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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003456
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】洗浄装置及び洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   B08B 3/04 20060101AFI20240105BHJP
   B08B 5/00 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
B08B3/04 Z
B08B5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102617
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】春山 晃寿
(72)【発明者】
【氏名】大栗 延章
【テーマコード(参考)】
3B116
3B201
【Fターム(参考)】
3B116AA46
3B116AA47
3B116AB53
3B116BB22
3B116BB62
3B116BB88
3B116BC01
3B116CD22
3B201AA46
3B201AA47
3B201AB53
3B201BB22
3B201BB62
3B201BB88
3B201BB92
3B201BB98
3B201BC01
3B201CD22
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高い洗浄効果を有する洗浄装置を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様による洗浄装置1は、内面に第1光触媒層21が設けられた筐体2と、前記筐体2の外側に配置された光源4と、前記第1光触媒層21に向けて流体を供給し、前記第1光触媒層21の汚れ付着面を洗浄する洗浄部5と、を備え、前記筐体2は、少なくとも一部に、前記光源4から到来する光を前記汚れ付着面S2の背面に透過させる光透過部24を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面に第1光触媒層が設けられた筐体と、
前記筐体の外側に配置された光源と、
前記第1光触媒層に向けて流体を供給し、前記第1光触媒層の汚れ付着面を洗浄する洗浄部と、
を備え、
前記筐体は、少なくとも一部に、前記光源から到来する光を前記汚れ付着面の背面に透過させる光透過部を有する、洗浄装置。
【請求項2】
前記洗浄部は、前記第1光触媒層に向けて前記光源の光が照射された後、前記第1光触媒層に向けて前記流体を供給する、請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記光源は、前記第1光触媒層に向けて前記流体が供給された後、前記第1光触媒層に向けて前記光源の光を照射する、請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記光源は、前記筐体の底部と対向して配置されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記筐体の外周面は、前記光透過部以外の部分が、反射部材で被覆されている、請求項4に記載の洗浄装置。
【請求項6】
前記洗浄部から供給する前記流体は、水である、請求項5に記載の洗浄装置。
【請求項7】
前記筐体は、前記洗浄部から供給された水を前記筐体の外部に流出させる流出部を有する、請求項6に記載の洗浄装置。
【請求項8】
前記流出部から流出した水を貯留する貯水容器を備え、
前記貯水容器の内面に、第2光触媒層が設けられ、
前記貯水容器は、前記筐体の外側において、前記光源と対向して配置され、
前記光源は、前記第2光触媒層に向けて光を照射し、
前記貯水容器に貯留された水を前記洗浄部に送り、循環させる、請求項7に記載の洗浄装置。
【請求項9】
前記洗浄部から供給する前記流体は、気体である、請求項5に記載の洗浄装置。
【請求項10】
光源から到来する光を、筐体の内面に設けられた第1光触媒層の汚れ付着面の背面に透過させた後、前記第1光触媒層に向けて流体を供給し、前記第1光触媒層の前記汚れ付着面を洗浄する、洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄装置及び洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な工業製品において、光触媒反応の酸化作用による自動洗浄構造が採用され、メンテナンスの省力化や費用削減が図られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、シンクから排水が流入する内面側に光触媒のコーティング層が施されている排水筒部と、光触媒を活性化させるために排水筒部の外面側周囲に配置されているLED光源と、を備えたシンクの排水部が開示されている。複数のLED光源は、所定の間隔を開けて排水筒部の周囲に円周状に配置されており、排水筒部の内部により近い位置から、LED光源で光を照射することができ、加えて光透過ガラスで形成された下筒の周壁の内部において光を反射、拡散させて、排水筒部の光触媒のコーティング層を均一、かつ効果的に照射している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-185308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のシンクの排水部のように、光触媒を活性化させるための励起光を汚れの付着面側から照射する場合、励起光が光触媒層まで導光しないことにより、光触媒反応が十分に進まず、汚れが十分に分解されず残存する可能性がある。特に、汚れの付着量が多い程、励起光の透過率が低くなり、汚れが分解されず残存する可能性が高くなる。
【0006】
上記の点に鑑みて、本発明の一態様は、高い洗浄効果を有する洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様による洗浄装置は、内面に第1光触媒層が設けられた筐体と、前記筐体の外側に配置された光源と、前記第1光触媒層に向けて流体を供給し、前記第1光触媒層の汚れ付着面を洗浄する洗浄部と、を備え、前記筐体は、少なくとも一部に、前記光源から到来する光を前記汚れ付着面の背面に透過させる光透過部を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、高い洗浄効果を有する洗浄装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態による洗浄装置の断面の模式図である。
図2A】一実施形態による洗浄方法を説明するための図である(その1)。
図2B】一実施形態による洗浄方法を説明するための図である(その2)。
図2C】一実施形態による洗浄方法を説明するための図である(その3)。
図3】ラテマシンノズルの斜視図である。
図4】ラテマシンノズルの平面図である。
図5図4のI-I断面図である。
図6】ラテマシンノズルの底面図である。
図7】他の実施形態による洗浄装置の断面の模式図である。
図8】光源の消費電力量と付着油脂除去率の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。なお、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の符号を付して、重複する説明は省略する場合がある。
【0011】
本発明の一実施形態による洗浄装置について説明する。図1は、一実施形態による洗浄装置1の断面の模式図である。
【0012】
洗浄装置1は、被洗浄対象である筐体2に付着した汚れDを洗浄、除去する装置である。汚れDは、例えば、油脂等の有機物であってよく、具体的には、飲料、汚水等に含まれる有機物が挙げられる。
【0013】
図1に示すように、本発明の一実施形態による洗浄装置1は、内面に第1光触媒層21が設けられた筐体2と、筐体2の外側に配置された光源4と、第1光触媒層21に向けて流体を供給し、第1光触媒層21の汚れ付着面S2を洗浄する洗浄部5とを備える。また、筐体2は、少なくとも一部に、光源4から到来する光を汚れ付着面S2の背面S3に透過させる光透過部24を有する。なお、汚れ付着面S2とは、第1光触媒層21における汚れDの付着が想定される面を意味する。換言すると、汚れ付着面S2とは、汚れDが付着していない第1光触媒層21において、筐体2の内部空間に露出している面を意味する。
【0014】
この構成により、第1光触媒層21における汚れ付着面S2の背面S3に光源4の光が照射され、汚れDと第1光触媒層21の界面において光触媒反応の酸化作用を生じさせ、汚れDの付着力を低下させることができる。そして、洗浄部5から供給された流体の圧力によって、容易に汚れDを除去することができる。なお、界面における光触媒反応は、界面の面積に依存し、界面より上側の汚れDの付着量に依存しない。よって、洗浄装置1は、高い洗浄効果を発揮することができる。また、洗浄装置1は、例えば、流水を伴うシンクの排水部、屋外で使用される照明装置等、適用分野を限定せず、適用することができる。
【0015】
筐体2は、上部に開口20を有し、側面である周壁22と、底部23とを有していてよい。筐体2は、内部に、液体又は固体を収容可能である。筐体2は、底部23に傾斜部25を有していてもよい。これにより、洗浄部5から供給された流体の圧力によって、汚れDが底部23の第1光触媒層21上を流れ易くなり、汚れDを底部23の一部に集めることができる。よって、洗浄装置1は、汚れDをより容易に除去することができる。
【0016】
洗浄装置1は、筐体2の開口20を覆う蓋体3を備えていてもよい。筐体2の形状は、特に限定されず、適用される製品に応じて任意の形状とすることができる。
【0017】
筐体2の光透過部24は、傾斜部25に設けられていてよい。これにより、汚れDと第1光触媒層21の界面において、付着力が低下した汚れDが、洗浄部5から供給された流体の圧力によって、底部23の第1光触媒層21上を流れ、底部23の一部に集めることができる。よって、洗浄装置1は、より高い洗浄効果を発揮することができる。
【0018】
筐体2の光透過部24は、筐体2の周壁22及び底部23の全てに設けられていてもよい。この構成により、光源4を筐体2の外周面に対向する、いずれの位置に配置しても、第1光触媒層21に対してより近い位置から光源4の光を照射することができるため、汚れDと第1光触媒層21の界面において、汚れDの付着力をより低下させることができる。そして、付着力が低下した汚れDが、洗浄部5から供給された流体の圧力によって、底部23を流れ、底部23の一部に集めることができる。よって、洗浄装置1は、より高い洗浄効果を発揮することができる。
【0019】
光透過部24を構成する材料は、光源4から照射された光を透過する導光材料であればよく、例えば、ホウケイ酸ガラス等の耐熱ガラス、ソーダガラス等を用いることができる。例えば、光触媒として二酸化チタン(TiO)を用いる場合は、二酸化チタンが400nm以下の波長に対して良好な吸収を示すことから、光源4は、励起波長365nmのUV-A(A領域紫外線、又は長波長紫外線) LED(Light Emitting Diode)が好ましい。そのため、光触媒として二酸化チタンを用いる場合、筐体2を構成する材料は、波長365nmの光に対して良好な透過率を示すホウケイ酸ガラスが好ましい。また、筐体2を構成する材料は、光透過部24を構成する材料と同じ材料を含んでいてよい。
【0020】
第1光触媒層21を構成する光触媒は、汚れDに応じて選択することができ、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、バナジン酸ビスマス(BiVO)等が挙げられる。第1光触媒層21を構成する光触媒が、二酸化チタンである場合、酸化反応及び分解反応により、空気洗浄、浄水、脱臭、除菌、防汚等の作用が得られる。
【0021】
筐体2は、洗浄部5から供給された水を流入させる流入部11と、洗浄部5から供給された水を筐体2の外部に流出させる流出部12とを有していてよい。洗浄装置1が蓋体3を備える場合、流入部11は、蓋体3に設けられていてもよい。流出部12は、筐体2の底部23に設けられていてよい。筐体2が傾斜部25を有する場合、流出部12は、筐体2の底部23のうち、傾斜部25以外の水平部分に設けられていてよい。
【0022】
光源4から照射された光は、筐体2の外周面S1から光透過部24に入射し、第1光触媒層21における汚れ付着面S2の背面S3まで透過する。光源4としては、光触媒に応じて任意の光源を選択することができ、例えば、UVライト(ブラックライト)、キセノンランプ、エキシマーランプ等が挙げられる。UVライトとしては、具体的には、UV-A LEDが挙げられる。例えば、光触媒として二酸化チタンを用いる場合は、二酸化チタンが400nm以下の波長に対して良好な吸収を示すことから、光源4としては、励起波長365nmのUV-A LEDが好ましい。
【0023】
光源4は、筐体2の外側において、底部23と対向して配置されることが好ましい。これにより、汚れDが付着しやすい筐体2の底部23に位置する第1光触媒層21の背面S3に光を照射することができる。よって、底部23に付着した汚れDと第1光触媒層21の界面において光触媒反応の酸化作用をより生じさせ、底部23に付着した汚れDの付着力をより低下させることができる。そして、洗浄部5から供給された流体の圧力によって、容易に汚れDを除去することができる。よって、洗浄装置1は、より高い洗浄効果を発揮することができる。
【0024】
光源4は、筐体2の外側において、周壁と対向して配置されていてもよい。これにより、第1光触媒層21の側面S4に光を照射することができる。よって、汚れDと第1光触媒層21の界面において光触媒反応の酸化作用を生じさせ、底部23に付着した汚れDの付着力を低下させることができる。そして、洗浄部5から供給された流体の圧力によって、容易に汚れDを除去することができる。よって、洗浄装置1は、高い洗浄効果を発揮することができる。
【0025】
筐体2の光透過部24が、傾斜部25に設けられている場合、光源4は、筐体2の傾斜部25と対向して設けられていてよい。これにより、第1光触媒層21に対してより近い位置から光源4の光を照射することができるため、汚れDと第1光触媒層21の界面において、汚れDの付着力をより低下させることができ、付着力が低下した汚れDが、洗浄部5から供給された流体の圧力によって、底部23を流れ、底部23の一部に集めることができる。よって、洗浄装置1は、高い洗浄効果を発揮することができる。
【0026】
光源4は、筐体2と別の部材に設けられていてもよく、筐体2に設けられていてもよい。光源4の個数は、特に制限はなく、消費電力及び光源4の放熱量から決定することができる。光源4は、例えば、複数の発光素子(例えば、LED素子)が、基板の表面に設けられていてよい。光源4は、基板の表面と直交する方向に光軸が揃えられた状態で配列された複数の発光素子を含んでもよい。
【0027】
洗浄部5から供給する流体は、液体であってもよく、気体であってもよい。洗浄部5から供給する流体の圧力は、0.05MP~0.10MPが好ましい。洗浄部5から供給する流体は、水であることが好ましい。洗浄部5から供給する流体が、水である場合、水の温度は、高い方が好ましく、例えば、25℃~90℃とすることができる。
【0028】
洗浄部5から供給する流体が、水である場合、洗浄部5は、ポンプ51と、ポンプ51及び水道を接続する配管52と、ポンプ51及び筐体2の流入部11を接続する配管53とを有していてよい。洗浄部5から供給する流体が、気体である場合、洗浄部5は、ブロワと、ブロワと流入部11とを接続する配管とを有していてよい。
【0029】
洗浄部5は、第1光触媒層21に向けて光源4の光が照射された後、第1光触媒層21に向けて流体を供給してよい。これにより、汚れDと第1光触媒層21の界面において光触媒反応の酸化作用を生じさせ、汚れDの付着力を低下させた状態で、洗浄部5から供給された流体の圧力によって、汚れDを容易に除去することができる。よって、洗浄装置1は、高い洗浄効果を発揮することができる。
【0030】
第1光触媒層21に向けて供給される流体が水である場合、光源4は、第1光触媒層21に向けて水を供給し、筐体2内を水で満たした後、第1光触媒層21に向けて光源4の光を照射し、その後に、筐体2から水を流出させてもよい。これにより、水中において、汚れDと第1光触媒層21の界面において光触媒反応の酸化作用を生じさせ、汚れDの付着力を低下させることができる。そして、筐体2から水を流出させる時の水の流れと共に、汚れDを容易に除去することができる。よって、洗浄装置1は、高い洗浄効果を発揮することができる。
【0031】
筐体2の外周面S1は、光透過部24以外の部分が、反射部材6で被覆されていてよい。具体的には、筐体2の光透過部24以外の周壁22及び底部23における外周面S1が、反射部材6で被覆されていてよい。これにより、光源4から光透過部24に入射した光が、筐体2の外部に漏れることを抑制し、他の部品の紫外線劣化を抑制することができる。また、光源4から光透過部24に入射した光のうち、筐体2の底部23又は周壁22の内部で散乱した光が、反射部材6によって、第1光触媒層21の汚れ付着面S2の背面S3に向かって反射し、第1光触媒層21の背面S3への光の照射効率を向上させることができる。よって、汚れDと第1光触媒層21の界面において光触媒反応の酸化作用が促進され、汚れDの付着力をより低下させることができる。そして、洗浄部5から供給された流体の圧力によって、より容易に汚れDを除去することができる。以上により、洗浄装置1は、より高い洗浄効果を発揮することができる。
【0032】
反射部材6は、筐体2と別体であってもよく、筐体2の外周面S1と対向する位置に設けられていてもよい。
【0033】
反射部材6を構成する材料としては、特に限定されないが、アルミニウム等の金属、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。これらの中でも、反射部材6を構成する材料は、金属であることが好ましい。反射部材6を構成する材料が金属であることにより、光源4から照射される光が短波長(例えば、280nm以下)である場合においても、劣化することを抑制することができる。反射部材6は、鏡面であってもよく、散乱面であってもよい。
【0034】
洗浄部5の配管52、53は、内周面に光触媒層を有し、洗浄装置1は、配管52、53の外周面と対向して配置され、光触媒層に向けて光を照射する光源を備えていてもよい。また、配管52、53は、少なくとも一部に、光源の光を透過させる光透過部を有していてもよい。そして、光透過部は、光源の光を配管52、53の外周面から、光触媒層における汚れ付着面の背面に透過させてもよい。この構成により、配管52、53の内周面に汚れが付着した場合においても、汚れを分解、除去することができる。よって、配管52、53又は配管52、53を流れる流体を清浄に保つことができるため、洗浄装置1は、より高い洗浄効果を発揮することができる。なお、配管52、53における汚れ付着面とは、光触媒層において、配管52、53の内部を流れる流体によって、汚れの付着が想定される面を意味する。換言すると、配管52、53における汚れ付着面とは、光触媒層において配管52、53の内側の空間に露出している面を意味する。
【0035】
洗浄装置1は、光源4の照射時間又は照射タイミングを制御する制御部8を備える。制御部8は、予め定めた照射時間だけ光源4を発光させてもよい。具体的には、予め、使用する筐体2の底面積、光源4の消費電力量、及び汚れDの種類と、汚れDの除去率との相関を把握しておく。そして、汚れDの除去率が100%となる、光源4の照射時間を算出し、算出された光源4の照射時間を予め制御部8に設定する。これにより、洗浄装置1を使用する際、予め定めた照射時間だけ光源4を発光させることができる。よって、筐体2の底部23に付着した汚れを完全に除去することができ、洗浄装置1は、より高い洗浄効果を発揮することができる。また、光源4の照射時間を必要最小限にすることができ、洗浄装置1の運転コストを削減することができる。
【0036】
さらに、制御部8は、予め定めた周期で光源4を発光させてもよい。具体的には、24時間、2日等、洗浄を行う周期に応じて、光源4を発光させる周期を予め制御部8に設定する。これにより、洗浄装置1を使用する際、自動で、予め定めた周期で、予め定めた照射時間だけ光源4を発光させることができる。よって、メンテナンスを省力化すると共に、洗浄装置1は、より高い洗浄効果を発揮することができる。また、光源4の照射時間を必要最小限にすることができ、洗浄装置1の運転コストを削減することができる。
【0037】
制御部8は、汚れが付着した場所に最も近い距離に配置されている光源4を発光させてもよい。これにより、光源4の消費電力量を必要最小限にすることができ、運転コストを削減することができる。
【0038】
次に、本発明の一実施形態による洗浄方法について説明する。
【0039】
図2Aから図2Cは、一実施形態による洗浄方法を説明するための図である。図2Aは、筐体2の内面に汚れDが付着した状態を示す。一実施形態による洗浄方法は、図2Bに示すように、光源4から到来する光Lを、筐体2の内面に設けられた第1光触媒層21の汚れ付着面S2の背面S3に透過させた(照射工程)後、図2Cに示すように、第1光触媒層21に向けて流体を供給し、第1光触媒層21の汚れ付着面S2を洗浄する(除去工程)。この方法により、洗浄装置1は、高い洗浄効果を発揮することができる。この方法により、第1光触媒層21における汚れ付着面S2の背面S3に光源4の光が照射され、汚れDと第1光触媒層21の界面において光触媒反応の酸化作用を生じさせ、汚れDの付着力を低下させることができる。そして、洗浄部5から供給された流体の圧力によって、容易に汚れDを除去することができる。なお、界面における光触媒反応は、界面の面積に依存し、界面より上側の汚れDの付着量に依存しない。よって、洗浄装置1は、高い洗浄効果を発揮することができる。
【0040】
第1光触媒層21に向けて供給される流体が水である場合、他の実施形態による洗浄方法は、筐体2の内面に設けられた第1光触媒層21に向けて水を供給し、筐体2内を水で満たした後、第1光触媒層21に向けて光源4の光を照射し、光源4から到来する光を、筐体2の内面に設けられた第1光触媒層21の汚れ付着面S2の背面S3に透過させ、その後に、筐体2から水を流出させる。これにより、水中で、汚れDと第1光触媒層21の界面において光触媒反応の酸化作用を生じさせ、汚れDの付着力を低下させることができる。そして、筐体2から水を流出させる時の水の流れと共に、汚れDを容易に除去することができる。よって、洗浄装置1は、高い洗浄効果を発揮することができる。
【0041】
次に、本発明の他の実施形態による筐体102について説明する。図3は、ラテマシンノズルの斜視図である。図4は、ラテマシンノズルの平面図である。図5は、図4のI-I断面図である。図6は、ラテマシンノズルの底面図である。筐体2は、ラテマシンノズルであってもよい。ラテマシンノズルは、飲料容器に対して飲料を提供する飲料ディスペンサに適用され、例えば、コーヒーや牛乳等の飲料を吐出口から吐出して供給するための部材である。
【0042】
図3から図5に示すように、筐体102は、上部に開口120を有し、側面である周壁122と、底部123とを有する。また、筐体102は、第1の飲料成分を収容する第1収容部127と、第2の飲料成分を収容する第2収容部128と、第1収容部127と第2収容部128とを仕切る仕切板126とを有していてよい。筐体102は、内面に第1光触媒層121が設けられている。第1収容部127及び第2収容部128は、それぞれ、第1の飲料成分又は第2の飲料成分を流出させる吐出口129を有していてよい。筐体2の外側には、光源140が配置されている。
【0043】
洗浄装置1において、筐体2の代わりに筐体102を適用し、光源4の代わりに光源140を適用した場合においても、第1光触媒層121における汚れ付着面S102の背面S103に光源140の光が照射され、汚れDと第1光触媒層121の界面において光触媒反応の酸化作用を生じさせ、汚れDの付着力を低下させることができる。そして、洗浄部5から供給された流体の圧力によって、容易に汚れDを除去することができる。なお、界面における光触媒反応は、界面の面積に依存し、界面より上側の汚れDの付着量に依存しない。よって、洗浄装置1は、高い洗浄効果を発揮することができる。
【0044】
筐体102の平面視形状は、図4に示すように、一方側に向かって先細りになっていてよい。筐体102は、図5に示すように、底部123に傾斜部125を有し、傾斜部125に光透過部124を有する。
【0045】
筐体102の外周面S101は、光透過部124以外の部分が、反射部材160で被覆されていてよい。具体的には、筐体102の周壁122における外周面S101が、反射部材160で被覆されていてよい。
【0046】
光源140は、筐体102の外側において、底部123と対向して配置されている。光源140と筐体2の底部123との最短距離は、例えば、20mmとすることができる。
【0047】
図5及び6において、光源140は、基板142と、4個の発光素子141とを有する。図6では、基板142は省略している。4個の発光素子141は、筐体102の第1方向の長さL1を3等分する点、及び、筐体102の第2方向の長さL2を3等分する点に配置されている。なお、第2方向は、第1方向に直交する方向である。この構成により、光源140から光透過部124に入射した光を、第1光触媒層121の汚れ付着面S102の背面103に均一に照射することができる。よって、筐体102を搭載する洗浄装置は、高い洗浄効果を発揮することができる。
【0048】
筐体102の外形の寸法は、例えば、第1方向の長さL1が110mm、第2方向の長さL2が100mmとすることができる。
【0049】
他の実施形態において、洗浄装置1に、以上の構成を有する筐体102及び光源140を適用した場合においても、一実施形態の洗浄装置1と同様の効果を奏する。
【0050】
図7は、他の実施形態による洗浄装置1の断面の模式図である。他の実施形態による洗浄装置1は、流出部12から流出した水を貯留する貯水容器7を備え、貯水容器7の内面に、第2光触媒層72が設けられている。また、貯水容器7は、筐体2の外側において、光源4と対向して配置され、光源4は、第2光触媒層72に向けて光を照射する。貯水容器7に貯留された水は、洗浄部5に送られ、流入部11、筐体2の内部、流出部12を経由して循環する。第1光触媒層21を照射する光源4と第2光触媒層72を照射する光源4とは、共通の光源である。なお、貯水容器7及び第2光触媒層72以外の構成は、図1に示す洗浄装置1と同様である。この構成により、筐体2から流出された使用後の水は、貯水容器7に送られ、第2光触媒層72の光触媒反応により、使用後の水中に含まれる有機物が分解される。そして、浄化された水を再利用することができるため、洗浄装置1は、環境負荷を低減することができると共に、運転コストを削減することができる。
【実施例0051】
以下、実施例及び比較例を示して実施形態を更に具体的に説明するが、実施形態はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)
第1方向の長さ100mm、第2方向の長さ110mmの、ホウケイ酸ガラス製のラテマシンノズルの内面に、アナターゼ型TiOを塗布し焼き付けることで、ラテマシンノズルの内周面にTiO光触媒層を形成した。図6に示すように、ノズル底面に対して均等配置となるように、UV-A LED(365nm、950mW)を4個備えた基板を、ノズル外底面とLED先端の距離が20mmとなる位置に設置した。照射面であるノズル底面以外の外周面にはアルミ蒸着(反射率84%)加工を施し、流入部にチューブ及びポンプを接続することで洗浄装置を得た。
【0053】
汚れとして水溶系の油脂を含有する、水で固形10%に調製した牛乳(調製液)を用い、ノズル内底面に調製液を乾燥固着させた状態(固着油脂量2.1μg/mm)で、LEDを照射し、温水をノズル内に流通させ、洗浄試験を実施した。そして、LEDを2.0h照射し、温水を100mL流通後、ノズル内底面の残留油脂量を固体TOC(全有機炭素測定)により定量することで、洗浄性能を評価した。
【0054】
(比較例1)
実施例1の洗浄装置を用いて、LEDを照射した後、温水をノズル内に流通させなかったこと以外は、実施例1と同様にして洗浄性能の評価を行った。
【0055】
その結果、光触媒反応のみの洗浄では洗浄除去不可の付着物に対しても、温水流通と組合せることで完全な洗浄除去が可能であることを確認した。図8は、光源の消費電力量と付着油脂除去率の関係を示すグラフである。
【0056】
LED照射後に温水を流通した場合、図8に示すように、光源の消費電力量、即ち光触媒層に与えた光エネルギー量に伴い、ノズル内底面の付着油脂の除去率が増加した。付着油脂の除去率をY、光源の消費電力量をXとしたとき、Y=0.0637X+27.223(式(1))となる比例関係であることを確認した。検証範囲(消費電力量0~500mWh)では除去率は100%未満であるが、これは、光触媒層と付着油脂との界面における付着油脂の分解が不十分で、付着力が強い油脂が残っているためと考えられる。上述の式(1)より、照射工程時に与える光源の消費電力量≧1142mWhとすることで付着油脂を完全に分解除去可能と考えられる。例えば、光源の出力が950mWである場合、1.2時間照射することで、付着油脂を完全に分解除去可能と考えられる。実使用上は、完全に分解除去可能な照射時間に余裕を持たせて、照射時間を追加してよい。
【0057】
一方、照射のみを行った場合、光源の消費電力量を増加させ、光触媒反応量を増加させたところ、ノズル内底面の付着油脂の除去率は増加しなかった。これは、光触媒層と付着油脂との界面で、付着油脂が光触媒反応により分解したことで、それ以上油脂と光触媒が接触しなくなり、光触媒反応の効果が充分に得られなくなったためと考えられる。
【0058】
以上の検討結果より、本実施形態の洗浄装置は、高い洗浄効果が得られることを確認した。また、所定のノズルの底面積、光源の消費電力、及び汚れの種類に対して、一定の照射時間で汚れを十分に除去できることを確認した。
【0059】
本実施形態の洗浄装置1は、ラテマシン等の飲料供給装置に搭載される洗浄装置に適用可能である。また、洗浄装置1は、自動販売機、ショーケース等に適用することができる。
【0060】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更などを行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
1 洗浄装置
2、102 筐体
20、120 開口
21、121 第1光触媒層
22、122 周壁
23、123 底部
24、124 光透過部
25、125 傾斜部
3 蓋体
4、140 光源
5 洗浄部
51 ポンプ
52、53 配管
6、160 反射部材
7 貯水容器
72 第2光触媒層
8 制御部
11 流入部
12 流出部
126 仕切板
127 第1収容部
128 第2収容部
129 吐出口
141 発光素子
142 基板
S1、S101 外周面
S2、S102 汚れ付着面
S3、S103 背面
S4 側面
D 汚れ
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8