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  • 特開-ガス発生袋体 図1
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  • 特開-ガス発生袋体 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034560
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】ガス発生袋体
(51)【国際特許分類】
   A61H 33/02 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
A61H33/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138876
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】597060427
【氏名又は名称】中谷産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174805
【弁理士】
【氏名又は名称】亀山 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】大野 まどか
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 祥一郎
【テーマコード(参考)】
4C094
【Fターム(参考)】
4C094AA01
4C094BC18
4C094DD06
4C094DD14
4C094EE07
4C094GG03
(57)【要約】
【課題】反応物質が外部に流出することを抑えつつ、所定の反応ガスの発生速度を制御可能なガス発生袋体を提供する。
【解決手段】 炭酸ガス発生袋体2は、リンゴ酸収容袋体10と、裏面に粘着剤層30を有する重曹収容袋体20(第2物質収容袋体)と、第2物質収容袋体、第1物質収容袋体を順に積層し、第1物質収容袋体の表面に剥離自在に貼りつけられた保護シート40と、を備える。リンゴ酸収容袋体10の表面側のシートは、非透水性であり、かつ、非通気性である。一方、リンゴ酸収容袋体10の裏面をなす不織布、及び重曹収容袋体20の両面をなす不織布はいずれも、透水性及び通気性を有する。重曹収容袋体20の裏面にミシン目が付与された粘着剤層30を有し、粘着剤層30は、重曹裏面不織布22のうち透水性及び通気性を有する部分に付与されることが好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1物質を収容するための第1物質収容袋体と、
第2物質を収容するための第2物質収容袋体と、を備え、
前記第1物質収容袋体は、
合成樹脂製の第1物質表面シートと、
前記第1物質表面シートの裏面に設けられた合成樹脂製の第1物質裏面不織布と、を備え、
前記第1物質表面シートと前記第1物質裏面不織布とは、縁部同士が圧着され、袋構造を形成し、
前記第2物質収容袋体は、
合成樹脂製の第2物質表面不織布と、
前記第2物質表面不織布の裏面に設けられた合成樹脂製の第2物質裏面不織布と、
前記第2物質裏面不織布に設けられた粘着剤層と、を備え、
前記第2物質表面不織布と前記第2物質裏面不織布とは、縁部同士が圧着され、袋構造を形成し、
前記第1物質裏面不織布と、前記第2物質表面不織布と、前記第2物質裏面不織布と、粘着剤層とは、通気性及び透水性を有し、
前記前記第1物質裏面不織布及び前記第2物質表面不織布のうち少なくとも1つは、パルプを含むことを特徴とするガス発生袋体。
【請求項2】
前記第1物質裏面不織布及び前記第2物質表面不織布は、パルプを含むことを特徴とする請求項1記載のガス発生袋体。
【請求項3】
前記第1物質裏面不織布及び前記第2物質表面不織布に含まれるパルプの含有量は40質量%未満であることを特徴とする請求項2記載のガス発生袋体。
【請求項4】
前記第2物質裏面不織布はパルプを含むことを特徴とする請求項1記載のガス発生袋体。
【請求項5】
前記粘着剤層にミシン目が形成されることを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか1項記載のガス発生袋体。
【請求項6】
前記第1物質は有機酸であり、
前記第2物質はアルカリ炭酸塩であり、
前記第1物質と前記第2物質との反応により炭酸ガスが発生することを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか1項記載のガス発生袋体。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス発生袋体に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚面に貼りつけ高い温浴効果を与えることが可能なガス発生袋体が知られている。このガス発生袋体は、浴湯に沈められ、浴湯中において炭酸ガスを発生するものである。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の炭酸ガス発生シートは、有機酸(リンゴ酸)とアルカリ炭酸塩(炭酸水素ナトリウム)が共に収容された袋体と、袋体に貼りつけられた非透水性非通気性のシートと、シートに塗布された粘着層と、を備え、シート及び粘着層を貫通する透孔が形成される。このような炭酸ガス発生シートを浴湯に沈めた場合、透孔から袋体に浸透した浴湯によって袋体に収容された有機酸とアルカリ炭酸塩が反応し、炭酸ガスが発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3227076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の炭酸ガス発生シートは、有機酸とアルカリ炭酸塩が未反応のまま透孔を介して外部へ流出するおそれがある。また、1つの袋体に有機酸とアルカリ炭酸塩が収容されるため、有機酸とアルカリ炭酸塩の反応が高まると、炭酸ガスが発生する時間が極めて短くなってしまう。
【0006】
そこで、本発明では、有機酸とアルカリ炭酸塩のような反応物質が外部に流出ことを抑えつつ、所定の反応ガスの発生速度を制御可能なガス発生袋体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のガス発生袋体は、第1物質を収容するための第1物質収容袋体と、第2物質を収容するための第2物質収容袋体と、を備え、前記第1物質収容袋体は、合成樹脂製の第1物質表面シートと、前記第1物質表面シートの裏面に設けられた合成樹脂製の第1物質裏面不織布と、を備え、前記第1物質表面シートと前記第1物質裏面不織布とは、縁部同士が圧着され、袋構造を形成し、前記第2物質収容袋体は、合成樹脂製の第2物質表面不織布と、前記第2物質表面不織布の裏面に設けられた合成樹脂製の第2物質裏面不織布と、前記第2物質裏面不織布に設けられた粘着剤層と、を備え、前記第2物質表面不織布と前記第2物質裏面不織布とは、縁部同士が圧着され、袋構造を形成し、前記第1物質裏面不織布と、前記第2物質表面不織布と、前記第2物質裏面不織布と、粘着剤層とは、通気性及び透水性を有し、前記前記第1物質裏面不織布及び前記第2物質表面不織布のうち少なくとも1つは、パルプを含むことを特徴とする。
【0008】
前記第1物質裏面不織布及び前記第2物質表面不織布は、パルプを含むことが好ましい。また、前記第1物質裏面不織布及び前記第2物質表面不織布に含まれるパルプの含有量は40質量%未満であることが好ましい。さらに、前記第2物質裏面不織布はパルプを含むことが好ましい。
【0009】
前記粘着剤層にミシン目が形成されることが好ましい。
【0010】
前記第1物質は有機酸であり、前記第2物質はアルカリ炭酸塩であり、前記第1物質と前記第2物質との反応により炭酸ガスが発生することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、反応物質が外部に流出ことを抑えつつ、所定の反応ガスの発生速度を制御可能なガス発生袋体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】粘着剤層が保護シートによって保護された状態の炭酸ガス発生袋体の概要を示す側面図である。
図2】(A)は、皮膚に貼りつけられた状態の炭酸ガス発生袋体の側面の概要を示す断面図である。(B)は、重曹収容袋体を裏側から見た時の底面図である。
図3】(A)は、第2物質裏面不織布上に設けられた粘着剤層の概要を示す平面図である。(B)は、第2物質裏面不織布上に設けられた粘着剤層の概要を示すIIIb部拡大図である。
図4】皮膚に貼りつけられた状態の炭酸ガス発生袋体の側面の概要を示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
炭酸ガス発生袋体2(ガス発生袋体)は、水やお湯の中に沈め炭酸ガスを発生させるものであり、図1~2に示すように、リンゴ酸(第1物質)を収容するためのリンゴ酸収容袋体10(第1物質収容袋体)と、炭酸水素ナトリウム(以下、重曹という。)(第2物質)を収容するための重曹収容袋体20(第2物質収容袋体)と、重曹収容袋体20の裏面に設けられた粘着剤層30と、第1物質収容袋体に対して剥離自在に貼りつけられた保護シート40と、を備える。
【0014】
リンゴ酸収容袋体10は、リンゴ酸表面シート11(第1物質表面シート)と、リンゴ酸表面シート11の裏面に設けられたリンゴ酸裏面不織布12(第1物質裏面不織布)と、を備える。リンゴ酸表面シート11とリンゴ酸裏面不織布12とは、それぞれ、正方形状または長方形状に形成され、リンゴ酸表面シート11とリンゴ酸裏面不織布12の縁部10Fの4辺同士が圧着され、袋状となる。
【0015】
リンゴ酸15は、粉末状であり、リンゴ酸表面シート11とリンゴ酸裏面不織布12の間に位置するため、リンゴ酸収容袋体10に収容される。
【0016】
重曹収容袋体20は、重曹表面不織布21(第2物質表面不織布)と、重曹表面不織布21の裏面に設けられた重曹裏面不織布22と、を備える。重曹裏面不織布22は、自身の裏面側に粘着剤層30を有する。重曹表面不織布21と重曹裏面不織布22とは、それぞれ、正方形状または長方形状に形成され、重曹表面不織布21と重曹裏面不織布22の縁部20F(図2(B))の4辺同士が圧着され、袋状となる。
【0017】
重曹25は、粉末状であり、重曹表面不織布21と重曹裏面不織布22の間に位置するため、重曹収容袋体20に収容される。
【0018】
リンゴ酸表面シート11は、非透水性であり、かつ、非通気性である。リンゴ酸表面シート11の形成材料としては、不織布、レーヨン紙や、アルミ蒸着等の合成樹脂がある。
【0019】
リンゴ酸裏面不織布12及び重曹表面不織布21は、透水性及び通気性を有する合成樹脂製の不織布である。ここで、リンゴ酸裏面不織布12と重曹表面不織布21のうち少なくとも一方は、パルプを含むことが好ましい。これにより、炭酸ガス発生袋体2に水またはお湯が浸入した際、炭酸ガス発生袋体2の中においてリンゴ酸及び重曹の反応が起こりやすくなるとともに発生した炭酸ガスが外部に向かって移動しやすくなる。もちろん、リンゴ酸裏面不織布12と重曹表面不織布21の両方がパルプを含む不織布であってもよい。また、リンゴ酸裏面不織布12及び重曹表面不織布21におけるパルプの含有量は、5質量%以上40質量%未満であることが好ましい。リンゴ酸裏面不織布12及び重曹表面不織布21におけるパルプの含有量が40質量%を超えると、有機酸(リンゴ酸)とアルカリ炭酸塩(重曹)との反応が短時間に集中して行われるため、炭酸ガスの発生が一定時間に渡って継続しないという点で好ましくない。逆に5質量%未満では有機酸(リンゴ酸)とアルカリ炭酸塩(重曹)との反応が著しく遅れ、お湯に浸しても、炭酸ガスの発生開始時間が遅れるか炭酸ガスの発生がほとんどない。
【0020】
重曹裏面不織布22は、透水性及び通気性を有する合成樹脂製の不織布である。重曹裏面不織布22は、パルプを含むことが好ましい。これにより、炭酸ガス発生袋体2の内部の炭酸ガスと、炭酸ガス発生袋体2の外部のお湯等と、の入れ替えがスムーズになる。重曹裏面不織布22におけるパルプの含有量は、5質量%以上40質量%未満であることが好ましい。重曹裏面不織布22におけるパルプの含有量が40質量%を超えると、有機酸(リンゴ酸)とアルカリ炭酸塩(重曹)との反応が短時間に集中して行われるため、炭酸ガスの発生が一定時間に渡って継続しない。5質量%未満ではお湯に浸しても重曹裏面不織布22を介した湯の吸収が遅れ、炭酸ガスの発生開始時間が遅れるか炭酸ガスの発生がほとんどない。
【0021】
リンゴ酸裏面不織布12、重曹表面不織布21及び重曹裏面不織布22の目付は、20g/m以上80g/m以下であることが好ましい。目付が20g/m未満では、リンゴ酸収容袋体10や重曹収容袋体20に封入されたリンゴ酸又は重曹が各袋体の外に漏れ出してしまい、炭酸ガス発生袋体2の製造現場の汚染や、リンゴ酸や重曹の収容量不足となってしまう。目付が80g/mを超えると、リンゴ酸収容袋体10と重曹収容袋体20の間におけるリンゴ酸と重曹との反応が湯中において起こりにくくなる結果、時間経過に伴う炭酸ガスの生成量の変化が所期のものとならないため好ましくない。
【0022】
粘着剤層30は、皮膚に対して重曹収容袋体20を着脱自在となる程度の粘着性を持っていればよい。図1,3に示すように、粘着剤層30は、重曹裏面不織布22の全体を覆う。粘着剤層30における透水性及び通気性を確保するために、ミシン目30Sが形成されていることが好ましい。
【0023】
リンゴ酸収容袋体10の縁部10Fと重曹収容袋体20の縁部20Fの4辺同士が圧着され、一体となる。これにより、リンゴ酸収容袋体10の縁部10F、重曹収容袋体20の縁部20F、及び粘着剤層30の縁部30Fにおいて透水性及び通気性は消失するが、各袋体10,20及び粘着剤層30の縁部よりも内側部分、すなわち内側部分10G、20G、30Gにおいては透水性及び通気性が維持される。
【0024】
次に、炭酸ガス発生袋体2の使用方法について説明する。
【0025】
炭酸ガス発生袋体2を皮膚Hに貼りつけると(図2)、粘着剤層30の内側部分30Gにおいて、皮膚Hに直接貼りつけられる貼付部分30Aと、皮膚Hから離れる離隔部分30Bと、ができる(図3)。
【0026】
この状態で炭酸ガス発生袋体2をお湯等の中に沈めると、離隔部分30Bにおいては、炭酸ガス発生袋体2の外部にあるお湯又は水の流通路となる(図4の符号Y1の矢印)。また、離隔部分30Bのミシン目30Sを介して炭酸ガス発生袋体2に浸入したお湯等は、リンゴ酸裏面不織布12と重曹表面不織布21を通過可能となる(図4の符号Y2の矢印)。この結果、リンゴ酸裏面不織布12や重曹表面不織布21の近傍において、リンゴ酸15と重曹25が反応し炭酸ガスが生成する。そして、炭酸ガス発生袋体2の内部で発生した炭酸ガスは、貼付部分30Aを介して皮膚Hに吸収される(図4の符号Y3の矢印)とともに離隔部分30Bのミシン目30Sを介して外部へ出る(図4の符号Y4の矢印)。このとき、炭酸ガス発生袋体2の周辺にあるお湯等は、炭酸ガス発生袋体2の内部へ浸入する(図4の符号Y1の矢印)。これを繰り返すことにより、皮膚Hの近傍で所定の炭酸ガスを継続的に生成させることができる。
【0027】
炭酸ガス発生袋体2によれば、リンゴ酸、重曹は、それぞれ、リンゴ酸収容袋体10と重曹収容袋体20とに分けて収容されているため、使用前等、不用意な炭酸ガスの反応が起こりにくい。また、リンゴ酸収容袋体10と、重曹収容袋体20を重ね、再度、縁部10Fと縁部20F同士を圧着して一体としている。このため、保護シート40を剥がし、炭酸ガス発生袋体2を所望の部位に貼りつけ、当該部位をお湯等に沈めるといった簡便な手順で、所望の部位に炭酸ガスを供給することができる。粘着剤層30はミシン目30Sが形成されているため、透水性及び通気性の確保とともに、重曹裏面不織布22が破れた場合であっても重曹が外部に漏れだしにくい。
【0028】
なお、ミシン目30Sは、離隔部分30Bに所定の密度で形成されることが好ましい。ミシン目30Sの長さ、幅及び間隔は、本発明の趣旨の範囲であればよい。ミシン目30Sの長さL(図3(B))の例として、2mm以上8mm以下であることが好ましい。また、ミシン目30Sの間隔W(図3(B))の例として、3mm以上8mm以下であることが好ましい。ミシン目30Sは、粘着剤層30のうち離隔部分30Bに設けられていればよい。したがって、ミシン目30Sは、粘着剤層30全体に設けられていてもよい。
【0029】
上記実施形態では、粘着剤層30における透水性及び通気性を確保するために、ミシン目30Sを形成したが、本発明はこれに限られず、透水性及び通気性を確保できるものであれば、細穴等を形成してもよい。
【0030】
上記実施形態の炭酸ガス発生袋体2では、リンゴ酸収容袋体10と、重曹収容袋体20と、保護シート40と、をこの順で重ねたが、本発明はこれに限られず、リンゴ酸収容袋体10に重曹を収容し、重曹収容袋体20にリンゴ酸を収容してもよい。
【0031】
上記実施形態の炭酸ガス発生袋体2では、リンゴ酸収容袋体10にリンゴ酸を収容し、重曹収容袋体20に重曹を収容したが、本発明はこれに限られない。各袋体10、20に収容される物質としては、互いに混ざった際に、所定のガスを反応する組み合わせにすればよい。
【0032】
また、炭酸ガスを発生させる場合には、各袋体10、20の一方に酸を収容し、他方にアルカリを収容すればよい。酸としては、有機酸が好ましい。有機酸の中では、室温で固体のものが挙げられ、例えば、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、マロン酸、クエン酸一ナトリウム、コハク酸一ナトリウム、フマル酸一ナトリウム、アジピン酸、酒石酸、安息香酸、乳酸、など等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、リンゴ酸、クエン酸が好適に使用できる。リンゴ酸の立体異性体については、特に制限はなく、いずれであってもよい。アルカリとしては、アルカリ炭酸塩が好ましい。アルカリ炭酸塩としては、例えば炭酸ナトリウム、重曹(炭酸水素ナトリウム)、セスキ炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸アンモニウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、入手の容易さ等の観点から、炭酸ナトリウム及び重曹(炭酸水素ナトリウム)からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0033】
<実施例>
実験1~8を行った。
【0034】
(実験1)
非透水性であり、かつ、非通気性であるレーヨン紙のシートをリンゴ酸表面シート11として使用した。そして、パルプ含有の不織布2A(日精株式会社製 FUES-48 目付 50g/m)をリンゴ酸裏面不織布12として使用した。これらの縁部の3辺同士を圧着し、リンゴ酸を収容後、残りの1辺を圧着し、長さ8cm、幅6cmのリンゴ酸収容袋体10を作成した。
【0035】
パルプ含有の不織布2B(三和製紙株式会社製 サンモアD504 目付 50g/m)を、重曹表面不織布21及び重曹裏面不織布22として使用した。重曹裏面不織布22においては、常法(例えば、実登第3233842号 段落0021等)により粘着剤層30を塗設した後にミシン目30Sを付与した。その後、重曹表面不織布21及び重曹裏面不織布22の縁部の3辺同士を圧着し、その中に重曹を収容後、残りの1辺を圧着し、長さ8cm、幅6cmの重曹収容袋体20を作成した。
【0036】
重曹収容袋体20と、リンゴ酸収容袋体10とをこの順に重ねて、再度4辺を圧着し、炭酸ガス発生袋体2をつくった。得られた炭酸ガス発生袋体2をテストピースに貼りつけた。その後、40℃のお湯に浸し、炭酸ガスの発生を行った。その後、評価項目に関し評価を行った。
【0037】
(評価項目1)
炭酸ガス発生袋体2をお湯に浸した後、炭酸ガスの発生が開始するまでに要した時間を計測し、以下の基準に基づき評価を行った。
◎:お湯に浸した後、30秒以内に炭酸ガスの発生が開始した。
○:お湯に浸した後、30秒を超えて2分(120秒)以内に炭酸ガスの発生が開始した。
△:お湯に浸した後、2分(120秒)を超えて4分(240秒)以内に炭酸ガスの発生が開始した。
×:お湯に浸しても、炭酸ガスの発生が開始しなかった。
【0038】
(評価項目2)
炭酸ガスの発生の開始から終了するまでの時間を計測し、以下の基準に基づき評価を行った。
◎:炭酸ガス発生時間は10分以上であった。
○:炭酸ガス発生時間は5分以上10分未満であった。
△:炭酸ガス発生時間は1分以上5分未満であった。
×:炭酸ガス発生時間は1分未満であった。
【0039】
(評価項目3)
炭酸ガスの発生の開始から終了するまでの間、炭酸ガス発生袋体2がテストピースから剥離したか否かを確認し、以下の基準に基づき評価を行った。
○:炭酸ガス発生袋体2がテストピースから剥離しなかった。
×:炭酸ガス発生袋体2がテストピースから剥離した。
【0040】
(実験2~8)
表1に示したこと以外は、実験1と同様にして、炭酸ガス発生袋体2をつくった。得られた炭酸ガス発生袋体2をテストピースに貼りつけた。その後、実験1と同様にして、炭酸ガス発生袋体2をお湯に浸し、炭酸ガスの発生を行った。その後、評価項目に関し評価を行った。実験1~8の評価結果は、表1の通りである。
【0041】
【表1】
【0042】
(実験1、2)
リンゴ酸収容袋体10のリンゴ酸裏面不織布12及び重曹収容袋体20の重曹表面不織布21にともにパルプを含む不織布を使用した場合、炭酸ガス発生までに要した時間は、30秒以内であり、発生の継続時間は10分以上であり、共に良好な結果が得られた。
【0043】
(実験3~5)
リンゴ酸収容袋体10のリンゴ酸裏面不織布12と重曹収容袋体20の重曹表面不織布21とのいずれか一方がパルプを含む不織布を使用した場合、炭酸ガス発生までに要した時間は60~100秒とやや遅くなるが、発生の継続時間(10分以上)であり、使用上問題ない範囲であった。
【0044】
(実験6、7)
リンゴ酸収容袋体10のリンゴ酸裏面不織布12及び重曹収容袋体20の重曹表面不織布21ともにパルプを含まないポリエステル樹脂製の不織布1A(エルベスT0503 ユニチカ社製 目付 50g/m)を使用した場合、炭酸ガス発生までに要した時間が130秒~160秒と遅くなり、かつ発生の継続時間は1~3分以内と極端に短くなり所望の結果が得られなかった。
【0045】
(実験8)
袋体20の重曹裏面不織布22に通気性及び通水性がない粘着剤層を設けるために、ミシン目が形成されない粘着剤層を設けたこと以外は、実験1と同様とした。この場合、炭酸ガスの発生の継続時間は10分以上であったが炭酸ガス発生までに要した時間は2分(120秒)以上であり、やや遅くなった。さらに炭酸ガス発生袋体2が膨らみ、テストピースから炭酸ガス発生袋体2が剥がれてしまった。炭酸ガス発生袋体2が膨らんだのは、炭酸ガス発生袋体2にて発生した炭酸ガスが炭酸ガス発生袋体2から外部空間に抜けなかったことが理由と考えられる。
【0046】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0047】
2 炭酸ガス発生袋体
10 リンゴ酸収容袋体
11 リンゴ酸表面シート
12 リンゴ酸裏面不織布
15 リンゴ酸
20 重曹収容袋体
21 重曹表面不織布
22 重曹裏面不織布
25 重曹
30 粘着剤層
30A 貼付部分
30B 離隔部分
30S ミシン目
40 保護シート

図1
図2
図3
図4