(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034652
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】ハッチの取付構造及びハッチの施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/00 20060101AFI20240306BHJP
A62B 5/00 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
E04B1/00 501Z
E04B1/00 501M
E04B1/00 502L
A62B5/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139044
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000110479
【氏名又は名称】ナカ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】城戸 憲昌
【テーマコード(参考)】
2E184
【Fターム(参考)】
2E184AA01
2E184DD02
2E184FF04
2E184FF11
(57)【要約】
【課題】防水性が良好で施工が容易なハッチの取付構造及びハッチの施工方法を提供する。
【解決手段】ハッチの取付構造Sは、開口14Aが上下に貫通して形成された床体14と、枠状とされ、開口14Aに設けられ、床体14に固定され、外方側に張り出した下張出し部52を有するハッチ枠12と、ハッチ枠12が取り付けられた床体14の上方に設けられる仕上げ床体16と、仕上げ床体16の上面からハッチ枠12における下張出し部52の上面52Aに渡って設けられた防水シート18(防水層)と、ハッチ枠12に対し上方から取り付けられる追加枠20と、追加枠20に設けられ、下張出し部52の上方でハッチ枠12の外方側に張り出し、防水層のハッチ枠12側の端部を覆う上張出し部22と、上張出し部22と防水シート18との間を塞ぐ防水部24と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口が上下に貫通して形成された床体と、
枠状とされ、前記開口に設けられ、前記床体に固定され、外方側に張り出した下張出し部を有するハッチ枠と、
前記ハッチ枠が取り付けられた前記床体の上方に設けられる仕上げ床体と、
前記仕上げ床体の上面から前記ハッチ枠における前記下張出し部の上面に渡って設けられた防水層と、
開閉式の上蓋が取り付けられ、前記ハッチ枠に対し上方から取り付けられる追加枠と、
前記追加枠に設けられ、前記下張出し部の上方で前記ハッチ枠の外方側に張り出し、前記防水層の前記ハッチ枠側の端部を覆う上張出し部と、
を有するハッチの取付構造。
【請求項2】
前記上張出し部と、前記下張出し部の上面にある前記防水層との間を塞ぐ防水部を有する、請求項1に記載のハッチの取付構造。
【請求項3】
前記ハッチ枠は、平面視で方形に構成された縦壁部を有し、
一部の前記縦壁部には避難梯子が取付け可能とされ、
各々の前記縦壁部の外面には、前記床体の構造躯体に固定される固定片がそれぞれ設けられ、
前記避難梯子が取り付けられる部位に対応する前記固定片には、補強部材が設けられている、請求項1に記載のハッチの取付構造。
【請求項4】
開口が上下に貫通して形成された床体の前記開口に、外方側に張り出した下張出し部を有する枠状のハッチ枠を設けると共に、前記ハッチ枠を前記床体に固定する第1工程と、
前記ハッチ枠が取り付けられた前記床体の上方に仕上げ床体を設ける第2工程と、
前記仕上げ床体の上面から前記ハッチ枠における前記下張出し部の上面に渡って防水層を設ける第3工程と、
前記ハッチ枠に対し上方から追加枠を取り付ける第4工程と、
を有するハッチの施工方法。
【請求項5】
前記追加枠に設けられ、前記下張出し部の上方で前記ハッチ枠の外方側に張り出し、前記防水層の前記ハッチ枠側の端部を覆う上張出し部と、前記防水層との間を防水部で塞ぐ第5工程を有する、請求項4に記載のハッチの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハッチの取付構造及びハッチの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂製の防水シートからなる防水層を有する外部床に穿設される避難ハッチの防水枠が開示されている(特許文献1参照)。床面に設けられた開口には、上端が床面から突出した筒状の枠が嵌め込まれている。防水枠は、この枠が嵌め込まれた開口まわりの防水処理に用いられる部材であり、水平片と、該水平片の内側縁から上方に屈折した起立片と、該起立片上端から内側かつ下方に屈折した折り返し片と、を備えている。起立片の高さは筒状の枠の床面からの突出寸法に対応している。防水枠の外面側は、防水シートと同一材料でコーティングされている。
【0003】
また、避難ハッチをスラブに固定後、スラブ厚さに合わせて上部枠をセットする技術が開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5517513号公報
【特許文献2】実開昭64-39761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来例のように、避難装置等が取り付けられるハッチの設置場所では、雨水による建物や避難装置等の劣化を防止するため、ハッチにおける枠のうち床体との取付け部に防水加工を施す必要がある。鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造の集合住宅のバルコニー(床体)におけるハッチの施工は、アンカーを介して枠体を予めコンクリートの鉄筋(構造体)に結束してから床体に埋設し、塗防水により防水工事が行われる。
【0006】
しかしながら、木造の建物のバルコニー(床体)の場合、塗防水による防水手段よりもシート防水やFRP防水を行うことになる。シート防水の場合には、シート端部の小口に剥離防止のための処理を行う必要があり、防水端部処理は大事な部分といえる。
【0007】
上記した特許文献1に記載の従来例でも、防水枠を防水シートで埋めるので、施工に手間がかかると考えられる。また、上記した特許文献2に記載の嵩上げ枠も、特許文献1の筒状の枠と同様と考えられるが、防水等については詳細な記載がない。
【0008】
本発明は、防水性が良好で施工が容易なハッチの取付構造及びハッチの施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様に係るハッチの取付構造は、開口が上下に貫通して形成された床体と、枠状とされ、前記開口に設けられ、前記床体に固定され、外方側に張り出した下張出し部を有するハッチ枠と、前記ハッチ枠が取り付けられた前記床体の上方に設けられる仕上げ床体と、前記仕上げ床体の上面から前記ハッチ枠における前記下張出し部の上面に渡って設けられた防水層と、開閉式の上蓋が取り付けられ、前記ハッチ枠に対し上方から取り付けられる追加枠と、前記追加枠に設けられ、前記下張出し部の上方で前記ハッチ枠の外方側に張り出し、前記防水層の前記ハッチ枠側の端部を覆う上張出し部と、を有する。
【0010】
このハッチの取付構造では、仕上げ床体の上面からハッチ枠の下張出し部の上面に渡って防水層が設けられ、防水層のハッチ枠側の端部が、ハッチ枠に対し上方から取り付けられる追加枠の上張出し部により覆われ、上張出し部と防水層との間が防水部で塞がれている。したがって、上張出し部と下張出し部の間で防水層の端部の小口が保護され、該小口からの防水層の剥離が抑制される。
【0011】
第2の態様は、第1の態様に係るハッチの取付構造において、前記上張出し部と、前記下張出し部の上面にある前記防水層との間を塞ぐ防水部を有する。
【0012】
このハッチの取付構造では、仕上げ床体とハッチ枠の間が、防水層と防水部により二重に防水されるので、防水性が良好となる。
【0013】
第3の態様は、前記ハッチ枠は、平面視で方形に構成された縦壁部を有し、一部の前記縦壁部には避難梯子が取付け可能とされ、各々の前記縦壁部の外面には、前記床体の構造躯体に固定される固定片がそれぞれ設けられ、前記避難梯子が取り付けられる部位に対応する前記固定片には、補強部材が設けられている。
【0014】
このハッチの取付構造では、ハッチ枠の縦壁部に設けられた固定片により、ハッチ枠が床体の構造躯体に固定されている。また、避難梯子が取り付けられる部位に対応する固定片は、補強部材で補強されているので、避難梯子の使用に耐え得る強度を確保することができる。
【0015】
第4の態様に係るハッチの施工方法は、開口が上下に貫通して形成された床体の前記開口に、外方側に張り出した下張出し部を有する枠状のハッチ枠を設けると共に、前記ハッチ枠を前記床体に固定する第1工程と、前記ハッチ枠が取り付けられた前記床体の上方に仕上げ床体を設ける第2工程と、前記仕上げ床体の上面から前記ハッチ枠における前記下張出し部の上面に渡って防水層を設ける第3工程と、前記ハッチ枠に対し上方から追加枠を取り付ける第4工程と、を有する。
【0016】
このハッチの施工方法では、第1工程でハッチ枠を床体の開口に設けると共に、床体に固定し、第2工程で床体の上方に仕上げ床体を設ける。次に、第3工程で仕上げ床体の上面からハッチ枠における下張出し部の上面に渡って防水層を設け、第4工程でハッチ枠に対し上方から追加枠を取り付ける。これにより、防水層の施工を容易に行うことができる。
【0017】
第5の態様は、第4の態様に係るハッチの施工方法において、前記追加枠に設けられ、前記下張出し部の上方で前記ハッチ枠の外方側に張り出し、前記防水層の前記ハッチ枠側の端部を覆う上張出し部と、前記防水層との間を防水部で塞ぐ第5工程を有する。
【0018】
このハッチの施工方法では、第5工程で追加枠をハッチ枠に取り付け、追加枠の上張出し部で防水層のハッチ枠側の端部を覆い、上張出し部と防水層との間を防水部で塞ぐ。これにより、上張出し部と下張出し部の間で防水層の端部の小口が保護され、該小口からの防水層の剥離が抑制される。また、仕上げ床体とハッチ枠の間が、防水層と防水部により二重に防水されるので、防水性が良好となる。このようにして、防水性を高めつつ、ハッチ枠を容易に施工することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、防水性が良好で施工が容易なハッチの取付構造及びハッチの施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態に係るハッチの取付構造を示す断面図である。
【
図2】ハッチの施工方法の第1工程を示す断面図である。
【
図4】ハッチの施工方法の第1工程が完了した状態を示す斜視図である。
【
図5】ハッチの施工方法の第2工程を示す断面図である。
【
図7】ハッチの施工方法の第3工程を示す断面図である。
【
図9】ハッチの施工方法の第4工程を示す斜視図である。
【
図11】ハッチの施工方法の第5工程を示す断面図である。
【
図13】ハッチの上蓋が閉められた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一又は同様の構成要素であることを意味する。なお、以下に説明する実施形態において重複する説明及び符号については、省略する場合がある。また、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0022】
図1において、本実施形態に係るハッチの取付構造Sは、例えば避難梯子10を備えたハッチの取付構造に係り、例えば木造建築物のバルコニー11に設置される。ハッチの取付構造Sは、例えば、床体14と、ハッチ枠12と、仕上げ床体16と、防水層の一例としての防水シート18と、追加枠20と、上張出し部22と、防水部24と、を有している。
【0023】
(床体)
床体14は、例えばバルコニー11の本体や室内の床を構成する部分であり、開口14Aが上下に貫通して形成されている。床体14は、例えば、梁等の構造躯体26と、構造躯体26の上面と下面にそれぞれ張り付けられた板材28とを有して構成されている。板材28は、耐火構造とするため、梁等の木製の構造躯体26を石膏ボードで覆い、更にその表面をケイカル板で覆うように構成されている。床体14の開口14Aは、隣り合う構造躯体26の間に設けられている。開口14Aは、平面視で例えば方形に形成されている。方形は、正方形と長方形を含む。開口14Aを構成する4面には、それぞれ板材30が張られている。板材30は、板材28と同様に、構造躯体26を石膏ボード及びケイカル板で覆うように構成されている。つまり、開口14Aには、互いに対向するニ対の板材30を有して構成されている(
図1参照)。
【0024】
バルコニー11の先端側における床体14の上には、例えば根太32を介してバルコニー手摺34が設置されている。バルコニー11の基端側(建物側)には、例えば室内と室外を区画する壁36が設けられている。一例として、壁36のうち床体14と交差する部位には、板材38が張り付けられている。板材38の構成は、板材28と同様である。板材38の上端の小口は、室内への雨水の浸入を防止すべく、仕上げ床体16の上面よりも高い位置に設定されている。
【0025】
(ハッチ枠)
図4に示されるように、ハッチ枠12は枠状とされ、床体14の開口14Aに設けられると共に、床体14(開口14Aの構造躯体26)に固定されている。ハッチ枠12は、平面視で方形に構成された縦壁部12A,12Bを有している。縦壁部12Aは、互いに対向する一対の壁である。縦壁部12Bも、互いに対向する一対の壁である。ハッチ枠12の周方向において、縦壁部12A,12Bは、交互に配置されている。
【0026】
ハッチ枠12の上部には、外方側に張り出した下張出し部52が設けられている。具体的には、下張出し部52は、縦壁部12A,12Bの上部の外面にそれぞれ設けられ、
図6に示されるように、縦壁部12A,12Bの外方に水平に延びる上面52Aと、上面52Aの先端から下方に延びる外縦片52Bとを有している。上面52Aと外縦片52Bとは、断面逆L字形に構成されている。
【0027】
縦壁部12A,12Bの外面の内、縦壁部12Aの蓋開放端側面及び縦壁部12Bの3面には、床体14の構造躯体26に固定される固定片40がそれぞれ設けられている。また、縦壁部12Aの残りの1面には、固定片40αが設けられている。固定片40は、例えば縦壁部40Aにおいて、ハッチ枠12の縦壁部12A,12Bの外面に溶接等により固定されている。縦壁部40Aの下端から水平方向の外方には、固定部40Bが延びている。固定部40Bは、床体14へのハッチ枠12の取付部位となる部分である。縦壁部40Aの上端から外方には、上片40Cが延びている。固定片40において、縦壁部40A及び固定部40Bは断面L字形に形成されている。
【0028】
図3に示されるように、上片40Cの幅(例えば縦壁部12Bからの張出し量)は、固定部40Bよりも小さく、下張出し部52の幅(縦壁部12Bからの張出し量)と同等かそれよりも大きい。下張出し部52の外縦片52Bの下端は、固定片40の上片40Cの上に当接していてもよい。また、この当接部分が溶接により接合されていてもよい。この場合、下張出し部52、上片40C及び縦壁部12Bにより閉断面が構成されることで、下張出し部52の部分の強度が高まる。
【0029】
図1に示されるように、ハッチ枠12における一対の縦壁部12Aの一方には、折畳み式の避難梯子10が取付け可能とされている。避難梯子10は、ハッチ枠12の内部に折畳み収納可能とされている。
図1では、避難梯子10が下方へ伸長した状態が示されている。避難梯子10が取り付けられる縦壁部12Aに対応する固定片40、つまり避難梯子10の吊元側の固定片40αには、縦壁部40Aと、固定部40Bと、補強部材42が設けられている。また、固定片40αは、固定片40よりも厚い板材を用いて形成されている。
図4に示されるように、補強部材42は、例えば略直角三角形のリブ状に形成され、互いに直交する二辺が縦壁部40A及び固定部40Bに溶接等により固定されている。補強部材42は、1つの固定片40αに例えば2箇所設けられている。下張出し部52の外縦片52Bの下端は、例えば補強部材42の上辺に当接している。
【0030】
各々の固定片40は、例えばねじ44を用いて床体14に締結固定されている。ねじ44は、床体14における板材28を貫通し、構造躯体26にねじ込まれている。一例として、ハッチ枠12が床体14に固定された状態において、ハッチ枠12の下部の一部は、床体14の開口14Aに入り込んでいる。
【0031】
図1から
図3において、ハッチ枠12の下端部には、開閉式の下蓋46が取り付けられている。一対の縦壁部12Bの下端部、かつハッチ枠12における避難梯子10の取付点側の端部には、支点48(
図6)がそれぞれ設けられている。下蓋46は、この支点48に回動可能に支持され、ハッチ枠12の下側の開口を開閉可能とされている。
【0032】
ハッチ枠12の一対の縦壁部12Bには、互いに対向する支点50がそれぞれ設けられている。支点50は、強度を高めつつ、ハッチ枠12と避難梯子10との干渉を防止するために、例えば縦壁部12Bの一部をハッチ枠12の内方へ円錐台形に絞り加工することで形成されている。この支点50には、例えばV字リンク54の屈曲部が回動自在に取り付けられている。V字リンク54の下端に設けられた支点56には、下リンク60の一端が回動自在に取り付けられている。下リンク60の他端は、下蓋46に設けられた支点62に回動自在に取り付けられている。つまり、下蓋46は、下リンク60によりV字リンク54の下端と連結されている。支点62は、ハッチ枠12における下蓋46の支点48から離れて設けられている。これにより、下蓋46の開閉に伴い、V字リンク54が揺動し、またV字リンク54の揺動に伴い下蓋46が開閉するようになっている。
【0033】
(仕上げ床体)
図5、
図6において、仕上げ床体16は、ハッチ枠12が取り付けられた床体14の上方に設けられている。具体的には、床体14の上には、例えば根太64が配置され、根太64の上に仕上げ床体16が張られている。仕上げ床体16は、雨水の流れを考慮して、図示しない水勾配をもって設けられる(壁36側より排水溝17側を低く形成する)。また、仕上げ床体16のハッチ枠12側の端面は、ハッチ枠12の下張出し部52の外縦片52Bに近接又は当接している。仕上げ床体16は、例えば合板の上方にケイカル板を貼り付けて構成されている。
【0034】
(防水シート)
図7、
図8において、防水シート18は、例えば仕上げ床体16の上面からハッチ枠12における下張出し部52の上面52Aに渡って設けられている。この防水シート18は、下張出し部52の外縦片52Bのうち仕上げ床体16より上に位置する外面にも設けられている。防水シート18のハッチ枠12側の端部の小口と、ハッチ枠12の縦壁部12A,12Bとの境界部には、例えばコーキング剤66による防水処理が施されている。
【0035】
図1に示されるように、仕上げ床体16におけるバルコニー手摺34側の端部には、排水溝17が設けられている。防水シート18は、この排水溝17の表面も覆っている。
【0036】
(追加枠)
図9、
図10において、追加枠20は、ハッチ枠12に対し上方から取り付けられる、平面視で方形に構成された枠体である。追加枠20は、取付片20Aと、傾斜片20Bと、縦片20Cと、を有する枠材を方形状に組んで構成されている。なお、
図10は、追加枠20の断面における端面のみを示している。
【0037】
図12に示されるように、取付片20Aは、追加枠20の下部に設けられ、ハッチ枠12の上端部の内側に嵌入されて該上端部の内面に当接する部位である。取付片20Aの嵌入は、傾斜片20Bがハッチ枠12の上端部に当接したところで停止する。このため、それ以上の取付片20Aの嵌入が抑制される。取付片20Aは、例えばねじ68によりハッチ枠12の縦壁部12A,12Bに締結固定されている(
図4も参照)。
【0038】
傾斜片20Bは、取付片20Aの上端からハッチ枠12の外方側に傾斜して延びる部位である。縦片20Cは、傾斜片20Bの上端から上方に延びると共に上端でハッチ枠12の外方側に折り返されて下方に延びる部位である。この折返しにより、縦片20Cの厚みは取付片20Aや傾斜片20Bの厚みの2倍になっていて、剛性を高められている。
【0039】
図1、
図13に示されるように、追加枠20には開閉式の上蓋70が取り付けられている。
図1において、追加枠20のうち、ハッチ枠12における避難梯子10の取付点側と同じ側の端部には、支点74がそれぞれ設けられている。上蓋70は、この支点74に回動可能に支持され、追加枠20の上側の開口を開閉可能とされている。
【0040】
上記したV字リンク54の上端に設けられた支点58には、上リンク80の一端が回動自在に取り付けられている。上リンク80の他端は、上蓋70に設けられた支点78に回動自在に取り付けられている。つまり、上蓋70は、上リンク80によりV字リンク54の上端と連結されている。支点78は、上蓋70の支点74から離れて設けられている。これにより、上蓋70の開閉に伴い、V字リンク54が揺動し、またV字リンク54の揺動に伴い上蓋70が開閉するようになっている。
【0041】
このように、上蓋70と下蓋46は、V字リンク54、上リンク80及び下リンク60により連結されており、一方を開くと他方も開き、一方を閉じると他方も閉じるように連動するようになっている。
【0042】
図1、
図2に示されるように、上蓋70の裏面には把手82が設けられている。この把手82は、避難梯子10を使用して階下へ避難する人が、避難梯子10を降り始めるときに自身の姿勢を安定させるために使用することができる。また、上蓋70の裏面には、被係止部84が設けられている。ハッチ枠12における避難梯子10の取付点側と反対側の縦壁部12Aには、係止部86が設けられている。係止部86は、上蓋70の閉止時に被係止部84を係止する部位である。係止部86と被係止部84の係止状態を解除する操作を行うことで、上蓋70を開くことができるようになっている。
【0043】
(上張出し部)
図3において、上張出し部22は、追加枠20に設けられ、下張出し部52の上方でハッチ枠12の外方側に張り出し、防水シート18のハッチ枠12側の端部を覆う部位である。上張出し部22は、追加枠20の一部を構成している。
図10に示されるように、上張出し部22は、例えば上横片22Aと、外縦片22Bと、下横片22Cとを有している。上横片22Aは、縦片20Cの外側の折返し下端からハッチ枠12の外方側に延びる部位である。外縦片22Bは、上横片22Aの外端から下方に延びる部位である。下横片22Cは、外縦片22Bの下端からハッチ枠12の内方側に延びる部位である。
図3に示されるように、ハッチ枠12に対する追加枠20の取付状態において、下横片22Cは、ハッチ枠12の外面に対向している。
【0044】
一例として、ハッチ枠12の縦壁部12A,12Bを基準とした上張出し部22の張出し量は、下張出し部52の張出し量と同等である。換言すれば、上張出し部22の外縦片22Bと、下張出し部52の外縦片52Bとが、略同一の鉛直方向面内にある。
【0045】
(防水部)
図12において、防水部24は、上張出し部22と、下張出し部52の上面52Aにある防水シート18との間を塞ぐ部位であり、例えばコーキング剤88と、充填物90(バックアップ材)とを有している。上張出し部22と、下張出し部52の上面52Aにある防水シート18との間の奥側にコーキング剤88が防水部24の奥側に入ってしまわないようにするため充填物90を詰めた後、コーキング剤88で防水処理が行われている。
【0046】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。
図1において、本実施形態に係るハッチの取付構造Sでは、仕上げ床体16の上面からハッチ枠12の下張出し部52の上面52Aに渡って防水シート18が設けられ、防水シート18のハッチ枠12側の端部が、ハッチ枠12に対し上方から取り付けられる追加枠20の上張出し部22により覆われ、上張出し部22と防水シート18との間が防水部24で塞がれている。したがって、上張出し部22と下張出し部52の間で防水シート18の端部の小口が保護され、該小口からの防水シート18の剥離が抑制される。また、
図12に示されるように、仕上げ床体16とハッチ枠12の間が、防水シート18と防水部24により二重に防水されるので、防水性が良好となる。
【0047】
図4に示されるように、ハッチ枠12の縦壁部12A,12Bに設けられた固定片40により、ハッチ枠12が床体14の構造躯体26に固定されている。また、避難梯子10が取り付けられる部位に対応する固定片40は、補強部材42で補強されているので、多大なモーメントの発生する吊元側の補強をすることができる。このため、避難梯子10の使用に耐え得る強度を確保することができる。
【0048】
また、追加枠20の下部の取付片20Aがハッチ枠12の上端部の内側に嵌入され、該上端部の内面に当接しているので、ハッチ枠12に対する追加枠20の組付け精度を向上させ、組付けを容易にすることができる。
【0049】
更に、上蓋70及び下蓋46により、ハッチ枠12内で折り畳まれている避難梯子10を保護することができる。また、非常時には上蓋70及び下蓋46を開き、避難梯子10を伸ばすことで、階下への避難が可能となる。
【0050】
また、固定片40の内、梯子吊元側の固定片40に補強部材42が設けられることにより、多大なモーメントの発生する吊元側の補強をすることができる。
【0051】
固定片40の補強部材42及び上片40Cがハッチ枠12の下張出し部52と当接して設けられることにより、ハッチ枠12にかかる荷重を有効に床体14に伝えることができる。
【0052】
(ハッチの施工方法)
ハッチの施工方法は、例えば第1工程S1から第6工程S6を有する。
【0053】
図2から
図4において、第1工程S1では、開口14Aが上下に貫通して形成された床体14の開口14Aに、外方側に張り出した下張出し部52を有する枠状のハッチ枠12を設けると共に、ハッチ枠12を床体14に固定する。このとき、例えばねじ44を用いて固定片40,40αを床体14に締結固定する。
【0054】
図5、
図6において、第2工程S2では、ハッチ枠12が取り付けられた床体14の上方に仕上げ床体16を設ける。このとき、床体14と仕上げ床体16の間に例えば根太64を配置し、仕上げ床体16を床体14より高い位置に図示しない水勾配をもって設ける。
【0055】
図5に示されるように、第3工程S3に先立って、追加枠20に取り付けられている上蓋70の支点78(
図1、
図2)から上リンク80を外し、追加枠20をハッチ枠12から一旦離脱させる。
【0056】
図7、
図8において、第3工程S3では、仕上げ床体16の上面からハッチ枠12における下張出し部52の上面52Aに渡って防水シート18を設ける。このとき、防水シート18を、例えば下張出し部52の外縦片52Bのうち仕上げ床体16より上に位置する外面にも設ける。
【0057】
図9において、第4工程S4では、ハッチ枠12に対し上方から追加枠20を取り付ける。このとき、例えば追加枠20の下部の取付片20Aを、ハッチ枠12の上端部の内側に嵌入させ、該上端部の内面に当接させる。また、取付片20Aをねじ68によりハッチ枠12の縦壁部12A,12Bに締結固定する。
【0058】
図10、
図11において、第5工程S5では、追加枠20に設けられ、下張出し部52の上方でハッチ枠12の外方側に張り出し、防水シート18のハッチ枠12側の端部を覆う上張出し部22と、防水シート18との間を防水部24で塞ぐ。一例として、上張出し部22と、下張出し部52の上面52Aにある防水シート18との間の奥側に充填物90を詰めた後、コーキング剤88で防水処理を行う。
【0059】
図1において、第6工程S6では、上蓋70の支点78に第3工程S3で外しておいた上リンク80を結合する。
【0060】
この他、ハッチ枠12の内部に折り畳み式の避難梯子10を設け、ハッチ枠12の下端部には開閉式の下蓋46を設ける。
【0061】
このようにして、防水性を高めつつ、ハッチ枠12を容易に施工することができる。また、避難梯子10を有するハッチを容易に施工することができる。更に、防水シート18(防水層)の施工を容易に行うことができる。また、上張出し部22と下張出し部52の間で防水シート18の端部の小口が保護され、該小口からの防水シート18の剥離が抑制される。また、仕上げ床体16とハッチ枠12の間が、防水シート18と防水部24により二重に防水されるので、防水性が良好となる。
【0062】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、本発明の実施形態は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0063】
防水層の一例として防水シート18を挙げたが、他にFRP防水等の手段を用いてもよい。防水部24を設けるものとしたが、防水部24を設けない構成としてもよい。板材28,30,38については、石膏ボードやケイカル板に限らず、スレート板や木毛セメント板等、耐火性を有するものを用いてもよい。また、ハッチ枠12の構成は、上記のものに限られず、適宜変更することが可能である。更に、ハッチの施工方法において、第5工程S5を省略してもよい。防水部24を設けない場合には、更に第6工程S6を省略してもよい。
【符号の説明】
【0064】
10 避難梯子
12 ハッチ枠
14 床体
14A 開口
16 仕上げ床体
18 防水シート(防水層)
20 追加枠
20A 取付片
22 上張出し部
24 防水部
40 固定片
40α 固定片
42 補強部材
46 下蓋
52 下張出し部
52A 上面
70 上蓋
82 把手
S ハッチの取付構造
S1 第1工程
S2 第2工程
S3 第3工程
S4 第4工程
S5 第5工程
S6 第6工程