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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034591
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】電源装置及び電源装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
H02M3/28 P
H02M3/28 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138935
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鎌倉 輝男
(72)【発明者】
【氏名】小林 貴之
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AS01
5H730BB27
5H730BB66
5H730DD04
5H730DD16
5H730EE04
5H730EE07
5H730EE13
5H730EE58
5H730FD01
5H730FD11
5H730FG05
5H730FG07
(57)【要約】
【課題】スイッチング素子の選択肢の制限を緩和する。
【解決手段】電源装置は、第1ブリッジ回路と、第1ブリッジ回路から出力される交流電圧が第1巻線に入力され、誘起された交流電圧を第2巻線から出力する、変圧器と、第2巻線から出力される交流電圧を直流電圧に変換して出力する、第2ブリッジ回路と、第1ブリッジ回路の複数のスイッチング素子に出力する複数の第1駆動パルスと、第2ブリッジ回路の複数のスイッチング素子に出力する複数の第2駆動パルスと、の間の絶対的な位相差を、出力指令値に応じて±180°を中心として制御するとともに、複数の第1駆動パルス及び複数の第2駆動パルスのデューティ比を、出力指令値に応じて制御する、制御部と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ブリッジ回路と、
前記第1ブリッジ回路から出力される交流電圧が第1巻線に入力され、誘起された交流電圧を第2巻線から出力する、変圧器と、
前記第2巻線から出力される交流電圧を直流電圧に変換して出力する、第2ブリッジ回路と、
前記第1ブリッジ回路の複数のスイッチング素子に出力する複数の第1駆動パルスと、前記第2ブリッジ回路の複数のスイッチング素子に出力する複数の第2駆動パルスと、の間の絶対的な位相差を、出力指令値に応じて±180°を中心として制御するとともに、前記複数の第1駆動パルス及び前記複数の第2駆動パルスのデューティ比を、前記出力指令値に応じて制御する、制御部と、
を含む、
ことを特徴とする、電源装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記出力指令値に応じて、前記複数の第1駆動パルス及び前記複数の第2駆動パルスの周波数を制御する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記位相差を、前記出力指令値に応じて、±180°を中心として±90°の範囲で制御する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の電源装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記出力指令値の増加に応じて、前記位相差を増加させる、
ことを特徴とする、請求項1に記載の電源装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記出力指令値が基準値の場合に前記デューティ比を最小又は最大に制御し、前記出力指令値が前記基準値から離れるほど前記デューティ比を大きく又は小さくするように制御する、
ことを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項6】
第1ブリッジ回路と、前記第1ブリッジ回路から出力される交流電圧が第1巻線に入力され、誘起された交流電圧を第2巻線から出力する、変圧器と、前記第2巻線から出力される交流電圧を直流電圧に変換して出力する、第2ブリッジ回路と、を含む電源装置の制御方法であって、
前記第1ブリッジ回路の複数のスイッチング素子に出力する複数の第1駆動パルスと、前記第2ブリッジ回路の複数のスイッチング素子に出力する複数の第2駆動パルスと、の間の絶対的な位相差を、出力指令値に応じて±180°を中心として制御するとともに、前記複数の第1駆動パルス及び前記複数の第2駆動パルスのデューティ比を、前記出力指令値に応じて制御する、
ことを特徴とする、電源装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源装置及び電源装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、絶縁型DAB(Dual Active Bridge)双方向コンバータが記載されている。DABコンバータは、デューティ比を0.5で一定にし且つスイッチング周波数を一定にし、1次側ブリッジ回路と2次側ブリッジ回路との間の位相差を制御することにより、出力電圧、出力電流又は出力電力を制御できる。
【0003】
特許文献2及び3には、DABコンバータにおいてデューティを調整する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5027264号明細書
【特許文献2】特開2016-12969号公報
【特許文献3】特開2016-12970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
DABコンバータの位相差制御では、ソフトスイッチングが出来ずにハードスイッチングになってしまう動作領域が存在する。従って、DABコンバータは、ハードスイッチングを許容できる回路設計が必要となる。そのため、スイッチング素子の選択肢に制限が生じ、また、設計も難化する。
【0006】
本開示は、スイッチング素子の選択肢の制限を緩和することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様の電源装置は、
第1ブリッジ回路と、
前記第1ブリッジ回路から出力される交流電圧が第1巻線に入力され、誘起された交流電圧を第2巻線から出力する、変圧器と、
前記第2巻線から出力される交流電圧を直流電圧に変換して出力する、第2ブリッジ回路と、
前記第1ブリッジ回路の複数のスイッチング素子に出力する複数の第1駆動パルスと、前記第2ブリッジ回路の複数のスイッチング素子に出力する複数の第2駆動パルスと、の間の絶対的な位相差を、出力指令値に応じて±180°を中心として制御するとともに、前記複数の第1駆動パルス及び前記複数の第2駆動パルスのデューティ比を、前記出力指令値に応じて制御する、制御部と、
を含む、
ことを特徴とする。
【0008】
前記電源装置において、
前記制御部は、
前記出力指令値に応じて、前記複数の第1駆動パルス及び前記複数の第2駆動パルスの周波数を制御する、
ことを特徴とする。
【0009】
前記電源装置において、
前記制御部は、
前記位相差を、前記出力指令値に応じて、±180°を中心として±90°の範囲で制御する、
ことを特徴とする。
【0010】
前記電源装置において、
前記制御部は、
前記出力指令値の増加に応じて、前記位相差を増加させる、
ことを特徴とする。
【0011】
前記電源装置において、
前記制御部は、
前記出力指令値が基準値の場合に前記デューティ比を最小又は最大に制御し、前記出力指令値が前記基準値から離れるほど前記デューティ比を大きく又は小さくするように制御する、
ことを特徴とする。
【0012】
本開示の一態様の電源装置の制御方法は、
第1ブリッジ回路と、前記第1ブリッジ回路から出力される交流電圧が第1巻線に入力され、誘起された交流電圧を第2巻線から出力する、変圧器と、前記第2巻線から出力される交流電圧を直流電圧に変換して出力する、第2ブリッジ回路と、を含む電源装置の制御方法であって、
前記第1ブリッジ回路の複数のスイッチング素子に出力する複数の第1駆動パルスと、前記第2ブリッジ回路の複数のスイッチング素子に出力する複数の第2駆動パルスと、の間の絶対的な位相差を、出力指令値に応じて±180°を中心として制御するとともに、前記複数の第1駆動パルス及び前記複数の第2駆動パルスのデューティ比を、前記出力指令値に応じて制御する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、スイッチング素子の選択肢の制限を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施形態の電源装置の構成を示す図である。
図2図2は、DABのブリッジ回路間の位相差と出力電力との関係を示す図である。
図3図3は、DABのブリッジ回路間の位相差と循環電流との関係を示す図である。
図4図4は、第1比較例の動作領域を示す図である。
図5図5は、第1比較例の動作領域を示す図である。
図6図6は、第2比較例の出力指令値と位相差との関係の一例を示す図である。
図7図7は、第2比較例の出力指令値とスイッチング周波数との関係の一例を示す図である。
図8図8は、第2比較例の動作領域を示す図である。
図9図9は、第2比較例の動作領域を示す図である。
図10図10は、第2比較例の電源装置の出力指令値と出力電力との関係を示す図である。
図11図11は、第1比較例及び第2比較例の回路シミュレーション結果を示す図である。
図12図12は、第1比較例及び第2比較例の回路シミュレーション結果を示す図である。
図13図13は、第1比較例及び第2比較例の回路シミュレーション結果を示す図である。
図14図14は、実施形態の出力指令値と位相差との関係の一例を示す図である。
図15図15は、実施形態の出力指令値と、スイッチング素子のデューティ比と、の関係の一例を示す図である。
図16図16は、実施形態の出力指令値と出力電力との関係の一例を示す図である。
図17図17は、第2比較例の無負荷時の、最低スイッチング周波数に対する周波数倍率と、循環電流実効値低減率と、の関係を示す図である。
図18図18は、実施形態の無負荷時の、デューティ比と、循環電流実効値低減率と、の関係を示す図である。
図19図19は、第2比較例及び実施形態の波形を示す図である。
図20図20は、第2比較例の波形を示す図である。
図21図21は、実施形態の波形を示す図である。
図22図22は、実施形態の波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本開示に係る実施形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態により本開示が限定されるものではなく、また、以下の実施形態において、同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0016】
<実施形態>
実施形態では、単相DABコンバータを例として説明するが、本開示はこれに限定されない。本開示は、3相DABコンバータにも適用可能である。
【0017】
本開示では、ソフトスイッチングが出来ていることの指標として、スイッチング素子がオフからオンになる時に電流が負であり、且つ、スイッチング素子がオンからオフになる時に電流が正である、という指標を用いる。
【0018】
(構成)
図1は、実施形態の電源装置の構成を示す図である。電源装置1は、DAB(Dual Active Bridge)方式であり、双方向のDC-DCコンバータである。実施形態では、電源装置1は、電源2から出力されコンデンサ3で平滑化後の直流の電圧Vinの供給を受けて、直流の電圧Voutを負荷4に出力するものとする。
【0019】
電源装置1は、1次側の第1ブリッジ回路12と、リアクトル13と、トランス14と、2次側の第2ブリッジ回路15と、コンデンサ16と、制御部18と、を含む。
【0020】
第1ブリッジ回路12は、トランジスタTr1からTr4までを含む単相フルブリッジ回路である。
【0021】
なお、実施形態では、第1ブリッジ回路12は単相フルブリッジ回路としたが、本開示はこれに限定されない。第1ブリッジ回路12は、3個のアームを含む3相ブリッジ回路であっても良い。
【0022】
実施形態では、各トランジスタがMOSFETであることとしたが、本開示はこれに限定されない。各トランジスタは、シリコンパワーデバイス、GaNパワーデバイス、SiCパワーデバイス(例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor))などでも良い。
【0023】
各トランジスタは、積極的に電流を流すことができる寄生ダイオード(ボディダイオード)を有する、又は、逆並列にダイオードが接続されている。寄生ダイオードとは、MOSFETのバックゲートとソース及びドレインとの間のpn接合である。
【0024】
各トランジスタが、本開示の「スイッチング素子」の一例に相当する。
【0025】
トランジスタTr1のソースは、トランジスタTr2のドレインに電気的に接続されている。トランジスタTr1のドレインは、トランジスタTr3のドレインに電気的に接続されている。トランジスタTr3のソースは、トランジスタTr4のドレインに電気的に接続されている。トランジスタTr2のソースは、トランジスタTr4のソースに電気的に接続されている。
【0026】
トランジスタTr1のドレイン及びトランジスタTr3のドレインは、第1ブリッジ回路12の一方の入力端子12aに電気的に接続されている。トランジスタTr2のソース及びトランジスタTr4のソースは、第1ブリッジ回路12の他方の入力端子12bに電気的に接続されている。
【0027】
入力端子12aは、コンデンサ3の一端(高電位側端)に電気的に接続されている。入力端子12bは、コンデンサ3の他端(低電位側端)に電気的に接続されている。
【0028】
入力端子12aと入力端子12bとの間には、電圧Vinが供給される。
【0029】
トランジスタTr1のソース及びトランジスタTr2のドレインは、第1ブリッジ回路12の一方の出力端子12cに電気的に接続されている。トランジスタTr3のソース及びトランジスタTr4のドレインは、第1ブリッジ回路12の他方の出力端子12dに電気的に接続されている。
【0030】
リアクトル13の一端は、出力端子12cに電気的に接続されている。なお、本開示では、リアクトル13を1次側に配置したが、これに限定されない。リアクトル13は、2次側に配置しても良いし、1次側及び2次側の両方に配置しても良い。
【0031】
トランス14は、第1巻線14aと、第2巻線14bと、コア14cと、を含む。第1巻線14a及び第2巻線14bは、コア14cに巻回されている。
【0032】
トランス14が、本開示の「変圧器」の一例に相当する。
【0033】
なお、実施形態では、トランス14は単相トランスとしたが、本開示はこれに限定されない。トランス14は、第1ブリッジ回路12及び第2ブリッジ回路15が3相ブリッジ回路である場合には、3相トランスとすると良い。
【0034】
第1巻線14aと第2巻線14bとの巻数比は、1:1が例示されるが、本開示はこれに限定されない。
【0035】
第1巻線14aの一端は、リアクトル13の他端に電気的に接続されている。第1巻線14aの他端は、出力端子12dに電気的に接続されている。
【0036】
第1ブリッジ回路12は、電圧Vin、又は、電圧-Vinを、出力端子12cと出力端子12dとの間に出力する。
【0037】
例えば、第1ブリッジ回路12は、トランジスタTr1及びトランジスタTr4がオン状態、且つ、トランジスタTr2及びトランジスタTr3がオフ状態に制御されている場合、電圧Vinを、出力端子12cと出力端子12dとの間に出力する。
【0038】
また例えば、第1ブリッジ回路12は、トランジスタTr1及びトランジスタTr4がオフ状態、且つ、トランジスタTr2及びトランジスタTr3がオン状態に制御されている場合、電圧-Vinを、出力端子12cと出力端子12dとの間に出力する。
【0039】
第2ブリッジ回路15は、トランジスタTr5からTr8までを含む単相フルブリッジ回路である。
【0040】
なお、実施形態では、第2ブリッジ回路15は単相フルブリッジ回路としたが、本開示はこれに限定されない。第2ブリッジ回路15は、3個のアームを含む3相ブリッジ回路であっても良い。
【0041】
トランジスタTr5のソースは、トランジスタTr6のドレインに電気的に接続されている。トランジスタTr5のドレインは、トランジスタTr7のドレインに電気的に接続されている。トランジスタTr7のソースは、トランジスタTr8のドレインに電気的に接続されている。トランジスタTr6のソースは、トランジスタTr8のソースに電気的に接続されている。
【0042】
トランジスタTr5のソース及びトランジスタTr6のドレインは、第2ブリッジ回路15の一方の入力端子15aに電気的に接続されている。トランジスタTr7のソース及びトランジスタTr8のドレインは、第2ブリッジ回路15の他方の入力端子15bに電気的に接続されている。
【0043】
トランジスタTr5のドレイン及びトランジスタTr7のドレインは、第2ブリッジ回路15の一方の出力端子15cに電気的に接続されている。トランジスタTr6のソース及びトランジスタTr8のソースは、第2ブリッジ回路15の他方の出力端子15dに電気的に接続されている。
【0044】
入力端子15aは、第2巻線14bの一端に電気的に接続されている。入力端子15bは、第2巻線14bの他端に電気的に接続されている。
【0045】
出力端子15cは、コンデンサ16の一端(高電位側端)に電気的に接続されている。出力端子15dは、コンデンサ16の他端(低電位側端)に電気的に接続されている。
【0046】
コンデンサ16の電圧が、電圧Voutである。コンデンサ16の一端(高電位側端)は、負荷4の一端(高電位側端)に電気的に接続されている。コンデンサ16の他端(低電位側端)は、負荷4の他端(低電位側端)に電気的に接続されている。
【0047】
制御部18は、駆動パルスP1を第1ブリッジ回路12に出力し、駆動パルスP2を第2ブリッジ回路15に出力することにより、第1ブリッジ回路12及び第2ブリッジ回路15を制御する。
【0048】
制御部18は、第1比較例、第2比較例及び実施形態に共通して、駆動パルスP1と駆動パルスP2との間の位相差を制御することにより、第1ブリッジ回路12と第2ブリッジ回路15との間の位相差を制御する。制御部18は、第2比較例では、位相差に加えて、駆動パルスP1及びP2のスイッチング周波数をも制御する。制御部18は、実施形態では、位相差に加えて、駆動パルスP1及びP2のデューティ比をも制御する。
【0049】
図2は、DABのブリッジ回路間の位相差と出力電力との関係を示す図である。図2において、横軸は、位相差(deg)を表し、縦軸は、正規化した出力電力を表す。波形201は、位相差(deg)と、正規化した出力電力と、の関係を示す。
【0050】
図3は、DABのブリッジ回路間の位相差と循環電流との関係を示す図である。図3において、横軸は、位相差(deg)を表し、縦軸は、正規化した循環電流を表す。波形202は、位相差(deg)と、正規化した循環電流と、の関係を示す。
【0051】
(第1比較例の制御)
図3の波形202で示すように、位相差-180°から-90°までの範囲、及び、+90°から+180°までの範囲では、負荷4への電力供給に寄与しない循環電流が多くなる。
【0052】
そこで、第1比較例は、デューティ比を0.5で一定にし且つスイッチング周波数を一定の基準周波数(例えば、50kHz)にする。デューティ比は、制御の1周期に対するスイッチング素子のオン時間(又はオフ時間)の比率である。そして、第1比較例は、図2及び図3に示すように、位相差0°を中心(無負荷時)として、出力指令値に応じて位相差-90°から+90°までの範囲(以下、「第1比較例の位相差範囲210」と称する。)で位相差制御する。
【0053】
図4は、第1比較例の動作領域を示す図である。図4において、横軸は、位相差(deg)を表し、縦軸は、1次側電圧(電圧Vin)に対する2次側電圧(電圧Vout)の比を表す。
【0054】
なお、図4において、電圧比が負の領域は、計算上のものである。実際の回路(図1参照)へ負電圧を印加した場合、トランジスタの寄生ダイオードが導通してしまうので、電源装置1は動作を行うことができない。
【0055】
第1比較例では、図4の領域301及び領域303は、ソフトスイッチング動作領域であるが、領域302、領域304、領域305及び領域306は、ハードスイッチング動作領域である。
【0056】
図5は、第1比較例の動作領域を示す図である。図5は、図4の中の領域310の拡大図である。
【0057】
(第2比較例)
第2比較例は、循環電流(図3参照)を利用してソフトスイッチング動作を実現する。つまり、第2比較例は、位相差を、±180°(絶対的な位相差)を中心(無負荷時)として、出力指令値に応じて制御する。DABコンバータの制御の観点では、絶対的な位相差+180°と絶対的な位相差-180°とは、等価である。
【0058】
図2及び図3を参照すると、第2比較例は、位相差を、±180°(絶対的な位相差)を中心(無負荷時)として、出力指令値に応じて、一例として+90°(絶対的な位相差)から-90°(絶対的な位相差)までの範囲(以下、「第2比較例の位相差範囲211」と称する。)で制御する。
【0059】
なお、第2比較例は、後述するように位相差及びスイッチング周波数の2つの値で制御することとすると、+90°(絶対的な位相差)より小さい位相差範囲211a及び-90°(絶対的な位相差)より大きい位相差範囲211bを利用することも可能である。位相差範囲211a及び位相差範囲211bでは、出力電力が小さくなるというデメリットがあるものの、損失を小さくすることができるというメリットがある。例えば、図2に示すように位相差範囲211から位相差範囲211bへ動作点が移動した場合は、電力的には低下傾向を示すが、図3に示すように、循環電流も低下傾向を示す。具体的には、図2で示すところの約-112.5°(位相差範囲211)と約-67.5°(位相差範囲211b)とでは周波数が同一であれば同等の出力になる。その時、図3を参照すると、循環電流は明らかに約-67.5°の方が少なくなる(低損失になる)結果となる。周波数を変更した場合、変換電力は変化する(2倍の周波数で電力は半分になる)が、出力電力と循環電流との比率(図2図3との比率)は変化しない。そのため、ハードスイッチング領域へ入ってしまわないように注意が必要であるが、損失低減のために、位相差範囲211bまで踏み込んでしまってもよい。
【0060】
第2比較例の位相差範囲211では、第1比較例の位相差範囲210と比して、トランジスタがオフからオンになるときに負の向き、オンからオフになるときに正の向きの循環電流が多く流れる。第2比較例は、上記の循環電流を利用することにより、上記した指標を満たすことができる。
【0061】
図6は、第2比較例の出力指令値と位相差との関係の一例を示す図である。図6において、横軸は、正規化した出力指令値を表し、縦軸は、±180°(絶対的な位相差)に対する相対的な位相差(deg)を表す。波形501は、出力指令値と、位相差と、の関係を示す。
【0062】
第2比較例は、波形501で示すように、出力指令値が-100から100まで増加するに従って、位相差を-90°(相対的な位相差。絶対的な位相差としては+90°)から、+90°(相対的な位相差。絶対的な位相差としては-90°)まで、単調増加させる。
【0063】
但し、このままでは、循環電流が必要以上に多くなり、損失が大きくなる。そこで、第2比較例は、スイッチング周波数を制御することにより、上記の環流電流を調整(抑制)する。第2比較例は、スイッチング周波数を高くすることにより、環流電流を抑制できる。
【0064】
図7は、第2比較例の出力指令値とスイッチング周波数との関係の一例を示す図である。図7において、横軸は、正規化した出力指令値を表し、縦軸は、スイッチング周波数(kHz(キロヘルツ))を表す。波形511は、出力指令値と、スイッチング周波数と、の関係を示す。
【0065】
第2比較例は、波形511で示すように、出力指令値が0(無負荷時)の場合にスイッチング周波数を最大にし、出力指令値が0から離れるに従って、スイッチング周波数を直線状に低くする。この例では、第2比較例は、出力指令値が0(無負荷時)の場合にスイッチング周波数を200kHzにし、出力指令値が±100の場合にスイッチング周波数を50kHz(基準周波数)にする。
【0066】
図8は、第2比較例の動作領域を示す図である。図8において、横軸は、±180°(絶対的な位相差)に対する相対的な位相差(deg)を表し、縦軸は、1次側電圧(電圧Vin)に対する2次側電圧(電圧Vout)の比を表す。
【0067】
なお、図8において、電圧比が負の領域は、計算上のものである。実際の回路(図1参照)へ負電圧を印加した場合、トランジスタの寄生ダイオードが導通してしまうので、電源装置1は動作を行うことができない。
【0068】
第2比較例では、図8の領域322は、ソフトスイッチング動作領域であり、領域321、領域323、領域324、領域325及び領域326は、ハードスイッチング動作領域である。
【0069】
図9は、第2比較例の動作領域を示す図である。図9は、図8の中の領域330の拡大図である。図9に示す範囲では、全部がソフトスイッチング動作領域(領域322)である。
【0070】
図9図5と比較すると、第2比較例は、図6及び図7で示す位相差制御及びスイッチング周波数制御を行うことにより、第1比較例ではハードスイッチングであった領域(図5の領域302、領域305参照)で、ソフトスイッチング動作を可能とすることができる。
【0071】
なお、図8及び図9では、横軸を位相差としている。しかし、第2比較例では、出力電力は、位相差だけではなく、スイッチング周波数にも依存する。図8及び図9の横軸は、あくまでも、第2比較例の位相差だけに着目した特性となる。
【0072】
また、図2を参照すると、第1比較例の位相差範囲210では、位相差と出力電力との関係が正の相関(右肩上がり、図2の-90°(絶対的な位相差)から+90°(絶対的な位相差)までの範囲参照)である。これに対して、第2比較例の位相差範囲211では、位相差と出力電力との関係が負の相関(右肩下がり、図2の+90°(絶対的な位相差)から-90°(絶対的な位相差)までの範囲参照)である。そのため、第2比較例では、出力指令値と出力電力との関係が、負の相関(比較例と逆)になる。
【0073】
図10は、第2比較例の出力指令値と出力電力との関係の一例を示す図である。図10において、横軸は、正規化した出力指令値を表し、縦軸は、正規化した出力電力を表す。波形521は、出力指令値と、出力電力と、の関係を示す。
【0074】
第2比較例では、波形521で示すように、出力指令値が増加すると、出力電力が減少する。第2比較例は、この特性のままで使用しても良い。或いは、例えば、出力指令値の符号が反転されて制御部18に入力されることとして、出力指令値と出力電力との関係が正の相関になるようにしても良い。
【0075】
(第1比較例及び第2比較例の回路シミュレーション結果)
図11から図13までは、第1比較例及び第2比較例の回路シミュレーション結果を示す図である。
【0076】
図11は、逆方向最大出力時(位相差=-90°(相対的な位相差))の回路シミュレーション結果を示す図である。図12は、無出力時(無負荷時)(位相差=0°(相対的な位相差))の回路シミュレーション結果を示す図である。図13は、順方向最大出力時(位相差=+90°(相対的な位相差))の回路シミュレーション結果を示す図である。
【0077】
図11から図13までにおいて、第1行目は、電圧Vinと電圧Voutとの電圧比が1:2の場合(図5及び図9の動作点401、動作点404及び動作点407参照)の回路シミュレーション結果を示す。
【0078】
第2行目は、電圧Vinと電圧Voutとの電圧比が1:1の場合(図5及び図9の動作点402、動作点405及び動作点408参照)の回路シミュレーション結果を示す。
【0079】
第3行目は、電圧Vinと電圧Voutとの電圧比が2:1の場合(図5及び図9の動作点403、動作点406及び動作点409参照)の回路シミュレーション結果を示す。
【0080】
図11から図13までの各欄において、1番目の波形は、第1ブリッジ回路12のトランジスタ(例えば、トランジスタTr1)のドレイン-ソース間の電圧を表す。ドレイン-ソース間の電圧がハイレベルの場合、トランジスタはオフである。ドレイン-ソース間の電圧がローレベルの場合、トランジスタはオンである。
【0081】
2番目の波形は、第1ブリッジ回路12のトランジスタ(例えば、トランジスタTr1)のドレイン-ソース間(寄生ダイオードを含む。)の電流を表す。
【0082】
3番目の波形は、第2ブリッジ回路15のトランジスタ(例えば、トランジスタTr5)のドレイン-ソース間の電圧を表す。ドレイン-ソース間の電圧がハイレベルの場合、トランジスタはオフである。ドレイン-ソース間の電圧がローレベルの場合、トランジスタはオンである。
【0083】
4番目の波形は、第2ブリッジ回路15のトランジスタ(例えば、トランジスタTr5)のドレイン-ソース間(寄生ダイオードを含む。)の電流を表す。
【0084】
図11を参照すると、欄601は、第1比較例の回路シミュレーション結果(図5の動作点401参照)を示す。この場合、上記した指標を満たしているので、ソフトスイッチング動作である。
【0085】
欄602は、第2比較例の回路シミュレーション結果(図9の動作点401参照)を示す。この場合、上記した指標を満たしているので、ソフトスイッチング動作である。
【0086】
欄603は、第1比較例の回路シミュレーション結果(図5の動作点402参照)を示す。この場合、上記した指標を満たしているので、ソフトスイッチング動作である。
【0087】
欄604は、第2比較例の回路シミュレーション結果(図9の動作点402参照)を示す。この場合、上記した指標を満たしているので、ソフトスイッチング動作である。
【0088】
欄605は、第1比較例の回路シミュレーション結果(図5の動作点403参照)を示す。この場合、上記した指標を満たしているので、ソフトスイッチング動作である。
【0089】
欄606は、第2比較例の回路シミュレーション結果(図9の動作点403参照)を示す。この場合、上記した指標を満たしているので、ソフトスイッチング動作である。
【0090】
図12を参照すると、欄611は、第1比較例の回路シミュレーション結果(図5の動作点404参照)を示す。この場合、第1ブリッジ回路12のトランジスタは上記した指標を満たしていないので(1番目及び2番目の波形参照)、ハードスイッチング動作である。
【0091】
欄612は、第2比較例の回路シミュレーション結果(図9の動作点404参照)を示す。この場合、上記した指標を満たしているので、ソフトスイッチング動作である。
【0092】
欄613は、第1比較例の回路シミュレーション結果(図5の動作点405参照)を示す。この場合、第1ブリッジ回路12のトランジスタは上記した指標を満たしていないので(1番目及び2番目の波形参照)、ハードスイッチング動作である。第2ブリッジ回路15のトランジスタも上記した指標を満たしていないので(3番目及び4番目の波形参照)、ハードスイッチング動作である。
【0093】
欄614は、第2比較例の回路シミュレーション結果(図9の動作点405参照)を示す。この場合、上記した指標を満たしているので、ソフトスイッチング動作である。
【0094】
欄615は、第1比較例の回路シミュレーション結果(図5の動作点406参照)を示す。この場合、第2ブリッジ回路15のトランジスタは上記した指標を満たしていないので(3番目及び4番目の波形参照)、ハードスイッチング動作である。
【0095】
欄616は、第2比較例の回路シミュレーション結果(図9の動作点406参照)を示す。この場合、上記した指標を満たしているので、ソフトスイッチング動作である。
【0096】
図13を参照すると、欄621は、第1比較例の回路シミュレーション結果(図5の動作点407参照)を示す。この場合、上記した指標を満たしているので、ソフトスイッチング動作である。
【0097】
欄622は、第2比較例の回路シミュレーション結果(図9の動作点407参照)を示す。この場合、上記した指標を満たしているので、ソフトスイッチング動作である。
【0098】
欄623は、第1比較例の回路シミュレーション結果(図5の動作点408参照)を示す。この場合、上記した指標を満たしているので、ソフトスイッチング動作である。
【0099】
欄624は、第2比較例の回路シミュレーション結果(図9の動作点408参照)を示す。この場合、上記した指標を満たしているので、ソフトスイッチング動作である。
【0100】
欄625は、第1比較例の回路シミュレーション結果(図5の動作点409参照)を示す。この場合、上記した指標を満たしているので、ソフトスイッチング動作である。
【0101】
欄626は、第2比較例の回路シミュレーション結果(図9の動作点409参照)を示す。この場合、上記した指標を満たしているので、ソフトスイッチング動作である。
【0102】
図11から図13までに示すように、第2比較例は、動作点401から動作点409までの全部でソフトスイッチング動作が可能であることが確認できた。
【0103】
第2比較例は、第1比較例と比べて、ソフトスイッチング動作が可能な領域を拡げることができる。これにより、第2比較例は、スイッチング素子の選択肢の増加、スイッチング損失の低減、サージノイズ抑制、安全動作領域改善による素子のストレス低減などが可能となる。また、第2比較例は、結果的に設計の容易化、低コスト化、電力変換効率の向上、小型化等の性能向上も見込める。
【0104】
(実施形態)
第2比較例で、循環電流の多くが無効電力となる著しい軽負荷時、及び、完全無効電流になる無負荷時においては、循環電流は、スイッチング周波数fの逆数1/fに比例する。理論上は、スイッチング周波数fを高くすればするほど、循環電流を0A(アンペア)近傍まで抑制できる。しかし、実際には、回路内の各素子は、動作速度に限界がある。つまり、スイッチング周波数fには限界があり、第2比較例の循環電流の抑制には限界がある。
【0105】
そこで、実施形態は、第1ブリッジ回路12と第2ブリッジ回路15との間の位相差を制御するとともに、第1ブリッジ回路12のスイッチング素子及び第2ブリッジ回路15のスイッチング素子のデューティ比をも制御する。
【0106】
実施形態では、第1ブリッジ回路12のスイッチング素子のデューティ比と第2ブリッジ回路15のスイッチング素子のデューティ比とは同じであることとするが、本開示はこれに限定されず、異なっていても良い。
【0107】
図14は、実施形態の出力指令値と位相差との関係の一例を示す図である。図14において、横軸は、正規化した出力指令値を表し、縦軸は、±180°(絶対的な位相差)に対する相対的な位相差を表す。波形531は、出力指令値と、位相差と、の関係を示す。
【0108】
実施形態は、波形531で示すように、出力指令値が-100から100まで増加するに従って、位相差を-90°(相対的な位相差。絶対的な位相差としては+90°)から、+90°(相対的な位相差。絶対的な位相差としては-90°)まで、直線状に増加させる。
【0109】
図15は、実施形態の出力指令値と、スイッチング素子のデューティ比と、の関係の一例を示す図である。図15において、横軸は、正規化した出力指令値を表す。縦軸は、第1ブリッジ回路12及び第2ブリッジ回路15のスイッチング素子のデューティ比を表す。波形532は、出力指令値と、スイッチング素子のデューティ比と、の関係を示す。
【0110】
実施形態は、波形532で示すように、出力指令値が0(無負荷時)の場合に、デューティ比を最小値に制御し、出力指令値が0から離れるに従って、デューティ比を直線状に増加させる。図15の例では、実施形態は、出力指令値が0(無負荷時)の場合に、デューティ比を0.05にし、出力指令値が±100の場合に、デューティ比を0.5にする。
【0111】
図16は、実施形態の出力指令値と出力電力との関係の一例を示す図である。図16において、横軸は、正規化した出力指令値を表し、縦軸は、正規化した出力電力を表す。波形533は、出力指令値と、出力電力と、の関係を示す。
【0112】
実施形態では、波形533で示すように、出力指令値が増加すると、出力電力が減少する。実施形態は、この特性のままで使用しても良い。或いは、例えば、出力指令値の符号が反転されて入力されることとして、出力指令値と出力電力との関係が正の相関になるようにしても良い。
【0113】
なお、波形533は、あくまでも、出力指令値と出力電力との関係の一例を示すものであり、本開示はこれに限定されない。実際の製品化に当たっては、パラメータ(波形531及び波形532)の調整により、波形533に差異が生ずることが考えられる。
【0114】
(第2比較例及び実施形態の回路シミュレーション結果)
図17から図22までは、第2比較例及び実施形態の回路シミュレーション結果を示す図である。
【0115】
図17は、第2比較例の無負荷時の、最低スイッチング周波数に対する周波数倍率と、循環電流実効値低減率と、の関係を示す図である。図17において、横軸は、最低スイッチング周波数に対する周波数倍率を表し、縦軸は、循環電流実効値低減率を表す。
【0116】
波形541は、周波数倍率と、循環電流実効値低減率と、の関係を示す。最低スイッチング周波数は、基準周波数(例えば、50kHz)である。図17の例では、周波数倍率1倍から4倍まで、つまりスイッチング周波数が例えば50kHzから例えば200kHzまでを示している。
【0117】
第2比較例は、波形541で示すように、スイッチング周波数を高くするほど、循環電流を抑制できる。
【0118】
図18は、実施形態の無負荷時の、デューティ比と、循環電流実効値低減率と、の関係を示す図である。図18において、横軸は、第1ブリッジ回路12及び第2ブリッジ回路15のスイッチング素子のデューティ比を表し、縦軸は、循環電流実効値低減率を表す。
【0119】
波形544は、デューティ比と、循環電流実効値低減率と、の関係を示す。図18の例では、デューティ比を0.5から0.95(0.05と等価)まで示している。
【0120】
実施形態は、波形544で示すように、デューティ比を大きくするほど(小さくするほど)、循環電流を抑制できる。
【0121】
図18図17と比較すると、第2比較例が周波数倍率4.0倍で循環電流実効値低減率が0.25であるのに対して、実施形態は、デューティ比が0.95(0.05と等価)で循環電流実効値低減率が0.17である。
【0122】
このように、実施形態は、スイッチング周波数に限界がある第2比較例よりも、循環電流を抑制できる。これにより、実施形態は、各回路構成素子に発生する導通損失を低減できる。
【0123】
図19は、第2比較例及び実施形態の波形を示す図である。詳しくは、図19は、第2比較例及び実施形態の動作点542(図17及び図18参照。周波数倍率=1.0、且つ、デューティ比=0.5)での各部の波形を示す図である。
【0124】
波形551は、リアクトル13を流れる循環電流を示す。
【0125】
波形552は、第1ブリッジ回路12のハイサイドのトランジスタ(例えば、トランジスタTr1)のドレイン-ソース間の電圧を表す。ドレイン-ソース間の電圧がハイレベルの場合、トランジスタはオフである。ドレイン-ソース間の電圧がローレベルの場合、トランジスタはオンである。
【0126】
波形553は、第1ブリッジ回路12のハイサイドのトランジスタ(例えば、トランジスタTr1)のドレイン-ソース間(寄生ダイオードを含む。)の電流を表す。
【0127】
波形554は、第2ブリッジ回路15のハイサイドのトランジスタ(例えば、トランジスタTr5)のドレイン-ソース間の電圧を表す。
【0128】
波形555は、第2ブリッジ回路15のハイサイドのトランジスタ(例えば、トランジスタTr5)のドレイン-ソース間(寄生ダイオードを含む。)の電流を表す。
【0129】
波形556は、第1ブリッジ回路12のローサイドのトランジスタ(例えば、トランジスタTr2)のドレイン-ソース間の電圧を表す。
【0130】
波形557は、第1ブリッジ回路12のローサイドのトランジスタ(例えば、トランジスタTr2)のドレイン-ソース間(寄生ダイオードを含む。)の電流を表す。
【0131】
波形558は、第2ブリッジ回路15のローサイドのトランジスタ(例えば、トランジスタTr6)のドレイン-ソース間の電圧を表す。
【0132】
波形559は、第2ブリッジ回路15のローサイドのトランジスタ(例えば、トランジスタTr6)のドレイン-ソース間(寄生ダイオードを含む。)の電流を表す。
【0133】
図20は、第2比較例の波形を示す図である。詳しくは、図20は、第2比較例の動作点543(図17参照。周波数倍率=2.5)での各部の波形を示す図である。
【0134】
波形561は、リアクトル13を流れる循環電流を示す。波形561で表される循環電流の実効値は、波形551(図19参照)で表される循環電流の実効値の約0.37倍である。
【0135】
波形562は、第1ブリッジ回路12のハイサイドのトランジスタ(例えば、トランジスタTr1)のドレイン-ソース間の電圧を表す。
【0136】
波形563は、第1ブリッジ回路12のハイサイドのトランジスタ(例えば、トランジスタTr1)のドレイン-ソース間(寄生ダイオードを含む。)の電流を表す。
【0137】
波形564は、第2ブリッジ回路15のハイサイドのトランジスタ(例えば、トランジスタTr5)のドレイン-ソース間の電圧を表す。
【0138】
波形565は、第2ブリッジ回路15のハイサイドのトランジスタ(例えば、トランジスタTr5)のドレイン-ソース間(寄生ダイオードを含む。)の電流を表す。
【0139】
波形566は、第1ブリッジ回路12のローサイドのトランジスタ(例えば、トランジスタTr2)のドレイン-ソース間の電圧を表す。
【0140】
波形567は、第1ブリッジ回路12のローサイドのトランジスタ(例えば、トランジスタTr2)のドレイン-ソース間(寄生ダイオードを含む。)の電流を表す。
【0141】
波形568は、第2ブリッジ回路15のローサイドのトランジスタ(例えば、トランジスタTr6)のドレイン-ソース間の電圧を表す。
【0142】
波形569は、第2ブリッジ回路15のローサイドのトランジスタ(例えば、トランジスタTr6)のドレイン-ソース間(寄生ダイオードを含む。)の電流を表す。
【0143】
図21は、実施形態の波形を示す図である。詳しくは、図21は、実施形態の動作点545(図18参照。デューティ比=0.8(0.2と等価))での各部の波形を示す図である。
【0144】
波形571は、リアクトル13を流れる循環電流を示す。波形571で表される循環電流の実効値は、波形551(図19参照)で表される循環電流の実効値の約0.6倍である。
【0145】
波形572は、第1ブリッジ回路12のハイサイドのトランジスタ(例えば、トランジスタTr1)のドレイン-ソース間の電圧を表す。
【0146】
波形573は、第1ブリッジ回路12のハイサイドのトランジスタ(例えば、トランジスタTr1)のドレイン-ソース間(寄生ダイオードを含む。)の電流を表す。
【0147】
波形574は、第2ブリッジ回路15のハイサイドのトランジスタ(例えば、トランジスタTr5)のドレイン-ソース間の電圧を表す。
【0148】
波形575は、第2ブリッジ回路15のハイサイドのトランジスタ(例えば、トランジスタTr5)のドレイン-ソース間(寄生ダイオードを含む。)の電流を表す。
【0149】
波形576は、第1ブリッジ回路12のローサイドのトランジスタ(例えば、トランジスタTr2)のドレイン-ソース間の電圧を表す。
【0150】
波形577は、第1ブリッジ回路12のローサイドのトランジスタ(例えば、トランジスタTr2)のドレイン-ソース間(寄生ダイオードを含む。)の電流を表す。
【0151】
波形578は、第2ブリッジ回路15のローサイドのトランジスタ(例えば、トランジスタTr6)のドレイン-ソース間の電圧を表す。
【0152】
波形579は、第2ブリッジ回路15のローサイドのトランジスタ(例えば、トランジスタTr6)のドレイン-ソース間(寄生ダイオードを含む。)の電流を表す。
【0153】
なお、図18では、スイッチング周波数を基準周波数に固定した状態での結果を示したが、実施形態でも、第2比較例と同様に、スイッチング周波数をも制御することで、循環電流の更なる低減を図ることも可能である。その場合、図7の波形511で示したように、出力指令値が0(無負荷時)の場合にスイッチング周波数を最大にし、出力指令値が0から離れるに従って、スイッチング周波数を低くすると良い。
【0154】
図22は、実施形態の波形を示す図である。詳しくは、図22は、実施形態の動作点545(図18参照。デューティ比=0.8(0.2と等価))で、更に周波数倍率=2.5にした場合の、各部の波形を示す図である。
【0155】
波形581は、リアクトル13を流れる循環電流を示す。波形581で表される循環電流の実効値は、波形551(図19参照)で表される循環電流の実効値の約0.22倍である。
【0156】
波形582は、第1ブリッジ回路12のハイサイドのトランジスタ(例えば、トランジスタTr1)のドレイン-ソース間の電圧を表す。
【0157】
波形583は、第1ブリッジ回路12のハイサイドのトランジスタ(例えば、トランジスタTr1)のドレイン-ソース間(寄生ダイオードを含む。)の電流を表す。
【0158】
波形584は、第2ブリッジ回路15のハイサイドのトランジスタ(例えば、トランジスタTr5)のドレイン-ソース間の電圧を表す。
【0159】
波形585は、第2ブリッジ回路15のハイサイドのトランジスタ(例えば、トランジスタTr5)のドレイン-ソース間(寄生ダイオードを含む。)の電流を表す。
【0160】
波形586は、第1ブリッジ回路12のローサイドのトランジスタ(例えば、トランジスタTr2)のドレイン-ソース間の電圧を表す。
【0161】
波形587は、第1ブリッジ回路12のローサイドのトランジスタ(例えば、トランジスタTr2)のドレイン-ソース間(寄生ダイオードを含む。)の電流を表す。
【0162】
波形588は、第2ブリッジ回路15のローサイドのトランジスタ(例えば、トランジスタTr6)のドレイン-ソース間の電圧を表す。
【0163】
波形589は、第2ブリッジ回路15のローサイドのトランジスタ(例えば、トランジスタTr6)のドレイン-ソース間(寄生ダイオードを含む。)の電流を表す。
【0164】
(まとめ)
実施形態は、位相差を制御することにより、第2比較例と同様に、ソフトスイッチング動作が可能な領域を拡げることができる。これにより、実施形態は、スイッチング素子の選択肢の増加、スイッチング損失の低減、サージノイズ抑制、安全動作領域改善による素子のストレス低減などが可能となる。また、実施形態は、結果的に設計の容易化、低コスト化、電力変換効率の向上、小型化等の性能向上も見込める。
【0165】
更に、実施形態は、デューティ比を制御することにより、各ブリッジ回路からトランス14側へ出力される電圧実効値を低減することができ、その結果、リアクトル13の実効電圧を低減することができる。これにより、実施形態は、循環電流を抑制でき、損失を抑制できる。
【0166】
以上、本開示の実施形態を説明したが、これら実施形態の内容により本開示が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0167】
1 電源装置
2 電源
3、16 コンデンサ
4 負荷
12 第1ブリッジ回路
13 リアクトル
14 トランス
15 第2ブリッジ回路
18 制御部
Tr1、Tr2、Tr3、Tr4、Tr5、Tr6、Tr7、Tr8 トランジスタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22