(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034698
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】厚み計測方法、施工方法、計測装置及び計測プログラム
(51)【国際特許分類】
G01B 11/06 20060101AFI20240306BHJP
G01B 11/24 20060101ALI20240306BHJP
E04G 21/02 20060101ALI20240306BHJP
E04G 21/18 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
G01B11/06 Z
G01B11/24 A
E04G21/02 103B
E04G21/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139133
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000117102
【氏名又は名称】旭有機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【弁理士】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(72)【発明者】
【氏名】関 浩之
【テーマコード(参考)】
2E172
2E174
2F065
【Fターム(参考)】
2E172DC00
2E172HA03
2E174DA41
2E174EA00
2F065AA04
2F065AA21
2F065AA51
2F065AA53
2F065BB17
2F065CC14
2F065DD03
2F065DD06
2F065RR03
2F065RR08
(57)【要約】
【課題】測定器の設置位置に関わらず、被覆材の厚みを効率よく簡易に計測することができる厚み計測方法、施工方法、計測装置及び計測プログラムを提供する。
【解決手段】厚み計測方法は、施工面と非施工面とを有し、施工面のみを被覆材で被覆する対象エリアに関し、被覆材の厚みを計測する計測方法であり、立体形状をなす基準部を非施工面に設ける設置工程(P11)と、施工面の表面形状と、基準部を含めた非施工面の表面形状とを測定し、対象エリアの施工前形状を取得する施工前工程(P12)と、施工面のみを被覆材で被覆した後、被覆材の表面形状と、基準部を含めた非施工面の表面形状とを測定し、対象エリアの施工後形状を取得する施工後工程(P14)と、施工前形状と施工後形状とを、非施工面の基準部を基準とした相対位置に配置する配置工程(P16)と、配置工程の後に、被覆材の表面と施工面との間隔から、被覆材の厚みを算出する算出工程(P17)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工面と非施工面とを有し、前記施工面のみを被覆材で被覆する対象エリアに関し、前記被覆材の厚みを計測する計測方法であって、
立体形状をなす基準部を前記非施工面に設ける設置工程と、
前記施工面の表面形状と、前記基準部を含めた前記非施工面の表面形状とを測定し、前記対象エリアの施工前形状を取得する施工前工程と、
前記施工面のみを前記被覆材で被覆した後、前記被覆材の表面形状と、前記基準部を含めた前記非施工面の表面形状とを測定し、前記対象エリアの施工後形状を取得する施工後工程と、
前記施工前形状と前記施工後形状とを、前記非施工面の前記基準部を基準とした相対位置に配置する配置工程と、
前記配置工程の後に、前記被覆材の表面と前記施工面との間隔から、前記被覆材の厚みを算出する算出工程と、を備えることを特徴とする厚み計測方法。
【請求項2】
前記施工前形状の立体モデルを算出する第1工程と、
前記施工後形状の立体モデルを算出する第2工程と、をさらに備え、
前記配置工程において、前記施工前形状と前記施工後形状とを、互いの立体モデルが前記基準部の形状を一致させるように重なり合う相対位置に配置する請求項1に記載の厚み計測方法。
【請求項3】
前記基準部を前記非施工面に複数設ける請求項1に記載の厚み計測方法。
【請求項4】
前記被覆材がウレタンフォームである請求項1に記載の厚み計測方法。
【請求項5】
施工面と非施工面とを有する対象エリアにおいて、前記施工面のみを被覆材で被覆し、かつ前記被覆材の厚みを計測する施工方法であって、
立体形状をなす基準部を前記非施工面に設ける設置工程と、
前記施工面の表面形状と、前記基準部を含めた前記非施工面の表面形状とを測定し、前記対象エリアの施工前形状を取得する施工前工程と、
前記施工面の表面形状を測定した後、前記施工面のみを被覆材で被覆する施工工程と、
前記施工面を被覆する前記被覆材の表面形状と、前記基準部を含めた前記非施工面の表面形状とを測定し、前記対象エリアの施工後形状を取得する施工後工程と、
前記施工前形状と前記施工後形状とを、前記非施工面の前記基準部を基準とした相対位置に配置する配置工程と、
前記被覆材の表面と前記施工面との間隔から、前記被覆材の厚みを算出する算出工程と、を備えることを特徴とする施工方法。
【請求項6】
前記施工前形状の立体モデルを算出する第1工程と、
前記施工後形状の立体モデルを算出する第2工程と、をさらに備え、
前記配置工程において、前記施工前形状と前記施工後形状とを、互いの立体モデルが前記基準部の形状を一致させるように重なり合う相対位置に配置する請求項5に記載の施工方法。
【請求項7】
前記基準部を前記非施工面に複数設ける請求項5に記載の施工方法。
【請求項8】
前記被覆材がウレタンフォームである請求項5に記載の施工方法。
【請求項9】
施工面と非施工面とを有し、前記施工面のみを被覆材で被覆する対象エリアに関し、前記被覆材の厚みを計測する計測装置であって、
前記非施工面には、立体形状をなす基準部が設けられているものとし、
前記施工面の表面形状と、前記基準部を含めた前記非施工面の表面形状と、前記施工面を被覆する前記被覆材の表面形状と、を3次元座標の点群で表現した点群データが入力される入力部と、前記点群データを利用した演算処理を行う演算部と、を備え、
前記演算部は、
前記点群データに基づき、前記施工面の表面形状と、前記基準部を含めた前記非施工面の表面形状とによる前記対象エリアの施工前形状を取得し、
前記点群データに基づき、前記被覆材の表面形状と、前記基準部を含めた前記非施工面の表面形状とによる前記対象エリアの施工後形状を取得し、
前記施工前形状と前記施工後形状とを、前記非施工面の前記基準部を基準とした相対位置に配置し、
前記施工前形状の前記施工面と、前記施工後形状の前記被覆材の表面との間隔から、前記被覆材の厚みを算出する、ことを特徴とする計測装置。
【請求項10】
前記演算部は、
前記施工前形状の立体モデルを算出し、
前記施工後形状の立体モデルを算出し、
前記施工前形状と前記施工後形状とを、互いの立体モデルが前記基準部の形状を一致させるように重なり合う相対位置に配置する、請求項9に記載の計測装置。
【請求項11】
前記入力部と接続され、前記施工面の表面形状と、前記非施工面の表面形状と、前記被覆材の表面形状とを測定し、それらを3次元座標の点群で表現した点群データを出力する測定装置をさらに備える請求項9に記載の計測装置。
【請求項12】
請求項1に記載の厚み計測方法をコンピュータに実行させる計測プログラムであって、
前記施工面の表面形状と、前記基準部を含めた前記非施工面の表面形状とを3次元座標の点群で表現した第1の点群データを取得するステップと、
前記第1の点群データから対象エリアの施工前形状を取得するステップと、
前記施工面を被覆する前記被覆材の表面形状と、前記基準部を含めた前記非施工面の表面形状とを3次元座標の点群で表現した第2の点群データを取得するステップと、
前記第2の点群データから対象エリアの施工後形状を取得するステップと、
前記施工前形状と前記施工後形状とを、前記非施工面の前記基準部を基準とした相対位置に配置するステップと、
前記施工前形状の前記施工面と、前記施工後形状の前記被覆材の表面との間隔から、前記被覆材の厚みを算出するステップと、を備えることを特徴とする計測プログラム。
【請求項13】
前記施工前形状の立体モデルを算出するステップと、
前記施工後形状の立体モデルを算出するステップと、をさらに備え、
前記相対位置を、前記施工前形状と前記施工後形状の互いの立体モデルが、前記基準部の形状を一致させるように重なり合う位置とする、請求項12に記載の計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物や家屋の壁等に設けられた施工面を断熱材等の被覆材で被覆する場合に、その被覆材の厚みを計測する厚み計測方法、施工方法、計測装置及び計測プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビルディングや家屋等の建築物には、壁、床、天井等に、吹付け工法による断熱構造を有しているものがある。吹付け工法は、壁等に設けられた施工面に対し、発泡樹脂等を吹き付けて固化させ、その発泡樹脂等が固化してなる被覆材で施工面を被覆する方法である。被覆材は、厚みにばらつきがあると断熱性能に悪影響を及ぼすことから、厚みを均等にするため、施工後に厚みの計測が行われる。
通常、被覆材の厚みの計測は、被覆材に針状の測定具を突き刺し、その測定具を用いて被覆材の複数個所で厚みを計測して行われるが、作業が煩雑なうえ、測定具の刺し方次第で計測結果が変わり、計測誤差が大きなものとなってしまう。このため、被覆材の厚みの計測方法として、特許文献1~3が提案された。
特許文献1には、対象部位に施工した被覆材の三次元形状を計測する方法が記載されている。この方法は、対象部位の三次元形状を含む施工前形状を取得する工程と、被覆材の表面の三次元形状を含む施工形状を取得する工程と、施工前形状と施工形状の位置合わせを行う工程と、施工前形状と施工形状から被覆材の表面および被覆材と対象部位との接触面からなる領域形状を算出する工程と、を備えている。
特許文献2には、対象面に施工した被覆材の厚さを計測する方法が記載されている。この方法は、被覆材の表面の三次元座標、対象面からの距離が等しい3点以上の等距離点の三次元座標及び対象面からの距離が既知である1点以上の基準点の基準三次元座標を含む施工形状を取得する工程と、被覆材の表面の三次元座標、等距離点の三次元座標及び基準三次元座標に基づいて被覆材の厚さを算出する工程と、を備えている。
特許文献3には、対象面に施工した被覆材の厚さを計測する方法が記載されている。この方法は、被覆材の表面の三次元座標および対象面からの距離が既知である4点以上の基準三次元座標を含む施工形状を取得する工程と、4点以上の基準三次元座標に基づいて対象面を推定した推定対象面形状を算出する工程と、被覆材の表面の三次元座標および推定対象面形状に基づいて被覆材の厚さを算出する工程とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-76585号公報
【特許文献2】国際公開第2020/179336号公報
【特許文献3】特開2021-152497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の計測方法では、3Dスキャナ等の測定器を用い、被覆材の厚みの計測を行うが、その計測作業は、施工現場における測定器の設置位置が重要となり、設置位置を基準とした計測対象との相対距離等に基づいて実行される。このため、計測作業を複数回に分けて行う必要がある場合には、基準となる測定器の設置位置を全ての計測作業で可能な限り一致させなければならず、作業の繁雑化を招いていた。
また、厚みの計測については、特許文献1~3に開示のように、被覆材を施工する施工面を推定して算出する方法が挙げられるが、計測に係る正確性の向上を図るのであれば、被覆材の施工前の施工面を測定器で計測し、その計測結果を、被覆材の施工後の計測結果と対比することが望ましい。しかし、計測作業を被覆材の施工作業の前後で分けて行う場合、施工作業時に測定器を撤去したり、移動したりする必要があるため、施工作業の前後で設置位置を一致させることが極めて困難であった。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、測定器の設置位置に関わらず、被覆材の厚みを効率よく簡易に計測することができる厚み計測方法、施工方法、計測装置及び計測プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明は以下に示す通りである。
[1]本発明の厚み計測方法は、施工面と非施工面とを有し、前記施工面のみを被覆材で被覆する対象エリアに関し、前記被覆材の厚みを計測する計測方法であって、
立体形状をなす基準部を前記非施工面に設ける設置工程と、
前記施工面の表面形状と、前記基準部を含めた前記非施工面の表面形状とを測定し、前記対象エリアの施工前形状を取得する施工前工程と、
前記施工面のみを前記被覆材で被覆した後、前記被覆材の表面形状と、前記基準部を含めた前記非施工面の表面形状とを測定し、前記対象エリアの施工後形状を取得する施工後工程と、
前記施工前形状と前記施工後形状とを、前記非施工面の前記基準部を基準とした相対位置に配置する配置工程と、
前記配置工程の後に、前記被覆材の表面と前記施工面との間隔から、前記被覆材の厚みを算出する算出工程と、を備えることを要旨とする。
[2]本発明の厚み計測方法では、前記施工前形状の立体モデルを算出する第1工程と、
前記施工後形状の立体モデルを算出する第2工程と、をさらに備え、
前記配置工程において、前記施工前形状と前記施工後形状とを、互いの立体モデルが前記基準部の形状を一致させるように重なり合う相対位置に配置する、ことができる。
[3]本発明の厚み計測方法では、前記基準部を前記非施工面に複数設けることができる。
[4]本発明の厚み計測方法では、前記被覆材がウレタンフォームであるものとすることができる。
[5]本発明の施工方法は、施工面と非施工面とを有する対象エリアにおいて、前記施工面のみを被覆材で被覆し、かつ前記被覆材の厚みを計測する施工方法であって、
立体形状をなす基準部を前記非施工面に設ける設置工程と、
前記施工面の表面形状と、前記基準部を含めた前記非施工面の表面形状とを測定し、前記対象エリアの施工前形状を取得する施工前工程と、
前記施工面の表面形状を測定した後、前記施工面のみを被覆材で被覆する施工工程と、
前記施工面を被覆する前記被覆材の表面形状と、前記基準部を含めた前記非施工面の表面形状とを測定し、前記対象エリアの施工後形状を取得する施工後工程と、
前記施工前形状と前記施工後形状とを、前記非施工面の前記基準部を基準とした相対位置に配置する配置工程と、
前記被覆材の表面と前記施工面との間隔から、前記被覆材の厚みを算出する算出工程と、を備える、ことを要旨とする。
[6]本発明の施工方法では、前記施工前形状の立体モデルを算出する第1工程と、
前記施工後形状の立体モデルを算出する第2工程と、をさらに備え、
前記配置工程において、前記施工前形状と前記施工後形状とを、互いの立体モデルが前記基準部の形状を一致させるように重なり合う相対位置に配置する、ことができる。
[7]本発明の施工方法では、前記基準部を前記非施工面に複数設けることができる。
[8]本発明の施工方法では、前記被覆材がウレタンフォームであるものとすることができる。
[9]本発明の計測装置は、施工面と非施工面とを有し、前記施工面のみを被覆材で被覆する対象エリアに関し、前記被覆材の厚みを計測する計測装置であって、
前記非施工面には、立体形状をなす基準部が設けられているものとし、
前記施工面の表面形状と、前記基準部を含めた前記非施工面の表面形状と、前記施工面を被覆する前記被覆材の表面形状と、を3次元座標の点群で表現した点群データが入力される入力部と、前記点群データを利用した演算処理を行う演算部と、を備え、
前記演算部は、
前記点群データに基づき、前記施工面の表面形状と、前記基準部を含めた前記非施工面の表面形状とによる前記対象エリアの施工前形状を取得し、
前記点群データに基づき、前記被覆材の表面形状と、前記基準部を含めた前記非施工面の表面形状とによる前記対象エリアの施工後形状を取得し、
前記施工前形状と前記施工後形状とを、前記非施工面の前記基準部を基準とした相対位置に配置し、
前記施工前形状の前記施工面と、前記施工後形状の前記被覆材の表面との間隔から、前記被覆材の厚みを算出する、ことを要旨とする。
[10]本発明の計測装置では、前記演算部は、
前記施工前形状の立体モデルを算出し、
前記施工後形状の立体モデルを算出し、
前記施工前形状と前記施工後形状とを、互いの立体モデルが前記基準部の形状を一致させるように重なり合う相対位置に配置する、ことができる。
[11]本発明の計測装置では、前記入力部と接続され、前記施工面の表面形状と、前記非施工面の表面形状と、前記被覆材の表面形状とを測定し、それらを3次元座標の点群で表現した点群データを出力する測定装置をさらに備えるものとすることができる。
[12]本発明の計測プログラムは、[1]の厚み計測方法をコンピュータに実行させる計測プログラムであって、
前記施工面の表面形状と、前記基準部を含めた前記非施工面の表面形状とを3次元座標の点群で表現した第1の点群データを取得するステップと、
前記第1の点群データから対象エリアの施工前形状を取得するステップと、
前記施工面を被覆する前記被覆材の表面形状と、前記基準部を含めた前記非施工面の表面形状とを3次元座標の点群で表現した第2の点群データを取得するステップと、
前記第2の点群データから対象エリアの施工後形状を取得するステップと、
前記施工前形状と前記施工後形状とを、前記非施工面の前記基準部を基準とした相対位置に配置するステップと、
前記施工前形状の前記施工面と、前記施工後形状の前記被覆材の表面との間隔から、前記被覆材の厚みを算出するステップと、を備えることを要旨とする。
[13]本発明の計測プログラムでは、前記施工前形状の立体モデルを算出するステップと、
前記施工後形状の立体モデルを算出するステップと、をさらに備え、
前相対位置を、前記施工前形状と前記施工後形状の互いの立体モデルが、前記基準部の形状を一致させるように重なり合う位置とする、ことができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、非施工面の基準部を計測の基準とすることにより、測定器の設置位置に関わらず、効率よく簡易に被覆材の厚み計測を行うことができる。さらに、本発明によれば、計測精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】厚み計測方法の実施形態を示すフローチャートである。
【
図2】施工方法の実施形態を示すフローチャートである。
【
図4】施工前工程を示す対象エリアの平面図である。
【
図6】施工後工程を示す対象エリアの平面図である。
【
図7】施工前形状の立体モデルを示す斜視図である。
【
図8】施工後形状の立体モデルを示す斜視図である。
【
図9】配置工程を示す施工前形状及び施工後形状の立体モデルの斜視図である。
【
図10】算出工程を示す施工前形状及び施工後形状の平面図である。
【
図12】計測プログラムの実施形態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を説明する。ここで示す事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要で、ある程度以上に本発明の構成的な詳細を示すことを意図しておらず、本説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
なお、以下の説明で方向をいう場合、各図中に矢印で示したx、y、zを基準として、高さ方向はx方向、横幅方向はy方向、縦幅方向はz方向とする。
【0010】
〔1〕厚み計測方法
本発明の厚み計測方法は、施工面と非施工面とを有し、前記施工面のみを被覆材で被覆する対象エリアに関し、前記被覆材の厚みを計測する計測方法であって、
立体形状をなす基準部を前記非施工面に設ける設置工程(P11)と、
前記施工面の表面形状と、前記基準部を含めた前記非施工面の表面形状とを測定し、前記対象エリアの施工前形状を取得する施工前工程(P12)と、
前記施工面のみを前記被覆材で被覆した後、前記被覆材の表面形状と、前記基準部を含めた前記非施工面の表面形状とを測定し、前記対象エリアの施工後形状を取得する施工後工程(P14)と、
前記施工前形状と前記施工後形状とを、前記非施工面の前記基準部を基準とした相対位置に配置する配置工程(P16)と、
前記配置工程の後に、前記被覆材の表面と前記施工面との間隔から、前記被覆材の厚みを算出する算出工程(P17)と、を備えることを特徴とする(
図1参照)。
【0011】
厚み計測方法は、被覆材の厚みを計測する方法であり、被覆材は、施工面と非施工面とを有する対象エリアにおいて、施工面のみに施工されることにより、その施工面を被覆するものである。
対象エリアは、特に限定されず、被覆材が施工されるエリアであれば、何れも対象エリアとすることができる。こうした対象エリアとして、通常、ビルディングや家屋等といった建築物の内部において、壁、床、天井等によって囲まれた部屋、室(しつ)、間(ま)等を挙げることができる。
対象エリアは、建築物に限らず、船舶、航空機、鉄道車両、自動車等の居住空間や荷室空間、あるいは、冷蔵庫、冷凍庫等の電気製品の庫内などとすることもできる。
また、対象エリアは、必ずしも360度方向全てが壁等で囲まれている必要はなく、例えば、建築物の場合、屋上スペース、ベランダ、廊下等とすることもできる。
【0012】
施工面は、対象エリアにおいて被覆材が施工される面であり、対象エリアの何れにも設けることができ、対象エリアにおける位置等は、特に限定されない。
非施工面は、対象エリアにおいて、被覆材が施工されない面であり、対象エリアの何れにも設けることができ、対象エリアにおける位置等は、特に限定されない。
対象エリアにおける施工面及び非施工面の数は、特に限定されない。対象エリアにおいて、施工面及び非施工面は、1面のみとすることができ、あるいは2面以上の複数面とすることができる。
施工面及び非施工面は、対象エリアが建築物の部屋、室(しつ)、間(ま)等の場合、壁、床、天井等の何れにも設けることができ、建築物以外の場合、壁等に設けることができる。
【0013】
対象エリアにおける施工面と非施工面との選別は、特に限定されず、任意に定めることができる。
例えば、建築物の部屋、室(しつ)、間(ま)等を対象エリアとする場合、建築物の外壁等と近接する壁に施工面を設け、建築物の内部で他の部屋や他室等との仕切り壁に非施工面を設けることができる。
あるいは、建築物の部屋、室(しつ)、間(ま)等を対象エリアとする場合、床に非施工面を設け、その床以外の壁や天井等に施工面を設けることができる。
【0014】
被覆材は、施工面を被覆するものであれば、特に限定されない。被覆材としては、例えば、断熱材、防湿材、不燃材、吸音材、遮音材、遮熱材、耐火材、防水材、化粧材等を挙げることができる。
施工面が建築物の壁等に設けられる場合、通常、被覆材としては、断熱材等として用いられるウレタンフォーム、耐火材等として用いられるロックウール、防水材や化粧材等として用いられるウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリルゴム等を挙げることができる。
上述した中でもウレタンフォーム、特に、吹付け工法により施工される硬質ウレタンフォーム(例えば、JIS A9526に規定の硬質ウレタンフォーム)は、均一な厚みに施工することが難しい一方で、断熱性能等を好適に発揮するために均等な厚みにすることが要求されることから、本発明の厚み計測方法における計測対象として有用である。
【0015】
以下の文中において、対象エリアは、特にことわりがない限り、建築物の内部の空間を区画して形成された部屋を具体例に挙げて説明するものとする。
図3~
図6に示すように、対象エリア10は、床と天井の他に、内壁11による壁面と、仕切壁12による壁面とを有している。
この対象エリア10において、施工面13は、内壁11に設けられており、非施工面14は、仕切壁12に設けられている。
また、施工面13に施工される被覆材16は、吹付け工法で施工される硬質ウレタンフォームであるものとする。
以下、厚み計測方法が備える各工程について説明する。
【0016】
(1)設置工程
設置工程(P11)は、対象エリアの非施工面に対し、基準部を設ける工程である(
図1参照)。
基準部は、本発明の厚み計測方法において、計測の基準とされるものであり、被覆材に少なくとも1つ設けられる。
【0017】
図3は、設置工程における対象エリア10を示す斜視図である。
設置工程において、基準部15は、非施工面14に設けられる。基準部15は、非施工面14に設けられるのであれば、その設けられる位置について、特に限定されない。
基準部15は、非施工面14に設けられるため、被覆材16の施工による影響が及ばず、被覆材16の施工の前後でx方向、y方向及びz方向の各方向における位置が変わることがない。つまり、対象エリア10の3次元座標を計測する際、基準部15を位置の基準として利用することにより、当該基準部15の位置に基づいて、計測対象の相対位置(3次元座標)を算出することができる。
基準部15は、立体形状をなしている。基準部15は、非施工面14に設けられるため、被覆材16の施工による影響が及ばず、被覆材16の施工の前後で外見的な形状が変わることがない。つまり、対象エリア10の立体形状(立体モデル)を算出する際、基準部15を形状の基準として利用することにより、対象エリア10全体の中から基準部15を形状的に認識することができる。
【0018】
基準部15の設置方法は、特に限定されない。設置方法として、通常、非施工面14とは別個に用意された基準部15を、非施工面14に対して取り付ける、引掛ける、貼り付ける等の方法を挙げることができる。
基準部15が非施工面14と別個に用意される場合、基準部15の形状は、3次元座標を計測可能、及び/又は立体形状を算出可能な立体形状であれば、特に限定されない。この立体形状とは、非施工面14に対して立体的な凹凸をなす形状をいう。立体形状としては、非施工面14から突出する凸形状と、非施工面14から陥没する凹形状とが挙げられるが、形状的な認識が容易であり、形状の基準として利用しやすい観点から、凸形状が好ましい。
【0019】
基準部15の形状について、外形形状は、具体例として、板状、箱状、柱状、筒状、凸条状、孔状、溝状等を挙げることができる。
より具体的な外形形状として、非施工面14に対して垂直な方向から見た形状を正面視形状とした場合、基準部15の正面視形状は、円形、楕円形等の略円形、三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形、A字、C字、T字、U字、S字等の文字形、星形、波形、スペード形、ハート形等の記号形などを挙げることができる。
上述の正面視形状に対して直交方向から見た形状を側面視形状とした場合、基準部15の側面視形状は、上下又は左右で対向する2縁が、互いに平行な形状、非施工面14に近づくほど互いに接近又は離間するテーパー形状、一方の縁に対して他方の縁が傾斜した斜面形状などを挙げることができる。
【0020】
また、基準部15の設置方法としては、非施工面14に設けられた凹凸部を基準部15とする方法を挙げることができる。
非施工面14に設けられた凹凸部とは、非施工面14から突出する凸形状の部位や、非施工面14から陥没する凹形状の部位からなるものをいう。
具体的に、凹凸部としては、防火設備、換気扇、ボルトなどの固定具、扉、クローザー、ドアノブ等の非施工面14に取り付け等された各種設備、あるいは、配管等を内部に敷設するためのダクトスペース等のような非施工面14に設けられた凸状部、あるいは、固定具や各種設備を取り付け等するために非施工面14に設けられた開口部などを挙げることができる。
【0021】
基準部15を設ける個数は、1個以上であれば特に限定されないが、2個以上の複数とする場合、非施工面14の認識がしやすくなり、形状の基準として利用しやすく、厚み計測における正確性の向上を図ることができる。
基準部15を複数設ける場合、基準部15同士の位置関係は、特に限定されない。基準部15同士の位置関係は、x方向、y方向及びz方向の群から選択される少なくとも何れか1方向に沿って複数が並ぶ位置とすることができる。
【0022】
基準部15を複数設ける場合、基準部15同士の間隔は、特に限定されない。具体的に、基準部15同士の間隔は、互いの間の距離で0.1m以上10m以下とすることができる。基準部15同士の間隔は、好ましくは0.3m以上7m以下、より好ましくは1m以上5m以下とすることができる。
なお、基準部15を複数設ける場合、基準部15は、全てを同じ形状とすることができ、あるいは全てが異なる形状とすることができ、あるいは、一部を同じ形状として他を異なる形状とすることができる。
【0023】
基準部15のサイズは、特に限定されず、厚み計測方法において、非施工面14における位置及び/又は基準部15の立体形状の計測等が可能なサイズとすることができる。
基準部15のサイズは、例えば、正面視形状における最長幅で10mm以上200mm以下とすることができる。この最長幅は、好ましくは30mm以上100mm以下、より好ましくは50mm以上70mm以下とすることができる。
また、基準部15のサイズは、例えば、側面視形状において、非施工面14から端部までの長さで10mm以上200mm以下とすることができる。この長さは、好ましくは20mm以上100mm以下、より好ましくは30mm以上70mm以下とすることができる。
【0024】
(2)施工前工程
施工前工程(P12)は、施工面の表面形状と、基準部を含めた非施工面の表面形状とを測定して、対象エリアの施工前形状を取得する工程である(
図1参照)。
具体的に、施工前工程は、
図4に示すように、測定装置21を使用し、施工面13の表面形状と、基準部15を含めた非施工面14の表面形状とを走査し、それら表面形状を合わせて対象エリアの施工前形状として、その施工前形状を取得することによって実行される。
【0025】
施工前工程では、非施工面14に設けられた基準部15を位置の基準として利用することにより、施工面13の表面形状と基準部15を含めた非施工面14の表面形状とについて、3次元座標値を取得することができる。このため、施工前工程は、基準部15を位置の基準として、対象エリアの施工前形状の3次元座標値を取得する工程であるともいうことができる。
また、施工前工程において、計測対象である施工面13の表面形状は、被覆材16の施工前の施工面13を直接的に計測して取得される。このため、施工前工程は、実際的な施工面13の表面形状を取得する工程であるということができる。
【0026】
施工前工程において、測定装置21を用いた測定方法は、特に限定されない。
測定方法は、通常、対象エリア内の任意の位置に測定装置21を設置し、計測対象である施工面13及び非施工面14の表面形状を測定することにより、実行することができる。
対象エリアにおける測定装置21の設置位置は、特に限定されず、対象エリアの何れの個所も設置位置とすることができる。つまり、本発明は、非施工面14に設けられた基準部15を計測の基準とするため、施工前工程は、測定装置21の設置位置に関わらず施工前形状の計測が可能であり、計測の基準とされていない測定装置21の設置位置を自由に定めることができる。よって、本発明は、測定装置21の設置位置を自由に定めることができることから、施行前形状の計測を、効率よく簡易に行うことができる。
【0027】
測定装置21の設置位置は、測定装置21の視野に応じて定めることができる。通常、設置位置は、計測対象の可能な限り広い範囲が視野内に含まれるように、対象エリアの略中央とすることができる。
測定装置21の視野は、特に限定されないが、通常、水平方向で360度以下、鉛直方向で300度以下とすることができる。視野は、水平方向で、好ましくは90度以上360度以下、より好ましくは180度以上360度以下、さらに好ましくは270度以上360度以下とすることができる。視野は、鉛直方向で、好ましくは30度以上300度以下、より好ましくは90度以上300度以下、さらに好ましくは180度以上300度以下とすることができる。
【0028】
測定装置21による測定回数は、特に限定されず、測定回数は、1回のみとすることができ、あるいは2回以上の複数回に分けることができる。測定を複数回に分けて行う場合、測定装置21の設置位置は、同じ場所でもよいが、測定毎に変更することができる。例えば、測定装置21の視野が水平方向で360度、鉛直方向で300度に満たない場合、測定を複数回に分け、測定毎に測定装置21を回転させる、設置位置を変更する等して、計測対象である施工面13及び非施工面14の全体の表面形状を測定することもできる。
また、測定を複数回に分けて行う場合、各測定で測定装置21の視野内に基準部15を含めることにより、複数回の測定結果を統合する際に計測誤差が生じることを抑えることができる。
【0029】
測定装置21の種類は、施工面13等の表面形状等を測定可能なものであれば、特に限定されず、3Dスキャナ、ステレオカメラ等を挙げることができる。
3Dスキャナとしては、LIDAR(ライダ)方式のもの、TOF方式のもの等を挙げることができる。LIDAR方式とは、パルス状に発光するレーザー光を測定対象面に照射し、その散乱光を測定して、測定対象面までの距離等に基づき測定対象面の3次元座標を算出する方式である。TOF方式は、センサからパルス状に投光されたレーザー光がセンサ内の受光素子に戻るまでの時間を計測し、その時間を測定対象面までの距離に換算して、測定対象面までの距離等に基づき測定対象面の3次元座標を算出する方式である。
ステレオカメラは、通常、2台のカメラによって測定対象面を撮像し、それらの画像から三角測量の原理に基づき、測定対象面までの距離を算出し、その距離に基づいて測定対象面の3次元形状を算出するものである。なお、ステレオカメラは、アクティブステレオ方式の場合、2台のうちの1台を、パターン光を投影するプロジェクターとしており、この場合、1台のカメラで3次元形状を算出することができる。
【0030】
上述の3Dスキャナ、ステレオカメラの何れも測定装置21として使用可能であるが、3Dスキャナは、測定対象面の3次元座標を算出し、これをデータとして種々の用途に利用可能であることから、測定装置21として有用である。
測定装置21に3Dスキャナを使用する場合、算出された3次元座標は、施工前形状として、非施工面14及び施工面13の表面上における任意の点の位置を、3次元直交座標系の立体的な座標値で示すことができる。さらに、施工前形状は、3次元座標値による点を複数集合させることにより、施工前形状を算出することができる。
即ち、施工前形状は、3次元直交座標系の座標値(3次元座標値)として算出することができる。
【0031】
3次元座標のデータ形式は、配置工程、算出工程等でそのデータを利用する計測装置30(
図11参照)が処理可能なものであれば、特に限定されない。
データ形式として、(x,y,z)の3次元座標値、3次元座標値の集合からなる点群データ等の座標系を挙げることができる。
【0032】
(3)施工後工程
施工後工程(P14)は、被覆材の表面形状と、基準部を含めた非施工面の表面形状とを測定して、対象エリアの施工後形状を取得する工程である(
図1参照)。
施工後工程(P14)は、被覆材の表面形状を測定する工程であり、施工面が被覆材で被覆された後に実行される。
つまり、施工後工程(P14)は、施工面13へ被覆材16を施工する工程〔本発明の施工方法における施工工程(P13)、
図2、
図5参照〕)の後で実行される工程である。
具体的に、施工後工程は、
図6に示すように、測定装置21を使用し、被覆材16の表面形状と、基準部15を含めた非施工面14の表面形状とを走査し、それら表面形状を合わせて、対象エリアの施工後形状とし、その施工後形状を取得することによって実行される。
【0033】
施工後工程では、上述の施工前工程と同様に、非施工面14に設けられた基準部15を位置の基準として利用することにより、被覆材16の表面形状と基準部15を含めた非施工面14の表面形状とについて、3次元座標値を取得することができる。このため、施工後工程は、基準部15を位置の基準として、対象エリアの施工後形状の3次元座標値を取得する工程であるともいうことができる。
また、施工後工程において、被覆材16の表面形状は、施工後の被覆材16の表面を直接的に計測して取得される。このため、施工後工程は、実際的な被覆材16の表面形状を取得する工程であるということができる。
【0034】
施工後工程において、測定装置21は、特に限定されないが、通常、施工前工程で用いた測定装置21と同一のもの、又は同様のものを用いることができる。
測定装置21を用いた測定方法は、特に限定されないが、通常、施工前工程の測定方法と同様のものとすることができる。
施工後工程において、測定装置21の設置位置は、非施工面14に設けられた基準部15を計測の基準としているため、特に限定されず、対象エリア内の何れの個所も設置位置とすることができる。つまり、本発明は、非施工面14に設けられた基準部15を計測の基準とするため、施工後工程は、測定装置21の設置位置に関わらず施工後形状の計測が可能であり、計測の基準とされていない測定装置21の施工後工程における設置位置については自由に定めることができる。よって、本発明は、測定装置21の設置位置を自由に定めることができることから、施行後形状の計測を、効率よく簡易に行うことができる。
【0035】
具体的に、測定装置21の設置位置は、上述の施工前工程における測定装置21の設置位置と同位置とすることができ、あるいは、施工前工程における測定装置21の設置位置と異なる位置とすることもでき、施工前工程の設置位置に関わらず自由に定めることができる。
通常、施工後工程の設置位置は、計測対象の可能な限り広い範囲が測定装置21の視野内に含まれるように、対象エリアの略中央とすることができる。
なお、施工前工程の設置位置が対象エリアの略中央である場合に、施工後工程の設置位置は、施工前工程の設置位置と、厳密に同位置とする必要はない。つまり、設置位置としての対象エリアの略中央は、作業者の感覚等によって任意に定めることができる。
【0036】
測定装置21に3Dスキャナを使用する場合、算出した3次元座標は、施工後形状として、非施工面14及び被覆材16の表面上における任意の点の位置を、3次元直交座標系の立体的な座標値で示すことができる。よって、3次元座標によって示される点を複数集合させることにより、被覆材16等の表面形状を算出することができる。
即ち、施工後形状は、3次元直交座標系の座標値(3次元座標値)として算出することができ、そのデータ形式としては、(x,y,z)の3次元座標値、3次元座標値の集合からなる点群データ等の座標系を挙げることができる。
【0037】
(4)第1工程及び第2工程
施工前工程(P12)及び施工後工程(P14)の後、立体モデルの要否(P15)に応じて、第1工程(P151)及び第2工程(P152)をさらに備えることができる(
図1参照)。
第1工程(P151)は、施工前工程(P12)で取得された施工前形状(3次元座標値)から、施工前形状の立体モデルを算出する工程である。
第2工程(P152)は、施工後工程(P14)で取得された施工後形状(3次元座標値)から、施工後形状の立体モデルを算出する工程である。
【0038】
即ち、施工前工程(P12)では、対象エリアにおける施工前形状として、施工面13及び非施工面14の表面形状を3次元座標値で取得することができる。
また、施工後工程(P14)では、対象エリアにおける施工後形状として、被覆材16及び非施工面14の表面形状を3次元座標値で取得することができる。
【0039】
被覆材の厚みは、3次元座標値を利用することで、施工前形状及び施工後形状の立体モデルを要さず(P15;no)、算出することができる。
一方、被覆材の厚みは、施工前形状及び施工後形状の各立体モデルを要する場合(P15;yes)、第1工程(P151)及び第2工程(P152)で施工前形状及び施工後形状の各立体モデルを算出し、それら立体モデルを利用して、算出することができる。
【0040】
施工前形状及び施工後形状の各立体モデルを要する場合について、その理由としては、厚み計測方法における計測結果を可視化する、計測の正確性を向上させる等を挙げることができる。
例えば、施工現場の建物等は、その設計に関し、3次元CADデータを利用した3Dモデルとして作成される場合が多い。このため、施工前形状及び施工後形状の各立体モデルを算出することにより、建物等の3Dモデル上において、対象エリアに被覆材等の立体モデルを配置して表示することができ、被覆材の厚みの把握、管理等を容易に行うことができる。
【0041】
第1工程及び第2工程において、立体モデルを算出する場合、3次元座標値による施工前形状及び施工後形状を利用し、立体モデルを算出する。
具体的に、第1工程及び第2工程は、測定装置21や計測装置30に搭載された電子計算機(コンピュータ)を使用し、施工前形状及び施工後形状の各立体モデルを算出して、実行される。
【0042】
例えば、測定装置21が3Dスキャナの場合、施工前形状及び施工後形状は、3次元座標によって示される点の集合からなる点群データとして取得することができる。こうした点群データを利用し、点の集合体で面を形成することにより、立体モデルを算出することができる。
3次元座標値から立体モデルを算出する場合、面の形成は、3次元座標値から最小二乗法で3次元座標に対する最小二乗平面を求める等の既知の手法を用いることができる。あるいは、3次元座標による点群データ等から上述の既知の手法を用いて平均面を算出し、複数の平均面を3次元座標に基づきフィッティングし、組み合わせて複数の面からなる立体モデルを算出することもできる。
【0043】
立体モデルのデータ形式としては、測定対象の外面のみの集合体からなるメッシュデータ、測定対象の内部の情報を含む測定対象全体をボクセルで構成してなるボリュームデータ等を挙げることができる。これらのうち、メッシュデータは、データ容量が少なく、扱いやすいため、有用である。
図7は、施工前形状の立体モデルを示す斜視図である。この立体モデルは、メッシュデータによるものである。立体モデルによる施工前形状10Aは、施工面13の表面形状に加え、さらに非施工面14及び基準部15の表面形状を含んでいる。
図8は、施工後形状の立体モデルを示す斜視図である。この立体モデルは、メッシュデータによるものである。立体モデルによる施工後形状10Bは、被覆材16の表面形状に加え、さらに非施工面14及び基準部15の表面形状を含んでいる。
即ち、立体モデルによる施工前形状10A及び施工後形状10Bは、何れもが、計測の基準とされた基準部15の表面形状を含むものとして算出されている。
【0044】
なお、第1工程(P151)は、施工前工程(P12)の後に実行されるのであれば、工程順について特に限定されず、例えば、施工前工程(P12)の後に第1工程(P151)を実行し、その第1工程(P151)の後に施工後工程(P14)を実行することができる。
また、第2工程(P152)は、施工後工程(P14)の後に実行されるのであれば、工程順について特に限定されず、例えば、第1工程(P151)の後に施工後工程(P14)を実行し、その施工後工程(P14)の後に第2工程(P152)を実行することができる。
【0045】
(5)配置工程
配置工程(P16)は、施工前形状と施工後形状とを相対位置に配置する工程である。
この配置工程(P16)では、計測装置30等に搭載された電子計算機(コンピュータ)を使用し、上述の施工前工程(P12)で取得した施工前形状、及び上述の施工後工程(P14)で取得した施工後形状を利用し、これら施工前形状及び施工後形状を、非施工面の基準部を基準として、相対位置に配置することにより実行される。
あるいは、第1工程(P151)及び第2工程(P152)において立体モデルが算出されている場合、配置工程(P16)では、施工前形状の立体モデル、及び施工後形状の立体モデルを利用し、互いの立体モデルが基準部の形状を一致させるように重なり合う相対位置に配置することにより実行される。
【0046】
具体的に、施工前工程及び施工後工程で取得した3次元座標値による施工前形状及び施工後形状を用いる場合について、施工前形状及び施工後形状は、基準部15を位置の基準として利用し、3次元座標値が取得されている。
位置の基準とされた基準部15の表面形状に係る3次元座標は、施工前形状及び施工後形状の双方で同じ値である。
このため、配置工程では、基準部15を基準として、施工前形状(3次元座標値)と施工後形状(3次元座標値)とを相対位置に配置することができる。
【0047】
第1工程及び第2工程で算出した施工前形状及び施工後形状の立体モデルを用いる場合について、立体モデルによる施工前形状10Aと施工後形状10Bは、非施工面14の表面において、基準部15の表面形状が描画されている(
図7、
図8参照)。
施工前形状10A及び施工後形状10Bにおいて、基準部15の表面形状は、同形状であるから、基準部15を形状の基準とすることができる。
このため、配置工程では、
図9に示すように、施工前形状10A及び施工後形状10Bにおいて、基準部15を形状の基準とし、互いの立体モデルが基準部15の形状を一致させるように重なり合う相対位置に配置することができる。
【0048】
配置工程において、施工前形状及び施工後形状の相対位置への配置の際、3次元座標値又は立体モデルからの基準部15の選択は、作業者が手動で指示することができ、あるいは、コンピュータ(電子計算機)の演算部やデータ処理部に自動的に認識させることができる。
【0049】
(6)算出工程
算出工程(P17)は、被覆材の厚みを算出する工程である(
図1参照)。
この算出工程は、電子計算機(コンピュータ)である計測装置30を使用し、施工前形状及び施工後形状の3次元座標値又は立体モデルを利用して、被覆材12の厚みTを算出することにより、実行される。
【0050】
具体的に、算出工程では、
図10に示すように、相対位置に配置された施工前形状10Aと施工後形状10Bから、被覆材16の表面と施工面13とについて、3次元座標値又は立体モデルを利用し、互いの間隔を算出することができる。その算出された間隔を被覆材16の厚みTと見做して、厚みTを計測することができる。
なお、立体モデルである施工前形状10A及び施工後形状10Bを利用する場合、被覆材16の表面と施工面13とを可視化することができるため、被覆材16上における所望個所の指定が容易であり、任意の個所における被覆材16の厚みTの計測、及び複数個所における被覆材16の厚みTの計測を、容易かつ迅速に行うことができる。
【0051】
被覆材16の厚みTの計測、つまり3次元座標値を利用した被覆材16の表面と施工面13との間隔の算出は、対象エリアにおける被覆材12の表面の全域の点にわたって実行することができる。
即ち、施工前形状10Aと施工後形状10Bは、基準部15を位置の基準とした相対位置に配置されており、例えば、被覆材16の表面の任意の点について、当該点と対応する施工面13上の点は、その3次元座標に関し、x方向とz方向、又はx方向とy方向で座標値が一致するように、相対位置に配されている。
このため、当該点と、その相対位置の点とは、y方向又はz方向における座標値の差異から、間隔を容易に算出することができる。
【0052】
被覆材16は、対象エリアの全域にわたり、施工面13との間隔が算出されることにより、その表面の凹凸形状についても取得することができる。
また、施工前形状10Aに含まれる施工面13の表面形状は、実際的に施工面13を計測して算出されており、仮想的又は推定により算出されたものではない。このため、被覆材16の表面と施工面13との間隔から算出される被覆材16の厚みTは、計測誤差が極めて小さく、計測精度の向上を図ることができる。
【0053】
(7)その他
本発明においては、上述の算出工程の後、さらに以下の工程を備えることができる。
算出工程において、被覆材16の表面の凹凸形状を取得した場合、当該表面における凹凸の分布を着色又は濃淡で示した画像で表示する画像表示工程を備えることができる。この場合、被覆材16の表面の凹凸を可視化することで、その凹凸を容易に認識することができる。
不良表示工程において、施工不良個所は、着色などで厚みが不足する個所や厚みが超える個所を視覚的に確認できるようにすることができる。
また、不良表示工程において、被覆材16の厚みTの施工不良個所の結果は、プロジェクターなどを利用し、被覆材16の表面に、直接的に実寸で投影することができる。この場合、施工された被覆材16の表面において、施工不良個所を直接的に認識することができることから、施工不良個所の修正を簡潔かつ的確に行うことができる。
被覆材16の表面における凹凸や施工不良個所を埋める、削る等することにより、被覆材16の表面を仕上げる仕上げ工程を備えることができる。この場合、被覆材16を所定の厚みで仕上げることができる。
【0054】
〔2〕施工方法
本発明の施工方法は、施工面と非施工面とを有する対象エリアにおいて、施工面のみを被覆材で被覆し、かつ被覆材の厚みを計測する施工方法であって、
立体形状をなす基準部を非施工面に設ける設置工程(P11)と、
施工面の表面形状と、基準部を含めた非施工面の表面形状とを測定し、対象エリアの施工前形状を取得する施工前工程(P12)と、
施工面の表面形状を測定した後、施工面のみを被覆材で被覆する施工工程(P13)と、
施工面を被覆する被覆材の表面形状と、基準部を含めた非施工面の表面形状とを測定し、対象エリアの施工後形状を取得する施工後工程(P14)と、
施工前形状と施工後形状とを、非施工面の基準部を基準とした相対位置に配置する配置工程(P16)と、
被覆材の表面と施工面との間隔から、被覆材の厚みを算出する算出工程(P17)と、を備えることを特徴とする。
【0055】
また、本発明の施工方法は、施工前形状の立体モデルを算出する第1工程(P151)と、
前記施工後形状の立体モデルを算出する第2工程(P152)と、をさらに備え、
前記配置工程(P16)において、前記施工前形状と前記施工後形状とを、互いの立体モデルが前記基準部の形状を一致させるように重なり合う相対位置に配置することができる。
【0056】
施工方法は、施工面のみを被覆材で被覆し、その被覆材の厚みを計測する方法であり、上述の厚み計測方法と実質的に共通する複数の工程を備えている。
具体的に、施工方法において、設置工程(P11)、施工前工程(P12)、施工後工程(P14)、配置工程(P16)、及び算出工程(P17)は、上述の厚み計測方法と実質的に共通する工程である。
また、立体モデルの要否(P15)に応じ、第1工程(P151)及び第2工程(P152)をさらに備える場合、第1工程(P151)及び第2工程(P152)は、上述の厚み計測方法と実質的に共通する工程である。
よって、以下に示す施工方法においては、上述の厚み計測方法と実質的に共通する工程の説明について、これを省略する。
【0057】
(1)施工工程
施工工程(P13)は、施工面のみを被覆材で被覆する工程である(
図2参照)。
施工工程(P13)は、施工面の表面形状を測定した後、つまり施工前工程(P12)の後に実行される。
そして、施工工程(P13)の後、施工後工程(P14)が実行される。
【0058】
具体的に、施工工程は、
図5に示すように、スプレーガン40を使用し、ウレタンフォーム剤を施工面13にのみ吹き付け、硬化させて、施工面13を被覆材16で被覆することにより実行される。
被覆材16がウレタンフォームの場合、被覆材16の厚みTは、通常、施工条件に合わせて10mm以上500mm以下に設定することができる。
また、被覆材16の厚みTは、設定された値に対して、許容範囲を設定することができる。この許容範囲は、好ましくは0~+10mm、より好ましくは0~+8mm、さらに好ましくは0~+5mmとすることができる。
【0059】
被覆材16の厚みTに関し、許容範囲が設定されている場合、厚みTが許容範囲外の個所を施工不良個所として、その施工不良個所を示した画像を表示する不良表示工程を備えることができる。
不良表示工程は、通常、算出工程(P17)の後に実行することができる。
また、不良表示工程を備える場合、施工不良個所を、容易に把握することができる。
【0060】
〔3〕計測装置
本発明の計測装置は、施工面と非施工面とを有し、前記施工面のみを被覆材で被覆する対象エリアに関し、前記被覆材の厚みを計測する計測装置であって、
前記非施工面には、立体形状をなす基準部が設けられているものとし、
前記施工面の表面形状と、前記基準部を含めた前記非施工面の表面形状と、前記施工面を被覆する前記被覆材の表面形状と、を3次元座標の点群で表現した点群データが入力される入力部と、前記点群データを利用した演算処理を行う演算部と、を備え、
前記演算部は、
前記点群データに基づき、前記施工面の表面形状と、前記基準部を含めた前記非施工面の表面形状とによる前記対象エリアの施工前形状を取得し、
前記点群データに基づき、前記被覆材の表面形状と、前記基準部を含めた前記非施工面の表面形状とによる前記対象エリアの施工後形状を取得し、
前記施工前形状と前記施工後形状とを、前記非施工面の前記基準部を基準とした相対位置に配置し、
前記施工前形状の前記施工面と、前記施工後形状の前記被覆材の表面との間隔から、前記被覆材の厚みを算出する、ことを特徴とする。
【0061】
図11には、具体例としての計測装置のブロック図を示す。
計測装置30は、被覆材12の厚みを計測するものであり、本発明の厚さ計測方法及び計測プログラムを実行するべく、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)を備える電子計算機(コンピュータ)を用いることができる。
計測装置30に用いることができる電子計算機として、例えば、パーソナルコンピューターや、スマートフォン、タブレット等の携帯情報端末を挙げることができる。
【0062】
計測装置30は、入力部31と、演算部32とを備えている。
入力部31は、施工面13の表面形状と、基準部15を含めた非施工面14の表面形状と、施工面13を被覆する被覆材16の表面形状と、を3次元座標の点群で表現した点群データを入力するためのものである。
入力部31は、点群データの入力が可能であれば、特に限定されないが、具体例として、測定装置21等を接続するためのUSB端子等の接続装置、測定装置21等と通信を行う無線LAN等による通信装置、記憶ストレージに記憶されたデータを読み出すリーダ装置、キーボードやタッチパネル等の入力装置などを用いることができる。
【0063】
演算部32は、入力部31から入力された点群データを利用して、本発明の厚さ計測方法、施工方法、及び計測プログラムの実行に関する演算処理を行うためのものである。
演算部32は、点群データの利用及び演算処理の実行のために、記憶部321とデータ処理部322とを備えている。
記憶部321は、入力部31から入力された点群データを記憶するものであり、例えば、SSD、HDD、EEPROM等といった周知の記憶装置を用いることができる。
データ処理部322は、演算処理に際し、記憶部321に記憶された点群データを読み込み、必要となるデータの抽出、選択、加工等を実行するものであり、RAM等のメモリとCPU等のプロセッサなどを用いることができる。
【0064】
演算部32は、記憶部321とデータ処理部322を利用して、本発明の厚さ計測方法、特に厚さ計測方法の施工前工程と施工後工程を実行するために、演算処理を行う。
即ち、演算処理に際して、演算部32は、記憶部321に記憶された点群データから、施工面13と基準部15を含めた非施工面14の表面形状に関する点群データを選択、抽出し、これらを施工前形状に関する点群データとして取得する。
また、演算部32は、記憶部321に記憶された点群データから、被覆材16と基準部15を含めた非施工面14の表面形状に関する点群データを選択、抽出し、これらを施工後形状に関する点群データとして取得する。
【0065】
演算部32は、施工前形状に関する点群データと施工後形状に関する点群データのそれぞれにおいて、基準部15の表面形状に関する点群データを利用し、この基準部15が基準となるように、座標変換等の演算処理を行い、施工前形状と施工後形状とを、非施工面14の基準部15を基準とした相対位置に配置する。
そして、演算部32は、施工前形状と施工後形状に関する点群データを利用し、3次元座標に基づき、被覆材12の表面と施工面13との間隔を演算し、その間隔を被覆材12の厚みTとして算出する。
【0066】
上述した演算部32は、記憶部321とデータ処理部322に加え、3Dモデル形成部323をさらに有することができる。
3Dモデル形成部323は、上述の点群データや関数データから、3次元座標に基づき、対象を立体化した3Dモデルを形成するためのものである。
【0067】
即ち、演算部32は、3Dモデル形成部323を有する場合、施工前形状に関する点群データから、3次元座標に基づき、既知の手法を用いることにより、施工前形状の立体モデルを算出することができる。
さらに、演算部32は、3Dモデル形成部323を利用し、施工後形状に関する点群データから、3次元座標に基づき、既知の手法を用いることにより、施工後形状の立体モデルを算出することができる。
【0068】
計測装置30は、入力部31と演算部32に加え、出力部33をさらに備えることができる。出力部33は、演算部32による演算結果や算出結果等を出力するためのものであり、上述の接続装置や通信装置等を用いることができる。
施工前形状及び施工後形状の立体モデルは、作業者等による対象エリアの可視化を可能とすることができる。このため、出力部33にディスプレイ34を接続することにより、作業者等が施工前形状及び施工後形状の立体モデルを視認可能にすることができる。
【0069】
計測装置30は、入力部31を利用することにより、被覆材12の厚みTに関する設定値、あるいは、その設定値に対する許容範囲を、演算部32の記憶部321等に記憶させることができる。
この場合、計測装置30は、記憶された設定値、許容範囲等に基づき、算出された被覆材12の厚みTが設定値、許容範囲等を満たすか否かを判断することができる。そして、計測装置30は、被覆材12の厚みが設定値、許容範囲等を満たさない場合に、これを施工不良個所とし、出力部33に接続されたディスプレイ34に、施工不良個所を可視化して表示させることができる。
施工不良個所を可視化する方法は、特に限定されないが、例えば、施工不良個所を着色する、施工不良個所について他の個所と濃淡を変更する等を挙げることができる。
【0070】
計測装置30は、測定装置21をさらに備える構成とすることができる。
この測定装置21は、対象エリアの施工前形状及び施工後形状を測定し、それらを3次元座標の点群で表現した点群データとして出力するものであり、具体例として、上述の3Dスキャナを挙げることができる。
計測装置30が測定装置21を備える場合、通常、測定装置21は、計測装置30の入力部31と接続される構成とすることができる。あるいは、測定装置21は、上述した計測装置30が奏する機能を搭載されたものとすることができ、この場合、計測装置30としても用いることができる。
【0071】
〔4〕計測プログラム
本発明の計測プログラムは、本発明の厚み計測方法をコンピュータに実行させる計測プログラムであって、
前記施工面の表面形状と、前記基準部を含めた前記非施工面の表面形状とを3次元座標の点群で表現した第1の点群データを取得するステップ(S121)と、
前記第1の点群データから対象エリアの施工前形状を取得するステップ(S122)と、
前記施工面を被覆する前記被覆材の表面形状と、前記基準部を含めた前記非施工面の表面形状とを3次元座標の点群で表現した第2の点群データを取得するステップ(S141)と、
前記第2の点群データから対象エリアの施工後形状を取得するステップ(S142)と、
前記施工前形状と前記施工後形状とを、前記非施工面の前記基準部を基準とした相対位置に配置するステップ(S16)と、
前記施工前形状の前記施工面と、前記施工後形状の前記被覆材の表面との間隔から、前記被覆材の厚みを算出するステップ(S17)と、を備えることを特徴とする(
図12参照)。
【0072】
図12は、計測プログラムの具体例を示すフローチャートである。
計測プログラムのステップ(S121)では、施工面の表面形状と、基準部を含めた非施工面の表面形状とを3次元座標の点群で表現した第1の点群データが取得される。
計測プログラムのステップ(S122)では、第1の点群データから対象エリアの施工前形状が取得される。
ステップ(S121)及びステップ(S122)は、上述の施工前工程に係るステップである。
【0073】
ステップ(S121)は、測定対象を施工面及び基準部を含めた非施工面とした、3Dスキャナ等の測定装置による測定結果が、第1の点群データとして、上述の計測装置等に入力され、記憶されることにより実行することができる。
ステップ(S122)は、第1の点群データの中から、基準部に関する点群データを選択、抽出し、上述の計測装置の演算部における演算処理として、基準部が基準となるように第1の点群データを座標変換等して、対象エリアの施工前形状を取得することにより、実行することができる。
【0074】
計測プログラムのステップ(S141)では、被覆材の表面形状と、基準部を含めた非施工面の表面形状とを3次元座標の点群で表現した第2の点群データが取得される。
計測プログラムのステップ(S142)では、第2の点群データから対象エリアの施工後形状が取得される。
ステップ(S141)及びステップ(S142)は、上述の施工後工程に係るステップである。
【0075】
ステップ(S141)は、測定対象を被覆材の表面及び基準部を含めた非施工面とした、3Dスキャナ等の測定装置による測定結果が、第2の点群データとして、上述の計測装置等に入力され、記憶されることにより実行することができる。
ステップ(S142)は、第2の点群データの中から、基準部に関する点群データを選択、抽出し、上述の計測装置の演算部における演算処理として、基準部が基準となるように第2の点群データを座標変換等して、対象エリアの施工後形状を取得することにより、実行することができる。
【0076】
ステップ(S16)では、先のステップ(S122)で取得された施工前形状に関する点群データと、ステップ(S142)で取得された施工後形状に関する点群データとが、基準部を基準とし、そのデータに基づいて、互いの相対位置に配置される。
このステップ(S16)は、上述の配置工程に係るステップであり、上述の計測装置の演算部における演算処理として、実行することができる。
【0077】
ステップ(S17)では、先のステップ(S16)で相対位置に配置された施工前形状と施工後形状とから、施工面の3次元座標と、被覆材の表面の3次元座標とに基づき、互いの3次元座標から施工面と被覆材の表面との間隔を算出して、その間隔が被覆材の厚みとして取得される。
このステップ(S17)は、上述の算出工程に係るステップであり、上述の計測装置の演算部における演算処理として、実行することができる。
【0078】
計測プログラムは、施工前形状の立体モデルを算出するステップ(S151)と、施工後形状の立体モデルを算出するステップ(S152)と、をさらに備えることができる。
即ち、計測プログラムは、ステップ(S142)の後、立体モデルの要否を判断するステップ(S15)を備えることができる。ステップ(S15)において、立体モデルの要否が「否」と判断された場合(S15;no)、ステップ(S16)が実行される。
一方、ステップ(S15)において、立体モデルの要否が「要」と判断された場合(S15;yes)、ステップ(S151)が実行される。
なお、立体モデルの要否が最初から決められている場合、ステップ(S15)は省略することができる。この場合、ステップ(S122)から、次のステップとしてステップ(S151)へ進む、あるいはステップ(S142)から、次のステップとしてステップ(S152)へ進むようにしてもよい。
【0079】
ステップ(S151)は、上述の第1工程に係るステップであり、ステップ(S152)は、上述の第2工程に係るステップである。
ステップ(S151)では、ステップ(S122)で取得した施工前形状から立体モデルが算出される。
また、ステップ(S152)では、ステップ(S142)で取得した施工後形状から立体モデルが算出される。
これらのステップ(S151)及びステップ(S152)は、上述の計測装置の演算部における演算処理として、実行することができる。
即ち、ステップ(S151)及びステップ(S152)は、施工前形状及び施工後形状に関するそれぞれの点群データを利用し、複数の点の集合から面を形成し、これを組み合わせて立体モデルを算出することができる。
【0080】
立体モデルを算出した場合、ステップ(S16)では、施工前形状と施工後形状の互いの立体モデルが、基準部の形状を一致させるように重なり合う位置を相対位置として、相対位置への配置を実行することができる。
つまり、基準部は、被覆材の施工の前後において、非施工面上における位置及び形状の双方が変わらず、基準部を3次元座標の位置及び形状の基準とすることにより、施工前形状と施工後形状を正確な相対位置に配置することができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
建築分野において、ウレタンフォーム等の被覆材を、壁等の施工面へ吹付けた際、本発明の使用により、被覆材の厚みを、測定器の設置位置に関わらず、効率よく簡易に計測することができる。
【符号の説明】
【0082】
10;対象エリア、10A;施工前形状、10B;施工後形状、
11;内壁、12;仕切壁、13;施工面、14;非施工面、15;基準部、16;被覆材、
21;測定装置、
30;計測装置、31;入力部、32;演算部、321;記憶部、322;データ処理部、323;3Dモデル形成部、33;出力部、34;ディスプレイ。