(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034598
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】半導体記憶装置
(51)【国際特許分類】
G11C 16/26 20060101AFI20240306BHJP
G11C 7/10 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
G11C16/26 140
G11C7/10 405
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138948
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100121843
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 賢郎
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 正一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一彦
(72)【発明者】
【氏名】久保田 賢郎
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 郁弥
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 厚子
(72)【発明者】
【氏名】土屋 亮汰
(72)【発明者】
【氏名】阿部 花海
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 稔史
【テーマコード(参考)】
5B225
【Fターム(参考)】
5B225BA01
5B225CA15
5B225EA05
5B225FA01
5B225FA02
(57)【要約】
【課題】信号の出力を安定して行うことのできる半導体記憶装置、を提供する。
【解決手段】半導体記憶装置2は、外部のメモリコントローラ1に繰り返し出力信号を出力するピン501と、出力信号に対応してピン501の電位を変化させる出力回路と、出力回路の動作を制御する出力制御回路560と、を備える。出力回路が単位時間あたりにおいてピン501の電位を変化させる能力、のことを駆動能力としたときに、出力制御回路560は、それぞれの出力信号がピン50から出力される際に、駆動能力を一時的に変化させる能力調整処理を行う。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部のメモリコントローラに繰り返し出力信号を出力する出力ピンと、
前記出力信号に対応して前記出力ピンの電位を変化させる出力回路と、
前記出力回路の動作を制御する制御部と、を備え、
前記出力回路が単位時間あたりにおいて前記出力ピンの電位を変化させる能力、のことを駆動能力としたときに、
前記制御部は、
それぞれの前記出力信号が前記出力ピンから出力される際に、前記駆動能力を一時的に変化させる能力調整処理を行う、半導体記憶装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記メモリコントローラに前記出力信号が出力されるタイミング、を基準とした所定タイミングから、予め設定された所定時間が経過するまでの間において前記能力調整処理を行う、請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項3】
前記所定時間を計測するタイマー回路を更に備える、請求項2に記載の半導体記憶装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記能力調整処理のパラメータを、前記メモリコントローラから入力される制御信号に基づいて設定する、請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項5】
外部からの入力により所定の電位に維持されている基準電位線と、
前記基準電位線における電位変動を検知する検知回路と、を備え、
前記制御部は、
前記能力調整処理のパラメータを、前記電位変動に基づいて設定する、請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項6】
前記出力回路は、
所定の電位に維持された基準電位線と前記出力ピンとの間の電気抵抗、を変化させるドライバと、
前記ドライバを駆動する駆動回路と、を有するものであり、
前記制御部は、前記駆動回路の動作を制御することにより前記能力調整処理を行う、請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項7】
前記ドライバ及び前記駆動回路は複数組設けられており、
前記制御部は、
一部の前記駆動回路の動作を制御することにより前記能力調整処理を行う、請求項6に記載の半導体記憶装置。
【請求項8】
前記出力ピンは、前記メモリコントローラから入力信号が入力される入力ピン、としての機能も有しており、
前記出力ピンには、前記入力信号が入力される際に終端抵抗を調整するための抵抗調整回路が接続されており、
前記制御部は、
前記抵抗調整回路の動作を制御し、前記終端抵抗を変化させることにより前記能力調整処理を行う、請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項9】
一端が前記出力ピンに接続されたコンデンサを更に備え、
前記制御部は、前記コンデンサの他端における電位を変化させることにより前記能力調整処理を行う、請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項10】
前記出力回路は、
所定の電位に維持された基準電位線と前記出力ピンとの間の電気抵抗、を変化させるドライバと、
前記ドライバを駆動する駆動回路と、を有するものであり、
前記制御部は、前記基準電位線の電位を一時的に変化させることにより前記能力調整処理を行う、請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項11】
前記制御部は、
前記出力信号が前記出力ピンから出力され始めてから、当該出力信号の出力が完了するまでの期間、の前半において、前記能力調整処理を終了する、請求項1に記載の半導体記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばNAND型フラッシュメモリのような半導体記憶装置は、メモリコントローラに向けて読み出しデータ等の信号を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
開示された実施形態によれば、信号の出力を安定して行うことのできる半導体記憶装置が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る半導体記憶装置は、外部のメモリコントローラに繰り返し出力信号を出力する出力ピンと、出力信号に対応して出力ピンの電位を変化させる出力回路と、出力回路の動作を制御する制御部と、を備える。出力回路が単位時間あたりにおいて出力ピンの電位を変化させる能力、のことを駆動能力としたときに、制御部は、それぞれの出力信号が出力ピンから出力される際に、駆動能力を一時的に変化させる能力調整処理を行う。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態に係るメモリシステムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】第1実施形態に係るメモリシステムの構成例を示すブロック図である。
【
図3】第1実施形態に係る半導体記憶装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】メモリセルアレイの構成を示す等価回路図である。
【
図5】メモリセルアレイの構成を示す断面図である。
【
図6】センスアンプユニットの回路構成を示す図である。
【
図7】メモリセルトランジスタの閾値分布の一例を示す図である。
【
図8】書き込み動作時における、各配線の電位変化を示す図である。
【
図9】読み出し動作時における、各配線の電位変化を示す図である。
【
図10】第1実施形態に係る半導体記憶装置とメモリコントローラとの間で送受信される信号等の、時間変化の一例を示す図である。
【
図11】読み出し動作時における、出力ピンの電位変化の一例を示す図である。
【
図12】第1実施形態に係るメモリシステムの、出力回路等の構成を示す図である。
【
図13】第1実施形態に係るメモリシステムの、ロジック制御回路等の構成を示す図である。
【
図14】第1実施形態に係るメモリシステムの、出力回路等の構成を示す図である。
【
図15】第1実施形態の変形例に係るメモリシステムの、出力回路等の構成を示す図である。
【
図16】第1実施形態に係る半導体記憶装置とメモリコントローラとの間で送受信される信号等の、時間変化の一例を示す図である。
【
図17】第1実施形態に係る半導体記憶装置とメモリコントローラとの間で送受信される信号等の、時間変化の一例を示す図である。
【
図18】第1実施形態に係る半導体記憶装置とメモリコントローラとの間で送受信される信号等の、時間変化の一例を示す図である。
【
図19】第2実施形態に係る半導体記憶装置の、出力回路等の構成を示す図である。
【
図20】第3実施形態に係る半導体記憶装置の、シーケンサにより実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【
図21】第4実施形態に係る半導体記憶装置の、出力回路等の構成を示す図である。
【
図22】第4実施形態に係る半導体記憶装置の、シーケンサにより実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【
図23】第5実施形態に係る半導体記憶装置の、出力回路等の構成を示す図である。
【
図24】第5実施形態に係る半導体記憶装置の、出力回路等の構成を示す図である。
【
図25】第6実施形態に係る半導体記憶装置の、出力ピン及びその近傍の構成を示す図である。
【
図26】第7実施形態に係る半導体記憶装置の、出力回路等の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0008】
本実施形態に係る半導体記憶装置2は、NAND型フラッシュメモリとして構成された不揮発性の記憶装置である。
図1には、半導体記憶装置2を含むメモリシステムの構成例がブロック図として示されている。このメモリシステムは、メモリコントローラ1と、半導体記憶装置2とを備える。
【0009】
尚、実際のメモリシステムにおいては、
図2に示されるように、1つのメモリコントローラ1に対し複数の半導体記憶装置2が設けられている。
図1においては、複数ある半導体記憶装置2のうちの1つのみが図示されている。半導体記憶装置2の具体的な構成については後に説明する。
【0010】
このメモリシステムは、不図示のホストと接続可能である。ホストは、例えば、パーソナルコンピュータや携帯端末等の電子機器である。メモリコントローラ1は、ホストからの書き込みリクエストに従って半導体記憶装置2へのデータの書き込みを制御する。また、メモリコントローラ1は、ホストからの読み出しリクエストに従って半導体記憶装置2からのデータの読み出しを制御する。
【0011】
メモリコントローラ1と半導体記憶装置2との間では、チップイネーブル信号/CE、レディービジー信号R/B、コマンドラッチイネーブル信号CLE、アドレスラッチイネーブル信号ALE、ライトイネーブル信号/WE、リードイネーブル信号/RE、RE、ライトプロテクト信号/WP、データである信号DQ<7:0>、データストローブ信号DQS、/DQS、の各信号が送受信される。
【0012】
チップイネーブル信号/CEは、半導体記憶装置2をイネーブルにするための信号である。レディービジー信号R/Bは、半導体記憶装置2がレディ状態であるか、ビジー状態であるかを示すための信号である。「レディ状態」とは、外部からの命令を受け付ける状態である。「ビジー状態」とは、外部からの命令を受け付けない状態である。
【0013】
図2に示されるように、複数の半導体記憶装置2のそれぞれには、チップイネーブル信号/CEが個別に送信される。
図2においては、それぞれのチップイネーブル信号/CEを互いに区別し得るよう、例えば「/CE0」のように末尾に番号が付してある。
【0014】
同様に、複数の半導体記憶装置2のそれぞれからは、レディービジー信号R/Bが個別に送信される。
図2においては、それぞれのレディービジー信号R/Bを互いに区別し得るよう、例えば「R/B0」のように末尾に番号が付してある。
【0015】
チップイネーブル信号/CEやレディービジー信号R/B以外の信号(コマンドラッチイネーブル信号CLE等)については、複数の半導体記憶装置2で共通となっている信号線を介して、メモリコントローラ1と半導体記憶装置2との間で送受信される。メモリコントローラ1は、個別のチップイネーブル信号/CEを用いて、通信の対象となる半導体記憶装置2を特定する。
【0016】
コマンドラッチイネーブル信号CLEは、信号DQ<7:0>がコマンドであることを示す信号である。アドレスラッチイネーブル信号ALEは、信号DQ<7:0>がアドレスであることを示す信号である。ライトイネーブル信号/WEは、受信した信号を半導体記憶装置2に取り込むための信号であり、メモリコントローラ1によりコマンド、アドレス、及びデータを受信する都度アサートされる。メモリコントローラ1は、信号/WEが“L(Low)”レベルである間に信号DQ<7:0>を取り込むよう半導体記憶装置2に指示する。
【0017】
リードイネーブル信号/REは、メモリコントローラ1が、半導体記憶装置2からデータを読み出すための信号である。信号REは信号/REの相補信号である。これらは例えば、信号DQ<7:0>を出力する際の半導体記憶装置2の動作タイミングを制御するために使用される。ライトプロテクト信号/WPは、データ書き込み及び消去の禁止を半導体記憶装置2に指示するための信号である。信号DQ<7:0>は、半導体記憶装置2とメモリコントローラ1との間で送受信されるデータの実体であり、コマンド、アドレス、及びデータを含む。データストローブ信号DQSは、信号DQ<7:0>の入出力のタイミングを制御するための信号である。信号/DQSは信号DQSの相補信号である。
【0018】
メモリコントローラ1は、RAM11と、プロセッサ12と、ホストインターフェイス13と、ECC回路14と、メモリインターフェイス15と、を備える。RAM11、プロセッサ12、ホストインターフェイス13、ECC回路14、及びメモリインターフェイス15は、互いに内部バス16で接続されている。
【0019】
ホストインターフェイス13は、ホストから受信したリクエスト、ユーザデータ(書き込みデータ)等を内部バス16に出力する。また、ホストインターフェイス13は、半導体記憶装置2から読み出されたユーザデータ、プロセッサ12からの応答等をホストへ送信する。
【0020】
メモリインターフェイス15は、プロセッサ12の指示に基づいて、ユーザデータ等を半導体記憶装置2へ書き込む処理、及び、半導体記憶装置2から読み出す処理を制御する。
【0021】
プロセッサ12は、メモリコントローラ1を統括的に制御する。プロセッサ12は、例えばCPUやMPU等である。プロセッサ12は、ホストからホストインターフェイス13経由でリクエストを受けた場合に、そのリクエストに従った制御を行う。例えば、プロセッサ12は、ホストからのリクエストに従って、半導体記憶装置2へのユーザデータ及びパリティの書き込みをメモリインターフェイス15へ指示する。また、プロセッサ12は、ホストからのリクエストに従って、半導体記憶装置2からのユーザデータ及びパリティの読み出しをメモリインターフェイス15へ指示する。
【0022】
プロセッサ12は、RAM11に蓄積されるユーザデータに対して、半導体記憶装置2上の格納領域(メモリ領域)を決定する。ユーザデータは、内部バス16経由でRAM11に格納される。プロセッサ12は、メモリ領域の決定を、書き込み単位であるページ単位のデータ(ページデータ)に対して実施する。半導体記憶装置2の1ページに格納されるユーザデータのことを、以下では「ユニットデータ」とも称する。ユニットデータは、一般的には符号化されて、符号語として半導体記憶装置2に格納される。本実施形態では、符号化は必須ではない。メモリコントローラ1は、符号化せずにユニットデータを半導体記憶装置2に格納してもよいが、
図1では、一構成例として符号化を行う構成を示している。メモリコントローラ1が符号化を行わない場合には、ページデータはユニットデータと一致する。また、1つのユニットデータに基づいて1つの符号語が生成されてもよいし、ユニットデータが分割された分割データに基づいて1つの符号語が生成されてもよい。また、複数のユニットデータを用いて1つの符号語が生成されてもよい。
【0023】
プロセッサ12は、ユニットデータごとに書き込み先の半導体記憶装置2のメモリ領域を決定する。半導体記憶装置2のメモリ領域には物理アドレスが割当てられている。プロセッサ12は、ユニットデータの書き込み先のメモリ領域を、物理アドレスを用いて管理する。プロセッサ12は、決定したメモリ領域(物理アドレス)を指定してユーザデータを半導体記憶装置2へ書き込むようメモリインターフェイス15へ指示する。プロセッサ12は、ユーザデータの論理アドレス(ホストが管理する論理アドレス)と物理アドレスとの対応を管理する。プロセッサ12は、ホストからの論理アドレスを含む読み出しリクエストを受信した場合は、論理アドレスに対応する物理アドレスを特定し、物理アドレスを指定してユーザデータの読み出しをメモリインターフェイス15へ指示する。
【0024】
ECC回路14は、RAM11に格納されたユーザデータを符号化して、符号語を生成する。また、ECC回路14は、半導体記憶装置2から読み出された符号語を復号する。ECC回路14は、例えばユーザデータに付与されたチェックサム等を利用することで、データにおけるエラーの検出、及び当該エラーの訂正を行う。
【0025】
RAM11は、ホストから受信したユーザデータを半導体記憶装置2へ記憶するまでに一時格納したり、半導体記憶装置2から読み出したデータをホストへ送信するまでに一時格納したりする。RAM11は、例えば、SRAMやDRAM等の汎用メモリである。
【0026】
図1では、メモリコントローラ1が、ECC回路14とメモリインターフェイス15をそれぞれ備える構成例が示されている。しかしながら、ECC回路14がメモリインターフェイス15に内蔵されていてもよい。また、ECC回路14が、半導体記憶装置2に内蔵されていてもよい。
図1に示される各要素の具体的な構成や配置は、特に限定されない。
【0027】
ホストから書き込みリクエストを受信した場合、
図1のメモリシステムは次のように動作する。プロセッサ12は、書き込み動作の対象となるデータをRAM11に一時記憶させる。プロセッサ12は、RAM11にストアされたデータを読み出し、ECC回路14に入力する。ECC回路14は、入力されたデータを符号化し、符号語をメモリインターフェイス15に入力する。メモリインターフェイス15は、入力された符号語を半導体記憶装置2に書き込む。
【0028】
ホストから読み出しリクエストを受信した場合、
図1のメモリシステムは次のように動作する。メモリインターフェイス15は、半導体記憶装置2から読み出した符号語をECC回路14に入力する。ECC回路14は、入力された符号語を復号し、復号されたデータをRAM11にストアする。プロセッサ12は、RAM11にストアされたデータを、ホストインターフェイス13を介してホストに送信する。
【0029】
図2に示されるように、本実施形態のメモリシステムには、メモリコントローラ1及び複数の半導体記憶装置2に加えて、電源制御回路3が設けられている。電源制御回路3は、メモリコントローラ1や半導体記憶装置2の動作に必要な各種の電圧(後述のVccQやVssQ等)を生成し、当該電圧を半導体記憶装置2へと入力するための回路である。電源制御回路3は、メモリコントローラ1及び半導体記憶装置2と共にパッケージ化されていてもよく、これらとは別にパッケージ化されていてもよい。また、電源制御回路3が、メモリコントローラ1又は半導体記憶装置2の一部として構成されていてもよい。
【0030】
半導体記憶装置2の構成について説明する。
図3に示されるように、半導体記憶装置2は、2つのプレーンPL1、PL2と、入出力回路21と、ロジック制御回路22と、シーケンサ41と、レジスタ42と、電圧生成回路43と、入出力用端子群31と、ロジック制御用端子群32と、電源入力用端子群33と、を備えている。
【0031】
プレーンPL1は、メモリセルアレイ110と、センスアンプ120と、ロウデコーダ130と、を備えている。また、プレーンPL2は、メモリセルアレイ210と、センスアンプ220と、ロウデコーダ230と、を備えている。プレーンPL1の構成とプレーンPL2の構成とは互いに同一である。つまり、メモリセルアレイ110の構成とメモリセルアレイ210の構成とは互いに同一であり、センスアンプ120の構成とセンスアンプ220の構成とは互いに同一であり、ロウデコーダ130の構成とロウデコーダ230の構成とは互いに同一である。半導体記憶装置2に設けられているプレーンの数は、本実施形態のように2つであってもよいが、1つでもよく、3つ以上であってもよい。
【0032】
メモリセルアレイ110及びメモリセルアレイ210は、データを記憶する部分である。メモリセルアレイ110及びメモリセルアレイ210のそれぞれは、ワード線及びビット線に関連付けられた複数のメモリセルトランジスタを含んでいる。これらの具体的な構成については後に説明する。
【0033】
入出力回路21は、メモリコントローラ1との間で、信号DQ<7:0>、及び、データストローブ信号DQS、/DQSを送受信する。入出力回路21は、信号DQ<7:0>内のコマンド及びアドレスをレジスタ42に転送する。また、入出力回路21は、書き込みデータ及び読み出しデータを、センスアンプ120やセンスアンプ220との間で送受信する。入出力回路21は、メモリコントローラ1からのコマンド等を受信する「入力回路」としての機能と、メモリコントローラ1にデータを出力する「出力回路」としての機能と、の両方を有している。
【0034】
ロジック制御回路22は、メモリコントローラ1からチップイネーブル信号/CE、コマンドラッチイネーブル信号CLE、アドレスラッチイネーブル信号ALE、ライトイネーブル信号/WE、リードイネーブル信号RE、/RE、及びライトプロテクト信号/WPを受信する。また、ロジック制御回路22は、レディービジー信号R/Bをメモリコントローラ1に転送して、半導体記憶装置2の状態を外部に通知する。
【0035】
入出力回路21及びロジック制御回路22は、いずれも、メモリコントローラ1との間で信号が入出力される部分として構成された回路である。つまり、入出力回路21及びロジック制御回路22は、半導体記憶装置2のインターフェイス回路として設けられている。
【0036】
シーケンサ41は、メモリコントローラ1から半導体記憶装置2へと入力された制御信号に基づいて、プレーンPL1、PL2や電圧生成回路43等の各部の動作を制御する。
【0037】
レジスタ42は、コマンドやアドレスを一時的に保持する部分である。レジスタ42は、プレーンPL1、PL2のそれぞれの状態を示すステータス情報をも保持する部分となっている。ステータス情報は、メモリコントローラ1からの要求に応じて、状態信号として入出力回路21からメモリコントローラ1へと出力される。
【0038】
電圧生成回路43は、シーケンサ41からの指示に基づき、メモリセルアレイ110、210におけるデータの書き込み動作、読み出し動作、及び、消去動作のそれぞれに必要な電圧を生成する部分である。このような電圧には、例えば、後述のワード線WLに対し印加されるVPGMやVPASS_PGM、VPASS_READのような電圧や、後述のビット線BLに印加される電圧等が含まれる。電圧生成回路43は、プレーンPL1及びプレーンPL2が互いに並列動作し得るように、各ワード線WLやビット線BL等のそれぞれに対し個別に電圧を印加することが可能となっている。
【0039】
入出力用端子群31は、メモリコントローラ1と入出力回路21との間で各信号の送受信を行うための、複数の端子(ピン)が設けられた部分である。それぞれの端子は、信号DQ<7:0>、及び、データストローブ信号DQS、/DQSのそれぞれに対応して個別に設けられている。
【0040】
ロジック制御用端子群32は、メモリコントローラ1とロジック制御回路22との間で各信号の送受信を行うための、複数の端子(ピン)が設けられた部分である。それぞれの端子は、チップイネーブル信号/CE、コマンドラッチイネーブル信号CLE、アドレスラッチイネーブル信号ALE、ライトイネーブル信号/WE、リードイネーブル信号RE、/RE、ライトプロテクト信号/WP、及び、レディービジー信号R/Bのそれぞれに対応して個別に設けられている。
【0041】
電源入力用端子群33は、半導体記憶装置2の動作に必要な各電圧の印加を受けるための、複数の端子(ピン)が設けられた部分である。それぞれの端子に印加される電圧には、電源電圧Vcc、VccQ、Vpp、及び接地電圧Vss、VssQが含まれる。
【0042】
電源電圧Vccは、メモリセルアレイ110等の動作電源として、外部の電源制御回路3から与えられる回路電源電圧である。電源電圧Vccは、例えば2.5V程度の電圧である。接地電圧Vssは、電源電圧Vccの基準として用いられる接地電圧である。
【0043】
電源電圧VccQは、メモリコントローラ1と半導体記憶装置2との間で信号DQ<7:0>等を送受信する際に用いられる電圧、として外部の電源制御回路3から与えられる電圧であり、例えば1.2Vの電圧である。接地電圧VssQは、電源電圧VccQの基準として用いられる接地電圧である。
【0044】
電源電圧Vppは、電源電圧Vccよりも高圧の電源電圧であり、例えば12Vの電圧である。メモリセルアレイ110、210へデータを書き込んだり、データを消去したりする際には、20V程度の高い電圧(VPGM)が必要となる。この際に、約2.5Vの電源電圧Vccを電圧生成回路43の昇圧回路で昇圧するよりも、約12Vの電源電圧Vppを昇圧するほうが、高速かつ低消費電力で所望の電圧を生成することができる。一方で、例えば、高電圧を供給することができない環境において半導体記憶装置2が用いられる場合、電源電圧Vppには電圧が供給されなくともよい。電源電圧Vppが供給されない場合であっても、半導体記憶装置2は、電源電圧Vccが供給されていれば、各種の動作を実行することができる。すなわち、電源電圧Vccは、半導体記憶装置2に標準的に供給される電源であり、電源電圧Vppは、例えば使用環境に応じて追加的・任意的に供給される電源である。
【0045】
電源制御回路3から電源入力用端子群33の各端子に入力される電圧は、半導体記憶装置2の各部に分配され、各部の動作に供される。尚、
図3においては、電源入力用端子群33の各端子が1か所に集中して配置されているように描かれているのであるが、電源入力用端子群33における実際の端子の配置は
図3とは異なる。入出力用端子群31やロジック制御用端子群32についても同様である。
【0046】
例えば、電源入力用端子群33のうち電源電圧VccQが入力される端子は、実際には複数設けられており、その一部が、電源入力用端子群33の端子と隣り合う位置に配置されている。
【0047】
プレーンPL1、PL2の構成について説明する。尚、先に述べたように、プレーンPL1の構成とプレーンPL2の構成とは互いに同一である。このため、以下ではプレーンPL1の構成についてのみ説明し、プレーンPL2の構成については図示及び説明を省略する。
【0048】
図4には、プレーンPL1に設けられたメモリセルアレイ110の構成が、等価回路図として示されている。メモリセルアレイ110は複数のブロックBLKにより構成されているのであるが、
図4においては、これらのうちの1つのブロックBLKのみが図示されている。メモリセルアレイ110が有する他のブロックBLKの構成も、
図4に示されるものと同じである。
【0049】
図4に示されるように、ブロックBLKは、例えば4つのストリングユニットSU(SU0~SU3)を含む。また各々のストリングユニットSUは、複数のNANDストリングNSを含む。NANDストリングNSの各々は、例えば8個のメモリセルトランジスタMT(MT0~MT7)と、選択トランジスタST1、ST2とを含む。
【0050】
尚、メモリセルトランジスタMTの個数は8個に限られず、例えば、32個、48個、64個、96個でもよい。例えばカットオフ特性を高めるために、選択トランジスタST1、ST2のそれぞれが、単一ではなく複数のトランジスタにより構成されていてもよい。さらに、メモリセルトランジスタMTと選択トランジスタST1、ST2との間には、ダミーセルトランジスタが設けられていてもよい。
【0051】
メモリセルトランジスタMTは、選択トランジスタST1と選択トランジスタST2との間において、直列接続されるようにして配置されている。一端側のメモリセルトランジスタMT7が、選択トランジスタST1のソースに接続され、他端側のメモリセルトランジスタMT0が、選択トランジスタST2のドレインに接続されている。
【0052】
ストリングユニットSU0~SU3の各々の選択トランジスタST1のゲートは、それぞれセレクトゲート線SGD0~SGD3に共通接続されている。選択トランジスタST2のゲートは、同一のブロックBLK内にある複数のストリングユニットSU間で同一のセレクトゲート線SGSに共通接続されている。同一のブロックBLK内にあるメモリセルトランジスタMT0~MT7のゲートは、それぞれワード線WL0~WL7に共通接続される。すなわち、ワード線WL0~WL7及びセレクトゲート線SGSは、同一ブロックBLK内の複数のストリングユニットSU0~SU3間で共通となっているのに対し、セレクトゲート線SGDは、同一ブロックBLK内であってもストリングユニットSU0~SU3毎に個別に設けられている。
【0053】
メモリセルアレイ110には、m本のビット線BL(BL0、BL1、・・・、BL(m-1))が設けられている。上記の「m」は、1つのストリングユニットSUに含まれるNANDストリングNSの本数を表す整数である。それぞれのNANDストリングNSのうち、選択トランジスタST1のドレインは、対応するビット線BLに接続されている。選択トランジスタST2のソースは、ソース線SLに接続されている。ソース線SLは、ブロックBLKが有する複数の選択トランジスタST2のソースに対し、共通接続されている。
【0054】
同一のブロックBLK内にある複数のメモリセルトランジスタMTに記憶されているデータは、一括して消去される。一方、データの読み出し及び書き込みは、1つのワード線WLに接続され、かつ1つのストリングユニットSUに属する複数のメモリセルトランジスタMTに対して一括して行われる。それぞれのメモリセルは、上位ビット、中位ビット、及び下位ビットからなる3ビットのデータを保持することができる。
【0055】
つまり、本実施形態に係る半導体記憶装置2は、メモリセルトランジスタMTへのデータの書き込み方式として、1つのメモリセルトランジスタMTに3ビットデータを記憶させるTLC方式を採用している。このような態様に換えて、メモリセルトランジスタMTへのデータの書き込み方式としては、1つのメモリセルトランジスタMTに2ビットデータを記憶させるMLC方式等を採用してもよい。1つのメモリセルトランジスタMTに記憶されるデータのビット数は特に限定されない。
【0056】
尚、以下の説明では、1つのワード線WLに接続され、かつ1つのストリングユニットSUに属する複数のメモリセルトランジスタMTが記憶する1ビットデータの集合のことを「ページ」と称する。
図4では、上記のような複数のメモリセルトランジスタMTからなる集合の一つに、符号「MG」が付してある。
【0057】
本実施形態のように、1つのメモリセルトランジスタMTに3ビットのデータが記憶される場合、1つのストリングユニットSU内で共通のワード線WLに接続された複数のメモリセルトランジスタMTの集合は、3ページ分のデータを記憶することができる。これらのうち、下位ビットデータの集合からなるページのことを以下では「下位ページ」とも称し、下位ページのデータのことを以下では「下位ページデータ」とも称する。同様に、中位ビットデータの集合からなるページのことを以下では「中位ページ」とも称し、中位ページのデータのことを以下では「中位ページデータ」とも称する。上位ビットデータの集合からなるページのことを以下では「上位ページ」とも称し、上位ページのデータのことを以下では「上位ページデータ」とも称する。
【0058】
図5には、メモリセルアレイ110及びその周辺の構成が、模式的な断面図として示されている。同図に示されるように、メモリセルアレイ110では、導電体層320の上に複数のNANDストリングNSが形成されている。導電体層320は、埋め込みソース線(BSL)とも称されるものであり、
図4のソース線SLに該当するものである。
【0059】
導電体層320の上方には、セレクトゲート線SGSとして機能する複数の配線層333、ワード線WLとして機能する複数の配線層332、及びセレクトゲート線SGDとして機能する複数の配線層331が積層されている。積層された配線層333、332、331のそれぞれの間には、不図示の絶縁層が配置されている。
【0060】
メモリセルアレイ110には複数のメモリホール334が形成されている。メモリホール334は、上記の配線層333、332、331、及びこれらの間にある不図示の絶縁層を上下方向に貫通しており、且つ導電体層320に達する穴である。メモリホール334の側面には、ブロック絶縁膜335、電荷蓄積層336、及びゲート絶縁膜337が順次形成され、更にその内側に導電体柱338が埋め込まれている。導電体柱338は、例えばポリシリコンからなり、NANDストリングNSに含まれるメモリセルトランジスタMT並びに選択トランジスタST1及びST2の動作時にチャネルが形成される領域として機能する。このように、メモリホール334の内側には、ブロック絶縁膜335、電荷蓄積層336、ゲート絶縁膜337、及び導電体柱338からなる柱状体が形成されている。
【0061】
メモリホール334の内側に形成された柱状体のうち、積層された配線層333、332、331のそれぞれと交差している各部分は、トランジスタとして機能する。これら複数のトランジスタのうち、配線層331と交差している部分にあるものは、選択トランジスタST1として機能する。複数のトランジスタのうち、配線層332と交差している部分にあるものは、メモリセルトランジスタMT(MT0~MT7)として機能する。複数のトランジスタのうち、配線層333と交差している部分にあるものは、選択トランジスタST2として機能する。このような構成により、各メモリホール334の内側に形成された柱状体のそれぞれは、
図4を参照しながら説明したNANDストリングNSとして機能する。柱状体の内側にある導電体柱338は、メモリセルトランジスタMTや選択トランジスタST1、ST2のチャンネルとして機能する部分である。
【0062】
導電体柱338よりも上側には、ビット線BLとして機能する配線層が形成される。導電体柱338の上端には、導電体柱338とビット線BLとを接続するコンタクトプラグ339が形成されている。
【0063】
図5に示される構成と同様の構成が、
図5の紙面の奥行き方向に沿って複数配列されている。
図5の紙面の奥行き方向に沿って一列に並ぶ複数のNANDストリングNSの集合によって、1つのストリングユニットSUが形成されている。
【0064】
本実施形態に係る半導体記憶装置2では、メモリセルアレイ110の下方側、すなわち、メモリセルアレイ110と半導体基板300との間となる位置に、周辺回路PERが設けられている。周辺回路PERは、メモリセルアレイ110におけるデータの書き込み動作や読み出し動作、及び消去動作等を実現するために設けられた回路である。
図3に示されるセンスアンプ120、ロウデコーダ130、及び電圧生成回路43等は、周辺回路PERの一部となっている。周辺回路PERは、各種のトランジスタやRC回路等を含んでいる。
図5に示される例では、半導体基板300上に形成されたトランジスタTRと、メモリセルアレイ110の上方側にあるビット線BLとの間が、コンタクト924を介して電気的に接続されている。
【0065】
尚、このような構成に換えて、半導体基板300の上に直接メモリセルアレイ110が設けられている構成としてもよい。この場合、半導体基板300のp型ウェル領域が、ソース線SLとして機能することとなる。また、周辺回路PERは、半導体基板300の表面に沿ってメモリセルアレイ110と隣り合う位置に設けられることとなる。
【0066】
図3に戻って説明を続ける。先に述べたように、プレーンPL1には、上記のメモリセルアレイ110に加えて、センスアンプ120とロウデコーダ130とが設けられている。
【0067】
センスアンプ120は、ビット線BLに印加される電圧を調整したり、ビット線BLの電圧を読み出してデータに変換したりするための回路である。センスアンプ120は、データの読み出し時には、メモリセルトランジスタMTからビット線BLに読み出された読み出しデータを取得し、取得した読み出しデータを入出力回路21に転送する。センスアンプ120は、データの書き込み時には、ビット線BLを介して書き込まれる書き込みデータをメモリセルトランジスタMTに転送する。
【0068】
ロウデコーダ130は、ワード線WLのそれぞれに電圧を印加するための、不図示のスイッチ群として構成された回路である。ロウデコーダ130は、レジスタ42からブロックアドレス及びロウアドレスを受け取り、当該ブロックアドレスに基づいて対応するブロックBLKを選択するとともに、当該ロウアドレスに基づいて対応するワード線WLを選択する。ロウデコーダ130は、選択されたワード線WLに対して電圧生成回路43からの電圧が印加されるよう、上記のスイッチ群の開閉を切り換える。
【0069】
図6には、センスアンプ120の構成例が示されている。センスアンプ120は、複数のビット線BLのそれぞれに関連付けられた複数のセンスアンプユニットSAUを含む。
図6には、これらのうちの1つのセンスアンプユニットSAUの詳細な回路構成が抽出して示されている。
【0070】
図6に示されるように、センスアンプユニットSAUは、センスアンプ部SAと、ラッチ回路SDL、ADL、BDL、CDL、XDLとを含んでいる。センスアンプ部SA、ラッチ回路SDL、ADL、BDL、CDL、XDLは、互いにデータを送受信可能なように、バスLBUSによって接続されている。
【0071】
センスアンプ部SAは、例えば読み出し動作において、対応するビット線BLに読み出されたデータをセンスして、読み出したデータが“0”であるか“1”であるかを判定する。センスアンプ部SAは、例えば、pチャネルMOSトランジスタであるトランジスタTR1と、nチャネルMOSトランジスタであるトランジスタTR2~TR9と、キャパシタC10とを含んでいる。
【0072】
トランジスタTR1の一端は電源線に接続されており、トランジスタTR1の他端はトランジスタTR2に接続されている。トランジスタTR1のゲートは、ラッチ回路SDL内のノードINVに接続されている。トランジスタTR2の一端はトランジスタTR1に接続されており、トランジスタTR2の他端はノードCOMに接続されている。トランジスタTR2のゲートには信号BLXが入力される。トランジスタTR3の一端はノードCOMに接続されており、トランジスタTR3の他端はトランジスタTR4に接続されている。トランジスタTR3のゲートには信号BLCが入力される。トランジスタTR4は、高耐圧のMOSトランジスタである。トランジスタTR4の一端はトランジスタTR3に接続されている。トランジスタTR4の他端は対応するビット線BLに接続されている。トランジスタTR4のゲートには信号BLSが入力される。
【0073】
トランジスタTR5の一端はノードCOMに接続されており、トランジスタTR5の他端はノードSRCに接続されている。トランジスタTR5のゲートはノードINVに接続されている。トランジスタTR6の一端は、トランジスタTR1とトランジスタTR2との間に接続されており、トランジスタTR6の他端はノードSENに接続されている。トランジスタTR6のゲートには信号HLLが入力される。トランジスタTR7の一端はノードSENに接続されており、トランジスタTR7の他端はノードCOMに接続されている。トランジスタTR7のゲートには信号XXLが入力される。
【0074】
トランジスタTR8の一端は接地されており、トランジスタTR8の他端はトランジスタTR9に接続されている。トランジスタTR8のゲートはノードSENに接続されている。トランジスタTR9の一端はトランジスタTR8に接続されており、トランジスタTR9の他端はバスLBUSに接続されている。トランジスタTR9のゲートには信号STBが入力される。キャパシタC10の一端はノードSENに接続されている。キャパシタC10の他端にはクロックCLKが入力される。
【0075】
信号BLX、BLC、BLS、HLL、XXL、及びSTBは、例えばシーケンサ41によって生成される。また、トランジスタTR1の一端に接続された電源線には、例えば半導体記憶装置2の内部電源電圧である電圧Vddが印加され、ノードSRCには、例えば半導体記憶装置2の接地電圧である電圧Vssが印加される。
【0076】
ラッチ回路SDL、ADL、BDL、CDL、XDLは、読み出しデータを一時的に保持する。ラッチ回路XDLは入出力回路21に接続され、センスアンプユニットSAUと入出力回路21との間のデータの入出力に使用される。読み出しデータは、ラッチ回路XDLに保持されることで、入出力回路21からメモリコントローラ1へと出力可能な状態となる。例えば、センスアンプユニットSAUによって読み出されたデータは、ラッチ回路ADL、BDL、CDLのいずれかに格納された後、ラッチ回路XDLへ転送され、ラッチ回路XDLから入出力回路21に出力される。また、例えば、メモリコントローラ1から入出力回路21に入力されたデータは、入出力回路21からラッチ回路XDLへ転送され、ラッチ回路XDLからラッチ回路ADL、BDL、CDLのいずれかに転送される。
【0077】
ラッチ回路SDLは、例えば、インバータIV11、IV12と、nチャネルMOSトランジスタであるトランジスタTR13、TR14とを含んでいる。インバータIV11の入力ノードはノードLATに接続されている。インバータIV11の出力ノードはノードINVに接続されている。インバータIV12の入力ノードはノードINVに接続されている。インバータIV12の出力ノードはノードLATに接続されている。トランジスタTR13の一端はノードINVに接続されており、トランジスタTR13の他端はバスLBUSに接続されている。トランジスタTR13のゲートには信号STIが入力される。トランジスタTR13の一端はノードLATに接続されており、トランジスタTR14の他端はバスLBUSに接続されている。トランジスタTR14のゲートには信号STLが入力される。例えば、ノードLATにおいて保持されるデータがラッチ回路SDLに保持されるデータに相当する。また、ノードINVにおいて保持されるデータは、ノードLATに保持されるデータの反転データに相当する。ラッチ回路ADL、BDL、CDL、XDLの回路構成は、例えば、ラッチ回路SDLの回路構成と同様のため、説明を省略する。
【0078】
図7は、メモリセルトランジスタMTの閾値分布等を模式的に示す図である。
図7の中段にある図は、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧(横軸)と、メモリセルトランジスタMTの個数(縦軸)との対応関係を表している。
【0079】
本実施形態のようにTLC方式を採用した場合においては、複数のメモリセルトランジスタMTは、
図7の中段に示されるように、8つの閾値分布を形成する。この8個の閾値分布(書き込みレベル)のことを、閾値電圧の低い方から順に“ER”レベル、“A”レベル、“B”レベル、“C”レベル、“D”レベル、“E”レベル、“F”レベル、“G”レベルと称する。
【0080】
図7の上段にある表は、閾値電圧の上記各レベルのそれぞれに対応して、割り当てられるデータの例を表している。同表に示されるように、“ER”レベル、“A”レベル、“B”レベル、“C”レベル、“D”レベル、“E”レベル、“F”レベル、及び“G”レベルには、例えば以下に示すような、それぞれ異なる3ビットデータが割り当てられている。
“ER”レベル:“111”(“下位ビット/中位ビット/上位ビット”)
“A”レベル:“011”
“B”レベル:“001”
“C”レベル:“000”
“D”レベル:“010”
“E”レベル:“110”
“F”レベル:“100”
“G”レベル:“101”
【0081】
このように、本実施形態におけるメモリセルトランジスタMTの閾値電圧は、予め設定された8つの候補レベルのうちの1つをとり得るものとなっており、それぞれの候補レベルに対応して、上記のようにデータが割り当てられている。
【0082】
互いに隣り合う一対の閾値分布の間には、それぞれ書き込み動作で使用されるベリファイ電圧が設定される。具体的には、“A”レベル、“B”レベル、“C”レベル、“D”レベル、“E”レベル、“F”レベル、及び“G”レベルにそれぞれ対応して、ベリファイ電圧VfyA、VfyB、VfyC、VfyD、VfyE、VfyF、及びVfyGが設定される。
【0083】
ベリファイ電圧VfyAは、“ER”レベルにおける最大の閾値電圧と“A”レベルにおける最小の閾値電圧との間に設定される。ワード線WLにベリファイ電圧VfyAが印加されると、当該ワード線WLに繋がるメモリセルトランジスタMTのうち、閾値電圧が“ER”レベルに含まれるメモリセルトランジスタMTがオン状態になり、閾値電圧が“A”レベル以上の閾値分布に含まれるメモリセルトランジスタMTがオフ状態になる。
【0084】
その他のベリファイ電圧VfyB、VfyC、VfyD、VfyE、VfyF、及びVfyGも、上記のベリファイ電圧VfyAと同様に設定される。ベリファイ電圧VfyBは、“A”レベルと“B”レベルとの間に設定され、ベリファイ電圧VfyCは、“B”レベルと“C”レベルとの間に設定され、ベリファイ電圧VfyDは、“C”レベルと“D”レベルとの間に設定され、ベリファイ電圧VfyEは、“D”レベルと“E”レベルとの間に設定され、ベリファイ電圧VfyFは、“E”レベルと“F”レベルとの間に設定され、ベリファイ電圧VfyGは、“F”レベルと“G”レベルとの間に設定される。
【0085】
例えば、ベリファイ電圧VfyAは0.8Vに、ベリファイ電圧VfyBは1.6Vに、ベリファイ電圧VfyCは2.4Vに、ベリファイ電圧VfyDは3.1Vに、ベリファイ電圧VfyEは3.8Vに、ベリファイ電圧VfyFは4.6Vに、ベリファイ電圧VfyGは5.6Vに、それぞれ設定してもよい。しかし、これに限定されることなく、ベリファイ電圧VfyA、VfyB、VfyC、VfyD、VfyE、VfyF、及びVfyGは、例えば、0V~7.0Vの範囲で、適宜、段階的に設定してもよい。
【0086】
また、隣り合う閾値分布の間には、それぞれ読み出し動作で使用される読み出し電圧が設定される。「読み出し電圧」とは、読み出し動作時において、読み出し対象となるメモリセルトランジスタMTに繋がるワード線WL、すなわち選択ワード線に対し印加される電圧である。読み出し動作では、読み出し対象となるメモリセルトランジスタMTの閾値電圧が、印加された読み出し電圧よりも高いか否かの判定結果に基づいてデータが決定される。
【0087】
図7の下段の図において模式的に示されるように、具体的には、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧が“ER”レベルに含まれるのか“A”レベル以上に含まれるのかを判定する読み出し電圧VrAは、“ER”レベルにおける最大の閾値電圧と“A”レベルにおける最小の閾値電圧との間に設定される。
【0088】
その他の読み出し電圧VrB、VrC、VrD、VrE、VrF、及びVrGも、上記の読み出し電圧VrAと同様に設定される。読み出し電圧VrBは、“A”レベルと“B”レベルとの間に設定され、読み出し電圧VrCは、“B”レベルと“C”レベルとの間に設定され、読み出し電圧VrDは、“C”レベルと“D”レベルとの間に設定され、読み出し電圧VrEは、“D”レベルと“E”レベルとの間に設定され、読み出し電圧VrFは、“E”レベルと“F”レベルとの間に設定され、読み出し電圧VrGは、“F”レベルと“G”レベルとの間に設定される。
【0089】
そして、最も高い閾値分布(例えば“G”レベル)の最大の閾値電圧よりも高い電圧に、読み出しパス電圧VPASS_READが設定される。読み出しパス電圧VPASS_READがゲートに印加されたメモリセルトランジスタMTは、記憶するデータに依らずにオン状態になる。
【0090】
尚、ベリファイ電圧VfyA、VfyB、VfyC、VfyD、VfyE、VfyF、及びVfyGは、例えば、読み出し電圧VrA、VrB、VrC、VrD、VrE、VrF、及びVrGよりもそれぞれ高い電圧に設定される。つまり、ベリファイ電圧VfyA、VfyB、VfyC、VfyD、VfyE、VfyF、及びVfyGは、それぞれ“A”レベル、“B”レベル、“C”レベル、“D”レベル、“E”レベル、“F”レベル、及び“G”レベルの閾値分布の下裾近傍に設定される。
【0091】
以上に説明したようなデータの割り付けが適用された場合、読み出し動作において下位ビットの1ページデータ(下位ページデータ)は、読み出し電圧VrA及びVrEを用いた読み出し結果によって確定させることができる。中位ビットの1ページデータ(中位ページデータ)は、読み出し電圧VrB、VrD、及びVrFを用いた読み出し結果によって確定させることができる。上位ビットの1ページデータ(上位ページデータ)は、読み出し電圧VrC及びVrGを用いた読み出し結果によって確定させることができる。このように、下位ページデータ、中位ページデータ、及び上位ページデータがそれぞれ、2回、3回、及び2回の読み出し動作によって確定するため、以上のようなデータの割り付けは“2-3-2コード”と称される。
【0092】
尚、以上で説明したようなデータの割り付けはあくまで一例であり、実際のデータの割り付けはこれに限定されない。例えば、2ビット又は4ビット以上のデータが1つのメモリセルトランジスタMTに記憶されてもよい。また、データが割り付けられる閾値分布の数(つまり、上記の「候補レベル」の数)は7以下であってもよく、9以上であってもよい。例えば、“2-3-2コード”に代えて、“1-3-3コード”又は“1-2-4コード”を用いてもよい。また、例えば、下位ビット/中位ビット/上位ビットの割り当てを変更してもよい。より具体的には、例えば、“2-3-2コード”において、下位ページデータを読み出し電圧VrC及びVrBを用いた読み出し結果によって確定させ、中位ページデータを読み出し電圧VrB、VrD、及びVrFを用いた読み出し結果によって確定させ、上位ページデータを読み出し電圧VrA及びVrEを用いた読み出し結果によって確定させるようにデータを割り当ててもよい。すなわち、例えば、下位ビットと上位ビットの割り当てを入れ換えてもよい。この場合、閾値電圧の各レベルのそれぞれに対応して、以下のようにデータが割り当てられる。
“ER”レベル:“111”(“下位ビット/中位ビット/上位ビット”)
“A”レベル:“110”
“B”レベル:“100”
“C”レベル:“000”
“D”レベル:“010”
“E”レベル:“011”
“F”レベル:“001”
“G”レベル:“101”
【0093】
半導体記憶装置2において行われる書き込み動作について説明する。書き込み動作では、プログラム動作及びベリファイ動作が行われる。「プログラム動作」とは、一部のメモリセルトランジスタMTの電荷蓄積層336に電子を注入することにより、当該メモリセルトランジスタMTの閾値電圧を変化させる動作のことである。「ベリファイ動作」とは、上記のプログラム動作の後、データを読み出すことで、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧がターゲットレベルまで達したか否かを判定し検証する動作である。閾値電圧がターゲットレベルまで達したメモリセルトランジスタMTは、その後、書き込み禁止とされる。ここでいう「ターゲットレベル」とは、先に述べた8つの候補レベルの中から、目標のレベルとして設定された特定の候補レベルのことである。
【0094】
書き込み動作では、以上のプログラム動作及びベリファイ動作が繰り返し実行される。これにより、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧がターゲットレベルまで上昇する。
【0095】
複数のワード線WLのうち、書き込み動作の対象(つまり、閾値電圧を変化させる対象)であるメモリセルトランジスタMTに繋がっているワード線WLのことを、以下では「選択ワード線」とも称する。また、書き込み動作の対象ではないメモリセルトランジスタMTに繋がっているワード線WLのことを、以下では「非選択ワード線」とも称する。書き込み対象であるメモリセルトランジスタMTのことを、以下では「選択メモリトランジスタ」とも称する。
【0096】
複数のストリングユニットSUのうち、書き込み動作の対象となるストリングユニットSUのことを、以下では「選択ストリングユニット」とも称する。また、書き込み動作の対象とはならないストリングユニットSUのことを、以下では「非選択ストリングユニット」とも称する。
【0097】
選択ストリングユニットに含まれる各NANDストリングNSの導電体柱338、すなわち、選択ストリングユニットにおける各チャンネルのことを、以下では「選択チャンネル」とも称する。また、非選択ストリングユニットに含まれる各NANDストリングNSの導電体柱338、すなわち、非選択ストリングユニットにおける各チャンネルのことを、以下では「非選択チャンネル」とも称する。
【0098】
複数のビット線BLのうち、選択メモリトランジスタに繋がっているビット線BLのことを、以下では「選択ビット線」とも称する。また、選択メモリトランジスタに繋がっていないビット線BLのことを、以下では「非選択ビット線」とも称する。
【0099】
プログラム動作について説明する。以下では、プログラム動作の対象がプレーンPL1である場合の例について説明するが、プレーンPL2の場合も以下と同様である。
図8は、プログラム動作時における各配線の電位変化を示している。プログラム動作では、センスアンプ120が、プログラムデータに対応して各ビット線BLの電位を変化させる。プログラム対象の(閾値電圧を上昇させるべき)メモリセルトランジスタMTに繋がるビット線BLには、“L”レベルとして例えば接地電圧Vss(0V)が印加される。プログラム対象ではない(閾値電圧を維持させるべき)メモリセルトランジスタMTに繋がるビット線BLには、“H”レベルとして、例えば2.5Vが印加される。前者のビット線BLは、
図8においては「BL(0)」と表記されている。後者のビット線BLは、
図8においては「BL(1)」と表記されている。
【0100】
ロウデコーダ130は、書き込み動作の対象としていずれかのブロックBLKを選択し、更にいずれかのストリングユニットSUを選択する。より具体的には、選択されたストリングユニットSUにおけるセレクトゲート線SGD(選択セレクトゲート線SGDsel)には、電圧生成回路43からロウデコーダ130を介して例えば5Vが印加される。これにより、選択トランジスタST1はオン状態となる。他方で、セレクトゲート線SGSには、電圧生成回路43からロウデコーダ130を介して例えば電圧Vssが印加される。これにより、選択トランジスタST2はオフ状態となる。
【0101】
また、選択ブロックBLKにおける非選択ストリングユニットSUのセレクトゲート線SGD(非選択セレクトゲート線SGDusel)には、電圧生成回路43からロウデコーダ130を介して例えば電圧5Vが印加される。これにより、選択トランジスタST1がオン状態となる。なお、各ブロックBLKに含まれるストリングユニットSUにおいて、セレクトゲート線SGSは共通に接続されている。従って、非選択ストリングユニットSUにおいても、選択トランジスタST2はオフ状態となる。
【0102】
更に、非選択ブロックBLKにおけるセレクトゲート線SGD及びセレクトゲート線SGSには、電圧生成回路43からロウデコーダ130を介して例えば電圧Vssが印加される。これにより、選択トランジスタST1及び選択トランジスタST2はオフ状態となる。
【0103】
ソース線SLは、セレクトゲート線SGSの電位よりも高い電位とされる。当該電位は、例えば1Vである。
【0104】
その後、選択ブロックBLKにおける選択セレクトゲート線SGDselの電位を、例えば2.5Vとする。この電位は、上記の例で0Vが与えられたビット線BL(0)に対応する選択トランジスタST1はオンさせるが、2.5Vが与えられたビット線BL(1)に対応する選択トランジスタST1はカットオフさせる電圧である。これにより、選択ストリングユニットSUにおいては、ビット線BL(0)に対応する選択トランジスタST1はオンされ、2.5Vが与えられたビット線BL(1)に対応する選択トランジスタST1はカットオフされる。一方で、非選択セレクトゲート線SGDuselの電位を、例えば電圧Vssとする。これにより、非選択ストリングユニットSUにおいては、ビット線BL(0)及びビット線BL(1)の電位に関わらず、選択トランジスタST1はカットオフされる。
【0105】
そしてロウデコーダ130は、選択ブロックBLKにおいて、書き込み動作の対象としていずれかのワード線WLを選択する。書き込み動作の対象となるワード線WL(選択ワード線WLsel)に、電圧生成回路43からロウデコーダ130を介して例えば電圧VPGMが印加される。一方で、その他のワード線WL(非選択ワード線WLusel)に、電圧生成回路43からロウデコーダ130を介して例えば電圧VPASS_PGMが印加される。電圧VPGMは、トンネル現象により電子を電荷蓄積層336に注入するための高電圧である。電圧VPASS_PGMは、ワード線WLに繋がるメモリセルトランジスタMTをONとする一方で、閾定電圧は変化させない程度の電圧である。VPGMはVPASS_PGMよりも高い電圧である。
【0106】
プログラム対象のビット線BL(0)に対応するNANDストリングNSでは、選択トランジスタST1がオン状態となる。そのため、選択ワード線WLselに接続されたメモリセルトランジスタMTのチャネル電位は0Vとなる。制御ゲートとチャネルとの間の電位差が大きくなり、その結果、電子が電荷蓄積層336に注入されるので、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧が上昇される。
【0107】
プログラム対象ではないビット線BL(1)に対応するNANDストリングNSでは、選択トランジスタST1がカットオフ状態となる。そのため、選択ワード線WLselに接続されたメモリセルトランジスタMTのチャネルは電気的にフローティングとなり、ワード線WL等との容量カップリングによりチャネル電位は電圧VPGM近くまで上昇される。制御ゲートとチャネルとの間の電位差が小さくなり、その結果、電子は電荷蓄積層336に注入されないので、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧は維持される。正確にいうと、閾値分布レベルがより高い分布に遷移するほどには、閾値電圧は変動しない。
【0108】
読み出し動作について説明する。以下では、読み出し動作の対象がプレーンPL1である場合の例について説明するが、プレーンPL2の場合も以下と同様である。プログラム動作に続いて行われるベリファイ動作は、以下に説明する読み出し動作と同じである。
図9は、読み出し動作時における各配線の電位変化を示している。読み出し動作では、読み出し動作の対象となるメモリセルトランジスタMT、を含むNANDストリングNSが選択される。あるいは、読み出し動作の対象となるページを含むストリングユニットSUが選択される。
【0109】
まず、選択セレクトゲート線SGDsel、非選択セレクトゲート線SGDusel及びセレクトゲート線SGSには、電圧生成回路43からロウデコーダ130を介して例えば5Vが印加される。これにより、選択ブロックBLKに含まれる選択トランジスタST1及び選択トランジスタST2はオン状態となる。また、選択ワード線WLsel及び非選択ワード線には、電圧生成回路43からロウデコーダ130を介して例えば読み出しパス電圧VPASS_READが印加される。読み出しパス電圧VPASS_READは、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧にかかわらず、メモリセルトランジスタMTをONとすることができ、かつ、閾定電圧は変化させない程度の電圧である。これにより、選択ストリングユニットSUであるか非選択ストリングユニットSUであるかにかかわらず、選択ブロックBLKに含まれる全てのNANDストリングNSにおいて、電流が導通する。
【0110】
次に、読み出し動作の対象となるメモリセルトランジスタMTに繋がるワード線WL(選択ワード線WLsel)に対し、電圧生成回路43からロウデコーダ130を介して例えばVrAのような読み出し電圧Vrが印加される。それ以外のワード線(非選択ワード線WLusel)に対しては、読み出しパス電圧VPASS_READが印加される。
【0111】
また、選択セレクトゲート線SGDsel及びセレクトゲート線SGSに印加する電圧は維持しつつ、非選択セレクトゲート線SGDuselには、電圧生成回路43からロウデコーダ130を介して例えば電圧Vssが印加される。これにより、選択ストリングユニットSUに含まれる選択トランジスタST1はオン状態を維持するが、非選択ストリングユニットSUに含まれる選択トランジスタST1はオフ状態となる。なお、選択ストリングユニットSUであるか非選択ストリングユニットSUであるかにかかわらず、選択ブロックBLKに含まれる選択トランジスタST2はオン状態となる。
【0112】
これにより、非選択ストリングユニットSUに含まれるNANDストリングNSは、少なくとも選択トランジスタST1がオフ状態となるため、電流パスを形成しない。一方で、選択ストリングユニットSUに含まれるNANDストリングNSは、選択ワード線WLselに印加される読み出し電圧VrとメモリセルトランジスタMTの閾値電圧との関係に応じて、電流パスが形成され、または、形成されない。
【0113】
センスアンプ120は、選択されたNANDストリングNSに繋がるビット線BLに対して電圧を印加する。この状態で、センスアンプ120は、当該ビット線BLを流れる電流の値に基づいてデータの読み出しを行う。具体的には、読み出し動作の対象となるメモリセルトランジスタMTの閾値電圧が、当該メモリセルトランジスタMTに印加された読み出し電圧よりも高いか否かを判定する。尚、データの読み出しは、ビット線BLを流れる電流の値に基づくのではなく、ビット線BLにおける電位の時間変化に基づいて行われてもよい。後者の場合、ビット線BLは、予め所定の電位となるようにプリチャージされる。
【0114】
先に述べたベリファイ動作も、上記のような読み出し動作と同様に行われる。ベリファイ動作では、ベリファイの対象となるメモリセルトランジスタMTに繋がるワード線WLに対し、例えばVfyAのようなベリファイ電圧が電圧生成回路43からロウデコーダ130を介して印加されることとなる。
【0115】
なお、先に述べたプログラム動作の初期段階における選択セレクトゲート線SGDsel及び非選択セレクトゲート線SGDuselに5Vの電圧を印加する動作は、省略される場合がある。同様に、先に述べた読み出し動作(ベリファイ動作)の初期段階における非選択セレクトゲート線SGDuselに5Vの電圧を印加し選択ワード線WLselに読み出しパス電圧VPASS_READを印加する動作は、省略される場合がある。
【0116】
読み出し動作時において、半導体記憶装置2とメモリコントローラ1との間で送受信される具体的な信号の流れ等について説明する。以下では、読み出し動作の対象がプレーンPL1である場合の例について説明するが、プレーンPL2の場合も以下と同様である。
【0117】
図10には、半導体記憶装置2とメモリコントローラ1との間で送受信される各種の信号等の例が示されている。
【0118】
読み出し動作時においては、メモリコントローラ1から半導体記憶装置2に向けて、信号DQ<7:0>として、「05h」、複数の「ADD」、及び「E0h」からなる信号が順に入力される。「05h」は、メモリセルアレイ110からのデータの読み出し動作を実行させるためのコマンドである。「ADD」は、データの読み出し元となるアドレスを指定する信号である。「E0h」は、読み出し動作を開始させるためのコマンドである。
【0119】
図10では、「E0h」が半導体記憶装置2に入力されたタイミングが時刻t0として示されている。時刻t0から一定の期間が経過した時刻t1において、メモリコントローラ1は、リードイネーブル信号/REのトグルを開始させる。
【0120】
先に述べたように、リードイネーブル信号/REは、メモリコントローラ1が、半導体記憶装置2からデータを読み出すための信号であり、半導体記憶装置2の入出力用端子群31に入力される。時刻t1以降は、リードイネーブル信号/REが、HレベルとLレベルとの間において交互に切り換えられる(トグルされる)。このように切り換えられるリードイネーブル信号/REのそれぞれが、データを読み出すための「読み出し信号」として用いられる。入出力用端子群31は、メモリコントローラ1から読み出し信号(/RE)を繰り返し受信する。
【0121】
半導体記憶装置2は、リードイネーブル信号/REが切り換わる毎に(すなわち、それぞれの読み出し信号が入力される毎に)、信号DQ<7:0>としてデータを出力すると共に、データストローブ信号DQSをHレベルとLレベルとの間で切り換える。
図10においては、信号DQ<7:0>として出力されるデータのそれぞれが「D」として示されている。また、最初のデータが出力され、データストローブ信号DQSが切り換わるタイミングが、時刻t2として示されている。時刻t1から時刻t2までの時間は、半導体記憶装置2の内部処理に要するタイムラグである。メモリコントローラ1から入力されるリードイネーブル信号/REの切り換えと、半導体記憶装置2から出力されるデータストローブ信号DQSの切り換えと、の対応関係が、
図10では点線の矢印で示されている。
【0122】
尚、半導体記憶装置2からの読み出しデータの出力は、1つのデータを、偶数ビットからなるイーブンデータと、奇数ビットからなるオッドデータと、に分けた上で、それぞれを交互に出力することで行われる。
図10において「D」と示されるそれぞれのデータは、イーブンデータ及びオッドデータのいずれかとして出力されるものである。
【0123】
読み出しデータが出力される際には、電源入力用端子群33のうち、信号DQを出力する端子(後述のピン501)の電位が、当該データに応じて都度切り換えられる。
図11には、当該電位の時間変化の例が示されている。同図に示されるように、上記端子の電位は、読み出しデータに応じて、VccQもしくはVssQのいずれかの電位とされる。例えば、VccQは「1」のデータに対応する電位であり、VssQは「0」のデータに対応する電位である。
【0124】
線L1に示されるのは、電位がVccQからVssQへと変化し、その後再びVccQとなる例である。線L2に示されるのは、電位がVssQからVccQへと変化し、その後再びVssQとなる例である。
【0125】
図11の時刻t10は、入出力用端子群31の端子から読み出しデータが出力され始める時刻、すなわち、当該端子の電位が読み出しデータに応じて変化し始める時刻である。電位は、時刻t10の後の時刻t11において概ね一定となり、その後、時刻t13までの一定期間に亘って維持される。メモリコントローラ1によるデータの読み出しは、例えば、時刻t11から時刻t13までの期間の中間のタイミングにおいて行われる。時刻t13よりも後の時刻t20には、入出力用端子群31の端子から次の読み出しデータが出力され始める。
【0126】
このような読み出しデータの出力を実行するための具体的な回路構成について説明する。
図12には、入出力回路21の内部構成が模式的に描かれている。同図に示されるように、入出力回路21には、入出力用端子群31の各端子に対応して、入力回路21a及び出力回路21bのそれぞれが設けられている。入力回路21aは、入出力用端子群31の端子に入力される電位の大きさを取得するための回路である。出力回路21bは、入出力用端子群31の端子から出力する電位の大きさを調整するための回路である。
【0127】
図13には、ロジック制御回路22の内部構成が模式的に描かれている。同図に示されるように、ロジック制御回路22には入力回路22a及び出力回路22bが設けられており、ロジック制御用端子群32の各端子のそれぞれに対し、入力回路22a及び出力回路22bのいずれか一方が接続されている。入力回路22aは、ロジック制御用端子群32の端子に入力される電位の大きさを取得するための回路である。出力回路22bは、ロジック制御回路22の端子から出力する電位の大きさを調整するための回路である。
【0128】
図14には、入出力用端子群31に含まれる複数の端子のうち、信号DQを出力するための端子であるピン501、が2つ示されており、それぞれのピン501に対応した出力回路21bも示されている。上方側に描かれているピン501は、信号DQ<0>を出力するための端子である。下方側に描かれているピン501は、信号DQ<1>を出力するための端子である。
【0129】
ピン501の電位を変化させるための回路、すなわち出力回路21bの構成は、
図14において図示されていないピン501を含め、入出力用端子群31に含まれるそれぞれのピン501について概ね同様である。以下では、信号DQ<0>を出力するためのピン501やその周辺の回路構成について主に説明し、その他の構成については適宜説明を省略する。
【0130】
読み出し動作の際には、それぞれの読み出しデータに対応して、ピン501から外部のメモリコントローラ1に向けて信号が出力される。ここでいう「信号」とは、
図11に示されるような、それぞれの読み出しデータに対応して変化する電位、として出力される「出力信号」である。読み出し動作の際には、複数の読み出しデータが連続して出力されるので、ピン501からは上記出力信号が繰り返し出力される。読み出し動作の際には、それぞれのピン501は「出力ピン」として動作する。
【0131】
ピン501には、配線571の一端が接続されている。配線571は、入出力回路21に設けられた内部配線であって、後述のプルアップドライバ510等と共に、ピン501の電位を変化させるための回路を構成するものである。
【0132】
図14には、ピン501に加えて、ピン502、503も示されている。ピン502は、電源入力用端子群33に含まれる端子のうち、電源制御回路3からVccQが入力される端子である。ピン503は、電源入力用端子群33に含まれる端子のうち、電源制御回路3からVssQが入力される端子である。
【0133】
図14の例では、ピン502、503は、それぞれのピン501に対応して個別に設けられている。このような態様に換えて、
図15に示される変形例のように、互いに隣り合う一対のピン501により、その間に設けられたピン502又はピン503が共有されているような態様であってもよい。この変形例では、信号DQ<0>を出力するためのピン501と、信号DQ<1>を出力するためのピン501との間に、ピン503が配置されている。また、信号DQ<1>を出力するためのピン501と、信号DQ<2>を出力するためのピン501との間に、ピン502が配置されている。
【0134】
図14に戻って説明を続ける。ピン501には、配線571の一端が接続されている。同様に、ピン502には配線572の一端が接続されており、ピン503には配線573の一端が接続されている。配線572、573は、いずれも、入出力回路21に設けられた内部配線であって、電源制御回路3からの入力により所定の電位に維持されている。つまり、配線572の電位はVccQに維持されており、配線573の電位はVssQに維持されている。配線572、573は、本実施形態における「基準電位線」に該当する。
【0135】
ピン501に繋がる回路(入出力回路21)には、プルアップドライバ510と、プルダウンドライバ520と、駆動回路530、540と、タイマー回路550と、出力制御回路560と、が含まれる。尚、これらのうちの一部は、入出力回路21の外に設けられていてもよい。
【0136】
プルアップドライバ510は、ピン501の電位をVccQまで引き上げるための回路である。プルアップドライバ510は、配線572と配線571との間に設けられたpチャネルMOSトランジスタを含む。後述の駆動回路530によって、pチャネルMOSトランジスタの抵抗値が調整され、これによりピン501の電位が引き上げられる。
【0137】
プルアップドライバ510は複数設けられており、配線572と配線571との間において並列に並ぶよう配置されている。
図14においては、これらのうち3つのプルアップドライバ510(511、512、513)のみが図示されており、その他のプルアップドライバ510については図示が省略されている。
【0138】
ピン501の電位をVccQまで引き上げる際には、データの出力期間に亘って、所定数のプルアップドライバ510がオンとされる。ここでいう「所定数」は、配線572と配線571との間の電気抵抗が所定の規格値となるよう、例えば周囲の温度等に応じて予め設定される数である。
【0139】
尚、それぞれのプルアップドライバ510は、データの出力期間に亘ってオン又はオフの一定状態に維持されるのであるが、本実施形態では、1つのプルアップドライバ511については上記と異なる動作を行う。つまり、規格値に合わせた電気抵抗の調整は、プルアップドライバ511を除いた他のプルアップドライバ510によって行われる。プルアップドライバ511の動作やその目的については後に説明する。
【0140】
駆動回路530は、プルアップドライバ510に含まれるpチャネルMOSトランジスタの動作を制御するための回路である。駆動回路530は、pチャネルMOSトランジスタのゲートに制御信号を送信することで、プルアップドライバ510の電気抵抗を変化させる。駆動回路530は、それぞれのプルアップドライバ510に対応して複数設けられている。
図14の例では、プルアップドライバ511に対応して駆動回路531が設けられており、プルアップドライバ512に対応して駆動回路532が設けられており、プルアップドライバ513に対応して駆動回路533が設けられている。駆動回路530は、プルアップドライバ510と同じ数だけ設けられているのであるが、
図14においては3つの駆動回路530のみが図示されている。
【0141】
それぞれの駆動回路530の動作は、後述の出力制御回路560によって制御される。ただし、駆動回路531については、出力制御回路560によって直接制御されるのではなく、後述のタイマー回路550によって制御される。
【0142】
プルダウンドライバ520は、ピン501の電位をVssQまで引き下げるための回路である。プルダウンドライバ520は、配線573と配線571との間に設けられたnチャネルMOSトランジスタを含む。後述の駆動回路530によって、nチャネルMOSトランジスタの抵抗値が調整され、これによりピン501の電位が引き下げられる。
【0143】
プルダウンドライバ520は複数設けられており、配線573と配線571との間において並列に並ぶよう配置されている。
図14においては、これらのうち3つのプルダウンドライバ520(521、522、523)のみが図示されており、その他のプルダウンドライバ520については図示が省略されている。
【0144】
ピン501の電位をVssQまで引き下げる際には、データの出力期間に亘って、所定数のプルダウンドライバ520がオンとされる。ここでいう「所定数」は、配線573と配線571との間の電気抵抗が所定の規格値となるよう、例えば周囲の温度等に応じて予め設定される数である。
【0145】
尚、それぞれのプルダウンドライバ520は、データの出力期間に亘ってオン又はオフの一定状態に維持されるのであるが、本実施形態では、1つのプルダウンドライバ521については上記と異なる動作を行う。つまり、規格値に合わせた電気抵抗の調整は、プルダウンドライバ521を除いた他のプルダウンドライバ520によって行われる。プルダウンドライバ521の動作やその目的については後に説明する。
【0146】
駆動回路540は、プルダウンドライバ520に含まれるnチャネルMOSトランジスタの動作を制御するための回路である。駆動回路540は、nチャネルMOSトランジスタのゲートに制御信号を送信することで、プルダウンドライバ520の電気抵抗を変化させる。駆動回路540は、それぞれのプルダウンドライバ520に対応して複数設けられている。
図14の例では、プルダウンドライバ521に対応して駆動回路541が設けられており、プルダウンドライバ522に対応して駆動回路542が設けられており、プルダウンドライバ523に対応して駆動回路543が設けられている。駆動回路540は、プルダウンドライバ520と同じ数だけ設けられているのであるが、
図14においては3つの駆動回路540のみが図示されている。
【0147】
それぞれの駆動回路540の動作は、後述の出力制御回路560によって制御される。ただし、駆動回路541については、出力制御回路560によって直接制御されるのではなく、後述のタイマー回路550によって制御される。
【0148】
出力されるデータに応じてピン501の電位を引き上げる際には、所定数のプルアップドライバ510がオンとされ、プルダウンドライバ520はオフのままとされる。出力されるデータに応じてピン501の電位を引き下げる際には、所定数のプルダウンドライバ520がオンとされ、プルアップドライバ510はオフのままとされる。このように、プルアップドライバ510及びプルダウンドライバ520は排他的に動作する。
【0149】
タイマー回路550は、駆動回路531、541の動作を制御する回路である。タイマー回路550は、経過時間を計測しながら、予め設定された所定時間だけプルアップドライバ511がオンとなるように、駆動回路531を制御する。もしくは、タイマー回路550は、経過時間を計測しながら、予め設定された所定時間だけプルダウンドライバ521がオンとなるように、駆動回路541を制御する。タイマー回路550によってオンとされるのは、プルアップドライバ511又はプルダウンドライバ521のいずれか一方のみである。プルアップドライバ511等がオンとなるタイミングや時間は、タイマー回路550によって調整される。その目的については後に説明する。
【0150】
出力制御回路560は、ピン501の電位が読み出しデータに対応した電位となるように、プルアップドライバ510やプルダウンドライバ520等の動作を個別に制御するための回路である。尚、
図1においては、複数の駆動回路530、540から伸びる線が、ひとまとまりになって出力制御回路560に繋がっているように描かれているが、実際には、出力制御回路560と駆動回路530等のそれぞれとを繋ぐ線は個別に設けられている。本実施形態では、出力制御回路560はシーケンサ41の一部として設けられている。ただし、後に説明する出力制御回路560の機能は、シーケンサ41とは別に設けられた回路によって実現されてもよい。
【0151】
プルアップドライバ510、プルダウンドライバ520、及び駆動回路530、540は、読み出しデータとして出力すべき信号に対応してピン501の電位を変化させるための「出力回路」を構成している。出力制御回路560は、当該出力回路の動作を制御する「制御部」に該当する。
【0152】
上記の出力回路が単位時間あたりにおいてピン501の電位を変化させる能力、のことを、ここでは「駆動能力」と定義する。データの出力時においてオンとされるプルアップドライバ510やプルダウンドライバ520の数が多くなる程、出力回路の駆動能力は大きくなる。出力制御回路560は、出力回路の駆動能力が規格値を満足するように、温度等に応じてプルアップドライバ510の動作数を調整する。
【0153】
ところで、読み出しデータの出力時においては、複数あるピン501のそれぞれについて、電位の調整が同時に行われる。このため、ピン502やピン503においては、ピン501の総数に応じて無視できない程度の電流が流れることとなり、その結果として、ピン502の電位が、基準電位であるVccQから外れるように変動してしまう。同様に、ピン503の電位が、基準電位であるVssQから外れるように変動してしまう。このような電位変動が生じるのは、ピン502やピン503に繋がる電源制御回路3の内部等に、不図示のインダクタンス要素が存在するためである。ピン503等の電位変動として生じるノイズは、所謂「同時スイッチングノイズ」として広く知られている。
【0154】
図16の上段に示される線L3は、読み出しデータの出力に伴って上記のような電位変動が生じた場合における、ピン503の電位の時間変化の例である。ピン503の電位変動は、読み出しデータが出力されるタイミング(時刻t10、t20、又はその近傍)のそれぞれにおいて生じる。ピン502についても同様である。
【0155】
ピン502やピン503の電位が基準電位から外れると、配線572や配線573の電位が変動する影響により、プルアップドライバ510やプルダウンドライバ520の動作が変化する。また、駆動回路530、540の動作が変化することもある。更には、基準電位の変化に伴って、出力されるデータそのもの(つまり、ピン501とピン503との電位差)も変化してしまう。
【0156】
図16の下段に示される線L1、L2は、それぞれ、
図11の線L1、L2と同じものであり、上記のような電位変動が生じていない正常時の波形を表している。線L21は、上段のL3に示される電位変動の影響を受けた場合における、ピン501の電位の時間変化の例である。この例では、ピン503の電位変動の影響により、ピン501から出力される信号の波形が線L2から線L21へと変化している。線L21では、正常時の線L2に比べると、時刻t10以降における電位の上昇速度が低下している。換言すれば、出力回路の駆動能力が正常時よりも低下している。
【0157】
線L21の例において、ピン501の電位は、時刻t10よりも後の時刻t12において概ね一定となり、その後、時刻t13までの一定期間に亘って維持される。電位が一定となっている期間の長さは、
図11に示される正常時における期間(時刻t11から時刻t13までの期間)に比べて短くなっている。このため、メモリコントローラ1によるデータの読み出しが行われるタイミングによっては、データが正しく読み出されない可能性が有る。
【0158】
線L3に示されるようなピン503等の電位変動は、ピン501の数や、ピン501の電位の変化速度に応じて大きくなる。換言すれば、半導体記憶装置2から出力されるデータの転送速度が大きくなるほど、ピン503等の電位変動も大きくなってしまう。
【0159】
近年では、半導体記憶装置2には更なる高速化が求められており、今後は更に大きなデータ転送速度が求められるものと考えられる。しかしながら、データの転送速度が大きくなると、上記のように、ピン503等における同時スイッチングノイズの影響が無視できなくなるため、データ転送速度の要求に応じることが困難となる可能性が有る。
【0160】
そこで、本実施形態に係る半導体記憶装置2では、出力制御回路560が、出力回路の駆動能力を一時的に変化させる処理を行うことで、同時スイッチングノイズの影響を低減することとしている。当該処理のことを、以下では「能力調整処理」とも称する。
【0161】
能力調整処理について、
図17を参照しながら説明する。
図17に示される線L1、L2、L3、及び線L21の波形は、いずれも
図16に示されるものと同じである。
図17で新たに示される線L4は、タイマー回路550から駆動回路531に送信される制御信号の波形である。当該波形は、読み出しデータの出力が開始されるタイミング(時刻t10)の直前においてLからHへと変化し、時刻t10までの所定時間においてHに維持される。その後、時刻t10においてHからLへと変化する。
【0162】
尚、タイマー回路550からの制御信号をLからHへと切り替える処理は、出力制御回路560によって行われる。その後、タイマー回路550は、当該タイミングからの経過時間を計測し、上記の「所定時間」が経過したタイミングで、制御信号をHからLに戻す。「所定時間」は、予め設定された固定の時間であってもよく、出力制御回路560によって都度設定される可変の時間であってもよい。
【0163】
上記の制御信号がLのときには、駆動回路531によってプルアップドライバ511がオフとされる。一方、制御信号がHとなっている間は、この例では、駆動回路531によってプルアップドライバ511がオンとされる。これにより、配線571と配線572との間の電気抵抗が低下するため、配線571及びピン501における電位の上昇速度が一時的に上昇する。換言すれば、出力回路の駆動能力が一時的に大きくなる。
【0164】
このため、線L3に示されるようなピン503の電位変動が生じている状況であっても、制御信号がHとなってからしばらくの間は、ピン501の電位がVccQに向けて上昇する速度が大きくなる。その結果、ピン501の電位は、線L21ではなく線L2のように変化する。すなわち、電位変動が生じていない正常時と同じように変化する。
【0165】
以上のような能力調整処理は、入出力用端子群31に設けられた全てのピン501のそれぞれについて、並行して行われる。また、能力調整処理は、
図2のメモリシステムに設けられた複数の半導体記憶装置2のそれぞれにおいて行われる。
図17の線L4に示される波形、すなわち、タイマー回路550から駆動回路531に送信される制御信号の波形は、それぞれの半導体記憶装置2毎に異なるものとすることができ、1つの半導体記憶装置2において、それぞれのピン501毎に異なるものとすることができる。
【0166】
また、線L3のような電位変動の波形は、入出力用端子群31の全体から出力される読み出しデータ(例えば8bitのデータ)によっても変化する。このため、読み出しデータに応じて、それぞれのタイマー回路550から制御信号を送信するタイミングや、当該制御信号の波形等を適宜調整することとしてもよい。読み出しデータと、タイマー回路550から出力すべき制御信号との対応関係は、例えば、半導体記憶装置2が備える不図示のROM等に記憶させておけばよい。
【0167】
尚、同時スイッチングノイズの影響によって生じるピン503の電位変動の波形は、
図17の線L3に示されるような波形とは異なる場合もある。例えば、VssQから、一時的に負電位側に変位するような波形となる場合もあり得る。その場合、ピン501の電位に対する影響は
図17とは異なるものとなり、タイマー回路550から出力すべき制御信号の波形も異なるものとなる。
【0168】
また、ピン503の電位変動の波形が、線L3のように一時的に正電位側に変位するような波形であったとしても、その大きさ等によっては、駆動回路530に与える影響の度合いが変化し、ピン501の電位に対する影響が
図17の例とは異なるものとなる場合もあり得る。制御信号としてどのような波形の信号を出力するべきかは、予め実験等により計測しておくことが好ましい。
【0169】
図18に示されるように、同時スイッチングノイズの影響により、線L1の波形が線L11のように変化する場合も生じ得る。線L11では、正常時の線L1に比べると、時刻t10以降における電位の下降速度が低下している。換言すれば、出力回路の駆動能力が正常時よりも低下している。この場合は、タイマー回路550から駆動回路541に向けて、線L4で示される波形の制御信号を送信することとすればよい。これにより、線L11の波形を、線L1のような正常時の波形に近づけることができる。
【0170】
また、同時スイッチングノイズの影響の仕方によっては、出力回路の駆動能力を一時的に小さくした方がいい場合も生じ得る。この場合は、プルアップドライバ510又はプルダウンドライバ520のうち、データの出力に伴ってオンとすべきものを、データの出力開始後の一定期間においてのみオフとしておくような処理が、能力調整処理として行われればよい。
【0171】
以上に述べたように、制御部である出力制御回路560は、各読み出しデータに対応するそれぞれの信号がピン501から出力される際に、出力回路の駆動能力を一時的に変化させる能力調整処理を行う。これにより、同時スイッチングノイズの影響を低減し、読み出しデータの出力を高速に且つ安定して行うことが可能となっている。「一時的に」というのは、読み出しデータの出力期間(t10からt20までの期間)の全体に亘ってではない、という意味である。
【0172】
タイマー回路550からの制御信号がLからHとされるタイミングは、本実施形態のように時刻t10よりも少し前のタイミングであってもよく、時刻t10と同じタイミングであってもよく、時刻t10よりも少し後のタイミングであってもよい。いずれの場合であっても、タイマー回路550からの制御信号がLからHとされるタイミングは、メモリコントローラ1に向けて読み出しデータの信号が出力されるタイミング、を基準として設定されることが好ましい。つまり、読み出しデータの信号が出力されるタイミングから、(0を含む)所定時間だけオフセットしたタイミングとして設定されることが好ましい。「読み出しデータの信号が出力されるタイミング」とは、
図17の例では時刻t10のことであり、
図10の例では時刻t2のことである。
【0173】
尚、読み出しデータを出力するための処理が内部で開始されるタイミングは、
図10における時刻t2よりも早いタイミング、具体的には、メモリコントローラ1からリードイネーブル信号/REが入力されるタイミング(時刻t1)である。従って、制御信号をLからHとするための内部処理が開始されるタイミングは、メモリコントローラ1からリードイネーブル信号/REが入力されるタイミング(時刻t1)、を基準としたタイミングということになる。
【0174】
このように、本実施形態の出力制御回路560は、メモリコントローラ1に向けて読み出しデータの信号が出力されるタイミング(例えば時刻t10)、を基準とした所定タイミングから、予め設定された所定時間が経過するまでの間において能力調整処理を行う。また、「所定時間」を計測するためのタイマー回路550を設けることで、能力調整処理を適切かつ確実に実行することが可能となっている。
【0175】
同時スイッチングノイズの影響は、
図17の例のように、読み出しデータの出力時における前半の期間で生じることが多い。このため、制御信号がHからLに戻されるタイミング、すなわち、能力調整処理が終了するタイミングは、時刻t10において読み出しデータの信号が出力され始めてから、時刻t20において当該信号の出力が完了するまでの期間、の前半であることが好ましい。
【0176】
先に述べたように、ピン501の電位を変化させるための「出力回路」には、基準電位線である配線572とピン501との間の電気抵抗、を変化させるプルアップドライバ510と、基準電位線である配線573とピン501との間の電気抵抗、を変化させるプルダウンドライバ520と、これらを駆動する駆動回路530、540と、が含まれる。制御部である出力制御回路560は、駆動回路530、540の動作を制御することにより能力調整処理を行う。
【0177】
プルアップドライバ510やプルダウンドライバ520等は、配線572と配線571との間の電気抵抗を規格値に一致させるための回路として、半導体記憶装置2において予め設けられているものである。このため、本実施形態に係る半導体記憶装置2では、出力回路として設けられた既存の構成の一部を有効に利用しながら、能力調整処理を実行することが可能となっている。
【0178】
図14に示されるように、プルアップドライバ510及び駆動回路530は複数組設けられており、プルダウンドライバ520及び駆動回路540も複数組設けられている。出力制御回路560は、複数ある駆動回路530、540のうち、一部の駆動回路530、540の動作を制御することにより能力調整処理を行う。「一部の駆動回路530、540」とは、本実施形態では、能力調整処理を実行するために設けられた専用の駆動回路531、541である。つまり、能力調整処理が不要の場合には、駆動回路531、541はいずれも常にオフのままとされる。
【0179】
尚、同時スイッチングノイズの影響による出力波形の変化は、DQ<0>等を出力するためのピン501のみならず、データストローブ信号DQSを出力するためのピンにおいても生じることがある。従って、以上に述べた構成及び能力調整処理は、データストローブ信号DQSを出力するためのピンに適用することもできる。当該ピンも、外部のメモリコントローラ1に繰り返し出力信号(DQS)を出力する「出力ピン」に該当する。尚、当該ピンからの出力について能力調整処理を実行するための構成は、
図14に示されるピン501の周囲の構成と概ね同じであるから、その具体的な図示や説明については省略する。
【0180】
第2実施形態について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
【0181】
図19には、本実施形態におけるピン501及びその周辺の構成が示されている。図示されたピン501は、信号DQ<0>を出力するための端子である。信号DQ<1>等を出力するための他のピン501については図示が省略されているが、それらも
図19と同様の構成を有している。
【0182】
図14の第1実施形態においては、複数の駆動回路530のうちの一部(駆動回路531)についてはタイマー回路550によって直接制御され、その他については出力制御回路560によって直接制御される構成となっていた。同様に、複数の駆動回路540のうちの一部(駆動回路541)についてはタイマー回路550によって直接制御され、その他については出力制御回路560によって直接制御される構成となっていた。
【0183】
これに対し、
図19の本実施形態においては、複数の駆動回路530、540の全てが、タイマー回路550及び出力制御回路560のいずれによっても直接され得る構成となっている。これを実現するために、本実施形態では、複数の駆動回路530のそれぞれに対応して、マルチプレクサ580が設けられている。また、複数の駆動回路540のそれぞれに対応して、マルチプレクサ590が設けられている。
【0184】
マルチプレクサ580の数は、駆動回路530の数と同じである。
図19においては、複数のマルチプレクサ580のうち、駆動回路531に繋がるマルチプレクサ581と、駆動回路532に繋がるマルチプレクサ582と、駆動回路533に繋がるマルチプレクサ583と、が図示されており、その他のマルチプレクサ580については図示が省略されている。
【0185】
同様に、マルチプレクサ590の数は、駆動回路540の数と同じである。
図19においては、複数のマルチプレクサ590のうち、駆動回路541に繋がるマルチプレクサ591と、駆動回路542に繋がるマルチプレクサ592と、駆動回路543に繋がるマルチプレクサ593と、が図示されており、その他のマルチプレクサ590については図示が省略されている。
【0186】
それぞれのマルチプレクサ580には、タイマー回路550からの制御信号と、出力制御回路560からの制御信号と、の両方が入力される。これらのうちの一方の制御信号が、駆動回路530に入力され、これに繋がるプルアップドライバ510の動作制御に供される。いずれの制御信号が駆動回路530に入力されるのかは、例えば、シーケンサ41からマルチプレクサ580に入力される信号によって決定される。
【0187】
同様に、それぞれのマルチプレクサ590には、タイマー回路550からの制御信号と、出力制御回路560からの制御信号と、の両方が入力される。これらのうちの一方の制御信号が、駆動回路540に入力され、これに繋がるプルダウンドライバ520の動作制御に供される。いずれの制御信号が駆動回路540に入力されるのかは、例えば、シーケンサ41からマルチプレクサ590に入力される信号によって決定される。
【0188】
本実施形態でも第1実施形態と同様に、複数あるプルアップドライバ510やプルダウンドライバ520のうちの一部のみが、能力調整処理に用いられ、読み出しデータが出力される際において一時的にオンとされる。ただし、能力調整処理のためにどのプルアップドライバ510等が用いられるかは、本実施形態では固定されていない。
【0189】
先に述べたように、ピン501から読み出しデータが出力される期間(時刻t10から時刻t20までの期間)においては、配線572と配線571との間の電気抵抗が所定の規格値となるように、所定数のプルアップドライバ510等が(期間全体に亘って)オンとされる。「所定数」は、例えば周囲の温度等に応じて都度調整される。
【0190】
本実施形態では、上記の「所定数」から外れたプルアップドライバ510等が、能力調整処理に用いられる。このような構成においては、能力調整処理のための専用のプルアップドライバ510等や駆動回路530等を設けておく必要がないので、半導体記憶装置2が備えるプルアップドライバ510等の個数を低減することができる。このような態様でも、第1実施形態で説明したものと同様の効果を奏する。
【0191】
第3実施形態について説明する。以下では、上記の第2実施形態と異なる点について主に説明し、第2実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
【0192】
本実施形態における半導体記憶装置2の構成は、
図19に示される第2実施形態の構成と同じである。本実施形態では、出力制御回路560等によって実行される処理の内容において、第2実施形態と異なっている。
【0193】
図20に示される一連の処理は、能力調整処理を行うに先立ち、本実施形態の出力制御回路560によって実行されるものである。当該処理は、SetFeature機能を開始するための所定のコマンドが、メモリコントローラ1から半導体記憶装置2に入力された時点で開始される。当該コマンドは、能力調整処理の態様を、各種パラメータにより指定するためのコマンドである。
【0194】
メモリコントローラ1からは、上記のコマンドと共に、各種パラメータを示す制御信号が入力される。最初のステップS01では、当該制御信号を取得する処理が行われる。
【0195】
ステップS01に続くステップS02では、能力調整処理のパラメータの1つとして、能力調整処理の開始タイミングを設定する処理が行われる。「能力調整処理の開始タイミング」とは、例えば、タイマー回路550から駆動回路531に送信される制御信号を、
図17の線L4のようにLからHへと切り替えるタイミングのことである。能力調整処理の開始タイミングを示すパラメータは、例えば、データの出力開始時点(時刻t10)を基準としたオフセット時間として設定することができる。このようなパラメータは、例えば、シーケンサ41の中にあるフューチャーレジスタに予め格納されており、メモリコントローラ1からの制御信号によって、その中の1つが選択され設定される。
【0196】
ステップS02に続くステップS03では、能力調整処理のパラメータのもう1つとして、能力調整処理の終了タイミングを設定する処理が行われる。「能力調整処理の終了タイミング」とは、例えば、タイマー回路550から駆動回路531に送信される制御信号を、
図17の線L4のようにHからLへと戻すタイミングのことである。ステップS03で設定されるパラメータは、タイマー回路550からの制御信号をHに維持する時間の長さ、として設定されてもよい。当該パラメータも、シーケンサ41の中にあるフューチャーレジスタに予め格納されており、メモリコントローラ1からの制御信号によって、その中の1つが選択され設定される。
【0197】
ステップS03に続くステップS04では、能力調整処理のパラメータのもう1つとして、能力調整処理に用いられるプルアップドライバ510又はプルダウンドライバ520を設定する処理が行われる。タイマー回路550からの制御信号がHとなっている期間には、ここで設定されたプルアップドライバ510等が一時的にオンとされる。例えば、出力回路の駆動能力を大きく向上させる必要がある程、能力調整処理に用いられるプルアップドライバ510の数が多く設定される。当該パラメータも、シーケンサ41の中にあるフューチャーレジスタに予め格納されており、メモリコントローラ1からの制御信号によって、その中の1つが選択され設定される。
【0198】
能力調整処理のパラメータをどのように設定すべきかは、半導体記憶装置2が設けられている位置や、当該半導体記憶装置2からメモリコントローラ1までの配線長さ等に応じて異なるものとなる。そこで、本実施形態では、能力調整処理のパラメータを常に一定とするのではなく、メモリコントローラ1から入力される制御信号に基づいて設定することとしている。これにより、半導体記憶装置2の位置等に応じた適切なパラメータを用いて、能力調整処理を実行することができる。尚、制御信号に応じて設定されるパラメータは、上記とは異なる種類のパラメータであってもよい。
【0199】
第4実施形態について説明する。以下では、第2実施形態(
図19)と異なる点について主に説明し、第2実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
【0200】
図21には、本実施形態における半導体記憶装置2の構成が示されている。
図19と対比すると明らかなように、本実施形態では、配線573に検知回路575が設けられている点において、第2実施形態と異なっている。
【0201】
検知回路575は、基準電位線である配線573の電位を検知するための回路である。配線573の電位は、所定の制御周期が経過する毎に検知回路575により検知され、出力制御回路560へと送信される。従って、出力制御回路560は、配線573の電位の波形をサンプリングすることが可能となっている。
【0202】
図22に示される一連の処理は、能力調整処理を行うに先立ち、本実施形態の出力制御回路560によって実行されるものである。
図22に示される各ステップのうち、
図20と同一のステップについては、
図20と同じ符号(S02等)が付してある。
図22に示される一連の処理は、例えば、配線573の電位変動のピーク値が所定値を超えたタイミングで開始される。
【0203】
最初のステップS11では、配線573で生じた電位変動の波形を取得する処理、が行われる。ステップS11では、サンプリングされた配線573の電位の波形のうち、電位変動が生じた期間を含む部分の波形が取得され、そのピーク値等が解析される。
【0204】
ステップS11に続くステップS02では、
図20のステップS02と同様に、能力調整処理のパラメータの1つとして、能力調整処理の開始タイミングを設定する処理が行われる。ただし、ここでは、メモリコントローラ1からの制御信号に基づくのではなく、ステップS11で取得された電位変動の波形に基づいて、能力調整処理の開始タイミングが設定される。例えば、電位変動がピーク値となったタイミング、もしくは当該タイミングから所定時間だけオフセットしたタイミングが、能力調整処理の開始タイミングとして設定される。
【0205】
ステップS02に続くステップS03では、
図20のステップS03と同様に、能力調整処理のパラメータのもう1つとして、能力調整処理の終了タイミングを設定する処理が行われる。ここでも、メモリコントローラ1からの制御信号に基づくのではなく、ステップS11で取得された電位変動の波形に基づいて、能力調整処理の終了タイミングが設定される。例えば、電位変動のピーク値大きいほど、能力調整処理の実行時間(タイマー回路550からの制御信号がHとなっている時間)が長くなるように、能力調整処理の終了タイミングが設定される。
【0206】
ステップS03に続くステップS04では、
図20のステップS04と同様に、能力調整処理のパラメータのもう1つとして、能力調整処理に用いられるプルアップドライバ510又はプルダウンドライバ520を設定する処理が行われる。ここでも、メモリコントローラ1からの制御信号に基づくのではなく、ステップS11で取得された電位変動の波形に基づいて、能力調整処理に用いられるプルアップドライバ510等が設定される。例えば、電位変動のピーク値大きいほど、能力調整処理に用いられるプルアップドライバ510等の数が多くなるように設定される。
【0207】
このように、本実施形態の出力制御回路560は、能力調整処理のパラメータを、検知回路575により検知された配線573の電位変動に基づいて設定する。このような態様でも、能力調整処理のパラメータを適切に設定することができる。尚、配線572の波形を取得し、配線572の電位変動に基づいて能力調整処理のパラメータを設定することとしてもよい。
【0208】
第5実施形態について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
【0209】
先に述べたように、入出力用端子群31に設けられたそれぞれのピン501は、読み出しデータの出力信号を出力する「出力ピン」としての機能に加えて、メモリコントローラ1から書き込みデータの入力信号が入力される「入力ピン」としての機能をも有している。
図23に示されるように、ピン501に繋がる配線571には、出力回路61と入力回路62とが設けられている。尚、出力回路61は、第1実施形態(
図12)における出力回路21bに対応するものであり、入力回路62は、第1実施形態(
図12)における入力回路21aに対応するものである。
【0210】
出力回路61は、読み出しデータとして出力すべき出力信号に対応してピン501の電位を変化させるための回路であり、これまでに説明したプルアップドライバ510やプルダウンドライバ520、駆動回路530、540等を含むものである。入力回路62は、書き込みデータとしてピン501に入力される入力信号を取得するための回路である。入力回路62の回路構成としては公知の構成を採用し得るので、その具体的な図示や説明については省略する。
【0211】
配線571のうち、入力回路62とピン501との間の部分には、抵抗調整回路600が設けられている。抵抗調整回路600は、ODT(On Die Termination)回路とも称されるものであって、信号入力時における外部への反射波が抑制されるよう、半導体記憶装置2の終端抵抗を調整するための回路である。抵抗調整回路600は、ODTプルアップドライバ610と、ODTプルダウンドライバ620と、を有している。
【0212】
ODTプルアップドライバ610は、VccQが印加された基準電位線と、配線571との間に配置された回路である。ODTプルアップドライバ610は、pチャネルMOSトランジスタ611と、可変抵抗612と、を有している。可変抵抗612は、例えばpチャネルMOSトランジスタである。可変抵抗612の抵抗値は、例えばシーケンサ41によって調整される。本実施形態では、シーケンサ41の一部である出力制御回路560によって、ODTプルアップドライバ610の動作が制御される。
【0213】
ODTプルダウンドライバ620は、VssQが印加された基準電位線と、配線571との間に配置された回路である。ODTプルダウンドライバ620は、nチャネルMOSトランジスタ621と、可変抵抗622と、を有している。可変抵抗622は、例えばnチャネルMOSトランジスタである。可変抵抗622の抵抗値は、例えばシーケンサ41によって調整される。本実施形態では、シーケンサ41の一部である出力制御回路560によって、ODTプルダウンドライバ620の動作が制御される。
【0214】
読み出し動作時においては、例えばシーケンサ41により、pチャネルMOSトランジスタ611及びnチャネルMOSトランジスタ621のいずれもがオフとされる。書き込み動作時においては、pチャネルMOSトランジスタ611及びnチャネルMOSトランジスタ621のいずれもがオンとされ、可変抵抗612、622の抵抗値が適宜調整される。
【0215】
ODTプルアップドライバ610は、VccQが印加された基準電位線と、配線571との間に配置された回路であるから、出力回路61のプルアップドライバ510と同様に動作し得るものである。従って、ODTプルアップドライバ610は、
図24に示されるように、配線571と配線572との間において、複数のプルアップドライバ510と並列に並んでいるもの、とみなすことができる。
【0216】
同様に、ODTプルダウンドライバ620は、VssQが印加された基準電位線と、配線571との間に配置された回路であるから、出力回路61のプルダウンドライバ520と同様に動作し得るものである。従って、ODTプルダウンドライバ620は、
図24に示されるように、配線571と配線573との間において、複数のプルダウンドライバ520と並列に並んでいるもの、とみなすことができる。
【0217】
そこで、本実施形態では、読み出し動作時において、ODTプルアップドライバ610やODTプルダウンドライバ620を一時的にオンとすることで、第1実施形態と同様の能力調整処理を実行することとしている。つまり、本実施形態では、読み出し動作時において通常はオフとされていたODTプルアップドライバ610等を、第1実施形態におけるプルアップドライバ511等の代わりに動作させることで、能力調整処理を実行するように構成されている。
【0218】
ODTプルアップドライバ610の動作は、
図24の駆動回路651によって制御される。本実施形態では、タイマー回路550から駆動回路651に入力される制御信号がHになると、駆動回路651は、pチャネルMOSトランジスタ611をオンとし、可変抵抗612の抵抗値を所定の値となるように調整する。上記制御信号がLになると、駆動回路651は、pチャネルMOSトランジスタ611及び可変抵抗612の両方をオフとする。
【0219】
同様に、ODTプルダウンドライバ620の動作は、
図24の駆動回路652によって制御される。本実施形態では、タイマー回路550から駆動回路652に入力される制御信号がHになると、駆動回路652は、nチャネルMOSトランジスタ621をオンとし、可変抵抗622の抵抗値を所定の値となるように調整する。上記制御信号がLになると、駆動回路652は、nチャネルMOSトランジスタ621及び可変抵抗622の両方をオフとする。
【0220】
以上のように、本実施形態のピン501には、書き込みデータが入力される際において終端抵抗を調整するための抵抗調整回路600、が接続されている。出力制御回路560は、抵抗調整回路600の動作を制御し、終端抵抗を変化させることにより能力調整処理を行う。このような態様であっても、第1実施形態で説明したものと同様の効果を奏する。
【0221】
第6実施形態について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
【0222】
図25には、本実施形態に係る半導体記憶装置2のうち、ピン501及びその近傍の構成が模式的に示されている。同図に示される配線574は、ピン501とメモリコントローラ1との間を繋いでいる配線である。
【0223】
本実施形態に係る半導体記憶装置2には、コンデンサ660と、アンプ回路661と、が設けられている。コンデンサ660の一端は、配線574を介してピン501に繋がっており、他端はアンプ回路661に繋がっている。
【0224】
本実施形態のタイマー回路550は、
図25に示されるようにアンプ回路661に繋がっており、第1実施形態(
図14)のように駆動回路530には繋がっていない。アンプ回路661は、タイマー回路550からの制御信号に基づいて、コンデンサ660の一端の電位を変化させる回路である。タイマー回路550の制御信号がHとなっている期間において、アンプ回路661は、コンデンサ660の一端の電位を上昇させる。このとき、所謂「容量カップリング」により、コンデンサ660の他端の電位も上昇する。すなわち、ピン501の電位も一時的に上昇する。このようなアンプ回路661の動作は、出力制御回路560がタイマー回路550の動作を制御することにより実現される。
【0225】
このような構成においては、
図17の線L4のように制御信号がHに切り替わると、ピン501の電位の上昇速度が一時的に増加する。つまり、出力回路の駆動能力が一時的に大きくなる。このように、本実施形態では、出力制御回路560が、アンプ回路661等を介してコンデンサ660の電位(ピン501とは反対側の電位)を変化させることで、第1実施形態と同様の能力調整処理を実現する。このような態様でも、第1実施形態で説明したものと同様の効果を奏する。
【0226】
尚、コンデンサ660の他端が接続されている位置は、本実施形態のように配線574の一部であってもよいが、配線571の一部であってもよい。
【0227】
第7実施形態について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
【0228】
図26には、本実施形態に係る半導体記憶装置2のうち、ピン501及びその近傍の構成が模式的に示されている。
【0229】
本実施形態に係る半導体記憶装置2には、コンデンサ670と、アンプ回路671と、が設けられている。コンデンサ670の一端は、配線572を介してピン502に繋がっており、他端はアンプ回路671に繋がっている。
【0230】
本実施形態のタイマー回路550は、
図26に示されるようにアンプ回路671に繋がっており、第1実施形態(
図14)のように駆動回路530には繋がっていない。アンプ回路671は、タイマー回路550からの制御信号に基づいて、コンデンサ670の一端の電位を変化させる回路である。タイマー回路550の制御信号がHとなっている期間において、アンプ回路671は、コンデンサ670の一端の電位を上昇させる。このとき、所謂「容量カップリング」により、コンデンサ660の他端の電位も上昇する。すなわち、ピン502の電位(つまりVccQ)も一時的に上昇する。このようなアンプ回路671の動作は、出力制御回路560がタイマー回路550の動作を制御することにより実現される。
【0231】
このような構成においては、
図17の線L4のように制御信号がHに切り替わると、基準電位線である配線572の電位が一時的に大きくなる。このとき、オンとなっている一部のプルアップドライバ510を介してピン501に流入する電流が大きくなることにより、出力回路の駆動能力が一時的に大きくなる。
【0232】
このように、本実施形態では、出力制御回路560が、アンプ回路661等を介して配線572の電位(基準電位線の電位)を変化させることで、第1実施形態と同様の能力調整処理が実現される。このような態様でも、第1実施形態で説明したものと同様の効果を奏する。
【0233】
尚、配線572の電位は、本実施形態のように一時的に増加させてもよいが、一時的に減少させてもよい。また、配線573の電位を、上記と同様にアンプ回路671やコンデンサ670を用いて一時的に変化させるような態様であってもよい。
【0234】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0235】
1:メモリコントローラ、2:半導体記憶装置、501:ピン、510:プルアップドライバ、520:プルダウンドライバ、530:駆動回路、540:駆動回路、560:出力制御回路。