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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034699
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】結合分離装置
(51)【国際特許分類】
   B64G 1/64 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
B64G1/64 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139135
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】500302552
【氏名又は名称】株式会社IHIエアロスペース
(74)【代理人】
【識別番号】100097515
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100136700
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 俊博
(72)【発明者】
【氏名】佐野 成寿
(72)【発明者】
【氏名】田畑 雄壮
(57)【要約】      (修正有)
【課題】宇宙航行体の分離部を結合し分離することができ、分離時の衝撃が小さく、かつ宇宙航行体の分離部と結合バンドとの干渉を防止することができる結合分離装置を提供する。
【解決手段】一体バンド10、結合解除機構20、及び複数のバンド押出保持機構40を備える。一体バンド10は、順に結合してフランジの外周に被せられる複数の分割バンド2からなり、その両端部10a,10bが近接して位置する。結合解除機構20は、一体バンド10の両端部10a,10bを連結し、両端部10a,10bが近接する保持位置を保持し、非火工品により保持を解除して両端部10a,10bが離隔する離隔位置に一体バンド10の張力Pにより移動する。バンド押出保持機構40は、フランジの周方向に間隔を隔てて位置し、複数の分割バンド2をフランジの外方に付勢する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
宇宙航行体が中空リング状の1対のフランジで分離可能に結合される分離部を有し、前記分離部を結合し分離する結合分離装置であって、
順に連結して前記フランジの外周に被せられる複数の分割バンドからなり、その両端部が近接して位置する一体バンドと、
前記一体バンドの前記両端部を連結し、前記両端部が近接する保持位置を保持し、非火工品により前記保持を解除して前記両端部が離隔する離隔位置に前記一体バンドの張力により移動する結合解除機構と、
前記フランジの周方向に間隔を隔てて位置し、複数の前記分割バンドを前記フランジの外方に付勢する複数のバンド押出保持機構と、を備える結合分離装置。
【請求項2】
前記結合解除機構は、前記一体バンドの前記両端部に周方向外端部が固定され、周方向内端部が周方向に互いに対向して位置し、前記周方向内端部に軸方向に延びるエンドピンを有する1対のバンドエンドと、
一方の前記フランジの近傍に固定され、周方向中心から所定間隔を隔て軸方向に延びる1対のベースピンを有する本体と、
一端が前記エンドピンに回動可能に固定され、他端が前記ベースピンに回動可能に固定された1対のリンク部材と、
前記本体に半径方向に移動可能に設けられ、1対の前記リンク部材のエンドピン側を前記周方向中心の近傍に押し付けて保持するストッパと、
前記ストッパを前記保持位置に保持し、前記非火工品により前記保持を解除する保持リリース機構と、を有し、
前記所定間隔は、前記エンドピンと前記ベースピンのピン間距離の2倍より大きく設定されている、請求項1に記載の結合分離装置。
【請求項3】
前記保持リリース機構は、前記本体に一端が回動可能に固定され、前記ストッパより半径方向外側を軸方向に延び、他端が前記非火工品により保持されたリリースレバーを有し、
前記リリースレバーの中間部が前記ストッパの半径方向外方端に連結され前記ストッパを前記保持位置に保持する、請求項2に記載の結合分離装置。
【請求項4】
前記保持位置において、前記エンドピンと前記ベースピンを結ぶ方向が、前記エンドピンに作用する前記一体バンドの張力方向よりも半径方向内側に位置し、前記張力の分力が前記エンドピンを介して前記ストッパを前記保持位置から解除する方向に作用する、請求項2に記載の結合分離装置。
【請求項5】
前記バンド押出保持機構は、前記分割バンドに固定され周方向に延びる長穴を有する押出部材と、前記長穴に遊動可能に挿入されたピンと、一方の前記フランジの近傍に固定され前記ピンを前記フランジの外方に付勢する付勢装置と、を有する、請求項1に記載の結合分離装置。
【請求項6】
前記付勢装置は、一方の前記フランジの近傍に固定されたベースと、該ベースに取り付けられ半径方向外方に移動可能なスライダと、前記ベースと前記スライダと間に組み込まれ前記スライダを半径方向外方に付勢する圧縮スプリングと、前記スライダの移動範囲を制限するストッパと、を有する、請求項5に記載の結合分離装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、宇宙航行体の分離部を結合し分離する結合分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
宇宙航行体(例えばロケット)の衛星や段間の分離箇所には互いに嵌合する1対のフランジが設けられ、このフランジを結合するために結合バンド(マルマンバンド)が主として用いられている。
また、この結合バンドの結合を保持し必要時に分離するために火薬を用いる火工品が従来用いられていた。しかし、火工品を用いた結合バンドの分離は衝撃を伴う問題がある。
そこで、火薬を用いない非火工品による結合分離装置が提案されている(例えば、特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許第3448758号明細書
【特許文献2】特許第4705172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の結合分離装置には、以下の問題点があった。
(1)特許文献1の装置は、結合バンドの対向する端部にネジロッドをそれぞれ設け、遊星ローラー装置を介して1対のネジロッドを結合している。また、分離時に非火工品により遊星ローラー装置をフリーにし、結合バンドの張力により遊星ローラー装置を介して1対のネジロッドを軸方向に移動させて分離する。結合バンドに蓄積されたエネルギーは、分離時の遊星ローラー装置の作動により消失される。
しかし、特許文献1の装置は構造が複雑であり作動安定性に欠け、かつ結合部の分離に要する時間が長く、完全分離までに1対のフランジが分離し、フランジが分離中の結合バンドと干渉する可能性があった。
【0005】
(2)特許文献2の装置は、結合バンドの対向する端部をリンク機構で連結し、かつ1対の端部を近接位置と離隔位置との間で移動可能に構成している。また、分離時に非火工品により近接位置のリンク機構をフリーにし、結合バンドの張力によりリンク機構を離隔位置まで変位させている。この変位の際に結合バンドの端部が、フランジとの接触を維持し、バンドの締め付けに相当する弾性エネルギーが摩擦により消失するようになっている。
しかし、特許文献2の装置は、バンドの締め付けに相当する弾性エネルギーが摩擦により消失する間に、フランジとの接触を維持したままバンドが緩むので、その間に1対のフランジが分離し、結合バンドと干渉する可能性があった。
【0006】
本発明は上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち本発明の目的は、宇宙航行体の分離部を結合し分離することができ、分離時の衝撃が小さく、かつ分離部のフランジと結合バンドとの干渉を防止することができる結合分離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、宇宙航行体が中空リング状の1対のフランジで分離可能に結合される分離部を有し、前記分離部を結合し分離する結合分離装置であって、
順に連結して前記フランジの外周に被せられる複数の分割バンドからなり、その両端部が近接して位置する一体バンドと、
前記一体バンドの前記両端部を連結し、前記両端部が近接する保持位置を保持し、非火工品により前記保持を解除して前記両端部が離隔する離隔位置に前記一体バンドの張力により移動する結合解除機構と、
前記フランジの周方向に間隔を隔てて位置し、複数の前記分割バンドを前記フランジの外方に付勢する複数のバンド押出保持機構と、を備える結合分離装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
上記本発明の構成によれば、一体バンドが、順に結合してフランジの外周に被せられる複数の分割バンドからなり、その両端部が近接して位置する。また、結合解除機構が、一体バンドの両端部を連結して、両端部が近接する保持位置を保持し、保持を解除して両端部が離隔する離隔位置に移動する。これにより、宇宙航行体の分離部を結合し分離することができる。
また、非火工品により保持を解除して両端部を離隔位置に一体バンドの張力により移動するので、分離時の衝撃を小さくできる。
【0009】
さらに、フランジの周方向に間隔を隔てて位置し、複数の分割バンドをフランジの外方に付勢する複数のバンド押出保持機構を備える。これにより、一体バンドの両端部が保持位置から離隔位置に移動すると同時に、緩んだ複数の分割バンドを付勢力で瞬時にフランジの外方に移動するので、宇宙航行体の分離部と結合バンド(分割バンド)との干渉を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】結合バンドの作動説明図である。
図2】本発明による結合分離装置の全体斜視図である。
図3】結合分離装置を軸方向から見た平面図
図4】結合解除機構の説明図である。
図5】結合解除機構を周方向から見た説明図である。
図6】結合解除機構の作動説明図である。
図7】バンド押出保持機構の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0012】
図1は、結合バンド3の作動説明図である。この図において、(A)はフランジ1a,1bの結合状態、(B)は分離時の作動状態を模式的に示している。
【0013】
図1(A)に示すように、宇宙航行体(例えばロケット)の衛星や段間の分離箇所には互いに嵌合する1対のフランジ1a,1bが設けられ、このフランジ1a,1bを結合するために結合バンド3が用いられる。
結合バンド3は、順に結合してフランジ1a,1bの外周に被せられる複数のバンド(以下、分割バンド2)からなる。各分割バンド2は、フランジ1a,1bの外面に嵌合する凹溝を有するクランプ部2aと、クランプ部2aの外面に固定され引張力により張力Pを発生するバンド板2bとからなる。
図1(A)の結合状態において、バンド板2bは張力を付加され、クランプ部2aを内側に押し付けてフランジ1a,1bを所定位置に保持している。
【0014】
図1(B)に示すように、結合状態から結合バンド3の結合が解除されると、結合バンド3はその張力により外方に移動してフランジ1a,1bの保持を開放する。これと同時に、フランジ1a,1bは分離スプリングにより互いに反対方向に移動する。
この際、結合バンド3の移動速度が遅いと分離されたフランジ1a,1bと干渉する可能性がある。
【0015】
図2は、本発明による結合分離装置100の全体斜視図であり、図3は、結合分離装置100を軸方向から見た平面図である。
以下、説明上、図3における上方向をθ=0とし、反時計まわりに周方向角度θを定義する。
【0016】
宇宙航行体は、中空リング状の1対のフランジ1a,1bで分離可能に結合される分離部4(図1参照)を有する。
また本発明の結合分離装置100は、宇宙航行体の分離部4を結合し分離する。
【0017】
図2図3において、結合分離装置100は、一体バンド10、結合解除機構20、及び複数のバンド押出保持機構40を備える。
【0018】
一体バンド10は、順に結合してフランジ1a,1bの外周に被せられる複数の分割バンド2からなる。また、一体バンド10の両端部10a,10bはθ=30°の位置に近接して位置する。
分割バンド2は、例えばマルマンバンドであり、周方向に順に連結し、連結部の間隔を調整して一体バンド10(複数の分割バンド2)に張力Pを付加し、クランプ部2aを内側に押し付けてフランジ1a,1bを所定位置に保持する。分割バンド2の端部には連結部の間隔を調整するための締付クランプが設けられている。
この例で6つの分割バンド2が、θ=30°~90°、90°~150°、150°~210°、210°~270°、270°~330°、330°~30°の範囲に設置されている。
また、一体バンド10の両端部10a,10bは、θ=30°の両側に位置する分割バンド2の端部である。以下、θ=30°の位置を「周方向中心」と呼ぶ。
【0019】
結合解除機構20は、この例では、θ=30°の位置(周方向中心)に設けられている。結合解除機構20は、一体バンド10の両端部10a,10bを連結し、両端部10a,10bが近接する保持位置を保持し、非火工品34(後述する)により保持を解除して両端部10a,10bが離隔する離隔位置に一体バンド10の張力により移動する。
【0020】
図4は、結合解除機構20の説明図である。この図において、(A)は図3の部分拡大図、(B)はその作動部の説明図である。
図4において、結合解除機構20は、1対のバンドエンド22a,22b、本体24、1対のリンク部材26a,26b、ストッパ28、及び保持リリース機構30を有する。
【0021】
1対のバンドエンド22a,22bは、一体バンド10の両端部10a,10bに周方向外端部が固定され、周方向内端部が周方向中心に対し周方向に互いに対向して位置する。また、周方向内端部に軸方向に延びるエンドピン23a,23bを有する。
バンドエンド22a,22bは、フランジ1a,1bの外周に沿った円弧形状をしており、フランジ1a,1bと対向する位置が、分割バンド2のクランプ部2aと同様の形状を有し、分割バンド2と同様にフランジ1a,1bを所定位置に保持するようになっている。
【0022】
図5は、結合解除機構20を周方向から見た説明図である。
この図において、本体24は、ベース部24aと支点支持部24bとからなる。この例でベース部24aは、一方のフランジ1aの近傍にボルト等で固定され、フランジ1a,1bを間隔を隔てて跨ぎ、他方のフランジ1b側に延びている。また、支点支持部24bは、ベース部24aの軸方向端面(図で左端)にボルト24cで固定され、半径方向外側(図で上方)に延びる。
【0023】
図4(B)は、図4(A)から支点支持部24bとバンドエンド22a,22bの一部を除去した状態を示している。この図において、本体24は、周方向に所定間隔Lを隔て、かつ軸方向(紙面に直交する方向)に延びる1対のベースピン25a,25bを有する。
【0024】
1対のリンク部材26a,26bは、一端がエンドピン23a,23bにそれぞれ回動可能に固定され、他端がベースピン25a,25bにそれぞれ回動可能に固定されている。
ベースピン25a,25bの芯間距離(所定間隔L)は、エンドピン23a,23bとベースピン25a,25bのピン間距離の2倍より大きく設定されている。
【0025】
図5において、ストッパ28は、本体24のベース部24aに半径方向(図で上下方向)に移動可能に設けられている。またこの例で、ベース部24aに下端が固定され半径方向外側(図で上方向)に延びるガイド棒28aが設けられている。ストッパ28にはガイド棒28aが通る垂直貫通孔が設けれ、ガイド棒28aに沿って自由に上下動する。さらに、ストッパ28がガイド棒28aを中心にして揺動しないように、ベース部24aにガイド壁(図示せず)が設けられている。
上述した構成により、図4(B)に示す保持位置において、ストッパ28は、1対のリンク部材26a,26bの他端側(エンドピン23a,23bのある側)を周方向中心(この場合、θ=30°)の近傍に押し付けて保持することができる。
【0026】
図4(B)の保持位置において、エンドピン23a,23bとベースピン25a,25bを結ぶピン方向Aが、エンドピン23a,23bに作用する一体バンド10の張力方向Bよりも半径方向内側に設定されている。
張力方向Bに対するピン方向Aの内向きの角度を調整角αとする。
【0027】
一体バンド10の張力Pは、エンドピン23a,23bを介してベースピン25a,25bで支持されている。調整角αが正であることにより、一体バンド10の張力Pの分力がエンドピン23a,23bに作用し、リンク部材26a,26bの内端部をストッパ28の下面に押し付け、ストッパ28に図で上向きの力fが作用する。この上向きの力fを「リリース力f」と呼ぶ。
なお、リンク部材26a,26bの内端部はエンドピン23a,23bを中心とする円弧面になっている。
また、調整角αを正の鋭角(例えば2~10°)に設定することで、リリース力fの大きさをストッパ28の作動に必要な力に設定できると共に、大きな張力Pと比較して小さなリリース力fでストッパ28を図4(B)の保持位置に保持することができる。
【0028】
図5において、保持リリース機構30は、リリースレバー32と非火工品34を有し、ストッパ28を保持位置に保持し、非火工品34により保持を解除する。
リリースレバー32は、本体24の支点支持部24bの半径方向外方端(図で上端)に一端32aが回動可能に固定され、ストッパ28より半径方向外側を軸方向(図で右方向)に延び、他端32bが非火工品34により保持されている。
非火工品34はこの例で本体24のベース部24aに固定され、リリース信号により保持を解除するリリース軸34aが半径方向外方(図で上方)に延び、その先端部が連結金具35を介してリリースレバー32の他端32bに連結されている。
また、リリースレバー32の中間部32cがストッパ28の半径方向外方端(図で上端)に連結され、ストッパ28を保持位置に保持している。
【0029】
上述した保持リリース機構30により、リリースレバー32が一端32aを支点とするテコとして機能するので、ストッパ28に作用する図で上向きのリリース力fを保持力がより小さい非火工品34で図4(B)の保持位置に保持することができる。
また、リリース信号により非火工品34のリリース軸34aの保持を解除することで、リリースレバー32の他端32bがフリーとなり、ストッパ28に作用する図で上向きのリリース力fによりストッパ28を図5で上方向に移動することができる。
【0030】
図6は、結合解除機構20の作動説明図である。この図は、図4(B)の保持位置からリリース信号により非火工品34のリリース軸34aの保持を解除した直後を示しており、(A)は例えば5ms後、(B)は14ms後である。
【0031】
図4(B)の保持位置において、リリース信号により非火工品34のリリース軸34aの保持を解除すると、上述したように、リリースレバー32の他端32bがフリーとなり、ストッパ28を保持位置に保持している力が解除される。
ストッパ28が解除されると、図6(A)に示すように、一体バンド10の張力Pの分力である上向きのリリース力fによりリンク部材26a,26bのエンドピン側が接触したまま、ストッパ28が図で上方向に移動する。
次いで、図6(B)に示すように、リンク部材26a,26bのエンドピン側がストッパ28より周方向外側まで移動し、さらに、張力Pによりエンドピン23a,23bがベースピン25a,25bの外側に、エンドピン23a,23bの間隔が最大になるまで引っ張られる。
【0032】
上述した構成により、図4(B)の保持位置から図6(A)(B)の状態を経て、エンドピン23a,23bの間隔が最大になる。また、この解除時の初期にエンドピン23a,23bは半径方向外側に移動し、その際に、バンドの締め付けに相当する弾性エネルギーが運動エネルギーとして消失する。
従って、一体バンド10の端部10a,10bとフランジ1a,1bとの摺動摩擦を回避することができる。
【0033】
エンドピン23a,23bの間隔が最大になるときに、一体バンド10を構成する複数の分割バンド2が、フランジ1a,1bから十分離れるように、リンク部材26a,26bの長さが設定されている。
【0034】
図3において、複数(この例で12)のバンド押出保持機構40は、フランジ1a,1bの周方向に間隔を隔てて位置する。バンド押出保持機構40は、各分割バンド2に対して、この例では2つずつ設けられている。
なお、この構成は必須ではなく、各分割バンド2に対して、少なくとも1つ、好ましくは複数設けるのがよい。
【0035】
図7は、バンド押出保持機構40の説明図である。この図において、(A)は周方向から見た側面図、(B)は半径方向外側から見た正面図である。
【0036】
図7において、バンド押出保持機構40は、押出部材42、ピン44、及び付勢装置46を有する。
押出部材42は、分割バンド2(バンド板2b)の外面に固定され、周方向に沿って延びる長穴42aを有する。長穴42aの周方向長さは、バンド押出保持機構40の取付位置に応じて十分長く設定されている。
ピン44は、押出部材42の長穴42aに隙間を隔てて遊動可能に挿入されている。この例でピン44は、軸方向に延びる円柱形であり、その末端が付勢装置46(スライダ48)に固定されている。
【0037】
付勢装置46は、ベース47、スライダ48、圧縮スプリング49、及びストッパ50を有する。
ベース47は、一方のフランジ1bの近傍に固定されている。スライダ48は、ベース47に取り付けられ半径方向外方に移動可能に構成されている。圧縮スプリング49は、ベース47とスライダ48と間に組み込まれスライダ48を半径方向外方に付勢する。ストッパ50は、スライダ48の移動範囲を制限する。
この構成により、スライダ48に固定されたピン44が、圧縮スプリング49により長穴42aを介して押出部材42をフランジ1a,1bの外方に付勢している。
【0038】
上述した構成により、リリース信号により非火工品34のリリース軸34aの保持を解除すると、図6(A)に示すように、リンク部材26a,26bのエンドピン側が図で上方向に移動する。さらに、図6(B)に示すように、エンドピン23a,23bの間隔が広がると、これにより緩んだ分割バンド2(バンド板2b)を押出部材42を介して圧縮スプリング49の付勢力で瞬時にフランジ1a,1bの外方に移動することができる。
【0039】
上述した本発明の実施形態によれば、一体バンド10が、順に結合してフランジ1a,1bの外周に被せられる複数の分割バンド2(マルマンバンド)からなり、その両端部10a,10bが近接して位置する。
また、結合解除機構20が、一体バンド10の両端部10a,10bを連結して、両端部10a,10bが近接する保持位置を保持し、保持を解除して両端部10a,10bが離隔する離隔位置に移動する。これにより、宇宙航行体の分離部を結合し分離することができる。
また、非火工品34により保持を解除して両端部10a,10bを離隔位置に一体バンド10の張力Pにより移動するので、分離時の衝撃を小さくできる。
【0040】
さらに、フランジ1a,1bの周方向に間隔を隔てて位置し、複数の分割バンド2をフランジ1a,1bの外方に付勢する複数のバンド押出保持機構40を備える。これにより、一体バンド10の両端部10a,10bが保持位置から離隔位置に移動すると同時に、緩んだ複数の分割バンド2を圧縮スプリング49の付勢力で瞬時にフランジ1a,1bの外方に移動するので、宇宙航行体の分離部と分割バンド2との干渉を防止することができる。
【0041】
なお本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0042】
A ピン方向、B 張力方向、f リリース力、L 所定間隔、
P 張力、α 調整角、1a,1b フランジ、2 分割バンド、
2a クランプ部、2b バンド板、3 結合バンド、
10 一体バンド、10a,10b 端部、20 結合解除機構、
22a,22b バンドエンド、23a,23b エンドピン、
24 本体、24a ベース部、24b 支点支持部、24c ボルト、
25a,25b ベースピン、26a,26b リンク部材、
28 ストッパ、28a ガイド棒、30 保持リリース機構、
32 リリースレバー、32a 一端、32b 他端、32c 中間部、
34 非火工品、35 連結金具、40 バンド押出保持機構、
42 押出部材、42a 長穴、44 ピン、46 付勢装置、
47 ベース、48 スライダ、49 圧縮スプリング、50 ストッパ、
100 結合分離装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7