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特開2024-34638先行指標算出装置、先行指標算出装置の制御方法及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034638
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】先行指標算出装置、先行指標算出装置の制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/04 20230101AFI20240306BHJP
   G06Q 50/16 20240101ALI20240306BHJP
【FI】
G06Q10/04
G06Q50/16
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139024
(22)【出願日】2022-09-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】506271452
【氏名又は名称】野村不動産投資顧問株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本庄 出
(72)【発明者】
【氏名】小西 秀樹
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA04
5L049CC27
(57)【要約】
【課題】より正確でより先行性のあるオフィス賃貸市況の先行指標を算出する。
【解決手段】オフィス賃貸市況の先行指標を算出する先行指標算出装置であって、オフィス賃貸市況の動向に応じて変化する複数種類の市況データの所定期間毎の集計データを取得する市況データ取得部と、少なくとも一部の前記市況データがオフィス賃貸市況の変化に対してより先行して変化するように、前記少なくとも一部の市況データに対して所定の前処理を実行する前処理実行部と、前記市況データ毎に、各期間の集計データを当該市況データ内での珍しさの度合いに応じたスコアに変換し、前記複数種類の市況データの各期間のスコアから求まる各期間の代表値を、前記先行指標として算出する先行指標算出部と、を備える。
【選択図】図21
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オフィス賃貸市況の先行指標を算出する先行指標算出装置であって、
オフィス賃貸市況の動向に応じて変化する複数種類の市況データの所定期間毎の集計データを取得する市況データ取得部と、
少なくとも一部の前記市況データがオフィス賃貸市況の変化に対してより先行して変化するように、前記少なくとも一部の市況データに対して所定の前処理を実行する前処理実行部と、
前記市況データ毎に、各期間の集計データを当該市況データ内での珍しさの度合いに応じたスコアに変換し、前記複数種類の市況データの各期間のスコアから求まる各期間の代表値を、前記先行指標として算出する先行指標算出部と、
を備える、先行指標算出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の先行指標算出装置であって、
前記複数種類の市況データには、
賃貸オフィスの稼働状況に関する市況データと、賃貸オフィスの契約内容に関する市況データと、賃貸オフィスの経営者が持つ景況感に関する市況データと、が含まれる、
先行指標算出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の先行指標算出装置であって、
前記前処理実行部は、少なくとも一部の前記市況データの各集計データを、それぞれ一定期間前の集計データからの変化量に置き換えることにより前記前処理を実行する、
先行指標算出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の先行指標算出装置であって、
前記前処理実行部は、少なくとも一部の前記市況データの各集計データを、それぞれ所定個数の後方移動平均値に置き換えることにより前記前処理を実行する、
先行指標算出装置。
【請求項5】
請求項1に記載の先行指標算出装置であって、
前記先行指標算出部は、
前記オフィス賃貸市況が好況になるほど前記集計データの値が増大する傾向を有する市況データに対しては、
前記集計データのz値が-1.0未満の場合に、当該集計データのスコアを0とし、
前記集計データのz値が-1.0以上-0.5未満の場合に、当該集計データのスコアを20とし、
前記集計データのz値が-0.5以上0未満の場合に、当該集計データのスコアを40とし、
前記集計データのz値が0以上0.5未満の場合に、当該集計データのスコアを60とし、
前記集計データのz値が0.5以上1.0未満の場合に、当該集計データのスコアを80とし、
前記集計データのz値が1.0以上の場合に、当該集計データのスコアを100とし、
前記オフィス賃貸市況が好況になるほど前記集計データの値が減少する傾向を有する市況データに対しては、
前記集計データのz値が-1.0未満の場合に、当該集計データのスコアを100とし、
前記集計データのz値が-1.0以上-0.5未満の場合に、当該集計データのスコアを80とし、
前記集計データのz値が-0.5以上0未満の場合に、当該集計データのスコアを60とし、
前記集計データのz値が0以上0.5未満の場合に、当該集計データのスコアを40とし、
前記集計データのz値が0.5以上1.0未満の場合に、当該集計データのスコアを20とし、
前記集計データのz値が1.0以上の場合に、当該集計データのスコアを0とする、
先行指標算出装置。
【請求項6】
請求項1に記載の先行指標算出装置であって、
前記先行指標を元に、前記オフィス賃貸市況の局面の切り替わりを判定する市況判定部をさらに備える、先行指標算出装置。
【請求項7】
請求項6に記載の先行指標算出装置であって、
前記市況判定部は、
前記先行指標をなす各期間の代表値のうちの判定対象期間の代表値が所定値以上であり、かつ前記判定対象期間の代表値を含んで過去に連続する所定個数の代表値が増加傾向にある場合に、前記判定対象期間においてオフィス賃貸市況は回復局面に切り替わったと判定し、
前記判定対象期間の代表値が所定値以上であり、かつ前記所定個数の代表値が減少傾向にある場合に、前記判定対象期間においてオフィス賃貸市況は好況局面に切り替わったと判定し、
前記判定対象期間の代表値が所定値未満であり、かつ前記所定個数の代表値が減少傾向にある場合に、前記判定対象期間においてオフィス賃貸市況は後退局面に切り替わったと判定し、
前記判定対象期間の代表値が所定値未満であり、かつ前記所定個数の代表値が増加傾向にある場合に、前記判定対象期間においてオフィス賃貸市況は不況局面に切り替わったと判定する、
先行指標算出装置。
【請求項8】
請求項1に記載の先行指標算出装置であって、
前記複数種類の市況データは、
満室で稼働している賃貸オフィスビルの割合を前記所定期間毎に集計した集計データからなる第1市況データと、
賃貸オフィスビルのネットアブソープションを前記所定期間毎に集計した集計データからなる第2市況データと、
賃貸オフィスビルの空室率を前記所定期間毎に集計した集計データからなる第3市況データと、
ビル賃貸業における3か月後の経営見通しを示す不動産業業況指数を前記所定期間毎に集計した集計データからなる第4市況データと、
賃貸オフィスビルの契約賃料単価の変動を表す成約賃料DIを前記所定期間毎に集計した集計データからなる第5市況データと、
賃貸オフィスビルの入居者に付与されたフリーレント期間の平均値を前記所定期間毎に集計した集計データからなる第6市況データと、
の中の少なくとも2つを含む、先行指標算出装置。
【請求項9】
請求項1に記載の先行指標算出装置であって、
前記先行指標算出部は、前記複数種類の市況データのスコアの各期間の平均値を、前記各期間の代表値として算出する、先行指標算出装置。
【請求項10】
オフィス賃貸市況の先行指標を算出する先行指標算出装置の制御方法であって、
前記先行指標算出装置が、
オフィス賃貸市況の動向に応じて変化する複数種類の市況データの所定期間毎の集計データを取得し、
少なくとも一部の前記市況データがオフィス賃貸市況の変化に対してより先行して変化するように、前記少なくとも一部の市況データに対して所定の前処理を実行し、
前記市況データ毎に、各期間の集計データを当該市況データ内での珍しさの度合いに応じたスコアに変換し、前記複数種類の市況データの各期間のスコアから求まる各期間の代表値を、前記先行指標として算出する、先行指標算出装置の制御方法。
【請求項11】
コンピュータに、オフィス賃貸市況の先行指標を算出させるためのプログラムであって、
前記コンピュータに、
オフィス賃貸市況の動向に応じて変化する複数種類の市況データの所定期間毎の集計データを取得する手順と、
少なくとも一部の前記市況データがオフィス賃貸市況の変化に対してより先行して変化するように、前記少なくとも一部の市況データに対して所定の前処理を実行する手順と、
前記市況データ毎に、各期間の集計データを当該市況データ内での珍しさの度合いに応じたスコアに変換し、前記複数種類の市況データの各期間のスコアから求まる各期間の代表値を、前記先行指標として算出する手順と、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先行指標算出装置、先行指標算出装置の制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
賃貸オフィスビル市場の景況感を表すオフィス賃貸市況は、景気の判断材料の一つとして重要である。このため、オフィス賃貸市況に関する様々なレポートやデータが日々各所から公開されている。
【0003】
これらのレポートやデータでは、賃貸オフィスビルの空室率に着目してオフィス賃貸市況を分析しているケースが多いが、その他にも募集賃料やオフィスビルの新規着工件数などに着目して分析しているケースもある。またオフィス賃貸市況の今後の見通しを行う場合には、過去から現在に至るデータのトレンド(上昇傾向、下降傾向など)を見て判断していることが多い。
【0004】
このような中、オフィス賃貸市況と同様に景気の影響を受けて変動する海運市況を予測する技術が開発されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-179354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、空室率等のデータのトレンドを見てオフィス賃貸市況の見通しを行う場合は、トレンドの転換を予見することは困難であり、長期の見通しも難しい。
【0007】
一方で、例えば新規オフィスビルの開発プロジェクトなどのように、プロジェクトの開始から終了までが長期に亘るような場合があり、より早い段階で将来のオフィスビル賃貸市況の動向を見通したいニーズがある。また、オフィスビルへの投資を行う投資家やオフィスビルに入居するテナントにとっても同様であり、オフィス賃貸市況の今後をトレンドの転換を含め長期的な視点で見通しておくことは重要である。
【0008】
本発明はこのような課題を鑑みてなされたものであり、より正確でより先行性のあるオフィス賃貸市況の先行指標を算出可能な先行指標算出装置、先行指標算出装置の制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態に係る先行指標算出装置は、オフィス賃貸市況の先行指標を算出する先行指標算出装置であって、オフィス賃貸市況の動向に応じて変化する複数種類の市況データの所定期間毎の集計データを取得する市況データ取得部と、少なくとも一部の前記市況データがオフィス賃貸市況の変化に対してより先行して変化するように、前記少なくとも一部の市況データに対して所定の前処理を実行する前処理実行部と、前記市況データ毎に、各期間の集計データを当該市況データ内での珍しさの度合いに応じたスコアに変換し、前記複数種類の市況データの各期間のスコアから求まる各期間の代表値を、前記先行指標として算出する先行指標算出部と、を備える。
【0010】
その他、本願が開示する課題、及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄の記載、及び図面の記載等により明らかにされる。
【発明の効果】
【0011】
より正確でより先行性のあるオフィス賃貸市況の先行指標を算出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】先行指標算出装置のハードウェア構成を示す図である。
図2】先行指標算出装置の記憶装置を示す図である。
図3】第1オフィスデータ管理テーブルを示す図である。
図4】第2オフィスデータ管理テーブルを示す図である。
図5】第3オフィスデータ管理テーブルを示す図である。
図6】第4オフィスデータ管理テーブルを示す図である。
図7】第5オフィスデータ管理テーブルを示す図である。
図8】第6オフィスデータ管理テーブルを示す図である。
図9】先行指標管理テーブルを示す図である。
図10】先行指標算出装置によって算出された先行指標の例を示す図である。
図11】オフィスデータの選定プロセスを示す図である。
図12】各オフィスデータに行う前処理の検証結果を示す図である。
図13】各オフィスデータに前処理を行うことによる影響を示す図である。
図14】第1オフィスデータに対する前処理の検証例を示す図である。
図15】第2オフィスデータに対する前処理の検証例を示す図である。
図16】第3オフィスデータに対する前処理の検証例を示す図である。
図17】第4オフィスデータに対する前処理の検証例を示す図である。
図18】第5オフィスデータに対する前処理の検証例を示す図である。
図19】第6オフィスデータに対する前処理の検証例を示す図である。
図20】先行指標算出装置の機能構成を示す図である。
図21】先行指標算出装置によって算出された先行指標を用いた市況分析例を示す図である。
図22】先行指標算出装置によって算出された先行指標を用いて市況の局面判断を行う様子を示す図である。
図23】先行指標算出装置によって算出された先行指標を用いた市況分析例を示す図である。
図24】先行指標算出装置によって算出された先行指標の検証例を示す図である。
図25】先行指標算出装置による処理の流れを示すフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。以下、本発明をその一実施形態に即して添付図面を参照しつつ説明する。
【0014】
==先行指標算出装置==
図1に、本発明の一実施形態に係る先行指標算出装置200のハードウェア構成を示す。先行指標算出装置200は、オフィス賃貸市況の先行指標(以下、Office-RISMとも記す)を算出するパソコンやサーバ、スマートフォン、タブレット等の情報処理装置である。
【0015】
先行指標算出装置200は、所定期間毎(本実施形態では3か月ごと)に集計されたオフィス賃貸市況に関する複数種類(本実施形態では6種類)の市況データを用いることで、上述したオフィス賃貸市況の先行指標(Office-RISM)を算出する。
【0016】
この先行指標の作成手順や正確性及び先行性等の詳細ついては後述するが、例えば図21に示すように、オフィス賃貸市況のベンチマークの一つである三鬼商事株式会社が公表している都心5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区、以下所定地域とも記す)の平均募集賃料の動向と比較してほぼ正確に2年~5年程度の先行性が確認できる。
【0017】
このように、本実施形態に係る先行指標算出装置200によれば、より正確でより先行性のあるオフィス賃貸市況の先行指標(Office-RISM)を算出することが可能となる。
【0018】
<ハードウェア構成>
図1に戻って、先行指標算出装置200は、CPU(Central Processing Unit)210、メモリ220、通信装置230、記憶装置240、入力装置250、出力装置260、及び記録媒体読取装置270を備えて構成される。
【0019】
記憶装置240は、CPU210によって実行される各種のプログラムやデータを格納する。そしてこれらのプログラムやデータがメモリ220に読み出されてCPU210によって実行あるいは処理されることにより、先行指標算出装置200の各種機能が実現される。
【0020】
ここで、記憶装置240は例えばハードディスクやSSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等の不揮発性の記憶装置である。
【0021】
記憶装置240には、図2に示すように先行指標算出装置制御プログラム700、第1オフィスデータ管理テーブル610、第2オフィスデータ管理テーブル620、第3オフィスデータ管理テーブル630、第4オフィスデータ管理テーブル640、第5オフィスデータ管理テーブル650、第6オフィスデータ管理テーブル660、先行指標管理テーブル670が記憶されている。
【0022】
記録媒体読取装置270は、CDやDVD、SDカード等の記録媒体800に記録された先行指標算出装置制御プログラム700やデータを読み取り、記憶装置240に格納する。
【0023】
通信装置230は、ネットワーク500を介して、不図示の他の情報処理装置と通信可能に接続され、先行指標算出装置制御プログラム700や各種データの授受を行う。例えば他のコンピュータに上述した先行指標算出装置制御プログラム700や各種データを格納しておき、先行指標算出装置200がこのコンピュータから先行指標算出装置制御プログラム700やデータをダウンロードするようにすることができる。
【0024】
入力装置250は、先行指標算出装置200のオペレータによるコマンドやデータの入力を受け付ける各種ボタンやスイッチ、マウス、キーボードなどの装置である。
【0025】
出力装置260は、例えばディスプレイなどの表示装置、スピーカなどの装置である。
【0026】
またネットワーク500は、インターネットやLAN(Local Area Network)、電話網等の各種の情報通信網である。
【0027】
なお、先行指標算出装置200は、1台の情報処理装置で構成されてもよいし複数台の情報処理装置で構成されてもよい。また先行指標算出装置200は、仮想マシンやクラウドコンピュータであってもよい。
【0028】
<第1オフィスデータ管理テーブル>
記憶装置240に記憶される第1オフィスデータ管理テーブル610を図3に示す。第1オフィスデータ管理テーブル610は、Office-RISMを算出するために用いられる6つの市況データの一つである第1オフィスデータ(第1市況データとも記す)を記憶するテーブルである。
【0029】
第1オフィスデータは、例えば都心5区(所定地域)内の賃貸オフィスビルのうち、満室で稼働している賃貸オフィスビルの割合(満室率)を3か月ごとに集計した集計データからなる。なお賃貸オフィスビルの満室率は、三鬼商事株式会社が公表している空室のある賃貸オフィスビルの比率(%)を100(%)から減じることにより算出している。
【0030】
賃貸オフィスビルの満室率は、賃貸オフィスの稼働状況に関する市況データであり、オフィス賃貸市況が好況になるほど値が増大する傾向を有する。このため、賃貸オフィスビルの満室率は、オフィス賃貸市況の動向に沿って増加あるいは減少する傾向がある。
【0031】
(A)欄には、3か月ごとの各期間の末日が記載されている。図3に示す例では、最古の期間は2000年第1四半期(末日が2000年3月31日)であり、最新の期間は、2022年第1四半期(末日が2022年3月31日)である。
【0032】
(B)欄には、三鬼商事株式会社が公表している都心5区(所定地域)内の空室のある賃貸オフィスビルの比率(%)を3か月ごとに集計した各集計データが記載されている。
【0033】
(C)欄には、(B)欄の値を100から減じることにより、都心5区(所定地域)内の賃貸オフィスビルの満室率を3か月ごとに集計した各集計データが記載されている。
【0034】
(D)欄には、(C)欄に記載されている各集計データをそれぞれ一定期間前(本実施形態では4四半期前)の集計データからの変化量に置き換えた値が記載されている。
【0035】
(E)欄には、(D)欄に記載された集計データの平均値(m1)から1.0×標準偏差(σ1)を減じた値(m1-σ1)が記載されている(z値=-1に相当)。図3に示す例では「-7.9」である。このため、(D)欄に記載されている集計データが「-7.9」よりも小さければ、その集計データは、統計上、平均値(m1)から標準偏差1つ分(σ1)を超えて小さいことがわかる。なお、図3の(L)欄及び(M)欄に記載されているように、集計データの平均値(m1)は0.09であり、標準偏差(σ1)は7.96である。
【0036】
(F)欄には、(D)欄に記載された集計データの平均値から0.5×標準偏差を減じた値(m1-0.5×σ1)が記載されている(z値=-0.5に相当)。
【0037】
(G)欄には、(D)欄に記載された集計データの平均値(m1)が記載されている(z値=0に相当)。
【0038】
(H)欄には、(D)欄に記載された集計データの平均値に0.5×標準偏差を加えた値(m1+0.5×σ1)が記載されている(z値=0.5に相当)。
【0039】
(I)欄には、(D)欄に記載された集計データの平均値に1.0×標準偏差を加えた値(m1+σ1)が記載されている(z値=1に相当)。
【0040】
(J)欄には、(D)欄に記載された集計データを、当該市況データ内(第1オフィスデータ内)での珍しさの度合いに応じて正規化することにより得られるスコアが記載されている。
【0041】
本実施形態では、集計データの値が「m1-σ1」未満(z値が-1.0未満)の場合にスコア=0とし、「m1-σ1」以上「m1-0.5×σ1」未満(z値が-1.0以上-0.5未満)の場合にスコア=20とし、「m1-0.5×σ1」以上「m1」未満(z値が-0.5以上0未満)の場合にスコア=40とし、「m1」以上「m1+0.5×σ1」未満(z値が0以上+0.5未満)の場合にスコア=60とし、「m1+0.5×σ1」以上「m1+σ1」未満(z値が+0.5以上+1未満)の場合にスコア=80とし、「m1+σ1」以上(z値が+1.0以上)の場合にスコア=100としている。
【0042】
このような態様により、(D)欄の各集計データを珍しさの度合いに応じて0点から100点の範囲に正規化することができる。
【0043】
これらのスコアは、オフィス賃貸市況が上昇あるいは下落に向かう強さを示唆する。例えば第1オフィスデータのスコアが100点である期間は、その期間の集計データ(満室率)が統計的に標準偏差1つ分以上の珍しさで大きな値であることを意味するため、オフィス賃貸市況が上昇する強さがそれだけ強いことを示唆する。逆に第1オフィスデータのスコアが0点である期間は、その期間の集計データが統計的に標準偏差1つ分以上の珍しさで小さな値であることを意味するため、オフィス賃貸市況が下落に向かう強さがそれだけ強いことを示唆する。
【0044】
(K)欄は、(J)欄を1列に集約して記載したものである。
<第2オフィスデータ管理テーブル>
【0045】
続いて、記憶装置240に記憶される第2オフィスデータ管理テーブル620を図4に示す。第2オフィスデータ管理テーブル620は、Office-RISMを算出するために用いられる6つの市況データの一つである第2オフィスデータ(第2市況データとも記す)を記憶するテーブルである。
【0046】
第2オフィスデータは、例えば三幸エステート株式会社が公表している都心5区(所定地域)内の賃貸オフィスビルのネットアブソープションを3か月ごとに集計した集計データからなる。ネットアブソープションは、期間毎に「竣工済みビルの期初の募集面積+新規供給面積(期間中に竣工した新築ビルの貸付総面積)-竣工済みビルの期末の募集面積」を計算して得られる値であり、期間内のオフィス需要面積の増減を表す。
【0047】
ネットアブソープションは、賃貸オフィスの稼働状況に関する市況データであり、オフィス賃貸市況が好況になるほど値が増大する傾向がある。このため、ネットアブソープションは、オフィス賃貸市況の動向に沿って増加あるいは減少する傾向がある。
【0048】
(A)欄には、3か月ごとの各期間の末日が記載されている。図4に示す例では、最古の期間は2000年第1四半期(末日が2000年3月31日)であり、最新の期間は、2022年第1四半期(末日が2022年3月31日)である。
【0049】
(B)欄には、三幸エステート株式会社が公表している都心5区(所定地域)内のネットアブソープションを3か月ごとに集計した各集計データが記載されている。
【0050】
(C)欄には、(B)欄に記載されている各集計データをそれぞれ所定個数(本実施形態では2個)の後方移動平均値に置き換えた値が記載されている。つまり、(C)欄の各集計データは、(B)欄の集計データの6か月後方移動平均となっている。
【0051】
(D)欄には、(C)欄に記載された集計データの平均値(m2)から1.0×標準偏差(σ2)を減じた値(m2-σ2)が記載されている(z値=-1に相当)。図4に示す例では「-13604」である。このため、(C)欄に記載されている集計データが「-13604」よりも小さければ、その集計データは、統計上、平均値(m2)から標準偏差1つ分(σ2)を超えて小さいことがわかる。なお、図4の(K)欄及び(M)欄に記載されているように、集計データの平均値(m2)は42499であり、標準偏差(σ2)は56103である。
【0052】
(E)欄には、(C)欄に記載された集計データの平均値から0.5×標準偏差を減じた値(m2-0.5×σ2)が記載されている(z値=-0.5に相当)。
【0053】
(F)欄には、(C)欄に記載された集計データの平均値(m2)が記載されている(z値=0に相当)。
【0054】
(G)欄には、(C)欄に記載された集計データの平均値に0.5×標準偏差を加えた値(m2+0.5×σ2)が記載されている(z値=0.5に相当)。
【0055】
(H)欄には、(C)欄に記載された集計データの平均値に1.0×標準偏差を加えた値(m2+σ2)が記載されている(z値=1に相当)。
【0056】
(I)欄には、(C)欄に記載された集計データを、当該市況データ内(第2オフィスデータ内)での珍しさの度合いに応じて正規化することにより得られるスコアが記載されている。
【0057】
本実施形態では、集計データの値が「m2-σ2」未満(z値が-1.0未満)の場合にスコア=0とし、「m2-σ2」以上「m2-0.5×σ2」未満(z値が-1.0以上-0.5未満)の場合にスコア=20とし、「m2-0.5×σ2」以上「m2」未満(z値が-0.5以上0未満)の場合にスコア=40とし、「m2」以上「m2+0.5×σ2」未満(z値が0以上+0.5未満)の場合にスコア=60とし、「m2+0.5×σ2」以上「m2+σ2」未満(z値が+0.5以上+1未満)の場合にスコア=80とし、「m2+σ2」以上(z値が+1.0以上)の場合にスコア=100としている。
【0058】
このような態様により、(C)欄の各集計データを珍しさの度合いに応じて0点から100点の範囲に正規化することができる。
【0059】
第1オフィスデータの場合と同様に、これらのスコアは、オフィス賃貸市況が上昇あるいは下落に向かう強さを示唆する。例えば第2オフィスデータのスコアが100点である期間は、その期間の集計データ(ネットアブソープション)が統計的に標準偏差1つ分以上の珍しさで大きな値であることを意味するため、オフィス賃貸市況が上昇する強さがそれだけ強いことを示唆する。逆に第2オフィスデータのスコアが0点である期間は、その期間の集計データが統計的に標準偏差1つ分以上の珍しさで小さな値であることを意味するため、オフィス賃貸市況が下落に向かう強さがそれだけ強いことを示唆する。
【0060】
(J)欄は、(I)欄を1列に集約して記載したものである。
<第3オフィスデータ管理テーブル>
【0061】
続いて、記憶装置240に記憶される第3オフィスデータ管理テーブル630を図5に示す。第3オフィスデータ管理テーブル630は、Office-RISMを算出するために用いられる6つの市況データの一つである第3オフィスデータ(第3市況データとも記す)を記憶するテーブルである。
【0062】
第3オフィスデータは、例えば三鬼商事株式会社が公表している都心5区(所定地域)内の賃貸オフィスビルの空室率を3か月毎に集計した集計データからなる。
【0063】
空室率は、賃貸オフィスの稼働状況に関する市況データであり、オフィス賃貸市況が好況になるほど値が減少する傾向がある。このため、空室率は、オフィス賃貸市況の動向に逆行するように増加あるいは減少する傾向がある。
【0064】
(A)欄には、3か月ごとの各期間の末日が記載されている。図5に示す例では、最古の期間は2000年第1四半期(末日が2000年3月31日)であり、最新の期間は、2022年第1四半期(末日が2022年3月31日)である。
【0065】
(B)欄には、三鬼商事株式会社が公表している都心5区(所定地域)内の賃貸オフィスビルの空室率を3か月ごとに集計した各集計データが記載されている。
【0066】
(C)欄には、(B)欄に記載されている各集計データをそれぞれ一定期間前(本実施形態では4四半期前)の集計データからの変化量に置き換えた値が記載されている。
【0067】
(D)欄には、(C)欄に記載された集計データの平均値(m3)から1.0×標準偏差(σ3)を減じた値(m3-σ3)が記載されている(z値=-1に相当)。図5に示す例では「-1.7」である。このため、(C)欄に記載されている集計データが「-1.7」よりも小さければ、その集計データは、統計上、平均値(m3)から標準偏差1つ分(σ3)を超えて小さいことがわかる。なお、図5の(L)欄及び(M)欄に記載されているように、集計データの平均値(m3)は0.047であり、標準偏差(σ3)は1.76である。
【0068】
(E)欄には、(C)欄に記載された集計データの平均値から0.5×標準偏差を減じた値(m3-0.5×σ3)が記載されている(z値=-0.5に相当)。
【0069】
(F)欄には、(C)欄に記載された集計データの平均値(m3)が記載されている(z値=0に相当)。
【0070】
(G)欄には、(C)欄に記載された集計データの平均値に0.5×標準偏差を加えた値(m3+0.5×σ3)が記載されている(z値=0.5に相当)。
【0071】
(H)欄には、(C)欄に記載された集計データの平均値に1.0×標準偏差を加えた値(m3+σ3)が記載されている(z値=1に相当)。
【0072】
(I)欄には、(C)欄に記載された集計データを、当該市況データ内(第3オフィスデータ内)での珍しさの度合いに応じて正規化することにより得られるスコアが記載されている。
【0073】
本実施形態では、集計データの値が「m3-σ3」未満(z値が-1.0未満)の場合にスコア=100とし、「m3-σ3」以上「m3-0.5×σ3」未満(z値が-1.0以上-0.5未満)の場合にスコア=80とし、「m3-0.5×σ3」以上「m3」未満(z値が-0.5以上0未満)の場合にスコア=60とし、「m3」以上「m3+0.5×σ3」未満(z値が0以上+0.5未満)の場合にスコア=40とし、「m3+0.5×σ3」以上「m3+σ3」未満(z値が+0.5以上+1未満)の場合にスコア=20とし、「m3+σ3」以上(z値が+1.0以上)の場合にスコア=0としている。
【0074】
このような態様により、(C)欄の各集計データを珍しさの度合いに応じて0点から100点の範囲に正規化することができる。
【0075】
第1オフィスデータの場合と同様に、これらのスコアは、オフィス賃貸市況が上昇あるいは下落に向かう強さを示唆する。例えば第3オフィスデータのスコアが100点である期間は、その期間の集計データ(空室率)が統計的に標準偏差1つ分以上の珍しさで小さな値であることを意味するため、オフィス賃貸市況が上昇する強さがそれだけ強いことを示唆する。逆に第3オフィスデータのスコアが0点である期間は、その期間の集計データが統計的に標準偏差1つ分以上の珍しさで大きな値であることを意味するため、オフィス賃貸市況が下落に向かう強さがそれだけ強いことを示唆する。
【0076】
(J)欄は、(I)欄を1列に集約して記載したものである。
<第4オフィスデータ管理テーブル>
【0077】
続いて、記憶装置240に記憶される第4オフィスデータ管理テーブル640を図6に示す。第4オフィスデータ管理テーブル640は、Office-RISMを算出するために用いられる6つの市況データの一つである第4オフィスデータ(第4市況データとも記す)を記憶するテーブルである。
【0078】
第4オフィスデータは、例えば一般財団法人土地総合研究所が不動産業の経営者に対して行ったアンケートを元に作成し、3か月ごとに公表している不動産業業況指数のうちのビル賃貸業の3か月後の経営の見通しを示す指数(以下、ビル賃貸業業況指数とも記す)を3か月毎に集計した集計データからなる。
【0079】
ビル賃貸業業況指数は、賃貸オフィスの経営者が持つ景況感に関する市況データであり、オフィス賃貸市況が好況になるほど値が増加する傾向がある。このため、ビル賃貸業業況指数は、オフィス賃貸市況の動向に沿って増加あるいは減少する傾向がある。
【0080】
(A)欄には、3か月ごとの各期間の末日が記載されている。図6に示す例では、最古の期間は2000年第1四半期(末日が2000年3月31日)であり、最新の期間は、2022年第1四半期(末日が2022年3月31日)である。
【0081】
(B)欄には、ビル賃貸業業況指数を3か月ごとに集計した各集計データが記載されている。
【0082】
なお、一般財団法人土地総合研究所の不動産業業況指数は、アンケートが行われた次の四半期の初日付けで公表されているが、本実施形態では、経営者の景況感判断時点により近い値とするために、アンケートが行われた四半期のデータとして(B)欄に記載されている。
【0083】
(C)欄には、(B)欄に記載された集計データの平均値(m4)から1.0×標準偏差(σ4)を減じた値(m4-σ4)が記載されている(z値=-1に相当)。図6に示す例では「-26.2」である。このため、(B)欄に記載されている集計データが「-26.2」よりも小さければ、その集計データは、統計上、平均値(m4)から標準偏差1つ分(σ4)を超えて小さいことがわかる。なお、図6の(J)欄及び(K)欄に記載されているように、集計データの平均値(m4)は-8.8であり、標準偏差(σ4)は17.34である。
【0084】
(D)欄には、(B)欄に記載された集計データの平均値から0.5×標準偏差を減じた値(m4-0.5×σ4)が記載されている(z値=-0.5に相当)。
【0085】
(E)欄には、(B)欄に記載された集計データの平均値(m4)が記載されている(z値=0に相当)。
【0086】
(F)欄には、(B)欄に記載された集計データの平均値に0.5×標準偏差を加えた値(m4+0.5×σ4)が記載されている(z値=0.5に相当)。
【0087】
(G)欄には、(B)欄に記載された集計データの平均値に1.0×標準偏差を加えた値(m4+σ4)が記載されている(z値=1に相当)。
【0088】
(H)欄には、(B)欄に記載された集計データを、当該市況データ内(第4オフィスデータ内)での珍しさの度合いに応じて正規化することにより得られるスコアが記載されている。
【0089】
本実施形態では、集計データの値が「m4-σ4」未満(z値が-1.0未満)の場合にスコア=0とし、「m4-σ4」以上「m4-0.5×σ4」未満(z値が-1.0以上-0.5未満)の場合にスコア=20とし、「m4-0.5×σ4」以上「m4」未満(z値が-0.5以上0未満)の場合にスコア=40とし、「m4」以上「m4+0.5×σ4」未満(z値が0以上+0.5未満)の場合にスコア=60とし、「m4+0.5×σ4」以上「m4+σ4」未満(z値が+0.5以上+1未満)の場合にスコア=80とし、「m4+σ4」以上(z値が+1.0以上)の場合にスコア=100としている。
【0090】
このような態様により、(B)欄の各集計データを珍しさの度合いに応じて0点から100点の範囲に正規化することができる。
【0091】
第1オフィスデータの場合と同様に、これらのスコアは、オフィス賃貸市況が上昇あるいは下落に向かう強さを示唆する。例えば第4オフィスデータのスコアが100点である期間は、その期間の集計データ(ビル賃貸業業況指数)が統計的に標準偏差1つ分以上の珍しさで大きな値であることを意味するため、オフィス賃貸市況が上昇する強さがそれだけ強いことを示唆する。逆に第4オフィスデータのスコアが0点である期間は、その期間の集計データが統計的に標準偏差1つ分以上の珍しさで小さな値であることを意味するため、オフィス賃貸市況が下落に向かう強さがそれだけ強いことを示唆する。
【0092】
(I)欄は、(H)欄を1列に集約して記載したものである。
<第5オフィスデータ管理テーブル>
【0093】
続いて、記憶装置240に記憶される第5オフィスデータ管理テーブル650を図7に示す。第5オフィスデータ管理テーブル650は、Office-RISMを算出するために用いられる6つの市況データの一つである第5オフィスデータ(第5市況データとも記す)を記憶するテーブルである。
【0094】
第5オフィスデータは、例えば株式会社ザイマックス不動産総合研究所が公表している都心5区を含む東京23区内の成約賃料DIを3か月毎に集計した集計データからなる。成約賃料DIは、賃貸オフィスビルの契約賃料単価の変動を表す指標であり、オフィスビルごとに、実際に成約した賃料単価を前年の同じビルでの成約賃料単価と比較した上で、上昇したビルの割合から下落したビルの割合を引いたものである。
【0095】
成約賃料DIは、賃貸オフィスの契約内容に関する市況データであり、オフィス賃貸市況が好況になるほど値が増加する傾向がある。このため、成約賃料DIは、オフィス賃貸市況の動向に沿って増加あるいは減少する傾向がある。
【0096】
(A)欄には、3か月ごとの各期間の末日が記載されている。図7に示す例では、最古の期間は2001年第4四半期(末日が2001年12月31日)であり、最新の期間は、2022年第1四半期(末日が2022年3月31日)である。
【0097】
(B)欄には、成約賃料DIを3か月ごとに集計した各集計データが記載されている。
(C)欄には、(B)欄に記載された集計データの平均値(m5)から1.0×標準偏差(σ5)を減じた値(m5-σ5)が記載されている(z値=-1に相当)。図7に示す例では「-32.3」である。このため、(B)欄に記載されている集計データが「-32.3」よりも小さければ、その集計データは、統計上、平均値(m5)から標準偏差1つ分(σ5)を超えて小さいことがわかる。なお、図7の(J)欄及び(K)欄に記載されているように、集計データの平均値(m5)は-0.8であり、標準偏差(σ5)は31.43である。
【0098】
(D)欄には、(B)欄に記載された集計データの平均値から0.5×標準偏差を減じた値(m5-0.5×σ5)が記載されている(z値=-0.5に相当)。
【0099】
(E)欄には、(B)欄に記載された集計データの平均値(m5)が記載されている(z値=0に相当)。
【0100】
(F)欄には、(B)欄に記載された集計データの平均値に0.5×標準偏差を加えた値(m5+0.5×σ5)が記載されている(z値=0.5に相当)。
【0101】
(G)欄には、(B)欄に記載された集計データの平均値に1.0×標準偏差を加えた値(m5+σ5)が記載されている(z値=1に相当)。
【0102】
(H)欄には、(B)欄に記載された集計データを、当該市況データ内(第5オフィスデータ内)での珍しさの度合いに応じて正規化することにより得られるスコアが記載されている。
【0103】
本実施形態では、集計データの値が「m5-σ5」未満(z値が-1.0未満)の場合にスコア=0とし、「m5-σ5」以上「m5-0.5×σ5」未満(z値が-1.0以上-0.5未満)の場合にスコア=20とし、「m5-0.5×σ5」以上「m5」未満(z値が-0.5以上0未満)の場合にスコア=40とし、「m5」以上「m5+0.5×σ5」未満(z値が0以上+0.5未満)の場合にスコア=60とし、「m5+0.5×σ5」以上「m5+σ5」未満(z値が+0.5以上+1未満)の場合にスコア=80とし、「m5+σ5」以上(z値が+1.0以上)の場合にスコア=100としている。
【0104】
このような態様により、(B)欄の各集計データを珍しさの度合いに応じて0点から100点の範囲に正規化することができる。
【0105】
第1オフィスデータの場合と同様に、これらのスコアは、オフィス賃貸市況が上昇あるいは下落に向かう強さを示唆する。例えば第5オフィスデータのスコアが100点である期間は、その期間の集計データ(成約賃料DI)が統計的に標準偏差1つ分以上の珍しさで大きな値であることを意味するため、オフィス賃貸市況が上昇する強さがそれだけ強いことを示唆する。逆に第5オフィスデータのスコアが0点である期間は、その期間の集計データが統計的に標準偏差1つ分以上の珍しさで小さな値であることを意味するため、オフィス賃貸市況が下落に向かう強さがそれだけ強いことを示唆する。
【0106】
(I)欄は、(H)欄を1列に集約して記載したものである。
<第6オフィスデータ管理テーブル>
【0107】
続いて、記憶装置240に記憶される第6オフィスデータ管理テーブル660を図8に示す。第6オフィスデータ管理テーブル660は、Office-RISMを算出するために用いられる6つの市況データの一つである第6オフィスデータ(第6市況データとも記す)を記憶するテーブルである。
【0108】
第6オフィスデータは、例えば株式会社ザイマックス不動産総合研究所が公表している都心5区を含む東京23区内のフリーレント指数を3か月毎に集計した集計データからなる。フリーレント指数は、賃貸オフィスビルの契約時にテナントに付与されたフリーレント期間の平均値を、2003年度を100として正規化したものである。
【0109】
フリーレント指数は、賃貸オフィスの契約内容に関する市況データであり、オフィス賃貸市況が好況になるほど値が減少する傾向がある。このため、フリーレント指数は、オフィス賃貸市況の動向に逆行するように増加あるいは減少する傾向がある。
【0110】
(A)欄には、3か月ごとの各期間の末日が記載されている。図8に示す例では、最古の期間は2002年第1四半期(末日が2002年3月29日)であり、最新の期間は、2022年第1四半期(末日が2022年3月31日)である。
【0111】
(B)欄には、フリーレント指数を3か月ごとに集計した各集計データが記載されている。
【0112】
(C)欄には、(B)欄に記載されている各集計データをそれぞれ所定個数(本実施形態では2個)の後方移動平均値に置き換えた値が記載されている。つまり、(C)欄の各集計データは(B)欄の集計データの6か月後方移動平均となっている。このような態様により、フリーレント指数の値のばらつきを緩和し、フリーレント指数の微妙な動向の変化をより的確に表す集計データを得ることができる。
【0113】
(D)欄には、(B)欄に記載されている各集計データをそれぞれ一定期間前(本実施形態では4四半期前)の集計データからの変化量に置き換えた値が記載されている。
【0114】
(E)欄には、(C)欄に記載されている各集計データをそれぞれ一定期間前(本実施形態では4四半期前)の集計データからの変化量に置き換えた値が記載されている。
【0115】
なお、(D)欄に記載された集計データと、(E)欄に記載された集計データと、を比べると、いずれも(B)欄に記載された集計データ(フリーレント指数)に対して前処理を実施して生成された集計データである点で共通している。しかしながら、前者は、(B)欄のフリーレント指数を直接4半期前からの変化量に置き換えているのに対し、後者は、(B)欄のフリーレント指数を一旦6か月後方移動平均に変換して、フリーレント指数の値のばらつきを軽減した上で、4半期前からの変化量に置き換えている。このため、(E)欄に記載された集計データは、フリーレント指数のわずかな動向変化も的確にとらえていると考えられる。
【0116】
(F)欄には、(D)欄に記載された集計データの平均値(m6)から1.0×標準偏差(σ6)を減じた値(m6-σ6)が記載されている(z値=-1に相当)。図8に示す例では「-0.8」である。このため、(D)欄あるいは(E)欄に記載されている集計データが「-0.8」よりも小さければ、その集計データは、統計上、平均値(m6)から標準偏差1つ分(σ6)を超えて小さいことがわかる。なお、図8の(M)欄及び(N)欄に記載されているように、集計データの平均値(m6)は0.064であり、標準偏差(σ6)は0.87である。
【0117】
(G)欄には、(D)欄に記載された集計データの平均値から0.5×標準偏差を減じた値(m6-0.5×σ6)が記載されている(z値=-0.5に相当)。
【0118】
(H)欄には、(D)欄に記載された集計データの平均値(m6)が記載されている(z値=0に相当)。
【0119】
(I)欄には、(D)欄に記載された集計データの平均値に0.5×標準偏差を加えた値(m6+0.5×σ6)が記載されている(z値=0.5に相当)。
【0120】
(J)欄には、(D)欄に記載された集計データの平均値に1.0×標準偏差を加えた値(m6+σ6)が記載されている(z値=1に相当)。
【0121】
(K)欄には、(E)欄に記載された集計データを、当該市況データ内(第6オフィスデータ内)での珍しさの度合いに応じて正規化することにより得られるスコアが記載されている。
【0122】
本実施形態では、集計データの値が「m6-σ6」未満(z値が-1.0未満)の場合にスコア=100とし、「m6-σ6」以上「m6-0.5×σ6」未満(z値が-1.0以上-0.5未満)の場合にスコア=80とし、「m6-0.5×σ6」以上「m6」未満(z値が-0.5以上0未満)の場合にスコア=60とし、「m6」以上「m6+0.5×σ6」未満(z値が0以上+0.5未満)の場合にスコア=40とし、「m6+0.5×σ6」以上「m6+σ6」未満(z値が+0.5以上+1未満)の場合にスコア=20とし、「m6+σ6」以上(z値が+1.0以上)の場合にスコア=0としている。
【0123】
このような態様により、(E)欄の各集計データを珍しさの度合いに応じて0点から100点の範囲に正規化することができる。
【0124】
第1オフィスデータの場合と同様に、これらのスコアは、オフィス賃貸市況が上昇あるいは下落に向かう強さを示唆する。例えば第6オフィスデータのスコアが100点である期間は、その期間の集計データ(フリーレント指数)が統計的に標準偏差1つ分以上の珍しさで小さな値であることを意味するため、オフィス賃貸市況が上昇する強さがそれだけ強いことを示唆する。逆に第6オフィスデータのスコアが0点である期間は、その期間の集計データが統計的に標準偏差1つ分以上の珍しさで大きな値であることを意味するため、オフィス賃貸市況が下落に向かう強さがそれだけ強いことを示唆する。
【0125】
(L)欄は、(K)欄を1列に集約して記載したものである。
<先行指標管理テーブル>
【0126】
続いて、記憶装置240に記憶される先行指標管理テーブル670を図9に示す。先行指標管理テーブル670は、上述した第1オフィスデータ~第6オフィスデータを用いて算出される先行指標(Office-RISM)を記憶するテーブルである。
【0127】
(A)欄~(F)欄には、2000年第1四半期(末日が2000年3月31日)から2022年第1四半期(末日が2022年3月31日)までの3か月ごとの各期間において算出された第1オフィスデータ~第6オフィスデータの各スコアが記憶されている。
【0128】
(G)欄には、各期間において算出されたスコアの数が記載されている。例えば第1オフィスデータから第6オフィスデータの全てのスコアが揃っている場合は6となる。
【0129】
(H)欄には、各オフィスデータのスコアの各期間の代表値が記載されている。各期間の代表値としては、平均値や最大値、最小値、中央値、最頻値などを採用できるが、本実施形態では平均値を採用している。これらの各期間の代表値が先行指標(Office-RISM)である。これらの代表値を時系列にグラフ上に表示した様子を図10に示す。
【0130】
上述した様に、このOffice-RISMはオフィス賃貸市況の先行指標となっており、図21に示すように、オフィス賃貸市況のベンチマークの一つである三鬼商事株式会社が公表している平均募集賃料の変化に対してほぼ正確に数年程度先行している。このように、Office-RISMを用いることで将来のオフィス賃貸市況の動向を予測することが可能となる。
【0131】
また詳しくは後述するが、図22に示すように、Office-RISMは、オフィス賃貸市況の変動サイクルの局面判断(回復局面、好況局面、後退局面、不況局面)に用いることも可能である。このためOffice-RISMは、オフィス賃貸市況の将来動向の予測に有用なだけでなく、オフィス賃貸市況が現在どの局面にあるのかについて判断する際にも有用な指標となっている。
【0132】
<先行指標算出装置の機能構成>
次に、先行指標算出装置200の機能構成について図20に示す機能構成図を参照しながら説明する。
【0133】
上述したように、先行指標算出装置200は、記憶装置240に記憶されている先行指標算出装置制御プログラム700や各種のデータがメモリ220に読み出されてCPU210によって実行あるいは処理されることにより、先行指標算出装置200としての各種機能を実現する。
【0134】
具体的には、先行指標算出装置200は、市況データ取得部201、前処理実行部202、先行指標算出部203、市況判定部204の各機能を有する。
【0135】
市況データ取得部201は、オフィス賃貸市況の動向に応じて変化する複数種類(本実施形態では6種類)の市況データの所定期間毎(本実施形態では3か月毎)の集計データを取得する。6種類の市況データは、上述した様に第1オフィスデータ~第6オフィスデータである。
【0136】
ところで、より正確でより先行性のあるオフィス賃貸市況の先行指標を算出するためには、数多くの市況データの中からどのような市況データを用いるかは重要である。本実施形態に係る6種類のオフィスデータは、図11に示すようなプロセスを経て選出されたものである。
【0137】
まず、数多くの市況データの中から、GDPや失業率のような、不動産業に限定されない所謂マクロ経済指標を除外することで不動産関連の市況データに絞り込んだ。その上で、その中からオフィス賃貸市況に関連する約50種類の市況データを選出した。このように、マクロ経済指標を除外し、オフィス賃貸市況に関連する市況データに特化することで、例えば近年のテレワークの普及に伴うオフィス需要の低下に見られるように、オフィス賃貸市況の動向が景気の動向と一致しないような場合でも、オフィス賃貸市況の動向を精度よく把握することが可能になっている。
【0138】
次に、オフィス賃貸市況のベンチマークの一つである三鬼商事株式会社が公表している平均募集賃料が前年比もしくは前期比でプラスからマイナス、あるいはマイナスからプラスに変換した時点を特定し、その時点に先行して同様の動きをしている市況データを選別した。
【0139】
そして、これらの市況データの中から特に精度よくオフィス賃貸市況の先行性を示す6種類の市況データを選定した。これが第1オフィスデータ~第6オフィスデータである。その際、これらの市況データには、賃貸オフィスの稼働状況に関する市況データと、賃貸オフィスの契約内容に関する市況データと、賃貸オフィスの経営者が持つ景況感に関する市況データと、のように、複数の異なる観点からオフィス賃貸市況を説明するような市況データが含まれるようにした。このような態様により、オフィス賃貸市況の動向を複数の観点から総合的にとらえることが可能となり、例えば何らかの特殊要因で一部の市況データに例外的な変動が生じても、その影響を最小化することが可能となる。
【0140】
図20に戻って、前処理実行部202は、少なくとも一部の市況データがオフィス賃貸市況の変化に対してより先行して変化するように、この市況データに対して所定の前処理を実行する。
【0141】
例えば、前処理実行部202は、少なくとも一部の市況データの各集計データを、それぞれ一定期間前の集計データからの変化量に置き換える。上述した様に、本実施形態では、第1オフィスデータ(満室稼働ビルの割合)、第3オフィスデータ(空室率)、及び第6オフィスデータ(フリーレント指数)に対してこのような前処理が実施されている。
【0142】
このような態様により、前処理後の各集計データは、前処理前の各集計データがピーク(極大値)やボトム(極小値)に向かう際の変化の強さを表したものになっていると考えられるため、前処理前の市況データの変化をより先行させたデータに変換されたと言える。
【0143】
また前処理実行部202は、例えば、少なくとも一部の市況データの各集計データを、それぞれ所定個数の後方移動平均値に置き換える。上述した様に、本実施形態では、第2オフィスデータ(ネットアブソープション)、第4オフィスデータ(ビル経営者景況感)、及び第6オフィスデータ(フリーレント指数)に対してこのような前処理が実施されている。
【0144】
このような態様により、各期間の集計データのばらつきが緩和され、前処理前の集計データではばらつきの中に埋もれてしまうような市況データのかすかな動向の変化を検出することが可能になるので、市況データの動向変化をより早い段階で検出することが可能となる。
【0145】
ただし、後方移動平均による前処理は、各集計データのばらつきを緩和することはできるが、各集計データが過去の値に引きずられるようになるため、市況データの動向変化を遅延させる効果も有する。そのため、後方移動平均による前処理を行う場合は、これらの影響を考慮した上で、移動平均を行う最適なデータの個数(期間)を決めることが大切である。
【0146】
本実施形態では、図12図19に示したようにして、第1オフィスデータ~第6オフィスデータに対してそれぞれどのような前処理を行うべきかについて検証を行っている。
【0147】
まず図12に、第1オフィスデータ~第6オフィスデータに対して行った検証結果のまとめを示す。
【0148】
本実施形態では、後方移動平均に関しては「時差なし」、「2四半期移動平均」、「3四半期移動平均」(図12には省略)、「4四半期移動平均」について検証を行った。
【0149】
「時差なし」は、後方移動平均の前処理を行わないことを表す。「2四半期移動平均」は、各集計データを3か月前の集計データとの平均値(連続する2個の集計データの平均値)で置き換えることを示す。「3四半期移動平均」は、各集計データを6か月前及び3か月前の集計データとの平均値(連続する3個の集計データの平均値)で置き換えることを示す。「4四半期移動平均」は、各集計データを9か月前、6か月前及び3か月前の集計データとの平均値(連続する4個の集計データの平均値)で置き換えることを示す。
【0150】
また、各集計データを一定期間前の集計データからの変化量に置き換える前処理に関しては、「原数値」、「前期差(比)」、「前年差(比)」について検証を行った。
【0151】
「原数値」は、変化量に置き換える前処理を行わないことを示す。「前期差(比)」は、各集計データを3か月前(四半期前)の集計データからの変化量(あるいは変化率)に置き換えることを示す。「前年差(比)」は、各集計データを12か月前(4四半期前)の集計データからの変化量(あるいは変化率)に置き換えることを示す。
【0152】
そして図12に示す表において、「t」と記載されている欄は、前処理後の各集計データの遅延の程度が許容範囲を超えており、前処理として採用困難であることを示す。図12を見るとわかるように、後方移動平均を行う期間を長くするほど、データの遅行性が大きくなり、いずれの市況データも「t」に分類される傾向が強くなっている。
【0153】
なお、上述した許容範囲の基準は、具体的な数値範囲として定めてもよいし、具体的な数値範囲として定めなくてもよい。後者の場合は、前処理後の各集計データの品質を他の前処理の結果と比較しながら総合的に判断することで、採用可否を判断すればよい。
【0154】
一方、図12において「m」と記載されている欄は、前処理後の各集計データのばらつきの程度が許容範囲を超えており、前処理として採用困難であることを示している。図12を見るとわかるように、各集計データのばらつきは、いずれの市況データにおいても後方移動平均を行う期間が短いほど大きくなるが、中でも、「ネットアブソープション」、「ビル経営者景況感」、「フリーレント指数」の場合は、特にその傾向が強いことが分かる。
【0155】
以上より、6つの市況データのうち、「満室稼働ビル割合」「空室率」「成約賃料DI」の3つについては、後方移動平均は行わず、「ネットアブソープション」、「ビル経営者景況感」、「フリーレント指数」の3つについては、後方移動平均の前処理を実施することとした。その様子を図13に模式的に表す。
【0156】
次に、図14図19を参照しながら、6つの市況データに適用する前処理の内容を検討した際のプロセスを説明する。
【0157】
まず「満室稼働ビル割合」(第1オフィスデータ)については、図12の表に示した各種の前処理を各集計データに対して試行した結果、後方移動平均の前処理はデータの遅延性が許容困難であった。そのため、各集計データを1期前(四半期前)の集計データからの変化量に置き換える前処理(ケースA)と、4期前(前年同期)の集計データからの変化量に置き換える前処理(ケースB)と、が候補に残った。
【0158】
その上で、図14に示すように前処理後の各集計データを見てみると、ケースAの場合は各集計データのばらつきが大きく、オフィス賃貸市況の動向をとらえるという点では許容困難であった。これに対し、ケースBの場合は、各集計データのばらつきが抑制されており、許容可能と判断された。
【0159】
そのため、「満室稼働ビル割合」については、各集計データを4期前の集計データからの変化量に置き換える前処理(ケースB)を採用することとした。
【0160】
「ネットアブソープション」(第2オフィスデータ)についても同様に、図12の表に示した各種の前処理を各集計データに対して試行した。その結果、予測の早さ(先行性)を追求する上で、前処理を行わないケースAと、各集計データを1期前の集計データとの平均値に置き換える前処理を行うケースBと、各集計データを1期前の集計データからの変化量に置き換える前処理を行うケースCと、が候補に残った。
【0161】
その上で、図15に示すように各ケースの集計データを見てみると、ケースAとケースCの場合はいずれも各集計データのばらつきが大きく、オフィス賃貸市況の動向をとらえるという点で許容困難であった。これに対し、ケースBの場合は、各集計データが適度に平準化されており、オフィス賃貸市況の動向をとらえるデータとして有効であることが確認できた。
【0162】
そのため、「ネットアブソープション」については、各集計データを1期前の集計データとの平均値に置き換える前処理(ケースB)を採用することとした。
【0163】
「空室率」(第3オフィスデータ)についても同様に、図12の表に示した各種の前処理を各集計データに対して試行した。その結果、後方移動平均の前処理はデータの遅延性が許容困難であった。そのため、各集計データを1期前の集計データからの変化量に置き換える前処理(ケースA)と、4期前(前年同期)の集計データからの変化量に置き換える前処理(ケースB)と、が候補に残った。
【0164】
その上で図16に示すように各ケースの集計データを見てみると、ケースAの場合、特に0%近辺で変化の傾向を読み取ることが困難なことが確認できた。一方ケースBの場合は、変化の傾向が明確に把握できていることが確認できた。
【0165】
そのため、「空室率」については、4期前(前年同期)の集計データからの変化量に置き換える前処理(ケースB)を採用することとした。
【0166】
「ビル経営者景況感」(第4オフィスデータ)についても同様に、図12の表に示した各種の前処理を各集計データに対して試行した。その結果、前期差や前年差は、変化の傾向が把握困難なため採用困難であった。そのため、前処理を行わないケースAと、各集計データを1期前の集計データとの平均値に置き換える前処理を行うケースBと、が候補に残った。
【0167】
その上で図17に示すように各ケースの集計データを見てみると、ケースAの場合、集計データのばらつきが大きな期間が存在することが確認できた。一方ケースBの場合は、集計データが適度に平準化されており、変化の傾向が明確に把握できていることが確認できた。
【0168】
そのため、「ビル経営者景況感」については、各集計データを1期前の集計データとの平均値に置き換える前処理(ケースB)を採用することとした。
【0169】
「成約賃料DI」(第5オフィスデータ)についても同様に、図12の表に示した各種の前処理を各集計データに対して試行した。その結果、前期差や前年差は、変化の傾向が把握困難なため採用困難であり、後方移動平均の前処理はデータの遅延性が許容困難であった。一方、前処理を行わなくても、図18に示すように、変化の傾向が把握できていることが確認できた。
【0170】
そのため、「成約賃料DI」については、前処理を行わないこととした。
【0171】
「フリーレント指数」(第6オフィスデータ)についても同様に、図12の表に示した各種の前処理を各集計データに対して試行した。その結果、前期差や前年差の前処理を行っても、変化の傾向が把握可能であった。一方、3四半期以上の後方移動平均は、データの遅延性が許容困難であった。そのため、後方移動平均なしで、各集計データを1期前の集計データからの変化量に置き換える前処理(ケースA)と、後方移動平均なしで、各集計データを4期前(前年同期)の集計データからの変化量に置き換える前処理(ケースB)と、ケースAを2四半期後方移動平均と組み合わせるケースCと、ケースBを2四半期後方移動平均と組み合わせるケースDと、が候補に残った。
【0172】
その上で図19に示すように各ケースの集計データを見てみると、ケースA及びケースCの場合、賃料転換点において変化の傾向が読み取れない期間が多いことが確認できた。またケースBについては、一部データのばらつきが大きい結果となっている。これに対し、ケースDの場合は、集計データが適度に平準化されており、変化の傾向が明確に把握できていることが確認できた。
【0173】
そのため「フリーレント指数」については、各集計データを2期移動平均を行って平滑化した後、4期前の集計データからの変化量に置き換える前処理(ケースD)を採用することとした。
【0174】
図20に戻って、先行指標算出部203は、上記6種類の市況データ毎に、各期間の集計データを当該市況データ内での珍しさの度合いに応じたスコアに変換し、これら6種類の市況データの各期間のスコアから求まる各期間の代表値を、先行指標(Office-RISM)として算出する。
【0175】
具体的には、図3図9を参照しながら説明したように、まず各オフィスデータの集計データを、各集計データのz値に応じて0、20、40、60、80、100のいずれかのスコアに置き換える(図3図8)。そして、これらのスコアを3か月の期間毎に平均することで、先行指標(Office-RISM)を算出する(図9)。
【0176】
このような態様により、より正確でより先行性のあるオフィス賃貸市況の先行指標を算出することが可能となる。つまり、本実施形態では、オフィス賃貸市況の動向に応じて変化する複数種類の市況データのうちの少なくとも一部の市況データに対して、より先行して変化を開始するように前処理を実施した上で、各市況データの各期間の集計データを、当該市況データ内での珍しさの度合いに応じて100点満点でスコア化することで正規化し、これらのスコアを期間毎に平均することで先行指標を算出している。これにより、本実施形態により算出される先行指標(Office-RISM)は、オフィス賃貸市況と高い関連性を有する複数種類の市況データに由来することによる正確性と、適切な前処理を行うことによる先行性の促進と、の特徴を兼ね備えたものとなっている。
【0177】
市況判定部204は、上記先行指標を元に、オフィス賃貸市況の局面の切り替わりを判定する。
【0178】
例えば図22に示すように、市況判定部204は、Office-RISMのスコアが50以上であり、かつ、2期連続してOffice-RISMのスコアが上昇している場合に、オフィス賃貸市況が回復局面に切り替わったと判定する。図21に示すグラフでは、2004年~2005年付近、及び、2012年~2013年付近で、確かに平均募集賃料が底を打って上昇に転じており、回復局面に切り替わったことが確認できる。
【0179】
また市況判定部204は、Office-RISMのスコアが50以上であり、かつ、2期連続してOffice-RISMのスコアが下落している場合に、オフィス賃貸市況が好況局面に切り替わったと判定する。図21に示すグラフでは、2006年~2007年付近、及び、2014年~2016年付近で、確かに平均募集賃料が上昇を続けており、好況局面に切り替わったことが確認できる。
【0180】
また市況判定部204は、Office-RISMのスコアが50未満であり、かつ、2期連続してOffice-RISMのスコアが下落している場合に、オフィス賃貸市況が後退局面に切り替わったと判定する。図21に示すグラフでは、2001年~2002年付近、2008年~2009年付近、及び2020年付近で、確かに平均募集賃料が上昇から下落に転じており、後退局面に切り替わったことが確認できる。
【0181】
また市況判定部204は、Office-RISMのスコアが50未満であり、かつ、2期連続してOffice-RISMのスコアが上昇している場合に、オフィス賃貸市況が不況局面に切り替わったと判定する。図21に示すグラフでは、2003年付近、及び2010年~2011年付近で、確かに平均募集賃料が下落を続けており、不況局面に切り替わったことが確認できる。
【0182】
このように、本実施形態に係る先行指標(Office-RISM)を用いることにより、オフィス賃貸市況の局面の切り替わりを的確に判断することが可能となる。
【0183】
なお、図22に示した例では、先行指標(Office-RISM)のスコアが50以上であるか否か、及び2期連続上昇(あるいは下落)しているかによって、オフィス賃貸市況の局面の切り替わりを判定する例を示したが、これらの判定の基準に用いる数値は一例にすぎず、これとは異なる判定の基準が採用されてよい。例えば先行指標の元になる市況データの種類や数が異なる場合には、これとは異なる判定の基準が採用されてよい。
【0184】
そのため、本実施形態に係る市況判定部204の機能をより一般的に説明すると、先行指標をなす各期間のスコアの代表値のうちの判定対象期間の代表値が所定値以上(例えば50以上)であり、かつ判定対象期間の代表値を含んで過去に連続する所定個数(例えば2個)の代表値が増加傾向にある場合に、判定対象期間のオフィス賃貸市況は回復局面に切り替わったと判定し、判定対象期間の代表値が所定値以上であり、かつ所定個数の代表値が減少傾向にある場合に、判定対象期間のオフィス賃貸市況は好況局面に切り替わったと判定し、判定対象期間の代表値が所定値未満であり、かつ所定個数の代表値が減少傾向にある場合に、判定対象期間のオフィス賃貸市況は後退局面に切り替わったと判定し、判定対象期間の代表値が所定値未満であり、かつ所定個数の代表値が増加傾向にある場合に、判定対象期間のオフィス賃貸市況は不況局面に切り替わったと判定する。
【0185】
なお、市況判定部204は、上記いずれかの局面に切り替わった後は、他の局面に切り替わるまで元の局面を維持する。また判定対象期間は、所定期間毎(3か月毎)に到来する各期間のいずれかの期間であればよい(本実施形態では、先行指標が算出されている2000年第1四半期~2022年第1四半期のいずれかの期間)。またオフィス賃貸市況の4局面については、経済学の景気循環の計測に関するA.F.バーンズとW.C.ミッチェルによる定義を基礎としている。
【0186】
==処理の流れ==
次に、本実施形態に係る先行指標算出装置200による処理の流れを、図25に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0187】
まず先行指標算出装置200は、オフィス賃貸市況の動向に応じて変化する複数種類(本実施形態では6種類)の市況データの所定期間毎(本実施形態では3か月毎)の集計データを取得する(S1000)。またこのとき、先行指標算出装置200は、少なくとも一部の市況データに対して、オフィス賃貸市況の変化に対してより先行して変化するように所定の前処理を実行する。
【0188】
次に先行指標算出装置200は、市況データ毎に、各期間の集計データを当該市況データ内での珍しさの度合いに応じたスコアに変換する(S1010~S1030)。具体的には、先行指標算出装置200は、市況データ毎に集計データの平均値及び標準偏差を計算すると共に(S1010)、各集計データが平均値から標準偏差の何倍だけ離れているかを表す指数(例えばz値)と、スコアとの対応付けを行う(S1020)。この対応付けは、本実施形態では、上記指数が「-1未満」、「-1以上-0.5未満」、「-0.5以上0未満」、「0以上0.5未満」、「0.5以上1未満」、「1以上」の各範囲にあるときに、それぞれ、スコアを「0」、「20」、「40」、「60」、「80」、「100」とするか、「100」、「80」、「60」、「40」、「20」、「0」とするかのいずれかとしている。そして先行指標算出装置200は、各集計データのz値に応じて、各集計データをスコアに変換する(S1030)。もちろん、上記のz値とスコアの対応付けは一例であり、他の対応付けでもよい。
【0189】
先行指標算出装置200は、これら複数種類の市況データのスコアの各期間の代表値(本実施形態では平均値)を、先行指標(Office-RISM)として算出する(S1040)。
【0190】
その後、先行指標算出装置200は、この先行指標を用いてオフィス賃貸市況の様々な分析を行うことができる(S1050~S1070)。
【0191】
例えば先行指標算出装置200は、三鬼商事株式会社が公表している平均募集賃料の所定期間毎(例えば3か月ごと)の集計データをオフィス賃貸市況のベンチマークとして取得して(S1050)、平均募集賃料とOffice-RISMとの比較分析や、オフィス賃貸市況の局面判断、オフィス賃料の転換点の把握などを行う(S1060)。
【0192】
図21に、平均募集賃料とOffice-RISMとの比較分析を行った結果を示す。図21を見ると、例えば、Office-RISMが50以上(上昇シグナル点灯)となった後に80付近になると平均募集賃料が上昇に転じ、50未満(下落シグナル点灯)となった後に20付近になると平均募集賃料が下落に転じる傾向が確認できる。
【0193】
また2022年の時点では、平均募集賃料が2020年をピークに下落トレンドに入っており、オフィス賃貸市況が徐々に不況局面に近づく後退局面にあることが分かる。しかし、Office-RISMは2021年付近で底を打って上昇に転じていることから、平均募集賃料は当面下落するものの、上昇に向かう局面変化が予想できる。過去においては、Office-RISMの反転から平均募集賃料が上昇する局面まで2、3年程度を要し、その間に平均募集賃料は約10%程度下落していることから、今後2023年頃まで平均募集賃料が10%程度下落するが、その後上昇トレンドに向かう、というような予想ができる。
【0194】
また図23には、2020年から始まった平均募集賃料の下落局面において、今後どの程度まで下落するかを予測するための分析結果を示す。過去において、平均募集賃料は2002年~2005年の期間と、2008年~2013年の期間に下落しているが、後者の方が下落幅が大きい。そこで、これらの期間においてスコアが「0」となっているオフィスデータの数を集計してみると、2002年~2005年の期間では最大3個(つまり3つのオフィスデータのスコアが「0」)であるが、2008年~2013年の期間では最大6個(すべてのオフィスデータのスコアが「0」)となっている。このことから、同一期間にスコアが「0」となるオフィスデータの数が多いほど、平均募集賃料の下落幅あるいは下落率は大きくなることが予想される。この分析結果を2020年以降の平均募集賃料の下落局面に当てはめてみると、同一期間にスコアが「0」となっているオフィスデータの数は4個であることから、2008年~2013年当時ほどの下落は生じないと予測される。
【0195】
また先行指標算出装置200は、Office-RISMを算出するために採用した複数種類(6種類)のオフィスデータの安定性を検証(累積分析)することもできる(S1070)。図24に示す例では、Office-RISMの各スコアから50を控除し、5で除した数値を2000年の第1四半期を起点に累積して得られた結果が、平均募集賃料を概ねトレースできており、各オフィスデータの安定性を確認することができる。
【0196】
以上、本実施形態に係る先行指標算出装置200、先行指標算出装置200の制御方法及び先行指標算出装置制御プログラム700について詳細に説明したが、本実施形態によれば、より正確でより先行性のあるオフィス賃貸市況の先行指標(Office-RISM)を算出することが可能となる。この先行指標は、例えば図21等に示した様に、2000年~2022年に及ぶ期間の平均募集賃料の上昇及び下落の転換点を過誤なく先行的に示唆できている。
【0197】
また図21から読み取れるように、Office-RISMは、50を上抜けると平均募集賃料の上昇トレンドへの転換を示唆し、50を下抜けると平均募集賃料の下落トレンドへの転換を示唆することから、オフィス賃貸市況のトレンド転換点を察知することも可能である。このため、例えばオフィスビルの取得や売却のタイミング判断や、オフィスビルの賃料交渉等に極めて有用と言える。
【0198】
またOffice-RISMは、一般に公開されている複数種類の市況データを用いて作成されているため、客観的かつ定量的であり、信頼性が高い。そしてこれらの市況データには、不動産業に限定されないマクロ経済指標を含めないようにしているため、例えばコロナ禍によるオフィス賃貸市況への影響も織り込まれており、構造変化の動きも加味したオフィス賃貸市況の予測が可能となっている。
【0199】
またOffice-RISMは、算出手順がシンプルで分かりやすいため、元となる市況データの入れ替えや追加、削除、あるいは前処理の変更なども容易であり、汎用性が高い。
【0200】
このような数多くの優れた特長を有するオフィス賃貸市況の先行指標を用いることにより、オフィス賃貸市況の好不調や方向感を包括的に把握することが可能となる。
【0201】
なお上述した実施の形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【0202】
例えば本実施形態では、第1オフィスデータ~第6オフィスデータの6つの市況データを用いて先行指標(Office-RISM)を算出しているが、先行指標の算出に用いるオフィスデータの数は6つに限らず、2つ以上であればよい。
【0203】
また市況判定部204が先行指標を元に判定するオフィス賃貸市況の局面の数は、4つに限らず、2つ(好況局面及び不況局面)でもよいし、3つ以上(例えば、減速、停滞、調整、悪化、下げ止まり、持ち直し、回復、拡大の8局面)でもよい。
【符号の説明】
【0204】
200 先行指標算出装置
201 市況データ取得部
202 前処理実行部
203 先行指標算出部
204 市況判定部
210 CPU
220 メモリ
230 通信装置
240 記憶装置
250 入力装置
260 出力装置
270 記録媒体読取装置
500 ネットワーク
610 第1オフィスデータ管理テーブル
620 第2オフィスデータ管理テーブル
630 第3オフィスデータ管理テーブル
640 第4オフィスデータ管理テーブル
650 第5オフィスデータ管理テーブル
660 第6オフィスデータ管理テーブル
670 先行指標管理テーブル
700 先行指標算出装置制御プログラム
800 記録媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
【手続補正書】
【提出日】2023-12-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オフィス賃貸市況の先行指標を算出する先行指標算出装置であって、
オフィス賃貸市況の動向に応じて変化する複数種類の市況データの所定期間毎の集計データを取得する市況データ取得部と、
少なくとも一部の前記市況データがオフィス賃貸市況の変化に対してより先行して変化するか、ばらつきが緩和されるように、前記少なくとも一部の市況データに対して所定の前処理を実行する前処理実行部と、
前記市況データ毎に、各期間の集計データを当該市況データ内での珍しさの度合いに応じたスコアに変換し、前記複数種類の市況データの各期間のスコアから求まる各期間の代表値を、前記先行指標として算出する先行指標算出部と、
を備える、先行指標算出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の先行指標算出装置であって、
前記複数種類の市況データには、
賃貸オフィスの稼働状況に関する市況データと、賃貸オフィスの契約内容に関する市況データと、賃貸オフィスの経営者が持つ景況感に関する市況データと、が含まれる、
先行指標算出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の先行指標算出装置であって、
前記前処理実行部は、少なくとも一部の前記市況データの各集計データを、それぞれ一定期間前の集計データからの変化量に置き換えることにより前記前処理を実行する、
先行指標算出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の先行指標算出装置であって、
前記前処理実行部は、少なくとも一部の前記市況データの各集計データを、それぞれ所定個数の後方移動平均値に置き換えることにより前記前処理を実行する、
先行指標算出装置。
【請求項5】
請求項1に記載の先行指標算出装置であって、
前記先行指標算出部は、
前記オフィス賃貸市況が好況になるほど前記集計データの値が増大する傾向を有する市況データに対しては、
前記集計データのz値が-1.0未満の場合に、当該集計データのスコアを0とし、
前記集計データのz値が-1.0以上-0.5未満の場合に、当該集計データのスコアを20とし、
前記集計データのz値が-0.5以上0未満の場合に、当該集計データのスコアを40とし、
前記集計データのz値が0以上0.5未満の場合に、当該集計データのスコアを60とし、
前記集計データのz値が0.5以上1.0未満の場合に、当該集計データのスコアを80とし、
前記集計データのz値が1.0以上の場合に、当該集計データのスコアを100とし、
前記オフィス賃貸市況が好況になるほど前記集計データの値が減少する傾向を有する市況データに対しては、
前記集計データのz値が-1.0未満の場合に、当該集計データのスコアを100とし、
前記集計データのz値が-1.0以上-0.5未満の場合に、当該集計データのスコアを80とし、
前記集計データのz値が-0.5以上0未満の場合に、当該集計データのスコアを60とし、
前記集計データのz値が0以上0.5未満の場合に、当該集計データのスコアを40とし、
前記集計データのz値が0.5以上1.0未満の場合に、当該集計データのスコアを20とし、
前記集計データのz値が1.0以上の場合に、当該集計データのスコアを0とする、
先行指標算出装置。
【請求項6】
請求項1に記載の先行指標算出装置であって、
前記先行指標を元に、前記オフィス賃貸市況の局面の切り替わりを判定する市況判定部をさらに備える、先行指標算出装置。
【請求項7】
請求項6に記載の先行指標算出装置であって、
前記市況判定部は、
前記先行指標をなす各期間の代表値のうちの判定対象期間の代表値が所定値以上であり、かつ前記判定対象期間の代表値を含んで過去に連続する所定個数の代表値が増加傾向にある場合に、前記判定対象期間においてオフィス賃貸市況は回復局面に切り替わったと判定し、
前記判定対象期間の代表値が所定値以上であり、かつ前記所定個数の代表値が減少傾向にある場合に、前記判定対象期間においてオフィス賃貸市況は好況局面に切り替わったと判定し、
前記判定対象期間の代表値が所定値未満であり、かつ前記所定個数の代表値が減少傾向にある場合に、前記判定対象期間においてオフィス賃貸市況は後退局面に切り替わったと判定し、
前記判定対象期間の代表値が所定値未満であり、かつ前記所定個数の代表値が増加傾向にある場合に、前記判定対象期間においてオフィス賃貸市況は不況局面に切り替わったと判定する、
先行指標算出装置。
【請求項8】
請求項1に記載の先行指標算出装置であって、
前記複数種類の市況データは、
満室で稼働している賃貸オフィスビルの割合を前記所定期間毎に集計した集計データからなる第1市況データと、
賃貸オフィスビルのネットアブソープションを前記所定期間毎に集計した集計データからなる第2市況データと、
賃貸オフィスビルの空室率を前記所定期間毎に集計した集計データからなる第3市況データと、
ビル賃貸業における3か月後の経営見通しを示す不動産業業況指数を前記所定期間毎に集計した集計データからなる第4市況データと、
賃貸オフィスビルの契約賃料単価の変動を表す成約賃料DIを前記所定期間毎に集計した集計データからなる第5市況データと、
賃貸オフィスビルの入居者に付与されたフリーレント期間の平均値を前記所定期間毎に集計した集計データからなる第6市況データと、
の中の少なくとも2つを含む、先行指標算出装置。
【請求項9】
請求項1に記載の先行指標算出装置であって、
前記先行指標算出部は、前記複数種類の市況データのスコアの各期間の平均値を、前記各期間の代表値として算出する、先行指標算出装置。
【請求項10】
オフィス賃貸市況の先行指標を算出する先行指標算出装置の制御方法であって、
前記先行指標算出装置が、
オフィス賃貸市況の動向に応じて変化する複数種類の市況データの所定期間毎の集計データを取得し、
少なくとも一部の前記市況データがオフィス賃貸市況の変化に対してより先行して変化するか、ばらつきが緩和されるように、前記少なくとも一部の市況データに対して所定の前処理を実行し、
前記市況データ毎に、各期間の集計データを当該市況データ内での珍しさの度合いに応じたスコアに変換し、前記複数種類の市況データの各期間のスコアから求まる各期間の代表値を、前記先行指標として算出する、先行指標算出装置の制御方法。
【請求項11】
コンピュータに、オフィス賃貸市況の先行指標を算出させるためのプログラムであって、
前記コンピュータに、
オフィス賃貸市況の動向に応じて変化する複数種類の市況データの所定期間毎の集計データを取得する手順と、
少なくとも一部の前記市況データがオフィス賃貸市況の変化に対してより先行して変化するか、ばらつきが緩和されるように、前記少なくとも一部の市況データに対して所定の前処理を実行する手順と、
前記市況データ毎に、各期間の集計データを当該市況データ内での珍しさの度合いに応じたスコアに変換し、前記複数種類の市況データの各期間のスコアから求まる各期間の代表値を、前記先行指標として算出する手順と、
を実行させるためのプログラム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明の一実施形態に係る先行指標算出装置は、オフィス賃貸市況の先行指標を算出する先行指標算出装置であって、オフィス賃貸市況の動向に応じて変化する複数種類の市況データの所定期間毎の集計データを取得する市況データ取得部と、少なくとも一部の前記市況データがオフィス賃貸市況の変化に対してより先行して変化するか、ばらつきが緩和されるように、前記少なくとも一部の市況データに対して所定の前処理を実行する前処理実行部と、前記市況データ毎に、各期間の集計データを当該市況データ内での珍しさの度合いに応じたスコアに変換し、前記複数種類の市況データの各期間のスコアから求まる各期間の代表値を、前記先行指標として算出する先行指標算出部と、を備える。