(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034610
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】画像比較方法、画像比較装置、および画像比較プログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20240306BHJP
【FI】
G06T7/00 610Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138973
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100104695
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 明宏
(74)【代理人】
【識別番号】100148459
【弁理士】
【氏名又は名称】河本 悟
(72)【発明者】
【氏名】今村 淳志
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096AA02
5L096DA01
5L096DA04
5L096EA02
5L096FA06
5L096GA08
5L096GA24
5L096GA51
(57)【要約】
【課題】量子化誤差等に起因する誤検出の発生を抑制しつつ短時間で2つの画像の差異を検出することのできる画像比較方法を提供する。
【解決手段】元画像と校正画像との間の差分画像を生成し(S10)、その後、エッジ領域の候補となる部分を表す候補画像を生成する(S40)。そして、元画像と校正画像と候補画像とに基づき、エッジ領域を表すエッジ画像を生成する(S50)。その際、候補画像を構成する画素を処理対象画素とし、元画像における9個の比較対象画素の少なくとも1つの画素値と校正画像における処理対象画素の画素値との差が第1閾値以下であって、かつ、校正画像における9個の比較対象画素の少なくとも1つの画素値と元画像における処理対象画素の画素値との差が第1閾値以下であれば、処理対象画素はエッジ領域を構成する画素であると判定する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多値画像である第1画像と多値画像である第2画像とを比較する画像比較方法であって、
前記第1画像と前記第2画像との間で差異がある部分を表す2値画像である差分画像であって、それぞれが1または複数の画素で構成される1以上の部分差分画像を含む差分画像を前記第1画像と前記第2画像とに基づいて生成する差分画像生成ステップと、
前記1以上の部分差分画像のそれぞれに収縮処理を施すことによって1以上の部分収縮画像を含む収縮画像を生成する収縮ステップと、
前記差分画像から前記収縮画像を除去することによって、それぞれが1または複数の画素で構成される1以上の部分アウトライン画像を含むアウトライン画像を生成するアウトライン画像生成ステップと、
前記1以上の部分アウトライン画像のうち前記部分収縮画像に隣接する部分アウトライン画像を除去することによって、エッジ領域の候補となる部分を表す候補画像であって、それぞれが1または複数の画素で構成される1以上の部分候補画像を含む候補画像を生成する候補画像生成ステップと、
前記第1画像と前記第2画像と前記候補画像とに基づいて、エッジ領域を表すエッジ画像を生成するエッジ画像生成ステップと、
前記差分画像から前記エッジ画像を除去することによって比較結果画像を生成する比較結果画像生成ステップと
を含み、
前記エッジ画像生成ステップでは、前記候補画像に含まれる前記1以上の部分候補画像を構成する1以上の画素が順次に処理対象画素とされ、前記処理対象画素と前記処理対象画素の周囲の8個の画素とを9個の比較対象画素として、前記第1画像における前記9個の比較対象画素の少なくとも1つの画素値と前記第2画像における前記処理対象画素の画素値との差が第1閾値以下であって、かつ、前記第2画像における前記9個の比較対象画素の少なくとも1つの画素値と前記第1画像における前記処理対象画素の画素値との差が前記第1閾値以下であるという第1条件を満たせば、前記処理対象画素は前記エッジ領域を構成する画素であると判定されることを特徴とする、画像比較方法。
【請求項2】
前記エッジ画像生成ステップでは、前記第1条件に加えて、前記第2画像における前記処理対象画素の画素値が前記第1画像における前記9個の比較対象画素の画素値の最小値から最大値までの範囲内にあり、かつ、前記第1画像における前記処理対象画素の画素値が前記第2画像における前記9個の比較対象画素の画素値の最小値から最大値までの範囲内にあるという第2条件を満たせば、前記処理対象画素は前記エッジ領域を構成する画素であると判定されることを特徴とする、請求項1に記載の画像比較方法。
【請求項3】
前記差分画像生成ステップは、
前記第1画像と前記第2画像との間で画素値が異なる画素を抽出する差異画素抽出ステップと、
前記差異画素抽出ステップで抽出された画素のうち前記第1画像における画素値と前記第2画像における画素値との差が第2閾値以上である画素については前記第1画像と前記第2画像との間で差異があるとみなし、かつ、前記差異画素抽出ステップで抽出された画素のうち前記第1画像における画素値と前記第2画像における画素値との差が前記第2閾値未満である画素および前記差異画素抽出ステップで抽出されなかった画素については前記第1画像と前記第2画像との間で差異がないとみなすことによって、前記差分画像を生成する2値化ステップと
を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の画像比較方法。
【請求項4】
前記差分画像生成ステップは、更に、前記2値化ステップで生成された差分画像に含まれる1以上の部分差分画像のうち予め定められた数以下の画素で構成される部分差分画像を除去するフィルタステップを含むことを特徴とする、請求項3に記載の画像比較方法。
【請求項5】
前記2値化ステップよりも前にユーザーが前記第2閾値を設定する第2閾値設定ステップを含むことを特徴とする、請求項3に記載の画像比較方法。
【請求項6】
前記アウトライン画像生成ステップでは、前記差分画像と前記収縮画像とに基づく排他的論理和演算が行われることによって、前記アウトライン画像が生成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の画像比較方法。
【請求項7】
前記比較結果画像生成ステップは、
前記エッジ画像に基づく論理反転演算を行うことによってエッジ反転画像を生成する論理反転演算ステップと、
前記差分画像と前記エッジ反転画像とに基づく論理積演算を行うことによって前記比較結果画像を生成する論理積演算ステップと
を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の画像比較方法。
【請求項8】
前記差分画像生成ステップでは、前記差分画像として、前記第2画像における画素値よりも前記第1画像における画素値の方が高い画素に基づく第1差分画像と、前記第1画像における画素値よりも前記第2画像における画素値の方が高い画素に基づく第2差分画像とが生成され、
前記収縮ステップ、前記アウトライン画像生成ステップ、前記候補画像生成ステップ、前記エッジ画像生成ステップ、および前記比較結果画像生成ステップでは、前記第1差分画像および前記第2差分画像のそれぞれに基づく処理が行われ、
前記比較結果画像生成ステップでは、前記比較結果画像として、前記第1差分画像に基づく処理で得られる第1比較結果画像と、前記第2差分画像に基づく処理で得られる第2比較結果画像とが生成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の画像比較方法。
【請求項9】
前記エッジ画像生成ステップよりも前にユーザーが前記第1閾値を設定する第1閾値設定ステップを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の画像比較方法。
【請求項10】
前記第1画像および前記第2画像は、複数のインク色のそれぞれの画像からなり、
前記差分画像生成ステップ、前記収縮ステップ、前記アウトライン画像生成ステップ、前記候補画像生成ステップ、前記エッジ画像生成ステップ、および前記比較結果画像生成ステップの処理は、インク色毎に行われることを特徴とする、請求項1または2に記載の画像比較方法。
【請求項11】
前記比較結果画像生成ステップで生成される比較結果画像には、それぞれが1または複数の画素で構成される複数の部分差分結果画像が含まれ、
前記比較結果画像生成ステップの後に、前記複数の部分差分結果画像のそれぞれに膨張処理を施すことによって互いに近接する2以上の部分差分結果画像を結合する近接画像結合ステップを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の画像比較方法。
【請求項12】
前記比較結果画像をコンピュータの表示部に表示する比較結果表示ステップを含み、
前記比較結果表示ステップでは、前記第1画像と前記第2画像との間で差異があると判断された部分が色付け表示されることを特徴とする、請求項1または2に記載の画像比較方法。
【請求項13】
前記差分画像生成ステップでは、前記差分画像として、前記第2画像における画素値よりも前記第1画像における画素値の方が高い画素に基づく第1差分画像と、前記第1画像における画素値よりも前記第2画像における画素値の方が高い画素に基づく第2差分画像とが生成され、
前記比較結果表示ステップでは、前記第1差分画像に対応する部分と前記第2差分画像に対応する部分とが異なる色で色付け表示されることを特徴とする、請求項12に記載の画像比較方法。
【請求項14】
多値画像である第1画像と多値画像である第2画像とを比較する画像比較装置であって、
前記第1画像と前記第2画像との間で差異がある部分を表す2値画像である差分画像であって、それぞれが1または複数の画素で構成される1以上の部分差分画像を含む差分画像を前記第1画像と前記第2画像とに基づいて生成する差分画像生成部と、
前記1以上の部分差分画像のそれぞれに収縮処理を施すことによって1以上の部分収縮画像を含む収縮画像を生成する収縮部と、
前記差分画像から前記収縮画像を除去することによって、それぞれが1または複数の画素で構成される1以上の部分アウトライン画像を含むアウトライン画像を生成するアウトライン画像生成部と、
前記1以上の部分アウトライン画像のうち前記部分収縮画像に隣接する部分アウトライン画像を除去することによって、エッジ領域の候補となる部分を表す候補画像であって、それぞれが1または複数の画素で構成される1以上の部分候補画像を含む候補画像を生成する候補画像生成部と、
前記第1画像と前記第2画像と前記候補画像とに基づいて、エッジ領域を表すエッジ画像を生成するエッジ画像生成部と、
前記差分画像から前記エッジ画像を除去することによって比較結果画像を生成する比較結果画像生成部と
を含み、
前記エッジ画像生成部は、前記候補画像に含まれる前記1以上の部分候補画像を構成する1以上の画素を順次に処理対象画素とし、前記処理対象画素と前記処理対象画素の周囲の8個の画素とを9個の比較対象画素として、前記第1画像における前記9個の比較対象画素の少なくとも1つの画素値と前記第2画像における前記処理対象画素の画素値との差が第1閾値以下であって、かつ、前記第2画像における前記9個の比較対象画素の少なくとも1つの画素値と前記第1画像における前記処理対象画素の画素値との差が前記第1閾値以下であるという第1条件を満たせば、前記処理対象画素は前記エッジ領域を構成する画素であると判定することを特徴とする、画像比較装置。
【請求項15】
多値画像である第1画像と多値画像である第2画像とを比較する画像比較プログラムであって、
コンピュータに、
前記第1画像と前記第2画像との間で差異がある部分を表す2値画像である差分画像であって、それぞれが1または複数の画素で構成される1以上の部分差分画像を含む差分画像を前記第1画像と前記第2画像とに基づいて生成する差分画像生成ステップと、
前記1以上の部分差分画像のそれぞれに収縮処理を施すことによって1以上の部分収縮画像を含む収縮画像を生成する収縮ステップと、
前記差分画像から前記収縮画像を除去することによって、それぞれが1または複数の画素で構成される1以上の部分アウトライン画像を含むアウトライン画像を生成するアウトライン画像生成ステップと、
前記1以上の部分アウトライン画像のうち前記部分収縮画像に隣接する部分アウトライン画像を除去することによって、エッジ領域の候補となる部分を表す候補画像であって、それぞれが1または複数の画素で構成される1以上の部分候補画像を含む候補画像を生成する候補画像生成ステップと、
前記第1画像と前記第2画像と前記候補画像とに基づいて、エッジ領域を表すエッジ画像を生成するエッジ画像生成ステップと、
前記差分画像から前記エッジ画像を除去することによって比較結果画像を生成する比較結果画像生成ステップと
を実行させ、
前記エッジ画像生成ステップでは、前記候補画像に含まれる前記1以上の部分候補画像を構成する1以上の画素が順次に処理対象画素とされ、前記処理対象画素と前記処理対象画素の周囲の8個の画素とを9個の比較対象画素として、前記第1画像における前記9個の比較対象画素の少なくとも1つの画素値と前記第2画像における前記処理対象画素の画素値との差が第1閾値以下であって、かつ、前記第2画像における前記9個の比較対象画素の少なくとも1つの画素値と前記第1画像における前記処理対象画素の画素値との差が前記第1閾値以下であるという第1条件を満たせば、前記処理対象画素は前記エッジ領域を構成する画素であると判定されることを特徴とする、画像比較プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷用に作成された2つの画像(例えば、校正前の画像と校正後の画像)を比較する画像比較方法、画像比較装置、および画像比較プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷業務においては、印刷用に作成された2つの画像の比較が行われることがよくある。例えば、実際に印刷装置による印刷が行われる前に校正によって印刷対象の画像が修正されることがある。このような場合、一般に修正を指示する者(修正指示者)と印刷対象の画像に対して実際に修正を施す者(修正作業者)とは異なっており、修正指示者にとっては、修正作業者が指示どおりに正しく画像を修正したのかを確認するために校正前の画像と校正後の画像とを比較する検版の作業が必要となる。なお、本明細書においては、「検版」という用語を、有版印刷における刷版の検査の意味ではなく、無版印刷におけるいわゆる「デジタル検版」の意味で用いる。
【0003】
一般に、検版用のソフトウェアには、校正前の画像と校正後の画像とで差異がある箇所をコンピュータの画面上に表示する機能が設けられている。修正指示者は、このような検版用のソフトウェアを用いることにより、修正作業者が指示どおりに正しく画像を修正しているかを容易に確認することができる。
【0004】
本発明に関連して、特開2019-211319号公報には、微小な点の欠損や線が短くなった欠損を検出することのできる画像欠損検出装置の発明が開示されている。その画像欠損検出装置には、基準画像に含まれる検査対象の基準絵柄等の位置ずれに対する絵柄ずれ許容範囲を設定して当該絵柄ずれ許容範囲が設定された基準画像と検査対象を含む検査画像とを比較する第1比較部と、検査画像に含まれる検査対象の絵柄等の位置ずれに対する絵柄ずれ許容範囲を設定して当該絵柄ずれ許容範囲が設定された検査画像と検査対象を含む基準画像とを比較する第2比較部と、不良の判定を行う判定部とが設けられる。判定部は、第1比較部および第2比較部のいずれかに関して検査対象の画像に欠損がある旨の比較結果が含まれている場合に、画像欠損がある旨の判定を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
検版の作業が行われる際には、校正によって実際に修正が施された部分のみが差異部分として検出される(差異部分としてコンピュータの画面上に表示される)ことが好ましい。これに関し、たとえ微小な修正であっても、修正指示者の指示に従って実際に修正されたものであれば差異部分として検出されることが好ましい。例えば、最小のライン幅の線が追加された場合には、その追加された線が差異部分として検出されるべきである。
【0007】
ところで、校正前の画像と校正後の画像との比較はRIP処理で得られたラスターデータを用いて行われるが、PDFファイル等の入稿データ(RIP処理前のデータ)に含まれている画像データの解像度とRIP処理で得られるラスターデータの解像度(換言すれば、RIP処理を実行する際に指定する解像度)とが異なることがある。それ故、RIP処理の際に量子化誤差やジャギーが発生することがある。このような量子化誤差等に起因して、修正作業者による修正が行われていない画像部分に関して、画像のエッジ部分が差異部分として検出されることがある。例えば、校正前の画像および校正後の画像の双方に
図44で符号91を付した部分に示すような画像が含まれている場合に、
図45に示すように、
図44で符号91を付した部分に示す画像のエッジ部分が差異部分として検出される。このような現象は、例えば、修正作業者がある画像を移動させた後に当該画像を元の位置に移動させた場合や修正作業者が印刷対象の画像全体の位置をずらした場合に起こり得る。また、画像編集に用いられるソフトウェアに変更があった場合やバージョンアップ等によってRIP処理のコア部分に変更があった場合にも上記のような現象が起こり得る。以上のように、従来の検版用のソフトウェアにおいては、差異部分として検出されることが好ましくない部分が差異部分として検出されること(すなわち、誤検出が発生すること)がある。
【0008】
特開2019-211319号公報に開示された画像欠損検出装置によれば、2つの画像間で僅かな位置ずれが生じている場合、そのような位置ずれが生じている部分は差異部分として検出されない。しかしながら、基準画像および検査画像のそれぞれに対して膨張画像および収縮画像が作成された上で、基準画像に対応する膨張画像と検査画像との比較、基準画像に対応する収縮画像と検査画像との比較、検査画像に対応する膨張画像と基準画像との比較、および検査画像に対応する収縮画像と基準画像との比較が行われる(すなわち、4つの組み合わせの比較が行われる)ので、処理時間が長い。また、画像を比較する際には各画素につき9画素との比較(符号の正負を考慮すると18画素分の比較)のための演算が行われることからも、処理時間が長い。
【0009】
以上のような状況に鑑み、本発明は、量子化誤差等に起因する誤検出の発生を抑制しつつ短時間で2つの画像の差異を検出することのできる画像比較方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、多値画像である第1画像と多値画像である第2画像とを比較する画像比較方法であって、
前記第1画像と前記第2画像との間で差異がある部分を表す2値画像である差分画像であって、それぞれが1または複数の画素で構成される1以上の部分差分画像を含む差分画像を前記第1画像と前記第2画像とに基づいて生成する差分画像生成ステップと、
前記1以上の部分差分画像のそれぞれに収縮処理を施すことによって1以上の部分収縮画像を含む収縮画像を生成する収縮ステップと、
前記差分画像から前記収縮画像を除去することによって、それぞれが1または複数の画素で構成される1以上の部分アウトライン画像を含むアウトライン画像を生成するアウトライン画像生成ステップと、
前記1以上の部分アウトライン画像のうち前記部分収縮画像に隣接する部分アウトライン画像を除去することによって、エッジ領域の候補となる部分を表す候補画像であって、それぞれが1または複数の画素で構成される1以上の部分候補画像を含む候補画像を生成する候補画像生成ステップと、
前記第1画像と前記第2画像と前記候補画像とに基づいて、エッジ領域を表すエッジ画像を生成するエッジ画像生成ステップと、
前記差分画像から前記エッジ画像を除去することによって比較結果画像を生成する比較結果画像生成ステップと
を含み、
前記エッジ画像生成ステップでは、前記候補画像に含まれる前記1以上の部分候補画像を構成する1以上の画素が順次に処理対象画素とされ、前記処理対象画素と前記処理対象画素の周囲の8個の画素とを9個の比較対象画素として、前記第1画像における前記9個の比較対象画素の少なくとも1つの画素値と前記第2画像における前記処理対象画素の画素値との差が第1閾値以下であって、かつ、前記第2画像における前記9個の比較対象画素の少なくとも1つの画素値と前記第1画像における前記処理対象画素の画素値との差が前記第1閾値以下であるという第1条件を満たせば、前記処理対象画素は前記エッジ領域を構成する画素であると判定されることを特徴とする。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、
前記エッジ画像生成ステップでは、前記第1条件に加えて、前記第2画像における前記処理対象画素の画素値が前記第1画像における前記9個の比較対象画素の画素値の最小値から最大値までの範囲内にあり、かつ、前記第1画像における前記処理対象画素の画素値が前記第2画像における前記9個の比較対象画素の画素値の最小値から最大値までの範囲内にあるという第2条件を満たせば、前記処理対象画素は前記エッジ領域を構成する画素であると判定されることを特徴とする。
【0012】
第3の発明は、第1または第2の発明において、
前記差分画像生成ステップは、
前記第1画像と前記第2画像との間で画素値が異なる画素を抽出する差異画素抽出ステップと、
前記差異画素抽出ステップで抽出された画素のうち前記第1画像における画素値と前記第2画像における画素値との差が第2閾値以上である画素については前記第1画像と前記第2画像との間で差異があるとみなし、かつ、前記差異画素抽出ステップで抽出された画素のうち前記第1画像における画素値と前記第2画像における画素値との差が前記第2閾値未満である画素および前記差異画素抽出ステップで抽出されなかった画素については前記第1画像と前記第2画像との間で差異がないとみなすことによって、前記差分画像を生成する2値化ステップと
を含むことを特徴とする。
【0013】
第4の発明は、第3の発明において、
前記差分画像生成ステップは、更に、前記2値化ステップで生成された差分画像に含まれる1以上の部分差分画像のうち予め定められた数以下の画素で構成される部分差分画像を除去するフィルタステップを含むことを特徴とする。
【0014】
第5の発明は、第3の発明において、
前記画像比較方法は、前記2値化ステップよりも前にユーザーが前記第2閾値を設定する第2閾値設定ステップを含むことを特徴とする。
【0015】
第6の発明は、第1または第2の発明において、
前記アウトライン画像生成ステップでは、前記差分画像と前記収縮画像とに基づく排他的論理和演算が行われることによって、前記アウトライン画像が生成されることを特徴とする。
【0016】
第7の発明は、第1または第2の発明において、
前記比較結果画像生成ステップは、
前記エッジ画像に基づく論理反転演算を行うことによってエッジ反転画像を生成する論理反転演算ステップと、
前記差分画像と前記エッジ反転画像とに基づく論理積演算を行うことによって前記比較結果画像を生成する論理積演算ステップと
を含むことを特徴とする。
【0017】
第8の発明は、第1または第2の発明において、
前記差分画像生成ステップでは、前記差分画像として、前記第2画像における画素値よりも前記第1画像における画素値の方が高い画素に基づく第1差分画像と、前記第1画像における画素値よりも前記第2画像における画素値の方が高い画素に基づく第2差分画像とが生成され、
前記収縮ステップ、前記アウトライン画像生成ステップ、前記候補画像生成ステップ、前記エッジ画像生成ステップ、および前記比較結果画像生成ステップでは、前記第1差分画像および前記第2差分画像のそれぞれに基づく処理が行われ、
前記比較結果画像生成ステップでは、前記比較結果画像として、前記第1差分画像に基づく処理で得られる第1比較結果画像と、前記第2差分画像に基づく処理で得られる第2比較結果画像とが生成されることを特徴とする。
【0018】
第9の発明は、第1または第2の発明において、
前記画像比較方法は、前記エッジ画像生成ステップよりも前にユーザーが前記第1閾値を設定する第1閾値設定ステップを含むことを特徴とする。
【0019】
第10の発明は、第1または第2の発明において、
前記第1画像および前記第2画像は、複数のインク色のそれぞれの画像からなり、
前記差分画像生成ステップ、前記収縮ステップ、前記アウトライン画像生成ステップ、前記候補画像生成ステップ、前記エッジ画像生成ステップ、および前記比較結果画像生成ステップの処理は、インク色毎に行われることを特徴とする。
【0020】
第11の発明は、第1または第2の発明において、
前記比較結果画像生成ステップで生成される比較結果画像には、それぞれが1または複数の画素で構成される複数の部分差分結果画像が含まれ、
前記比較結果画像生成ステップの後に、前記複数の部分差分結果画像のそれぞれに膨張処理を施すことによって互いに近接する2以上の部分差分結果画像を結合する近接画像結合ステップを含むことを特徴とする。
【0021】
第12の発明は、第1または第2の発明において、
前記画像比較方法は、前記比較結果画像をコンピュータの表示部に表示する比較結果表示ステップを含み、
前記比較結果表示ステップでは、前記第1画像と前記第2画像との間で差異があると判断された部分が色付け表示されることを特徴とする。
【0022】
第13の発明は、第12の発明において、
前記差分画像生成ステップでは、前記差分画像として、前記第2画像における画素値よりも前記第1画像における画素値の方が高い画素に基づく第1差分画像と、前記第1画像における画素値よりも前記第2画像における画素値の方が高い画素に基づく第2差分画像とが生成され、
前記比較結果表示ステップでは、前記第1差分画像に対応する部分と前記第2差分画像に対応する部分とが異なる色で色付け表示されることを特徴とする。
【0023】
第14の発明は、多値画像である第1画像と多値画像である第2画像とを比較する画像比較装置であって、
前記第1画像と前記第2画像との間で差異がある部分を表す2値画像である差分画像であって、それぞれが1または複数の画素で構成される1以上の部分差分画像を含む差分画像を前記第1画像と前記第2画像とに基づいて生成する差分画像生成部と、
前記1以上の部分差分画像のそれぞれに収縮処理を施すことによって1以上の部分収縮画像を含む収縮画像を生成する収縮部と、
前記差分画像から前記収縮画像を除去することによって、それぞれが1または複数の画素で構成される1以上の部分アウトライン画像を含むアウトライン画像を生成するアウトライン画像生成部と、
前記1以上の部分アウトライン画像のうち前記部分収縮画像に隣接する部分アウトライン画像を除去することによって、エッジ領域の候補となる部分を表す候補画像であって、それぞれが1または複数の画素で構成される1以上の部分候補画像を含む候補画像を生成する候補画像生成部と、
前記第1画像と前記第2画像と前記候補画像とに基づいて、エッジ領域を表すエッジ画像を生成するエッジ画像生成部と、
前記差分画像から前記エッジ画像を除去することによって比較結果画像を生成する比較結果画像生成部と
を含み、
前記エッジ画像生成部は、前記候補画像に含まれる前記1以上の部分候補画像を構成する1以上の画素を順次に処理対象画素とし、前記処理対象画素と前記処理対象画素の周囲の8個の画素とを9個の比較対象画素として、前記第1画像における前記9個の比較対象画素の少なくとも1つの画素値と前記第2画像における前記処理対象画素の画素値との差が第1閾値以下であって、かつ、前記第2画像における前記9個の比較対象画素の少なくとも1つの画素値と前記第1画像における前記処理対象画素の画素値との差が前記第1閾値以下であるという第1条件を満たせば、前記処理対象画素は前記エッジ領域を構成する画素であると判定することを特徴とする。
【0024】
第15の発明は、多値画像である第1画像と多値画像である第2画像とを比較する画像比較プログラムであって、
コンピュータに、
前記第1画像と前記第2画像との間で差異がある部分を表す2値画像である差分画像であって、それぞれが1または複数の画素で構成される1以上の部分差分画像を含む差分画像を前記第1画像と前記第2画像とに基づいて生成する差分画像生成ステップと、
前記1以上の部分差分画像のそれぞれに収縮処理を施すことによって1以上の部分収縮画像を含む収縮画像を生成する収縮ステップと、
前記差分画像から前記収縮画像を除去することによって、それぞれが1または複数の画素で構成される1以上の部分アウトライン画像を含むアウトライン画像を生成するアウトライン画像生成ステップと、
前記1以上の部分アウトライン画像のうち前記部分収縮画像に隣接する部分アウトライン画像を除去することによって、エッジ領域の候補となる部分を表す候補画像であって、それぞれが1または複数の画素で構成される1以上の部分候補画像を含む候補画像を生成する候補画像生成ステップと、
前記第1画像と前記第2画像と前記候補画像とに基づいて、エッジ領域を表すエッジ画像を生成するエッジ画像生成ステップと、
前記差分画像から前記エッジ画像を除去することによって比較結果画像を生成する比較結果画像生成ステップと
を実行させ、
前記エッジ画像生成ステップでは、前記候補画像に含まれる前記1以上の部分候補画像を構成する1以上の画素が順次に処理対象画素とされ、前記処理対象画素と前記処理対象画素の周囲の8個の画素とを9個の比較対象画素として、前記第1画像における前記9個の比較対象画素の少なくとも1つの画素値と前記第2画像における前記処理対象画素の画素値との差が第1閾値以下であって、かつ、前記第2画像における前記9個の比較対象画素の少なくとも1つの画素値と前記第1画像における前記処理対象画素の画素値との差が前記第1閾値以下であるという第1条件を満たせば、前記処理対象画素は前記エッジ領域を構成する画素であると判定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
上記第1の発明によれば、第1画像と第2画像との間で差異があると判断される全ての領域が差異部分として検出されるのではなく、第1画像と第2画像との間で差異があると判断される領域から画像のエッジ領域を除いた領域が差異部分として検出される。すなわち、差異がないにも関わらず画像のエッジ部分を差異部分として検出する誤検出の発生が抑制される。エッジ領域を表すエッジ画像を生成するエッジ画像生成ステップでは、エッジ領域の候補となる部分を表す候補画像を構成する画素のみが処理対象画素とされる。そして、第2画像における処理対象画素の画素値と第1画像における処理対象画素を中心とする9個の画素の画素値との比較および第1画像における処理対象画素の画素値と第2画像における処理対象画素を中心とする9個の画素の画素値との比較が行われる。これにより、従来よりも短時間で、誤検出を生ずることなく2つの画像の差異を検出することが可能となる。以上のように、量子化誤差等に起因する誤検出の発生を抑制しつつ短時間で2つの画像の差異を検出することのできる画像比較方法が実現される。
【0026】
上記第2の発明によれば、例えば周囲との階調差の小さい細線が修正によって追加されたような場合に、当該細線を構成する画素はエッジ領域を構成する画素であるとは判定されないので、当該細線は差異部分として適切に検出される。すなわち、2つの画像の差異が精度良く検出される。
【0027】
上記第3の発明によれば、差分画像の生成の際、第1画像および第2画像の一方の各画素の画素値は、第1画像および第2画像の他方の当該各画素の画素値と比較されるだけである。それ故、2値画像である差分画像が短時間で生成される。
【0028】
上記第4の発明によれば、各種のノイズに起因する誤検出の発生が抑制される。
【0029】
上記第5の発明によれば、第1画像と第2画像との間で差異があるか否かを判定するための閾値をユーザーが設定することが可能となる。
【0030】
上記第6の発明によれば、複雑な演算処理を行うことなく、差分画像と収縮画像とからアウトライン画像が生成される。
【0031】
上記第7の発明によれば、複雑な演算処理を行うことなく、エッジ画像と差分画像とから比較結果画像が生成される。
【0032】
上記第8の発明によれば、例えば第1画像に対して部分画像の追加および部分画像の削除の双方の処理が施されることによって第2画像が生成されている場合にも、第1画像と第2画像との差異が適切に検出される。
【0033】
上記第9の発明によれば、処理対象画素がエッジ領域を構成する画素であるか否かを判定するために用いる閾値をユーザーが設定することが可能となる。
【0034】
上記第10の発明によれば、複数のインク色の処理をまとめて行う構成に比べて、2つの画像を比較する装置に必要とされるメモリの容量を小さくすることが可能となる。
【0035】
上記第11の発明によれば、差異部分を画面上に表示した際の視認性を良くすることが可能となる。
【0036】
上記第12の発明によれば、ユーザーは2つの画像の差異部分を迅速かつ容易に確認することが可能となる。
【0037】
上記第13の発明によれば、例えば第1画像に対して部分画像の追加および部分画像の削除の双方の処理が施されることによって第2画像が生成されている場合に、ユーザーは追加した部分画像と削除した部分画像とを区別して確認することが可能となる。
【0038】
上記第14の発明によれば、上記第1の発明と同様の効果が得られる。
【0039】
上記第15の発明によれば、上記第1の発明と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明の一実施形態に係る印刷システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図2】上記実施形態において、画像比較装置として機能するオンライン校正サーバのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】上記実施形態において、画像比較処理の対象とされる元画像の一例を示す図である。
【
図4】上記実施形態において、画像比較処理の対象とされる校正画像の一例を示す図である。
【
図5】上記実施形態において、画像比較処理のための機能構成を示すブロック図である。
【
図6】上記実施形態において、画像比較処理の手順を示すフローチャートである。
【
図7】上記実施形態において、画像比較処理の全体のアルゴリズムを説明するための図である。
【
図8】上記実施形態において、画像比較処理のうち収縮部とアウトライン画像生成部と候補画像生成部とエッジ画像生成部とによって行われる処理である再評価処理のアルゴリズムを説明するための図である。
【
図9】上記実施形態において、
図6のステップS10の処理(差分画像を生成する処理)の詳細な手順を示すフローチャートである。
【
図10】上記実施形態において、階調許容差入力画面の一例を示す図である。
【
図11】上記実施形態において、サイズフィルタについて説明するための図である。
【
図12】上記実施形態において、
図6のステップS10の処理で生成される正差分画像の一例を示す図である。
【
図13】上記実施形態において、
図6のステップS10の処理で生成される負差分画像の一例を示す図である。
【
図14】上記実施形態において、差分画像の一例を示す図である。
【
図15】上記実施形態において、
図6のステップS20の処理で生成される収縮画像の一例を示す図である。
【
図16】上記実施形態において、
図6のステップS30の処理で生成されるアウトライン画像の一例を示す図である。
【
図17】上記実施形態において、候補画像の生成について説明するための図である。
【
図18】上記実施形態において、
図6のステップS40の処理で生成される候補画像の一例を示す図である。
【
図19】上記実施形態において、エッジ画像の生成について説明するための図である。
【
図20】上記実施形態において、エッジ画像の生成について説明するための図である。
【
図21】上記実施形態において、エッジ画像の生成について説明するための図である。
【
図22】上記実施形態において、エッジ画像の生成について説明するための図である。
【
図23】上記実施形態において、エッジ画像の生成について説明するための図である。
【
図24】上記実施形態において、エッジ画像の生成について説明するための図である。
【
図25】上記実施形態において、
図6のステップS50の処理で生成されるエッジ画像の一例を示す図である。
【
図26】上記実施形態において、
図6のステップS60の処理(比較結果画像を生成する処理)の詳細な手順を示すフローチャートである。
【
図27】上記実施形態において、
図26のステップS62の処理で生成されるエッジ反転画像の一例を示す図である。
【
図28】上記実施形態において、
図26のステップS64の処理で生成される比較結果画像の一例を示す図である。
【
図29】上記実施形態において、近接する2以上の部分差分結果画像を結合する処理について説明するための図である。
【
図30】上記実施形態において、近接する2以上の部分差分結果画像を結合する処理について説明するための図である。
【
図31】上記実施形態において、結合輪郭画像の生成について説明するための図である。
【
図32】上記実施形態において、第1閾値を設定するステップおよび第2閾値を設定するステップを設けることについて説明するためのフローチャートである。
【
図33】上記実施形態において、
図6のステップS10~S80の処理がインク色毎に行われることについて説明するためのフローチャートである。
【
図34】薄い細線を表す画像が追加された場合の差異部分の検出漏れについて説明するための図である。
【
図35】上記実施形態の変形例に関し、第2条件を設けることの考え方について説明するための図である。
【
図36】上記実施形態の変形例に関し、第2条件を設けることの考え方について説明するための図である。
【
図37】上記実施形態の変形例に関し、第2条件を設けることの考え方について説明するための図である。
【
図38】上記実施形態の変形例に関し、第2条件を設けることの考え方について説明するための図である。
【
図39】上記実施形態の変形例に関し、第2条件を設けることの考え方について説明するための図である。
【
図40】上記実施形態の変形例に関し、第2条件を設けることの考え方について説明するための図である。
【
図41】上記実施形態の変形例に関し、第2条件を設けることの考え方について説明するための図である。
【
図42】上記実施形態の変形例に関し、第2条件を設けることの考え方について説明するための図である。
【
図43】検版以外の目的で2つの多値画像を比較する場合にも本発明を適用できることについて説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。
【0042】
<1.印刷システムの構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る印刷システムの全体構成を示すブロック図である。この印刷システムは、オンライン校正サーバ10と印刷ワークフロー管理サーバ11とインクジェット印刷装置12とパソコン20とパソコン30とによって構成されている。オンライン校正サーバ10、印刷ワークフロー管理サーバ11、およびインクジェット印刷装置12は印刷会社に設置されている。パソコン20は顧客会社に設置されている。パソコン30は制作会社に設置されている。オンライン校正サーバ10と印刷ワークフロー管理サーバ11とインクジェット印刷装置12とは、印刷会社内でLAN41によって接続されている。オンライン校正サーバ10とパソコン20とパソコン30とはインターネット42を介して接続されている。
【0043】
顧客会社に設置されているパソコン20は、印刷の発注および校正作業の際の修正指示のために使用される。制作会社に設置されているパソコン30は、発注の内容に応じた原稿の作成(印刷用の入稿データの作成)および校正作業の際の原稿の修正のために使用される。
【0044】
オンライン校正サーバ10は、インターネット42を介したパソコン(顧客会社に設置されているパソコン20や制作会社に設置されているパソコン30)からの要求に応じて、当該パソコンの表示部への校正作業用の画面の表示や当該パソコンとの間でのデータの送受信などを行う。オンライン校正サーバ10は、また、検版のための画像比較処理を行う。検版に用いられる画像は、パソコン30からオンライン校正サーバ10に送られたデータにRIP処理が施されることによって得られる画像である。なお、本実施形態においてはRIP処理もオンライン校正サーバ10で行われるものと仮定する。但し、印刷ワークフロー管理サーバ11や印刷会社に設置されている他のパソコン(不図示)でRIP処理が行われるようにしても良い。
【0045】
校正作業が終了して顧客会社の承認者による承認が得られた印刷ジョブのデータは印刷ワークフロー管理サーバ11に与えられる。印刷ワークフロー管理サーバ11には、インクジェット印刷装置12を用いて印刷を行うための一連の処理を管理する印刷ワークフローシステムを実現するプログラムがインストールされている。すなわち、印刷ワークフロー管理サーバ11は、印刷ワークフローの管理を行う。例えば、印刷が効率的に行われるように複数の印刷ジョブについての印刷順序を決定する処理などが行われる。
【0046】
インクジェット印刷装置12は、RIP処理によって生成された印刷データに基づいて、印刷版を用いることなく基材である印刷用紙にインクを吐出することによって印刷画像を出力する(すなわち、印刷を行う)。
【0047】
なお、本実施形態においてはオンライン校正サーバ10が画像比較装置(後述する画像比較処理を行う装置)として機能するが、本発明はこれに限定されない。顧客会社に設置されているパソコン20あるいは制作会社に設置されているパソコン30が画像比較装置として機能しても良い。
【0048】
<2.オンライン校正サーバのハードウェア構成>
図2は、本実施形態において画像比較装置として機能するオンライン校正サーバ10のハードウェア構成を示すブロック図である。オンライン校正サーバ10は、本体110、補助記憶装置121、光ディスクドライブ122、表示部123、キーボード124、およびマウス125などを備えている。本体110は、CPU111、メモリ112、第1ディスクインタフェース部113、第2ディスクインタフェース部114、表示制御部115、入力インタフェース部116、およびネットワークインタフェース部117を含んでいる。CPU111、メモリ112、第1ディスクインタフェース部113、第2ディスクインタフェース部114、表示制御部115、入力インタフェース部116、およびネットワークインタフェース部117は、システムバスを介して互いに接続されている。第1ディスクインタフェース部113には補助記憶装置121が接続されている。補助記憶装置121は磁気ディスク装置などである。第2ディスクインタフェース部114には光ディスクドライブ122が接続されている。光ディスクドライブ122には、CD-ROMやDVD-ROMなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体としての光ディスク49が挿入される。表示制御部115には、表示部(表示装置)123が接続されている。表示部123は液晶ディスプレイなどである。表示部123は、オペレータが所望する情報を表示するために使用される。入力インタフェース部116には、キーボード124およびマウス125が接続されている。キーボード124およびマウス125は、このオンライン校正サーバ10に対して作業者が指示を入力するために使用される。ネットワークインタフェース部117は、通信用のインタフェース回路である。
【0049】
補助記憶装置121には、画像比較プログラムP、その他のプログラム、および各種のデータが格納されている。CPU111は、補助記憶装置121に格納された画像比較プログラムPをメモリ112に読み出して実行することにより、後述する画像比較処理のための各種機能を実現する。メモリ112は、RAMおよびROMを含んでいる。メモリ112は、補助記憶装置121に格納された画像比較プログラムPをCPU111が実行するためのワークエリアとして機能する。なお、画像比較プログラムPは、上記コンピュータ読み取り可能な記録媒体(非一過性の記録媒体)に格納されて提供される。すなわち、ユーザーは、例えば、画像比較プログラムPの記録媒体としての光ディスク49を購入して光ディスクドライブ122に挿入し、光ディスク49から画像比較プログラムPを読み出して補助記憶装置121にインストールする。また、これに代えて、ネットワークを介して送信される画像比較プログラムPをネットワークインタフェース部117で受信して、それを補助記憶装置121にインストールするようにしてもよい。
【0050】
<3.画像比較処理>
<3.1 前提>
本実施形態における画像比較処理について説明する。本明細書では、校正作業が行われる前にパソコン30からオンライン校正サーバ10に送られたデータに基づく画像と校正作業が行われた後にパソコン30からオンライン校正サーバ10に送られたデータに基づく画像との比較がオンライン校正サーバ10で行われるケースに着目する。なお、以下においては、校正作業が行われる前にパソコン30からオンライン校正サーバ10に送られたデータに基づく画像を「元画像」といい、校正作業が行われた後にパソコン30からオンライン校正サーバ10に送られたデータに基づく画像を「校正画像」という。元画像には符号61を付し、校正画像には符号62を付す。また、以下に説明する例では、元画像61は
図3に示すような画像であって、校正画像62は
図4に示すような画像であると仮定する。
図3および
図4に関し、1つの矩形は1つの画素を表している。
図4で符号502を付した部分の画像は、上述した量子化誤差により
図3で符号501を付した部分の画像が0.5画素分だけ左方に移動することによって得られた画像である。
図4において薄い網掛けを施している画素の画素値は、
図4において濃い網掛けを施している画素の画素値よりも小さい。
【0051】
<3.2 画像比較処理のための機能構成>
図5は、画像比較処理のための機能構成を示すブロック図である。なお、
図5に示す機能構成は、オンライン校正サーバ10で画像比較プログラムPが実行されることによって実現される。
図5に示すように、オンライン校正サーバ10は、画像比較処理を実行するための機能的構成要素として、差分画像生成部151と収縮部152とアウトライン画像生成部153と候補画像生成部154とエッジ画像生成部155と比較結果画像生成部156と近接画像結合部157と結合画像輪郭抽出部158と比較結果表示部159とを含んでいる。以下、各構成要素の動作の概略について説明する。
【0052】
差分画像生成部151は、元画像61と校正画像62との間で差異がある部分を表す2値画像である差分画像64を生成する。差分画像生成部151によって生成される差分画像64には、典型的には、1以上の部分差分画像が含まれている。各部分差分画像は、1または複数の画素で構成されている。
【0053】
収縮部152は、差分画像生成部151により生成された差分画像64に含まれる1以上の部分差分画像のそれぞれに収縮処理を施すことによって、収縮画像71を生成する。収縮部152によって生成される収縮画像71には、典型的には、1以上の部分収縮画像が含まれている。各部分収縮画像は、1または複数の画素で構成されている。
【0054】
アウトライン画像生成部153は、差分画像64から収縮画像71を除去することによって、差分画像64の輪郭に相当するアウトライン画像72を生成する。より詳しくは、アウトライン画像生成部153は、差分画像64に含まれる1以上の部分差分画像から収縮部152による収縮処理によって得られた1以上の部分収縮画像を除去することによってアウトライン画像72を生成する。アウトライン画像生成部153によって生成されるアウトライン画像72には、典型的には、1以上の部分アウトライン画像が含まれている。各部分アウトライン画像は、1または複数の画素で構成されている。
【0055】
候補画像生成部154は、アウトライン画像72に含まれる1以上の部分アウトライン画像のうち収縮部152による収縮処理によって生成された部分収縮画像に隣接する部分アウトライン画像を除去することによって、エッジ領域の候補となる部分を表す候補画像73を生成する。
【0056】
エッジ画像生成部155は、元画像61と校正画像62と候補画像73とに基づいて、候補画像73の中から実際のエッジ領域を表すエッジ画像を生成する。これに関し、エッジ画像生成部155は、候補画像73に含まれる1以上の部分候補画像を構成する1以上の画素を順次に処理対象画素とし、処理対象画素と処理対象画素の周囲の8個の画素とを9個の比較対象画素として、元画像61における9個の比較対象画素の少なくとも1つの画素値と校正画像62における処理対象画素の画素値との差が予め定められた閾値(以下、「第1閾値」という。)以下であって、かつ、校正画像62における9個の比較対象画素の少なくとも1つの画素値と元画像61における処理対象画素の画素値との差が第1閾値以下であるという第1条件を満たせば、処理対象画素はエッジ領域を構成する画素であると判定する。
【0057】
比較結果画像生成部156は、差分画像64からエッジ画像生成部155により生成されたエッジ画像74を除去することによって、元画像61と校正画像62との間で差異があると最終的に判断する部分を表す比較結果画像65を生成する。比較結果画像生成部156によって生成される比較結果画像65には、典型的には、複数の部分差分結果画像が含まれている。各部分差分結果画像は、1または複数の画素で構成されている。
【0058】
近接画像結合部157は、比較結果画像65に関し、膨張処理を行うことによって近接する2以上の部分差分結果画像を1つの結合画像75としてまとめる。これにより、例えば、複数個の文字の画像が1つの結合画像75となる。
【0059】
結合画像輪郭抽出部158は、結合画像75に収縮処理を施すことによって得られる画像を結合画像75から除去することにより、結合画像75の輪郭に相当する領域を表す画像(以下、便宜上「結合輪郭画像」という)76を生成する。
【0060】
比較結果表示部159は、校正画像62および結合輪郭画像76を参照して、元画像61と校正画像62との間で差異があると判断された部分を色付けした態様で比較結果画像65を表示する。
【0061】
<3.3 画像比較処理の手順>
図6は、画像比較処理の手順を示すフローチャートである。
図7は、画像比較処理の全体のアルゴリズムを説明するための図である。
図8は、画像比較処理のうち収縮部152とアウトライン画像生成部153と候補画像生成部154とエッジ画像生成部155とによって行われる処理である再評価処理のアルゴリズムを説明するための図である。それらを参照しつつ、本実施形態における画像比較処理の手順(画像比較方法)について詳しく説明する。
【0062】
画像比較処理が開始されると、まず、差分画像生成部151によって、元画像61と校正画像62との間で差異がある部分を表す2値画像である差分画像64が生成される(ステップS10)。
【0063】
図9は、ステップS10の処理(差分画像64を生成する処理)の詳細な手順を示すフローチャートである。ステップS10では、まず、元画像61と校正画像62とが1画素ずつ比較され、両者間で画素値が異なる画素(差異画素)が抽出される(ステップS12)。すなわち、元画像61と校正画像62との間での差分が抽出される。なお、抽出される画素のデータは多値データである。ところで、任意の画素に関して差異が検出されたとき、元画像61における画素値よりも校正画像62における画素値の方が大きい場合もあれば、校正画像62における画素値よりも元画像61における画素値の方が大きい場合もある。そこで、本実施形態においては、元画像61における画素値よりも校正画像62における画素値の方が大きい画素の集合に基づく画像は正差分多値画像63aとして扱われ、校正画像62における画素値よりも元画像61における画素値の方が大きい画素の集合に基づく画像は負差分多値画像63bとして扱われる(
図7参照)。
【0064】
正差分多値画像63aおよび負差分多値画像63bが得られた後、正差分多値画像63aおよび負差分多値画像63bのそれぞれに対して2値化処理が行われる(ステップS14)。2値化処理では、各画素の差分の絶対値が予め定められた閾値(以下、「第2閾値」という。)TH2と比較される。そして、差分の絶対値が第2閾値TH2以上である画素については2値化処理後の値が1とされ、差分の絶対値が第2閾値TH2未満である画素については2値化処理後の値が0とされる。このように、ステップS12で抽出された差異画素のうち元画像61における画素値と校正画像62における画素値との差が第2閾値TH2以上である画素については元画像61と校正画像62との間で差異があるとみなされ、ステップS12で抽出された差異画素のうち元画像61における画素値と校正画像62における画素値との差が第2閾値TH2未満である画素については元画像61と校正画像62との間で差異がないとみなされる。
【0065】
ところで、第2閾値TH2については、予めユーザーによる設定が可能となっている。但し、本実施形態においては、ユーザーは、第2閾値TH2を直接的に指定するのではなく、第2閾値TH2に対応する百分率(%)を指定する。以下、ユーザーによって指定されるこの百分率のことを「階調許容差」という。
図10は、ユーザーが階調許容差を入力するための階調許容差入力画面80の一例を示す図である。この階調許容差入力画面80には、階調許容差の値を入力するためのテキストボックス801と、OKボタン802と、キャンセルボタン803とが含まれている。テキストボックス801に値が入力された状態でOKボタン802が押下されると、第2閾値TH2が算出される。なお、キャンセルボタン803が押下された場合には、第2閾値TH2の算出が行われることなく、階調許容差入力画面80が非表示となる。仮に多値データが8ビットのデータであれば、テキストボックス801に入力された値(百分率)をVで表すと、第2閾値TH2は次式(1)で算出される。
TH2=(V/100)×255 ・・・(1)
【0066】
2値化処理の終了後、当該2値化処理で生成された2値画像に含まれる1以上の部分差分画像のうち予め定められた数である孤立エラー数NI以下の画素で構成される部分差分画像を除去する「サイズフィルタ」と呼ばれる処理が行われる(ステップS16)。例えば、孤立エラー数NIが「2」に設定されていて、
図11のA部に示すように処理対象の2値画像に4つの部分差分画像81~84が含まれていると仮定する。この場合、部分差分画像81は1個の画素で構成され、部分差分画像82は2個の画素で構成されているので、サイズフィルタによって部分差分画像81および部分差分画像82が除去される。その結果、
図11のB部に示すような差分画像が得られる。なお、ステップS16の処理は必須の処理ではなく、ステップS16の処理を省略した手順を採用することもできる。但し、ステップS16の処理を行うことによって、各種のノイズに起因する誤検出の発生が抑制される。
【0067】
サイズフィルタが終了することによって、ステップS10の処理が終了する。これにより、上述したように元画像61が
図3に示すような画像であって、校正画像62が
図4に示すような画像であって、孤立エラー数NIが「1」に設定された状態でサイズフィルタが行われた場合には、正差分多値画像63aに対応する差分画像(正差分画像64a)として
図12に示すような画像が得られ、負差分多値画像63bに対応する差分画像(負差分画像64b)として
図13に示すような画像が得られる。なお、
図4で符号621を付した部分の画像はサイズフィルタによって除去される。
【0068】
なお、
図7から把握されるように再評価処理(
図6のステップS20~S60の処理)についても正差分画像64aに基づく処理と負差分画像64bに基づく処理とに分けて行われるが、以下では、一方の処理に着目し、
図14に示すような差分画像64に基づいて再評価処理が行われるケースについて説明する。
【0069】
ステップS20では、収縮部152によって、ステップS10で生成された差分画像64に含まれる1以上の部分差分画像のそれぞれに対する収縮処理が行われる。この例では、差分画像64(
図14参照)には5個の部分差分画像641~645が含まれており、それら5個の部分差分画像641~645のそれぞれに対して、収縮幅を1画素とする収縮処理が行われる。これにより、
図15に示すような収縮画像71が生成される。
図15に示す収縮画像71には、1個の部分収縮画像711が含まれている。その部分収縮画像711は、
図14における部分差分画像644に対する収縮処理によって得られた画像である。
【0070】
収縮画像71が生成された後、アウトライン画像生成部153によって、差分画像64に含まれる1以上の部分差分画像からステップS20で生成された1以上の部分収縮画像を除去することによりアウトライン画像72が生成される(ステップS30)。より具体的には、差分画像64(
図14参照)と収縮画像71(
図15参照)との排他的論理和(XOR)演算が行われることによって、アウトライン画像72が生成される。この例では、ステップS30によって、
図16に示すようなアウトライン画像72が生成される。そのアウトライン画像72には、5個の部分アウトライン画像721~725が含まれている。部分アウトライン画像724は、
図14における部分差分画像644から
図15に示した部分収縮画像711を除去することによって得られた画像である。
【0071】
アウトライン画像72が生成された後、候補画像生成部154によって、アウトライン画像72に含まれる1以上の部分アウトライン画像のうちステップS20で生成された部分収縮画像に隣接する部分アウトライン画像を除去することにより候補画像73が生成される(ステップS40)。これに関し、
図15に示した部分収縮画像711を斜線で表すと、当該部分収縮画像711と
図16における部分アウトライン画像724との関係は
図17に示すようなものとなる。
図17から把握されるように、部分アウトライン画像724は部分収縮画像711に接している。従って、ステップS40では、アウトライン画像72から部分アウトライン画像724が除去される。その結果、
図18に示すような候補画像73が生成される。この例では、候補画像73には、4個の部分候補画像731~734が含まれている。
【0072】
候補画像73が生成された後、エッジ画像生成部155によって、エッジ領域を表すエッジ画像74が生成される(ステップS50)。ステップS50では、ステップS40で生成された候補画像73に含まれる1以上の部分候補画像を構成する1以上の画素が順次に処理対象画素とされ、上述した第1条件を満たせば処理対象画素はエッジ領域を構成する画素であると判定される。このステップS50について、
図19~
図24を参照しつつ具体的に説明する。
【0073】
上述したように、
図4で符号502を付した部分の画像は、
図3で符号501を付した部分の画像が量子化誤差により0.5画素分だけ左方に移動することによって得られた画像である。従って、
図4で符号502を付した部分の画像と
図3で符号501を付した部分の画像との関係は、
図19に示すようなものとなる。なお、
図19に示す部分に対応する候補画像73は、
図20に示すようなものである。ステップS50では候補画像73に含まれる部分候補画像を構成する1以上の画素が順次に処理対象画素とされるが、ここでは、
図20において符号541を付した画素が処理対象画素である時の動作に着目する。この時、処理対象画素541および当該処理対象画素541の周囲の8個の画素が比較対象画素となる。すなわち、処理対象画素541を中心とする9個の画素が比較対象画素となる。
【0074】
このケースでは、まず、校正画像62における処理対象画素541(
図21参照)の画素値が、元画像61における9個の比較対象画素(
図22において符号54を付した太枠内に存在する9個の画素)の画素値と順次に比較される。そして、元画像61における9個の比較対象画素のうちの少なくとも1つの画素値と校正画像62における処理対象画素541の画素値との差が第1閾値TH1以下であるか否かの判定が行われる。なお、この例では、元画像61における3個の処理対象画素541~543の画素値と校正画像62における処理対象画素541の画素値との差が第1閾値TH1以下である旨の判定が行われるものとする。さらに、元画像61における処理対象画素541(
図22参照)の画素値が、校正画像62における9個の比較対象画素(
図21において符号54を付した太枠内に存在する9個の画素)の画素値と順次に比較される。そして、校正画像62における9個の比較対象画素のうちの少なくとも1つの画素値と元画像61における処理対象画素541の画素値との差が第1閾値TH1以下であるか否かの判定が行われる。なお、この例では、校正画像62における3個の処理対象画素541~543の画素値と元画像61における処理対象画素541の画素値との差が第1閾値TH1以下である旨の判定が行われるものとする。以上より、このケースは第1条件を満たすので、処理対象画素541はエッジ領域を構成する画素であると判定される。
【0075】
次に、
図18に示した部分候補画像734を構成する4個の画素のうちの符号551を付した画素が処理対象画素である時の動作に着目する。なお、元画像61における処理対象画素551近傍の画像は
図23に示すようなものであり、校正画像62における処理対象画素551近傍の画像は
図24に示すようなものである。
【0076】
このケースでも、まず、元画像61における9個の比較対象画素(
図23において符号55を付した太枠内に存在する9個の画素)のうちの少なくとも1つの画素値と校正画像62における処理対象画素551の画素値との差が第1閾値TH1以下であるか否かの判定が行われる。なお、この例では、元画像61における9個の比較対象画素のいずれの画素値についても校正画像62における処理対象画素551の画素値との差が第1閾値TH1よりも大きい旨の判定が行われるものとする。さらに、校正画像62における9個の比較対象画素(
図24において符号55を付した太枠内に存在する9個の画素)のうちの少なくとも1つの画素値と元画像61における処理対象画素551の画素値との差が第1閾値TH1以下であるか否かの判定が行われる。なお、この例では、校正画像62における7個の比較対象画素552~558の画素値と元画像61における処理対象画素551の画素値との差が第1閾値TH1以下である旨の判定が行われるものとする。以上より、このケースは第1条件を満たしていないので、処理対象画素551はエッジ領域を構成する画素ではないと判定される。
【0077】
以上のようにして、ステップS50では、エッジ領域を表すエッジ画像74として、
図25に示すような画像が生成される。
【0078】
その後、比較結果画像生成部156によって、差分画像64からステップS50で生成されたエッジ画像74を除去することにより比較結果画像65が生成される(ステップS60)。
【0079】
図26は、ステップS60の処理(比較結果画像65を生成する処理)の詳細な手順を示すフローチャートである。ステップS60では、まず、エッジ画像74に基づく論理反転演算が行われる(ステップS62)。これにより、
図27に示すようなエッジ反転画像741が生成される。次に、差分画像64(
図14参照)とエッジ反転画像741とに基づく論理積(AND)演算が行われる(ステップS64)。これにより、
図28に示すような比較結果画像65が生成される。
図28に示す比較結果画像65には、2個の部分差分結果画像651,652が含まれている。上述した論理積演算により比較結果画像65が生成されることによって、ステップS60の処理は終了する。
【0080】
比較結果画像65が生成された後、近接画像結合部157によって、互いに近接する2以上の部分差分結果画像が1つにまとめられる(ステップS70)。ステップS70では、複数の部分差分結果画像のそれぞれに対して、例えば膨張幅を10~15画素とする膨張処理が施される。その結果、互いに近接する2以上の部分差分結果画像が結合される。このステップS70に関し、例えば、ステップS60で
図29に示すような比較結果画像65が生成されていると仮定する。このとき、
図29で符号655を付した部分の部分差分結果画像に膨張処理が施されることによって
図30で符号75(1)を付した結合画像が生成され、
図29で符号656を付した部分の部分差分結果画像に膨張処理が施されることによって
図30で符号75(2)を付した結合画像が生成される。
【0081】
次に、結合画像輪郭抽出部158によって、ステップS70で生成された結合画像75から当該結合画像75に収縮処理を施すことによって得られる画像を除去することにより、結合輪郭画像76が生成される(ステップS80)。より具体的には、まず、結合画像75に例えば収縮幅を1画素とする収縮処理が施される。これにより、上述したステップS20と同様にして、収縮結合画像が生成される。次に、結合画像75と収縮結合画像との排他的論理和(XOR)演算が行われる。これにより、結合輪郭画像76が生成される。例えば、
図30で符号75(1)を付した結合画像に基づいて
図31で符号76(1)を付した結合輪郭画像が生成され、
図30で符号75(2)を付した結合画像に基づいて
図31で符号76(2)を付した結合輪郭画像が生成される。
【0082】
最後に、比較結果表示部159によって、元画像61と校正画像62との間で差異があると判断された部分を色付けした態様で比較結果画像65が表示部123に表示される(ステップS90)。これに関し、例えば「差異がない部分:グレー表示、差異がある部分のうち上記正差分画像64aに相当する部分:ユーザーによって指定された第1指定色で色付け表示、差異がある部分のうち上記負差分画像64bに相当する部分:ユーザーによって指定された第2指定色で色付け表示」というような態様で比較結果画像65を表示するようにしても良いし、また、例えば「差異がない部分:グレー表示、差異がある部分:校正画像62の色で色付け表示」というような態様で比較結果画像65を表示するようにしても良い。このようにして表示部123に比較結果画像65が表示されることによって、画像比較処理は終了する。
【0083】
本実施形態においては、以上のような画像比較処理が印刷会社のオンライン校正サーバ10(
図1参照)で行われる。なお、ステップS50よりも前にユーザーが第1閾値TH1を設定するステップが設けられていることが好ましい。また、ステップS14よりも前にユーザーが第2閾値TH2を設定するステップが設けられていることが好ましい。これに関し、例えば、
図32に示すように、第1閾値TH1を設定するステップS6および第2閾値TH2を設定するステップS8をステップS10よりも前に設けるようにすれば良い。
【0084】
ところで、画像比較処理の対象とされる画像は、複数のインク色のそれぞれの画像からなる。そして、
図6のステップS10~S80の処理は、インク色毎に行われる。例えば、C色(シアン色)、M色(マゼンタ色)、Y色(黄色)、およびK色(黒色)の4色で構成される画像が画像比較処理の対象とされ、それら4色の色毎に
図6のステップS10~S80の処理が行われる。このとき、画像比較処理の全体の流れは、例えば
図33に示すようなものとなる。また、例えば、C色、M色、Y色、K色にZ個(Zは自然数である)の特色を加えた(Z+4)色で構成される画像が画像比較処理の対象とされ、それら(Z+4)色の色毎に
図6のステップS10~S80の処理が行われる。また、例えば、K色、M色の2色のみの印刷データの場合は、K色とM色で構成される画像が画像比較処理の対象とされ、2色の色毎に
図6のステップS10~S80の処理が行われる。このようにインク色毎に処理を行う構成を採用することによって、複数のインク色の処理をまとめて行う構成に比べて、画像比較装置として機能する装置(本実施形態においては、オンライン校正サーバ10)に必要とされるメモリの容量を小さくすることが可能となる。
【0085】
なお、本実施形態においては、ステップS10によって差分画像生成ステップが実現され、ステップS12によって差異画素抽出ステップが実現され、ステップS14によって2値化ステップが実現され、ステップS16によってフィルタステップが実現され、ステップS20によって収縮ステップが実現され、ステップS30によってアウトライン画像生成ステップが実現され、ステップS40によって候補画像生成ステップが実現され、ステップS50によってエッジ画像生成ステップが実現され、ステップS60によって比較結果画像生成ステップが実現され、ステップS62によって論理反転演算ステップが実現され、ステップS64によって論理積演算ステップが実現され、ステップS70によって近接画像結合ステップが実現され、ステップS90によって比較結果表示ステップが実現されている。また、元画像61が第1画像に相当し、校正画像62が第2画像に相当する。
【0086】
<4.効果>
本実施形態における画像比較処理によれば、元画像61と校正画像62との間で差異があると判断される全ての領域が差異部分として検出されるのではなく、元画像61と校正画像62との間で差異があると判断される領域から画像のエッジ領域を除いた領域が差異部分として検出される。すなわち、量子化誤差が発生していても画像のエッジ部分は差異部分として検出されない。
【0087】
ところで、特開2019-211319号公報に開示された手法によれば、上述したように4つの組み合わせの比較(基準画像に対応する膨張画像と検査画像との比較、基準画像に対応する収縮画像と検査画像との比較、検査画像に対応する膨張画像と基準画像との比較、および検査画像に対応する収縮画像と基準画像との比較)が必要であって、各組み合わせの比較の際に各画素につき9画素との比較(符号の正負を考慮すると18画素分の比較)のための演算を行う必要がある。これに対して、本実施形態によれば、エッジ領域を表すエッジ画像74を生成する際、エッジ領域の候補となる部分を表す候補画像73を構成する画素のみが処理対象画素とされる。そして、校正画像62における処理対象画素の画素値と元画像61における処理対象画素を中心とする9個の画素の画素値との比較および元画像61における処理対象画素の画素値と校正画像62における処理対象画素を中心とする9個の画素の画素値との比較が行われる。このように、本実施形態によれば、従来よりも短時間で、誤検出を生ずることなく2つの画像の差異を検出することが可能となる。なお、演算時間が短縮されることから消費電力が低減され、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に貢献することもできる。
【0088】
以上のように、本実施形態によれば、量子化誤差等に起因する誤検出の発生を抑制しつつ短時間で2つの画像の差異を検出することのできる画像比較方法が実現される。
【0089】
<5.変形例>
上記実施形態では、元画像61における処理対象画素551近傍の画像が
図23に示すようなものであって校正画像62における処理対象画素551近傍の画像が
図24に示すようなものであるケースについては、処理対象画素551はエッジ領域を構成する画素ではないと判定される。これに類似するケースとして、元画像61における処理対象画素551近傍の画像が
図23に示すようなものであって校正画像62における処理対象画素551近傍の画像が
図34に示すようなものであるケース(以下、便宜上「薄細線ケース」という。)を想定する。なお、
図34で符号56を付した部分の画像は、1画素幅の細線を表す画像が量子化誤差により0.5画素分だけ左方に移動することによって得られた薄い色の画像であると仮定する。
【0090】
上記のような薄細線ケースでは、
図6のステップS50において、元画像61における9個の比較対象画素(
図23において符号55を付した太枠内に存在する9個の画素)の画素値と校正画像62における処理対象画素551(
図34参照)の画素値との差が第1閾値TH1以下であって、かつ、校正画像62における9個の比較対象画素(
図34において符号55を付した太枠内に存在する9個の画素)の画素値と元画像61における処理対象画素551(
図23参照)の画素値との差が第1閾値TH1以下である旨の判定が行われる。すなわち、第1条件を満たしているので、処理対象画素541はエッジ領域を構成する画素であると判定される。そうすると、
図34で符号56を付した部分が差異部分として検出されない(検出漏れが発生する)。そこで、このように周囲との階調差の小さい細線が修正によって追加された場合に当該細線を差異部分として適切に検出する方法を上記実施形態の変形例として以下に説明する。
【0091】
まず、本変形例における考え方について説明する。
図3で符号501を付した部分の画像に関して、
図35のA-A’線で示す部分の画素値を表すグラフは
図36に示すようなものとなる。また、
図4で符号502を付した部分の画像に関して、
図37のB-B’線で示す部分の画素値を表すグラフは
図38に示すようなものとなる。ここで、
図35および
図37で符号81を付した画素を「着目画素」とする。
図35~
図38から把握されるように、元画像における着目画素81を中心とする9個の画素の中には、校正画像における着目画素81の画素値以下の画素値を有する画素と校正画像における着目画素81の画素値以上の画素値を有する画素とが存在する。換言すれば、校正画像における着目画素81の画素値は、元画像における着目画素81を中心とする9個の画素の画素値の最小値から最大値までの範囲内にある。また、元画像における着目画素81の画素値についても、校正画像における着目画素81を中心とする9個の画素の画素値の最小値から最大値までの範囲内にある。
【0092】
図34に示した画像に関して、
図39のC-C’線で示す部分の画素値を表すグラフは
図40に示すようなものとなる。また、元画像の該当部分に関して、
図41のD-D’線で示す部分の画素値を表すグラフは
図42に示すようなものとなる。ここで、
図39および
図41で符号83を付した画素を「着目画素」とする。
図39~
図42から把握されるように、校正画像における着目画素83の画素値は、元画像における着目画素83を中心とする9個の画素のいずれの画素値よりも大きい。このように、画像のエッジを構成しない部分については、元画像および校正画像の少なくとも一方における着目画素の画素値は、元画像および校正画像の他方における着目画素を中心とする9個の画素の画素値の最小値から最大値までの範囲外の値となる。
【0093】
以上に鑑み、本変形例では、
図6のステップS50において、エッジ画像生成部155は、上述した第1条件に加えて、校正画像における処理対象画素の画素値が元画像における9個の比較対象画素の画素値の最小値から最大値までの範囲内にあり、かつ、元画像における処理対象画素の画素値が校正画像における9個の比較対象画素の画素値の最小値から最大値までの範囲内にあるという第2条件を満たした場合に、処理対象画素はエッジ領域を構成する画素であると判定する。
【0094】
本変形例によれば、周囲との階調差の小さい細線が修正によって追加されたような場合に、当該細線を構成する画素は、エッジ領域を構成する画素であるとは判定されない。すなわち、当該細線は差異部分として適切に検出される。このように、本変形例によれば、量子化誤差等に起因する誤検出の発生を抑制しつつ短時間で2つの画像の差異を精度良く検出することのできる画像比較方法が実現される。
【0095】
<6.その他>
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、上記実施形態においては検版の目的で2つの画像の比較を行う例を挙げて説明したが、これには限定されない。検版以外の目的で2つの多値画像(第1画像51および第2画像52)の比較を行って当該比較によって得られた比較結果画像を表示する場合(
図43参照)にも、本発明を適用することができる。また、例えば、
図6のステップS70およびステップS80の処理を行うことなく、ステップS60で生成された比較結果画像65をそのまま表示部123に表示するようにしても良い。
【符号の説明】
【0096】
10…オンライン校正サーバ(画像比較装置)
11…印刷ワークフロー管理サーバ
12…インクジェット印刷装置
20…(顧客会社の)パソコン
30…(制作会社の)パソコン
61…元画像
62…校正画像
64…差分画像
65…比較結果画像
71…収縮画像
72…アウトライン画像
73…候補画像
74…エッジ画像
80…階調許容差入力画面
151…差分画像生成部
152…収縮部
153…アウトライン画像生成部
154…候補画像生成部
155…エッジ画像生成部
156…比較結果画像生成部
157…近接画像結合部
158…結合画像輪郭抽出部
159…比較結果表示部
P…画像比較プログラム