IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-空気調和機 図1
  • 特開-空気調和機 図2
  • 特開-空気調和機 図3
  • 特開-空気調和機 図4
  • 特開-空気調和機 図5
  • 特開-空気調和機 図6
  • 特開-空気調和機 図7
  • 特開-空気調和機 図8
  • 特開-空気調和機 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034633
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/65 20180101AFI20240306BHJP
   F24F 11/72 20180101ALI20240306BHJP
   F24F 11/52 20180101ALI20240306BHJP
   F24F 11/79 20180101ALI20240306BHJP
   F24F 11/61 20180101ALI20240306BHJP
   F24F 11/86 20180101ALI20240306BHJP
   F24F 110/12 20180101ALN20240306BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20240306BHJP
   F24F 110/20 20180101ALN20240306BHJP
【FI】
F24F11/65
F24F11/72
F24F11/52
F24F11/79
F24F11/61
F24F11/86
F24F110:12
F24F110:10
F24F110:20
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139012
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】316011466
【氏名又は名称】日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】其田 光希
(72)【発明者】
【氏名】須永 成一
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AB02
3L260BA05
3L260BA16
3L260CA02
3L260CA12
3L260CA13
3L260CA32
3L260EA07
3L260FA13
3L260FB04
3L260FB12
3L260FB15
3L260FC16
3L260GA15
(57)【要約】
【課題】除湿を行うに際して使用者への負担を軽減可能な空気調和機を提供する。
【解決手段】空気調和機400は、空調運転後、少なくとも室外の気温を含む空気条件が所定条件を満たしている場合に室内の除湿を行う制御装置104を備える。空気条件は、前記室内の温度と前記室内の湿度とを更に含む。前記所定条件は、前記室内と前記室外とを隔てる構造物での前記室内側の表面への結露を発生させる発生条件を含む。前記所定条件は、前記室内の湿度が前記室内と前記室外とを隔てる構造物への結露を発生させる指標となる所定湿度以上か否かの条件を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調運転後、少なくとも室外の気温を含む空気条件が所定条件を満たしている場合に室内の除湿を行う制御装置を備える
ことを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
前記空気条件は、前記室内の温度と前記室内の湿度とを更に含む
ことを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記所定条件は、前記室内と前記室外とを隔てる構造物での前記室内側の表面への結露を発生させる発生条件を含む
ことを特徴とする請求項2に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記所定条件は、前記室内の湿度が前記室内と前記室外とを隔てる構造物への結露を発生させる指標となる所定湿度以上か否かの条件を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項5】
前記制御装置は、前記室内の気温と前記室外の気温とに基づき、所定湿度を決定する
ことを特徴とする請求項4に記載の空気調和機。
【請求項6】
前記構造物は、窓又は金属製の扉の少なくとも一方を含む
ことを特徴とする請求項4に記載の空気調和機。
【請求項7】
前記室内の空気調和を行う熱交換器を備え、
前記制御装置は、前記室内の空気の露点温度以下にするように前記熱交換器の少なくとも一部の温度を制御することで、前記室内の除湿を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項8】
前記制御装置は、前記室外の温度及び前記室内の温度に基づき、前記室内と前記室外とを隔てる構造物における前記室内に臨む側の表面の温度を決定し、
前記所定条件は、決定した前記構造物の前記温度が前記室内の空気の露点温度以下である条件を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項9】
前記空調運転は、暖房運転又は送風運転の少なくとも一方である
ことを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項10】
前記除湿を開始するときに使用者に報知する報知装置を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項11】
前記室内の空気を吸い込むととともに前記室内に空気を吹き出すファンを備える室内機を備え、
前記制御装置は、中速回転速度以下になるように、前記ファンを回転させながら前記除湿を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項12】
前記室内に空気を吹き出すときの上下方向の風向を制御する上下風向板を備える室内機を備え、
前記制御装置は、中間よりも上向きになるように、前記上下風向板の向きを制御して前記除湿を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項13】
前記室内に存在する人の位置を検出する検出機構と、
前記室内に空気を吹き出すときの風向を制御する風向板と、を備え、
前記制御装置は、前記検出機構によって検出された人の位置を避けるように前記風向板を制御して前記除湿を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項14】
前記制御装置は、
前記室内の除湿を開始してから所定時間経過後、又は、
前記室内の除湿を開始してから、前記室内の湿度が前記室内と前記室外とを隔てる構造物への結露を発生させる指標となる所定湿度以下に至った時、
の少なくとも一方を含む終了条件を満たしたときに、前記室内の除湿を終了する
ことを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項15】
前記制御装置は、前記空調運転の終了のときにおける前記空気条件に基づき、前記所定条件の成否を判断する
ことを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項16】
前記室内の空気を吸い込むととともに前記室内に空気を吹き出すファンと、前記室内の空気調和を行う熱交換器とを備える室内機と、
前記熱交換器を流れる冷媒を圧縮する圧縮機を備える室外機と、を備え、
前記制御装置は、前記除湿中の湿度の低下速度が所定速度以下の場合に、前記圧縮機の回転速度を、前記低下速度が前記所定速度以下と判断したときの回転速度よりも速くする
ことを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば冬季、部屋を加湿しながら暖房運転を行うことがある。加湿によって部屋の湿度が高くなると、カビ、細菌等の微生物が繁殖したり、窓等の構造物に結露が生じたりする。結露は、カビ等の繁殖の原因にもなり得る。従って、カビ等の繁殖抑制のためには、冬においても、室内の湿度をある一定以下に維持することが好ましい。湿度の低下は、例えば、空気調和機を用いた除湿によって実行できる。
【0003】
特許文献1の請求項1には「除湿運転時、冷媒の流れからみて上流側が再熱器、下流側が冷却器となる室内熱交換器を有する室内機を備えた空気調和機であって、除湿モードを本体の制御機能として備え、さらに、除湿モード以外のモードでの運転中に操作することによって該本体に除湿モードの運転を開始させる選択手段と、該本体の運転中に該選択手段で除湿モードが選択されると、該除湿モードの指令を該本体に送信する手段と、該選択手段で選択された該除湿モードを示す情報を表示する手段と、該選択手段とは別の該本体の運転を停止させる運転停止手段とを有する操作リモコンを備えたことを特徴とする空気調和機。」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-85731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
暖房運転中の除湿は困難なため、暖房運転後の除湿が考えられる。特許文献1に記載の技術では、暖房運転後の結露抑制のため、使用者の要求に応じ、暖房運転後に除湿運転が行われる(段落0094)。従って、使用者が判断した結露可能性に基づき、除湿運転が行われる。このため、使用者による操作に基づき除湿が行われるため、使用者に負担が生じる。
本開示が解決しようとする課題は、除湿を行うに際して使用者への負担を軽減可能な空気調和機の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の空気調和機は、空調運転後、少なくとも室外の気温を含む空気条件が所定条件を満たしている場合に室内の除湿を行う制御装置を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、除湿を行うに際して使用者への負担を軽減可能な空気調和機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の空気調和機の正面図である。
図2】本開示の空気調和機のブロック図である。
図3】制御装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図4】室内機に備えられるファンの回転速度を説明する図である。
図5】上下風向板の位置を説明する図である。
図6】別の実施形態における空気調和機を構成する室内機の正面図である。
図7図6に示す空気調和機のブロック図である。
図8】除湿時の実行フローを説明するフローチャートである。
図9】別の実施形態における除湿時の実行フローを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本開示を実施するための形態(実施形態と称する)を説明する。以下の一の実施形態の説明の中で、適宜、一の実施形態に適用可能な別の実施形態の説明も行う。本開示は以下の実施形態に限られず、異なる実施形態同士を組み合わせたり、本開示の効果を著しく損なわない範囲で任意に変形したりできる。また、同じ部材については同じ符号を付すものとし、重複する説明は省略する。更に、同じ機能を有するものは同じ名称を付すものとする。図示の内容は、あくまで模式的なものであり、図示の都合上、本開示の効果を著しく損なわない範囲で実際の構成から変更したり、図面間で一部の部材の図示を省略したり変形したりすることがある。
【0010】
図1は、本開示の空気調和機400の模式図である。空気調和機400では、例えば暖房運転等の空調運転後、例えば窓等の構造物に結露を発生させる所定条件(後記)を満たしたときに、室内の除湿が行われる。これにより、室内でのカビ、細菌等の微生物の発生を抑制できる。また、所定条件の成否は、例えば室内機100に備えられる制御装置104(図2)によって実行される。従って、使用者が意識することなく除湿が実行され、除湿を行うに際して使用者への負担を軽減できる。
【0011】
除湿の前に行われる空調運転は、暖房運転に限定されず、暖房運転又は送風運転の少なくとも一方である。送風運転時にも除湿は行われず、室内の湿度が上昇し得る。そこで、これらの少なくとも一方の運転後に除湿が行われることで、結露を抑制できる。また、除湿は、例えば、空気調和機400の除湿運転によって実行されてもよく、冷房運転によって実行されてもよい。
【0012】
空気調和機400は、室内に設置される室内機100と、室外に設置される室外機200と、リモコン300とを備える。リモコン300は、冷房運転、暖房運転、除湿運転等の空気調和機400の運転内容を、室内機100に指示するものである。指示は、室内機100の受信部18(例えば赤外線通信ユニット、WiFi等の無線通信ユニット等)を通じて行われる。室内機100と室外機200とは冷媒配管401(図2)を介して接続され、室内機100を構成する熱交換器101(図2)と室外機200を構成する熱交換器204(図2)との間で冷媒が循環される。これにより、冷凍サイクル(不図示)が形成される。冷凍サイクルは、熱交換器101,204(何れも図2)、圧縮機202(図2)及び膨張弁(不図示)を備える。
【0013】
図2は、本開示の空気調和機400のブロック図である。室内機100は、熱交換器101(室内熱交換器)と、ファン102(室内ファン)と、風向板103と、制御装置104と、センサ105と、報知装置106とを備える。熱交換器101への冷媒流制御、ファン102の駆動制御、風向板103の駆動制御、及び報知装置106の駆動制御は、それぞれ制御装置104によって制御される。
【0014】
熱交換器101は、空気調和機400に備えられ、室内機100に吸い込まれた空気を加熱又は冷却することで、室内の空気調和を行う。ファン102は、室内の空気を吸い込むととともに、熱交換器101によって空調された空気を室内に吹き出す。風向板103は、空気調和機400に備えられ、室内機100から室内に空気を吹き出すときの風向を制御する。風向板103は、上下風向板1031及び左右風向板1032を備える。上下風向板1031は、室内機100に備えられ、室内に空気を吹き出すときの上下方向の風向を制御する。左右風向板1032は、室内機100に備えられ、室内に空気を吹き出すときの左右方向の風向を制御する。これらの上下方向及び左右方向は、例えば、室内機100の正面視における上下方向及び左右方向である。センサ105は、室内の温度、及び、室内の湿度を測定する。センサ105は、例えば、温度計及び湿度計である。以下、「室内の温度」を「室温」と略記することがある。
【0015】
報知装置106は、上記除湿を開始するときに使用者に報知する。報知装置106を備えることで、使用者が除湿の開始を把握でき、意図せず冷気が室内機100から吹き出されたときに使用者が驚くことを抑制できる。報知装置106は、例えば、ブザー、発光体(LED等)、表示装置等である。
【0016】
室外機200は、センサ201と、圧縮機202と、ファン203(室外ファン)と、熱交換器204(室外熱交換器)とを備える。圧縮機202の駆動制御、ファン203の駆動制御、及び、熱交換器204への冷媒流制御は、それぞれ制御装置104によって制御される。
【0017】
センサ201は、室外の気温を測定する。以下、「室外の温度」を「外気温」と略記することがある。センサ201は、例えば温度計である。圧縮機202は、熱交換器101,204を少なくとも流れる冷媒を圧縮する。本開示の例では、圧縮機202は、熱交換器101,204等を備える冷凍サイクル(不図示)を流れる冷媒を圧縮する。ファン203は、熱交換器204を流れる冷媒と外気との間での熱交換を促進する。
【0018】
図3は、制御装置104のハードウェア構成を示すブロック図である。制御装置104は、CPU252等のプロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。制御装置104は、例えば、メモリ251、CPU252、記憶装置253(SSD,HDD等)、通信装置254及びI/F255を備える。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、HDDに格納すること以外に、メモリ、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、又は、IC(Integrated Circuit)カード、SD(Secure Digital)カード、DVD(Digital Versatile Disc)等の記録媒体に格納することができる。また、クラウド上に情報を記憶するようにしたり、クラウド上で演算等の処理を行うようにしたりすることもできる。
【0019】
図2に戻って、制御装置104は、空気調和機400に備えられ、空調運転後、少なくとも室外の気温を含む空気条件が所定条件を満たしている場合に室内の除湿を行う。本開示の例では、空気条件は、室内の温度と、室内の湿度と、を更に含む。これにより、上記所定条件の成否を精度よく判断できる。空気条件は、室外の気温、室内の温度、及び室内の湿度以外の条件を含んでもよい。
【0020】
上記所定条件は、室内と室外とを隔てる構造物(内外を隔てる構造物)での前記室内側の表面への結露を発生させる発生条件を含む。これにより、結露が発生しそうな場合には除湿を行うことで、結露を抑制できる。
【0021】
本開示の例において、結露は、室内と室外との温度差(内外の温度差)に起因して生じる。このため、室温及び室内の湿度のみを把握しても、内外を隔てる構造物表面への結露の発生を判断することは難しい。そこで、本開示の例では、センサ201によって外気温を測定し、制御装置104は外気温を判断指標の一部として使用する。これにより、内外を隔てる構造物の室内側表面への結露の発生可能性を予測できる。
【0022】
構造物は、例えば、窓又は金属製の扉の少なくとも一方を含む。これらの構造物では、例えば冬季における室内と室外との温度差に起因して、室内に臨む側の表面に結露が生じ易い。そこで、これらの構造物の少なくとも一方を含むことで、これらの構造物への結露を発生し難くできる。
【0023】
所定条件は、室内の湿度が構造物への結露を発生させる指標となる所定湿度以上か否かの条件を含む。室内の湿度が低ければ内外の温度差が大きくても結露し難いが、湿度が高ければ内外の温度差が小さくても結露し易い。そこで、当該所定湿度に基づいて所定条件の成否を判断することで、結露の発生可能性を予測できる。
【0024】
制御装置104は、室内の気温と室外の気温とに基づき、当該所定湿度を決定する。センサ105,201により測定可能な室温及び外気温に基づいて所定湿度を決定することで、環境によって異なり得る所定湿度を決定できる。室温及び外気温がわかれば、構造物の温度(特に、室内に臨む側の表面の温度(表面温度)。室内の空気と接触する側の面の温度)も例えば計算によって把握できる。このため、決定された構造物の表面温度に対応して、上記所定湿度を例えば計算で決定できる。なお、これらの計算に代えて、例えば、室温、外気温及び所定湿度を関連付けた例えば表、相関等を使用してもよい。
【0025】
制御装置104は、室内の空気の露点温度以下にするように熱交換器101の少なくとも一部(好ましくは全部)の温度を制御することで、室内の除湿を行う。このような温度の熱交換器101に室内空気を接触させることで、室内空気を除湿でき、除湿後の空気を室内に吹き出すことができる。これにより、室内を除湿できる。露点温度は、例えば、センサ105により測定可能な室温と室内の湿度とに基づき計算で決定できる。
【0026】
別の実施形態では、制御装置104は、室外の温度及び室内の温度に基づき、構造物における室内に臨む側の表面の温度(表面温度)を決定する。室温及び外気温が分かれば、上記のように、構造物の表面温度を決定できる。なお、構造物の熱流束等の条件は構造物によって異なり得るが、空気調和機400が設置される室内と室外とを隔てる構造物の熱流束は大きく異ならないため、ある程度の精度を有して、構造物の表面温度を決定できる。
【0027】
また、この実施形態において、上記所定条件は、決定した構造物の温度が室内の空気の露点温度以下である条件を含む。構造物の表面温度が露点温度以下であれば、構造物に接触する室内空気が露点温度以下にまで、構造物表面で冷却される。この結果、構造物表面で結露が生じる。そこで、このような所定条件を使用することで、構造物での結露可能性を予測できる。
【0028】
図2に示す実施形態に戻り、制御装置104は、上記空調運転の終了のときにおける上記空気条件に基づき、上記所定条件の成否を判断する。空調運転中には空気条件が変わり得る。更には、空調運転の中でも例えば暖房運転等を終了させた後、室温が低下するときに特に結露が生じ易い。そこで、空調運転の終了のときにおける空気条件に基づくことで、空調運転終了後の結露の可能性を予測できる。
【0029】
ここでいう「空調運転の終了のとき」は、例えばリモコン300(図1)を通じた使用者による空調運転終了の操作(例えば操作ボタンの押下)の時である。ただし、厳密にこの時に限定されず、例えば数分程度であれば、空気条件は大きく変わらないことから、空調運転終了の操作が行われる数秒~数分前の空気条件が使用されてもよい。
【0030】
図4は、室内機100(図2)に備えられるファン102(図2)の回転速度を説明する図である。ファン102は、時刻t0から時刻t3迄の室内機100の運転中、最小回転速度R0と最大回転速度R1との間の回転速度で駆動する。最小回転速度R0は、室内機100の運転時にファン102を回転させるときに可能なファン102の回転速度である。最大回転速度R1は、室内機100の運転時にファン102を回転させるときに可能なファン102の回転速度である。なお、室内機100の運転中、例えば室温が設定温度に維持されているとき等、ファン102の回転を停止(即ち回転速度が0)させてもよい。この場合においても、最小回転速度R0は、設計、設定等によって決定される、あくまでファン102の回転時における最小の回転速度である。
【0031】
最小回転速度R0及び最大回転速度R1は、同じ運転モードにおける速度に限定されない。従って、室内機100が、冷房運転、除湿運転及び暖房運転の3つの運転モードを有する場合、例えば最小回転速度R0は、冷房運転、除湿運転及び暖房運転の夫々の運転モードにおける最小回転速度のうち、最も小さい回転速度である。また、例えば最大回転速度R1は、冷房運転、除湿運転及び暖房運転の夫々の運転モードにおける最大回転速度のうち、最も大きい回転速度である。
【0032】
図4では、説明の簡略化のために、最小回転速度R0及び最大回転速度R1が暖房運転における回転速度として例示する。時刻t0で運転が開始されると、ファン102は最大回転速度R1で駆動する。これにより、速やかに室温が昇温する。時刻t1で室温が設定温度に至ると、本開示の例では、ファン102は最小回転速度R0で駆動する。これにより、消費電力が削減される。時刻t2で運転停止が指示され、上記所定条件が満たされると、時刻t2から時刻t3で除湿が行われる。
【0033】
制御装置104は、中速回転速度以下になるように、ファン102を回転させながら除湿を行う。本開示の例では、制御装置104は、最小回転速度R0と最大回転速度R1との中間の回転速度R2以下になるように、ファン102を回転させながら除湿を行う。除湿中、回転速度は図示の例では一定であるが、後記のように変化してもよい。除湿時、熱交換器101(図2)の温度が低温になるため、室内に吹き出される空気も低温である。特に、結露抑制のための除湿は例えば冬季に行われるため、冬季に低温の空気(冷気)が室内に吹き出されると使用者に不快感を与え得る。そこで、使用者に与える不快感を低減するために、ファン102の回転速度が中速回転速度以下、例えば回転速度R2以下に制御される。これにより、冷気の吹き出しを控えめにして、除湿時に与える使用者への不快感を低減できる。
【0034】
図5は、上下風向板1031の位置を説明する図である。上記図4を参照し説明したように、除湿中には使用者に不快感を与え得る。そこで、除湿中、使用者に冷気ができるだけ当たらないように、上下風向板1031の角度が制御される。
【0035】
上下風向板1031は、時刻t0(図4)から時刻t3(図4)迄の室内機100の運転中、向き31と向き33との間の向きになるように、回動する。向き31は、室内機100の運転時に最も上側に開いたときの向きである。向き33は、室内機100の運転時に最も下側に開いたときの向きである。上下風向板1031は、図示の例では、背面側の回動軸(不図示)を軸中心に回動する。
【0036】
向き31,33は、同じ運転モードにおける向きに限定されない。従って、室内機100が、冷房運転、除湿運転及び暖房運転の3つの運転モードを有する場合、例えば向き31は、冷房運転、除湿運転及び暖房運転の夫々の運転モードにおける最も上側に開いたときの向きのうち、最も上側の向きである。また、例えば向き33は、冷房運転、除湿運転及び暖房運転の夫々の運転モードにおける最も下側に開いたときの向きのうち、最も下側の向きである。図5では、説明の簡略化のために、向き31,33は、同一の運転モードにおける向きとして例示する。また、向きは、例えば、上下風向板1031の前端近傍の上面(気流が生じる面)の接線と水平方向とのなす角度として定義できる。
【0037】
制御装置104は、中間よりも上向きになるように、上下風向板1031の向きを制御して上記除湿を行う。本開示の例では、制御装置104は、向き31と向き33との中間の向き32よりも上向きになるように、上下風向板1031の向きを制御して上記除湿を行う。従って、上下風向1031の向きが向き31と向き32との間にある状態で、除湿が行われる。除湿中、向きは本開示の例では一定であるが、変化してもよい。このような向きの制御により、できるだけ室内の上側に冷気を吹き出すようにして、使用者にあたり難くできる。この結果、除湿時に与える使用者への不快感を低減できる。また、水蒸気は空気よりも軽いため、室内の上方に向かい易い。そこで、除湿された空気を室内の上方に吹き出すことで、水蒸気を多く含む室内上方の空気を速やかに入れ替えて、例えば室内上方での結露を抑制できる。
【0038】
図6は、別の実施形態における空気調和機400を構成する室内機100の正面図である。空気調和機400は、図示の例では室内機100に、室内に存在する人の位置を検出する検出機構107を備える。検出機構107は例えばカメラであり、カメラにより撮影された画像、映像等に基づき、室内の人の位置を検知できる。検出機構107は、更に、人数、活動量、窓、家具等の構造物の位置を検出してもよい。人以外の構造物に冷気を直接吹き付けないようにすれば、構造物表面での急冷に起因する構造物表面での結露の発生を抑制できる。
【0039】
図7は、上記図6に示す空気調和機400のブロック図である。検出機構107によって撮影された画像、映像等は、制御装置104に入力される。制御装置104では、入力された画像、映像等に基づき、室内の人の位置を検出する。制御装置104は、検出機構107によって検出された人の位置を避けるように風向板103を制御して除湿を行う。このようにすることで、冷気を使用者にあたり難くでき、除湿時に与える使用者への不快感を低減できる。
【0040】
なお、図6及び図7に示す実施形態において、人の存在が検知されていないときのファン102の回転速度を、人の存在が検知された場合のファン102を回転速度よりも速くしてもよい。ファン102の回転速度を速くすることで速やかに室内を除湿でき、結露の発生を効果的に抑制できる。
【0041】
図2に示す実施形態に戻り、制御装置104は、除湿中の湿度の低下速度が所定速度以下の場合に、圧縮機202の回転速度を、低下速度が所定速度以下と判断したときの回転速度よりも速くする。湿度の低下速度が所定速度以下の場合には除湿が不十分であると考えられる。そこで、圧縮機202の回転速度を速めることで、除湿能力を高め、後記終了条件を満たす前に十分な除湿を実行できる。
【0042】
湿度の低下速度は、例えば、単位時間当たりの湿度の低下度合いに基づいて決定できる。また、所定速度は、例えば、上記終了条件に含まれる所定時間内に湿度を上記所定湿度に迄十分に完了できる程度の速度である。所定速度は、決定された上記所定湿度と実際の湿度との差分に基づき、制御装置104が例えば計算によって決定できる。
【0043】
制御装置104は、所定の終了条件を満たしたときに、室内の除湿を終了する。終了条件は、室内の除湿を開始してから所定時間経過後、又は、室内の除湿を開始してから、室内の湿度が構造物への結露を発生させる指標となる所定湿度以下に至った時、の少なくとも一方を含む。
【0044】
これらのうち、室内の除湿を開始してから所定時間経過後に終了することで、除湿しない場合と比べて結露し難くできる。所定時間は、室内機100が設置される部屋の広さに応じて予めシミュレーション等によって決定すればよく、通常設置される部屋の広さを十分に除湿可能な時間以上にすることが好ましく、例えば20分以上2時間以下、好ましくは30分以上1時間以下である。ただし、所定時間はこれらの数値範囲に限定されない。また、所定湿度に至った時に終了することで、結露し難くできる。所定湿度は、上記のように、室温及び外気温に基づき決定できる。
【0045】
図8は、除湿時の実行フローを説明するフローチャートである。図8及び後記図9に示すフローは、制御装置104(図2)によって実行できる。従って、適宜図2を参照しながら、図8及び図9の説明を行う。なお、図8及び図9は、室内の湿度を下げるときの実行フローのあくまで一例であり、湿度を下げるときのフローは、図8及び図9の例に限定されない。
【0046】
リモコン300(図1)等を通じた運転停止の指示により、制御装置104が運転停止信号を受け付けると、図8に示す実行フローが開始される。制御装置104は、センサ105,201により、空気条件に含まれる外気温、室温及び室内の湿度を測定する(ステップS1)。制御装置104は、構造物が結露する所定湿度を決定する(ステップS2)。ここでいう所定湿度は、上記図2等を参照して説明した所定湿度と同義である。制御装置104は、上記所定条件の一例として、室内の湿度が所定湿度以上であるか否かを判断する(ステップS3)。所定湿度以上ではない場合(No)、制御装置104は空気調和機400の運転を停止する(ステップS7)。一方で、所定湿度以上の場合(Yes)、制御装置104は、室内の湿度を下げる運転、即ち除湿を開始する(ステップS4)。
【0047】
除湿開始後、制御装置104は常時又は所定時間ごとに室内の湿度を測定し、室内の湿度が所定湿度に到達していないか否かを判断する(ステップS5)。到達した場合(No)、制御装置104は、除湿開始から第1所定時間(所定時間の一例)が経過したか否かを判断する(ステップS6)。第1所定時間は、除湿を行うときの運転最小時間(最短時間)である。除湿時間の好適時間が上記のように例えば20分以上2時間以上である場合、第1所定時間は20分である。経過していなければ(No)、上記ステップS4以降が再度行われ、経過していれば(Yes)、制御装置104は除湿を終了し、空気調和機400の運転を停止する(ステップS8)。
【0048】
一方で、ステップS5において未到達の場合(Yes)、制御装置104は、除湿開始から第2所定時間が経過したか否かを判断する(ステップS7)。第2所定時間(所定時間の一例)は、除湿を行うときの運転最大時間(最長時間)である。除湿時間の好適時間が上記のように例えば20分以上2時間以上である場合、第2所定時間は2時間である。未経過であれば(No)、制御装置104はステップS4以降を繰り返す。一方で、経過すれば(Yes)、制御装置104は除湿を終了し、空気調和機400の運転を停止する(ステップS8)。
【0049】
図9は、別の実施形態における除湿時の実行フローを説明するフローチャートである。制御装置104は、上記ステップS2(図8)と同様に所定湿度を決定する(ステップS11)。制御装置104は、ファン102,203及び圧縮機202を所定速度で駆動させる(ステップ12)。制御装置104は、センサ105により室内の湿度を測定する(ステップS13)。制御装置104は、上記図2を参照しながら説明した終了条件を満たすか否かを判断する(ステップS14)。終了条件を満たす場合(No)、制御装置104は、上記ステップS7(図8)と同様にして除湿を終了し、空気調和機400の運転を停止する(ステップS18)。
【0050】
一方で、ステップS14で終了条件を満たさない場合(Yes)、制御装置104は、一定時間が経過したか否かを判断する(ステップS15)。ここでいう一定時間は、上記終了条件に含まれる所定時間よりも短い時間であり、例えば、単位時間である。経過していない場合(No)、制御装置104はステップS13以降を繰り返す。経過していれば(Yes)、制御装置104は、ステップS13で測定した湿度に基づき、室内湿度が下がっていないか否かを判断する(ステップS16)。ここでいう下がっていないとは、除湿中の前記湿度の低下速度が所定速度以下の場合である。ここでいう低下速度及び所定速度は、上記図2を参照しながら説明した低下速度及び所定速度と同義である。
【0051】
ステップS16で下がっている場合(No)、制御装置104は、ステップS13以降を繰り返す。一方で、下がらない場合(Yes)、除湿が不十分であると考えられるため、制御装置104は、圧縮機202の回転速度を、ステップS16で「低下速度が所定速度以下」と判断したときの回転速度よりも速くする(ステップS17)。これにより、湿度の低下速度が速くなり、所定湿度低下迄の時間を短縮できる。
【0052】
ステップS17の後、制御装置104は、ステップS13以降を繰り返す。そして、ステップS14において終了条件を満たしたとき、制御装置104は、上記ステップS7(図8)と同様にして除湿を終了し、空気調和機400の運転を停止する(ステップS18)。
【符号の説明】
【0053】
100 室内機
101 熱交換器
102 ファン
103 風向板
1031 上下風向板
1032 左右風向板
104 制御装置
105 センサ
106 報知装置
107 検出機構
18 受信部
200 室外機
201 センサ
202 圧縮機
203 ファン
204 熱交換器
400 空気調和機
401 冷媒配管
R0 最小回転速度
R1 最大回転速度
R2 回転速度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9