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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034685
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】現金処理システム及び現金処理方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/02 20230101AFI20240306BHJP
【FI】
G06Q40/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139097
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114306
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 史郎
(74)【代理人】
【識別番号】100148655
【弁理士】
【氏名又は名称】諏訪 淳一
(72)【発明者】
【氏名】長崎 利和
(72)【発明者】
【氏名】松橋 賢
(72)【発明者】
【氏名】ナダ ジェイソン アマ
【テーマコード(参考)】
5L055
【Fターム(参考)】
5L055BB03
(57)【要約】
【課題】複数の拠点の間で大量の現金の所有権を容易に移動する。
【解決手段】現金処理システムを、第1所有権者と第2所有権者との間で所有権を移動する紙幣を処理して、紙幣の記番号と、紙幣の所在を示す属性情報とを含む現金データを生成する現金処理装置と、現金処理装置から現金データを取得して、属性情報が、紙幣を第2所有権者の所有とする要件を満たす場合には紙幣の所有権を第1所有権者から第2所有権者へ移すための処理を実行して、紙幣を第1所有権者の所有とする要件を満たす場合には紙幣の所有権を第2所有権者から第1所有権者へ移すための処理を実行する管理装置とによって構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1所有権者と第2所有権者との間で所有権を移動する紙幣を処理して、前記紙幣の記番号と、前記紙幣の所在に関する属性情報とを含む現金データを生成する現金処理装置と、
前記現金処理装置から前記現金データを取得して、前記属性情報が、前記紙幣を前記第2所有権者の所有とする要件を満たす場合に、前記紙幣の所有権を前記第1所有権者から前記第2所有権者へ移すための処理を実行する管理装置と
を備えることを特徴とする現金処理システム。
【請求項2】
前記現金処理装置は、商業銀行と中央銀行との間で所有権を移動する紙幣を処理して前記現金データを生成し、
前記管理装置は、前記属性情報が、前記中央銀行所有の現金が管理されている場所に前記紙幣があることを示している場合には、前記紙幣の所有権を前記商業銀行から前記中央銀行へ移すための処理を実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の現金処理システム。
【請求項3】
前記属性情報は、前記現金処理装置の設置拠点の地理座標を示す位置情報を含むことを特徴とする請求項1に記載の現金処理システム。
【請求項4】
前記現金処理装置は、現在位置の特定機能を有するモバイル端末から前記位置情報を取得することを特徴とする請求項3に記載の現金処理システム。
【請求項5】
前記属性情報は、各現金処理装置を示す装置情報を含むことを特徴とする請求項1に記載の現金処理システム。
【請求項6】
複数の拠点それぞれに設置された各現金処理装置が前記現金データを生成し、
前記管理装置は、各現金処理装置から現金データを取得して、各現金データに含まれる属性情報と、予め準備されている各属性情報と所有権者に係る情報との対応を示すデータとに基づいて、前記紙幣の所有権の移動元及び移動先の所有権者を特定し、前記移動元の所有権者から前記移動先の所有権者へ前記紙幣の所有権を移すための処理を実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の現金処理システム。
【請求項7】
前記管理装置は、複数の商業銀行それぞれの現金処理装置で生成された現金データと、前記中央銀行所有の現金を管理する現金管理施設の現金処理装置で生成された現金データとに基づいて、
前記現金管理施設で処理された紙幣の所有権の移動元である商業銀行を特定して、前記紙幣の所有権を前記商業銀行から前記中央銀行へ移すための処理を実行する
ことを特徴とする請求項6に記載の現金処理システム。
【請求項8】
前記管理装置は、前記中央銀行から各商業銀行へ所有権を移動した紙幣の記番号と移動先の各商業銀行を示す情報とを関連付けたデータを記憶して、前記中央銀行へ所有権を移動する紙幣を前記現金管理施設の現金処理装置で処理して生成された現金データに含まれる記番号が、前記データに含まれている場合には、前記データにおいて前記記番号と関連付けられている商業銀行を前記紙幣の所有権の移動元と特定することを特徴とする請求項6に記載の現金処理システム。
【請求項9】
前記現金データは、前記紙幣を前記現金処理装置で識別して得られた識別情報と、前記紙幣を撮像して得られた画像の少なくともいずれか一方をさらに含み、
前記管理装置は、前記紙幣の所有権の移動元の現金データと移動先の現金データとの間で一致しない記番号がある場合には、該記番号を有する紙幣の識別情報と画像の少なくともいずれか一方に基づいて、移動元の現金データに情報が登録されている紙幣と、移動先の現金データに情報が登録されている紙幣との一致を確認する処理を実行する
ことを特徴とする請求項6に記載の現金処理システム。
【請求項10】
前記識別情報は、前記現金処理装置が紙幣を識別した識別結果と、該識別結果が得られた識別理由とを含むことを特徴とする請求項9に記載の現金処理システム。
【請求項11】
前記管理装置は、前記紙幣の所有権の移動元である所有権者の口座から移動先である所有権者の口座へ、前記紙幣の金額を移動する口座処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の現金処理システム。
【請求項12】
店舗内の現金を処理し、該処理された現金の第1の記番号情報と、該店舗に関連する第1の属性情報を伝達する処理装置と、
前記処理装置から、現金の前記第1の記番号情報と、前記店舗に関連する第1の属性情報とを受け付ける管理装置と
を備え、
前記管理装置は、前記店舗に関する情報を含むデータ群を有し、前記処理装置から受け付けた現金の第1の記番号情報と第1の属性情報と、前記データ群に含まれる前記店舗の情報とを紐づけて、前記第1の記番号情報と、前記第1の属性情報とが、所定の要件を満たす場合に、前記処理装置によって処理された現金の額を、前記店舗に関連する第1の口座へ入金する
ことを特徴とする現金処理システム。
【請求項13】
前記管理装置は、所定の基準が記された属性情報リストを有し、前記処理装置から伝達された属性情報が、前記属性情報リストの所定の基準を満たした場合に、前記属性情報リストに対応する第1の口座へ、対応する額の現金を移し替えるように制御することを特徴とする請求項12に記載の現金処理システム。
【請求項14】
現金を処理する処理装置で現金を処理して、該処理された現金の第1の記番号情報と、該処理装置に関連する第1の属性情報を伝達する工程と、
前記処理装置から、現金の前記第1の記番号情報と、前記処理装置に関連する第1の属性情報とを受け付ける工程と、
前記処理装置に関する情報を有するデータ群に基づいて、前記処理装置から受け付けた現金の第1の記番号情報と第1の属性情報と、前記データ群に含まれる前記処理装置の情報とを紐づけて、前記第1の記番号情報と、前記第1の属性情報とが、所定の要件を満たす場合に、前記処理装置によって処理された額の現金を、第1の口座へ入金する工程と
を含むことを特徴とする現金処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、現金の移動を管理するために利用される現金処理システム及び現金処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙幣の記番号に基づいて紙幣を管理する現金処理システムが知られている。記番号は、各紙幣を識別するための識別番号として利用される。例えば、特許文献1には、複数の現金処理装置で得られた各紙幣の記番号を上位装置に蓄積する技術が開示されている。銀行内にある現金処理装置で処理された各紙幣の記番号を上位装置に集約すれば、銀行内で処理された全ての紙幣を特定することができる。例えば、紙幣の盗難時には、記番号に基づいて紙幣を追跡することができる。
【0003】
銀行には、中央銀行と、商業銀行又は市中銀行と呼ばれる銀行とがある。紙幣及び硬貨を発行する中央銀行は、商業銀行が利用する銀行であることから銀行の銀行と呼ばれる。商業銀行は、一般客が利用する銀行で、中央銀行によって発行された紙幣及び硬貨、すなわち現金を利用して営業する。商業銀行が営業に利用する現金の中には、中央銀行から借り入れた現金が含まれており、現金を借り入れている間は中央銀行へ支払う利子が発生する。商業銀行は、現金を中央銀行に返して利子の金額を抑えるため、例えば営業終了後に現金を中央銀行へ運んで入金する作業を行う。大量の現金を移動する際に現金処理装置で各紙幣の記番号を読み取り、全ての紙幣を追跡可能な状態とすることで、現金運搬時の安全性を担保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-205790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、毎日のように大量の現金を運搬して拠点間を移動する場合、移動元及び移動先の拠点の数が増えるほど、また拠点間の移動距離が長くなるほど、現金運搬時の安全性に懸念が生ずる。また、現金の運搬費用が高額になるという問題もある。このため、複数の拠点間で、できるだけ現金を移動せずにすむことが好ましい。
【0006】
本開示は、上記従来の課題に鑑みてなされたもので、現金を物理的に移動させることなく現金の所有権を移動することができる現金処理システム及び現金処理方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る現金処理システムは、第1所有権者と第2所有権者との間で所有権を移動する紙幣を処理して、前記紙幣の記番号と、前記紙幣の所在に関する属性情報とを含む現金データを生成する現金処理装置と、前記現金処理装置から前記現金データを取得して、前記属性情報が、前記紙幣を前記第2所有権者の所有とする要件を満たす場合に、前記紙幣の所有権を前記第1所有権者から前記第2所有権者へ移すための処理を実行する管理装置とを備える。
【0008】
上記構成において、前記現金処理装置は、商業銀行と中央銀行との間で所有権を移動する紙幣を処理して前記現金データを生成し、前記管理装置は、前記属性情報が、前記中央銀行所有の現金が管理されている場所に前記紙幣があることを示している場合には、前記紙幣の所有権を前記商業銀行から前記中央銀行へ移すための処理を実行してもよい。
【0009】
上記構成において、前記属性情報は、前記現金処理装置の設置拠点の地理座標を示す位置情報を含んでいてもよい。
【0010】
上記構成において、前記現金処理装置は、現在位置の特定機能を有するモバイル端末から前記位置情報を取得してもよい。
【0011】
上記構成において、前記属性情報は、各現金処理装置を示す装置情報を含んでいてもよい。
【0012】
上記構成において、複数の拠点それぞれに設置された各現金処理装置が前記現金データを生成し、前記管理装置は、各現金処理装置から現金データを取得して、各現金データに含まれる属性情報と、予め準備されている各属性情報と所有権者に係る情報との対応を示すデータとに基づいて、前記紙幣の所有権の移動元及び移動先の所有権者を特定し、前記移動元の所有権者から前記移動先の所有権者へ前記紙幣の所有権を移すための処理を実行してもよい。
【0013】
上記構成において、前記管理装置は、複数の商業銀行それぞれの現金処理装置で生成された現金データと、前記中央銀行所有の現金を管理する現金管理施設の現金処理装置で生成された現金データとに基づいて、前記現金管理施設で処理された紙幣の所有権の移動元である商業銀行を特定して、前記紙幣の所有権を前記商業銀行から前記中央銀行へ移すための処理を実行してもよい。
【0014】
上記構成において、前記管理装置は、前記中央銀行から各商業銀行へ所有権を移動した紙幣の記番号と移動先の各商業銀行を示す情報とを関連付けたデータを記憶して、前記中央銀行へ所有権を移動する紙幣を前記現金管理施設の現金処理装置で処理して生成された現金データに含まれる記番号が、前記データに含まれている場合には、前記データにおいて前記記番号と関連付けられている商業銀行を前記紙幣の所有権の移動元と特定してもよい。
【0015】
上記構成において、前記現金データは、前記紙幣を前記現金処理装置で識別して得られた識別情報と、前記紙幣を撮像して得られた画像の少なくともいずれか一方をさらに含み、前記管理装置は、前記紙幣の所有権の移動元の現金データと移動先の現金データとの間で一致しない記番号がある場合には、該記番号を有する紙幣の識別情報と画像の少なくともいずれか一方に基づいて、移動元の現金データに情報が登録されている紙幣と、移動先の現金データに情報が登録されている紙幣との一致を確認する処理を実行してもよい。
【0016】
上記構成において、前記識別情報は、前記現金処理装置が紙幣を識別した識別結果と、該識別結果が得られた識別理由とを含んでいてもよい。
【0017】
上記構成において、前記管理装置は、前記紙幣の所有権の移動元である所有権者の口座から移動先である所有権者の口座へ、前記紙幣の金額を移動する口座処理を実行してもよい。例えば、管理装置が、中央銀行に備えられており、現金処理装置が処理した紙幣の記番号を含む現金データを取得して、データ内容を確認、承認して口座処理を実行する与信作業を実行するように構成されていてもよい。
【0018】
本開示に係る現金処理システムは、店舗内の現金を処理し、該処理された現金の第1の記番号情報と、該店舗に関連する第1の属性情報を伝達する処理装置と、前記処理装置から、現金の前記第1の記番号情報と、前記店舗に関連する第1の属性情報とを受け付ける管理装置とを備え、前記管理装置は、前記店舗に関する情報を含むデータ群を有し、前記処理装置から受け付けた現金の第1の記番号情報と第1の属性情報と、前記データ群に含まれる前記店舗の情報とを紐づけて、前記第1の記番号情報と、前記第1の属性情報とが、所定の要件を満たす場合に、前記処理装置によって処理された現金の額を、前記店舗に関連する第1の口座へ入金する。
【0019】
上記構成において、前記管理装置は、所定の基準が記された属性情報リストを有し、前記処理装置から伝達された属性情報が、前記属性情報リストの所定の基準を満たした場合に、前記属性情報リストに対応する第1の口座へ、対応する額の現金を移し替えるように制御してもよい。
【0020】
本開示に係る現金処理方法は、現金を処理する処理装置で現金を処理して、該処理された現金の第1の記番号情報と、該処理装置に関連する第1の属性情報を伝達する工程と、前記処理装置から、現金の前記第1の記番号情報と、前記処理装置に関連する第1の属性情報とを受け付ける工程と、前記処理装置に関する情報を有するデータ群に基づいて、前記処理装置から受け付けた現金の第1の記番号情報と第1の属性情報と、前記データ群に含まれる前記処理装置の情報とを紐づけて、前記第1の記番号情報と、前記第1の属性情報とが、所定の要件を満たす場合に、前記処理装置によって処理された額の現金を、第1の口座へ入金する工程とを含む。
【発明の効果】
【0021】
本開示に係る現金処理システム及び現金処理方法によれば、所有権を移動したい現金を現金処理装置で処理するだけで、現金の所有権を移すための処理が実行されるので、現金の所有権を容易に移動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本実施形態に係る現金処理システムを利用して行われる現金処理の例を説明するための模式図である。
図2図2は、現金処理システムで行われる現金処理の概要を説明するための模式図である。
図3図3は、現金処理システムの構成例を説明するための図である。
図4図4は、現金データの例を示す図である。
図5図5は、管理装置が、現金データに基づいて現金の移動元を特定する処理を説明するためのフローチャートである。
図6図6は、現金の移動元を特定する際に表示される画面例を示す図である。
図7図7は、管理装置による現金移動元の特定方法に関する設定を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照しながら、本開示に係る現金処理システム及び現金処理方法の実施の形態について説明する。図1は、本実施形態に係る現金処理システムを利用して行われる現金処理の例を説明するための模式図である。現金処理システムは、現金1枚1枚を一意に特定可能な識別番号を利用して処理を実行する。識別番号は、紙幣に印刷されていてもよいし、紙幣が備える記憶装置に記憶されていてもよい。硬貨が識別番号を有する場合には該識別番号を利用してもよい。現金及び識別番号の種類は特に限定されないが、移動する現金が紙幣であり、紙幣の記番号を識別番号として利用する場合を例に説明を続ける。
【0024】
図1に示すように、商業銀行12は、中央銀行11へ紙幣を入庫することを通知して(A11)、紙幣の入庫を実行する(B11)。本実施形態で言う入庫とは、商業銀行12所有の紙幣を中央銀行11により認証された現金処理装置300又は中央銀行11の管理下にある現金処理装置300で処理することにより、各紙幣の記番号及び所在を明らかにすると共に、記番号及び所在が明らかになった紙幣の金額を商業銀行12から中央銀行11へ入金すること、すなわち紙幣の所有権を商業銀行12から中央銀行11へ移すことを言う。なお、入庫通知は、例えば、商業銀行12に設置された所定の通信端末と、中央銀行11に設置された所定の通信端末との間で送受信されるが、入庫通知の送受信が省略される態様であってもよい。
【0025】
管理装置100及び現金処理装置300は、中央銀行11、又は中央銀行11に依頼された管理会社によって、管理されている。このため、現金処理装置300で処理された紙幣は、中央銀行11の管理下にあるものとみなされる。もしくは商業銀行所有の現金処理装置が一定時間内のみ中央銀行の管理下に移行するという運用でもよい。
【0026】
図1は、現金処理装置300が商業銀行12に設置された例を示している。現金処理装置300を商業銀行12内に設ければ、紙幣を商業銀行12の外へ運び出す必要がなくなるが、現金処理装置300の設置場所は特に限定されない。例えば、現金処理装置300を所定の現金管理施設に設ける態様であってもよいが、これについては図2に示す例で詳細を説明する。
【0027】
現金処理装置300は、商業銀行12から中央銀行11に入庫する紙幣を処理して装置内に収納する。紙幣処理の実行後、現金処理装置300は、紙幣に関する情報を登録した現金データを管理装置100へ送信する(C11)。現金データには、入庫する紙幣を現金処理装置300で処理して得られた入庫金額と、各紙幣の記番号とが含まれる。また、現金データには、入庫した各紙幣の所在を示す属性情報が含まれる。
【0028】
例えば、現金処理装置300の設置場所を示す位置情報が、属性情報として利用される。また、例えば、現金処理装置300のID情報である装置情報が、属性情報として利用される。具体的には、入庫する紙幣を処理した現金処理装置300の装置情報が、中央銀行11によって認証されている装置又は中央銀行11の管理下にある装置の装置情報であることに基づいて、紙幣の所在を明らかにすることができる。記番号及び属性情報を含む現金データについては、図2に示す例を説明する際に詳細を説明する。
【0029】
商業銀行12から中央銀行11に入庫した紙幣、すなわち現金処理装置300で処理されて中央銀行11の管理下に入った紙幣は、厳正に管理される。例えば、入庫した紙幣は、誰の手にも触れることがないように管理されるか、或いは、所定権限を有する者しか触れられないように管理されることが好ましい。
【0030】
例えば、現金処理装置300を商業銀行12内に設ける場合、現金処理装置300は、通常は入室できないように扉を施錠して防盗対策が施された金庫室等の居室に設置される。所定権限を有する者のみが、扉を解錠して入室し、現金処理装置300を利用して入庫作業を行えるようになっている。現金処理装置300を現金管理施設に設ける場合も、現金処理装置300の設置場所には防盗対策が施され、該設置場所への立ち入りが所定権限を有する者のみに限定される。さらに、現金処理装置300が金庫部を含み、処理した紙幣、すなわち入庫した紙幣を、金庫部内に設けた収納部に収納する態様であってもよい。ただし、入庫した紙幣を厳正に管理することができれば、紙幣が他の方法で管理される態様であってもよい。例えば、金庫室の外に設置された現金処理装置300が、入庫する紙幣を処理して専用の収納容器に収納するよう構成され、所定権限を有する担当者が、入庫済みの紙幣が収納された収納容器を金庫室に運んで管理する態様であってもよい。現金処理装置300から、装置内に収納されている紙幣を出金するために、すなわち紙幣を出庫するために、中央銀行11の承認を必要とする態様であってもよい。例えば、管理装置100が、中央銀行11による承認を示す情報を現金処理装置300に送信したことを条件に、現金処理装置300が出金処理を実行するようにすればよい。現金処理装置300で出金処理が実行された場合に、出金処理を行った操作者、出金金額等の情報を含む履歴情報が、現金処理装置300と管理装置100の少なくともいずれか一方に記録される態様であってもよい。
【0031】
現金処理装置300から現金データを受信した管理装置100は、現金データに含まれる属性情報に基づいて、現金処理装置300に紙幣が入金されたこと、すなわち紙幣が中央銀行11の管理下に入ったことを認識して、中央銀行11に入庫情報を送信する(D11)。入庫情報には、商業銀行12が所有していた紙幣が中央銀行11の管理下にあることを示す情報と、紙幣の金額である入庫金額とが含まれる。
【0032】
入庫情報を受信した中央銀行11は、入庫した紙幣に関する処理を実行することができる。例えば、入庫金額を商業銀行12の口座から中央銀行11の口座へ移すことにより、入庫した紙幣の所有権を商業銀行12から中央銀行11へ移す処理が実行される。具体的には、中央銀行11の所定部門が、入庫情報に含まれる各情報を確認して承認することによって紙幣の入庫が完了し、口座間で入庫金額を移動する与信作業が行われる。
【0033】
管理装置100が、入庫した各紙幣の記番号を含む入庫情報を中央銀行11へ送信して、中央銀行11が、紙幣の真正性を確認する処理を実行する態様であってもよい。例えば、商業銀行12から入庫した紙幣の記番号が、他の商業銀行から入庫した紙幣の記番号と一致する場合、中央銀行11は、いずれかの紙幣が偽券である可能性を含め、異常事態として対応することが可能となる。
【0034】
管理装置100が、商業銀行12の口座から中央銀行11の口座へ入庫金額を移動する口座処理を実行して、口座処理の完了報告を含む入庫情報を中央銀行11に送信する態様であってもよい。例えば、管理装置100が中央銀行11に設置され、管理装置100が、現金データに含まれる各情報を承認する処理と口座処理とを実行し、処理結果を入庫情報として中央銀行11の所定部門に報知する態様であってもよい。
【0035】
管理装置100が、紙幣の記番号に基づいて紙幣の真正性を確認する処理を実行し、異常事態を検知した場合に異常を報知する態様であってもよい。異常の報知は、例えば、管理装置100が、中央銀行11で利用される通信端末で、異常を示す情報を表示したり音を発したりすることによって実行すればよい。
【0036】
このように、現金処理システムでは、中央銀行11により認証された現金処理装置300又は中央銀行11の管理下にある現金処理装置300で、商業銀行12から中央銀行11に入庫する紙幣を処理して記番号及び属性情報を含む現金データを生成し、入庫する各紙幣の記番号及び所在を明らかにしたことを条件に、紙幣の所有権を商業銀行12から中央銀行11へ移すための処理が実行される。商業銀行12は、中央銀行11へ入庫する紙幣を、商業銀行12内又は現金管理施設に設けられた現金処理装置300で処理することで、入庫作業を完了することができるので、商業銀行12から中央銀行11へ紙幣を移動する必要がない。
【0037】
商業銀行12による中央銀行11からの紙幣の出庫も、入庫と同様に、現金処理装置300を利用して実行することができる。商業銀行12は、中央銀行11へ紙幣を出庫することを通知する(A12)。本実施形態で言う出庫とは、中央銀行11から商業銀行12へ紙幣を出金する処理、すなわち出金金額分の紙幣の所有権を中央銀行11から商業銀行12へ移動する処理を実行すると共に、中央銀行11により認証された現金処理装置300又は中央銀行11の管理下にある現金処理装置300で処理することにより、所有権を移動する各紙幣の記番号を明らかにすることを言う。なお、入庫の場合と同様に、出庫通知は、例えば、商業銀行12に設置された所定の通信端末と、中央銀行11に設置された所定の通信端末との間で送受信されるが、出庫通知の送受信が省略される態様であってもよい。
【0038】
中央銀行11により認証された現金処理装置300又は中央銀行11が管理する現金処理装置300が出金処理を実行して、紙幣を装置外へ排出することにより、中央銀行11から商業銀行12へ紙幣が出庫される(B12)。現金処理装置300は、出庫した紙幣の情報を登録した現金データを管理装置100へ送信する(C12)。現金データには、出庫する紙幣を現金処理装置300で処理して得られた出庫金額と、処理時の紙幣の所在を示す属性情報とが含まれる。また、現金データには、出庫した各紙幣の記番号が含まれる。
【0039】
管理装置100は、現金データに基づいて、現金処理装置300から紙幣が出金されたこと、すなわち中央銀行11の管理下にあった紙幣が商業銀行12の管理下に入る所有権の移動が行われたことを認識して、中央銀行11に出庫情報を送信する(D12)。出庫情報を受信した中央銀行11は、出庫した紙幣に関する処理を実行することができる。例えば、出庫した紙幣の所有権を中央銀行11から商業銀行12へ移す処理が実行される。所有権を移動するための口座処理が管理装置100によって実行される態様であってもよい。
【0040】
このように、現金処理システムでは、中央銀行11により認証された現金処理装置300又は中央銀行11が管理する現金処理装置300から紙幣が出金されて、紙幣が中央銀行11の管理下にあることを示す中央銀行11の管理要件を満たさなくなることに基づいて、紙幣の所有権を中央銀行11から商業銀行12へ移すための処理が実行される。商業銀行12は、商業銀行12内又は現金管理施設に設けられた現金処理装置300を利用して紙幣を出庫することができるので、中央銀行11から商業銀行12へ紙幣を移動する必要がない。
【0041】
次に、中央銀行11が所有する現金が、商業銀行12とは異なる場所で管理される場合の例を説明する。図2は、現金処理システムで行われる現金処理の概要を説明するための模式図である。図2に示す現金管理施設13は、現金処理装置300を利用して、中央銀行11所有の現金を管理する施設である。
【0042】
入庫時には、商業銀行12から現金管理施設13へ紙幣を運搬して移動すると共に、入庫した紙幣の所有権が商業銀行12から中央銀行11へ移動する。出庫時には、現金管理施設13から商業銀行12へ紙幣が運搬されて移動すると共に、出庫した紙幣の所有権が中央銀行11から商業銀行12へ移動する。
【0043】
図2に示すように、入庫時、商業銀行12は、中央銀行11に紙幣の入庫を通知する(A21)。通知を受けた中央銀行11は、現金管理施設13に、商業銀行12から運搬されてくる紙幣の入庫を指示する(A22)。入庫する紙幣は商業銀行12から現金管理施設13へ移動する(B21)。例えば、現金輸送会社が、商業銀行12から現金管理施設13へ移動する紙幣を運搬する。なお、入庫通知は、例えば、商業銀行12に設置された所定の通信端末と、中央銀行11に設置された所定の通信端末との間で送受信されるが、入庫通知の送受信が省略される態様であってもよい。
【0044】
入庫する紙幣は、移動前に、商業銀行12に設けられた現金処理装置200で処理されて、移動後には現金管理施設13に設けられた現金処理装置300で処理される。
【0045】
商業銀行12の現金処理装置200は、現金管理施設13へ入庫する紙幣を処理して現金データを生成し、管理装置100へ送信する(C21)。商業銀行12では、現金処理装置200で処理した紙幣を、袋、カセット等の収納容器に入れて現金輸送会社へ引き渡すだけでよい。例えば、収納容器に商業銀行12を示すタグを付したり、商業銀行12又は紙幣に関する情報を記録した記憶媒体を準備したりする作業は必要ない。
【0046】
現金管理施設13の現金処理装置300は、商業銀行12から入庫した紙幣を処理して現金データを生成し、管理装置100へ送信する(C22)。現金管理施設13では、現金輸送会社から受け取った収納容器から紙幣を取り出して現金処理装置300で処理するだけでよい。例えば、収納容器に付されたタグを確認したり、収納容器に付された記憶媒体から情報を読み取ったりする作業は必要ない。
【0047】
現金処理装置200、300が生成する現金データには、現金処理装置200、300が紙幣を処理して得られた紙幣情報が含まれる。紙幣情報には、紙幣の通貨、金種、記番号、識別情報及び画像が含まれる。ただし、紙幣情報に含まれる情報は例示であって、上記情報の一部が識別情報に含まれない態様であってもよいし、上記情報以外の情報が識別情報に含まれる態様であってもよい。例えば、紙幣情報が、各紙幣を処理した日時、合計金額等を含んでいてもよい。また、例えば、紙幣情報が、識別情報、画像等を含まない態様であってもよい。
【0048】
現金処理装置200が生成する現金データには、現金処理装置200の設置場所である商業銀行12を特定するための属性情報が含まれる。現金処理装置300が生成する現金データには、現金処理装置300の設置場所である現金管理施設13を特定するための属性情報が含まれる。属性情報には、現金処理装置200、300の設置場所を示す位置情報が含まれる。属性情報は、現金処理装置200、300の装置情報、現金処理装置200、300が実行した現金処理情報を含む場合もあるが、具体例については後述する。
【0049】
現金処理装置200、300が、商業銀行12と現金管理施設13との間を移動する紙幣を処理して得られた各紙幣の紙幣情報と、属性情報とを、現金データに登録する。これにより、紙幣情報及び属性情報を含む各紙幣のデータが登録された現金データが生成される。
【0050】
管理装置100は、商業銀行12の現金処理装置200から取得した現金データと、現金管理施設13の現金処理装置300から取得した現金データとを比較することにより、商業銀行12から現金管理施設13に紙幣が入庫したことを確認する。
【0051】
具体的には、現金処理装置300で生成された現金データを受信した管理装置100は、既に受信している他の現金データに含まれる記番号を対象に、受信した現金データに含まれる紙幣の記番号を探索する。例えば、管理装置100は、現金処理装置300から現金データを受信した時刻以前の所定時間内に受信した現金データを対象に、記番号の探索を実行する。
【0052】
現金処理装置200で生成された現金データの中に記番号が見つかると、管理装置100は、現金処理システム1の利用者に関する情報が登録されている利用者データを参照して、紙幣の移動元及び移動先を特定する。利用者データには、属性情報と関連付けて口座情報が登録されており、口座情報を利用して、特定した移動元から移動先へ紙幣の金額分を移動する口座処理が実行されるが、口座処理については後述する。
【0053】
利用者データは予め管理装置100内に準備されている。利用者データには、現金データに登録される各属性情報と、属性情報に基づいて特定される現金処理装置200、300の設置場所を示す情報と、各設置場所の紙幣に関して管理装置100が実行する処理に必要な情報とが関連付けて登録されている。
【0054】
管理装置100は、現金処理装置300で生成された現金データに含まれる属性情報に基づいて利用者データを参照することにより、紙幣の移動先を現金管理施設13と特定することができる。同様に、管理装置100は、現金処理装置200で生成された現金データの属性情報と利用者データとに基づいて、紙幣の移動元を商業銀行12と特定することができる。
【0055】
管理装置100が、現金処理装置300の属性情報と特定の店舗とを紐付けるデータシート(データ群)を有していてもよい。属性情報は、現金処理装置300の位置情報であってもよいし、現金処理装置300のID情報である装置情報であってもよい。管理装置100が、上記データシートとは別に、属性情報と特定の商業銀行12とを紐付けるデータシートを有し、該データシートを参照して、各現金処理装置300から送付された属性情報に基づいて特定の商業銀行12の口座へ紙幣の金額を移動する態様であってもよい。
【0056】
管理装置100は、現金処理装置300の現金データに登録されている紙幣のデータと、他の現金データに登録されている紙幣のデータとの一致を判定する処理に、記番号以外の情報を利用可能に構成されている点に1つの特徴を有している。
【0057】
現金処理装置200、300が記番号の一部又は全部を読み取ることができず、移動先の現金処理装置300で得られた記番号と一致する記番号が、移動元の現金処理装置200で生成された現金データの中に見つからない状況となる場合がある。このような場合でも、管理装置100は、各現金データに含まれる記番号以外の紙幣情報を利用して、現金処理装置300で処理された紙幣が、現金処理装置200で処理された紙幣であることを特定することができる。
【0058】
例えば、管理装置100は、紙幣の画像を比較することにより、現金処理装置300で処理された紙幣が、現金処理装置200で処理された紙幣であることを特定することができる。また、例えば、管理装置100は、紙幣の識別情報を比較することにより、現金処理装置300で処理された紙幣が、現金処理装置200で処理された紙幣であることを特定することができる。すなわち、管理装置100は、紙幣の識別情報と画像の少なくともいずれか一方に基づいて、移動元の現金データに情報が登録されている紙幣と、移動先の現金データに情報が登録されている紙幣との一致を確認することができる。現金データを利用して移動元及び移動先を特定する方法の詳細については後述する。
【0059】
図2に示すように、商業銀行12から現金管理施設13へ紙幣が入庫したことを確認した管理装置100は、入庫情報を中央銀行11に送信する(D21)。入庫情報には、商業銀行12から現金管理施設13へ紙幣が入庫したことを示す情報と、現金処理装置200、300で紙幣を計数して得られた入庫金額とが含まれる。管理装置100から入庫情報を受信した中央銀行11は、現金管理施設13に入庫した紙幣に関する処理を実行することができる。例えば、入庫した紙幣の所有権を商業銀行12から中央銀行11へ移す処理が実行される。具体的には、中央銀行11の所定部門が、入庫情報に含まれる各情報を確認して承認することによって紙幣の入庫が完了し、口座間で入庫金額を移動する与信作業が行われる。
【0060】
管理装置100が、商業銀行12から現金管理施設13に入庫した紙幣に関する処理を実行することもできる。例えば、利用者データに、属性情報と関連付けて口座に関する情報を予め登録しておくことにより、管理装置100は、商業銀行12の口座から中央銀行11の口座へ入庫金額を移動する口座処理を実行する。管理装置100が、口座処理を実行した後、口座処理の完了報告を含む入庫情報を中央銀行11に送信する態様であってもよい。
【0061】
図2では、1つの商業銀行12を示しているが、実際には、多数の商業銀行12が中央銀行11への紙幣の入庫を行う。現金管理施設13は、現金処理装置300による紙幣の処理と、紙幣の保管管理とが可能な施設であれば、施設を設ける場所は特に限定されない。このため、各商業銀行12の位置を考慮して、複数の現金管理施設13を適切に配置すれば、各商業銀行12から運び出される紙幣の長距離運搬を回避して、紙幣運搬に係る安全性を向上させることができる。
【0062】
図2では、商業銀行12とは別に現金管理施設13を示しているが、商業銀行12の内部に、現金処理装置300を設ける態様であってもよい。商業銀行12内に現金処理装置300を設け、現金処理装置300を現金管理施設13とみなして上述した入庫作業を行えば、紙幣を商業銀行12の外へ運び出す必要がなくなって紙幣に係る安全性をさらに向上させることができる。
【0063】
このように、現金処理システム1では、各現金処理装置200、300が処理した紙幣の記番号及び属性情報を含む現金データが管理装置100に送信される。管理装置100は、各現金データに含まれる情報を比較することによって紙幣の移動元及び移動先を特定し、移動した紙幣の所有権を移動元から移動先へ移すための処理を実行することができる。商業銀行12が、現金処理装置200で処理した紙幣を現金管理施設13に入庫して、現金管理施設13が、入庫した紙幣を現金処理装置300で処理するだけで、商業銀行12から中央銀行11へ、入庫した紙幣の所有権を移動することが可能となる。これにより、商業銀行12と中央銀行11との間で行われる紙幣の所有権の移動を容易に行うことができる。
【0064】
商業銀行12が中央銀行11から紙幣を出金する紙幣の出庫も入庫と同様に行われる。図2に示すように、出庫時、商業銀行12は、中央銀行11に紙幣の出庫を通知する(A23)。通知を受けた中央銀行11は、現金管理施設13に、商業銀行12に引き渡す紙幣の出庫を指示する(A24)。具体的には、中央銀行11の所定部門が、出庫通知に含まれる各情報を確認して承認することによって出庫が指示されて、現金処理装置300から紙幣が出金される。出庫された紙幣は商業銀行12から現金管理施設13へ移動する(B22)。なお、出庫通知は、例えば、商業銀行12に設置された所定の通信端末と、中央銀行11に設置された所定の通信端末との間で送受信されるが、出庫通知の送受信が省略される態様であってもよい。
【0065】
現金管理施設13の現金処理装置300は、商業銀行12へ向けて出庫する紙幣を処理して現金データを生成し、管理装置100へ送信する(C22)。商業銀行12の現金処理装置200は、現金管理施設13から移動してきた紙幣を処理して現金データを生成し、管理装置100へ送信する(C21)。
【0066】
現金処理装置200で生成された現金データと、現金処理装置300で生成された現金データとに基づいて、現金管理施設13から商業銀行12への紙幣の移動を確認した管理装置100は、出庫情報を中央銀行11に送信する(D22)。中央銀行11は、出庫情報に基づいて、出庫に関する後処理を実行することができる。例えば、出庫金額を中央銀行11の口座から商業銀行12の口座へ移すことにより、出庫した紙幣の所有権を商業銀行12から中央銀行11へ移す処理が実行される。具体的には、中央銀行11の所定部門が、出庫情報に含まれる各情報を確認して承認することによって出庫が完了し、口座間で出庫金額を移動する口座処理が行われる。なお、管理装置100が、出庫金額分を中央銀行11の口座から商業銀行12の口座へ移す口座処理を実行し、口座処理の結果を含む出庫情報を中央銀行11へ送信する態様であってもよい。
【0067】
このように、現金管理施設13から商業銀行12へ紙幣を移動する場合も、移動する紙幣を現金処理装置200、300で処理するだけで、管理装置100が、紙幣の移動を認識して、紙幣の所有権を中央銀行11から商業銀行12へ移す処理を実行する。これにより、中央銀行11と商業銀行12との間で行われる紙幣の所有権の移動を容易に行うことができる。また、商業銀行12から近い場所に現金管理施設13を設けたり、商業銀行12内に現金処理装置300を配置して現金管理施設13として利用したりすることで、紙幣の移動距離を短縮して紙幣移動に係る安全性を確保することができる。
【0068】
次に、上述した紙幣の移動を実現する現金処理システム1の構成及び動作について説明する。図3は、現金処理システム1の構成例を説明するための図である。現金処理システム1は、管理装置100と、紙幣の移動元20に設けられた現金処理装置200と、紙幣の移動先30に設けられた現金処理装置300とを含む。管理装置100と現金処理装置200の間は、有線又は無線により通信可能に接続されている。管理装置100と現金処理装置300との間も、有線又は無線により通信可能に接続されている。
【0069】
なお、移動元20及び移動先30は、紙幣の所有権の移動元及び移動先を示し、移動元20と移動先30の間で紙幣現物を移動する例に限定するものではない。例えば、上述したように、現金処理装置300が商業銀行12内に配置されて、紙幣現物の移動、すなわち物理的な紙幣の移動は行われず、紙幣の所有権の移動のみが行われる場合もある。
【0070】
図3には、2つの移動元20と1つの移動先30とを示しているが、移動元20及び移動先30の数は特に限定されない。現金処理システム1が、紙幣の移動先30となる複数の拠点を含み、紙幣の移動元20となる1又は複数の拠点から、各移動先30へ紙幣の移動が行われる態様であってもよい。1つの移動元20に複数の現金処理装置200が設けられる態様であってもよいし、1つの移動先30に複数の現金処理装置300が設けられる態様であってもよい。いずれの場合も、移動元20の現金処理装置200と移動先30の現金処理装置300で同様の処理が行われるため、図3に示す構成を例に説明を続ける。図2で説明した例では、入庫時には商業銀行12が移動元20、現金管理施設13が移動先30となり、出庫時には現金管理施設13が移動元20、現金管理施設13が移動先30となって、以下に説明する各処理が行われることになる。
【0071】
管理装置100は、制御部及び記憶部を含むコンピュータ装置である。管理装置100は管理サーバであってもよい。管理装置100が、操作部及び表示部を備え、操作部及び表示部を利用して操作される態様であってもよいし、通信可能に接続された操作端末を利用して操作される態様であってもよい。
【0072】
現金処理装置200、300は、複数の紙幣を受け付けて各紙幣を識別計数し、現金データを生成する。例えば、現金処理装置200、300は、入金部に載置された複数枚の紙幣を1枚ずつ装置内に取り込んで識別計数し、装置内の複数の収納部に紙幣を種類別に収納する入金処理を実行する。また、例えば、現金処理装置200、300は、装置内の収納部に収納されている紙幣を識別計数して出金部から出金する出金処理を実行する。現金処理装置200、300が、紙幣の収納容器を着脱可能に構成され、装着された収納容器から紙幣を1枚ずつ繰り出して入金処理を実行し、出金処理の実行時には、収納部から繰り出した紙幣を収納容器に収納してもよい。現金処理装置200、300が、紙幣に加えて硬貨を処理可能であってもよい。紙幣及び硬貨の入金処理及び出金処理を実行する装置の構成及び動作は従来知られているため、詳細な説明は省略する。なお、図1で説明したように、現金処理装置300で処理されて中央銀行11の管理下に入った紙幣は、誰の手にも触れることがないように、或いは、所定権限を有する者のみが触れられるように厳正に管理される。
【0073】
図3に示すように、移動元20の現金処理装置200は、移動する紙幣の通貨、金種、真偽及び正損を識別して、現金データを生成する(ステップS101)。複数の移動元20それぞれにおいて生成された現金データが、管理装置100へ送信されて、管理装置100で管理される(ステップS102)。現金データの生成を終えた紙幣は、各移動元20から移動先30へ移動する(ステップS103)。移動先30では、現金処理装置300が、移動元20から移動してきた紙幣の通貨、金種、真偽及び正損を識別して、現金データを生成する(ステップS104)。
【0074】
現金処理装置200、300は、各装置を特定するための装置情報と、各装置の設置場所を特定するための位置情報とを含む属性情報を有している。現金処理時、現金処理装置200、300は、紙幣を撮像した画像と、紙幣を識別した識別結果及び該識別結果が得られた識別理由を含む識別情報とを取得する。現金処理装置200、300が、装置及び設置場所を特定するための属性情報と、現金処理を実行して得られた紙幣情報とを含む各紙幣のデータを登録した現金データが生成される。
【0075】
図4は、現金データの例を示す図である。現金処理装置200、300が処理した各紙幣に関する情報が、図4に示すように現金データに登録される。例えば、現金データには、図4に示すように、通貨、金種、記番号、識別情報、画像、処理番号、処理日時、位置情報、店舗情報、装置情報が含まれる。ただし、図4は例示であって、現金データが、図4に示す一部の情報を含まない態様であってもよいし、図4にはない情報を含む態様であってもよい。例えば、現金データが、通貨の項目を含まず、金種の項目に通貨及び金種を示す情報が登録される態様であってもよいし、処理番号を含まない態様であってもよい。
【0076】
通貨、金種、記番号、識別情報及び画像は、現金処理装置200、300が紙幣処理を実行して各紙幣から取得する紙幣情報である。処理番号、処理日時、位置情報、店舗情報及び装置情報は、属性情報である。移動元20の現金データに登録されているデータと、移動先30の現金データに登録されているデータとの一致を判定する処理は紙幣情報に基づいて実行され、紙幣の移動元20及び移動先30を特定する処理は属性情報に基づいて実行される。
【0077】
通貨及び金種は、現金処理装置200、300が、紙幣の識別処理を実行することによって得られる。識別処理は、現金処理装置200、300が、紙幣の光学的特徴、磁気的特徴、厚み等に基づいて、紙幣の種類を識別する処理である。識別処理には、紙幣の通貨及び金種を識別する処理と、紙幣の真偽を識別する処理と、紙幣の正損、すなわち傷み具合を識別する処理とが含まれる。
【0078】
記番号は、現金処理装置200、300が紙幣を撮像した画像で記番号部分の文字認識処理を行うことによって得られる。複数桁から成る記番号の一部の桁で文字認識結果を得られなかった場合、文字認識結果を得られなかった桁にクエスチョンマーク、エクスクラメーションマーク等の所定文字を割り当てた情報が記番号として現金データに登録される。記番号を比較する際、所定文字が割り当てられた桁については、その桁に使用されるいずれの文字とも一致しないと判定される。所定文字が割り当てられた桁については、その桁に使用される全ての文字と一致すると判定する設定とすることもできる。記番号の文字認識結果を得られず、記番号を「読取不能」とした現金データが生成される場合もある。
【0079】
識別情報は、現金処理装置200、300が紙幣の識別処理を実行することによって得られる。識別情報には、識別結果と、該識別結果が得られた識別理由とが含まれる。例えば、紙幣の正損を識別して、紙幣表面の汚れによって損券と識別された場合、識別情報には、損券であることを示す情報と、汚れが原因で損券と識別されたことを示す情報とが含まれる。皺によって損券と識別された場合、識別情報には、損券であることを示す情報と、皺が原因で損券と識別されたことを示す情報とが含まれる。損券と識別された理由が複数ある場合は、識別情報に複数の識別理由が含まれることになる。
【0080】
画像は、現金処理装置200、300が紙幣を撮像することによって得られる。例えば、現金処理装置200、300の内部で、紙幣を搬送する搬送路を挟んでセンサが対向配置され、搬送路を搬送される紙幣をセンサで撮像することによって紙幣の表面及び裏面の全面を撮像することができる。現金データに登録される画像は、紙幣の全面画像に限定されず、一部領域を撮像した部分画像であってもよいし、紙幣両面の画像に限定されず、片面の画像であってもよい。
【0081】
処理番号は、現金処理装置200、300が、移動対象の紙幣を処理した際に各処理に付される識別番号である。同じ現金処理装置200、300で複数回の現金処理が実行された場合に各現金処理が処理番号によって区別される。処理日時は、現金処理装置200、300が紙幣処理を実行した日時である。
【0082】
位置情報は、現金処理装置200、300の設置場所を示す情報である。緯度及び経度、地図上の位置を示す所定のコード情報等、設置場所の地理座標を示す情報が位置情報として利用される。例えば、現金処理装置200、300に予め位置情報を記憶させることにより、現金処理装置200、300は、位置情報を含む現金データを生成する。現金処理装置200、300が、現在位置の特定機能を有するスマートフォン等のモバイル端末と通信可能に接続され、モバイル端末から取得した位置情報を利用する態様であってもよい。現金処理装置200、300が、現在位置を特定する機能を有し、特定した位置情報を利用する態様であってもよい。現在位置を特定する方法は従来知られているため詳細な説明は省略するが、例えば衛星情報やネットワーク情報を利用して現在位置が特定される。
【0083】
店舗情報は、現金処理装置200、300が設置された店舗を示す情報である。現金処理装置200、300の設置店舗を特定することができれば、店舗情報の内容は特に限定されない。例えば、複数の支店を有する商業銀行12に設置された現金処理装置200であれば、商業銀行12の銀行名を示す情報と、支店名を示す情報とを組み合わせて店舗情報とすればよい。現金管理施設13の名称から現金管理施設13の場所を特定できる場合は、現金管理施設13の名称を示す情報を店舗情報とすればよい。なお、位置情報及び店舗情報は、いずれも現金処理装置200、300の設置場所を示す情報であるため、位置情報と店舗情報のいずれか一方が現金データに登録される態様であってもよいし、位置情報と店舗情報が1つの情報に統合される態様であってもよい。
【0084】
装置情報は、各現金処理装置200、300を示す情報である。現金処理装置200、300を特定することができれば、装置情報の内容は特に限定されない。例えば、現金処理装置200、300の型番を示す情報と、各装置の製造番号を示す情報とを組み合わせて装置情報とすればよい。
【0085】
管理装置100は、各移動元20から受信した現金データと、移動先30から受信した現金データとに基づいて、紙幣の移動元20を特定する(図3ステップS105)。図5は、管理装置100が、現金データに基づいて、紙幣の移動元20を特定する処理を説明するためのフローチャートである。
【0086】
移動先30の現金処理装置300で生成された現金データを受信した管理装置100は、受信した現金データに含まれる各記番号と、各移動元20の各現金処理装置200から受信した現金データに含まれる各記番号とを比較する(ステップS201)。なお、比較対象とする移動元20の現金データについては、現金処理装置300から現金データを受信した時刻以前の所定時間内に受信した全ての現金データを比較対象とする設定とすることもできるし、比較対象を先に絞り込む設定とすることもできる。比較対象を絞り込む設定とした場合、例えば、移動先30の現金データに含まれるデータの数と、データの数が一致する移動元20の現金データが比較対象とされる。すなわち、移動先30で処理された紙幣枚数と同数の紙幣を処理した移動元20を対象に各処理が実行される。
【0087】
各現金処理装置200から受信済みの現金データの中に、現金処理装置300から受信した現金データに含まれる記番号が見つかった場合、管理装置100は、紙幣の移動元20が存在すると判定する(ステップS202;Yes)。すなわち、管理装置100は、現金処理装置300から受信した現金データは、紙幣の移動後に移動先30で生成されたもので、紙幣の移動元20を特定できたと判定する。例えば、現金処理装置300で得られた記番号と同一の記番号が、複数の移動元A、B…から受信済みの現金データのうち、移動元Aの現金データの中から見つかった場合、管理装置100は、移動先30で処理された紙幣の移動元20を移動元Aと特定する。
【0088】
各現金処理装置200から受信済みの現金データの中に、現金処理装置300から受信した現金データに含まれる記番号が見つからなかった場合(ステップS202;No)、管理装置100は、現金データに含まれる記番号以外の情報を比較する(ステップS203)。
【0089】
具体的には、管理装置100は、各現金処理装置200から受信済みの現金データと、現金処理装置300から受信した現金データとの間で、図4に示す現金データに含まれる各情報のうち、識別情報と画像の少なくともいずれか一方を比較する。例えば、各現金データに含まれる複数のデータのうち、一致する記番号が見つからなかった紙幣の通貨及び金種と一致するデータを対象に、識別情報と画像の少なくともいずれか一方を比較する処理が実行される。
【0090】
移動先30の現金データと、移動元20の現金データとの間で、記番号は一致しないが画像が一致する紙幣が見つかった場合(ステップS204;Yes)、管理装置100は、画像に基づいて移動元20を特定する。
【0091】
例えば、移動先30の現金処理装置300で得られた画像が、複数の移動元A、B…のうち移動元Aの現金データの画像と一致した場合、管理装置100は、紙幣の移動元20を移動元Aと特定する。画像を比較して一致するか否かを判定する方法は従来知られているため詳細な説明は省略するが、例えば、所定の画像比較技術を用いて画像の類似度を示す評価値を算出し、予め設定した閾値を超えた場合に画像が一致すると判定すればよい。
【0092】
移動先30の現金データと、移動元20の現金データとの間で、記番号は一致しないが識別情報が一致する紙幣が見つかった場合、管理装置100は、識別情報に基づいて移動元20を特定する。
【0093】
識別情報が複数の識別理由を含む場合、識別情報が一致すると判定する方法は設定により変更できるようになっている。例えば、移動先30で得られた識別理由と、移動元20で得られた識別理由とが完全に一致した場合に、識別情報が一致すると判定する設定とすることができる。この設定では、例えば移動先30で皺及び汚れを理由に損券と識別された紙幣のデータは、移動元20で皺のみを理由に損券と識別された紙幣のデータとは一致しないと判定される。また、例えば、移動元20で得られた識別理由の全てが、移動先30で得られた識別理由に含まれる場合に、識別情報が一致したと判定する設定とすることもできる。この設定では、移動先30で皺及び汚れを理由に損券と識別された紙幣のデータは、移動元20で皺を理由に損券と識別された紙幣のデータと一致すると判定される。これにより、例えば、移動元20で処理された後、移動先30で処理されるまでの間に紙幣に新たな汚れが付いた場合でも、移動元20と移動先30のデータが一致すると判定することが可能となる。
【0094】
例えば、移動先30の現金処理装置300で得られた識別情報が、複数の移動元A、B…のうち移動元Aの識別情報と一致した場合、管理装置100は、移動元Aを、紙幣の移動元20の候補として選択する。識別情報については、複数の紙幣で、同じ識別結果及び識別理由を得られる可能性がある。このため、管理装置100は、識別情報が一致した場合も移動元20の候補として選択するに留めて、識別情報が一致する他の紙幣の探索を続ける。識別情報に基づいて選択した移動元20の候補が移動元Aの1つしかない場合、管理装置100は、移動元20を特定可能と判定して(ステップS204)、紙幣の移動元20を移動元Aと特定する。
【0095】
一方、移動元20の候補が複数ある場合、管理装置100は、移動元20を特定不能と判定する(ステップS204;No)。この場合、移動先30にある、管理装置100と通信可能な端末を利用して、紙幣の移動元20を特定する作業が行われる。作業に利用する端末及び作業者は特に限定されない。例えば、作業が管理装置100で行われて態様であってもよいが、以下、移動先30の現金処理装置300を操作する操作者が、現金処理装置300が備える操作部及び表示部を利用して作業を行うものとして説明を続ける。
【0096】
管理装置100は、現金処理装置300の表示部に、紙幣の移動元20を特定するための画面を表示する(ステップS205)。図6は、紙幣の移動元20を特定する際に表示される画面例を示す図である。記番号から移動元20を特定できなかった紙幣について移動先30の現金データに登録されている情報が、画面上に表示される。図6に示す例では、画面最上段に、移動元不明の紙幣として、紙幣の画像、通貨、金種、記番号及び識別情報が表示されている。識別情報には、紙幣が損券と識別されたことを示す識別結果と、紙幣右側の折れ目を理由に損券と判定されたことを示す識別理由とが含まれている。
【0097】
表示部の画面上には、移動元不明の紙幣について、管理装置100が、移動元20の候補として選択した紙幣の情報が一覧表示される。図6に示す例では、紙幣右側の折れ目を理由に損券と判定された紙幣が、移動元Aで処理された紙幣と、移動元Bで処理された紙幣の2枚存在し、管理装置100が移動元20を1つに特定できなかったため、2枚の紙幣の情報が一覧表示されている。
【0098】
図6に示すように、移動元特定時に候補として選択された各紙幣について、現金データに登録されている各情報が表示される。操作者は、表示内容を目視確認することにより、移動元不明とされた紙幣の移動元20が、移動元Aと移動元Bのいずれであるかを特定することができる。例えば、操作者は、紙幣の画像と、該画像に含まれる記番号とを目視で比較することにより移動元20を特定する。
【0099】
例えば、移動元Aで現金データが生成されてから、移動先30で現金データが生成されるまでの間に、紙幣に新たな折れ目、皺、汚れが加わったために、紙幣の画像が一致しなくなったり、紙幣記番号を正確に読み取れなくなったりする場合がある。また、例えば、現金処理装置200と、現金処理装置300の機能及び性能の違いから、画像及び記番号が一致しない現金データが生成される場合がある。
【0100】
図6には、移動元20で処理された後に紙幣に新たな折り目が付いたために、移動元20で取得された画像と、移動先30で取得された画像とが一致しないと判定された場合の例を示している。このような場合でも、図6に示すように、管理装置100が、移動元20の候補となる紙幣の情報を画面上に一覧表示することにより、操作者は、紙幣の移動元20を容易に特定することができる。
【0101】
表示部の画面上には、一覧表示された各紙幣に対応してチェックボックスが表示される。紙幣の移動元20が移動元Aであることを確認した操作者は、操作部を操作して、図6に示すように、移動元Aのチェックボックスにチェックを入れて画面上のOKボタンを押す操作を行う。管理装置100は、操作者による移動元20の選択結果を受け付ける(図5ステップS206)。
【0102】
管理装置100は、移動先30の現金処理装置300で生成された現金データに含まれる各紙幣のデータについて、移動元20を特定するための処理を実行する。処理を終えていない紙幣のデータが残っている場合(ステップS207;No)、管理装置100は、ステップS201に戻って次の紙幣データの処理を開始する。全ての紙幣データの処理を終えると管理装置100は処理を終了する。
【0103】
このように、管理装置100は、移動元20の各現金処理装置200から受信した現金データと、移動先30の現金処理装置300から受信した現金データとに基づいて、移動先30の現金処理装置300で処理された紙幣の移動元20を自動的に特定する。
【0104】
紙幣の移動元20が特定されると、管理装置100は、特定した移動元20及び移動先30について予め設定された処理を実行する(図3ステップS106)。例えば、管理装置100は、予め設定された送信先へ入庫情報を送信する。また、例えば、管理装置100は、移動元20の口座から、移動先30の口座へ、移動元20から移動先30へ移動した紙幣の金額を移動する口座処理を実行する。具体的には、管理装置100が、移動元20の口座を示す情報、移動先30の口座を示す情報、及び移動金額を、口座処理を実行する所定の外部装置へ送信して口座処理の実行を指示することにより、外部装置が口座処理を実行する。
【0105】
図5に示すステップS203で行われるデータの比較処理、すなわち記番号以外の情報に基づいて紙幣の移動元20を特定する処理の内容は、設定により変更できるようになっている。図7は、管理装置100による紙幣移動元の特定方法に関する設定を説明するための図である。図5に示すステップS203の比較処理は、以下に説明する設定に基づいて実行される。
【0106】
図7は、移動先30の現金処理装置300で生成された現金データに登録されている各紙幣P、Q、R、S、T…のデータを、移動元Aの現金データに登録されているデータと比較した比較結果と、比較結果に基づく移動元20の判定結果とを示している。図7に示す「一致」はデータが一致したことを示し、「×」は一致しなかったことを示している。
【0107】
例えば、紙幣Pについては、移動先30の現金処理装置300で得られた通貨、金種、記番号、識別情報及び画像の全てが、移動元Aの現金データに登録されているデータと一致したことを示している。この場合、記番号に基づく判定を行うだけで、図7の判定結果の項目に示すように、紙幣Pの移動元20が移動元Aと特定される。
【0108】
移動元20の現金データに登録されたデータと、移動先30の現金データに登録されたデータとを比較する管理装置100の設定を、記番号が異なっていても識別情報及び画像の両方が一致すれば両データは一致すると判定する設定とすることができる。この場合、図5に示すステップS203の比較処理では、図7の記番号の項目に「×」とあるように記番号が一致しないと判定された紙幣Q~Tのうち紙幣Qのデータは、移動元Aのデータと一致すると判定される。一方、紙幣R~Tのデータは、識別情報と画像の少なくともいずれか一方が移動元Aのデータと一致しないため、移動元Aのデータと一致しないと判定される。他の移動元20の現金データの中に、紙幣Qのデータと一致する他のデータが見つからなかった場合、紙幣Qの移動元20は移動元Aと特定されて、他のデータが見つかった場合は、図6に示したように、現金処理装置300の操作者によって移動元20が特定されることになる。
【0109】
管理装置100の設定を、記番号が異なっていても識別情報が一致すれば両データは一致すると判定する設定とした場合は、紙幣Q~Tのうち紙幣Q及び紙幣Rのデータは、移動元Aのデータと一致すると判定される。紙幣S及び紙幣Tのデータは識別情報が一致しないため、移動元Aのデータと一致しないと判定される。
【0110】
管理装置100の設定を、記番号が異なっていても画像が一致すれば両データは一致すると判定する設定とした場合は、紙幣Q~Tのうち紙幣Q及び紙幣Sのデータは、移動元Aのデータと一致すると判定される。紙幣R及び紙幣Tのデータは画像が一致しないため、移動元Aのデータと一致しないと判定される。
【0111】
管理装置100の設定を、記番号が異なっていても識別情報と画像の少なくともいずれか一方が一致すれば両データは一致すると判定する設定とした場合は、紙幣Q~Tのうち紙幣Q~Sのデータは移動元Aのデータと一致すると判定される。紙幣Tのデータは、識別情報及び画像の両方が一致しないため、移動元Aのデータと一致しないと判定される。
【0112】
このように、移動元20の現金データに登録されている各紙幣のデータと、移動先30の現金データに登録されている各紙幣のデータとの間で、記番号が一致しない場合でも、識別情報と画像の少なくともいずれか一方が一致すれば両データは一致すると判定する設定とすることで、記番号の読取結果のみに依存することなく紙幣を管理することができる。
【0113】
管理装置100が、識別情報の一致を判定する処理と、画像の一致を判定する処理と、識別情報及び画像の両方の一致を判定する処理と、識別情報又は画像の一致を判定する処理のいずれか1つの一致判定処理のみを実行する態様に限定されない。各一致判定処理に優先順位を設定して、移動元20が特定されない場合には、次の優先順位に基づく一致判定処理を実行する態様であってもよい。
【0114】
例えば、画像に基づく一致判定処理の処理負荷が高い場合は、識別情報に基づく一致判定処理を優先する設定として、移動元20を特定できなかった場合にのみ画像に基づく一致判定処理を実行する設定とすればよい。また、例えば、同じ識別情報を含むデータが多いために、識別情報に基づく一致判定処理で移動元20の候補の数が多くなりすぎる場合は、画像に基づく一致判定処理を優先する設定として、移動元20を特定できなかった場合にのみ識別情報に基づく一致判定処理を実行する設定とすればよい。
【0115】
本実施形態では、移動先30で生成された現金データに含まれる各紙幣のデータについて移動元20を特定する処理を実行する例を説明したが、移動元20の特定が、一部の紙幣のデータに基づいて行われる態様であってもよい。例えば、移動先30の現金データに含まれる各データの処理を開始して、所定数のデータで同一の移動元20が特定された場合には、残りのデータの処理を行うことなく、移動元20を特定する態様であってもよい。具体的には、例えば移動先30の現金データに100枚の紙幣のデータが含まれる場合でも、予め設定された枚数、例えば10枚の紙幣のデータについて、移動元20が移動元Aであると特定された場合は、管理装置100が移動元20を移動元Aと特定して、残り90枚の紙幣のデータについては移動元20の特定を行わない態様であってもよい。
【0116】
本実施形態では、記番号の比較によって紙幣の移動元20を特定し、移動元20を特定できなかった場合に、記番号以外の情報に基づいて移動元20を特定する処理を実行する例を説明したが、記番号に基づいて移動元20が特定された場合でも、記番号以外の情報に基づく移動元20の特定処理を実行する態様であってもよい。
【0117】
例えば、移動先30で得られた紙幣の記番号が、移動元Aで得られた紙幣の記番号と一致することから移動元20が移動元Aと特定された場合でも、管理装置100が、紙幣の識別情報、画像等に基づく移動元20の特定処理を実行してもよい。記番号に基づいて特定された移動元20と、他の情報に基づいて特定された移動元20とが一致しない場合は、図6に示したように、比較用のデータを操作者に提示して、操作者が移動元20を決定すればよい。移動元20で得られた記番号と移動先30で得られた記番号とが一致する場合でも、さらに識別情報、画像等に基づく一致判定処理を実行することで、より確実に移動元20を特定することが可能となる。
【0118】
本実施形態では、移動先30で得られた記番号が、移動元20で得られた記番号と一致することに基づいて紙幣の移動を特定する例を説明したが、他の方法で紙幣の移動を特定する態様であってもよい。
【0119】
例えば、図1に示す例で、管理装置100は、紙幣を出庫する際に現金処理装置300で処理して得られた各紙幣の記番号を記番号リストにして記憶する。商業銀行12は、出庫された紙幣を利用して営業を行い、営業終了後、残った紙幣を現金処理装置300に入庫する。現金処理装置300から、入庫した紙幣の現金データを受信した管理装置100が、現金データに含まれる記番号を、記番号リストの記番号と照合することにより、商業銀行12が紙幣を入庫したことを認識して、上述したように、入庫した紙幣の処理を実行してもよい。
【0120】
また、例えば、図2に示す例で、管理装置100は、中央銀行11から商業銀行12に紙幣を出庫する際に、現金管理施設13の現金処理装置300で処理して得られた各紙幣の記番号を記番号リストにして記憶する。商業銀行12は、出庫された紙幣を利用して営業を行い、営業終了後、残った紙幣を現金管理施設13に入庫する。現金管理施設13の現金処理装置300から、入庫した紙幣の現金データを受信した管理装置100は、現金データに含まれる記番号を、記番号リストの記番号と照合することにより、入庫した紙幣の移動元20を商業銀行12と特定して、上述したように、入庫した紙幣の処理を実行してもよい。
【0121】
本実施形態では、紙幣現物の移動を対象とする処理を説明したが、現金処理システム1がデジタル通貨の処理を実行する態様であってもよい。例えば、図1及び図2に示す例で、中央銀行11がデジタル通貨を発行し、市場でデジタル通貨を使用した取引が行われているものとする。商業銀行12は、中央銀行11へ入庫通知を送信する際に、入庫する紙幣をデジタル通貨に変更することを求める。その後は、上述したように、紙幣の入庫が行われて管理装置100から中央銀行11へ入庫情報が送信される。入庫情報に基づいて、商業銀行12からの入庫金額を確認した中央銀行11は、入庫金額分のデジタル通貨を商業銀行12へ発行する。これにより、商業銀行12は、現金管理施設13に入庫した紙幣をデジタル通貨に変えて利用することができる。
【0122】
管理装置100から中央銀行11へ入庫情報が送信されるよりも前のタイミングで、中央銀行11がデジタル通貨を商業銀行12に発行する態様であってもよい。デジタル通貨の発行タイミングは特に限定されないが、例えば、商業銀行12から管理装置100へ現金データを送信したタイミングで、中央銀行11が、現金データにデータが登録されている紙幣の金額分のデジタル通貨を商業銀行12に発行する態様であってもよい。図2に示す例では、商業銀行12から現金管理施設13に紙幣が入庫していない状態で、デジタル通貨が発行されることになるが、デジタル通貨の発行に伴い、現金データに含まれる記番号を有する紙幣が紙幣価値のないものとみなされるようにすればよい。例えば、中央銀行11が、無価値にした紙幣の記番号を各商業銀行に連絡することにより、市場で紙幣を利用できないようにする。また、例えば、管理装置100が、無価値にされた紙幣の記番号を現金処理装置200、300に送信して、現金処理装置200、300が、紙幣を無価値とみなし、現金処理時の金額に該紙幣の金額を含めず、該紙幣をリジェクトするようにしてもよい。無価値となった紙幣については、上述したように現金管理施設13に入庫する態様であってもよいし、商業銀行12又は専用施設で廃棄される態様であってもよい。
【0123】
本実施形態では、金融機関を例に各処理を説明したが、現金処理システム1の利用者が金融機関に限定されるものではない。例えば、客との商品取引を行う小売店等の複数の商業店舗と、現金センターと呼ばれる所定の拠点との間で、売上金を移動する場合も、売上金に関する処理を上述したように実行することができる。商業店舗と商業銀行12との間で紙幣を移動したり、商業店舗と警送会社との間で紙幣を移動したり、商業銀行12と警送会社との間で紙幣を移動したりする場合も、現金に関する処理を上述したように実行することができる。商業店舗に関しては、商業店舗内に配置される現金処理装置に限定されず、複数の商業店舗によって利用されるショッピングモール等に配置される現金処理装置等を対象として、上述した各処理を実行する態様であってもよい。
【0124】
本実施形態では、警送会社が紙幣を運搬することによって紙幣を移動する例を説明したが、紙幣の移動方法も特に限定されない。例えば、拠点間又は装置間が自動機で接続され、自動機によって紙幣が移動する態様であってもよい。図2に示す例で、現金処理装置200と現金処理装置300との間を自動機で接続して、自動機を介して、入庫と出庫の少なくともいずれか一方が実行される態様であってもよい。図1に示す例でも、例えば、現金処理装置300と他の現金処理装置との間を自動機で接続し、自動機を介して、他の現金処理装置と現金処理装置300との間で入庫と出庫の少なくともいずれか一方が実行される態様であってもよい。例えば、ベルトコンベア式の自動機で装置間を接続すれば、入庫時及び出庫時の紙幣の移動を自動化することができる。自動機の種類も特に限定されず、例えば、地上走行型の無人車両、ドローン等の無人航空機等の無人機が紙幣を運ぶ態様であってもよい。遠隔操作によって制御された無人機が紙幣を運ぶ態様であってもよいし、自立型の無人機が紙幣を運ぶ態様であってもよい。
【0125】
本実施形態では、現金処理システム1が、管理装置100と、現金処理装置200、300とを含む構成例を示したが、該構成は機能概略的なものであり、現金処理システム1の構成が物理的に該構成に限定されるものではない。管理装置100が、上述した現金処理装置200、300の機能及び動作の一部を実現する態様であってもよい。例えば、管理装置100が、現金データを生成する態様であってもよい。また、現金処理装置200、300が、上述した管理装置100の機能及び動作の一部を実現する態様であってもよい。例えば、移動先30の現金処理装置300が、移動元20の現金処理装置200現金データを取得して、データの一致を判定する処理を実行する態様であってもよい。また、現金処理装置200、300の機能及び動作の一部が、現金処理装置200、300と接続された別の端末装置によって実行される態様であってもよい。また、現金処理システム1が、複数の管理装置100を含み、各管理装置100が相互に連携して処理を行う分散型のシステムであってもよい。各装置の分散・統合の形態は上述した例に限定されず、その全部又は一部を各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【0126】
上述したように、現金処理システムでは、所有権を移動したい現金を現金処理装置で処理することにより、現金に関する情報を含む現金データが生成されて、現金データに基づいて現金の所有権を移動するための処理が自動的に実行される。現金現物を移動する場合も、移動元の現金処理装置と移動先の現金処理装置で現金を処理することにより、現金現物の移動及び所有権の移動に関する処理が自動的に実行される。移動対象の現金を現金処理装置で処理するだけでよいため、大量の現金の所有権を容易に移動することができる。
【産業上の利用可能性】
【0127】
以上のように、本開示に係る現金処理システム及び現金処理方法は、現金の所有権の移動を容易に行うために有用である。
【符号の説明】
【0128】
1 現金処理システム
11 中央銀行
12 商業銀行
13 現金管理施設
100 管理装置
200、300 現金処理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7