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特開2024-34641ワーク保持装置と、ワーク保持装置を備えた検査装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034641
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】ワーク保持装置と、ワーク保持装置を備えた検査装置
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/48 20060101AFI20240306BHJP
   B65G 47/91 20060101ALI20240306BHJP
   G11B 21/21 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
G11B5/48 D
B65G47/91
G11B21/21 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139031
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福島 光一
(72)【発明者】
【氏名】本間 彰
【テーマコード(参考)】
3F072
【Fターム(参考)】
3F072AA14
3F072KD03
3F072KE18
(57)【要約】
【課題】薄い板状のワークをワーク支持面によって保持することができるワーク保持装置を提供する。
【解決手段】ワーク保持装置33は、ワーク支持面80と、吹付け吸引ユニット90とを有している。ワーク支持面80に吸引孔82が形成されている。ワーク支持面80に置かれたワークWが吸引孔82によって吸着される。吹付け吸引ユニット90は、気体(例えば空気)をイオン化するイオナイザ93と、ワークWに向けて前記気体を噴射する噴出口100と、吸入口101とを有している。ワークWに衝突し反射した前記気体が、吸入口101から吸入される。イオン化された前記気体をワークWに吹付けながら、吹付け吸引ユニット90をワークWの長さ方向に相対的に移動させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを載置するワーク支持面を有したワーク載置台と、
前記ワーク支持面に形成され、前記ワーク支持面に置かれた前記ワークと対応した位置に開口する吸引孔と、
前記吸引孔に接続され、前記吸引孔から空気を吸引する負圧発生源と、
前記ワーク支持面に置かれた前記ワークに向けて前記ワークの上方から気体を噴射する噴出口を有しかつ前記ワークに衝突し反射した前記気体を吸入する吸入口を有した吹付け吸引ユニットと、
前記ワーク支持面に置かれた前記ワークと前記吹付け吸引ユニットとを前記ワークの長さ方向に相対的に移動させる移動機構と、
を具備したことを特徴とするワーク保持装置。
【請求項2】
請求項1に記載のワーク保持装置において、さらに、
前記噴出口に供給される前記気体をイオン化するイオナイザを有したワーク保持装置。
【請求項3】
請求項1に記載のワーク保持装置において、さらに、
前記ワーク支持面に前記ワークの孔が挿入される位置決めピンを有したワーク保持装置。
【請求項4】
請求項3に記載のワーク保持装置において、
前記移動機構が、
前記吹付け吸引ユニットを前記ワークの第1の端部から前記ワークの第2の端部に向けて相対的に移動させるワーク保持装置。
【請求項5】
請求項4に記載のワーク保持装置において、
前記第1の端部の近くに前記位置決めピンを有したワーク保持装置。
【請求項6】
請求項1に記載のワーク保持装置において、
複数の前記吸引孔を有し、これら吸引孔が前記ワークの前記長さ方向に間隔を存して形成されたワーク保持装置。
【請求項7】
請求項3に記載のワーク保持装置において、
前記ワークがディスク装置用サスペンションであり、
前記ディスク装置用サスペンションのベースプレートに形成されたボス部の孔に前記位置決めピンが挿入されるワーク保持装置。
【請求項8】
請求項1に記載のワーク保持装置を備えた検査装置であって、
複数の前記ワークが配置されるワーク配置部と、
前記ワーク配置部とは異なる位置に設けられ、前記ワークを検査する検査部と、
前記ワーク配置部に配置された前記ワークを前記検査部に向けて移動させ、前記検査部において検査されたワークを前記ワーク配置部に戻す搬送機構とを有し、
前記搬送機構が、
前記ワーク配置部に配置された検査前のワークを吸着し、前記検査前のワークが前記ワーク支持面の上に位置した状態において前記検査前のワークの吸着を解除し、前記ワーク支持面に載置された検査済のワークを吸着し、前記検査済のワークが前記ワーク配置部の上に位置した状態において前記検査済のワークの吸着を解除する吸着ユニットを有したことを特徴とする検査装置。
【請求項9】
請求項8に記載の検査装置であって、
前記吸着ユニットが、
前記ワーク配置部に配置された前記検査前のワークを吸着し、前記検査前のワークが前記ワーク配置部から前記ワーク支持面の上に移動するまで前記検査前のワークを保持する第1の吸着部と、
前記ワーク支持面に載置された前記検査済のワークを吸着し、前記検査済のワークが前記ワーク支持面から前記ワーク配置部の上に移動するまで前記検査済のワークを保持する第2の吸着部と、
を有した検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばディスク装置用サスペンション等のワークを保持するためのワーク保持装置と、ワーク保持装置を備えた検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ等の情報処理装置にディスク装置が使用されている。ディスク装置は、スピンドルを中心に回転する磁気ディスクと、ピボット軸を中心に旋回するキャリッジなどを含んでいる。キャリッジのアームにディスク装置用サスペンションが設けられている。
【0003】
ディスク装置用サスペンションは、ベースプレートと、ロードビーム(load beam)と、フレキシャ(flexure)などを備えている。例えば特開2016-87611号公報(特許文献1)に記載されたように、フレキシャは、薄いステンレス鋼の板からなるメタルベースと、メタルベース上に形成された配線部とを含んでいる。フレキシャの先端付近に形成されたジンバル部にスライダが配置されている。前記スライダには磁気ヘッドとして機能する素子が設けられている。前記フレキシャは、前記ロードビームの長さ方向に延びるフレキシャテールを含んでいる。
【0004】
前記フレキシャと前記ロードビームとを含むディスク装置用サスペンションを検査するために、検査装置が使用されることがある。検査装置の一例は、ディスク装置用サスペンション等のワークを所定位置に保持するワーク保持装置と、ワーク保持装置によって固定されたワークを撮影するカメラと、ワークを搬送する搬送機構などを含んでいる。
【0005】
前記ディスク装置用サスペンションのように、薄く細長いワークを扱うには細心の注意が必要である。こうしたワークを所定位置に保持するための前記ワーク保持装置は、例えば負圧によってワークを吸着する吸着ステージを有している。例えば特開2016-74099(特許文献2)に記載された吸着装置では、吸着ステージに置かれたワークを負圧によって載置面に固定するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-87611号公報
【特許文献2】特開2016-74099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ディスク装置用サスペンションのフレキシャは、薄いステンレス鋼の板からなるメタルベースと、メタルベースの上に形成された絶縁層と、絶縁層の上に形成された銅などの導体を含んでいる。このようなワーク(ディスク装置用サスペンション)は、製造工程等において静電気を帯びたり、搬送中に静電気を帯びたりすることがある。薄く細長いワークは厚さ方向に変形しやすく、反りが生じやすい。
【0008】
特に静電気を帯びたワークは、吸着ステージの上に置かれた状態において、負圧によって吸着ステージに吸着したとしても、ワークの一部が吸着ステージから離れたり、反ったりすることがある。ワークが吸着ステージに正しく置かれていないと、ワークを正しく撮像することができず、検査に支障が生じる。
【0009】
本発明の目的は、ディスク装置用サスペンション等の板状のワークを検査する際に、ワークを確実に保持することができるワーク保持装置と、ワーク保持装置を備えた検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
1つの実施形態に係るワーク保持装置は、ワークを載置するワーク支持面を有したワーク載置台と、前記ワーク支持面に形成され前記ワーク支持面に置かれた前記ワークと対応した位置に開口する吸引孔と、前記吸引孔に接続され前記吸引孔から空気を吸引する負圧発生源と、吹付け吸引ユニットと、移動機構とを具備している。前記吹付け吸引ユニットは、前記ワーク支持面に置かれた前記ワークに向けて該ワークの上方から気体(例えば空気)を噴射する噴出口と、前記ワークに衝突し反射した前記気体を吸入する吸入口とを有している。前記移動機構は、前記ワーク支持面に置かれた前記ワークと前記吹付け吸引ユニットとを、前記ワークの長さ方向に相対的に移動させる。この実施形態のワーク保持装置が、前記噴出口に供給される前記気体をイオン化するイオナイザを有しているとよい。なおワークの静電気帯電が問題のない程度であれば、イオナイザを用いなくてもよい。前記ワーク支持面に、前記ワークの孔が挿入される位置決めピンを有してもよい。
【0011】
前記移動機構が、前記吹付け吸引ユニットを前記ワークの第1の端部から前記ワークの第2の端部に向けて相対的に移動させてもよい。前記第1の端部の近くに前記位置決めピンを有してもよい。複数の前記吸引孔を有し、これら吸引孔が前記ワークの前記長さ方向に間隔を存して形成されていてもよい。前記ワークの一例がディスク装置用サスペンションであり、前記ディスク装置用サスペンションのベースプレートに形成されたボス部の孔に前記位置決めピンが挿入されてもよい。
【0012】
前記ワーク保持装置を備えた検査装置の1つの実施形態は、複数の前記ワークが配置されるワーク配置部と、前記ワーク配置部とは異なる位置に設けられた検査部と、吸着ユニットを備えた搬送機構とを有している。前記検査部は、前記ワークを検査するための例えばカメラ等を備えている。前記搬送機構は、前記ワーク配置部に配置された前記ワークを前記検査部に向けて移動させ、前記検査部において検査されたワークを前記ワーク配置部に戻すように構成されている。
【0013】
前記吸着ユニットは、前記ワーク配置部に配置された検査前のワークを吸着し、前記検査前のワークが前記ワーク支持面の上に位置した状態において、前記検査前のワークの吸着を解除する。また前記ワーク支持面に載置された検査済のワークを吸着し、前記検査済のワークが前記ワーク配置部の上に位置した状態において前記検査済のワークの吸着を解除する。
【0014】
前記吸着ユニットが第1の吸着部と第2の吸着部とを有してもよい。前記第1の吸着部
は、前記ワーク配置部に配置された前記検査前のワークを吸着し、前記検査前のワークが前記ワーク配置部から前記ワーク支持面の上に移動するまで前記検査前のワークを保持する。前記第2の吸着部は、前記ワーク支持面に載置された前記検査済のワークを吸着し、前記検査済のワークが前記ワーク支持面から前記ワーク配置部の上に移動するまで前記検査済のワークを保持する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るワーク保持装置によれば、ディスク装置用サスペンションのように薄く細長いワークをワーク支持面に確実に保持させることができる。また本発明に係るワーク保持装置を備えた検査装置によれば、検査すべきワークを検査部に正しい状態で保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】1つの実施形態に係る検査装置の吸着ユニットやワーク等が第1の位置にあるときの斜視図。
図2】ワークの一例としてのディスク装置用サスペンションの平面図。
図3図1に示された検査装置のワーク保持装置の一部を示す斜視図。
図4図1に示された検査装置のワーク保持装置の一部の断面図。
図5図1に示された検査装置の吸着ユニットやワーク等が第2の位置に移動した状態を示す斜視図。
図6】同検査装置の吸着ユニットやワーク等が第3の位置に移動した状態を示す斜視図。
図7】同検査装置の第2の移動ユニットやワーク等が第4の位置に移動した状態を示す斜視図。
図8】同検査装置の第2の移動ユニットやワーク等が第5の位置に移動した状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に1つの実施形態に係る検査装置10について図1から図8を参照して説明する。
図1は、検査装置10を構成する各部(例えば吸着ユニット60やワーク等)が第1の位置にあるときの斜視図である。検査装置10はワーク配置部30を有している。ワーク配置部30に複数のワークWが水平方向に所定ピッチで面状に配置されている。この明細書と図面では、説明の都合上、ワークを示すために複数の符号(W,W1,W2,W3)を用いるが、これはあくまで説明の便宜のためであり、これらワークW,W1,W2,W3は全て共通である。
【0018】
図2は、ワークWの一例としてのディスク装置用サスペンションの平面図である。図2に示されたワークWは、ベースプレート20と、ロードビーム21と、フレキシャ22などを含み、薄く細長い形状(板状)をなしている。フレキシャ22は、薄いステンレス鋼の板からなるメタルベースと、メタルベース上に形成された配線部とを含んでいる。フレキシャ22は、ワークWの長さ方向に延びている。図2において両方向矢印L1はワークWの長さ方向を示している。ベースプレート20のボス部23に円形の孔24が形成されている。ボス部23はハードディスク装置のキャリッジアームに固定される。
【0019】
検査装置10は、ワークWを搬送する搬送機構31と、ワークWの位置決めをなす位置決め機構32と、ワーク保持装置33と、カメラ34を含む検査部35と、カメラ34によって撮影されたワークWを判定する制御部36などを有している。検査すべきワークWがワーク保持装置33に保持される。図3はワーク保持装置33の一部の斜視図、図4はワーク保持装置33の一部の断面図である。
【0020】
搬送機構31は、図1において左側に位置する第1の移動ユニット41と、図1において右側に位置する第2の移動ユニット42とを含んでいる。第1の移動ユニット41は、第1のX方向ガイド部材50と、第1のY方向ガイド部材51と、第1のキャリッジ52とを含んでいる。第1のX方向ガイド部材50はX軸方向(図1に両方向矢印Xで示す)に延びている。第1のY方向ガイド部材51はY軸方向(図1に両方向矢印Yで示す)に延びている。第1のキャリッジ52は第1のY方向ガイド部材51に搭載されている。
【0021】
第1のY方向ガイド部材51は、例えばサーボモータとボールねじ等を含む駆動機構によって、第1のX方向ガイド部材50に沿ってX軸方向に移動する。第1のキャリッジ52は、例えばサーボモータとボールねじとを含む駆動機構によって、第1のY方向ガイド部材51に沿ってY軸方向に移動する。すなわち第1の移動ユニット41はXY移動テーブルとして機能し、第1のキャリッジ52をXY軸の所望の位置に移動させる。
【0022】
第1のキャリッジ52に、上下方向に移動可能な吸着ユニット60が設けられている。吸着ユニット60は第1の吸着部61と第2の吸着部62とを含んでいる。第1の吸着部61と第2の吸着部62とは、それぞれ昇降駆動機構63,64によって、互いに独立して上下方向すなわちZ軸方向(図1に両方向矢印Zで示す)に移動することができる。吸着部61,62の下端に、それぞれ、空気を吸い込む吸引口が形成され、負圧によってワークWを吸着することができるようになっている。吸着部61,62の負圧が断たれると、ワークの吸着が解除される。
【0023】
位置決め機構32は検査装置10の所定位置に設けられている。位置決め機構32は、ワークWを支持する上面70と、ワークWの水平方向の位置決めをなす位置決め部材71とを含んでいる。位置決め部材71はアクチュエータによってワークWを挟む方向に移動することにより、ワークWの位置決めをなす。
【0024】
第2の移動ユニット42は、第2のX方向ガイド部材75と、第2のY方向ガイド部材76と、第2のキャリッジ77とを含んでいる。第2のX方向ガイド部材75はX軸方向に延びている。第2のY方向ガイド部材76はY軸方向に延びている。第2のY方向ガイド部材76は、例えばサーボモータとボールねじ等を含む駆動機構によって、第2のX方向ガイド部材75に沿ってX軸方向に移動する。
【0025】
第2のキャリッジ77は第2のY方向ガイド部材76に搭載されている。第2のキャリッジ77は、例えばサーボモータとボールねじとを含む駆動機構によって、第2のY方向ガイド部材76に沿ってY軸方向に移動する。すなわち第2の移動ユニット42はXY移動テーブルとして機能し、第2のキャリッジ77をXY軸の所望の位置に移動させる。
【0026】
図1図3等に示されたように、第2のキャリッジ77の上部にワーク載置台78が設けられている。ワーク載置台78に、ワークWを所定位置に支持するためのワーク支持面80が設けられている。ワーク支持面80は実質的に水平方向に延びている。ワーク支持面80に位置決めピン81が設けられている。位置決めピン81はワーク支持面80から上方に突出している。ワーク支持面80に乗せられたワークWのボス部23の孔24に、位置決めピン81が挿入される。
【0027】
ワーク支持面80に複数の吸引孔82が形成されている。これら吸引孔82は、ワーク支持面80の所定位置に載置されたワークW(図3に2点鎖線で示す)と対応した位置に開口している。複数の吸引孔82は、ワーク支持面80に載置されたワークWの長さ方向に間隔を存して形成されている。
【0028】
図4に示されたように、吸引孔82は、それぞれ、吸引管83を介して排気ポンプ等の負圧発生源85に接続されている。負圧発生源85に生じた負圧によって、吸引孔82から空気が吸い込まれる。吸引孔82から空気が吸い込まれると、ワーク支持面80に置かれたワークWがワーク支持面80に吸着され保持される。
【0029】
図1図4等に示されたように、ワーク保持装置33は吹付け吸引ユニット90を有している。吹付け吸引ユニット90は、外筒91と、内筒92と、イオナイザ93(静電気除去装置)と、フィルタ94と、気体の供給源95などを含んでいる。供給源95は、空気あるいは不活性ガス等の圧縮された気体を、イオナイザ93を介して内筒92に供給する。イオナイザ93の一例は、放電針に高電圧を印加しイオンを放出することにより、イオン化された気体(例えば空気)を供給管96に供給する。なお、ワークの静電気帯電が問題のない程度であれば、イオナイザ93を用いなくてもよい。
【0030】
内筒92の下端に噴出口100が開口している。噴出口100は、供給管96とイオナイザ93とを介して供給源95に接続されている。供給源95から供給された気体(例えば空気)がイオナイザ93によってイオン化され、噴出口100からワークWに向けてワークWの上方から噴射する。噴出口100から噴出した気体(例えば空気)は、図4に矢印Aで示すようにワークWやワーク支持面80に衝突し反射する。
【0031】
外筒91の下端と内筒92との間に吸入口101が開口している。外筒91と内筒92との間に吸引チャンバ102が形成されている。吸入口101は吸引チャンバ102と連通している。吸引チャンバ102は、吸入管103を介して負圧発生源85に接続されている。吸入口101から吸引チャンバ102を経て負圧発生源85に吸い込まれた気体(例えば空気)は、フィルタ104を通って排出される。
【0032】
吹付け吸引ユニット90は、上下方向(Z軸方向)に移動可能な昇降部材110に設けられている。昇降部材110は駆動部111によって上下方向に移動する。ワークWに空気を吹き付ける際、吹付け吸引ユニット90の噴出口100がワークWの真上の至近距離まで降下する。イオン化された空気が噴出口100からワークWに向けて噴射された状態において、第2のキャリッジ77がY軸方向(図4に矢印Y1で示す方向)に移動する。このときワークWは、ワーク支持面80の吸引孔82から吸い込まれる空気によって、ワーク支持面80に吸引されている。
【0033】
すなわちワークWがワーク支持面80に吸着された状態のもとで、イオン化された空気が噴出口100からワークWに向けて噴出しつつ、ワーク載置台78が吹付け吸引ユニット90に対して相対的にワークWの長さ方向(図4に矢印Y1で示す方向)に移動する。このためワーク支持面80に吸着されたワークWに、イオン化された空気がワークWの第1の端部E1(ベースプレート20付近)からワークWの第2の端部E2に向かって、ワークWの長さ方向に連続して吹き付けられる。
【0034】
イオン化された空気がワークWに吹き付けられるため、ワークWに帯電している可能性のある静電気が除去される。このため薄く撓みやすいワークWの長さ方向の一部がワーク支持面80から離れたり、反ったりすることが抑制される。こうしてワークWのほぼ全面がワーク支持面80に沿ってぴったりと吸着される。
【0035】
本実施形態では、ワークWが乗ったワーク載置台78を図4に矢印Y1で示す方向に移動させている。本実施形態の第2の移動ユニット42は移動機構の一例である。この移動機構は、ワーク支持面80に置かれたワークWに対し、吹付け吸引ユニット90をワークWの長さ方向に相対的に移動させる。このため吹付け吸引ユニット90を図4に矢印Y2で示す方向に移動させてもよい。
【0036】
図1等に示されたように検査部35は、ワークWを撮像するカメラ34と、ワークWに照明光を当てるライト112(例えばリングライト)とを有している。検査すべきワークWを乗せた第2のキャリッジ77は、カメラ34の下方に移動する。カメラ34によって撮影されたワークWの画像は制御部36に送られ、画像処理がなされる。
【0037】
ワークWの全体を1回で撮影することができる場合には、カメラ34の真下にワークWを移動させた状態においてワークWを撮影する。ワークWの長さやカメラ34の仕様によっては、ワークWを一度に撮影することができないことがある。その場合、ワークWが乗った第2のキャリッジ77をY軸方向に間欠的に前進させながら、複数回に分けて撮影する。
【0038】
次に本実施形態の検査装置10の作用について、図1図5から図8を参照して説明する。検査するワークWの一例はディスク装置用サスペンションである。しかし検査対象物(ワーク)がディスク装置用サスペンション以外であってもよい。またカメラ34以外の機器を用いてワークWを検査してもよい。
【0039】
図1は、ワークWや吸着ユニット60等が第1の位置にあるときを模式的に表わしている。ワーク配置部30に複数のワークWが所定ピッチで配置されている。この明細書では、ワーク配置部30に載置された複数のワークWのうち、右から4つ目のワークW1を検査する場合を代表して説明する。図1において検査部35に位置しているワーク載置台78には、検査が済んだ1つ前のワークW2が載置されている。
【0040】
図1に示されたように、吸着ユニット60の第1の吸着部61がワークW1の真上に位置している。この状態で第1の吸着部61がワークW1に向かって降下する。そして第1の吸着部61がワークW1を吸着したのち上昇する。こうして第1の吸着部61によって保持されたワークW1が、第1の移動ユニット41によって位置決め機構32に向けて搬送される。
【0041】
図5は吸着ユニット60やワーク等が第2の位置(位置決めステージST1)に移動した状態を示している。第2の位置では、検査すべきワークW1を保持した第1の吸着部61が、位置決め機構32の上方に位置している。そして位置決め部材71によってワークW1の位置決めがなされる。このときワーク載置台78は、位置決めステージST1の近くに移動している。ワーク載置台78には、検査が終了した1つ前のワークW2が載置されている。
【0042】
図6は、吸着ユニット60やワーク載置台78等が第3の位置(乗せ換えステージST2)に移動した状態を示している。ワーク載置台78の上に、検査済みのワークW2が乗っている。図6に示されたように、第2の吸着部62が検査済のワークW2の真上に移動し、降下する。そして第2の吸着部62が検査済のワークW2を吸着し上昇することにより、検査済のワークW2がワーク支持面80から離れる。
【0043】
その直後に、第1の吸着部61に吸着された状態の検査前のワークW1が、ワーク支持面80の上方に移動し降下する。そして第1の吸着部61の負圧が断たれることにより、第1の吸着部61によるワークW1の吸着が解除される。こうして検査前のワークW1がワーク支持面80に乗る。
【0044】
図7は、第2の移動ユニット42やワークW1等が第4の位置(吹付けステージST3)に移動した状態を示している。検査すべきワークW1が吹付け吸引ユニット90の下方に位置している。このワークW1に、イオン化された空気が噴出口100(図4に示す)から吹き付けられる。空気の吹き付けと同時に、第2のキャリッジ77が第2の移動ユニット42によってY軸方向(図4に矢印Y1で示す方向)に移動する。このためイオン化された空気がワークW1の第1の端部E1(ベースプレート20付近)からワークW1の第2の端部E2に向かって、ワークW1の長さ方向に連続して吹き付けられる。第2の移動ユニット42は、吹付け吸引ユニット90をワークWの長さ方向に相対移動させるための移動機構として機能する。
【0045】
図4に示されたように、内筒92の先端の噴出口100からワークW1に向かって噴射された空気が、ワークW1やワーク支持面80に衝突し反射する。反射した空気が外筒91の下端の吸入口101から吸引チャンバ102に吸引される。ワークW1やワーク支持面80に衝突し反射した空気に微細なパーティクルなどが含まれていると、クリーンルームが汚染される原因となる。検査装置10はクリーンルームに配置されている。本実施形態の吹付け吸引ユニット90は、ワークW1に吹き付けた空気を吸引チャンバ102に吸引し、フィルタ104等を経て排出する。このためパーティクルが含まれた空気がクリーンルーム内に放出されることが抑制される。
【0046】
本実施形態の検査装置10は、検査すべきワークW1にイオン化された空気を吹き付けるため、ワークW1に帯電している可能性のある静電気が除去される。そしてこのワークW1は、吸引孔82から吸い込まれる空気によってワーク支持面80に吸着される。このため薄く撓みやすいワークW1の長さ方向の一部がワーク支持面80から離れたり、反ったりすることが抑制される。こうして検査前のワークW1がワーク支持面80の所定の位置に確実に吸着される。
【0047】
図7に示されたように、検査すべきワークW1が吹付けステージST3に移動している。これに対し検査済みのワークW2は、第2の吸着部62によって保持された状態において、ワーク配置部30に搬送される。そして第2の吸着部62による吸着が解除されることにより、検査済のワークW2がワーク配置部30の所定位置に戻される。
【0048】
図8は、第2の移動ユニット42やワークW1等が第5の位置(検査ステージST4)に移動した状態を示している。図8に示されたように、ワーク支持面80に載置されたワークW1がカメラ34の下方に移動する。そしてカメラ34によってワークW1が撮影される。撮影されたワークW1の画像が制御部36によって解析され、ワークWの形状等が合格か不合格かなどの判定がなされる。その検査結果が制御部36のメモリ等に記憶されるとともに、必要に応じて表示される。検査の結果、不合格となったワークは製品として使用されない。
【0049】
図8に示されたように、ワーク配置部30には検査すべき次のワークW3が置かれている。検査部35においてワークW1が検査されているとき、次に検査するワークW3が第1の吸着部61によって吸着され、位置決めステージST1(図5)に向けて移動する。そして位置決めステージST1においてワークW3の位置決めがなされたのち、このワークW3は乗せ換えステージST2(図6)に向けて移動する。
【0050】
一方、図8に示された検査後のワークW1は、ワーク支持面80に乗った状態において、乗せ換えステージST2(図6)に向けて移動する。そしてこのワークW1は、第2の吸着部62に吸着されたのち、第1の移動ユニット41によってワーク配置部30に送られ、ワーク配置部30の所定の位置に戻される。
【0051】
以上述べた工程を繰り返すことにより、ワーク配置部30に載置された複数のワークWが次々と検査部35に搬送されるとともに、検査部35において検査されたワークWがワーク配置部30に戻される。このようにして、ワーク配置部30に載置されていた全てのワークWの検査が終了する。
【0052】
本実施形態の検査装置10は、吸着ユニット60が一対の吸着部(第1の吸着部61と第2の吸着部62)を有している。第1の吸着部61は、検査前のワークをワーク配置部30からワーク支持面80に移動させる際に使用される。第2の吸着部62は、検査済のワークをワーク支持面80からワーク配置部30に戻す際に使用される。すなわち1つの吸着ユニット60によって、検査前のワークと検査済のワークとを同時に保持することができる。
【0053】
このため図6に示された乗せ換えステージST2において、ワーク支持面80の同じ位置に、検査前のワークW1と検査済のワークW2とを入れ替わりに乗せることができる。なお吸着ユニット60が吸着部を1つだけ有してもよい。その場合、1つのワーク載置台78に、検査前のワークを乗せるための第1のワーク支持面と、検査済のワークを乗せるための第2のワーク支持面を設ける。そして第1のワーク支持面と第2のワーク支持面の位置に応じて、ワーク載置台78を第2の移動ユニット42によって移動させる。
【0054】
このように検査装置10は、検査部35においてワークに空気を吹き付け、カメラ34による検査等の工程を行なう。さらにこの検査装置10は、検査済のワークをワーク配置部30に戻し、次に検査するワークを吸着ユニット60に吸着させる工程も行なう。本実施形態の検査装置10によれば、これらの工程を並行して行なうことができるため、多数のワークWの検査を能率良く行なうことができる。
【0055】
本発明を実施するに当たり、ワーク保持装置の構成要素、例えばワーク載置台やワーク支持面、吸着ユニット、移動機構、吹付け吸引ユニット等を種々に変更して実施できることは言うまでもない。また検査装置の構成要素、例えばワーク配置部や検査部、搬送機構等についても、発明を逸脱しない範囲で変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0056】
W,W1,W2,W3…ワーク(ディスク装置用サスペンション)、10…検査装置、30…ワーク配置部、31…搬送機構、32…位置決め機構、33…ワーク保持装置、34…カメラ、35…検査部、36…制御部、41…第1の移動ユニット、42…第2の移動ユニット(移動機構)、50…第1のX方向ガイド部材、51…第1のY方向ガイド部材、52…第1のキャリッジ、60…吸着ユニット、61…第1の吸着部、62…第2の吸着部、75…第2のX方向ガイド部材、76…第2のY方向ガイド部材、77…第2のキャリッジ、78…ワーク載置台、80…ワーク支持面、81…位置決めピン、82…吸引孔、85…負圧発生源、90…吹付け吸引ユニット、91…外筒、92…内筒、93…イオナイザ、95…供給源、100…噴出口、101…吸入口、102…吸引チャンバ、112…ライト。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8