(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034674
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】曲げ抑制装置
(51)【国際特許分類】
F16L 57/00 20060101AFI20240306BHJP
F16L 1/12 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
F16L57/00 A
F16L1/12 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139075
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(74)【代理人】
【識別番号】100211052
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】上野 智裕
(72)【発明者】
【氏名】百々 泰
(72)【発明者】
【氏名】魚路 知生
【テーマコード(参考)】
3H024
【Fターム(参考)】
3H024AA01
3H024AB01
3H024AB06
3H024AC01
3H024AC03
(57)【要約】
【課題】信頼性の高い曲げ抑制装置を提供する。
【解決手段】
一態様では、水中に設置された可撓性を有する長尺部材の曲げを制限する曲げ抑制装置が提供される。この曲げ抑制装置は、長手方向に延在し、長尺部材を収容する内部空間を有する円筒状の本体部を備え、本体部は、該本体部の他の部分の肉厚よりも薄い肉厚を有する1又は複数の低剛性部を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に設置された可撓性を有する長尺部材の曲げを制限する曲げ抑制装置であって、
長手方向に延在し、前記長尺部材を収容する内部空間を有する円筒状の本体部を備え、
前記本体部は、該本体部の他の部分の肉厚よりも薄い肉厚を有する1又は複数の低剛性部を含む、曲げ抑制装置。
【請求項2】
前記本体部は、第1部分と、前記第1部分よりも前記本体部の前記長手方向の端部側に配置された第2部分とを含み、
前記1又は複数の低剛性部は、前記第2部分に形成されている、請求項1に記載の曲げ抑制装置。
【請求項3】
前記第2部分は、前記長手方向に互いに離間して配置される複数の高剛性部を更に含み、
前記1又は複数の低剛性部の内径は、前記複数の高剛性部の内径と等しく、
前記1又は複数の低剛性部の外径は、前記複数の高剛性部の外径よりも小さい、請求項2に記載の曲げ抑制装置。
【請求項4】
前記本体部の外周面には、前記本体部の周方向に延在する溝が形成され、
前記溝の中に配置され、前記本体部を径方向の外側から締め付ける締付部材を更に備える、請求項1に記載の曲げ抑制装置。
【請求項5】
前記本体部は、前記本体部の中心軸線を含む面で分離可能な第1半割管及び第2半割管を含む、請求項1に記載の曲げ抑制装置。
【請求項6】
前記第1半割管及び前記第2半割管は、可撓性を有する樹脂材料によって一体的に形成されている、請求項5に記載の曲げ抑制装置。
【請求項7】
前記本体部は、前記本体部の前記長手方向の端部に配置され、本体部の径方向に突出するフランジ部を更に含む、請求項1に記載の曲げ抑制装置。
【請求項8】
前記1又は複数の低剛性部は、第1低剛性部、及び、前記第1低剛性部よりも前記本体部の前記長手方向の端部側に配置された第2低剛性部を含み、
前記第2低剛性部の肉厚は、前記第1低剛性部の肉厚よりも薄い、請求項1に記載の曲げ抑制装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、長尺部材の曲げを制限する曲げ抑制装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力を伝送する電力ケーブルや流体を搬送する配管等の可撓性を有する長尺部材が水中に設置されることがある。これらの長尺部材は、許容曲げ半径を有している。長尺部材に許容曲げ半径を超える曲げが生じると、長尺部材に破損が生じる可能性がある。長尺部材の破損を防止するためには、長尺部材の過度な曲げを制限することが求められる。
【0003】
長尺部材に生じる過度な曲げを制限する装置として、例えば特許文献1及び2に記載のベンドリストリクタが知られている。特許文献1及び2に記載のベンドリストリクタは、内部ソケットと軸線方向に突出するノーズ部とを備える複数のモジュールを備える。これら複数のモジュールは、ノーズ部を隣接するモジュールの内部ソケットに挿入することで軸線方向に連結される。ベンドリストリクタの曲げ半径が最小曲げ半径に達すると、隣接するモジュールのノーズ部が内部ソケットの内壁に接触して、ベンドリストリクタが最小曲げ半径を超えて曲がることが制限される。
【0004】
また、特許文献3には、石油プラットホームに接続される軸方向位置決め装置と、当該軸方向位置決め装置に接続されるスリーブとを備えるベンドスティフナについて記載されている。このベンドスティフナは、軸方向位置決め装置が定められた範囲内でスリーブの回転運動を許容することで、スリーブに収容されたライザケーブルに過度な曲げが生じることを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-532669号公報
【特許文献2】英国特許出願公開第2540780号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0194782号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2に記載の曲げ抑制装置は、複数のモジュールが連結されているので部品点数が多い。部品点数が多いと、曲げ抑制装置の破損又は故障のリスクが増加する。水中に設置された装置を回収し修理するのには大きな手間がかかるので、この種の装置には高い信頼性が求められる。
【0007】
そこで、信頼性の高い曲げ抑制装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、水中に設置された可撓性を有する長尺部材の曲げを制限する曲げ抑制装置が提供される。この曲げ抑制装置は、長手方向に延在し、長尺部材を収容する内部空間を有する円筒状の本体部を備え、本体部は、該本体部の他の部分の肉厚よりも薄い肉厚を有する1又は複数の低剛性部を含む。
【0009】
本態様の曲げ抑制装置では、本体部に薄い肉厚を有する1又は複数の低剛性部が形成される。1又は複数の低剛性部の位置及び肉厚を調整することにより、曲げ抑制装置の曲げ剛性を制御することが可能となる。曲げ抑制装置の曲げ剛性を適切に設定することにより、本体部に収容された長尺部材に過度な曲げが生じることを抑制することができる。さらに、この曲げ抑制装置では、肉厚で曲げ剛性を制御するので、複数のモジュールを備える必要がなく、部品点数を少なくすることができる。したがって、曲げ抑制装置に故障が発生しにくくなり、曲げ抑制装置の信頼性を向上させることができる。
【0010】
一実施形態では、本体部は、第1部分と、第1部分よりも本体部の長手方向の端部側に配置された第2部分とを含み、1又は複数の低剛性部は、第2部分に形成されていてもよい。この実施形態では、第2部分に1又は複数の低剛性部が形成されるので、本体部の長手方向の端部側の曲げ剛性が弱められる。本体部の端部側の曲げ剛性を弱めることにより、長尺部材の長手方向における曲げ剛性の急激な変化が抑制され、長尺部材を滑らかに湾曲させることができる。その結果、長尺部材の過度な曲げが制限され、長尺部材の破損が抑制される。
【0011】
一実施形態では、第2部分は、長手方向に互いに離間して配置される複数の高剛性部を更に含み、1又は複数の低剛性部の内径は、複数の高剛性部の内径と等しく、1又は複数の低剛性部の外径は、複数の高剛性部の外径よりも小さくてもよい。1又は複数の低剛性部の外径を複数の高剛性部の外径よりも小さくして、1又は複数の低剛性部の肉厚を薄くすることにより、本体部の曲げ剛性を調整することができる。
【0012】
一実施形態では、本体部の外周面には、本体部の周方向に延在する溝が形成され、曲げ抑制装置が、溝の中に配置され、本体部を径方向の外側から締め付ける締付部材を更に備えてもよい。締付部材によって本体部を外側から締め付けることにより、曲げ抑制装置を長尺部材に固定することができる。締付部材を用いることにより、長尺部材の長手方向の途中位置に曲げ抑制装置を固定することも可能となる。
【0013】
一実施形態では、本体部は、本体部の中心軸線を含む面で分離可能な第1半割管及び第2半割管を含んでいてもよい。第1半割管及び第2半割管を分離可能にすることにより、本体部の内部空間に容易に長尺部材を配置させることが可能になる。
【0014】
一実施形態では、第1半割管及び第2半割管は、可撓性を有する樹脂材料によって一体的に形成されていてもよい。第1半割管及び第2半割管を樹脂材料によって一体的に形成することにより、本体部の部品点数を削減することができるので、曲げ抑制装置の信頼性を高めることができる。
【0015】
一実施形態では、本体部は、本体部の長手方向の端部に配置され、本体部の径方向に突出するフランジ部を更に含んでいてもよい。この実施形態では、例えば本体部にロープを巻き付けたときに、ロープがフランジ部に引っ掛かることで意図せずにロープが本体部から外れることが抑制される。
【0016】
一実施形態では、1又は複数の低剛性部は、第1低剛性部、及び、第1低剛性部よりも本体部の長手方向の端部側に配置された第2低剛性部を含み、第2低剛性部の肉厚は、第1低剛性部の肉厚よりも薄くてもよい。この実施形態では、本体部の曲げ剛性が長手方向の端部に近づくにつれて弱められるので、長尺部材を滑らかに湾曲させることができる。その結果、長尺部材の破損を抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様及び種々の実施形態によれば、曲げ抑制装置の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】一実施形態に係る曲げ抑制装置の概略的な側面図である。
【
図2】
図1のII-II線に沿った曲げ抑制装置の断面図である。
【
図3】長尺部材を収容した曲げ抑制装置を示す図である。
【
図4】一実施形態に係る曲げ抑制装置を水流発電システムに適用した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本開示の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は繰り返さない。図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法及び角度等は図面に記載のものに限定されない。
【0020】
図1は、一実施形態に係る曲げ抑制装置の概略的な側面図である。
図2は、
図1のII-II線に沿った曲げ抑制装置の断面図である。
図1及び
図2に示す曲げ抑制装置1は、内部に収容された長尺部材の損傷を防止するために、長尺部材に過度な曲げが生じることを抑制する。「過度な曲げ」とは、長尺部材の曲げ半径を許容曲げ半径よりも小さくするような曲げを意味する。「許容曲げ半径」とは、長尺部材に破損を生じさせずに曲げることのできる最小の曲げ半径をいう。
【0021】
図1及び
図2に示すように、曲げ抑制装置1は、長手方向に延在する円筒状の本体部10を備えている。本体部10は、可撓性を有する長尺部材15を内部に収容する(
図3参照)。長尺部材15は、例えば可撓性を有するケーブル、ロープ又は配管である。ケーブルは、例えば電力を伝送する送電ケーブルである。配管は、例えば石油、天然ガス等の流体を石油プラットホームに搬送するライザケーブルである。
【0022】
本体部10には、長尺部材15を収容する内部空間10sが形成される。内部空間10sは、本体部10の中心軸線AXに沿って延在し、本体部10の両端に開口している。中心軸線AXは、本体部10の長手方向に平行に延びる。後述するように、内部空間10sは、中心軸線AXに沿った方向において一定の径を有する。
【0023】
本体部10は、可撓性を有する樹脂材料によって構成されている。本体部10の曲げ剛性は、長尺部材15の曲げ剛性よりも大きい。
図1に示すように、本体部10は、中心軸線AXを含む面で分離可能な第1半割管11及び第2半割管12を含む。第1半割管11及び第2半割管12は、中心軸線AXに沿って延在する半円筒形を有しており、中心軸線AXを含む面に対して対称な形状を有する。すなわち、第1半割管11及び第2半割管12は、中心軸線AXに平行な方向から見たときに半円形を呈する。第1半割管11及び第2半割管12の端面を互いに当接した状態で固定することにより、円筒形の本体部10が形成される。第1半割管11及び第2半割管12は、可撓性を有する樹脂材料によって一体的に形成されていてもよい。
【0024】
本体部10は、第1部分20及び一対の第2部分30を有している。
図2に示すように、第1部分20は、本体部10の長手方向の中央部に配置されている。一対の第2部分30は、第1部分20よりも本体部10の両端側に配置されている。すなわち、一対の第2部分30は、第1部分20の両端から中心軸線AXに沿った方向に延びている。第1部分20及び一対の第2部分30は、円筒形を有している。
【0025】
図2に示すように、第1部分20の内径は、本体部10の長手方向において一定である。第1部分20の外周面には、複数の溝21が形成されている。これら複数の溝21は、本体部10の長手方向に間隔を空けて配列され、本体部10の周方向に沿って延在している。
図1及び
図2に示す実施形態では、第1部分20に5つの溝21が形成されている。
【0026】
第1部分20は、複数の溝21が形成された位置を除いて肉厚t1を有している。複数の溝21が形成された位置では、第1部分20の肉厚は、肉厚t1よりも小さくなっている。
【0027】
一対の第2部分30の内径は、第1部分20の内径と等しく、本体部10の長手方向において一定である。すなわち、本体部10の内径は、中心軸線AXに沿った方向において一定である。一対の第2部分30は対称な形状を有するので、以下の説明では、主に一方の第2部分30についてのみ説明する。
【0028】
第2部分30は、1又は複数の高剛性部31、及び、1又は複数の低剛性部32を含む。高剛性部31は、高い曲げ剛性を有する部分であり、低剛性部32は、高剛性部31よりも低い曲げ剛性を有する部分である。1又は複数の高剛性部31及び1又は複数の低剛性部32は、本体部10の長手方向において交互に配置される。
【0029】
図1及び
図2に示す実施形態では、本体部10は、1又は複数の高剛性部31として、第1高剛性部31a及び第2高剛性部31bを含んでいる。また、本体部10は、1又は複数の低剛性部32として、第1低剛性部32a、第2低剛性部32b及び第3低剛性部32cを含んでいる。以下の説明では、特に区別する必要がない場合には、第1高剛性部31a及び第2高剛性部31bをまとめて高剛性部31といい、第1低剛性部32a、第2低剛性部32b及び第3低剛性部32cをまとめて低剛性部32という。
【0030】
図2に示すように、第1高剛性部31a及び第2高剛性部31bは、本体部10の長手方向において互いに離間して配置されている。第1高剛性部31aは、第2高剛性部31bよりも第1部分20の近くに配置されている。第1高剛性部31a及び第2高剛性部31bの肉厚は、第1低剛性部32a、第2低剛性部32b及び第3低剛性部32cの肉厚よりも厚い。具体的には、第1高剛性部31a及び第2高剛性部31bは、肉厚t2を有する。肉厚t2は、第1部分20の肉厚t1と同じ厚みであってもよい。なお、第1高剛性部31a及び第2高剛性部31bは互いに異なる肉厚を有してもよい。相対的に大きな肉厚を有する第1高剛性部31a及び第2高剛性部31bは、第1低剛性部32a、第2低剛性部32b及び第3低剛性部32cよりも高い曲げ剛性を有している。
【0031】
第1低剛性部32aは、第1部分20と第1高剛性部31aとの間に配置されている。第1低剛性部32aの外径は、第1部分20、第1高剛性部31a及び第2高剛性部31bの外径よりも小さい。すなわち、第1低剛性部32aは、第1部分20の肉厚t1、及び、第1高剛性部31a及び第2高剛性部31bの肉厚t2よりも薄い肉厚t3を有する。なお、本体部10の長手方向における第1低剛性部32aの幅は、当該長手方向における第1高剛性部31a及び第2高剛性部31bの幅よりも大きくてもよい。
【0032】
第2低剛性部32bは、第1高剛性部31aと第2高剛性部31bとの間に配置されている。第2低剛性部32bの外径は、第1部分20及び第1高剛性部31a及び第2高剛性部31bの外径よりも小さい。すなわち、第2低剛性部32bは、第1部分20の肉厚t1、及び、第1高剛性部31a及び第2高剛性部31bの肉厚t2よりも薄い肉厚t4を有する。さらに、第2低剛性部32bの外径は、第1低剛性部32aの外径よりも小さくてもよい。すなわち、第2低剛性部32bの肉厚t4は、第1低剛性部32aの肉厚t3よりも薄い。なお、本体部10の長手方向における第2低剛性部32bの幅は、当該長手方向における第1高剛性部31a及び第2高剛性部31bの幅よりも大きくてもよい。
【0033】
第3低剛性部32cは、第2高剛性部31bよりも本体部10の端部側に配置されている。第3低剛性部32cの外径は、第1部分20及び第1高剛性部31a及び第2高剛性部31bの外径よりも小さい。すなわち、第3低剛性部32cは、第1部分20の肉厚t1、及び、第1高剛性部31a及び第2高剛性部31bの肉厚t2よりも薄い肉厚t5を有する。さらに、第3低剛性部32cの外径は、第1低剛性部32aの外径よりも小さくてもよい。すなわち、第3低剛性部32cの肉厚t5は、第1低剛性部32aの肉厚t3よりも薄い。
【0034】
上記のように、第2部分30には複数の低剛性部32が形成されているので、第2部分30の曲げ剛性は、第1部分20の曲げ剛性よりも低くなっている。すなわち、第2部分30は、第1部分20よりも曲がり易い。また、複数の低剛性部32の肉厚は、本体部10の外側に向かうにつれて薄くなっているので、本体部10の曲げ剛性は、本体部10の端部に近づくにつれて低くなっている。
【0035】
本体部10の一対の端部には、本体部10の径方向に突出するフランジ部33が形成されていてもよい。フランジ部33の外径は、第3低剛性部32cの外径よりも大きい。本体部10の長手方向におけるフランジ部33の厚みは、径方向の外側に向かうにつれて薄くなっている。フランジ部33の径方向の外側には、本体部10の第1部分20に向けて突出する鉤部33aが設けられている。後述するように、第3低剛性部32cの周囲にロープ36を巻き付けたときに、この鉤部33aにロープ36が引っ掛かることで本体部10からロープ36が意図せずに外れることが抑制される。
【0036】
上記のように、複数の高剛性部31及び複数の低剛性部32が形成されることにより、本体部10の第2部分30の外周面には、複数の溝35が形成される。複数の溝35は、本体部10の長手方向において第2部分30に間隔を空けて配列され、本体部10の周方向に沿って延在している。
図1及び
図2に示す実施形態では、一対の第2部分30の各々には、複数の溝35として、第1溝35a、第2溝35b及び第3溝35cが形成されている。
【0037】
第1溝35aは、第1部分20と第1高剛性部31aとの間に形成され、第1低剛性部32aを囲むように周方向に延在している。すなわち、第1溝35aは、第1低剛性部32aの外周面と、第1部分20の側面と、第1高剛性部31aの側面とによって画成されている。第1低剛性部32aの外周面、すなわち第1溝35aの底面は、高剛性部31の外周面よりも径方向の内側に窪んでいる。
【0038】
第2溝35bは、第1高剛性部31aと第2高剛性部31bとの間に形成され、第2低剛性部32bを囲むように周方向に延在している。すなわち、第2溝35bは、第2低剛性部32bの外周面と、第1高剛性部31aの側面と、第2高剛性部31bの側面とによって画成されている。第2高剛性部31bの外周面、すなわち第2溝35bの底面は、高剛性部31の外周面よりも径方向の内側に窪んでいる。
【0039】
第3溝35cは、第2高剛性部31bとフランジ部33との間に形成され、第3低剛性部32cを囲むように周方向に延在している。すなわち、第3溝35cは、第3低剛性部32cの外周面と、第2高剛性部31bの側面と、フランジ部33の側面とによって画成されている。第3高剛性部31cの外周面、すなわち第3溝35cの底面は、高剛性部31の外周面よりも径方向の内側に窪んでいる。
【0040】
一実施形態では、曲げ抑制装置1は、複数の締付部材18を更に備えている。複数の締付部材18は、例えば円環状のバンド部材である。複数の締付部材18の幾つかは、本体部10の第1部分20の外周面を囲むように複数の溝21にそれぞれ配置されている。また、複数の締付部材18の幾つかは、複数の低剛性部32の外周面を囲むように複数の溝35にそれぞれ配置されている。複数の締付部材18は、長尺部材15が内部空間10sに収容された状態で本体部10を外側から締め付ける。その結果、本体部10の第1半割管11及び第2半割管12が互いに固定されると共に、長尺部材15に対する曲げ抑制装置1の位置が固定される。
【0041】
一実施形態では、第1部分20の複数の溝21に配置された複数の締付部材18には、ブラケット38を介して連結部40が更に接続されていてもよい。連結部40は、例えば環状のロープであり、水中に設置されたケーブルや係留索等の他の長尺部材に対して曲げ抑制装置1を連結する。
【0042】
また、
図1に示すように、本体部10の第3溝35cにはロープ36の一端側が巻き付けられている。ロープ36の他端側は、長尺部材15に接続される。ロープ36によって本体部10と長尺部材15とが接続されることにより、曲げ抑制装置1が長尺部材15に更に強固に固定される。ここで、本体部10の端部には、拡径されたフランジ部33が形成されているので、水中で長尺部材15に力が作用してロープ36に張力が生じた場合であっても、ロープ36が本体部10から外れることが抑制される。特に、鉤部33aがロープ36に引っ掛かることで、ロープ36が更に本体部10から外れにくくなる。
【0043】
次に、曲げ抑制装置1を長尺部材15に取り付ける手順について説明する。曲げ抑制装置1を長尺部材15に取り付ける際には、まず分離された第1半割管11と第2半割管12との間に長尺部材15を配置し、長尺部材15を内部空間10sに配置した状態で第1半割管11と第2半割管12を当接させる。次に、複数の締付部材18を複数の溝21,35に取り付けて、本体部10を径方向の外側から締め付ける。これにより、本体部10の第1半割管11及び第2半割管12が互いに固定される。複数の締付部材18によって本体部10が締め付けられると、長尺部材15と本体部10との間に生じる摩擦力によって、曲げ抑制装置1が長尺部材15の長手方向に移動することが抑制される。このように、複数の締付部材18を用いて本体部10を長尺部材15に固定することにより、長尺部材15の長手方向の途中位置に曲げ抑制装置1を固定することが可能となる。
【0044】
さらに、本体部10の第3溝35cにはロープ36の一端側が巻き付けられ、ロープ36の他端側が長尺部材15に巻き付けられる。本体部10と長尺部材15とをロープ36を用いて接続することにより、曲げ抑制装置1を長尺部材15により強固に固定することが可能となる。
【0045】
上述したような手順により、
図3に示すように、長尺部材15を収容した状態で曲げ抑制装置1の位置が固定される。曲げ抑制装置1の本体部10は、長尺部材15よりも大きな曲げ剛性を有しているので、水中で長尺部材15に力が作用した場合に長尺部材15に過度な曲げが生じることが抑制される。ここで、長尺部材15の長手方向において急激に曲げ剛性が変化する部分が存在すると、その部分で長尺部材15が大きく折れ曲がることがある。例えば、本体部10の端部の曲げ剛性が過度に高いと、長尺部材15の本体部10に覆われた部分と本体部10に覆われていない部分との境界部で曲げ剛性の急激な変化が生じ、当該境界部において長尺部材15が大きく折れ曲がり、長尺部材15が破損することがある。
【0046】
これに対し、本体部10の第2部分30には複数の低剛性部32が形成されているので、第2部分30の曲げ剛性は第1部分20の曲げ剛性よりも低くなっている。さらに、複数の低剛性部32の肉厚は、本体部10の外側に向かうにつれて薄くなっているので、第2部分30の曲げ剛性は本体部10の端部に近づくにつれて低くなっている。このように、曲げ抑制装置1では、本体部10の端部の曲げ剛性が弱められているので、本体部10の端部付近において曲げ剛性の急激な変化が抑制される。したがって、
図3に示すように、長尺部材15を滑らかに湾曲させることができる。その結果、長尺部材15が過度に曲がることを抑制しつつ、長尺部材15の破損を抑制することができる。
【0047】
次に、一実施形態に係る曲げ抑制装置1を水流発電システムに適用した例について説明する。
図4は、水流FWを利用して発電を行う水流発電システム50を示す図である。水流発電システム50は、水中に浮遊する発電ポッド52を備える。発電ポッド52は、回転可能なタービン53と、タービン53の回転によって発電する発電機54とを含む。発電ポッド52は、水流FWによってタービン53を回転させることで発電する。
【0048】
図4に示すように、発電ポッド52は、係留索61を介して水底に設置されたシンカー62に接続されている。また、発電ポッド52には、可撓性を有する長尺部材である送電ケーブル63の一端が接続されている。送電ケーブル63の他端は、シンカー62の内部で海底ケーブル64に接続されている。海底ケーブル64は、水底に敷設されて、例えば地上の電力系統(外部電源等)に接続されている。発電ポッド52で発電された電力は、送電ケーブル63及び海底ケーブル64を通じて電力系統に供給される。なお、送電ケーブル63の他端付近には、当該送電ケーブル63に浮力を供給するブイ65が設けられていてもよい。
【0049】
送電ケーブル63の一端と他端の間には、曲げ抑制装置1が設けられている。曲げ抑制装置1の本体部10は、送電ケーブル63の長手方向の一部分を覆っている。本体部10に接続された連結部40は、係留索61に連結されている。すなわち、送電ケーブル63は、曲げ抑制装置1を介して係留索61に接続される。なお、連結部40は、係留索61に結合されたベルト部材を介して当該係留索61に連結されてもよい。
【0050】
水中に設置された送電ケーブル63には、水流FWによって曲げモーメントが作用して大きな撓みが発生することがある。特に、係留索61と送電ケーブル63との連結部付近では、係留索61及び送電ケーブル63の剛性差によって送電ケーブル63に大きな撓みが発生しやすい。ここで、曲げ抑制装置1の本体部10は、送電ケーブル63よりも大きな曲げ剛性を有しているので、係留索61と送電ケーブル63との連結部の近くで送電ケーブル63に過度の曲げが生じることを抑制する。一方、本体部10の曲げ剛性は、本体部10の端部に近づくにつれて弱められているので、本体部10の端部付近において許容曲げ半径の範囲内で送電ケーブル63の曲げを許容する。その結果、本体部10の端部付近において曲げ剛性の急激な変化が抑制され、長尺部材15を滑らかに湾曲させることができる。よって、送電ケーブル63の破損を抑制しつつ、送電ケーブル63を発電ポッド52からシンカー62に接続することができる。
【0051】
以上、種々の実施形態に係る曲げ抑制装置について説明してきたが、上述した実施形態に限定されることなく発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形態様を構成可能である。
【0052】
例えば、
図1に示す実施形態では、曲げ抑制装置1の本体部10は、複数の低剛性部32を含む一対の第2部分30を備えているが、第2部分30は本体部10の少なくとも一方の端部側に形成されていればよい。例えば、
図5は、曲げ抑制装置1の変形例を示す図である。
図5では、長尺部材15の一部は、保護材70によって被覆されている。保護材70は、長尺部材15の保護する管体であり、高い剛性を有している。したがって、曲げ抑制装置1が設けられない場合には、保護材70の端部付近において曲げ剛性が急激に変化して、その部分で長尺部材15が過度に湾曲する恐れがある。
【0053】
これに対し、
図5に示す実施形態では、長尺部材15の長手方向において保護材70に隣接して曲げ抑制装置1が設けられている。この曲げ抑制装置1の本体部10は、保護材70と反対側の端部側のみに第2部分30を有している。上述したように、第2部分30は、複数の低剛性部32を含むことで曲げ剛性が弱められている。このように、本体部10の保護材70と反対側の端部の曲げ剛性を弱めることにより、曲げ剛性の急激な変化が抑制される。したがって、長尺部材15を滑らかに湾曲させることができ、その結果、長尺部材15の破損を抑制することができる。
【0054】
なお、上述した実施形態では、曲げ抑制装置1の本体部10は、複数の低剛性部32を有しているが、本体部10は、少なくとも1つの低剛性部32を有していればよい。また、低剛性部32は、必ずしも本体部10の第2部分30のみに形成されていなくてもよく、第1部分20に形成されていてもよい。上述した種々の実施形態は、矛盾のない範囲で組み合わせることが可能である。
【0055】
以下に列挙する条項を参照して、本発明を説明する。なお、本発明は、具体的な列挙がなくても、以下の条項を任意の組み合わせで含んでいてもよい。
【0056】
1. 水中に設置された可撓性を有する長尺部材の曲げを制限する曲げ抑制装置であって、
長手方向に延在し、前記長尺部材を収容する内部空間を有する円筒状の本体部を備え、
前記本体部は、該本体部の他の部分の肉厚よりも薄い肉厚を有する1又は複数の低剛性部を含む、曲げ抑制装置。
【0057】
2. 前記本体部は、第1部分と、前記第1部分よりも前記本体部の前記長手方向の端部側に配置された第2部分とを含み、
前記1又は複数の低剛性部は、前記第2部分に形成されている、条項1に記載の曲げ抑制装置。
【0058】
3. 前記第2部分は、前記長手方向に互いに離間して配置される複数の高剛性部を更に含み、
前記1又は複数の低剛性部の内径は、前記複数の高剛性部の内径と等しく、
前記1又は複数の低剛性部の外径は、前記複数の高剛性部の外径よりも小さい、条項2に記載の曲げ抑制装置。
【0059】
4. 前記本体部の外周面には、前記本体部の周方向に延在する溝が形成され、
前記溝の中に配置され、前記本体部を径方向の外側から締め付ける締付部材を更に備える、条項1~3の何れか一項に記載の曲げ抑制装置。
【0060】
5. 前記本体部は、前記本体部の中心軸線を含む面で分離可能な第1半割管及び第2半割管を含む、条項1~4の何れか一項に記載の曲げ抑制装置。
【0061】
6. 前記第1半割管及び前記第2半割管は、可撓性を有する樹脂材料によって一体的に形成されている、条項5に記載の曲げ抑制装置。
【0062】
7. 前記本体部は、前記本体部の前記長手方向の端部に配置され、本体部の径方向に突出するフランジ部を更に含む、条項1~6の何れか一項に記載の曲げ抑制装置。
【0063】
8. 前記1又は複数の低剛性部は、第1低剛性部、及び、前記第1低剛性部よりも前記本体部の前記長手方向の端部側に配置された第2低剛性部を含み、
前記第2低剛性部の肉厚は、前記第1低剛性部の肉厚よりも薄い、条項1~7の何れか一項に記載の曲げ抑制装置。
【符号の説明】
【0064】
1 曲げ抑制装置
10 本体部
10s 内部空間
11 第1半割管
12 第2半割管
15 長尺部材
18 締付部材
20 第1部分
21,35 溝
30 第2部分
31 高剛性部
32 低剛性部
32a 第1低剛性部
32b 第2低剛性部
33 フランジ部
t1,t2,t3,t4,t5 肉厚