動されることが防止される。
【0102】
ステップS6において、走行機体3が後進走行する状態又は後進走行している最中であることが確認されなかった場合、ステップS7に処理を進める。ステップS7では、走行状態検出手段106又は植付作業検出手段107等による検出結果によって作業走行状態であるか否かの確認を行い、作業走行中(前進走行中)であることが確認された場合、ステップS8に処理を進める。
【0103】
ステップS8では、供給ポンプ33の駆動の有無の制御するモードを第2モードに切り替え、ステップS9に処理を進める。
【0104】
ステップS9では、サブ側貯留検出手段48,49による検出によって、サブタンク14の内部側の肥料の貯留量(本例では、合流タンク32の内部に貯留された肥料の量)が、予め定めた所定の量である供給可能量よりも多いことが確認された場合、ステップS10に処理を進める。ちなみに、供給可能量は、サブタンク14からメインタンク17への肥料の供給ができなくなるか、或いは殆どできなくなる値に設定され、本例では、サブタンク14又は合流タンク32の内部に肥料が貯留されていない量(空状態)又は殆ど貯留されていない量(略空状態)に設定されている。
【0105】
ステップS10では、メイン側貯留検出手段51による検出によって、メインタンク17の内部側の肥料の貯留量(本例では、メインタンク17自体の内部の肥料の貯留量)が、予め定めた所定の量である必要最大量(メイン側第2第1貯留量)に達していないことが確認された場合、ステップS11に処理を進める。ちなみに、必要最大量は、メインタンク17に肥料をそれ以上供給することができない量か、或いはメインタンク17に肥料をそれ以上供給することが無意味な量に設定され、本例では、メインタンク17が満タン又は略満タンになる量に設定されている。
【0106】
ステップS11では、切換クラッチ断続状態検出手段108による検出によって、切換クラッチ79の断続状態の確認し、切換クラッチ79が切断状態であれば、ステップS12に処理を進める。ステップS12では、メイン側貯留検出手段51による検出によって、メインタンク17の内部側の肥料の貯留量が、予め定めた所定の量である必要最低量(メイン側第2貯留量)以下に減っていることが確認された場合、ステップS13に処理を進める。ちなみに、必要最低量は、必要最大量よりも少ない量であって且つメインタンク17の内部に肥料を供給する必要性が高い量に設定され、本例では、メインタンク17が空又は略空になる量に設定されている。
【0107】
ステップS13では、モータ87によって切換クラッチ79を接続状態に切り換え、サブタンク14からメインタンク17への肥料の供給(補給)を開始し、ステップS14に処理を進める。ステップS14では、報知処理の実行を開始し、ステップS1に処理を戻す。
【0108】
ステップS11において、切換クラッチ79の接続状態が確認された場合、ステップS15に処理を進める。ステップS15では、切換クラッチ79を接続状態で維持し、ステップS1に処理を戻す。ステップS12において、メインタンク17の内部側の肥料の貯留量が必要最低量よりは多いことが確認された場合、ステップS16に処理を進める。ステップS16では、切換クラッチ79を切断状態で維持し、ステップS1に処理を戻す。
【0109】
ステップS9において、サブタンク14の内部側の肥料の貯留量が供給可能量以下であることが確認された場合、ステップS2に処理を進め、メインタンク17への肥料の供給を停止する。ステップS10において、メインタンク17の内部側の肥料の貯留量が必要最大量に達していることが確認された場合、ステップS2に処理を進め、メインタンク17への肥料の供給を停止する。
【0110】
すなわち、第2モードへの切替時、サブタンク14の内部に貯留された肥料の量が供給可能量よりも多く且つメインタンク17の内部に貯留された肥料の量が必要最低量以下である状態(補給必要状態)である場合、ステップS1→ステップS6→ステップS7→ステップS8→ステップS9→ステップS10→ステップS11→ステップS12→ステップS13→ステップS14と処理が進み、供給ポンプ33の駆動が開始され且つ報知処理の実行が開始される。
【0111】
そして、第2モードへの切替時、一度、サブタンク14からメインタンク17への肥料供給が開始されると、メインタンク17の内部に必要最大量の肥料が貯留されるまでの間、ステップS1→ステップS6→ステップS7→ステップS8→ステップS9→ステップS10→ステップS11→ステップS15→ステップS1→・・・の処理が繰り返される。
【0112】
メインタンク17の内部に貯留された肥料の量が必要最大量に達した場合、ステップS1→ステップS6→ステップS7→ステップS8→ステップS9→ステップS10→ステップS2と処理が進み、供給ポンプ33の駆動が停止され、サブタンク14からメインタンク17への肥料供給が停止される。また、メインタンク17の内部に貯留された肥料の量が必要最大量に達する前に、サブタンク14の内部に貯留された肥料の量が供給可能量以下に減った場合も、ステップS1→ステップS6→ステップS7→ステップS8→ステップS9→ステップS2と処理が進み、供給ポンプ33の駆動が停止され、サブタンク14からメインタンク17への肥料供給が停止される。
【0113】
ステップS7において、ステップS7では、走行停止している状態が確認された場合、ステップS17に処理を進める。ステップS17では、供給ポンプ33の駆動の有無の制御するモードを第1モードに切り替え、ステップS18に処理を進める。ちなみに、制御部98は、第2モードから第1モードへの切替を確認した場合、タイマー98aよる経過時間のカウントを0から開始する。
【0114】
ステップS18では、サブ側貯留検出手段48,49による検出によって、サブタンク14の内部側の肥料の貯留量(本例では、合流タンク32の内部に貯留された肥料の量)が、供給可能量よりも多いことが確認された場合、ステップS19に処理を進める。
【0115】
ステップS19では、メイン側貯留検出手段51による検出によって、メインタンク17の内部側の肥料の貯留量(本例では、メインタンク17自体の内部の肥料の貯留量)が、予め定めた所定の量である必要最大量に達していないことが確認された場合、ステップS20に処理を進める。
【0116】
ステップS20では、切換クラッチ断続状態検出手段108による検出によって、切換クラッチ79の断続状態の確認し、切換クラッチ79が切断状態であれば、ステップS21に処理を進める。ステップS21では、第2モードから第1モードへの切替から、予め定めた所定の時間である設定時間が経過しているか否かをタイマー98aによって確認し、経過していれば、ステップS22に処理を進める。ちなみに、この設定時間は、走行機体3を前進走行停止させ、走行している間の影響が無くなるか、或いは、殆ど無くなることが想定される時間以上に設定される。
【0117】
ステップS22では、モータ87によって切換クラッチ79を接続状態に切り換え、サブタンク14からメインタンク17への肥料の供給(補給)を開始し、ステップS23に処理を進める。ステップS23では、報知処理の実行を開始し、ステップS1に処理を戻す。
【0118】
ステップS20において、切換クラッチ79の接続状態が確認された場合、ステップS24に処理を進める。ステップS24では、切換クラッチ79を接続状態で維持し、ステップS1に処理を戻す。ステップS21において、第2モードから第1モードへの切替から設定時間が経過していることが確認された場合、ステップS25に進む。ステップS24では切換クラッチ79を断続状態で維持し、ステップS1に処理を戻す。
【0119】
ステップS18において、サブタンク14の内部側の肥料の貯留量が供給可能量以下であることが確認された場合、ステップS2に処理を進め、メインタンク17への肥料の供給を停止する。ステップS19において、メインタンク17の内部側の肥料の貯留量が必要最大量に達していることが確認された場合、ステップS2に処理を進め、メインタンク17への肥料の供給を停止する。
【0120】
すなわち、第1モードへの切替時、第2モードから第1モードへの切替から設定時間が経過しているまでの間は、ステップS1→ステップS6→ステップS7→ステップS17→ステップS18→ステップS19→ステップS20→ステップS21→ステップS25→ステップS1→・・・の処理が繰り返され、走行している際の影響が排除される。
【0121】
そして、第1モードへの切替時、第2モードから第1モードへの切替から設定時間が経過した後であって且つサブタンク14の内部に貯留された肥料の量が供給可能量よりも多い場合、メインタンク17の内部に貯留された肥料の量が必要最大量から少しでも減ると、ステップS1→ステップS6→ステップS7→ステップS17→ステップS18→ステップS19→ステップS20→ステップS21→ステップS22→ステップS23と処理が進み、供給ポンプ33の駆動が開始され且つ報知処理の実行が開始される。
【0122】
続いて、メインタンク17の内部に必要最大量の肥料が貯留されるまでの間、ステップS1→ステップS6→ステップS7→ステップS17→ステップS9→ステップS18→ステップS19→ステップS20→ステップS21→ステップS1→・・・の処理が繰り返される。
【0123】
最後に、メインタンク17の内部に貯留された肥料の量が必要最大量に達した場合、ステップS1→ステップS6→ステップS7→ステップS17→ステップS18→ステップS19→ステップS2と処理が進み、供給ポンプ33の駆動が停止され、サブタンク14からメインタンク17への肥料供給が停止される。
【0124】
ただし、メインタンク17の内部に貯留された肥料の量が必要最大量に達する前に、サブタンク14の内部に貯留された肥料の量が供給可能量以下に減った場合も、ステップS1→ステップS6→ステップS7→ステップS17→ステップS18→ステップS2と処理が進み、供給ポンプ33の駆動が停止され、サブタンク14からメインタンク17への肥料供給が停止される。
【0125】
以上のように構成される移植機によれば、サブタンク14からメインタンク17への肥料の供給が、適切なタイミングで、適切な状況を維持しながら、自動的に実行されるため、肥料の補給作業の手間が大幅に軽減され、利便性が高い。また、肥料タンク14,17を走行機体3の前側と後側に配置しているため、前後のバランスが良好に保持される。
【0126】
なお、ステップS7において、作業走行状態の有無だけでなく、路上走行状態の有無を確認し、走行機体3が走行している状態が確認された場合にはステップS8に進む一方で、走行機体3が走行停止している状態が確認された場合にはステップS17に進むようにしてもよい。この場合、ステップS1の処理を省略し、ステップS2から処理が開始されるように処理手順を設定する。
【0127】
また、図8に仮想線で示す通り、制御部98の出力側に供給ポンプ33を駆動させる電動式のモータ113を接続してもよい。このモータ113によって、走行機体3の走行状態に関係無く、供給ポンプ33を逆転駆動させ、メインタンク17からサブタンク13への肥料の供給を行うことも可能である。
【0128】
また、制御部98によって作動を制御可能なソレノイドやモータ等のアクチュエータによって、各開閉弁44,46,47の開閉を制御してもよい。
【0129】
また、上述した例では、前後の肥料タンク14,17に対して1つのドレインパイプ42を設けているが、前側の肥料タンク14,14のドレインと、後側の肥料タンク17,17のドレインとを個別に設けてもよい。
【0130】
さらに、上述した例では、モータ87によって切換クラッチ76は自動的に断続させる例につき説明したが、その切換軸86と一体で揺動する操作アーム等を設け、この切換クラッチ76を作業が手動で断続させることが可能にしてもよい。
【0131】
次に、図10に基づき、移植機の他の実施形態について上述の形態と異なる点を説明する。
【0132】
メインタンク側パイプ38における浅層用メインタンク17Aと分岐部38aとの間に、浅層施肥ポンプユニット34Aが設けられ、メインタンク側パイプ38における深層用メインタンク17Bと分岐部38aとの間に、深層施肥ポンプユニット34Bが設けられている。開閉バルブ47を閉状態に切り換えることによって、左右のメインタンク17,17の一方を浅層施肥専用に用い、且つ、他方を深層施肥専用に用いることが可能になる。一方、開閉バルブ47を開状態に切り換えることによって、左右の2つのメインタンク17,17を、まとめて浅層施肥専用に用いることうや、まとめて深層施肥専用に用いることが可能になる。
【符号の説明】
【0133】
1 前輪(走行部)
2 後輪(走行部)
3 走行機体
4 植付作業機
6 エンジン(動力源)
14 サブタンク(肥料タンク)
17 メインタンク(肥料タンク)
28A 施肥ノズル(施肥部)
28B 施肥ノズル(施肥部)
33 供給ポンプ
48 フロートセンサ(サブ側貯留量検出手段)
49 フロートセンサ(サブ側貯留量検出手段)
51 フロートセンサ(メイン側貯留量検出手段)
52 伝動装置
77 供給ポンプ駆動装置(駆動装置)
79 切換クラッチ
87 モータ(アクチュエータ)
98 制御部
104 後進走行検出手段
106 走行状態検出手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10