(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034657
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】旋回機構、および、加工装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 1/44 20060101AFI20240306BHJP
B23Q 1/52 20060101ALI20240306BHJP
B23Q 1/70 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
B23Q1/44 Z
B23Q1/52
B23Q1/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139050
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 光晴
【テーマコード(参考)】
3C048
【Fターム(参考)】
3C048BC02
3C048BC03
3C048DD11
3C048EE00
(57)【要約】
【課題】旋回支点と重心位置とが異なる構造物を水平方向と交差する面内で旋回させる場合に、構造物の旋回に要する駆動力が重力の影響によって増大することを抑制する。
【解決手段】水平面と交差する交差平面内で旋回支点を中心に構造物を旋回させ、構造物の交差平面内における重心位置と旋回支点の位置とが異なる旋回機構が提供される。旋回機構は、構造物に旋回動作のための駆動力を付与する旋回駆動部と、構造物と離間した固定部の固定位置と構造物の旋回支点とは異なる接続位置とを接続するアシスト部とを備える。アシスト部は、旋回動作に伴って、固定位置と接続位置との間で伸縮しつつ固定位置を中心に旋回可能に、かつ、構造物の旋回の角度範囲の少なくとも一部において、アシスト部の伸縮方向に沿ったアシスト力を接続位置に加えることによって、構造物に、自重モーメントと逆方向のアシストモーメントを生じさせるように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平面と交差する交差平面内で旋回支点を中心に構造物を旋回させ、前記構造物の前記交差平面内における重心位置と前記旋回支点の位置とがそれぞれ異なる、旋回機構であって、
前記構造物に、前記旋回支点を中心とした前記交差平面内における旋回動作のための駆動力を付与する旋回駆動部と、
前記構造物と離間した固定部の固定位置と、前記構造物の前記旋回支点とは異なる接続位置と、を接続するアシスト部と、を備え、
前記アシスト部は、
前記旋回動作に伴って、前記固定位置と前記接続位置との間で伸縮しつつ前記固定位置を中心に旋回可能に、かつ、
前記構造物が前記旋回動作によって旋回する角度範囲の少なくとも一部において、前記アシスト部の伸縮方向に沿ったアシスト力を前記接続位置に加えることによって、前記構造物に、前記構造物の自重による自重モーメントと逆方向のアシストモーメントを生じさせるように構成されている、
旋回機構。
【請求項2】
請求項1に記載の旋回機構であって、
前記旋回駆動部を制御する旋回制御部を備え、
前記固定位置は、鉛直方向において、前記構造物の上側または下側に配置され、
前記旋回制御部は、前記旋回駆動部を制御することによって、前記重心位置が鉛直方向において前記旋回支点と前記固定位置との間に位置する角度範囲のうちの予め定められた角度範囲内で、前記構造物を旋回させ、
前記アシスト部は、前記旋回動作中に前記重心位置が鉛直方向において前記旋回支点に近付くほど、前記アシストモーメントが大きくなるように構成されている、旋回機構。
【請求項3】
請求項2に記載の旋回機構であって、
前記アシスト部は、前記旋回動作中に前記重心位置が鉛直方向において前記旋回支点に近付くほど、前記旋回支点と前記重心位置とを結ぶ軸線と前記アシスト力の方向との間の前記交差平面内における角度差が大きくなるように構成されている、旋回機構。
【請求項4】
請求項3に記載の旋回機構であって、
前記アシスト部は、前記旋回動作中に前記重心位置が前記鉛直方向において前記旋回支点の最も近くに位置する場合に、前記角度差が90°となるように構成されている、旋回機構。
【請求項5】
請求項2に記載の旋回機構であって、
前記アシスト部は、前記旋回動作中に前記重心位置が前記鉛直方向において前記旋回支点から最も遠くに位置する場合に、前記接続位置と前記固定位置との間の距離が最も短くなるように配置されている、旋回機構。
【請求項6】
請求項5に記載の旋回機構であって、
前記アシスト部は、前記固定位置と前記接続位置との間で伸縮可能に構成された駆動シリンダを有し、前記駆動シリンダによって前記固定位置と前記接続位置との間で伸縮可能に構成され、
前記駆動シリンダは、前記旋回動作中に前記重心位置が前記鉛直方向において前記旋回支点から最も遠くに位置する場合に、前記駆動シリンダの前記伸縮方向における長さが、前記駆動シリンダの前記長さの下限値と一致するように配置されている、旋回機構。
【請求項7】
請求項2に記載の旋回機構であって、
前記旋回動作中に前記重心位置が前記鉛直方向において前記旋回支点から最も遠くに位置する場合に、前記交差平面と直行する直交方向に沿って見たときに、前記重心位置と、前記旋回支点と、前記接続位置と、前記固定位置と、が同一直線上に並んで配置されている、旋回機構。
【請求項8】
請求項1に記載の旋回機構であって、
前記接続位置は、前記旋回支点と前記重心位置とを結ぶ軸線に沿った方向において、前記重心位置を挟んで前記旋回支点と反対側に配置されている、旋回機構。
【請求項9】
請求項1に記載の旋回機構であって、
前記アシスト部は、前記固定位置と前記接続位置との間で伸縮可能に構成された駆動シリンダを有し、前記駆動シリンダによって前記固定位置と前記接続位置との間で伸縮可能に構成され、
前記駆動シリンダは、前記固定位置において、トラニオン軸によって支持されている、旋回機構。
【請求項10】
請求項1に記載の旋回機構であって、
前記アシスト部は、前記アシスト力として、前記接続位置から前記固定位置に向かう引っ張り力を前記接続位置に加える、旋回機構。
【請求項11】
請求項1に記載の旋回機構であって、
前記旋回駆動部を制御する旋回制御部を備え、
前記固定位置は、鉛直方向において、前記構造物の上側または下側に配置され、
前記旋回駆動部は、前記駆動力を付与するためのモータを有し、
前記旋回制御部は、前記旋回動作において、鉛直方向において前記重心位置が前記固定位置と前記旋回支点との間に位置し、かつ、前記交差平面に直交する直交方向に沿って見たときに前記旋回支点と前記重心位置とを結ぶ軸線が鉛直方向に沿う状態を基準とする、前記構造物が旋回した角度を表す旋回角度θの絶対値が、予め定められた90°未満の角度閾値θM以下となるように前記構造物を旋回させ、
前記アシスト部は、下記式(1)によって表される、前記自重モーメントの大きさMと、下記式(2)によって表される、前記アシストモーメントの大きさBとが、下記式(3)の関係を満たすように構成されている、旋回機構。
M=d・m・g・sin|θ| …(1)
B=F・a・sinθ1 …(2)
|M-B|≦TR …(3)
(dは、前記重心位置と前記旋回支点との間の距離を表し、mは、前記構造物の質量を表し、gは、重力加速度の大きさを表し、θは、旋回角度を表し、Fは、前記アシスト力の大きさを表し、aは、前記接続位置と前記旋回支点との間の前記軸線に沿った方向における距離を表し、θ1は、前記交差平面内における前記軸線と前記アシスト力の方向との間の角度差を表し、TRは、前記モータを定格出力で駆動させた場合に前記旋回駆動部によって生じる前記構造物の旋回のモーメントを表す。)
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の旋回機構と、
前記固定部と、を備え、
前記構造物として、ワークを加工する工具を前記工具の軸中心に回転可能に支持する工具支持部を備え、
前記工具を回転駆動させる回転駆動部と、
前記回転駆動部を制御する駆動制御部と、を更に備える、加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、旋回機構、および、加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物を旋回させる旋回機構に関して、特許文献1には、旋回式のテーブルを有する工作機械が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
旋回機構によって、構造物の重心位置とは異なる位置を旋回支点(旋回の中心)として、構造物を旋回させる場合がある。このように重心位置と旋回支点とが異なる構造物を旋回させる場合、重心位置と旋回支点とが一致する構造物を旋回させる場合と比較して、旋回に大きな駆動力を要し、モータ等によって構成される駆動部の大型化やコスト増を招いていた。特に、このような構造物を水平面と交差する面内において旋回させる場合、重力の影響によって、更に大きな駆動力を要する場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の第1の形態によれば、水平面と交差する交差平面内で旋回支点を中心に構造物を旋回させ、前記構造物の前記交差平面内における重心位置と前記旋回支点の位置とがそれぞれ異なる、旋回機構が提供される。この旋回機構は、前記構造物に、前記旋回支点を中心とした前記交差平面内における旋回動作のための駆動力を付与する旋回駆動部と、前記構造物と離間した固定部の固定位置と、前記構造物の、前記交差平面内において前記旋回支点よりも前記重心位置側の接続位置と、を接続するアシスト部と、を備える。前記アシスト部は、前記旋回動作に伴って、前記固定位置と前記接続位置との間で伸縮しつつ前記固定位置を中心に旋回可能に、かつ、前記構造物が前記旋回動作によって旋回する角度範囲の少なくとも一部において、前記アシスト部の伸縮方向に沿ったアシスト力を前記接続位置に加えることによって、前記構造物に、前記構造物の自重による自重モーメントと逆方向のアシストモーメントを生じさせるように構成されている。
このような形態によれば、アシスト部が自重モーメントと逆方向のアシストモーメントを生じさせるので、重心位置と旋回支点とが異なる構造物を交差平面内で旋回させる場合に、旋回動作に要する駆動力が重力の影響によって増大することを抑制できる。そのため、旋回駆動部の大型化やコスト増を抑制できる。
(2)上記形態において、前記旋回駆動部を制御する旋回制御部を備え、前記固定位置は、鉛直方向において、前記構造物の上側または下側に配置され、前記旋回制御部は、前記旋回駆動部を制御することによって、前記重心位置が鉛直方向において前記旋回支点と前記固定位置との間に位置する角度範囲のうちの予め定められた角度範囲内で、前記構造物を旋回させ、前記アシスト部は、前記旋回動作中に前記重心位置が鉛直方向において前記旋回支点に近付くほど、前記アシストモーメントが大きくなるように構成されていてもよい。このような形態によれば、旋回動作に要する駆動力が重力の影響によって増大することを効果的に抑制できる。
(3)上記形態において、前記アシスト部は、前記旋回動作中に前記重心位置が鉛直方向において前記旋回支点に近付くほど、前記旋回支点と前記重心位置とを結ぶ軸線と前記アシスト力の方向との間の前記交差平面内における角度差が大きくなるように構成されていてもよい。このような形態によれば、旋回動作中に重心位置が鉛直方向において旋回支点に近付くほどアシストモーメントが大きくなることを、簡易に実現できる。
(4)上記形態において、前記アシスト部は、前記旋回動作中に前記重心位置が前記鉛直方向において前記旋回支点の最も近くに位置する場合に、前記角度差が90°となるように構成されていてもよい。このような形態によれば、旋回動作に要する駆動力が重力の影響によって増大することを、より効果的に抑制できる。
(5)上記形態において、前記アシスト部は、前記旋回動作中に前記重心位置が前記鉛直方向において前記旋回支点から最も遠くに位置する場合に、前記接続位置と前記固定位置との間の距離が最も短くなるように配置されていてもよい。このような形態によれば、旋回動作において、構造物を左右方向に均等に旋回させやすくなる。
(6)上記形態において、前記アシスト部は、前記固定位置と前記接続位置との間で伸縮可能に構成された駆動シリンダを有し、前記駆動シリンダによって前記固定位置と前記接続位置との間で伸縮可能に構成され、前記駆動シリンダは、前記旋回動作中に前記重心位置が前記鉛直方向において前記旋回支点から最も遠くに位置する場合に、前記駆動シリンダの前記伸縮方向における長さが、前記駆動シリンダの前記長さの下限値と一致するように配置されていてもよい。このような形態によれば、構造物の旋回の角度範囲が、駆動シリンダの長さによって制限されることを抑制できる。
(7)上記形態において、前記旋回動作中に前記重心位置が前記鉛直方向において前記旋回支点から最も遠くに位置する場合に、前記交差平面と直行する直交方向に沿って見たときに、前記重心位置と、前記旋回支点と、前記接続位置と、前記固定位置と、が同一直線上に並んで配置されていてもよい。このような形態によれば、構造物の姿勢をより安定させやすい。
(8)上記形態において、前記接続位置は、前記旋回支点と前記重心位置とを結ぶ軸線に沿った方向において、前記重心位置を挟んで前記旋回支点と反対側に配置されていてもよい。このような形態では、アシスト力が重力と反対方向の成分を有するので、例えば、軸線に沿った方向において旋回支点が重心位置と接続位置とによって挟まれて配置される形態と比較して、旋回支点に配置される支軸やベアリングへの負荷を抑制できる。また、例えば、軸線に沿った方向において接続位置が旋回支点と重心位置とによって挟まれて配置される形態と比較して、接続位置が旋回支点に対して、より遠くに配置されるので、アシストモーメントがより大きくなる。そのため、旋回動作に要する駆動力が重力の影響によって増大することを、より効果的に抑制できる。
(9)上記形態において、前記アシスト部は、前記固定位置と前記接続位置との間で伸縮可能に構成された駆動シリンダを有し、前記駆動シリンダによって前記固定位置と前記接続位置との間で伸縮可能に構成され、前記駆動シリンダは、前記固定位置において、トラニオン軸によって支持されていてもよい。このような形態によれば、固定位置と接続位置との位置関係や、構造物の旋回の角度範囲が、駆動シリンダの仕様等によって制限されることを抑制できる。
(10)上記形態において、前記固定位置は、鉛直方向において、前記アシスト部は、前記アシスト力として、前記接続位置から前記固定位置に向かう引っ張り力を前記接続位置に加えてもよい。このような形態によれば、旋回動作に要する駆動力が重力の影響によって増大することを簡易に抑制できる。
(11)上記形態において、前記旋回駆動部を制御する旋回制御部を備え、前記固定位置は、鉛直方向において、前記構造物の上側または下側に配置され、前記旋回駆動部は、前記駆動力を付与するためのモータを有し、前記旋回制御部は、前記旋回動作において、鉛直方向において前記重心位置が前記固定位置と前記旋回支点との間に位置し、かつ、前記交差平面に直交する直交方向に沿って見たときに前記旋回支点と前記重心位置とを結ぶ軸線が鉛直方向に沿う状態を基準とする、前記構造物が旋回した角度を表す旋回角度θの絶対値が、予め定められた90°未満の角度閾値θM以下となるように前記構造物を旋回させ、前記アシスト部は、下記式(1)によって表される、前記自重モーメントの大きさMと、下記式(2)によって表される、前記アシストモーメントの大きさBとが、下記式(3)の関係を満たすように構成されていてもよい。
M=d・m・g・sin|θ| …(1)
B=F・a・sinθ1 …(2)
|M-B|≦TR …(3)
(dは、前記重心位置と前記旋回支点との間の距離を表し、mは、前記構造物の質量を表し、gは、重力加速度の大きさを表し、θは、旋回角度を表し、Fは、前記アシスト力の大きさを表し、aは、前記接続位置と前記旋回支点との間の前記軸線に沿った方向における距離を表し、θ1は、前記交差平面内における前記軸線と前記アシスト力の方向との間の角度差を表し、TRは、前記モータを定格出力で駆動させた場合に前記旋回駆動部によって生じる前記構造物の旋回のモーメントを表す。)
このような形態によれば、旋回制御部のモータの過負荷を抑制できる。
(12)本開示の第2の形態によれば、加工装置が提供される。この加工装置は、上記形態の旋回機構と、前記固定部と、を備え、前記構造物として、ワークを加工する工具を前記工具の軸中心に回転可能に支持する工具支持部を備え、前記工具を回転駆動させる回転駆動部と、前記回転駆動部を制御する切削制御部と、を更に備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態における旋回機構の概略構成を示す説明図である。
【
図2】本実施形態における構造物の旋回動作を説明する第1の図である。
【
図3】本実施形態における構造物の旋回動作を説明する第2の図である。
【
図4】自重モーメントとアシストモーメントとの関係を示す説明図である。
【
図5】第2実施形態としての加工装置の概略構成を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における旋回機構100の概略構成を示す説明図である。
図1には、互いに直交するX,Y,Z方向に沿った矢印が表されている。X,Y,Z方向は、互いに直交する3つの空間軸であるX軸、Y軸、Z軸に沿った方向であり、それぞれ、X軸、Y軸、Z軸に沿う一方側の方向と、その反対方向を両方含む。X軸およびY軸は、水平面に沿った軸であり、Z軸は、鉛直線に沿った軸である。他の図においても、X,Y,Z方向に沿った矢印が、適宜、表されている。
図1におけるX,Y,Z方向と、他の図におけるX,Y,Z方向とは、同じ方向を表している。以下では、+Z方向のことを「上」、-Z方向のことを「下」ともいう。また、X方向およびY方向に沿った平面のことを「XY平面」とも呼び、Y方向およびZ方向に沿った平面のことを、「YZ平面」とも呼ぶ。本実施形態では、「XY平面」は、水平面である。
【0009】
旋回機構100は、水平面と交差する交差平面内で、構造物20を、旋回支点21を中心に旋回させる。本実施形態では、交差平面は、水平面と直交するYZ平面に平行な平面である。旋回支点21は、構造物20の、交差平面内の地点である。以下では、構造物20が旋回支点21を中心として交差平面内において旋回する動作のことを、旋回動作とも呼ぶ。
【0010】
図1に示すように、構造物20の交差平面内の重心位置22と、旋回支点21の位置とは、それぞれ異なる。「交差平面内の重心位置」とは、交差平面に直交する直交方向に沿って見たときの、構造物20の重心の交差平面内における位置のことを指す。直交方向は、同じ軸に沿う一方側の方向とその反対方向とを両方含み、本実施形態では、X軸に沿った方向である。従って、本実施形態では、重心位置22は、構造物20の重心を通るX軸に垂直な軸と、交差平面とが交わる位置である。
【0011】
旋回機構100は、旋回駆動部110と、アシスト部150と、制御部200とを備える。構造物20は、後述するように、アシスト部150を介して、構造物20と離間した固定部300と接続されている。
【0012】
旋回駆動部110は、構造物20に、旋回動作のための駆動力を付与する。本実施形態では、旋回支点21において構造物20を旋回可能に軸支する軸状の支軸111と、支軸111に接続され、支軸111に回転駆動力を付与するモータ112とを有している。支軸111は、その軸方向がX方向に沿うように配置されている。モータ112は、構造物20の-X方向側に配置されている。モータ112は、例えば、無励磁作動形ブレーキを有するモータとして構成される。旋回駆動部110は、旋回制御部210による制御下で駆動する。本実施形態では、旋回支点21には、ベアリング(図示せず)が配置されている。ベアリングは、例えば、滑り軸受けであってもよいし、ボールベアリングやニードルベアリング等の転がり軸受けであってもよい。
【0013】
他の実施形態では、旋回駆動部110は、例えば、ラックアンドピニオン機構によって構造物20を旋回させてもよい。この場合、例えば、旋回支点21において軸支される構造物20の外周側面に歯溝を設けてラックとし、旋回駆動部110を、ラックとしての構造物20を移動させるピニオンとして構成してもよい。また、他の実施形態では、旋回駆動部110は、構造物20を固定する支持部を旋回させることによって、支持部とともに構造物20を旋回させてもよい。
【0014】
アシスト部150は、固定部300の固定位置305と、構造物20の接続位置23とを接続する。接続位置23は、構造物20の、交差平面内における旋回支点21とは異なる位置である。本実施形態では、接続位置23は、旋回支点21の、方向d1側に配置されている。方向d1は、旋回支点21から重心位置22に向かう方向である。より詳細には、本実施形態では、接続位置23は、重心位置22と旋回支点21とを結ぶ軸線AXに沿った方向において、重心位置22を挟んで旋回支点21と反対側に配置されている。また、本実施形態における接続位置23は、X方向に沿って見たときに、軸線AX上に配置されている。本実施形態では、固定位置305は、鉛直方向において、構造物20の上側に配置されている。
【0015】
本実施形態におけるアシスト部150は、固定位置305と接続位置23との間で伸縮可能に構成された駆動シリンダ151を有するシリンダ機構として構成されている。アシスト部150は、固定端である固定位置305と自由端である接続位置23とを繋ぐリンクとして機能する。アシスト部150は、構造物20の旋回動作に伴って、固定位置305と接続位置23との間で伸縮しつつ、固定位置305を中心に旋回可能に構成されている。
【0016】
本実施形態における駆動シリンダ151は、単動式の引込みタイプの油圧シリンダ装置によって構成され、シリンダ部152と、シリンダ部152に挿入され、シリンダ部152からの突出量が調整可能に構成されたロッド部153とを有している。本実施形態では、シリンダ部152が固定位置305に固定され、ロッド部153の突出方向における先端部が接続位置23に固定されている。シリンダ部152内の油圧が調整されることにより、シリンダ部152からのロッド部153の突出量や、駆動シリンダ151による引っ張り力の大きさが調整される。シリンダ部152内の油圧は、駆動シリンダ151と油タンクとを接続する配管に配置された各種弁やポンプ等(それぞれ図示せず)が制御部200によって制御されることで、制御される。なお、他の実施形態では、駆動シリンダ151は、例えば、複動タイプのシリンダ装置として構成されてもよい。また、駆動シリンダ151は、例えば、エアシリンダとして構成されてもよいし、電動シリンダとして構成されてもよい。
【0017】
本実施形態では、駆動シリンダ151は、固定位置305において、トラニオン軸306によって固定されている。より詳細には、シリンダ部152の突出方向における後端部と先端部との間の部分が、トラニオン軸306によって固定位置305に固定されている。このような、トラニオン軸306を用いた駆動シリンダ151の固定態様は、「トラニオン形」とも呼ばれる。
【0018】
制御部200は、1以上のプロセッサーと、主記憶装置と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェイスとを備えるコンピュータによって構成されている。他の実施形態では、制御部200は、例えば、複数の回路の組み合わせによって構成されてもよい。
【0019】
制御部200は、旋回駆動部110を制御する旋回制御部210を有している。本実施形態における旋回制御部210は、制御部200がプログラムを実行することによって実現される機能部である。他の実施形態では、旋回制御部210は、例えば、制御部200とは別体のコンピュータ等として構成されていてもよい。
【0020】
図2は、本実施形態における構造物20の旋回動作を説明する第1の図である。
図3は、本実施形態における構造物20の旋回動作を説明する第2の図である。
図2では、構造物20の旋回角度θが30°である場合の旋回機構100の様子が実線によって示されている。また、
図2では、旋回角度θが-30°である場合の構造物20、および、その場合のアシスト部150が破線によって示されている。
図3では、旋回角度θが46°である場合の旋回機構100の様子が実線によって示されている。
【0021】
旋回角度θは、構造物20の旋回の角度を表す。旋回角度θは、鉛直方向において重心位置22が固定位置305と旋回支点21との間に位置し、かつ、交差平面に直交する直交方向に沿って見たときに重心位置22と旋回支点21とが鉛直方向に沿った同一線上に位置する状態を基準とする角度であり、この状態で0°となる。つまり、
図1では、旋回角度θは0°である。旋回角度θは、
図1の状態における軸線AX0を基準とする、旋回動作に伴う軸線AXの回転角度に相当するとも言える。本実施形態では、旋回角度θは、+X方向に沿って見たときに、0°を基準として、構造物20が時計回りに旋回した場合に+の値をとり、反時計回りに旋回した場合に-の値をとるように定義される。従って、本実施形態では、旋回角度θの絶対値は、+X方向に沿って見たときに、構造物20が時計回り又は反時計回りのいずれかに旋回するほど増加し、重心位置22が旋回支点21の真下に位置する場合に最大の180°となる。
【0022】
以下では、
図1のように、旋回角度θが0°である状態のことを、「構造物20が旋回していない状態」とも呼ぶ。また、
図2および
図3のように、旋回角度θが0°より大きい、または、0°より小さい状態のことを、「構造物20が旋回した状態」とも呼ぶ。また、旋回角度θが0°より大きい状態のことを、「構造物20が右に旋回した状態」とも呼び、旋回角度θが0°より小さい状態のことを、「構造物20が左に旋回した状態」とも呼ぶ。また、重心位置22がより上方に向かうように構造物20が旋回することを「上方への旋回動作」とも呼ぶ。つまり、「上方への旋回動作」は、重力に逆らう旋回動作である。重心位置22がより下方に向かうように構造物20が旋回することを「下方への旋回動作」とも呼ぶ。本実施形態では、上方への旋回動作は、旋回角度θの絶対値をより小さくする旋回動作に相当し、下方への旋回動作は、旋回角度θの絶対値をより大きくする旋回動作に相当する。
【0023】
構造物20が旋回動作によって旋回する角度範囲のことを、旋回範囲とも呼ぶ。本実施形態では、旋回制御部210は、旋回駆動部110を制御することによって、重心位置22が鉛直方向において旋回支点21と固定位置305との間に位置する角度範囲のうちの予め定められた指定角度範囲内で、構造物20を旋回させる。つまり、本実施形態における旋回範囲は、指定角度範囲と一致する。なお、「重心位置22が鉛直方向において旋回支点21と固定位置305との間に位置する」とは、重心位置22が鉛直方向において旋回支点21と同じ位置に位置する場合を含む。旋回制御部210は、旋回動作において、旋回角度θの絶対値が予め定められた90°以下の角度閾値θ
M以下となるように、構造物20を旋回させるとも言える。本実施形態では、角度閾値θ
Mは、46°である。つまり、本実施形態では、指定角度範囲は、旋回角度θが-46°~46°となる範囲である。また、
図3は、旋回角度θの絶対値と角度閾値θ
Mとが一致した状態を示している。
【0024】
図1~
図3に示すように、固定位置305が上側に配置される形態において構造物20を指定角度範囲内で旋回させる場合、固定位置305は、旋回動作において、重心位置22は、旋回支点21の上側を移動する。これに対して、他の実施形態では、固定位置305は、構造物20の下側に配置されてもよい。固定位置305が構造物20の下側に配置される形態において構造物20を指定角度範囲内で旋回させる場合、旋回動作において、重心位置22は、旋回支点21の下側を移動する。
【0025】
また、本実施形態では、アシスト部150は、旋回動作中に重心位置22が鉛直方向において旋回支点21から最も遠くに位置する場合、つまり、旋回角度θが0°である場合に、接続位置23と固定位置305との間の距離が最も短くなるように配置されている。例えば、
図1における接続位置23と固定位置305との間の距離Laは、
図2における同様の距離Lbや、
図3における同様の距離Lcよりも短い。なお、距離Lbは、距離Lcよりも短い。
【0026】
また、駆動シリンダ151は、旋回角度θが0°である場合に、駆動シリンダ151の伸縮方向における長さが、駆動シリンダ151の伸縮方向における長さの下限値と一致するように配置されている。従って、
図1における駆動シリンダ151の伸縮方向における長さLmは、駆動シリンダ151の長さの下限値と一致する。
図1に示した状態では、シリンダ部152からのロッド部153の突出量が、突出量の下限値に一致するとも言える。
【0027】
アシスト部150は、旋回範囲の少なくとも一部において、アシスト力FAを接続位置23に加えることによって、アシストモーメントを生じさせる。アシスト力FAとは、アシスト部150の伸縮方向に沿った力のことを指す。アシストモーメントは、アシスト力FAによって生じる、自重モーメントと逆方向のモーメントのことを指す。自重モーメントとは、構造物20の自重によるモーメントのこと指す。本実施形態では、自重モーメントは、旋回角度θの絶対値を増加させる方向に構造物20を旋回させるモーメントとして作用する。反対に、アシストモーメントは、旋回角度θの絶対値を減少させる方向に構造物20を旋回させるモーメントとして作用する。
【0028】
図1~
図3に示すように、本実施形態におけるアシスト部150は、アシスト力FAとして、接続位置23に、接続位置23から固定位置305へと向かう引っ張り力を加えるように構成されている。より詳細には、本実施形態では、シリンダ部152内の油圧が制御部200によって一定に制御されることにより、アシスト部150は、旋回角度θによらず一定の引っ張り力を接続位置23に加える。
図1に示すように、本実施形態では、旋回角度θが0°の状態では、X方向に沿って見たときに重心位置22と旋回支点21と接続位置23と固定位置305とが同一の軸線AX上に並ぶように配置されるので、交差平面内における軸線AXとアシスト力FAの方向との間の角度差θ
1は0°である。そのため、旋回角度θが0°の状態では、アシストモーメントは生じない。一方で、
図2や
図3に示すように、旋回角度θの絶対値が0°より大きく、かつ、180°より小さい場合、角度差θ
1は0°より大きくなる。この状態では、アシスト力FAが軸線AXに垂直な成分、より詳細には、
図2に示したFAv1や
図3に示した成分FAv2を有するので、アシスト力FAによるアシストモーメントが発生する。なお、
図3に示した状態では、アシスト力FAは、成分FAv2のみを有する。
【0029】
本実施形態では、アシスト部150は、旋回動作中に重心位置22が鉛直方向において旋回支点21に近付くほど、つまり、旋回角度θが大きいほど、角度差θ
1が大きくなるように構成されている。より詳細には、本実施形態におけるアシスト部150は、旋回動作中に重心位置22が鉛直方向において旋回支点21の最も近くに位置する場合に、つまり、旋回角度θの絶対値が角度閾値θ
Mと一致する場合に、角度差θ
1がその最大値である90°となるように構成されている。これによって、本実施形態におけるアシスト部150は、旋回動作中に重心位置22が鉛直方向において旋回支点21に近付くほど、つまり、旋回角度θが大きいほど、アシストモーメントが大きくなるように構成されている。例えば、
図3におけるアシストモーメントの大きさは、
図2におけるアシストモーメントよりも大きい。これは、
図3における成分FAv2が、
図2における成分FAv1よりも大きいからである。
【0030】
なお、旋回動作において、角度差θ1は、旋回角度θの関数となる。より詳細には、角度差θ1は、旋回角度θの絶対値の増加に伴って90°まで単調増加し、その後、単調減少する。旋回角度θに対する角度差θ1の増加や減少の程度、および、角度差θ1が90°となるときの旋回角度θの大きさは、旋回支点21の位置に対する固定位置305や接続位置23の位置によって変化する。例えば、仮に、接続位置23の位置が、軸線AX上において、本実施形態よりも旋回支点21から遠くに配置された場合、角度差θ1が90°となるときの旋回角度θの大きさは、46°よりも小さくなる。また、仮に、固定位置305の位置が、本実施形態よりも上方に配置された場合、角度差θ1が90°となるときの旋回角度θの大きさは、46°よりも大きくなる。従って、旋回支点21の位置に対する固定位置305や接続位置23の位置を適宜調整することで、例えば、本実施形態のように、アシスト部150を、旋回角度θが大きいほど角度差θ1が大きくなるように構成できる。
【0031】
図4は、本実施形態における自重モーメントの大きさMとアシストモーメントの大きさBとの関係を示す説明図である。
図4には、横軸を旋回角度θの絶対値とし、縦軸をモーメントの大きさとするグラフが示されている。
【0032】
図4に示した自重モーメントの大きさMは、下記式(1)によって表される。
M=d・m・g・sin|θ| …(1)
ただし、上記式(1)において、|θ|≦θ
Mである。dは、重心位置22と旋回支点21との間の距離を表す。mは、構造物20の質量を表す。gは、重力加速度の大きさを表す。アシストモーメントの大きさBは、下記式(2)によって表される。
B=F・a・sinθ
1 …(2)
Fは、アシスト力FAの大きさを表す。aは、接続位置23と旋回支点21との間の、軸線AXに沿った方向における距離を表す。つまり、本実施形態では、距離aは、接続位置23と旋回支点21との間の距離に相当する。
【0033】
本実施形態では、アシスト部150は、自重モーメントの大きさMと、アシストモーメントの大きさBとが、下記式(3)の関係を満たすように構成されている。
|M-B|≦T
R …(3)
T
Rは、モータ112を定格出力で駆動させた場合に旋回駆動部110によって生じる構造物20の旋回のモーメントの大きさを表す。モーメントの大きさT
Rは、例えば、旋回機構100の各種寸法やモータ112の定格トルク等に基づいて算出されることによって、定められる。以下では、アシストモーメントの大きさBとの差の絶対値、つまり、上記式(3)における|M-B|のことを、単に値Aとも呼ぶ。
図4に示すように、本実施形態では、値Aは、旋回角度θが46°であるときに、最大値である値V1をとる。そのため、本実施形態では、モーメントの大きさT
Rは、値V1よりも大きければよい。上記式(3)の関係は、旋回角度θの絶対値が角度閾値θ
M以下の範囲において、値Aの最大値ができるだけ小さくなるようにアシスト部150が構成されることによって、より満たされやすくなる。
【0034】
なお、
図4に示すように、本実施形態では、旋回角度θの絶対値が角度値θtよりも小さい場合、自重モーメントは、アシストモーメントよりも小さい。そのため、旋回制御部210は、旋回角度θの絶対値が角度値θtよりも小さい場合、構造物20を下方に旋回させるために、自重モーメントとアシストモーメントとが一致する場合と比較して、少なくとも値A分だけ大きい下方へのモーメントを、旋回駆動部110によって生じさせることを要する。このように、旋回範囲において、アシストモーメントが自重モーメントよりも大きい角度範囲が生じる場合、アシスト部150は、値Aの最大値が、自重モーメントの大きさの最大値V2よりも小さくなるように構成されると好ましい。また、この場合、アシスト部150は、旋回角度θの絶対値が角度値θtよりも小さい場合に、値Aが自重モーメントの大きさMよりも小さくなるように構成されるとより好ましい。このようにアシスト部150を調整する場合には、例えば、旋回支点21や重心位置22、接続位置23等の各種位置や、駆動シリンダ151内の油圧等の要素のうち、1つまたは2つ以上が適宜調整される。なお、この場合、例えば、構造物20に他の部材を固定することによって、旋回支点21と接続位置23との位置関係を固定したまま重心位置22の位置を変更することも可能である。以上のようにアシスト部150が調整されることで、全体として、構造物20の旋回に要するモーメントの大きさをより小さくできる可能性が高まる。
【0035】
以上で説明した本実施形態における旋回機構100は、構造物20の接続位置23と固定部300の固定位置305とを接続するアシスト部150は、構造物20の旋回動作に伴って、固定位置305と接続位置23との間で伸縮しつつ固定位置305を中心に旋回可能に、かつ、構造物20の旋回範囲の少なくとも一部において、伸縮方向に沿ったアシスト力FAを接続位置23に加えることによって、自重モーメントと逆方向のアシストモーメントを生じさせるように構成されている。これによって、アシスト部150が自重モーメントと逆方向のアシストモーメントを生じさせるので、重心位置22と旋回支点21とが異なる構造物20を交差平面内で旋回させる場合に、旋回動作に要する駆動力が重力の影響によって増大することを抑制できる。そのため、旋回駆動部110の大型化やコスト増を抑制できる。
【0036】
また、本実施形態では、旋回駆動部110を制御する旋回制御部210は、重心位置22が鉛直方向において旋回支点21と固定位置305との間に位置する角度範囲のうちの予め定められた指定角度範囲内で構造物20を旋回させ、アシスト部150は、旋回動作中に重心位置22が鉛直方向において旋回支点21に近付くほど、アシストモーメントが大きくなるように構成されている。旋回動作中に重心位置22が鉛直方向において旋回支点21に近付くほど、つまり、旋回角度θの絶対値が大きいほど、構造物20の自重モーメントは、より増加する。そのため、本実施形態のように、アシスト部150を、旋回動作中に重心位置22が鉛直方向において旋回支点21に近付くほどアシストモーメントが大きくなるように構成することで、旋回動作に要する駆動力が重力の影響によって増大することを効果的に抑制できる。
【0037】
また、本実施形態では、アシスト部150は、旋回動作中に重心位置22が鉛直方向において旋回支点21に近付くほど、軸線AXとアシスト力FAとの間の角度差θ1が大きくなるように構成されている。そのため、旋回動作中に重心位置22が鉛直方向において旋回支点21に近付くほどアシストモーメントが大きくなることを、 簡易に実現できる。つまり、旋回角度θの絶対値が大きいほどアシストモーメントが大きくなることを簡易に実現できる。
【0038】
また、本実施形態では、アシスト部150は、旋回動作中に重心位置22が鉛直方向において旋回支点21の最も近くに位置する場合に、角度差θ1が90°となるように構成されている。そのため、旋回動作に要する駆動力が重力の影響によって増大することを、より効果的に抑制できる。
【0039】
また、本実施形態では、アシスト部150は、旋回動作中に重心位置22が鉛直方向において旋回支点21から最も遠くに位置する場合に、接続位置23と固定位置305との間の距離が最も短くなるように配置されている。これによって、旋回動作において、構造物20を、0°の旋回角度θを基準として、左右に均等に旋回させやすくなる。
【0040】
また、本実施形態では、駆動シリンダ151は、旋回動作中に重心位置22が鉛直方向において旋回支点21から最も遠くに位置する場合に、駆動シリンダ151の伸縮方向における長さLmが、駆動シリンダ151の長さの下限値と一致するように配置されている。そのため、旋回範囲が、駆動シリンダ151の長さによって制限されることを抑制できる。
【0041】
また、本実施形態では、旋回動作中に重心位置22が鉛直方向において旋回支点21から最も遠くに位置する場合に、X方向に沿って見たときに、重心位置22と、旋回支点21と、接続位置23と、固定位置305とが同一直線上に並んで配置されている。そのため、特に旋回角度θが0°である場合において、構造物20の姿勢をより安定させやすい。
【0042】
また、本実施形態では、接続位置23は、軸線AXに沿った方向において、重心位置22を挟んで旋回支点21と反対側に配置されている。これによって、アシスト力FAが重力と反対方向の成分を有するので、例えば、軸線AXに沿った方向において旋回支点21が重心位置22と接続位置23とによって挟まれて配置される形態と比較して、旋回支点21に配置される支軸111やベアリングへの負荷を抑制できる。また、例えば、軸線AXに沿った方向において接続位置23が旋回支点21と重心位置22とによって挟まれて配置される形態と比較して、接続位置23が旋回支点21に対して、より遠くに配置されるので、アシストモーメントがより大きくなる。そのため、旋回動作に要する駆動力が重力の影響によって増大することを、より効果的に抑制できる。
【0043】
また、本実施形態では、駆動シリンダ151は、固定位置305において、トラニオン軸306によって支持されている。そのため、駆動シリンダ151の固定態様が、例えば、フート形やフランジ形である場合と比較して、固定位置305と接続位置23との位置関係を所望の位置関係に設定しやすくすることや、所望の旋回範囲を実現しやすくすることができる。例えば、フート形やフランジ形の態様で、シリンダ部152の突出方向における後端部を固定位置305に固定すると、固定位置305と接続位置23との間の距離が長すぎる場合がある。また、シリンダ部152の突出方向における先端部を固定位置305に固定すると、旋回角度θが0°の状態でシリンダ部152から突出するロッド部153の長さが長くなり、所望の旋回範囲を実現できない場合がある。駆動シリンダ151をトラニオン軸306によって支持することにより、このように、駆動シリンダ151の仕様等によって固定位置305と接続位置23との位置関係や旋回範囲が制限されることを抑制できる。
【0044】
また、本実施形態では、固定位置305は、鉛直方向において、アシスト部150は、アシスト力FAとして、固定位置305に向かう引っ張り力を接続位置23に加える。そのため、旋回動作に要する駆動力が重力の影響によって増大することを簡易に抑制できる。
【0045】
また、本実施形態では、自重モーメントの大きさMと、アシスト力FAによるアシストモーメントの大きさBとが、上記式(3)の関係を満たすように構成されている。そのため、旋回制御部210のモータ112の過負荷を抑制できる。
【0046】
B.第2実施形態:
図5は、第2実施形態としての加工装置400の概略構成を示す上面図である。加工装置400は、旋回機構101および固定部301と、第1実施形態で説明した構造物20としての、工具TLを支持する工具支持部410とを備える。
図5には、構造物20としての工具支持部410が右に旋回した状態が示されている。なお、
図5では、アシスト部150のロッド部153のうち一部が、破線によって示されている。第2実施形態における旋回機構101の構成のうち、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様である。
【0047】
本実施形態における加工装置400は、ワークWを工具TLによって研削加工する研削加工装置として構成されている。
図5に示すように、加工装置400は、上述した旋回機構101と固定部301と工具支持部410とに加え、工具TLを回転駆動させる回転駆動部420と、回転駆動部420を制御する駆動制御部220とを備える。更に、加工装置400は、ワークWを支持するテーブル440を備える。加工装置400による加工対象であるワークWは、例えば、ベアリングや、クランクシャフト、カムシャフト、ギヤ等、任意であってよい。
【0048】
工具支持部410は、ワークWを加工する工具TLを、工具TLの軸RX中心に回転可能に支持する。本実施形態における工具支持部410は、略円盤状の第1部分411と、略矩形板状の第2部分412とを有している。第1部分411と第2部分412とは、各板面が、交差平面に沿うように配置されている。第2部分412は、第2部分412の-X方向側の面が第1部分411の+X方向側の面に接触するように、第1部分411に固定されている。支軸111は、旋回支点21において、第1部分411と第2部分412とをX方向に沿って貫通している。本実施形態における旋回支点21は、第1部分411の略円形状の中心部に位置する。
【0049】
第2部分412は、長手方向と短手方向とを有している。第2部分412は、長手方向において、円盤状の第1部分411の直径よりも長い寸法を有しており、短手方向において、第1部分411の円盤の直径よりも短い寸法を有している。これにより、第2部分412は、その長手方向において、第1部分411よりも突出した突出部413を有している。本実施形態における接続位置23は、突出部413に位置している。
【0050】
本実施形態では、工具TLは、第2部分412の長手方向において、第2部分412の突出部413と反対側の端部に固定されている。本実施形態における工具TLは、略円筒形状を有する砥石として構成されている。工具TLは、第2部分412の長手方向において、その突出部413と反対側の端部が、第1部分411よりもやや突出するように配置されている。工具TLは、例えば、モータ等によって構成される回転駆動部420の回転駆動力によって、軸RX中心に回転する。本実施形態では、軸RXは、第2部分412の長手方向に沿っている。
【0051】
本実施形態における固定部301は、第3部分302と、第4部分303とを有している。第3部分302は、X方向に沿って見たときに略台形状の外形を有するフレームとして構成されている。第4部分303は、略扇形形状の平板状を有している。第4部分303は、第3部分302の下端部に固定されている。固定部301は、例えば、加工装置400の支柱(図示せず)や後述する移動機構にボルト等の固定具を介して固定される。
【0052】
本実施形態では、固定位置305は、第3部分302に配置されている。トラニオン軸306は、固定位置305において、アシスト部150のシリンダ部152と第3部分302とをつなぐように配置されている。第4部分303は、X方向に沿って見たときに、その略扇形形状の中心角部分が、第1部分411の略円形状の中心部と重なるように配置されている。第4部分303は、その略扇形形状の中心角部分において、第1部分411および第2部分412とともに支軸111によって貫かれている。これによって、工具支持部410は、固定部301に対して、旋回支点21を中心に旋回することができる。
【0053】
本実施形態における制御部201は、旋回制御部210に加え、上述した駆動制御部220を有している。本実施形態における駆動制御部220は、制御部201がプログラムを実行することによって実現される機能部である。他の実施形態では、駆動制御部220は、例えば、制御部201とは別体のコンピュータ等として構成されていてもよい。
【0054】
テーブル440は、例えば、モータ(図示せず)等の回転駆動力によって回転可能な回転テーブルとして構成される。これによって、工具TLによるワークWの加工の際に、テーブル440に支持されたワークWをテーブル440とともに回転させることができる。また、テーブル440は、例えば、2軸や3軸のアクチュエータ等によって構成される移動機構(図示せず)によって、工具支持部410とテーブル440との相対的な位置を変更可能に構成される。この場合、移動機構は、テーブル440を工具支持部410に対して移動させるように構成されてもよいし、工具支持部410をテーブル440に対して移動させるように構成されてもよいし、両者を移動させるように構成されてもよい。なお、本実施形態では、移動機構によって工具支持部410を移動させる場合、例えば、固定部301を移動機構のアクチュエータに連結させ、そのアクチュエータによって固定部301を移動させることで、工具支持部410を移動させてもよい。
【0055】
本実施形態では、工具TLによるワークWの加工の際に、旋回制御部210によって工具支持部410の旋回角度を適宜調整することによって、ワークWに対する工具TLの接触角度や位置を調整できる。これによって、例えば、ワークWのテーパ加工を行うことや、ワークWの緻密な寸法制御を行うことができる。
【0056】
以上で説明した第2実施形態によっても、構造物20としての工具支持部410の上方への旋回動作をアシスト部150によってアシストできるので、上方への旋回動作に要する旋回駆動部110の駆動力を低減できる。
【0057】
なお、第2実施形態では、加工装置400は、研削加工装置として構成されていたが、例えば、切削加工装置として構成されてもよい。また、工具TLは、砥石でなくてもよく、例えば、フェイスミルやエンドミル等の各種ミルであってもよい。
【0058】
C.他の実施形態:
(C-1)上記実施形態では、交差平面は、水平面と直交している。これに対して、交差平面は、水平面と交差していれば、水平面と直交していなくてもよい。
【0059】
(C-2)上記実施形態では、アシスト部150は、旋回角度θの絶対値が角度閾値θMと一致する場合に、角度差θ1が90°となるように構成されている。これに対して、アシスト部150をこのように構成しなくてもよい。なお、アシスト部150をこのように構成せずに、旋回角度θの絶対値が角度閾値θM以下である場合に旋回角度θが大きいほど角度差θ1が大きくなることを実現してもよい。例えば、旋回角度θの絶対値が角度閾値θMと一致する場合に、角度差θ1が90°未満の角度となるようにアシスト部150を構成してもよい。
【0060】
(C-3)上記実施形態では、アシスト部150は、旋回角度θの絶対値が角度閾値θM以下である場合に旋回角度θが大きいほど角度差θ1が大きくなるように構成されている。これに対して、アシスト部150をこのように構成しなくてもよい。なお、アシスト部150をこのように構成せずに、旋回角度θの絶対値が角度閾値θM以下である場合に旋回角度θが大きいほどアシストモーメントが大きくなることを実現してもよい。例えば、旋回角度θの絶対値が大きいほど、アシスト部150によるアシスト力FAを大きくしてもよい。この場合、例えば、旋回角度θの絶対値が大きいほど、シリンダ部152内の油圧を高めてもよい。また、バネ等の弾性部材によって構成されたアシスト部150を、旋回角度θの絶対値が大きいほど弾性部材によって生じる引っ張り力が大きくなるように配置してもよい。
【0061】
(C-4)上記実施形態では、アシスト部150は、旋回角度θの絶対値が角度閾値θM以下である場合、旋回角度θが大きいほど、アシストモーメントが大きくなるように構成されている。これに対して、アシスト部150は、このように構成されていなくてよい。
【0062】
(C-5)上記実施形態では、旋回角度θが0°である場合に、X方向に沿って見たときに、重心位置22と旋回支点21と接続位置23と固定位置305とが同一直線上に並んで配置されているが、重心位置22等がこのように配置されなくてもよい。
【0063】
(C-6)上記実施形態では、旋回制御部210は、旋回動作において、旋回角度θの絶対値が、90°以下の角度閾値θM以下となるように構造物20を旋回させている。これに対して、旋回制御部210は、旋回動作において、旋回角度θの絶対値が90°より大きくなるように構造物20を旋回させてもよい。例えば、旋回駆動部110やアシスト部150が、構造物20を交差平面内において360°旋回させることが可能に構成されてもよい。また、旋回制御部210は、0°の旋回角度を基準として構造物20を左右に均等に旋回させなくてもよい。また、構造物20の旋回範囲に、0°の旋回角度が含まれていなくてもよい。
【0064】
(C-7)上記実施形態では、アシスト部150は、旋回角度θが0°である場合に、接続位置23と固定位置305との間の距離La1が、旋回角度θが0°とは異なる場合の距離Lbや距離Lcよりも短くなるように配置されている。これに対して、アシスト部150がこのように配置されていなくてもよく、例えば、距離Laが距離Lbや距離Lcと同じであってもよいし、距離Laが距離Lbや距離Lcより長くてもよい。
【0065】
(C-8)上記実施形態では、駆動シリンダ151は、旋回角度θが0°である場合に、駆動シリンダ151の長さLbが、駆動シリンダ151の長さの下限値と一致するように配置されている。これに対して、所望の旋回範囲が実現できれば、駆動シリンダ151は、このように配置されなくてもよい。
【0066】
(C-9)上記実施形態では、接続位置23は、軸線AXに沿った方向において、重心位置22を挟んで旋回支点21と反対側に配置されている。これに対して、接続位置23は、旋回支点21と異なる位置に配置されていれば、このように配置されていなくてもよい。例えば、軸線AXに沿った方向において、接続位置23が旋回支点21と重心位置22とによって挟まれて配置されてもよい。また、例えば、軸線AXに沿った方向において、旋回支点21が重心位置22と接続位置23とによって挟まれて配置されてもよい。この場合、アシスト力FAは、重力方向と同じ鉛直下方に向かう成分を有することを要する。そのため、上記実施形態のように固定位置305を構造物20の上方に配置する形態において、旋回支点21を軸線AXに沿った方向において重心位置22と接続位置23とによって挟まれるように配置する場合、アシスト部150を、例えば、固定位置305から接続位置23に向かう押圧力を接続位置23に加えるシリンダ機構等として構成できる。
【0067】
(C-10)上記実施形態では、駆動シリンダ151の固定態様は、トラニオン形であるが、例えば、フート形やフランジ形であってもよい。
【0068】
(C-11)上記実施形態では、アシスト部150は、駆動シリンダ151を有するシリンダ機構として構成されているが、アシスト部150は、シリンダ機構として構成されなくてもよい。例えば、アシスト部150は、バネ等の弾性部材によって構成されてもよい。
【0069】
(C-12)上記実施形態では、アシスト部150は、鉛直方向において構造物20よりも上側に配置されている。これに対して、アシスト部150は、鉛直方向において構造物20よりも上側に配置されなくてもよい。例えば、アシスト部150は、鉛直方向において構造物20よりも下側に配置されてもよい。このような形態において、接続位置23を、旋回支点21の方向d1側に配置する場合、アシスト部150を、例えば、アシスト力FAとして、固定位置305から接続位置23に向かう押圧力を接続位置23に加えるシリンダ機構等として構成できる。また、このように固定位置305を構造物20の下方に配置する形態において、旋回支点21を軸線AXに沿った方向において重心位置22と接続位置23とによって挟まれるように配置する場合、アシスト部150を、例えば、接続位置23から固定位置305に向かう引っ張り力を接続位置23に加えるシリンダ機構等として構成できる。
【0070】
(C-13)旋回機構100を、例えば、加工装置のテーブルの回転機構や位置決め機構として適用してもよい。また、旋回機構100を、加工装置以外に適用してもよい。例えば、旋回機構100を、車両のステアリング用旋回台として用いてもよいし、フォークリフトやサイドダンプ等の各種運搬機器における、回転フォークやサイドダンプバケット等の運搬具の位置や角度を制御する制御機構として用いてもよい。
【0071】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した形態中の技術的特徴に対応する各実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0072】
20…構造物、21…旋回支点、22…重心位置、23…接続位置、100,101…旋回機構、110…旋回駆動部、111…軸部、112…モータ、150…アシスト部、151…駆動シリンダ、152…シリンダ部、153…ロッド部、200,201…制御部、210…旋回制御部、220…駆動制御部、300,301…固定部、302…第3部分、303…第4部分、305…固定位置、306…トラニオン軸、400…加工装置、410…工具支持部、411…第1部分、412…第2部分、413…突出部、420…回転駆動部、440…テーブル