(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003469
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】直動装置
(51)【国際特許分類】
F16C 29/06 20060101AFI20240105BHJP
F16B 21/08 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
F16C29/06
F16B21/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102644
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】591077818
【氏名又は名称】日本ベアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(72)【発明者】
【氏名】植木 雄亮
(72)【発明者】
【氏名】川邨 雅貴
(72)【発明者】
【氏名】小山 拓
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 亨
【テーマコード(参考)】
3J037
3J104
【Fターム(参考)】
3J037AA02
3J037BB02
3J037DA02
3J037DA12
3J037DB02
3J037DC01
3J104AA03
3J104AA24
3J104AA36
3J104AA67
3J104AA69
3J104AA74
3J104AA75
3J104AA76
3J104BA24
3J104DA17
(57)【要約】
【課題】無負荷路構成部材等の組み付けが容易となる、これまでにない直動装置を提供する。
【解決手段】レール体1と該レール体1に対して直動する直動体2とを有し、前記レール体1と前記直動体2との間には転動体3が移動する負荷路4が設けられ、前記負荷路4はリターン路5を介して前記直動体2に設けられた無負荷路6と連通せしめられた直動装置であって、前記無負荷路6は、前記直動体2の長手方向両端面に開口する孔7と、前記孔7に配設される無負荷路構成部材8とで構成され、前記無負荷路構成部材8は、前記孔7内に配設される本体部9と、前記本体部9の両端に夫々設けられ前記直動体2の前記長手方向両端面に夫々係止する係止端部10とを有し、前記無負荷路構成部材8は、第一半体8a及び第二半体8bをスナップフィットにより係合連結して構成されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール体と該レール体に対して直動する直動体とを有し、前記レール体と前記直動体との間には転動体が移動する負荷路が設けられ、前記負荷路はリターン路を介して前記直動体に設けられた無負荷路と連通せしめられ、前記負荷路と前記リターン路と前記無負荷路とで構成された転動体無限循環路が複数設けられた直動装置であって、
前記無負荷路は、前記直動体の長手方向両端面に開口する孔と、前記孔に配設される無負荷路構成部材とで構成され、
前記無負荷路構成部材は、前記孔内に配設される本体部と、前記本体部の両端に夫々設けられ前記直動体の前記長手方向両端面に夫々係止する係止端部とを有し、
前記無負荷路構成部材は、第一半体及び第二半体を組み合わせて構成され、前記第一半体は、一方の前記係止端部と前記孔内に一方側から挿入される第一の挿入部とを有し、前記第二半体は、他方の前記係止端部と前記孔内に他方側から挿入される第二の挿入部とを有し、前記第一の挿入部の先端部と前記他方の係止端部とがスナップフィットにより係合連結されていると共に、前記第二の挿入部の先端部と前記一方の係止端部とがスナップフィットにより係合連結されていることを特徴とする直動装置。
【請求項2】
請求項1記載の直動装置において、前記第一の挿入部の先端部及び他方の係止端部のいずれか一方には弾性係止片が設けられ、他方には前記弾性係止片が前記孔の径方向に撓み変形して乗り越えることで該弾性係止片が係合する係合部が設けられて前記スナップフィットが構成されていることを特徴とする直動装置。
【請求項3】
請求項2記載の直動装置において、前記第一の挿入部の先端部には前記孔の内面と対向するガイド凸部が設けられ、前記第一の挿入部を前記ガイド凸部を該孔内面に押し付けるように前記孔に挿入することで、前記弾性係止片を前記係合部に導けるように構成されていることを特徴とする直動装置。
【請求項4】
請求項2記載の直動装置において、前記他方の係止端部には、一対のガイド片が設けられ、前記第一の挿入部の先端部が前記ガイド片間に配されるように前記孔に挿入することで、前記弾性係止片を前記係合部に導けるように構成されていることを特徴とする直動装置。
【請求項5】
請求項1記載の直動装置において、前記他方の係止端部には弾性係止片が設けられ、前記第一の挿入部の先端部には前記弾性係止片が前記孔の径方向に撓み変形して乗り越えることで該弾性係止片が係合する係合部が設けられ、前記係合部の外側には前記孔の内面と対向するガイド凸部が設けられ、前記他方の係止端部には前記弾性係止片を挟むように一対のガイド片が設けられていることを特徴とする直動装置。
【請求項6】
請求項5記載の直動装置において、前記第一の挿入部を前記ガイド凸部を前記孔内面に押し付けるように前記孔に挿入することで、前記弾性係止片と前記係合部との前記孔の径方向における位置合わせを行えるようにしたことを特徴とする直動装置。
【請求項7】
請求項6記載の直動装置において、前記第一の挿入部を前記係合部が前記ガイド片間に配されるように前記孔に挿入することで、前記弾性係止片と前記係合部の前記孔の周方向における位置合わせを行えるようにしたことを特徴とする直動装置。
【請求項8】
請求項1~7いずれか1項に記載の直動装置において、前記転動体は長さが直径の2倍以上である円柱体であり、隣り合う前記転動体同士の間に夫々設けられるスペーサ部と該スペーサ部の両端部を夫々連結する帯状の連結体とで構成された転動体保持具により自転可能に保持された状態で前記転動体無限循環路を循環するように構成され、前記無負荷路構成部材の前記本体部の側方は開放されて前記連結体が配設される隙間が設けられていることを特徴とする直動装置。
【請求項9】
請求項8記載の直動装置において、前記直動体と前記レール体との間には、前記転動体保持具をガイドするガイド部材が設けられ、このガイド部材の両端部には、前記リターン路を構成するリターン路構成部材が夫々設けられていることを特徴とする直動装置。
【請求項10】
請求項9記載の直動装置において、前記ガイド部材の両端の前記リターン路構成部材と前記無負荷路構成部材とは、前記リターン路と前記無負荷路とが連通した状態で連結されていることを特徴とする直動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、レール体と該レール体に対して直動する直動体とを有し、前記レール体と前記直動体との間には転動体が移動する負荷路が設けられ、前記負荷路はリターン路を介して前記直動体に設けられた無負荷路と連通せしめられ、前記負荷路と前記リターン路と前記無負荷路とで構成された転動体無限循環路が複数設けられた直動装置において、直動体に穿設された直線孔に無負荷路構成部材を配設して無負荷路を構成したものがある(特許文献1等参照)。
【0003】
ところで、このような直動装置を製造する際には、作業者が直動体に無負荷路構成部材等の部品を手作業で組み付けることになるが、特に小型の直動装置においては部品が小型化し、それだけ無負荷路構成部材等の組み付けが厄介となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述のような現状に鑑みなされたもので、無負荷路構成部材等の組み付けが容易となる、これまでにない直動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0007】
レール体1と該レール体1に対して直動する直動体2とを有し、前記レール体1と前記直動体2との間には転動体3が移動する負荷路4が設けられ、前記負荷路4はリターン路5を介して前記直動体2に設けられた無負荷路6と連通せしめられ、前記負荷路4と前記リターン路5と前記無負荷路6とで構成された転動体無限循環路が複数設けられた直動装置であって、
前記無負荷路6は、前記直動体2の長手方向両端面に開口する孔7と、前記孔7に配設される無負荷路構成部材8とで構成され、
前記無負荷路構成部材8は、前記孔7内に配設される本体部9と、前記本体部9の両端に夫々設けられ前記直動体2の前記長手方向両端面に夫々係止する係止端部10とを有し、
前記無負荷路構成部材8は、第一半体8a及び第二半体8bを組み合わせて構成され、前記第一半体8aは、一方の前記係止端部10と前記孔7内に一方側から挿入される第一の挿入部12とを有し、前記第二半体8bは、他方の前記係止端部10と前記孔7内に他方側から挿入される第二の挿入部13とを有し、前記第一の挿入部12の先端部と前記他方の係止端部10とがスナップフィットにより係合連結されていると共に、前記第二の挿入部13の先端部と前記一方の係止端部10とがスナップフィットにより係合連結されていることを特徴とする直動装置に係るものである。
【0008】
また、請求項1記載の直動装置において、前記第一の挿入部12の先端部及び他方の係止端部10のいずれか一方には弾性係止片14が設けられ、他方には前記弾性係止片14が前記孔7の径方向に撓み変形して乗り越えることで該弾性係止片14が係合する係合部15が設けられて前記スナップフィットが構成されていることを特徴とする直動装置に係るものである。
【0009】
また、請求項2記載の直動装置において、前記第一の挿入部12の先端部には前記孔7の内面と対向するガイド凸部16が設けられ、前記第一の挿入部12を前記ガイド凸部16を該孔7内面に押し付けるように前記孔7に挿入することで、前記弾性係止片14を前記係合部15に導けるように構成されていることを特徴とする直動装置に係るものである。
【0010】
また、請求項2記載の直動装置において、前記他方の係止端部10には、一対のガイド片17が設けられ、前記第一の挿入部12の先端部が前記ガイド片17間に配されるように前記孔7に挿入することで、前記弾性係止片14を前記係合部15に導けるように構成されていることを特徴とする直動装置に係るものである。
【0011】
また、請求項1記載の直動装置において、前記他方の係止端部10には弾性係止片14が設けられ、前記第一の挿入部12の先端部には前記弾性係止片14が前記孔7の径方向に撓み変形して乗り越えることで該弾性係止片14が係合する係合部15が設けられ、前記係合部15の外側には前記孔7の内面と対向するガイド凸部16が設けられ、前記他方の係止端部10には前記弾性係止片14を挟むように一対のガイド片17が設けられていることを特徴とする直動装置に係るものである。
【0012】
また、請求項5記載の直動装置において、前記第一の挿入部12を前記ガイド凸部16を前記孔7内面に押し付けるように前記孔7に挿入することで、前記弾性係止片14と前記係合部15との前記孔7の径方向における位置合わせを行えるようにしたことを特徴とする直動装置に係るものである。
【0013】
また、請求項6記載の直動装置において、前記第一の挿入部12を前記係合部15が前記ガイド片17間に配されるように前記孔7に挿入することで、前記弾性係止片14と前記係合部15の前記孔7の周方向における位置合わせを行えるようにしたことを特徴とする直動装置に係るものである。
【0014】
また、請求項1~7いずれか1項に記載の直動装置において、前記転動体3は長さが直径の2倍以上である円柱体であり、隣り合う前記転動体3同士の間に夫々設けられるスペーサ部30と該スペーサ部30の両端部を夫々連結する帯状の連結体31とで構成された転動体保持具32により自転可能に保持された状態で前記転動体無限循環路を循環するように構成され、前記無負荷路構成部材8の前記本体部9の側方は開放されて前記連結体31が配設される隙間18が設けられていることを特徴とする直動装置に係るものである。
【0015】
また、請求項8記載の直動装置において、前記直動体2と前記レール体1との間には、前記転動体保持具32をガイドするガイド部材39が設けられ、このガイド部材39の両端部には、前記リターン路5を構成するリターン路構成部材40a・40bが夫々設けられていることを特徴とする直動装置に係るものである。
【0016】
また、請求項9記載の直動装置において、前記ガイド部材39の両端の前記リターン路構成部材40a・40bと前記無負荷路構成部材8とは、前記リターン路5と前記無負荷路6とが連通した状態で連結されていることを特徴とする直動装置に係るものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明は上述のように構成したから、無負荷路構成部材等の組み付けが容易となる、これまでにない直動装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図3】本実施例の要部の拡大概略説明断面図である。
【
図5】弾性係止片及び係合部の概略説明斜視図である。
【
図6】弾性係止片及び係合部の概略説明断面図である。
【
図7】係合状態の弾性係止片及び係合部の概略説明斜視図である。
【
図8】係合状態の弾性係止片及び係合部の概略説明断面図である。
【
図10】ガイド部材及びリターン路構成部材の概略説明斜視図である。
【
図11】ガイド部材及びリターン路構成部材の取付状態等を示す概略説明斜視図である。
【
図12】エンドキャップ等の概略説明斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0020】
直動体2の孔7に第一半体8a及び第二半体8bを挿入して無負荷路構成部材8を組み付ける際、第一の挿入部12と他方の係止端部10、および第二の挿入部13と一方の係止端部10とをスナップフィットにより連結することができるから、第一半体8aと第二半体8bとの連結が簡単に行える。
【0021】
すなわち、孔7内で挿入部12・13が視認できなくとも、例えば、スナップフィットを構成する弾性突出片14と係合部15とは、弾性突出片14がその弾性により撓みながら係合部15に案内されて係合され、多少位置がずれていても良好に係合が行われる構成とすることができ、それだけ無負荷路構成部材8の組み付け作業が容易となる。
【実施例0022】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0023】
本実施例は、レール体1と該レール体1に対して直動する直動体2とを有し、前記レール体1と前記直動体2との間には転動体3が移動する負荷路4が設けられ、前記負荷路4はリターン路5を介して前記直動体2に設けられた無負荷路6と連通せしめられ、前記負荷路4と前記リターン路5と前記無負荷路6とで構成された転動体無限循環路が複数設けられた直動装置である。
【0024】
具体的には、前記無負荷路6は、前記直動体2の長手方向両端面に開口する孔7と、前記孔7に配設される無負荷路構成部材8とで構成されている。また、前記無負荷路構成部材8は、前記孔7内に挿入配設される本体部9と、前記本体部9の両端に夫々設けられ前記直動体2の前記長手方向両端面に夫々係止する係止端部10とを有するものである。
【0025】
各部を具体的に説明する。
【0026】
直動体2は、
図1~3に図示したように、基部20の左右に袖部21・22が垂下された断面視下向きコ字状の金属製ブロック体であり、左右の袖部21・22の内面には夫々、金属製のレール体1の左右側面に該レール体1の長手方向に沿って延設された断面視V字状の凹条部に嵌合するように配設される凸条部が突設されている。
【0027】
凸条部は上側斜面25と下側斜面26とを前記凹条部に対応してV字状に配して構成され、レール体1の凹条部の上側内面27及びこれに対向する凸条部の上側斜面25が上側の負荷路4、凹条部の下側内面28及びこれに対向する凸条部の下側斜面26が下側の負荷路4を夫々構成する。上側の負荷路4を構成する上側内面27及び上側斜面25と、下側の負荷路4を構成する下側内面28及び下側斜面26とは、レール体1の中心を通る鉛直線に対して夫々約45°傾斜する面となるように構成されている。
【0028】
すなわち、本実施例は、左右一対の転動体無限循環路が上下一組設けられている構成である(上側の負荷路4を含むものが上側の転動体無限循環路、下側の負荷路4を含むものが下側の転動体無限循環路。)。図中、符号29は上側内面27と下側内面28とを連結する連結面である。
【0029】
直動体2には、無負荷路構成部材8が配設される断面円形の直線状の孔7が負荷路4に応じて左右の袖部21・22夫々に、上下一組穿設されている。
【0030】
具体的には、上側の負荷路4と対応する無負荷路6は下側の孔7を用いて構成され、下側の負荷路4と対応する無負荷路6は上側の孔7を用いて構成される。上下の転動体無限循環路は端面視において夫々90°で交差するように配置される。
【0031】
また、本実施例の転動体3は、長さ/直径を2以上、具体的には2.2~4.2としている。したがって、接触長さが長い多数の(針状の)ころで荷重を支えることが可能となる。
【0032】
また、転動体3は、隣接する転動体3同士の間に夫々設けられるスペーサ部30と該スペーサ部30の両端部を夫々連結する帯状の連結体31とで構成された転動体保持具32により自転可能に保持されている。
【0033】
具体的には、
図4に図示したようにスペーサ部30の両端を連結体31で連結した合成樹脂製で柔軟性を有する帯状で梯子状の転動体保持具32を用いている。すなわち、転動体保持具32は帯状で、所定間隔で転動体3が自転可能に配設される窓孔が設けられた構成である。
図4における表面側がレール体1の凹条部側となり、裏面側が直動体2の凸条部側となる。また、転動体3が転動体保持具32に保持された状態では、転動体3は表面側からの突出量が裏面側からの突出量より大きくなるように構成されている。
【0034】
無負荷路構成部材8について説明する。
【0035】
無負荷路構成部材8は、
図2に図示したように、合成樹脂製の第一半体8a及び第二半体8bを組み合わせて構成され、前記第一半体8aは一方の前記係止端部10と前記孔7内に一方側から挿入される第一の挿入部12とを有し、前記第二半体8bは他方の前記係止端部10と前記孔7内に他方側から挿入される第二の挿入部13とを有する。第一の挿入部12と第二の挿入部13とにより本体部9が構成される。
【0036】
この第一半体8a及び第二半体8bは、互いに平行な第一の挿入部12及び第二の挿入部13(孔7内に配設される部位)は当接せず離間して第一半体8a及び第二半体8bの挿入部同士の間の空間に無負荷路6が形成されるように構成されている。
【0037】
具体的には、第一半体8a及び第二半体8bの挿入部12・13は孔7と略平行に延びる板状であり、対向する内面間を転動体3及び転動体保持具32が通過する構成である。また、挿入部12・13の内面中央部には油だまりとしての窪みが形成されている。また、第二の挿入部13には、前記油だまり用の窪みと重なるように転動体3が保持される凹部19が設けられている。また、第一の挿入部12と第二の挿入部13との間にして凹部19の外側には、転動体保持具32の連結体31が配設される隙間18が設けられている。すなわち、本体部9の側方は開放されて前記連結体31が配設される隙間18が設けられている。
【0038】
また、
図5~8に図示したように、前記第一の挿入部12の先端部と前記他方の係止端部10とがスナップフィットにより係合連結され、前記第二の挿入部13の先端部と前記一方の係止端部10とがスナップフィットにより係合連結されている。
【0039】
具体的には、前記第一の挿入部12の先端部及び他方の係止端部10の一方には弾性係止片14が設けられ、他方には前記弾性係止片14が前記孔7の径方向に撓み変形して乗り越えることで該弾性係止片14が係合する係合部15が設けられている。
【0040】
本実施例では、他方の係止端部10には前記孔7と略平行に突出する弾性係止片14が設けられ、前記第一の挿入部12の先端部には係合部15が設けられている。一方の係止端部10及び第二の挿入部13についても同様に、一方の係止端部10に弾性係止片14が設けられ、第二の挿入部13に係合部15が設けられている。この弾性係止片14と係合部15とによりスナップフィットが構成される。
【0041】
弾性係止片14の先端及び係合部15の先端には、前記乗り越えを補助するテーパ部33・34が設けられている。また、弾性係止片14及び係合部15のテーパ部33・34の反対側には前記乗り越え後に互いに対向する係止面35・36が設けられている。したがって、弾性係止片14による係合部15の図中下方向への乗り越えは良好に行われ、乗り越え後の係合状態も良好に維持される(
図7,8参照)。
【0042】
また、第一の挿入部12の先端部及び第二の挿入部13の先端部(前記係合部15)の外側には前記孔7の内面と対向するガイド凸部16が設けられ、前記第一の挿入部12(及び第二の挿入部13)を前記ガイド凸部16を該孔7内面に押し付けるように前記孔7に挿入することで、前記弾性係止片14を前記係合部15に導ける(孔7の径方向における位置合わせができる)ように構成されている。
【0043】
本実施例においては、ガイド凸部16は、第一の挿入部12及び第二の挿入部13の外側に長手方向に沿って所定間隔で複数設けられている。
【0044】
また、前記他方の係止端部10には、前記弾性係止片14を挟むように一対の平行に延びるガイド片17が設けられ、前記第一の挿入部12を前記係合部15が前記ガイド片17間に配されるように前記孔7に挿入することで、前記弾性係止片14を前記係合部15に導ける(孔7の周方向における位置合わせができる)ように構成されている。一方の係止端部10及び第二の挿入部13についても同様である。
【0045】
係合部15の先端の左右側部及びガイド片17の先端内側には挿入を補助するテーパ部37・38が設けられている。弾性係止片14の先端の左右側部のテーパ部37は段階的に複数(本実施例では2段)設けられている。
【0046】
また、係合部15の肩部及びガイド片17の先端面には、互いに突き合わせられる突き合わせ面が設けられている。
【0047】
また、
図9に図示したように、前記係止端部10は、同一の袖部において隣接する他の孔7に配設される前記無負荷路構成部材8の係止端部10と当接することで位置決めされる位置決め部11を有する。
【0048】
具体的には、前記位置決め部11同士を当接させて前記無負荷路構成部材8を位置決めすることで、各前記無負荷路構成部材8の前記本体部9の前記孔7内における回転位相が所定の位相となるように構成されている。
【0049】
また、前記係止端部10は平板状であり、この係止端部10の外周縁には直線縁部が設けられ、前記直線縁部が前記位置決め部11であり、前記係止端部10同士の当接は前記直線縁部同士の当接となるように構成されている。なお、直線縁部に限らず、一方の係止端部10の外周縁に凹部を設けた構成とし、他方の係止端部10の外周縁に前記凹部と合致する凸部を設けた構成として凹凸嵌合によって位置決められる構成としても良い。また、凹部及び凸部の両側に直線縁部を設けて凹凸部に加え直線縁部同士も当接する構成としても良い。
【0050】
本実施例では、位置決め部11による位置決めにより、本体部9により形成される無負荷路6が負荷路4と平行となるように、本体部9に対する位置決め部11の位置及び形状が設定されている。具体的には、レール体1の中心を通る鉛直線に対して位置決め部11(直線縁部)を90°で交差するように配設すると、本体部9(の無負荷路6を形成する挿入部12・13の内面)が、前記鉛直線に対して45°傾斜する回転位相で孔7内において位置決めされるように設定されている。
【0051】
以上の構成により、第一半体8a及び第二半体8bを孔7に挿入した際には、第一半体8a及び第二半体8bの弾性係止片14と係合部15とを夫々ワンタッチで係合でき、これにより両者が第一の挿入部12及び第二の挿入部13の内面同士が離間した状態で連結されて本体部9が形成される。この挿入部12・13同士の間の空間が転動体3及び転動体保持具32が通過する領域、即ち無負荷路6及び隙間18となる。
【0052】
そして、その幅方向両端(転動体3の端面外方)は、開放された状態となり、無負荷路構成部材8から転動体保持具32の連結体31が露出する構成となる。よって、孔7の壁面と転動体保持具32の連結体31との間に他の部材が存在せず、連結体31を孔7の壁面に可及的に近接させる設計が可能となり、それだけ転動体配設領域を広く取ることが可能となる。
【0053】
また、第一半体8a及び第二半体8bを連結した後、同一の袖部において上下に隣接するように設けられた孔7に配設される無負荷路構成部材8の係止端部10の位置決め部11同士を合致当接させることで、両孔7に配設される無負荷路構成部材8の本体部9(転動体3を挟持する第一の挿入部12及び第二の挿入部13の内面)の回転位相が適宜な位相(対応する負荷路4の傾斜面と平行な位相)となる。位置決め部11同士の当接のための係止端部10の回転調整は、上下の孔7で同時に行うようにしても良いし、一方の孔7に一方の無負荷路構成部材8の係止端部10を正確に位置決めした後、他方の孔7の無負荷路構成部材8の係止端部10を一方の孔の無負荷路構成部材8の係止端部10の位置決め部に当接させるように回転調整することで行っても良い。
【0054】
ガイド部材39及びリターン路構成部材40a・40bについて説明する。
【0055】
また、直動体2とレール体1との間には、
図10,11に図示したように、負荷路4を移動する転動体3及び転動体保持具32をガイドするガイド部材39が設けられ、このガイド部材39の両端部には、リターン路5を構成するリターン路構成部材40a・40bが一体に夫々設けられている。
【0056】
本実施例においては、リターン路構成部材40a・40bを下側若しくは上側の直線孔7の無負荷路構成部材8(の係止端部10)に連結することで、ガイド部材39が凸条部の上側斜面25若しくは下側斜面26に設けられるように構成されている。また、直動体2にガイド部材39を取り付けることで、ガイド部材39の両端のリターン路構成部材40a・40bと無負荷路構成部材8とは、リターン路5と無負荷路6とが連通した状態で連結される。
【0057】
リターン路構成部材40a・40bの内部には、負荷路4及び無負荷路6に夫々連通するU字状のリターン路5となる転動体保持具32が通過する通過溝部57が夫々設けられている。
【0058】
ガイド部材39は、その両端がリターン路構成部材40a・40bに一体に連結された上下一対の桟部材41であり、直動体2の凸条部の上側斜面25及び下側斜面26の上端位置及び下端位置に夫々設けられる。
【0059】
具体的には、転動体3及び転動体保持具32は上下一対の桟部材41間を通過するように構成されている。桟部材41には連結体31を逃げる逃げ凹部が設けられている。
【0060】
また、転動体3の長さ/直径を大きくすると(転動体配設領域を広く確保すると)、それだけ桟部材41を細くする必要があり、桟部材41の強度に懸念が生じる場合があるが、上下の転動体無限循環路(負荷路4)に夫々配置されるガイド部材39の隣り合う桟部材41同士(連結面29に配される桟部材41同士)は、互いに凹凸嵌合して一体化する構成として見かけの断面積を大きくすることで剛性を確保している。
【0061】
具体的には、前記隣り合う桟部材41には、凹部42と凸部43とが長手方向に交互に設けられた凹凸部が夫々設けられており、各凹部42の穴に各凸部43の先端(爪)が嵌入されて両者が一体化するように構成されている。
【0062】
また、ガイド部材39の一端側のリターン路構成部材40aには、他端側のリターン路構成部材40bの外周の被嵌合部46が嵌合する嵌合凹部47が設けられている。嵌合凹部47と被嵌合部46とは、これらを嵌合した際に、互いのガイド部材39により構成される負荷路4及びリターン路5が交差する位置関係となるように設けられる。
【0063】
従って、嵌合凹部47と被嵌合部46を互いに嵌合させることで二組のガイド部材39及びリターン路構成部材40a・40bを一体化することができ、この状態で直動体2の各袖部21・22に、無負荷路構成部材8の係止端部10にリターン路構成部材40a・40bの開口側端面を係止することで簡単に取り付けることができる。本実施例では、無負荷路構成部材8の係止端部10に、リターン路構成部材40a・40bの係止爪50を係止させることで取り付けるようにしている。
【0064】
係止爪50及び係止爪50が引っ掛かる係止端部10の被係止部51は、取り付ける際に係止端部10の無負荷路端部となる開口52を乗り越えずに係止端部10の外周部に係止できる位置に設けられており、それだけ作業性が良好となる(
図9参照)。
【0065】
なお、リターン路構成部材40aの一部(A部分)は切り欠かれ、リターン路5の外周側面が存在しない構成となっている。この部分は、リターン路構成部材40a・40bの外側にこれらを被嵌するように設けられるエンドキャップ48の内面に設けられたリターン路5の外周側面の一部により補完される(
図12参照)。すなわち、本実施例のリターン路5は、リターン路構成部材40a・40b及びエンドキャップ48により形成されている。
【0066】
すなわち、本実施例に係る直動装置は、直動体2に、無負荷路構成部材8を取り付けた後、ガイド部材39及びリターン路構成部材40a・40bを取り付け、転動体3及び転動体保持具32を配設し、エンドキャップ48、薄板状の金属製補強部材49及び端面シール部材53をボルト54で取り付け、レール体1に被嵌することで実現される。図中、符号55は下側シール部材、56は隙間埋め部材である。
【0067】
本実施例は上述のように構成したから、直動体2の孔7に第一半体8a及び第二半体8bを挿入して無負荷路構成部材8を組み付ける際、第一の挿入部12と他方の係止端部10、および第二の挿入部13と一方の係止端部10とをスナップフィットにより連結することができるから、第一半体8aと第二半体8bとの連結が簡単に行える。
【0068】
すなわち、孔7内で挿入部12・13が視認できなくとも、スナップフィットを構成する弾性突出片14と係合部15とは、弾性突出片14がその弾性により撓みながら係合部15に案内されて係合され、多少位置がずれていても良好に係合が行われる構成とすることができ、それだけ無負荷路構成部材8の組み付け作業が容易となる。
【0069】
よって、本実施例は、無負荷路構成部材等の組み付けが容易となる、これまでにない直動装置となる。