(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034590
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】避難ハッチの取付構造及び取付部材
(51)【国際特許分類】
A62B 5/00 20060101AFI20240306BHJP
E04B 1/00 20060101ALI20240306BHJP
E04G 21/32 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
A62B5/00 B
E04B1/00 502B
E04G21/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138933
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】307042385
【氏名又は名称】ミサワホーム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000110479
【氏名又は名称】ナカ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】飯田 和仁
(72)【発明者】
【氏名】城戸 憲昌
【テーマコード(参考)】
2E184
【Fターム(参考)】
2E184AA05
2E184DD02
(57)【要約】
【課題】避難ハッチを屋外床部に設置することにより形成される段差部を極力小さくすることで、避難ハッチが設置された屋外床部の見栄えを良くするとともに安全性の向上を図る。
【解決手段】屋外床部30に設置される避難ハッチ20の取付構造であって、避難ハッチ20は、取付部材10を介して屋外床部30に設置されており、取付部材10は、屋外床部30に形成された開口部30aに嵌め込まれる筒状部11と、筒状部11から外側に張り出して屋外床部30に載せられる外側張出部12と、を備えており、避難ハッチ20は、外側に張り出して設けられるフランジ部22を備えており、外側張出部12は、屋外床部30とフランジ部22との間に配置され、フランジ部22よりも張出寸法が短く設定されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外床部に設置される避難ハッチの取付構造であって、
前記避難ハッチは、外側に張り出して設けられるフランジ部を備え、取付部材を介して前記屋外床部に設置されており、
前記取付部材は、
前記屋外床部に形成された開口部に嵌め込まれる筒状部と、
前記筒状部から外側に張り出して前記屋外床部に載せられる外側張出部と、を備えており、
前記外側張出部は、前記屋外床部と前記フランジ部との間に配置され、前記フランジ部よりも張出寸法が短く設定されていることを特徴とする避難ハッチの取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載の避難ハッチの取付構造であって、
前記取付部材は、前記筒状部の内側面から前記屋外床部に向かって固定材が打ち込まれることで前記屋外床部に固定されており、
前記避難ハッチは、筒状の本体枠を備え、前記本体枠の外側面が、前記筒状部の前記内側面と当該内側面から打ち込まれた前記固定材の頭部とに対向した状態で、前記取付部材によって支持されていることを特徴とする避難ハッチの取付構造。
【請求項3】
請求項2に記載の避難ハッチの取付構造において、
前記避難ハッチは、
前記本体枠に固定される避難はしごと、
前記本体枠のうち、少なくとも前記避難はしごが固定される部分を補強する補強部材と、を備えており、
前記フランジ部は、前記本体枠の上端部から外側に張り出して設けられていることを特徴とする避難ハッチの取付構造。
【請求項4】
請求項3に記載の避難ハッチの取付構造において、
前記取付部材は、
前記筒状部の下端から内側に張り出して前記避難ハッチの前記本体枠を支持する内側張出部と、
前記筒状部の上下方向中央部に設けられて前記避難ハッチの前記補強部材を支持する支持部材と、を備えており、
前記外側張出部は、前記筒状部の上端から外側に張り出して前記フランジ部を支持することを特徴とする避難ハッチの取付構造。
【請求項5】
請求項4に記載の避難ハッチの取付構造において、
前記支持部材に前記補強部材が載った状態で、前記支持部材と前記補強部材とが連結されていることを特徴とする避難ハッチの取付構造。
【請求項6】
請求項1に記載の避難ハッチの取付構造において、
前記屋外床部を構成する床本体は、上面及び下面と前記開口部の側面が防水シートによって被覆されており、
前記開口部の側面と当該側面を被覆する前記防水シートとの間には、下端部が、前記屋外床部よりも下方に突出する水切り材が設けられていることを特徴とする避難ハッチの取付構造。
【請求項7】
避難ハッチを屋外床部に取り付けるための取付部材であって、
前記屋外床部に形成された開口部に嵌め込まれる筒状部と、
前記筒状部から外側に張り出して前記屋外床部に載せられる外側張出部と、を備えており、
前記外側張出部は、前記屋外床部と前記避難ハッチのフランジ部との間に配置され、前記フランジ部よりも張出寸法が短く設定されていることを特徴とする避難ハッチの取付部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、避難ハッチの取付構造及び取付部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、4階建て以上の建物を木造建築物として建築することが行われている。4階建て以上の建物を木造建築物として建築する場合は、必要な耐震性能や耐火性能、防水性能を付与するだけでなく、バルコニーや屋外廊下等の屋外部分に避難用設備を設置し、上層階からの避難経路を確保することが必須となる。
例えば特許文献1には、木造建築物のバルコニー床に設置される避難ハッチの取付構造について記載されている。この取付構造においては、バルコニー床に形成されたハッチ取付開口の周囲に環状の取付枠部材を取り付けて、避難ハッチの取付フランジ部を取付枠部材の上面に載置して、避難ハッチの筒状本体枠の内側面からハッチ取付開口の内側面に向けて打ち込み固定部材を打ち込むことで、避難ハッチをハッチ取付開口に固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1において、避難ハッチは、バルコニー床の上面に取り付けられた取付枠部材の更に上面に載せられており、取付枠部材は、避難ハッチの取付フランジ部よりも外側に張り出しているので、バルコニー床の上面と取付フランジ部の上面との間に形成される段差部の段数が二段となっている。屋外部分にこのような大きな段差部(複数段の段差部)が形成されてしまうと、見栄えの善し悪しもさることながら、歩行する上での障害ともなり得るため、段差部を極力小さくすることが求められている。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、避難ハッチが設置された屋外床部の見栄えを良くするとともに安全性の向上を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、例えば
図1~
図7に示すように、
屋外床部30に設置される避難ハッチ20の取付構造であって、
前記避難ハッチ20は、外側に張り出して設けられるフランジ部22を備え、取付部材10を介して前記屋外床部30に設置されており、
前記取付部材10は、
前記屋外床部30に形成された開口部30aに嵌め込まれる筒状部11と、
前記筒状部11から外側に張り出して前記屋外床部30に載せられる外側張出部12と、を備えており、
前記外側張出部12は、前記屋外床部30と前記フランジ部22との間に配置され、前記フランジ部22よりも張出寸法が短く設定されていることを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、取付部材10の外側張出部12は、屋外床部30と避難ハッチ20のフランジ部22との間に配置され、避難ハッチ20のフランジ部22よりも張出寸法が短く設定されているので、屋外床部30の上面とフランジ部22の上面との間に形成される段差部の段数が一段となる。したがって、段差部の段数が複数段となる場合に比して、避難ハッチ20を屋外床部30に設置することにより形成される段差部を極力小さくすることが容易であるので、避難ハッチ20が設置された屋外床部30の見栄えを良くすることができるとともに安全性の向上を図ることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、例えば
図1~
図7に示すように、
請求項1に記載の避難ハッチ20の取付構造であって、
前記取付部材10は、前記筒状部11の内側面から前記屋外床部30に向かって固定材15が打ち込まれることで前記屋外床部30に固定されており、
前記避難ハッチ20は、筒状の本体枠21を備え、前記本体枠21の外側面が、前記筒状部11の前記内側面と当該内側面から打ち込まれた前記固定材15の頭部とに対向した状態で、前記取付部材10によって支持されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、取付部材10は、筒状部11の内側面から屋外床部30に向かって固定材15が打ち込まれることで屋外床部30に固定されており、避難ハッチ20は、筒状の本体枠21を備え、本体枠21の外側面が、筒状部11の内側面と当該内側面から打ち込まれた固定材15の頭部とに対向した状態で、取付部材10によって支持されているので、本体枠21の内側面から打ち込み固定部材(固定材15)の頭部が突出した状態となっていない。このように、避難ハッチ20を、屋外床部30に直接固定するのではなく、取付部材10を介して固定することで、本体枠21の内側面に形成される突起を極力少なくすることが可能となるので、降下用通路(本体枠21を構成する側壁で囲まれた空間)内の見栄えを良くすることができるとともに安全性の向上を図ることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、例えば
図1~
図5に示すように、
請求項2に記載の避難ハッチ20の取付構造において、
前記避難ハッチ20は、
前記本体枠21に固定される避難はしご24と、
前記本体枠21のうち、少なくとも前記避難はしご24が固定される部分(一側壁21a)を補強する補強部材26と、を備えており、
前記フランジ部22は、前記本体枠21の上端部から外側に張り出して設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、避難ハッチ20は、本体枠21の上端部から外側に張り出して設けられるフランジ部22と、本体枠21に固定される避難はしご24と、本体枠21のうち、少なくとも避難はしご24が固定される部分(一側壁21a)を補強する補強部材26と、を備えているので、避難はしご24の降下時に生じる可能性がある本体枠21(特に一側壁21a)のバタつきを抑えることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、例えば
図1~
図7に示すように、
請求項3に記載の避難ハッチ20の取付構造において、
前記取付部材10は、
前記筒状部11の下端から内側に張り出して前記避難ハッチ20の前記本体枠21を支持する内側張出部13と、
前記筒状部11の上下方向中央部に設けられて前記避難ハッチ20の前記補強部材26を支持する支持部材14と、を備えており、
前記外側張出部12は、前記筒状部11の上端から外側に張り出して前記避難ハッチ20の前記フランジ部22を支持することを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、取付部材10は、筒状部11の上端(外側張出部12)と下端(内側張出部13)と上下方向中央部(支持部材14)の三点で避難ハッチ20を支持しているので、避難ハッチ20の設置状態を強固かつ安定的なものとすることができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、例えば
図2,
図4に示すように、
請求項4に記載の避難ハッチ20の取付構造において、
前記支持部材14に前記補強部材26が載った状態で、前記支持部材14と前記補強部材26とが連結されていることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、取付部材10の支持部材14は、当該支持部材14に避難ハッチ20の補強部材26が載った状態で、補強部材26と連結されているので、支持部材14に対する補強部材26の位置ずれを防止することができる。したがって、補強部材26による補強効果が増大するので、避難はしご24の降下時に生じる可能性がある本体枠21のバタつきを効果的に抑えることが可能となる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、例えば
図1~
図4に示すように、
請求項1に記載の避難ハッチ20の取付構造において、
前記屋外床部30を構成する床本体31は、上面及び下面と前記開口部30aの側面が防水シート36によって被覆されており、
前記開口部30aの側面と当該側面を被覆する前記防水シート36との間には、下端部が、前記屋外床部30よりも下方に突出する水切り材37が設けられていることを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、屋外床部30を構成する床本体31は、上面及び下面と開口部30aの側面が防水シート36によって被覆されており、開口部30aの側面と当該側面を被覆する防水シート36との間には、下端部が、屋外床部30よりも下方に突出する水切り材37が設けられているので、開口部30aの下側縁における雨水等の切れを良くすることができ、屋外床部30の防水性能を向上できる。
【0018】
請求項7に記載の発明は、例えば
図1~
図7に示すように、
避難ハッチ20を屋外床部30に取り付けるための取付部材10であって、
前記屋外床部30に形成された開口部30aに嵌め込まれる筒状部11と、
前記筒状部11から外側に張り出して前記屋外床部30に載せられる外側張出部12と、を備えており、
前記外側張出部12は、前記屋外床部30と前記避難ハッチ20のフランジ部22との間に配置され、前記フランジ部22よりも張出寸法が短く設定されていることを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の発明によれば、取付部材10の外側張出部12は、屋外床部30と避難ハッチ20のフランジ部22との間に配置され、避難ハッチ20のフランジ部22よりも張出寸法が短く設定されているので、屋外床部30の上面とフランジ部22の上面との間に形成される段差部の段数が一段となる。したがって、段差部の段数が複数段となる場合に比して、避難ハッチ20を屋外床部30に設置することにより形成される段差部を極力小さくすることが容易であるので、避難ハッチ20が設置された屋外床部30の見栄えを良くすることができるとともに安全性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、避難ハッチが設置された屋外床部の見栄えを良くするとともに安全性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】避難ハッチの取付構造の一例を説明する側断面図である。
【
図2】避難ハッチの取付構造の一例を説明する他の側断面図である。
【
図5】(a)は避難ハッチの取付構造の一例を説明する平面図、(b)は避難ハッチの取付構造の一例を示す伏図である。
【
図6】避難ハッチの取付部材の一例を説明する平面図である。
【
図7】避難ハッチの取付部材の一例を説明する図であり、(a)は
図6のA-A断面図、(b)は
図6のB-B断面図、(c)は
図6のC-C断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
なお、以下の実施形態及び図示例における方向は、あくまでも説明の便宜上設定したものである。本実施形態では、避難ハッチ20の奥行き方向を前後方向(屋内側を後側、屋外側を前側)とし、避難ハッチ20の幅方向を左右方向とし、屋外床部30の厚さ方向(避難ハッチ20が設置される建物の高さ方向)を上下方向としている。
【0023】
図1~
図4において符号10は、取付部材を示す。取付部材10は、避難ハッチ20を、建物の屋外床部30に取り付けるための部材である。
避難ハッチ20が設置される建物は、複数階建ての建物であり、住宅とされている。住宅は、戸建て住宅でもよいし、複数の住戸を備えた共同住宅(集合住宅)でもよい。なお、本実施形態の建物は、4階建て以上の木造の戸建て住宅とされているが、これに限られるものではなく、例えば、木造と非木造(鉄筋コンクリート造、鉄骨造等)を組み合わせた混構造の戸建て住宅とされていてもよい。
【0024】
このような建物は、下階の壁(外壁)と上階の壁(外壁)との間に設けられて屋外側(前側)に張り出す屋外床部30を有する。屋外床部30は、建物における下階の壁と上階の壁との間に設けられるので、当該建物の躯体と一体になっている。すなわち、屋外床部30は、建物の躯体を構成している。
また、屋外床部30は、少なくとも1階よりも上の階に位置し、バルコニーや屋外廊下等の床部として利用される。そして、屋外床部30には、折りたたみ式の避難はしご24を備えた避難ハッチ20が設置される。
【0025】
本実施形態における屋外床部30の床本体31は、木製の建築用パネルによって構成されている。
建築用パネルとは、縦横の框材31a(すなわち、芯材)が矩形状に組み立てられるとともに、矩形枠の内部に補助桟材が縦横に組み付けられて枠体が構成され、この枠体の両面もしくは片面に面材31bが貼設されたものであり、内部中空な構造となっている。さらに、その内部中空な部分には、通常、グラスウールやロックウール等の断熱材が装填される。また、外壁の壁本体も同様の建築用パネルによって構成されている。
【0026】
なお、本実施形態の床本体31(及び壁本体)は建築用パネルによって構成されるものとしたが、これに限られるものではない。
すなわち、本実施形態の建物は、屋外床部30が設けられた階とその直下の階が、少なくとも所謂パネル工法によって構築されたものであるが、軸組構法や壁式工法、ツーバイフォー工法等の従来公知の他の工法によって構築されたものであってもよい。その場合、建築用パネルは用いられないため、床本体31は、根太(すなわち、芯材)や床板によって構成される。
【0027】
屋外床部30には、避難ハッチ20の取付部材10が嵌め込まれる矩形状の開口部30aが形成されている。具体的には、複数の框材31aによって矩形状に組まれた開口を床本体31に形成し、当該開口を、屋外床部30の開口部30aとしている。すなわち、開口部30aは、四つの側面を有し、屋外床部30を厚さ方向(上下方向)に貫通する角型の貫通孔とされている。
【0028】
床本体31は、当該床本体31の表層を構成する表層部によって被覆されている。このような表層部には、例えば石膏ボード等によって構成された耐火面材32、例えばスタイロフォーム(登録商標)等によって構成された断熱パネル33、第一下地合板34、第二下地合板35などが含まれる。その他にも、防水シート36や水切り材37などが含まれてもよい。
表層部について詳細に説明すると、床本体31は、上面及び下面と開口部30aの側面が、2枚重ねの耐火面材32によって被覆されている。以下、2枚重ねの耐火面材32のうち、一方の耐火面材32である床本体31側の耐火面材32を内側の耐火面材32と称し、他方の耐火面材32を外側の耐火面材32と称する。
【0029】
開口部30aの側面を被覆する耐火面材32は、下端面が、床本体31の下面を被覆する外側の耐火面材32の表面(下面)と面一になっている。また、開口部30aの側面を被覆する耐火面材32のうち、内側の耐火面材32は、上端面が、床本体31の上面と面一になっており、外側の耐火面材32は、上端面が、床本体31の上面を被覆する内側の耐火面材32の上面と面一になっている。
床本体31の上面を被覆する耐火面材32は、床本体31の上面と開口部30aの側面を被覆する耐火面材32の上端面に跨って配置されている。具体的には、床本体31の上面を被覆する耐火面材32のうち、内側の耐火面材32は、開口部30a中央側の側端面が、開口部30aの側面を被覆する内側の耐火面材32における開口部30a中央側の面と面一になっており、外側の耐火面材32は、開口部30a中央側の側端面が、開口部30aの側面を被覆する外側の耐火面材32の表面(開口部30a中央側の面)と面一になっている。
【0030】
床本体31の上面を被覆する耐火面材32の上には、開口部30aを避けて断熱パネル33が設けられている。
断熱パネル33は、上面が傾斜面となった水勾配つき断熱パネルとされており、屋外床部30に水勾配を容易に形成できるようになっている。本実施形態の断熱パネル33は、上面が後側(屋内側)から前側(屋外側)へ向かって下り傾斜している。
【0031】
開口部30aの側面を被覆する耐火面材32の表面側(開口部30a中央側)には第一下地合板34が設けられている。また、床本体31の上面を被覆する耐火面材32の表面側(上側)には第二下地合板35が設けられている。なお、床本体31の上面を被覆する耐火面材32の上には、上記のように断熱パネル33が設けられているので、第二下地合板35は、断熱パネル33の上に設けられた状態となっている。
そして、第一下地合板34の上端部と、第二下地合板35における開口部30a中央側の側端部は隣接しており、第一下地合板34の表面(開口部30a中央側の面)と第二下地合板35における開口部30a中央側の側端面は面一となっている。また、第一下地合板34の下端面は、開口部30aの側面を被覆する耐火面材32の下端面と面一になっている。
【0032】
第一下地合板34と第二下地合板35は、上記のように隣接しているため、第一下地合板34と第二下地合板35の表面は連続的な状態となっている。そして、このような第一下地合板34及び第二下地合板35の表面には、防水シート36が連続的に貼り付けられている。
防水シート36は、上下階の壁(外壁)の表面側にも貼り付けられるものとし、屋外床部30側の防水シート36と連続的な状態となっているものとする。なお、上下階の壁(外壁)の表面側に貼り付けられた防水シート36の表面側には更に透湿防水シートや外壁仕上げ材が適宜設けられる。
【0033】
第一下地合板34の下端部と防水シート36との間には、下端部が、第一下地合板34の下端部や、床本体31の下面を被覆する耐火面材32よりも下方に突出する水切り材37が設けられている。開口部30aの防水シート36に付着した雨水等は、水切り材37の下端まで伝ってから下方に落ちるので、第一下地合板34と防水シート36との間や、第一下地合板34と耐火面材32との間などに浸み込みにくく、雨仕舞いに優れる。
【0034】
第二下地合板35の上(防水シート36の上)には、図示しない床仕上げ材等が設けられている。この床仕上げ材は、開口部30a及び避難ハッチ20を避けた位置に配置されるとともに、避難ハッチ20との間に大きな隙間が生じないように寸法設定されている。
また、この床仕上げ材は、避難ハッチ20との間に大きな段差が生じないように寸法設定されている。具体的には、例えば、床仕上げ材の厚さ寸法は、後述するフランジ部22の突出方向先端部と、屋外床部30の上面(防水シート36)との間の離間寸法よりも長く設定されている。
【0035】
以上のように構成された屋外床部30には、避難用設備である避難ハッチ20が設置されている。
避難ハッチ20は、例えばステンレスや鋼等の金属によって全体が構成されており、
図1~
図5に示すように、筒状の本体枠21と、フランジ部22と、突出部23と、避難はしご24と、を備える。
【0036】
本体枠21は、開口部30a内に配置される部分であり、開口部30aの形状に対応して角筒状に形成されて上下が開口し、上下方向に人や物品が通過できるようになっている。すなわち、本体枠21は、四つの側壁によって構成されている。そして、本体枠21の上側開口は上蓋20aによって開閉可能となっており、下側開口は下蓋20bによって開閉可能となっている。
上蓋20aは片開き式の蓋であり、人が乗っても変形しない程度の剛性を有する。本実施形態の避難ハッチ20には、チャイルドロック20dが設けられており、このチャイルドロック20dを解除しないと、上蓋20aを開けることができないようになっている。
【0037】
下蓋20bも片開き式の蓋であり、リンク装置20cによって上蓋20aと連繋している。すなわち、下蓋20bは、リンク装置20cによって、上蓋20aを開けるのと同時に開き、上蓋20aを閉めるのと同時に閉まるようになっている。なお、上蓋20aは必須であるが、下蓋20bは省略されてもよく、その場合はリンク装置20cも省略される。
【0038】
フランジ部22は、本体枠21が開口部30a内に配置された状態において、屋外床部30の上方に位置する部分であり、本体枠21を構成する側壁の上端部から外側(床本体31側)へ突出している。本実施形態のフランジ部22は、本体枠21の上端部(上蓋20aにおける周縁部の直下)に全周に亘って外側に張り出した状態で設けられている。
フランジ部22は、本体枠21に対して一体に設けられている。すなわち、本体枠21とフランジ部22とを折曲加工で形成してもよいし、フランジ部22を本体枠21に溶接等で接合してもよい。
フランジ部22の突出方向先端部と、屋外床部30の上面(防水シート36)と、の間にはシーリング材38が充填されている。具体的には、フランジ部22の突出方向先端部は、屋外床部30の上面(防水シート36)から離間しており、この離間部分にシーリング材38が充填されている。
【0039】
突出部23は、本体枠21が開口部30a内に配置された状態において、開口部30a内に位置する部分であり、本体枠21を構成する側壁の下端から外側(床本体31側)へ突出している。すなわち、突出部23は、フランジ部22と突出方向(張出方向)が同じであり、フランジ部22よりも突出寸法(張出寸法)が短く設定されている。本実施形態の突出部23は、本体枠21の下端に全周に亘って外側に張り出した状態で設けられている。
突出部23は、本体枠21に対して一体に設けられている。すなわち、本体枠21と突出部23とを折曲加工で形成してもよいし、突出部23を本体枠21に溶接等で接合してもよい。
突出部23の先端部は、上側へ折り曲げられている。すなわち、突出部23は、断面L字状に形成されている。本実施形態の突出部23は、本体枠21の下端に全周に亘って外側に張り出した状態で設けられている。
【0040】
避難はしご24は、使用時に下方に展開する折りたたみ式の梯子であり、本体枠21を構成する四つの側壁のうちの一側壁21aに取り付けられている。本実施形態の避難はしご24は、ワイヤー巻き取り可能に構成されており、巻取部によってワイヤーを巻き取ることで折りたたむことが可能となっている。
避難はしご24は、本体枠21を構成する一側壁21aの内面(開口部30a中央側の面)に対して、取付ボルト25によって固定されている。具体的には、避難はしご24には取付ボルト25が通される通孔が形成されているとともに、本体枠21の一側壁21aにも取付ボルト25が通される通孔が形成されている。そして、取付ボルト25は、本体枠21の一側壁21aに設けられた通孔と、避難はしご24に設けられた通孔と、に通されて、一側壁21aの内面側に配置されたナット25aに対してねじ込まれている。
【0041】
さらに、避難ハッチ20は、本体枠21の一側壁21aを補強する補強部材26を備えている。すなわち、本実施形態の避難ハッチ20は、補強部材26によって一側壁21aの変形(特に前後方向への変形)を抑制して、避難はしご24の降下時に生じる可能性がある本体枠21(特に一側壁21a)のバタつきを抑えるようになっている。
補強部材26は、一側壁21aの外面(床本体31側の面)に接する第一板部26aと、第一板部26aの下端から外側(床本体31側)に向かって延出する第二板部26bと、を備える断面L字状の部材である。
【0042】
第一板部26aには、取付ボルト25が通される通孔が形成されている。すなわち、取付ボルト25は、本体枠21の通孔と、避難はしご24の通孔と、に通されるとともに、補強部材26の第一板部26aに設けられた通孔にも通される。これにより、本体枠21における一側壁21aの内面(開口部30a中央側の面)には避難はしご24が固定されるとともに、一側壁21aの外面(床本体31側の面)には補強部材26が固定されることとなる。なお、補強部材26は、本体枠21に溶接等によって固定されていてもよい。
このように、補強部材26に通孔を設けて、本体枠21の通孔だけでなく、補強部材26の通孔にも取付ボルト25を通すことで、本体枠21の通孔を保護できるので、取付ボルト25による強固な固定状態を長期間に亘って維持することが可能となる。
また、補強部材26の第二板部26bには、樹脂製(あるいは金属製等)の嵌込材27が通される通孔が形成されている。
【0043】
以上のように構成された避難ハッチ20は、当該避難ハッチ20を支持する受金具枠である取付部材10を介して、屋外床部30に設置されている。
取付部材10は、例えばステンレスや鋼等の金属によって全体が構成されており、
図1~
図7に示すように、筒状部11と、外側張出部12と、内側張出部13と、を備える。
【0044】
筒状部11は、開口部30a内に配置される部分であり、開口部30aの形状に対応して角筒状に形成されて上下が開口している。すなわち、筒状部11は、四つの側壁によって構成されている。筒状部11は、当該筒状部11を構成する側壁が、屋外床部30(具体的には開口部30aの側面を被覆する防水シート36)と、避難ハッチ20の本体枠21を構成する側壁と、の間に配置されるように寸法設定されている。
【0045】
外側張出部12は、筒状部11が開口部30a内に配置された状態において、屋外床部30に載せられる部分であり、筒状部11を構成する側壁の上端から外側(床本体31側)へ突出している。すなわち、外側張出部12は、避難ハッチ20のフランジ部22と突出方向(張出方向)が同じである。本実施形態の外側張出部12は、筒状部11の上端に全周に亘って外側に張り出した状態で設けられている。
外側張出部12は、筒状部11に対して一体に設けられている。すなわち、筒状部11と外側張出部12とを折曲加工で形成してもよいし、外側張出部12を筒状部11に溶接等で接合してもよい。
外側張出部12は、当該外側張出部12に避難ハッチ20のフランジ部22を載せた状態で、サンロック等の連結材12aによってフランジ部22と連結されている。具体的には、外側張出部12の先端部は、上側へ折り曲げられて折曲部とされており、この折曲部に連結材12aが通される通孔が形成されている。
【0046】
外側張出部12は、開口部30aの縁に、当該開口部30aの縁に沿って配置されており、外側張出部12よりも外側の位置には、当該開口部30aの縁に沿ってシーリング材38が設けられている。すなわち、外側張出部12の突出寸法(張出寸法)は、フランジ部22の突出寸法(張出寸法)よりも短く設定されており、避難ハッチ20のフランジ部22は、外側張出部12とシーリング材38の双方に跨って配置されている。
【0047】
内側張出部13は、筒状部11が開口部30a内に配置された状態において、開口部30a内に位置する部分であり、筒状部11を構成する側壁の下端から内側(開口部30a中央側)へ突出している。本実施形態の内側張出部13は、筒状部11の下端に全周に亘って内側に張り出した状態で設けられている。
内側張出部13は、筒状部11に対して一体に設けられている。すなわち、筒状部11と内側張出部13とを折曲加工で形成してもよいし、内側張出部13を筒状部11に溶接等で接合してもよい。
内側張出部13は、当該内側張出部13に避難ハッチ20の本体枠21を載せた状態、すなわち当該内側張出部13の上面と避難ハッチ20の突出部23とが接した状態で、サンロック等の連結材13aによって本体枠21と連結されている。具体的には、内側張出部13の先端部は、上側へ折り曲げられて折曲部とされている。この折曲部は、内側張出部13に本体枠21が載った状態において、本体枠21を構成する側壁の内面に対向する状態となるように設けられており、この折曲部に、連結材13aが通される通孔が形成されている。
なお、本実施形態においては、例えば
図3及び
図4に示すように、本体枠21を構成する側壁のうち一側壁21a以外の側壁と、内側張出部13の先端部(折曲部)と、が連結材13aによって連結されているが、これに限られるものではない。
【0048】
さらに、取付部材10は、避難ハッチ20を補強部材26の下方から支持する支持部材14を備えている。支持部材14は、筒状部11の一側壁11aに取り付けられている。この一側壁11aは、筒状部11を構成する四つの側壁のうち、避難ハッチ20の一側壁21a(補強部材26が取り付けられている側壁)の外面に対向する側壁である。
支持部材14は、一側壁11aの内面(開口部30a中央側の面)に接する接合板部14aと、接合板部14aの上端から内側(開口部30a中央側)に向かって延出する上側板部14bと、接合板部14aの下端から内側に向かって延出する下側板部14cと、を備える断面コ字状の部材である。支持部材14は、接合板部14aが筒状部11の一側壁11aに対して溶接等で接合されて、筒状部11に一体に設けられている。
【0049】
上側板部14bは、当該上側板部14bに避難ハッチ20の補強部材26を載せた状態、すなわち当該上側板部14bの上面と補強部材26の第二板部26bとが接した状態で、嵌込材27によって補強部材26と連結されている。具体的には、上側板部14bには、嵌込材27が通される通孔14dが形成されている。
このように、第二板部26bの通孔と、上側板部14bの通孔14dと、の双方に嵌込材27を通すことで、支持部材14に対する補強部材26の位置ずれ(特に前後方向への位置ずれ)を防止できる。これにより、補強部材26による一側壁21aの変形(特に前後方向への変形)を抑制する効果が増大するので、避難はしご24の降下時に生じる可能性がある本体枠21のバタつきを効果的に抑えることが可能となる。
【0050】
取付部材10は、筒状部11を構成する側壁の内面から床本体31を構成する芯材(框材31a)に向かって固定材15が打ち込まれることで屋外床部30に固定されている。
固定材15は、例えばコーチボルトが用いられており、筒状部11を構成する四つの側壁に形成された各々の通孔11bに通される。そして、固定材15は、第一下地合板34及び2枚重ねの耐火面材32を貫通するとともに、床本体31の芯材である框材31aに向かって打ち込まれている。なお、本実施形態の固定材15は、框材31aも貫通している。
【0051】
ここで、開口部30aの側面と、床本体31の上面のうち開口部30aの周縁部と、は2枚重ねの防水シート36によって被覆されている。具体的には、第一下地合板34及び第二下地合板35の表面に貼り付けられている防水シート(第一の防水シート)36のうち、取付部材10の外側張出部12に対向する部位と、第一下地合板34の表面を覆う部位と、水切り材37を覆う部位と、には防水シート(第二の防水シート)36が貼り付けられている。このように、第一の防水シート36のうち、少なくとも、取付部材10と接触し得る部分や、固定材15が貫通する部分に、第二の防水シート36を貼り付けることによって、屋外床部30における避難ハッチ20の設置箇所(取付部材10の設置箇所)の防水性を高めることが可能となる。
【0052】
また、第一下地合板34の表面に貼り付けられている防水シート(第二の防水シート)36と、取付部材10の筒状部11を構成する側壁と、の間には調整材16が設けられている。そして、筒状部11から屋外床部30へと打ち込まれた固定材15は、調整材16を貫通している。
前述したように、本実施形態の断熱パネル33は、上面が傾斜面となっている。その一方で、本実施形態の取付部材10は、外側張出部12が、筒状部11を構成する側壁に対して直角に張り出しており、内側張出部13も、筒状部11を構成する側壁に対して直角に張り出している。したがって、筒状部11を開口部30aに嵌め込んで外側張出部12を屋外床部30に載せると、開口部30aの側面と、筒状部11を構成する側壁と、の間隔が場所によって異なることとなる。
【0053】
具体的には、本実施形態においては、断熱パネル33の上面が後側(屋内側)から前側(屋外側)へ向かって下り傾斜しているので、例えば
図4に示すように、開口部30aの側面のうち屋内側の側面と、筒状部11を構成する側壁のうち屋内側の側壁(一側壁11a)と、の間隔は下に向けて徐々に狭くなるとともに、開口部30aの側面のうち屋外側の側面と、筒状部11を構成する側壁のうち屋外側の側壁と、の間隔は下に向けて徐々に広くなる。本実施形態では、固定材15を打ち込んでも、この状態が維持されるように、適宜厚みが調整された調整材16を通孔11bと屋外床部30との間に配置している。
これにより、固定材15を打ち込んでも、外側張出部12と筒状部11が直交するとともに内側張出部13と筒状部11が直交する状態が維持されることとなる。また、本実施形態の避難ハッチ20は、フランジ部22が、本体枠21を構成する側壁に対して直角に張り出しているとともに、突出部23も、本体枠21を構成する側壁に対して直角に張り出している。したがって、本実施形態の避難ハッチ20は、フランジ部22の上面が断熱パネル33の上面と略平行な状態で屋外床部30に設置されることとなるが、これに限られるものではなく、例えば、フランジ部22の上面が水平な状態で屋外床部30に設置されてもよい。
【0054】
また、本実施形態の取付部材10において、外側張出部12は、筒状部11に対して一体に設けられている。すなわち、筒状部11を構成する左右の側壁と、外側張出部12のうち当該左右の側壁から延出する部位と、を折曲加工で形成してもよいし、溶接等で接合してもよい。また、筒状部11を構成する前後の側壁と、外側張出部12のうち当該前後の側壁から延出する部位と、を折曲加工で形成してもよいし、溶接等で接合してもよい。
また、本実施形態の取付部材10においては、
図6に示すように、外側張出部12のうち左右の側壁から延出する部位は、筒状部11を構成する当該左右の側壁と長さ寸法(前後方向の寸法)が同一に設定されているのに対し、外側張出部12のうち前後の側壁から延出する部位は、筒状部11を構成する当該前後の側壁よりも長さ寸法(左右方向の寸法)が長く設定されている。そして、外側張出部12のうち、前後の側壁から延出する部位と、左右の側壁から延出する部位と、は端面同士が接した状態(突付状態)になっているとともに、上面同士が面一の状態になっており、下面同士が面一の状態になっている。
【0055】
また、本実施形態の取付部材10において、内側張出部13は、筒状部11に対して一体に設けられている。すなわち、筒状部11を構成する左右の側壁と、内側張出部13のうち当該左右の側壁から延出する部位と、を折曲加工で形成してもよいし、溶接等で接合してもよい。また、筒状部11を構成する前後の側壁と、内側張出部13のうち当該前後の側壁から延出する部位と、を折曲加工で形成してもよいし、溶接等で接合してもよい。
また、本実施形態の取付部材10においては、
図5(b)や
図6に示すように、内側張出部13のうち前後の側壁から延出する部位は、筒状部11を構成する当該前後の側壁と長さ寸法(左右方向の寸法)が同一に設定されているのに対し、内側張出部13のうち左右の側壁から延出する部位は、筒状部11を構成する当該左右の側壁よりも長さ寸法(前後方向の寸法)が短く設定されている。そして、内側張出部13のうち、前後の側壁から延出する部位と、左右の側壁から延出する部位と、は端面同士が接した状態(突付状態)になっているとともに、上面(突出部23と接する面)同士が面一の状態になっており、下面同士が面一の状態になっている。
【0056】
また、本実施形態の取付部材10においては、
図5(b)に示すように、内側張出部13のうち前後の側壁から延出する部位と、筒状部11を構成する左右の側壁と、は接合されておらず隙間が設けられており、これらの隙間は水抜き10aとされている。
【0057】
また、本実施形態の取付部材10においては、前述したように、内側張出部13の先端部は折曲部とされている。すなわち、内側張出部13には折曲部が設けられている。そして、内側張出部13のうち後側の側壁(一側壁11a)から延出する部位に設けられる折曲部は、内側張出部13のうち左右の側壁から延出する部位に設けられる折曲部と連続的な状態となっているとともに、内側張出部13のうち前側の側壁から延出する部位に設けられる折曲部は、内側張出部13のうち左右の側壁から延出する部位に設けられる折曲部と連続的な状態となっている。すなわち、内側張出部13のうち、筒状部11を構成する前側の側壁から延出する部位と、筒状部11を構成する後側の側壁から延出する部位と、においては、当該部位の左端部及び右端部を除く部分に折曲部が設けられている。
【0058】
次に、取付部材10を介して避難ハッチ20を屋外床部30に設置する設置手順の一例について説明する。
まず、床本体31に、耐火面材32、断熱パネル33、第一下地合板34、第二下地合板35、防水シート36、水切り材37等を取り付けて、屋外床部30を形成する。開口部30aの側面と、床本体31の上面のうち開口部30aの周縁部と、に設ける防水シート36は2枚重ねにしておく。
【0059】
次いで、屋外床部30に取付部材10を固定する。
具体的には、取付部材10の筒状部11を屋外床部30の開口部30a内に嵌め込んで、取付部材10の外側張出部12を屋外床部30に載せる。そして、屋外床部30の表面(防水シート36)と、筒状部11の通孔11bとの間に調整材16を差し入れて、筒状部11を構成する側壁の内面から、通孔11b及び調整材16を経て、床本体31を構成する芯材(本実施形態では框材31a)に向かって固定材15を打ち込むことで、取付部材10を屋外床部30に固定する。
【0060】
次いで、取付部材10に避難ハッチ20を固定する。
具体的には、避難ハッチ20の本体枠21を取付部材10の筒状部11内に嵌め込んで、避難ハッチ20のフランジ部22を取付部材10の外側張出部12に載せて、避難ハッチ20の突出部23を取付部材10の内側張出部13に載せて、避難ハッチ20の補強部材26を取付部材10の支持部材14に載せる。これにより、避難ハッチ20の本体枠21を構成する側壁の外面が、取付部材10の筒状部11を構成する側壁の内面と当該内面から打ち込まれた固定材15の頭部とに対向した状態となる。
そして、連結材12aによってフランジ部22と外側張出部12を連結するとともに、連結材13aによって本体枠21と内側張出部13を連結する。
また、取付ボルト25のナット25aを緩めて、取付ボルト25に避難はしご24を引っ掛けた後、ナット25aを締め付けて、本体枠21に避難はしご24を固定する。
また、フランジ部22の突出方向先端部と、屋外床部30の上面(防水シート36)と、の間にシーリング材38を充填する。
【0061】
以上のように避難ハッチ20が設置されることで、屋外床部30の上方から下方へとつながる避難経路が形成されることとなる。すなわち、屋外床部30が設けられた上層階から下層階への避難経路を確保することができる。
なお、本実施形態では、取付部材10に避難ハッチ20を載せる前(補強部材26を支持部材14に載せる前)に嵌込材27を補強部材26に嵌め込んでおき、その状態で補強部材26を支持部材14に載せることで、嵌込材27を支持部材14の通孔14dに嵌め込むようになっているが、これに限られるものではない。
【0062】
本実施形態の避難ハッチ20の取付構造及び取付部材10によれば、以下のような優れた効果を奏する。
すなわち、避難ハッチ20は、外側に張り出して設けられるフランジ部22を備え、取付部材10を介して屋外床部30に設置されており、取付部材10は、屋外床部30に形成された開口部30aに嵌め込まれる筒状部11と、筒状部11から外側に張り出して屋外床部30に載せられる外側張出部12と、を備えており、外側張出部12は、屋外床部30とフランジ部22との間に配置され、フランジ部22よりも張出寸法が短く設定されているので、屋外床部30の上面とフランジ部22の上面との間に形成される段差部の段数が一段となる。したがって、段差部の段数が複数段となる場合に比して、避難ハッチ20を屋外床部30に設置することにより形成される段差部を極力小さくすることが容易であるので、避難ハッチ20が設置された屋外床部30の見栄えを良くすることができるとともに安全性の向上を図ることができる。
【0063】
また、取付部材10は、筒状部11の内側面(筒状部11を構成する側壁の内面)から屋外床部30に向かって固定材15が打ち込まれることで屋外床部30に固定されており、避難ハッチ20は、筒状の本体枠21を備え、本体枠21の外側面(本体枠21を構成する側壁の外面)が、筒状部11の内側面(筒状部11を構成する側壁の内面)と当該内側面から打ち込まれた固定材15の頭部とに対向した状態で、取付部材10によって支持されているので、本体枠21の内側面から打ち込み固定部材(固定材15)の頭部が突出した状態となっていない。
例えば特許文献1の避難ハッチは、筒状本体枠の内側面からハッチ取付開口に向けて打ち込み固定部材を打ち込むことで固定されるので、筒状本体枠の内側面から打ち込み固定部材の頭部が突出した状態となっている。このように、筒状本体枠の内側面、すなわち降下用通路の内面に突起が形成されてしまうと、見栄えの善し悪しもさることながら、避難ハッチの使用時(避難はしごを降下する時)に障害となり得るため、突起を極力少なくすることが求められている。
これに対し、本実施形態のように、避難ハッチ20を、屋外床部30に直接固定するのではなく、取付部材10を介して固定することで、本体枠21の内側面に形成される突起を極力少なくすることが可能となるので、降下用通路(本体枠21を構成する四つの側壁で囲まれた空間)内の見栄えを良くすることができるとともに安全性の向上を図ることができる。
【0064】
なお、本実施形態の取付部材10において、筒状部11の形状は角筒状であるが、これに限られるものではなく、開口部30aの形状に対応した形状であれば、例えば円筒状であってもよい。
また、本実施形態の避難ハッチ20において、本体枠21の形状は角筒状であるが、これに限られるものではなく、開口部30aの形状に対応した形状であれば、例えば円筒状であってもよい。
【0065】
また、避難ハッチ20は、本体枠21の上端部から外側に張り出して設けられるフランジ部22と、本体枠21に固定される避難はしご24と、本体枠21のうち、少なくとも避難はしご24が固定される部分(一側壁21a)を補強する補強部材26と、を備えているので、避難はしご24の降下時に生じる可能性がある本体枠21(特に一側壁21a)のバタつきを抑えることができる。
【0066】
また、取付部材10は、筒状部11の上端から外側に張り出して避難ハッチ20のフランジ部22を支持する外側張出部12と、筒状部11の下端から内側に張り出して避難ハッチ20の本体枠21を支持する内側張出部13と、筒状部11の上下方向中央部に設けられて避難ハッチ20の補強部材26を支持する支持部材14と、を備えている。したがって、取付部材10は、筒状部11の上端(外側張出部12)と下端(内側張出部13)と上下方向中央部(支持部材14)の三点で避難ハッチ20を支持しているので、避難ハッチ20の設置状態を強固かつ安定的なものとすることができる。
【0067】
また、取付部材10の支持部材14は、当該支持部材14に避難ハッチ20の補強部材26が載った状態で、補強部材26と連結されているので、支持部材14に対する補強部材26の位置ずれ(特に前後方向の位置ずれ)を防止することができる。したがって、補強部材26による補強効果(一側壁21aを補強する効果)が増大するので、避難はしご24の降下時に生じる可能性がある本体枠21のバタつきを効果的に抑えることが可能となる。
【0068】
また、屋外床部30を構成する床本体31は、上面及び下面と開口部30aの側面が防水シート36によって被覆されており、開口部30aの側面と当該側面を被覆する防水シート36との間には、下端部が、屋外床部30よりも下方に突出する水切り材37が設けられているので、開口部30aの下側縁における雨水等の切れを良くすることができ、屋外床部30の防水性能を向上できる。
【0069】
また、屋外床部30を構成する木造の床本体31は、上面及び下面と開口部30aの側面が耐火面材32によって被覆されているので、屋外床部30に耐火性能を確実に付与できる。また、耐火面材32の表面側に第一下地合板34及び第二下地合板35が設けられ、第一下地合板34及び第二下地合板35の表面には防水シート36が貼り付けられるので、屋外床部30に防水性能を確実に付与できる。
さらに、取付部材10は、外側張出部12が屋外床部30の上面に載置されるとともに、筒状部11の内側面から床本体31を構成する芯材(框材31a)に向かって固定材15が打ち込まれることで屋外床部30に固定されているので、固定材15による固定位置を、床本体31の上面よりも下方にすることができる。したがって、床本体31の上面よりも上方に、固定材15が打ち込まれる部位を形成する必要がなくなるので、避難ハッチ20を屋外床部30に設置することにより形成される段差部を極力小さくすることが容易となる。
【0070】
例えば特許文献1においては、取付枠部材をバルコニー床の上面に取り付けるにあたって、取付枠部材に耐火性能を付与するために、取付枠部材をバルコニー床と共に耐火ボードで被覆する必要があるが、構造的に複雑化してしまうことから、より簡易な構造で避難ハッチを設置し、施工性を向上させたいという要望がある。
これに対し、本実施形態によれば、取付部材10の設置は、外側張出部12を屋外床部30の上面に載置して、固定材15によって筒状部11を床本体31に固定するだけで済み、避難ハッチ20の設置は、フランジ部22を外側張出部12に載置して、連結材12a,13aによって避難ハッチ20の上部(フランジ部22)及び下部(本体枠21の下端部)を取付部材10に連結するだけで済むので、より簡易な構造で避難ハッチ20を設置でき、施工性を向上させることができる。
加えて、固定材15は、木製の調整材16及び第一下地合板34を貫通したうえで木造の床本体31に打ち込まれるので、固定材15による取付部材10の固定強度、ひいては避難ハッチ20の取付強度を高めることができる。
【0071】
また、取付部材10の外側張出部12と床本体31との間に設けられる防水シート36は2枚重ねになっている。すなわち、外側張出部12と屋外床部30の上面(第一の防水シート36)との間には、更に防水シート(第二の防水シート36)が設けられているので、外側張出部12と屋外床部30との間の防水性能を向上させることができる。
なお、外側張出部12と屋外床部30の上面(第一の防水シート36)との間に、防水シート(第二の防水シート36)に替えて(あるいは加えて)、シーリング材を設けることで、外側張出部12と屋外床部30との間の防水性能を向上させるようにしてもよい。
【0072】
また、避難ハッチ20においては、フランジ部22が、本体枠21の上端部から外側に張り出して設けられている。したがって、例えばフランジ部22が、本体枠21の下端部や上下方向中央部から外側に張り出して設けられる場合に比して、フランジ部22よりも上方に位置する本体枠21の部位の上下寸法を抑えることができるので、避難ハッチ20を屋外床部30に設置することにより形成される段差部を極力小さくすることができる。
また、取付部材10においては、外側張出部12が、筒状部11の上端から外側に張り出して設けられている。したがって、例えば外側張出部12が、筒状部11の下端部や上下方向中央部から外側に張り出して設けられる場合に比して、外側張出部12よりも上方に位置する筒状部11の部位の上下寸法を抑えることができるので、取付部材10を屋外床部30に設置することにより形成される段差部を極力小さくすることができ、ひいては避難ハッチ20を屋外床部30に設置することにより形成される段差部を極力小さくすることが可能となる。
【0073】
また、フランジ部22の突出方向先端部と屋外床部30の上面(第一の防水シート36)との間にはシーリング材38が充填されているので、フランジ部22と屋外床部30との間の防水性能や、外側張出部12と屋外床部30との間の防水性能をより向上させることができる。
また、床本体31の上面を被覆する耐火面材32の上に断熱パネル33が設けられ、断熱パネル33の上に第二下地合板35が設けられているので、屋外床部30に付与された耐火性能の向上に貢献できる。
また、第一下地合板34及び第二下地合板35に貼り付けられた防水シート36のうち、固定材15が貫通する部位に貼り付けられた防水シート36は2枚重ねとなっているので、固定材15が貫通する部位の防水性能を向上できる。
【符号の説明】
【0074】
10 取付部材
11 筒状部
12 外側張出部
13 内側張出部
14 支持部材
15 固定材
20 避難ハッチ
21 本体枠
21a 一側壁
22 フランジ部
24 避難はしご
26 補強部材
30 屋外床部
30a 開口部
31 床本体
36 防水シート
37 水切り材