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特開2024-3458アンテナモジュール及びこれを備えるICカード
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003458
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】アンテナモジュール及びこれを備えるICカード
(51)【国際特許分類】
   H01Q 7/00 20060101AFI20240105BHJP
   G06K 19/077 20060101ALI20240105BHJP
   H01Q 19/02 20060101ALI20240105BHJP
   H01Q 7/06 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
H01Q7/00
G06K19/077 272
G06K19/077 296
G06K19/077 196
G06K19/077 244
H01Q19/02
H01Q7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102624
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】梶木屋 翔磨
【テーマコード(参考)】
5J020
【Fターム(参考)】
5J020AA04
5J020BA06
5J020DA02
(57)【要約】
【課題】面状導体を備えた通信効率の高いアンテナモジュールを提供する。
【解決手段】アンテナモジュール1は、第1コイル110と、第1コイル110よりも平面サイズの小さい面状導体130とを備える。第1コイル110の開口部111は、面状導体130と重なる第1領域111aと、面状導体130と重ならない第2領域111bとを有する。面状導体130は、第1領域111aと重なるクリアランス領域131と、クリアランス領域131から面状導体130の外縁に至るスリット132を有する。これにより、高い通信効率を得ることが可能となる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1コイルと、
前記第1コイルよりも平面サイズの小さい面状導体と、を備え、
前記第1コイルの開口部は、前記面状導体と重なる第1領域と、前記面状導体と重ならない第2領域とを有し、
前記面状導体は、前記第1領域と重なるクリアランス領域と、前記クリアランス領域から前記面状導体の外縁に至るスリットを有する、アンテナモジュール。
【請求項2】
前記第1コイルは基材の一方の表面側に配置され、前記面状導体は前記基材の他方の表面側に配置される、請求項1に記載のアンテナモジュール。
【請求項3】
前記第1コイル及び前記面状導体の導体厚みは、前記基材の厚みより薄い、請求項2に記載のアンテナモジュール。
【請求項4】
前記面状導体と重なる磁性シートをさらに備え、
前記磁性シートは、前記面状導体の前記クリアランス領域と重なる貫通孔を有し、
前記面状導体の前記クリアランス領域は、前記磁性シートの前記貫通孔よりも平面サイズが小さく、前記クリアランス領域のエッジが前記磁性シートの前記貫通孔と重なる、請求項1に記載のアンテナモジュール。
【請求項5】
前記面状導体の一方の主面及び側面の少なくとも一部を覆う磁性体層をさらに備える、請求項2に記載のアンテナモジュール。
【請求項6】
前記磁性体層は、前記面状導体の前記クリアランス領域と重なる貫通孔を有し、
前記面状導体の前記クリアランス領域のエッジと、前記磁性体層の前記貫通孔のエッジが重なる、請求項5に記載のアンテナモジュール。
【請求項7】
前記面状導体の前記スリットは、前記クリアランス領域から前記第1領域と前記第2領域の境界に位置する前記面状導体の外縁に亘って設けられており、
前記磁性体層及び前記基材は、前記面状導体の前記スリットと重なる位置にスリットを有する、請求項5に記載のアンテナモジュール。
【請求項8】
前記第2領域と重なる位置に配置され、前記第1コイルに接続されたキャパシタパターンをさらに備える、請求項1に記載のアンテナモジュール。
【請求項9】
前記第1コイルに直列接続され、前記第1コイルの前記開口部内に配置される第2コイルをさらに備え、
前記第2コイルの開口部は、前記面状導体の前記クリアランス領域と重なる、請求項1に記載のアンテナモジュール。
【請求項10】
前記第2コイルは、前記面状導体の前記クリアランス領域との距離が前記面状導体の前記外縁よりも近い区間を有する、請求項9に記載のアンテナモジュール。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載のアンテナモジュールと、
貫通孔を有するメタルプレートと、
前記メタルプレートの前記貫通孔に配置されたICモジュールと、を備え、
前記面状導体は、前記メタルプレートと前記第1コイルの間に配置され、
前記ICモジュールは、前記面状導体の前記クリアランス領域と重なる、ICカード。
【請求項12】
前記面状導体の前記クリアランス領域内に配置される絶縁部材をさらに備える、請求項11に記載のICカード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンテナモジュール及びこれを備えるICカードに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、RFICに接続されたコイル導体とアンテナ素子の間に平面状導体を配置し、平面状導体によってコイル導体とアンテナ素子の結合を中継する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2013/115148号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された平面状導体は、中継アンテナとして有効に機能する部分は一部分であり、残りの大部分は中継に寄与しないことから、中継に寄与しない部分に生じる渦電流が損失になるという問題があった。
【0005】
したがって、本開示は、面状導体を備えた通信効率の高いアンテナモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施態様によるアンテナモジュールは、第1コイルと、第1コイルよりも平面サイズの小さい面状導体とを備え、第1コイルの開口部は、面状導体と重なる第1領域と、面状導体と重ならない第2領域とを有し、面状導体は、第1領域と重なるクリアランス領域と、クリアランス領域から面状導体の外縁に至るスリットを有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、面状導体を備えた通信効率の高いアンテナモジュールを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の第1の実施形態によるアンテナモジュールを備えるICカード3の外観を示す略斜視図である。
図2図2は、アンテナモジュール1を備えるICカード3の構造を説明するための略分解斜視図である。
図3図3は、アンテナモジュール1を備えるICカード3の構造を説明するための略断面図である。
図4図4は、第1の実施形態において基材20の一方の表面21に形成された導体パターンの略平面図である。
図5図5は、第1の実施形態において基材20の他方の表面22に形成された導体パターンの略平面図である。
図6図6は、ICモジュール50を裏面側から見た略斜視図である。
図7図7は、ICカード3とカードリーダー6が通信を行う状態を示す模式図である。
図8図8は、第1の変形例を説明するための略平面図であり、基材20の他方の表面22に形成された導体パターンの形状を示している。
図9図9は、第2の変形例を説明するための略平面図であり、基材20の一方の表面21に形成された導体パターンの形状を示している。
図10図10は、第2の変形例を説明するための略平面図であり、基材20の他方の表面22に形成された導体パターンの形状を示している。
図11図13は、第3の変形例を説明するための略平面図であり、基材20の一方の表面21に形成された導体パターンの形状を示している。
図12図12は、第3の変形例を説明するための略平面図であり、基材20の他方の表面22に形成された導体パターンの形状を示している。
図13図13は、本開示の第2の実施形態によるアンテナモジュール2を備えるICカード4の構造を説明するための略分解斜視図である。
図14図14は、本開示の第2の実施形態によるアンテナモジュール2を備えるICカード4の構造を説明するための略断面図である。
図15図15は、第2の実施形態において基材20の一方の表面21に形成された導体パターンの略平面図である。
図16図16は、第2の実施形態において基材20の他方の表面22に形成された導体パターンの略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。
【0010】
図1は、本開示の第1の実施形態によるアンテナモジュールを備えるICカード3の外観を示す略斜視図である。
【0011】
図1に示すように、第1の実施形態によるICカード3は、Y方向を長手方向、X方向を短手方向、Z方向を厚み方向とする板状体であり、XY面を構成する上面3aと裏面3bを有している。ICカード3には後述するICモジュールが内蔵されており、ICモジュールの端子電極EがICカード3の上面3aに露出している。
【0012】
図2及び図3は、それぞれ本開示の第1の実施形態によるアンテナモジュール1を備えるICカード3の構造を説明するための略分解斜視図及び略断面図である。
【0013】
図2及び図3に示すICカード3は、裏面3b側から上面3a側に向かって、プラスチックプレート10、基材20、磁性シート30及びメタルプレート40がこの順に積層された構造を有している。プラスチックプレート10は、磁束を妨げない樹脂材料からなる。プラスチックプレート10の表面は、ICカード3の裏面3bを構成する。メタルプレート40は、ステンレスやチタンなどの金属材料からなる。メタルプレート40の表面はICカード3の上面3aを構成する。メタルプレート40には貫通孔41が設けられており、貫通孔41の内部にはICモジュール50が配置されている。このように、ICカード3は、本体にメタルプレートが用いられたカードである。
【0014】
基材20は、絶縁性樹脂材料からなるフィルムであり、その一方の表面21に第1コイル110が設けられ、他方の表面22に面状導体130が設けられている。フィルム状の基材20を構成する絶縁性樹脂材料の例としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPI(ポリイミド)などが挙げられる。基材20の一方の表面21はプラスチックプレート10と向かい合い、基材20の他方の表面22はメタルプレート40と向かい合う。したがって、メタルプレート40、面状導体130及び第1コイル110がこの順に積層されることになり、面状導体130はメタルプレート40と第1コイル110の間に配置される。他方の表面22は、面状導体130が形成されないクリアランス領域131を有している。プラスチックプレート10と基材20は、接着層61を介して接着される。
【0015】
基材20の他方の表面22は、磁性シート30で覆われる。磁性シート30と基材20は、接着層62を介して接着される。磁性シート30及び接着層62には、第1コイル110の開口部111と重なる位置に、それぞれ貫通孔31,64が設けられている。本実施形態によるアンテナモジュール1は、少なくとも基材20及びその表面21,22に形成された導体パターンによって構成される。メタルプレート40に設けられた貫通孔41は、Z方向から見た平面視で、磁性シート30の貫通孔31、面状導体130のクリアランス領域131、第1コイル110の開口部111と重なりを有している。ここで、面状導体130のクリアランス領域131は、磁性シート30の貫通孔31よりも平面サイズが小さくても構わない。この場合、面状導体130の一部が磁性シート30の貫通孔31と重なり、その結果、クリアランス領域131のエッジが磁性シート30の貫通孔31と重なることになる。
【0016】
図4は、第1の実施形態において基材20の一方の表面21に形成された導体パターンの略平面図である。尚、図4に示すA-A線は、図3の断面位置を示している。
【0017】
図4に示すように、基材20の一方の表面21には、第1コイル110と、第1コイル110の内周端に接続されたキャパシタパターン141が設けられている。第1コイル110及びキャパシタパターン141は、導電材料から構成されており、例えば、銅、アルミニウム、又はこれらの合金などが挙げられる。第1コイル110の外周端は、基材20を貫通して設けられたビア導体112に接続される。第1コイル110は、基材20の外縁に沿って約3ターン周回するパターンである。第1コイル110の開口部111は、+Y方向側に位置する第1領域111aと、-Y方向側に位置する第2領域111bを有している。磁性シート30の貫通孔31は、第1領域111aと重なる位置に配置されている。キャパシタパターン141は、第2領域111bに配置されている。
【0018】
図5は、第1の実施形態において基材20の他方の表面22に形成された導体パターンの略平面図である。尚、図5に示すA-A線は、図3の断面位置を示している。
【0019】
図5に示すように、基材20の他方の表面22には、面状導体130と、ビア導体112に接続されたキャパシタパターン142が設けられている。面状導体130及びキャパシタパターン142は、導電材料から構成されており、例えば、銅、アルミニウム、又はこれらの合金などが挙げられる。キャパシタパターン142の平面位置はキャパシタパターン141と一致しており、これにより一対のキャパシタパターン141,142とその間に位置する基材20によってキャパシタCが構成される。かかる構成により、第1コイル110の両端にキャパシタCが接続されることになる。第1コイル110及びキャパシタCは、外部回路に接続されない閉回路を構成する。キャパシタCは、共振周波数を調整することにより通信特性を高める役割を果たす。この第1コイル110及びキャパシタCによる共振周波数を13.56MHz又は13.56MHz近傍の周波数帯に設定することで、近距離無線通信(NFC)が可能となる。
【0020】
面状導体130は、第1コイル110よりも平面サイズが小さく、第1コイル110の開口部111の第1領域111aと重なる位置に配置されている。言い換えれば、第1コイル110の開口部111は、平面視で面状導体130と重なる第1領域111aと、面状導体130と重ならない第2領域111bとを有している。第1領域111aと第2領域111bは、Y方向に配列されている。
【0021】
面状導体130のクリアランス領域131は、磁性シート30の貫通孔31と重なっている。さらに、面状導体130は、クリアランス領域131から面状導体130の外縁133に至るスリット132を有している。外縁133は、クリアランス領域131から見て+Y方向側に位置し、X方向に延在するエッジである。外縁133は、第1コイル110のうちX方向に延在する区間と重なっていても構わない。また、クリアランス領域131から見て+X方向側に位置し、Y方向に延在するエッジである外縁は、第1コイル110のうちY方向に延在する区間と重なっていても構わず、クリアランス領域131から見て-X方向側に位置し、Y方向に延在するエッジである外縁も、第1コイル110のうちY方向に延在する区間と重なっていても構わない。このようなスリット132の存在により、クリアランス領域131の内壁は、閉じることなく面状導体130の外縁133に繋がっている。その結果、クリアランス領域131の周囲に位置する面状導体130に生じた渦電流は、スリット132によってクリアランス領域131の周囲を周回することができず、これにより面状導体130がアンテナの一部として機能する。面状導体130は、通常のコイルパターンと比べて面積が広いことから、その導体厚みを薄く設計しても、十分に抵抗値を下げることが可能である。このため、面状導体130の導体厚みは、基材20の厚みより薄くても構わない。第1コイル110の導体厚みについても、基材20の厚みより薄くても構わない。
【0022】
ここで、面状導体130のうち、アンテナとして有効に機能する部分はクリアランス領域131の近傍に限られ、クリアランス領域131から離れるにしたがって、アンテナとしての機能が大幅に低下する。本実施形態においては、面状導体130のうちアンテナとして有効に機能しない部分は削除されており、この部分にキャパシタパターン142が配置されている。また、クリアランス領域131は、第1領域111a内において+Y方向側にオフセットとして配置されているため、スリット132のY方向における長さが短縮され、これにより渦電流が流れる領域を十分に確保することができる。
【0023】
図6は、ICモジュール50を裏面側から見た略斜視図である。
【0024】
図6に示すように、ICモジュール50は、モジュール基板51と、モジュール基板51に搭載又は内蔵されたICチップ52と、カップリングコイル53とを備えている。ICチップ52は、ドーム状の保護樹脂54で覆われることにより保護されている。保護樹脂54は絶縁部材からなり、図3に示すように、その一部がクリアランス領域131内に配置されても構わない。モジュール基板51の表面側には、図1に示す端子電極Eが設けられる。このような構成を有するICモジュール50は、メタルプレート40に設けられた貫通孔41に収容される。ICモジュール50が貫通孔41に収容されると、カップリングコイル53と基材20に設けられた面状導体130が電磁界結合する。そして、面状導体130は、第1コイル110の開口部111に設けられていることから、面状導体130と第1コイル110が電磁界結合する。つまり、面状導体130は、ICモジュール50のカップリングコイル53と第1コイル110の電磁界結合を中継する役割を果たす。
【0025】
これにより、図7に示すように、ICカード3の裏面3bをカードリーダー6と向かい合わせれば、カードリーダー6とICチップ52との間で通信を行うことができる。つまり、カードリーダー6は、第1コイル110及び面状導体130を経由して、ICモジュール50のカップリングコイル53と結合し、これによりICチップ52との通信が実現される。また、面状導体130はカードリーダー6とも直接結合し、これによりカードリーダー6とICモジュール50の通信特性が高められる。ここで、本実施形態においては、第1コイル110の開口部111が全て面状導体130と重なっているのではなく、第1領域111aのみが面状導体130と重なっており、第2領域111bについては面状導体130と重なりを有していないことから、通信に寄与しない渦電流(ロス成分)によって生じる磁束と、第1コイル110によって発生する磁束の打ち消し合いが抑制される。これにより、カードリーダー6とICモジュール50の間の通信特性を高めることが可能となる。
【0026】
図8は、第1の変形例を説明するための略平面図であり、基材20の他方の表面22に形成された導体パターンの形状を示している。
【0027】
図8に示す第1の変形例は、面状導体130の形状が図5に示した形状と相違している。つまり、図8に示す第1の変形例においては、面状導体130に設けられたスリット132がクリアランス領域131から面状導体130の外縁134に亘って設けられている。外縁134は、クリアランス領域131から見て-Y方向側に位置し、且つ、X方向に延在するエッジであって、第1領域111aと第2領域111bの境界に位置する。このように、クリアランス領域131が第1領域111a内において+Y方向側にオフセットとして配置されている場合に、スリット132を-Y方向側に形成すれば、+Y方向側に位置する外縁133近傍に十分な渦電流を発生させることが可能となる。
【0028】
図9及び図10は、第2の変形例を説明するための略平面図であり、図9は基材20の一方の表面21に形成された導体パターンの形状を示し、図10は基材20の他方の表面22に形成された導体パターンの形状を示している。
【0029】
第2の変形例においては、基材20の一方の表面21に第1コイル210、第2コイル220及びキャパシタパターン241が設けられ、基材20の他方の表面22に面状導体230、キャパシタパターン242及び接続パターン250が設けられている。第2コイル220は、導電材料から構成されており、例えば、銅、アルミニウム、又はこれらの合金などが挙げられる。
【0030】
図9に示すように、第1コイル210の開口部211は、平面視で面状導体230と重なる第1領域211aと、面状導体230と重ならない第2領域211bとを有している。第2コイル220のサイズは第1領域211aよりも小さく、第1領域211aの一部に配置されている。第1コイル210の外周端は、基材20を貫通して設けられたビア導体212に接続される。第1コイル210の内周端は、第2コイル220の外周端に接続される。第2コイル220の内周端は、基材20を貫通して設けられたビア導体222に接続される。第2コイル220は、第1コイル210の開口部211内に配置されるとともに、その開口部221は、面状導体230のクリアランス領域231と重なっている。また、キャパシタパターン241は、基材20を貫通して設けられたビア導体243に接続される。
【0031】
図10に示すように、面状導体230は、図8に示した面状導体130とほぼ同じ形状を有している。つまり、面状導体230に設けられたスリット232がクリアランス領域231から面状導体230の外縁234に亘って設けられている。外縁234は、クリアランス領域231から見て-Y方向側に位置し、且つ、X方向に延在するエッジである。また、面状導体230には切り欠きが設けられており、この切り欠き部分に接続パターン250が配置される。接続パターン250の一端はビア導体222に接続され、接続パターン250の他端はビア導体243に接続される。また、キャパシタパターン242は、ビア導体212に接続される。
【0032】
かかる構成により、第1コイル210と第2コイル220が直列に接続されるとともに、第1コイル210と第2コイル220の間にキャパシタCが並列に接続されることになる。これら第1コイル210、第2コイル220及びキャパシタCは、外部回路に接続されない閉回路を構成する。
【0033】
このように、第2の変形例においては、第1コイル210の開口部211に第2コイル220が配置され、第2コイル220の開口部221が面状導体230のクリアランス領域231と重なっていることから、面状導体230と第1及び第2コイル210,220との結合をより高めることが可能となる。また、第2コイル220を構成する導体パターンのうち、X方向に延在する区間S1は、面状導体230の外縁234とのY方向における距離L1よりも、クリアランス領域231とのY方向における距離L2の方が小さく、これにより、面状導体230と第2コイル220との間でより強い結合を得ることが可能となる。
【0034】
図11及び図12は、第3の変形例を説明するための略平面図であり、図11は基材20の一方の表面21に形成された導体パターンの形状を示し、図12は基材20の他方の表面22に形成された導体パターンの形状を示している。
【0035】
第3の変形例は、第2コイル220のサイズが図9に示したサイズと相違している。これに伴い、接続パターン250の位置も変更されている。図11に示すように、第3の変形例においては、第2コイル220のサイズが第1領域211aとほぼ一致している。つまり、第2コイル220は、平面視で、面状導体230の外縁に沿って周回する。このような構造により、第2コイル220とカードリーダー6との結合をより高めることが可能となる。
【0036】
図13及び図14は、それぞれ本開示の第2の実施形態によるアンテナモジュール2を備えるICカード4の構造を説明するための略分解斜視図及び略断面図である。
【0037】
図13及び図14に示すICカード4は、接着層62を用いて磁性シート30を基材20に貼り付ける代わりに、磁性粒子と樹脂を混合したペースト状部材を基材20の他方の表面22に塗布し、これを硬化させた磁性体層70を用いている点において、図2及び図3に示したICカード3と相違している。その他の基本的な構成は、図2及び図3に示したICカード3と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。本実施形態によるアンテナモジュール2は、少なくとも基材20及びその表面21,22に形成された導体パターンによって構成される。また、メタルプレート40の表面がICカード4の上面4aを構成し、プラスチックプレート10の表面がICカード4の裏面4bを構成する。
【0038】
本実施形態においては、基材20の他方の表面22に磁性体層70が塗布されることから、基材20の他方の表面22に設けられる面状導体130及びキャパシタパターン142は、その主面(XY面)のみならず、側面(Z方向に沿った面)についても、磁性体層70で覆われることになる。本実施形態では、磁性体層70は、面状導体130及びキャパシタパターン142の一方の主面である基材20の他方の表面22とは反対側の主面を覆うとともに、面状導体130のクリアランス領域131及びスリット132の内壁を構成する側面を除く面状導体130及びキャパシタパターン142の側面を覆っている。なお、磁性体層70は、面状導体130及びキャパシタパターン142の主面及び側面を部分的に覆わない領域があっても構わない。磁性体層70は、面状導体130のクリアランス領域131と重なる位置に貫通孔71を有するとともに、面状導体130のスリット132と重なる位置にスリット72を有している。このように、本実施形態においては磁性シート30の代わりに磁性体層70を用いていることから、接着層62が不要となり、その分、全体の厚みを薄くすることができる。
【0039】
図15は、第2の実施形態において基材20の一方の表面21に形成された導体パターンの略平面図である。また、図16は、第2の実施形態において基材20の他方の表面22に形成された導体パターンの略平面図である。尚、図15及び図16に示すA-A線は、図14の断面位置を示している。
【0040】
図15及び図16に示すように、第2の実施形態においては、基材20に貫通孔23及びスリット24が設けられている。基材20に設けられた貫通孔23及びスリット24の平面位置は、磁性体層70に設けられた貫通孔71及びスリット72の平面位置と一致している。さらに、面状導体130のクリアランス領域131の平面位置は、貫通孔23,71の平面位置と一致し、面状導体130のスリット132の一部の平面位置は、スリット24,72の平面位置と一致している。スリット24,72のY方向における長さは、面状導体130のスリット132よりもやや長く、これによりスリット24,72の先端部分は、面状導体130のスリット132と重なりを有していない。
【0041】
このような構成を有するICカード4を作製する場合、まず、基材20の一方及び他方の表面21,22に導体パターンを形成した後、基材20の他方の表面22に磁性粒子と樹脂を混合したペースト状部材を塗布し、これを硬化させることによって磁性体層70を形成する。この時点においては、面状導体130はベタパターンであり、クリアランス領域131やスリット132を有していない。次に、金型などを用いて打抜き加工を行うことにより、貫通孔23,71及びスリット24,72を一括形成する。これにより、面状導体130にも、クリアランス領域131及びスリット132が形成される。
【0042】
このように、本実施形態によるICカード4は、打抜き加工によって作製されることから、図14に示すように、貫通孔23,71及びクリアランス領域131のエッジ位置が一致する。また、打抜き加工によって面状導体130にスリット132を形成していることから、磁性体層70の材料であるペースト状部材がスリット132に入り込み、これによってスリット132が短絡するおそれもない。さらに、スリット132が図5に示す+Y方向に位置する外縁133ではなく、第1領域111aと第2領域111bの境界に位置する外縁134に向かって形成されていることから、基材20に形成されるスリット24が基材20の外縁25に露出することもない。また、本実施形態では、スリット24,72,132を打抜き加工によって作製する際に、第1コイル110を断線するおそれもない。
【0043】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記の実施形態に限定されることなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本開示の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0044】
例えば、第1コイル110及び第2コイル210は、導線を巻回させて導体パターンを構成しても構わない。
【0045】
また、基材20の表面21,22に設けられる導体パターンは、間に樹脂などの他の材料層を介して基材20の表面21,22に設けられていても構わない。
【0046】
またさらには、第1の実施形態においてはクリアランス領域131内、第2の実施形態においてはクリアランス領域131及び基材20の貫通孔23内に配置される保護樹脂54とは別の絶縁性の接着層が設けられていても構わない。これにより、ICチップ52のICカード内における高さ位置の調整が可能となるとともに、ICチップ52を固定することができる。
【0047】
本開示に係る技術には、以下の構成例が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0048】
本開示によるアンテナモジュールは、第1コイルと、第1コイルよりも平面サイズの小さい面状導体とを備え、第1コイルの開口部は、面状導体と重なる第1領域と、面状導体と重ならない第2領域とを有し、面状導体は、第1領域と重なるクリアランス領域と、クリアランス領域から面状導体の外縁に至るスリットを有する。これによれば、面状導体と第1コイルの結合を確保しつつ、外部アンテナと第1コイルの結合を高めることが可能となる。
【0049】
上記アンテナモジュールにおいて、第1コイルは基材の一方の表面側に配置され、面状導体は基材の他方の表面側に配置されても構わない。これによれば、部品点数を削減しつつ、第1コイルと面状導体の位置関係を高精度に設計することが可能となる。
【0050】
上記アンテナモジュールにおいて、第1コイル及び面状導体の導体厚みは、基材の厚みより薄くても構わない。これによれば、全体の厚みを薄くすることが可能となる。
【0051】
上記いずれかのアンテナモジュールにおいて、面状導体と重なる磁性シートをさらに備え、磁性シートは、面状導体のクリアランス領域と重なる貫通孔を有し、面状導体のクリアランス領域は、磁性シートの貫通孔よりも平面サイズが小さく、クリアランス領域のエッジが磁性シートの貫通孔と重なっても構わない。これによれば、貫通孔を介してICモジュールなどと面状導体を結合させる場合に、より高い結合を得ることが可能となる。
【0052】
上記いずれかのアンテナモジュールにおいて、面状導体の一方の主面及び側面の少なくとも一部を覆う磁性体層をさらに備えていても構わない。これによれば、全体の厚みを薄くすることが可能となる。
【0053】
上記アンテナモジュールにおいて、磁性体層は、面状導体のクリアランス領域と重なる貫通孔を有し、面状導体のクリアランス領域のエッジと、磁性体層の貫通孔のエッジが重なっても構わない。このような構造は、打抜き加工によって得ることができ、打抜き加工によって作製することにより、面状導体のスリット内に磁性体層が入り込むことがなくなる。
【0054】
上記アンテナモジュールにおいて、面状導体のスリットは、クリアランス領域から第1領域と第2領域の境界に位置する面状導体の外縁に亘って設けられており、磁性体層及び基材は、面状導体のスリットと重なる位置にスリットを有していても構わない。このような構造は、打抜き加工によって得ることができ、上記の位置にスリットを形成することにより、基材に形成されるスリットが基材の外縁に露出することがない。
【0055】
上記いずれかのアンテナモジュールにおいて、第2領域と重なる位置に配置され、第1コイルに接続されたキャパシタパターンをさらに備えていても構わない。これによれば、スペースを有効活用しつつ、キャパシタパターンによってアンテナ特性を調整することが可能となる。
【0056】
上記いずれかのアンテナモジュールにおいて、第1コイルに直列接続され、第1コイルの開口部内に配置される第2コイルをさらに備え、第2コイルの開口部は、面状導体のクリアランス領域と重なっても構わない。これによれば、面状導体と第1コイルの結合がより高められる。
【0057】
上記アンテナモジュールにおいて、第2コイルは、面状導体のクリアランス領域との距離が面状導体の外縁よりも近い区間を有していても構わない。これによれば、面状導体と第2コイルの結合が高められることから、面状導体と第1コイルの結合がよりいっそう高められる。
【0058】
本開示によるICカードは、上記いずれかのアンテナモジュールと、貫通孔を有するメタルプレートと、メタルプレートの貫通孔に配置されたICモジュールとを備え、面状導体は、メタルプレートと第1コイルの間に配置され、ICモジュールは、面状導体のクリアランス領域と重なる。これによれば、面状導体を介して第1コイルとICモジュールを結合させることが可能となる。
【0059】
上記ICカードにおいて、面状導体のクリアランス領域内に配置される絶縁部材をさらに備えていても構わない。これによれば、ICモジュールと面状導体の間の絶縁を確保することが可能となる。
【符号の説明】
【0060】
1,2 アンテナモジュール
3,4 ICカード
3a,4a ICカードの上面
3b,4b ICカードの裏面
6 カードリーダー
10 プラスチックプレート
20 基材
21,22 基材の表面
23 貫通孔
24 スリット
25 外縁
30 磁性シート
31 貫通孔
40 メタルプレート
41 貫通孔
50 ICモジュール
51 モジュール基板
52 ICチップ
53 カップリングコイル
54 保護樹脂
61,62 接着層
70 磁性体層
71 貫通孔
72 スリット
110 第1コイル
111 開口部
111a 第1領域
111b 第2領域
112 ビア導体
130 面状導体
131 クリアランス領域
132 スリット
133,134 外縁
141,142 キャパシタパターン
210 第1コイル
211 開口部
211a 第1領域
211b 第2領域
212 ビア導体
220 第2コイル
221 開口部
222 ビア導体
230 面状導体
231 クリアランス領域
232 スリット
233,234 外縁
241,242 キャパシタパターン
243 ビア導体
250 接続パターン
C キャパシタ
E 端子電極
S1 区間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16