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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003470
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】作業用車両の安全装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 3/00 20060101AFI20240105BHJP
   G01S 1/68 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
B60T3/00
G01S1/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102646
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000116644
【氏名又は名称】株式会社アイチコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100218095
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(72)【発明者】
【氏名】大葉 孝明
(72)【発明者】
【氏名】森山 亮
(57)【要約】
【課題】輪止め部材の設置忘れを検出することのできる作業用車両の安全装置を提供する。
【解決手段】安全装置は、駐車中の作業用車両の移動を規制する輪止め装置101と、輪止め装置101に設けられてビーコン信号を送信するビーコン送信器130と、車体2におけるタイヤ車輪5の近傍に設けられてビーコン送信器130から送信されるビーコン信号を受信する受信器71と、受信器71によるビーコン信号の受信結果に基づいて輪止め装置101がタイヤ車輪5の付近に設置されているか否かを判定するコントローラ60とを備えて構成される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車輪を有して走行可能な作業用車両と、駐車中の前記作業用車両の駐車路面上の前記車輪付近に設置されて当該駐車中の前記作業用車両の移動を規制する輪止め部材とを備える作業用車両の安全装置であって、
前記作業用車両および前記輪止め部材の一方に設けられて、ビーコン信号を送信するビーコン送信部と、
前記作業用車両および前記輪止め部材の他方に設けられて、前記ビーコン送信部から送信されるビーコン信号を受信するビーコン受信部と、
前記ビーコン受信部からビーコン信号の受信結果を取得する判定部とを備え、
前記判定部は、前記ビーコン受信部によるビーコン信号の受信結果に基づいて、前記輪止め部材が前記車輪付近に設置されているか否かを判定することを特徴とする作業用車両の安全装置。
【請求項2】
複数の前記車輪の近傍にそれぞれ設けられる複数の前記ビーコン受信部を備え、
前記ビーコン送信部は、前記輪止め部材に設けられ、
前記判定部は、前記ビーコン送信部からのビーコン信号を受信した前記ビーコン受信部の受信結果に基づいて、当該ビーコン信号を受信した前記ビーコン受信器の近傍の前記車輪付近に前記輪止め部材が設置されているか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の作業用車両の安全装置。
【請求項3】
前記作業用車両に設けられる複数の前記ビーコン受信部を備え、
前記ビーコン送信部は、前記輪止め部材に設けられ、
前記判定部は、前記ビーコン送信部から送信されるビーコン信号を複数の前記ビーコン受信部において受信したときの受信電波強度の関係に基づいて、前記輪止め部材が複数の前記車輪のうちのいずれの前記車輪付近に設置されているかを判定することを特徴とする請求項1に記載の作業用車両の安全装置。
【請求項4】
複数の前記車輪の近傍にそれぞれ設けられる複数の前記ビーコン送信部を備え、
前記ビーコン受信部は、前記輪止め部材に設けられ、
前記ビーコン送信部から送信されるビーコン信号には、当該ビーコン送信部を識別するための識別情報が含まれており、
前記判定部は、前記ビーコン受信部が受信したビーコン信号に含まれる識別情報に基づいて、当該ビーコン受信部に対応する前記輪止め部材が複数の前記車輪のうちのいずれの前記車輪付近に設置されているかを判定することを特徴とする請求項1に記載の作業用車両の安全装置。
【請求項5】
前記作業用車両に設けられた複数の前記車輪と同数以上の複数の前記輪止め部材を有し、
前記判定部の判定結果に基づいて、複数の前記車輪付近に設置された前記輪止め部材の合計個数を算出する算出部と、
前記算出部の算出結果に基づいて、複数の前記車輪付近に設置された前記輪止め部材の合計個数が前記同数以上でない場合に所定の警報作動を実行する警報作動部とを備えていることを特徴とする請求項2~4のいずれかに記載の作業用車両の安全装置。
【請求項6】
水平面に対する前記作業用車両の傾斜角度を検出する傾斜検出部を備え、
前記警報作動部は、前記傾斜検出部において検出される前記作業用車両の傾斜角度が所定角度以上である場合は、複数の前記車輪のうちの全ての前記車輪付近に前記輪止め部材がそれぞれ1個以上設置されていないことを判定したときに所定の警報作動を実行し、前記傾斜検出部において検出される前記作業用車両の傾斜角度が前記所定角度未満である場
合は、複数の前記車輪のうちの2輪以上の前記車輪付近に前記輪止め部材がそれぞれ1個以上設置されていないことを判定したときに所定の警報作動を実行すること特徴とする請求項5に記載の作業用車両の安全装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高所作業車などの作業用車両の逸走を防止する作業用車両の安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高所作業車などの作業用車両においては、作業用車両を駐車して作業を行う場合に、駐車ブレーキ(サイドブレーキ)による車輪の制動に加えて、この車輪と駐車路面との間に楔形状の輪止めを設置することで車両の逸走防止を図っている。この輪止めは通常車体に設けられた格納部に格納されており、作業の開始時に作業者が格納部から輪止めを取り外して、該輪止めを車輪付近に設置するようになっている。そのため、作業者が車体の格納部から輪止めを取り外さずに作業を開始してしまうことを防止する警報装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この警報装置は、輪止めが車体の格納部に格納された状態で駐車ブレーキを作動させると、ブザー等の警報音が発せられ、車体の格納部から輪止めが取り外されるまで警報音の出力が続くように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003‐312455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献に記載の技術では、車体の格納部から輪止めが取り外されたことを検出することはできるが、実際に輪止めが車輪付近に設置されたことを検出することはできず、作業者が誤って輪止めの設置を忘れるというヒューマンエラー(人為的なミス)が発生するおそれがある。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、輪止め部材の設置忘れを検出することのできる作業用車両の安全装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る作業用車両の安全装置は、複数の車輪を有して走行可能な作業用車両と、駐車中の前記作業用車両の駐車路面上の前記車輪付近に設置されて当該駐車中の前記作業用車両の移動を規制する輪止め部材とを備える作業用車両の安全装置であって、前記作業用車両および前記輪止め部材の一方に設けられて、ビーコン信号を送信するビーコン送信部と、前記作業用車両および前記輪止め部材の他方に設けられて、前記ビーコン送信部から送信されるビーコン信号を受信するビーコン受信部と、前記ビーコン受信部からビーコン信号の受信結果を取得する判定部とを備え、前記判定部は、前記ビーコン受信部によるビーコン信号の受信結果に基づいて、前記輪止め部材が前記車輪付近に設置されているか否かを判定することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る作業用車両の安全装置において、複数の前記車輪の近傍にそれぞれ設けられる複数の前記ビーコン受信部を備え、前記ビーコン送信部は、前記輪止め部材に設けられ、前記判定部は、前記ビーコン送信部からのビーコン信号を受信した前記ビーコン受信部の受信結果に基づいて、当該ビーコン信号を受信した前記ビーコン受信器の近傍の前記車輪付近に前記輪止め部材が設置されているか否かを判定することが好ましい。
【0008】
なお、本発明に係る作業用車両の安全装置において、前記作業用車両に設けられる複数
の前記ビーコン受信部を備え、前記ビーコン送信部は、前記輪止め部材に設けられ、前記判定部は、前記ビーコン送信部から送信されるビーコン信号を複数の前記ビーコン受信部において受信したときの受信電波強度の関係に基づいて、前記輪止め部材が複数の前記車輪のうちのいずれの前記車輪付近に設置されているかを判定するように構成してもよい。
【0009】
さらに、本発明に係る作業用車両の安全装置において、複数の前記車輪の近傍にそれぞれ設けられる複数の前記ビーコン送信部を備え、前記ビーコン受信部は、前記輪止め部材に設けられ、前記ビーコン送信部から送信されるビーコン信号には、当該ビーコン送信部を識別するための識別情報が含まれており、前記判定部は、前記ビーコン受信部が受信したビーコン信号に含まれる識別情報に基づいて、当該ビーコン受信部に対応する前記輪止め部材が複数の前記車輪のうちのいずれの前記車輪付近に設置されているかを判定するように構成してもよい。
【0010】
また、本発明に係る作業用車両の安全装置において、前記作業用車両に設けられた複数の前記車輪と同数以上の複数の前記輪止め部材を有し、前記判定部の判定結果に基づいて、複数の前記車輪付近に設置された前記輪止め部材の合計個数を算出する算出部と、前記算出部の算出結果に基づいて、複数の前記車輪付近に設置された前記輪止め部材の合計個数が前記同数以上でない場合に所定の警報作動を実行する警報作動部とを備えていることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る作業用車両の安全装置において、水平面に対する前記作業用車両の傾斜角度を検出する傾斜検出部を備え、前記警報作動部は、前記傾斜検出部において検出される前記作業用車両の傾斜角度が所定角度以上である場合は、複数の前記車輪のうちの全ての前記車輪付近に前記輪止め部材がそれぞれ1個以上設置されていないことを判定したときに所定の警報作動を実行し、前記傾斜検出部において検出される前記作業用車両の傾斜角度が前記所定角度未満である場合は、複数の前記車輪のうちの2輪以上の前記車輪付近に前記輪止め部材がそれぞれ1個以上設置されていないことを判定したときに所定の警報作動を実行することが好ましい。
【0012】
なお、本明細書において、警報作動とは、例えば警報ブザーや警報ランプ等の警報装置を使用して警報を発する作動、車体に搭載されるジャッキやブームなどの作業装置を規制する作動を含めた意味で用いている。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る作業用車両の安全装置によれば、ビーコン送信部からビーコン受信部へのビーコン信号の送受信の結果に基づいて、作業用車両に設けられた車輪付近に輪止め部材が設置されているか否かを検出することで、作業者が誤って輪止め部材の設置を忘れるといったヒューマンエラーを抑制して、車両の逸走防止を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】高所作業車の側面図である。
図2】高所作業車の制御系を示すブロック図である。
図3】第1実施形態の安全装置のブロック図である。
図4】第1実施形態の輪止め装置の斜視図である。
図5】第1実施形態の輪止め装置の側面図である。
図6】第1実施形態の安全装置の作用を説明するための図である。
図7】第2実施形態の安全装置のブロック図である。
図8】第2実施形態の安全装置の作用を説明するための図である。
図9】第3実施形態の安全装置のブロック図である。
図10】第3実施形態の輪止め装置の斜視図である。
図11】第3実施形態の安全装置の作用を説明するための図である。
図12】第4実施形態の安全装置のブロック図である。
図13】第4実施形態の輪止め装置の斜視図である。
図14】第4実施形態の安全装置の作用を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。本実施形態に係る高所作業車1を図1に示しており、まず、この図を参照して高所作業車1の全体構成について説明する。
【0016】
高所作業車1は、図1に示すように、車体2の前部に運転キャビン7を有し、車体2の前後に配設された左右一対のタイヤ車輪5(前輪5f及び後輪5r)により走行可能なトラック車両をベースに構成されている。車体2は、タイヤ車輪5(前輪5f及び後輪5r)が配設されたシャシフレームと、このシャシフレーム上に取り付けられたサブフレームとからなる車体フレームを備えて構成されている。
【0017】
車体2の前後左右には、高所作業時に車体2を持ち上げ支持するジャッキ装置10が設けられている。ジャッキ装置10は、前輪5fの後方に配設された左右一対のフロントジャッキ10fと、後輪5rの後方に配設された左右一対のリアジャッキ10rとを有して構成される。各ジャッキ10f,10rは、その内部に設けられたジャッキシリンダ11を駆動させて下方に伸長させることで車体2を持ち上げ支持し、これにより車両全体を安定させた状態とする。車体2の後端部には、各ジャッキ10f,10rや後述するブーム30等の作動操作を行うための下部操作装置27が設けられている。
【0018】
車体2の下部の左右両サイドにおいて、後輪5rとリアジャッキ10rとの間には、後述の輪止め装置101を格納するための輪止め格納部15が設けられている。なお、図1では、車体2の左側後方の下部に取り付けられた輪止め格納部15のみが表れている。ここで、車体2に設けられた2箇所の輪止め格納部15は同様の構成であるため、以下では、2箇所の輪止め格納部15のうち、車体2の左側後方の下部に取り付けられた輪止め格納部15を代表して説明する。この輪止め格納部15は、上下方向に開放された開口部を有しており、輪止め装置101を2個1組で上方から差し込み可能に構成されている。前述したように、車体2には2箇所(左右両サイド)に輪止め格納部15が設けられているため、タイヤ車輪5の個数(4輪)に対応する合計4個の輪止め装置101を格納可能になっている。
【0019】
車体2における運転キャビン7後方の架装領域には、旋回モータ24により駆動されて上下軸回りに水平旋回作動自在に構成された旋回台20が設けられている。この旋回台20から上方に延びた支柱21には、ブーム30の基端部がフートピン22を介して上下方向に揺動自在(起伏自在)に取り付けられている。また、車体2の架装領域の左右には、作業工具や作業機材などを収納するための工具箱26が設けられている。
【0020】
ブーム30は、旋回台20側から順に、基端ブーム30a、中間ブーム30b及び先端ブーム30cが入れ子式に組み合わされた構成を有しており、その内部に設けられた伸縮シリンダ31の伸縮駆動により、ブーム30を軸方向(長手方向)に伸縮作動させることができる。また、基端ブーム30aと支柱21との間には起伏シリンダ23が跨設されており、この起伏シリンダ23を伸縮駆動させることにより、ブーム30全体を上下面(垂直面)内で起伏作動させることができる。
【0021】
先端ブーム30cの先端部には、垂直ポスト(図示せず)が上下方向に揺動自在に枢支されている。この垂直ポストは、先端ブーム30cの先端部との間に跨設された上部レベ
リングシリンダ(図示せず)と、基端ブーム30aと支柱21との間に跨設された下部レベリングシリンダ25とにより、ブーム30の起伏の如何に拘らず常時垂直姿勢に保持されるように揺動制御(レベリング制御)される。この垂直ポストには、作業者搭乗用の作業台40が作業台ブラケット(図示せず)を介して取り付けられている。この作業台ブラケットの内部には首振りモータ34(図2を参照)が設けられており、この首振りモータ34を駆動させることにより、作業台40全体を垂直ポスト回りに首振り作動(水平旋回動)させることができる。ここで、垂直ポストは、上述のように常時垂直姿勢が保たれるため、結果として作業台40の床面はブーム30の起伏角度によらず常時水平に保持される。
【0022】
作業台40には、これに搭乗した作業者が操作する操作レバーや操作スイッチ、操作ダイヤル等の各操作手段を備えた上部操作装置45が設けられている。そのため、作業台40に搭乗した作業者は、上部操作装置45を操作することにより、旋回台20の旋回作動(旋回モータ24の回転駆動)、ブーム30の起伏作動(起伏シリンダ23の伸縮駆動)、ブーム30の伸縮作動(伸縮シリンダ31の伸縮駆動)、作業台40の首振り作動(首振りモータ34の回転駆動)などの各作動操作を行うことができる。
【0023】
車体2に設けられたジャッキ装置10(ジャッキ10f,10r)及び高所作業装置(旋回台20、ブーム30、作業台40等)の作動機構は、図2に示すように、上部操作装置45や下部操作装置27からの操作信号を受けて、ジャッキシリンダ11、旋回モータ24、起伏シリンダ23、伸縮シリンダ31及び首振りモータ34等(以下、まとめて「油圧アクチュエータ」とも称する)を制御するコントローラ60と、この油圧アクチュエータを駆動させるために作動油を供給する油圧ユニット50とを備えて構成される。
【0024】
上部操作装置45もしくは下部操作装置27の操作により出力された操作信号は、コントローラ60に入力される。コントローラ60の作動制御部61は、その操作信号に応じた指令信号を油圧ユニット50(制御バルブ53)に出力する。
【0025】
油圧ユニット50は、作動油を貯留する油圧タンク51と、車体2に搭載されたエンジンEの動力を用いて駆動されることで作動油を吐出する油圧ポンプ52と、油圧ポンプ52から各油圧アクチュエータに供給する作動油の供給方向及び供給量を制御する制御バルブ53とを有して構成される。また、エンジンEの動力を変速してタイヤ車輪5に伝達するトランスミッションには、パワーテイクオフ機構PTOが組み込まれている。ここで、運転キャビン7内に配設されたPTO操作レバー55がOFF位置からON位置に操作されると、パワーテイクオフ機構PTOによりエンジンEによる駆動先がタイヤ車輪5から油圧ポンプ52に切り換えられ、エンジンEの動力により油圧ポンプ52が駆動されるようになっている。一方、PTO操作レバー55がON位置からOFF位置に操作されると、パワーテイクオフ機構PTOによりエンジンEによる駆動先が油圧ポンプ52からタイヤ車輪5に切り換えられ、エンジンEの動力によりタイヤ車輪5が回転駆動されるようになっている。制御バルブ53は、ジャッキシリンダ11に対応する電磁比例制御バルブV1、旋回モータ24に対応する電磁比例制御バルブV2、起伏シリンダ23に対応する電磁比例制御バルブV3、伸縮シリンダ31に対応する電磁比例制御バルブV4、首振りモータ34に対応する電磁比例制御バルブV5を有している。この制御バルブ53は、コントローラ60の作動制御部61からの指令信号に基づき、各電磁比例制御バルブV1~V5のスプールを電磁駆動して、油圧ポンプ52から各油圧アクチュエータに供給される作動油の供給方向及び供給量を制御し、各油圧アクチュエータの作動方向及び作動速度を制御する(ジャッキ装置10及び高所作業装置の作動方向及び作動速度を制御する)。
【0026】
このような構成の高所作業車1では、目的の作業現場に駐車して所要の作業を行う場合、その作業の開始前(各ジャッキ10f,10rの作動操作を行う前)に、駐車ブレーキ
(パーキングブレーキ)を作動させて左右の後輪5rを制動させてから、その駐車路面と各タイヤ車輪5との間に輪止め装置101(図1を参照)を設置して、車両の逸走防止を図るようになっている。本実施形態では、高所作業車1を作業現場(駐車路面)に駐車した場合に、各タイヤ車輪5に輪止め装置101が設置されていることを検出するための安全装置が備えられている。なお、本実施形態においては、高所作業車1の駐車路面が平坦地である場合には、少なくとも2輪以上(例えば左右の後輪5r)に輪止め装置101を設置し、高所作業車1の駐車路面が傾斜地である場合には、4輪全てに輪止め装置101を設置することが求められる。
【0027】
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態に係る安全装置について説明する。
【0028】
安全装置は、図3に示すように、4個の輪止め装置101と、車体傾斜検出器16と、警報装置17と、車両側受信部70と、コントローラ60とを主体に構成されている。
【0029】
輪止め装置101は、図4に示すように、輪止め部材120と、保持部126と、ビーコン送信器130とを備えて構成される。以下の説明において、4個の輪止め装置101を区別する必要がある場合には、便宜上、「輪止め装置101A」、「輪止め装置101B」、「輪止め装置101C」、「輪止め装置101D」と呼称する(図3を参照)。なお、本実施形態では、車両に設けられたタイヤ車輪5の個数と同数の4個の輪止め装置101が装備されているが、5個以上の輪止め装置101が装備されていてもよい。
【0030】
輪止め部材120は、例えば合成樹脂材料(プラスチック材料)を用いて楔形状に形成されている。この輪止め部材120は、駐車路面に接地される底部をなす接地部121と、タイヤ車輪5の外周面5tを受け止めるストッパ部122と、最上部を形成する頂部123と、接地部121と頂部123とを繋ぐ背面部124と、一対の側面部125とを有している。以下では、図5に示すように、輪止め装置101(輪止め部材120)の前後方向の向きとして、タイヤ車輪5の外周面5tと駐車路面との間に差し込まれる側(図中の左側)を「先端側」と呼称し、その反対側(図中の右側)を「基端側」と呼称する(他の実施形態でも同様とする)。なお、本実施形態において、輪止め装置101を設置するといった場合には、タイヤ車輪5の付近に輪止め装置101を設置すること(ストッパ部122が外周面5tと接した状態と、ストッパ部122が外周面5tと接していないが近くにある状態)を含む意味で用いる。
【0031】
接地部121には、前後方向に沿って山部と谷部が連続的に形成されることで地面に対する滑り止めをなす滑り止め部121aが形成されている。ストッパ部122は、先端側から基端側に向けて高くなるとともに斜め上方に向けて凹となる湾曲面として形成されており、タイヤ車輪5の踏み面5tに当接又は近接可能に構成されている。なお、このストッパ部122は、一部もしくは全てが傾斜面により形成されていてもよい。背面部124には、輪止め装置101を持ち運ぶ際などに作業者が把持する断面T字形の取手124aが突出形成されている。
【0032】
保持部126は、例えば合成樹脂材料(プラスチック材料)を用いて中空の箱状に形成されており、輪止め部材120の頂部123に固定されている。この保持部126の内部には、ビーコン送信器130が取り付けられている。
【0033】
ビーコン送信器130は、例えば送信回路と電池とを内蔵した小型発信モジュールである。このビーコン送信器130は、例えばBluetooth(登録商標)やZigBee(登録商標)などの近距離無線通信規格に基づく周波数帯域のビーコン信号を電波信号として所定の時間間隔で送信する。このビーコン信号には、自己のビーコン送信器130
、もしくは、自己のビーコン送信器130が搭載される輪止め装置101を識別するための固有の識別情報(ビーコンID)が含まれる。以下の説明では、各ビーコン送信器130を区別する必要がある場合には、輪止め装置101Aに搭載されたビーコン送信器130を「ビーコン送信器130A」と呼称し、輪止め装置101Bに搭載されたビーコン送信器130を「ビーコン送信器130B」と呼称し、輪止め装置101Cに搭載されたビーコン送信器130を「ビーコン送信器130C」と呼称し、輪止め装置101Dに搭載されたビーコン送信器130を「ビーコン送信器130D」と呼称する。
【0034】
車体傾斜検出器16は、水平面に対する車体2の傾斜角度(車体2の前後方向の傾斜角度)を検出する。車体傾斜検出器16は、車体2の傾斜角度(車体2の前後方向の傾斜角度)を検出して、その検出した傾斜角度に応じた電圧信号(検出信号)をコントローラ60に出力する。この車体2の傾斜角度は、例えば、車体2が前上がり(頭上げ)になっている状態では正の角度(プラスの角度)となり、車体2が前下がり(頭下げ)になっている状態では負の角度(マイナスの角度)となる。
【0035】
警報装置17は、例えば下部操作装置27の近傍に取り付けられている。この警報装置17は、例えば警報ランプや警報ブザー等から構成されており、コントローラ60からの指令信号に応じて警報を発して、作業者に注意喚起を図るようになっている。なお、この警報装置17は、視覚および聴覚などを通じて作業者に注意を喚起し得るあらゆる手段を含む。
【0036】
車両側受信部70は、車体2の左側の前輪5fの近傍に設けられた左前受信器71Aと、車体2の右側の前輪5fの近傍に設けられた右前受信器71Bと、車体2の左側の後輪5rの近傍に設けられた左後受信器71Cと、車体2の右側の後輪5rの近傍に設けられた右後受信器71Dとを備えている。各受信器71A~71Dは、各輪止め装置101のビーコン送信器130と無線通信が可能な無線受信器として構成されている。また、各受信器71A~71Dは、各ビーコン送信器130からのビーコン信号を受信したときの電波強度(受信電波強度)を検出する電波センサ(図示せず)を備えている。各受信器71A~71Dは、ビーコン送信器130から送信されるビーコン信号を受信するとともに、そのビーコン信号の電波強度(受信電波強度)を検出することで、そのビーコン信号に付加されたビーコンIDと、そのビーコン信号を受信したときの電波強度情報(受信電波強度)とを取得して、これらの情報をビーコン情報としてコントローラ60に送信する。なお、以下では、左前受信器71A、右前受信器71B、左後受信器71Cおよび右後受信器71Dを纏めて「受信器71」と総称する場合がある。
【0037】
コントローラ60は、図2に示すように、作動制御部61と、車体傾斜判定部62と、輪止め判定部63と、輪止め設置個数算出部64と、警報作動部65とを有している。なお、以下では、図6を追加参照して、コントローラ60の各部の機能を説明する。図6は、各輪止め装置101A~101Dの配置例を示す模式図である。図6(A)は全てのタイヤ車輪5に輪止め装置101が設置されており、図6(B)は左右の後輪5rのみに輪止め装置101が設置されている。
【0038】
作動制御部61は、前述したように、上部操作装置45または下部操作装置27からの操作信号に基づいて、制御バルブ53を電磁駆動して各油圧アクチュエータを作動させることで、ブーム30やジャッキ10f,10rなどの作動を制御する。
【0039】
車体傾斜判定部62は、車体傾斜検出器16により検出された車体2の傾斜角度と、予め定められた所定角度範囲とを比較して、車体2の傾斜角度が所定角度範囲内である場合には、車体2が水平姿勢である(駐車路面が平坦地である)ことを判定し、車体2の傾斜角度が所定角度範囲を超過している場合には、車体2が傾斜姿勢である(駐車路面が傾斜
地である)ことを判定する。「所定角度範囲」は、車体2が水平姿勢であるとみなすことのできる角度範囲(例えば±3度)に設定されている。
【0040】
輪止め判定部63は、各受信器71A~71Dから送信されるビーコン情報に基づいて、各タイヤ車輪5に輪止め装置101が設置されているか否かを判定する。具体的には、輪止め判定部63は、左前受信器71Aから送信されるビーコン情報に基づいて左側の前輪5fに設置された輪止め装置101を特定し、右前受信器71Bから送信されるビーコン情報に基づいて右側の前輪5fに設置された輪止め装置101を特定し、左後受信器71Cから送信されるビーコン情報に基づいて左側の後輪5rに設置された輪止め装置101を特定し、右後受信器71Dから送信されるビーコン情報に基づいて右側の後輪5rに設置された輪止め装置101を特定する。
【0041】
ここで、輪止め判定部63は、各受信器71から送信されるビーコン情報(ビーコンID、受信電波強度)に基づいて、その受信電波強度が予め設定された所定の閾値強度以上である場合に、そのビーコンIDに対応する輪止め装置101がタイヤ車輪5(最寄りのタイヤ車輪5)に設置されていることを判定する。すなわち、輪止め判定部63は、1個の受信器71から1つのビーコン情報のみを取得した場合には、その1つのビーコン情報の受信電波強度が閾値強度以上であれば、そのビーコンIDに対応するビーコン送信器130を当該受信器71の最寄りにあるビーコン送信器130として特定し、その特定したビーコン送信器130に対応する輪止め装置101が当該受信器71の近傍のタイヤ車輪5に設置されていることを判定する。一方、輪止め判定部63は、1個の受信器71から2つ以上のビーコン情報(ビーコンID、受信電波強度)を取得した場合には、その2つ以上のビーコン情報(ビーコンID)の中からその受信電波強度が閾値強度以上となるビーコンIDを抽出し、この抽出したビーコンIDに対応するビーコン送信器130を当該受信器71の最寄りにあるビーコン送信器130として特定し、その特定したビーコン送信器130に対応する輪止め装置101が当該受信器71の近傍のタイヤ車輪5に設置されていることを判定する。
【0042】
ここで、ビーコン送信器130と受信器71との距離は、受信電波強度と相関関係があり、その距離が近いほど受信電波強度は強くなり、その距離が遠いほど受信電波強度が弱くなるという性質がある。本実施形態では、この性質を利用して、受信電波強度が閾値強度以上となるビーコンIDを抽出することで、各受信器71の近傍にある輪止め装置101(最寄りの輪止め装置101)を特定することができる。この閾値強度は、例えば、所定距離(1m)だけ離れたビーコン送信器130から送信されたビーコン信号を受信したときの電波強度(受信電波強度)に相当する。この所定距離は、タイヤ車輪5とそのタイヤ車輪5の最寄りに配置された受信器71との間の距離よりも大きく、そのタイヤ車輪5とその他の受信器7(最寄りの受信器71以外の他の3個の受信器71)との間の距離よりも小さい距離に設定されている。そのため、複数の輪止め装置101を互いに異なるタイヤ車輪5に設置した場合には、それぞれのビーコン送信器130から送信したビーコン信号が同じ1個の受信器71において同時に受信されることはあり得るが、それぞれのビーコン送信器130から送信したビーコン信号の受信電波強度が同じ1個の受信器71において同時に閾値強度以上となることはない(最寄りのタイヤ車輪5に設置されたビーコン送信器130からのビーコン信号のみが閾値強度以上の受信電波強度となる)。なお、1個のタイヤ車輪5の前後に輪止め装置101を設置した場合(1個のタイヤ車輪5に対して2個の輪止め装置101を設置した場合)には、受信電波強度が閾値強度以上となる2つのビーコン情報が抽出されることになるため、そのタイヤ車輪5の前後に設置された輪止め装置101(2個の輪止め装置101)が最寄りの輪止め装置101として特定されることになる。
【0043】
具体的に、輪止め判定部63は、図6(A)の配置例においては、左前受信器71Aか
ら取得したビーコン情報に基づいて、ビーコン送信器130Aから受信したビーコン信号の受信電波強度が閾値強度以上であること、すなわち、ビーコン送信器130Aが左前受信器71Aの最寄りにあるビーコン送信器130であることを特定し、輪止め装置101Aが左側の前輪5fに設置されていることを判定する。また、輪止め判定部63は、図6(A)の配置例においては、右前受信器71Bから取得したビーコン情報に基づいて、ビーコン送信器130Bから受信したビーコン信号の受信電波強度が閾値強度以上であること、すなわち、ビーコン送信器130Bが右前受信器71Bの最寄りにあるビーコン送信器130であることを特定し、輪止め装置101Bが右側の前輪5fに設置されていることを判定する。また、輪止め判定部63は、図6(A)の配置例においては、左後受信器71Cから取得したビーコン情報に基づいて、ビーコン送信器130Cから受信したビーコン信号の受信電波強度が閾値強度以上であること、すなわち、ビーコン送信器130Cが左後受信器71Cの最寄りにあるビーコン送信器130であることを特定し、輪止め装置101Cが左側の後輪5rに設置されていることを判定する。また、輪止め判定部63は、図6(A)の配置例においては、右後受信器71Dから取得したビーコン情報に基づいて、ビーコン送信器130Dから受信したビーコン信号の受信電波強度が閾値強度以上であること、すなわち、ビーコン送信器130Dが右後受信器71Dの最寄りにあるビーコン送信器130であることを特定し、輪止め装置101Dが右側の後輪5rに設置されていることを判定する。
【0044】
また、輪止め判定部63は、図6(B)の配置例においては、左後受信器71Cから取得したビーコン情報に基づいて、2個のビーコン送信器130A,130Bから受信したビーコン信号の受信電波強度が閾値強度以上であること、すなわち、2個のビーコン送信器130A,130Bが左後受信器71Cの最寄りにあるビーコン送信器130であることを特定し、輪止め装置101Aおよび輪止め装置101Bが左側の後輪5rに設置されていることを判定する。また、輪止め判定部63は、図6(B)の配置例においては、右後受信器71Dから取得したビーコン情報に基づいて、2個のビーコン送信器130C,130Dから受信したビーコン信号の受信電波強度が閾値強度以上であること、すなわち、2個のビーコン送信器130C,130Dが右後受信器71Dの最寄りにあるビーコン送信器130であることを特定し、輪止め装置101Cおよび輪止め装置101Dが右側の後輪5rに設置されていることを判定する。なお、輪止め判定部63は、左前受信器71Aおよび右前受信器71Bについては、受信電波強度が閾値強度以上となるビーコン信号を受信していないこと、すなわち、左前受信器71Aおよび右前受信器71Bの付近にはビーコン送信器130がないことを特定し、左右の前輪5fには輪止め装置101が設置されていないと判定する。
【0045】
そして、輪止め判定部63は、このように各受信器71A~71Dから取得するビーコン情報(ビーコンID、受信電波強度)に基づいて、各受信器71A~71Dと各輪止め装置101A~101Dとの相対的な位置関係(各輪止め装置101の所在)を特定し、各輪止め装置101A~101Dがタイヤ車輪5に設置されているか否かを判定する。
【0046】
輪止め設置個数算出部64は、輪止め判定部63の判定結果に基づいて、左側の前輪5fに設置された輪止め装置101の個数と、右側の前輪5fに設置された輪止め装置101の個数と、左側の後輪5rに設置された輪止め装置101の個数と、右側の後輪5rに設置された輪止め装置101の個数とを算出する。ここで、輪止め設置個数算出部64は、図6(A)の配置例では、輪止め判定部63の判定結果に基づいて、左側の前輪5fに設置された輪止め装置101の個数が「1個」、右側の前輪5fに設置された輪止め装置101の個数が「1個」、左側の後輪5rに設置された輪止め装置101の個数が「1個」、右側の後輪5rに設置された輪止め装置101の個数が「1個」であると算出する。また、輪止め設置個数算出部64は、図6(B)の配置例では、輪止め判定部63の判定結果に基づいて、左側の前輪5fに設置された輪止め装置101の個数が「0個」、右側
の前輪5fに設置された輪止め装置101の個数が「0個」、左側の後輪5rに設置された輪止め装置101の個数が「2個」、右側の後輪5rに設置された輪止め装置101の個数が「2個」であると算出する。
【0047】
さらに、輪止め設置個数算出部64は、全てのタイヤ車輪5に設置された輪止め装置101の個数を合算して、車両全体において設置された輪止め装置101の合計個数(「合計設置個数」と呼称する)を算出する。輪止め設置個数算出部64は、全てのタイヤ車輪5に設置された輪止め装置101の個数を合算して、図6(A)および図6(B)の配置例では、いずれも輪止め装置101の合計設置個数が「4個」であると算出する。
【0048】
<A.合計個数の判定>
警報作動部65は、輪止め設置個数算出部64の算出結果に基づいて、輪止め装置101の合計設置個数が4個であるか否かを判定する。つまり、警報作動部65は、4個全ての輪止め装置101がタイヤ車輪5に設置されているか否かを判定する。ここで、警報作動部65は、輪止め装置101の合計設置個数が4個未満であると判定している場合には、下部操作装置27によるジャッキ10f,10rの作動操作が行われたときに、警報装置17に対して警報指令信号を出力して警報装置17を作動させることで、作業者に対して注意喚起を図る。具体的には、警報作動部65は、図6(A)および図6(B)の配置例においては、輪止め設置個数算出部64の算出結果に基づいて、各タイヤ車輪5に設置された輪止め装置101の合計設置個数が4個であると判定し、下部操作装置27によるジャッキ10f,10rの作動操作が行われたとしても、警報装置17に対して警報指令信号を出力しない(警報装置17を作動させない)。
【0049】
<B.配置位置の判定>
続いて、警報作動部65は、輪止め装置101の合計設置個数が4個であると判定した場合、それぞれの輪止め装置101が駐車路面の傾斜に応じた適正な配置となっているか否かを判定する。
【0050】
(駐車路面が平坦地である場合)
警報作動部65は、車体傾斜判定部62において車体2が水平姿勢である(駐車路面が平坦地である)と判定されている場合には、輪止め設置個数算出部64の算出結果に基づいて、少なくとも2輪以上のタイヤ車輪5に1個以上の輪止め装置101がそれぞれ設置されているか否かを判定する。このとき、警報作動部65は、少なくとも2輪以上のタイヤ車輪5に1個以上の輪止め装置101がそれぞれ設置されていないと判定した場合は、下部操作装置27によるジャッキ10f,10rの作動操作が行われたときに、警報装置17に対して警報指令信号を出力して警報装置17を作動させることで、作業者に対して注意喚起を図る。ここで、警報作動部65は、図6(A)および図6(B)の配置例においては、いずれも2輪以上のタイヤ車輪5に1個以上の輪止め装置101がそれぞれ設置されていることを判定し、下部操作装置27によるジャッキ10の作動操作が行われたとしても、警報装置17に対して警報指令信号を出力しない(警報装置17を作動させない)。
【0051】
(駐車路面が傾斜地である場合)
一方、警報作動部65は、車体傾斜判定部62により車体2が傾斜姿勢である(駐車路面が傾斜地である)と判定されている場合には、輪止め設置個数算出部64の算出結果に基づいて、全てのタイヤ車輪5に輪止め装置101が1個ずつ設置されているか否かを判定する。このとき、警報作動部65は、全てのタイヤ車輪5に輪止め装置101が1個ずつ設置されていないと判定した場合は、下部操作装置27によるジャッキ10f,10rの作動操作が行われたときに、警報装置17に指令信号を出力して警報装置17を作動させることで、作業者に対して注意喚起を図る。ここで、警報作動部65は、図6(A)の
配置例においては、輪止め設置個数算出部64の算出結果に基づいて、全てのタイヤ車輪5に輪止め装置101が1個ずつ設置されていることを判定し、下部操作装置27によるジャッキ10の作動操作が行われたとしても、警報装置17に対して警報指令信号を出力しない(警報装置17を作動させない)。一方、警報作動部65は、図6(B)の配置例においては、輪止め設置個数算出部64の算出結果に基づいて、全てのタイヤ車輪5に輪止め装置101が1個ずつ設置されていないこと(左右の前輪5fには輪止め装置101が設置されていないこと)を判定し、下部操作装置27によるジャッキ10の作動操作が行われたときに、警報装置17に対して警報指令信号を出力して警報装置17を作動させる。
【0052】
以上、第1実施形態の安全装置によれば、輪止め装置101にビーコン送信器130を取り付けるとともに、各タイヤ車輪5の近傍に受信器71を取り付けて、そのビーコン信号を受信した受信器71の近傍にあるタイヤ車輪5に当該輪止め装置101が設置されていることを検出することで、作業者が誤って輪止め装置101の設置を忘れるといったヒューマンエラーを抑制して、車両の逸走防止を図ることが可能となる。
【0053】
また、第1実施形態の安全装置によれば、車両全体に設置された輪止め装置101の合計設置個数が4個未満(タイヤ車輪5の合計個数未満)であるときに警報作動を実行することで、輪止め装置101の設置忘れや意図的な未設置をより効果的に防止することが可能となる。
【0054】
さらに、第1実施形態の安全装置によれば、車両全体に4個の輪止め装置101が設置されていたとしても、駐車路面の傾斜角度(車体2の傾斜角度)に応じた適正な配置となっていない場合に警報作動を実行することで、駐車路面が平坦地であるか傾斜地であるかに関らず車両の逸走を効果的に防止することができ、作業の安全性を一層向上させることが可能となる。
【0055】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る安全装置について、図7を参照しながら説明する。前述の第1実施形態の安全装置では、車両側受信部70にはタイヤ車輪5の個数に応じた4個の受信器71A~71Dが備えられていたが、この第2実施形態の安全装置では、タイヤ車輪5の個数よりも少ない2個の受信器71A,71Dが備えられている点で異なる。なお、以下の説明では、上記第1実施形態と同一の構成(又は同一の機能を有する構成)には同一の番号を用いて重複説明を省略し、主として上記第1実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0056】
安全装置は、図7に示すように、4個の輪止め装置101と、車体傾斜検出器16と、警報装置17と、車両側受信部70と、コントローラ60とを主体に構成されている。
【0057】
車両側受信部70は、車体2の左側の前輪5fの近傍に設けられた左前受信器71Aと、車体2の右側の後輪5rの近傍に設けられた右後受信器71Dとを備えている。各受信器71A,71Dは、各輪止め装置101のビーコン送信器130と無線通信が可能な無線受信器として構成されている。各受信器71A,71Dは、上記第1実施形態と同様に、各ビーコン送信器130からビーコン信号を受信した場合、当該ビーコン信号に対応するビーコンIDと受信電波強度とを含むビーコン情報をコントローラ60に無線送信する。なお、本実施形態では、車両側受信部70に2個の受信器71を設けているが、この構成に限定されるものではなく、車両側受信部70に3個の受信器71を設けてもよい。また、1個の受信器71と4個の輪止め装置101との間の距離により、1個の受信器71と4個の輪止め装置101との相対的な位置関係を特定できるのであれば、車両側受信部71に1個の受信器70のみを設けたものでもよい。
【0058】
コントローラ60は、上記第1実施形態と同様に、作動制御部61と、車体傾斜判定部62と、輪止め判定部63と、輪止め設置個数算出部64と、警報作動部65とを有している。なお、作動制御部61、車体傾斜判定部62、輪止め設置個数算出部64,警報作動部65については、上述の第1実施形態等と同様のため、ここでは重複説明を省略して、輪止め判定部63のみを説明する。
【0059】
輪止め判定部63は、各受信器71A,71Dから取得したビーコン情報(ビーコンID、受信電波強度)に基づいて、その取得したビーコンIDごとに、当該ビーコンIDに対応するビーコン信号を左前受信器71Aにおいて受信したときの受信電波強度と右後受信器71Dにおいて受信したときの受信電波強度との相対的な関係(受信電波強度の比)に応じて、そのビーコンIDに対応する輪止め装置101の設置位置(輪止め装置101と2個の受信器71A,71Dとの位置関係)を推定して、各タイヤ車輪5に輪止め装置101が設置されているか否かを判定する。
【0060】
図8は、各ビーコン送信器130から送信されるビーコン信号を受信したときの左前受信器71Aおよび右後受信器71Dの受信電波強度の相対的な関係を説明するための図である。なお、図8では、紙面の都合上、車体傾斜検出器16、警報装置17、コントローラ60などの図示を省略している(詳細は図7を参照)。この図8では、ビーコン送信器130A(輪止め装置101A)を識別するビーコンIDを「AAA」で示し、ビーコン送信器130B(輪止め装置101B)を識別するビーコンIDを「BBB」で示し、ビーコン送信器130C(輪止め装置101C)を識別するビーコンIDを「CCC」で示し、ビーコン送信器130D(輪止め装置101D)を識別するビーコンIDを「DDD」で示している。また、図8では、各受信器71A,71Dにおいて受信した受信電波強度のレベルを「0」~「5」の6段階で示している。図中において、受信電波強度のレベルが「0」である場合はビーコン信号を受信できなかったことを表し、受信電波強度のレベルが「1」である場合はビーコン信号の受信電波強度が小レベルであることを表し、受信電波強度のレベルが「3」である場合はビーコン信号の受信電波強度が中レベルであることを表し、受信電波強度が「5」である場合はビーコン信号の受信電波強度が大レベルであることを表す。前述したように、ビーコン送信器130A~130Dと受信器71A,71Dとの距離は、受信電波強度と相関関係があり、その距離が近いほど受信電波強度は強くなり、その距離が遠いほど受信電波強度が弱くなるという性質があり、その受信電波強度の大きさに応じてビーコン送信器130A~130Dと受信器71A,71Dとの距離(位置関係)を推定することができる。そのため、ビーコン送信器130A~130Dと受信器71A,71Dとの距離のレンジに関しては、受信電波強度のレベルが「0」である場合は距離のレンジが「かなり遠い」、受信電波強度のレベルが「1」である場合は距離のレンジが「比較的遠い」、受信電波強度のレベルが「3」である場合は距離のレンジが「比較的近い」、受信電波強度のレベルが「5」である場合は距離のレンジが「かなり近い」と区別することができる。なお、図中に示した受信電波強度のレベルは一例であり、ビーコン信号の送受信の条件等に応じて変化するものである。
【0061】
まず、輪止め判定部63は、輪止め装置101Aを識別するビーコンID(図中「AAA」で示す)に対しては、これに対応するビーコン信号の受信電波強度として、左前受信器71Aにおいて受信した受信電波強度のレベルが「5」であり、右後受信器71Dにおいて受信した受信電波強度のレベルが「0」であることに基づいて、左前受信器71Aとの距離がかなり近く、右後受信器71Dとの距離がかなり遠いことを推定し、輪止め装置101Aが左側の前輪5fに設置されていることを判定する。
【0062】
また、輪止め判定部63は、輪止め装置101Bを識別するビーコンID(図中「BBB」で示す)に対しては、これに対応するビーコン信号の受信電波強度として、左前受信
器71Aにおいて受信した受信電波強度のレベルが「3」であり、右後受信器71Dにおいて受信した受信電波強度のレベルが「1」であることに基づいて、左前受信器71Aとの距離が比較的近く、右後受信器71Dとの距離が比較的遠いことを推定し、輪止め装置101Bが右側の前輪5fに設置されていることを判定する。
【0063】
また、輪止め判定部63は、輪止め装置101Cを識別するビーコンID(図中「CCC」で示す)に対しては、これに対応するビーコン信号の受信電波強度として、左前受信器71Aにおいて受信した受信電波強度のレベルが「1」であり、右後受信器71Dにおいて受信した受信電波強度のレベルが「3」であることに基づいて、左前受信器71Aとの距離が比較的遠く、右後受信器71Dとの距離が比較的近いことを推定し、輪止め装置101Cが左側の後輪5rに設置されていることを判定する。
【0064】
また、輪止め判定部63は、輪止め装置101Dを識別するビーコンID(図中「DDD」で示す)に対しては、これに対応するビーコン信号の受信電波強度として、左前受信器71Aにおいて受信した受信電波強度のレベルが「0」であり、右後受信器71Dにおいて受信した受信電波強度のレベルが「5」であることに基づいて、左前受信器71Aとの距離がかなり遠く、右後受信器71Dとの距離がかなり近いことを推定し、輪止め装置101Dが右側の後輪5rに設置されていることを判定する。
【0065】
そして、輪止め判定部63は、このように2個の受信器71A,71Dから取得するビーコン情報(ビーコンID、受信電波強度)に基づいて、各受信機71A,71Dと各輪止め装置101A~101Dとの相対的な位置関係(各輪止め装置101の所在)を特定し、各タイヤ車輪5に輪止め装置101が設置されているか否かを判定する。
【0066】
以上、第2実施形態の安全装置によれば、輪止め装置101にビーコン送信器130を取り付けるとともに、車両上に2個の受信器71A,71Dを取り付けて、そのビーコン送信器130から送信されるビーコン信号を2個の受信器71A,71Dにおいて受信したときの受信電波強度の関係に応じて、当該輪止め装置101がいずれのタイヤ車輪5に設置されているかを検出することで、作業者が誤って輪止め装置101の設置を忘れるといったヒューマンエラーを抑制して、車両の逸走防止を図ることが可能となる。
【0067】
また、第2実施形態の安全装置によれば、上記第1実施形態と同様に、車両全体に設置された輪止め装置101の合計設置個数が4個未満(タイヤ車輪5の合計個数未満)であるときに警報作動を実行することで、輪止め装置101の設置忘れや意図的な未設置をより効果的に防止することが可能となる。
【0068】
さらに、第2実施形態の安全装置によれば、上記第1実施形態と同様に、車両全体に4個の輪止め装置101が設置されていたとしても、駐車路面の傾斜角度(車体2の傾斜角度)に応じた適正な配置となっていない場合に警報作動を実行することで、駐車路面が平坦地であるか傾斜地であるかに関らず車両の逸走を効果的に防止することができ、作業の安全性を一層向上させることが可能となる。
【0069】
なお、この第2実施形態において、各ビーコン送信器130と各受信器71との間の距離と、各ビーコン送信器130から送信したビーコン信号を各受信器71において受信したときの受信電波強度とを関連付けたテーブル形式の情報を用意しておき、このテーブル形式の情報を利用して、各輪止め装置101の所在(設置位置)を特定してもよい。
【0070】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る安全装置について、図9図11を参照しながら説明する。前述の第1実施形態の安全装置では、輪止め装置101にビーコン送信器130
が備えられていたが、この第3実施形態の安全装置では、車体2の各タイヤ車輪5の近傍にビーコン送信器81A~81Dが備えられている点で異なる。なお、以下の説明では、上記第1実施形態と同一の構成(又は同一の機能を有する構成)には同一の番号を用いて重複説明を省略し、主として上記第1実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0071】
安全装置は、図9に示すように、4個の輪止め装置103と、車体傾斜検出器16と、警報装置17と、車両側送信部80と、車両側受信部85と、コントローラ60とを主体に構成されている。
【0072】
車両側送信部80は、車体2の左側の前輪5fの近傍に設けられた左前ビーコン送信器81Aと、車体2の右側の前輪5fの近傍に設けられた右前ビーコン送信器81Bと、車体2の左側の後輪5rの近傍に設けられた左後ビーコン送信器81Cと、車体2の右側の後輪5rの近傍に設けられた右後ビーコン送信器81Dとを備えている。各ビーコン送信器81A~81Dは、上記第1実施形態のビーコン送信器130と同様に、例えば送信回路と電池とを内蔵した小型発信モジュールであり、Bluetooth(登録商標)やZigBee(登録商標)などの近距離無線通信規格に基づく周波数帯域のビーコン信号を電波信号として所定の時間間隔で送信する。このビーコン信号には、自己のビーコン送信器81A~81Dを特定するための固有の識別情報(ビーコンID)が含まれる。なお、以下では、左前ビーコン送信器81A、右前ビーコン送信器81B、左後ビーコン送信器81Cおよび右後ビーコン送信器81Dを纏めて「ビーコン送信器81」と総称する場合がある。
【0073】
輪止め装置103は、図10に示すように、輪止め部材120と、保持部126と、送受信器140とを備える。以下の説明において、4個の輪止め装置103を区別する必要がある場合には、便宜上、「輪止め装置103A」、「輪止め装置103B」、「輪止め装置103C」、「輪止め装置103D」と呼称する。
【0074】
送受信器140は、送信回路および受信回路を有し、車両側送信部80および車両側受信部85との間で無線通信が可能な無線送受信器として構成されている。また、各送受信器140は、車両側送信部80から送信されるビーコン信号を受信したときの電波強度(受信電波強度)を検出する電波センサ(図示せず)を備えている。各送受信器140は、車両側送信部80から送信されるビーコン信号を受信するとともに、そのビーコン信号の電波強度(受信電波強度)を検出することで、そのビーコン信号に付加されたビーコンIDと、そのビーコン信号を受信したときの電波強度情報(受信電波強度)とを取得して、これらの情報をビーコン情報としてコントローラ60に無線送信する。なお、各送受信器140がコントローラ60にビーコン情報を送信する場合、このビーコン情報に自己の送受信器140(輪止め装置103)を特定するための識別情報(輪止め情報)を付加して送信する。以下の説明では、各送受信器140を区別する必要がある場合には、輪止め装置103Aに搭載された送受信器140を「送受信器140A」と呼称し、輪止め装置103Bに搭載された送受信器140を「送受信器140B」と呼称し、輪止め装置103Cに搭載された送受信器140を「送受信器140C」と呼称し、輪止め装置103Dに搭載された送受信器140を「送受信器140D」と呼称する。
【0075】
車両側受信部85は、各輪止め装置103A~103Dの送受信器140A~140Dから受信したビーコン情報をコントローラ60に送信する中継器として構成される。この車両側受信部85は、1個の受信器により構成されていてもよいし、複数の受信器により構成されていてもよい。
【0076】
コントローラ60は、第1実施形態と同様に、作動制御部61と、車体傾斜判定部62と、輪止め判定部63と、輪止め設置個数算出部64と、警報作動部65とを有している
。なお、作動制御部61、車体傾斜判定部62、輪止め設置個数算出部64,警報作動部65については、上述の第1実施形態等と同様のため、ここでは重複説明を省略して、輪止め判定部63のみを説明する。以下では、主に図11を参照して、輪止め判定部63の機能を説明する。図11は、各輪止め装置103A~103Dの配置例を示す模式図である。図11(A)は全てのタイヤ車輪5に輪止め装置103が設置されており、図11(B)は左右の後輪5rのみに輪止め装置103が設定されている。
【0077】
輪止め判定部63は、車両側受信部85から取得するビーコン情報に基づいて、各輪止め装置103がいずれのタイヤ車輪5に設置されているか否かを判定する。具体的には、輪止め判定部63は、輪止め装置103Aの送受信器140Aから車両側受信部85を介して取得するビーコン情報に基づいて輪止め装置103Aがいずれのタイヤ車輪5に設定されているのかを特定し、輪止め装置103Bの送受信器140Bから車両側受信部85を介して取得するビーコン情報に基づいて輪止め装置103Bがいずれのタイヤ車輪5に設定されているのかを特定し、輪止め装置103Cの送受信器140Cから車両側受信部85を介して取得するビーコン情報に基づいて輪止め装置103Cがいずれのタイヤ車輪5に設置されているのかを特定し、輪止め装置103Dの送受信器140Dから車両側受信部85を介して取得するビーコン情報に基づいて輪止め装置103Dがいずれのタイヤ車輪5に設置されているのかを特定する。
【0078】
ここで、輪止め判定部63は、1個の送受信器140から1つのビーコン情報のみを取得した場合には、その1つのビーコン情報の受信電波強度が閾値強度以上であれば、そのビーコンIDに対応するビーコン送信器81を最寄りのビーコン送信器81(当該送受信器140の最寄りにあるビーコン送信器81)として特定し、その特定したビーコン送信器81の近傍のタイヤ車輪5に、その1個の送受信器140に対応する輪止め装置103が設置されていることを判定する。一方、輪止め判定部63は、1個の送受信器140から2つ以上のビーコン情報を取得した場合には、その2つ以上のビーコン情報(ビーコンID)の中からその受信電波強度が閾値強度以上となるビーコンIDを抽出し、この抽出したビーコンIDに対応するビーコン送信器81を最寄りのビーコン送信器81として特定し、その特定したビーコン送信器81の近傍のタイヤ車輪5に、その1個の送受信器140に対応する輪止め装置103が設置されていることを判定する。この閾値強度は、上記第1実施形態と同様に、例えば、所定距離(1m)だけ離れたビーコン送信器81から送信されたビーコン信号を受信したときの電波強度(受信電波強度)に相当する。この所定距離は、タイヤ車輪5とそのタイヤ車輪5の最寄りに配置されたビーコン送信器81との間の距離よりも大きく、そのタイヤ車輪5とその他のビーコン送信器130(最寄りのビーコン送信器130以外の他の3個のビーコン送信器130)との間の距離よりも小さい距離に設定されている。そのため、複数の輪止め装置103を互いに異なるタイヤ車輪5に設置した場合には、それぞれのビーコン送信器81から送信したビーコン信号が同じ1個の送受信器140において同時に受信されることはあり得るが、それぞれのビーコン送信器81から送信したビーコン信号の受信電波強度が同じ1個の送受信器140において同時に閾値強度以上となることはない(最寄りのタイヤ車輪5に設置されたビーコン送信器81からのビーコン信号のみが閾値強度以上の受信電波強度となる)。なお、1個のタイヤ車輪5の前後に輪止め装置103を設置した場合(1個のタイヤ車輪5に対して2個の輪止め装置103を設置した場合)には、そのタイヤ車輪5の近傍のビーコン送信器81から送信されるビーコン信号が、各輪止め装置103の送受信器140において受信電波強度が閾値強度以上となるビーコン信号として受信されることになるため、そのタイヤ車輪5の前後に設置された輪止め装置103(2個の輪止め装置103)が最寄りの輪止め装置103として特定されることになる。
【0079】
具体的に、輪止め判定部63は、図11(A)の配置例においては、輪止め装置103Aの送受信器140Aから取得したビーコン情報に基づいて、この送受信器140Aにお
いて左前ビーコン送信器81Aから受信したビーコン信号の受信電波強度が閾値強度以上であること、すなわち、左前ビーコン送信器81Aが輪止め装置103A(送受信器140A)の最寄りにあることを特定し、輪止め装置103Aが左側の前輪5fに設置されていることを判定する。また、輪止め判定部63は、図11(A)の配置例においては、輪止め装置103Bの送受信器140Bから取得したビーコン情報に基づいて、この送受信器140Bにおいて右前ビーコン送信器81Bから受信したビーコン信号の受信電波強度が閾値強度以上であること、すなわち、右前ビーコン送信器81Bが輪止め装置103B(送受信器140B)の最寄りにあることを特定し、輪止め装置103Bが右側の前輪5fに設置されていることを判定する。また、輪止め判定部63は、図11(A)の配置例においては、輪止め装置103Cの送受信器140Cから取得したビーコン情報に基づいて、この送受信器140Cにおいて左後ビーコン送信器81Cから受信したビーコン信号の受信電波強度が閾値強度以上であること、すなわち、左後ビーコン送信器81Cが輪止め装置103C(送受信器140C)の最寄りにあることを特定し、輪止め装置103Cが左側の後輪5rに設置されていることを判定する。また、輪止め判定部63は、図11(A)の配置例においては、輪止め装置103Dの送受信器140Dから取得したビーコン情報に基づいて、この送受信器140Dにおいて右後ビーコン送信器81Dから受信したビーコン信号の受信電波強度が閾値強度以上であること、すなわち、右後ビーコン送信器81Dが輪止め装置103D(送受信器140D)の最寄りにあることを特定し、輪止め装置103Dが右側の後輪5rに設置されていることを判定する。
【0080】
輪止め判定部63は、図11(B)の配置例においては、輪止め装置103Aの送受信器140Aおよび輪止め装置103Bの送受信器140Bから車両側受信部85を介して取得したビーコン情報に基づいて、それぞれの送受信器140A,140Bにおいて左後ビーコン送信器81Cから受信したビーコン信号の受信電波強度が閾値強度以上であること、すなわち、左後ビーコン送信器81Cが2個の輪止め装置103A,103Bの最寄りにあることを特定し、輪止め装置103Aおよび輪止め装置103Bが左側の後輪5rに設置されていることを判定する。また、輪止め判定部63は、図11(B)の配置例においては、輪止め装置103Cの送受信器140Cおよび輪止め装置103Dの送受信器140Dから車両側受信部85を介して取得したビーコン情報に基づいて、それぞれの送受信器140C,140Dにおいて右後ビーコン送信器81Dから受信したビーコン信号の受信電波強度が閾値強度以上であること、すなわち、右後ビーコン送信器81Dが2個の輪止め装置103C,103Dの最寄りにあることを特定し、輪止め装置103Cおよび輪止め装置103Dが右側の後輪5rに設置されていることを判定する。なお、輪止め判定部63は、左前ビーコン送信器81Aおよび右前ビーコン送信器81Bから送信されるビーコン信号については、いずれの送受信器140においても受信電波強度が閾値強度以上となるビーコン信号として受信していないこと、すなわち、左前ビーコン送信器81Aおよび右前ビーコン送信器81Bの付近には送受信器140がないことを特定し、左右の前輪5fには輪止め装置103が設置されていないと判定する。
【0081】
そして、輪止め判定部63は、このように各輪止め装置103の送受信器140から取得するビーコン情報(ビーコンID、受信電波強度)に基づいて、各送受信器140とビーコン送信器81との相対的な位置関係(輪止め装置103の所在)を特定し、各輪止め装置103がいずれのタイヤ車輪5に設置されているのかを判定する。
【0082】
以上、第3実施形態の安全装置によれば、車両上にビーコン送信器81を取り付けるとともに、輪止め装置103に送受信器140を取り付けて、そのビーコン信号を受信した送受信器140に対応する輪止め装置103が当該ビーコン送信器81の近傍にあるタイヤ車輪5に設置されていることを検出することで、作業者が誤って輪止め装置103の設置を忘れるといったヒューマンエラーを抑制して、車両の逸走防止を図ることが可能となる。
【0083】
また、第3実施形態の安全装置によれば、上記第1実施形態と同様に、車両全体に設置された輪止め装置103の合計設置個数が4個未満(タイヤ車輪5の合計個数未満)であるときに警報作動を実行することで、輪止め装置103の設置忘れや意図的な未設置をより効果的に防止することが可能となる。
【0084】
さらに、第3実施形態の安全装置によれば、上記第1実施形態と同様に、車両全体に4個の輪止め装置103が設置されていたとしても、駐車路面の傾斜角度(車体2の傾斜角度)に応じた適正な配置となっていない場合に警報作動を実行することで、駐車路面が平坦地であるか傾斜地であるかに関らず車両の逸走を効果的に防止することができ、作業の安全性を一層向上させることが可能となる。
【0085】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態に係る安全装置について、図12図14を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、上記第1実施形態と同一の構成(又は同一の機能を有する構成)には同一の番号を用いて重複説明を省略し、主として上記第1実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0086】
安全装置は、図12に示すように、4個の輪止め装置104と、車体傾斜検出器16と、警報装置17と、車両側受信部90と、コントローラ60とを主体に構成されている。
【0087】
輪止め装置104は、図13に示すように、輪止め部材120と、保持部126と、ビーコン送信器150とを備えて構成される。以下の説明において、4個の輪止め装置104を区別する必要がある場合には、便宜上、「輪止め装置104A」、「輪止め装置104B」、「輪止め装置104C」、「輪止め装置104D」と呼称する。
【0088】
ビーコン送信器150は、上記第1実施形態のビーコン送信器130と同様に、例えば送信回路と電池とを内蔵した小型発信モジュールである。このビーコン送信器150は、例えばBluetooth(登録商標)やZigBee(登録商標)などの近距離無線通信規格に基づく周波数帯域のビーコン信号を電波信号として所定の時間間隔で送信する。このビーコン信号には、自己のビーコン送信器150、もしくは、自己のビーコン送信器150が搭載される輪止め装置104を識別するための固有の識別情報(ビーコンID)が含まれる。このビーコン送信器150の電波到達範囲151(図14を参照)は、例えば半径約1mの範囲に設定されている。すなわち、本実施形態では、他のタイヤ車輪5に設置された輪止め装置104のビーコン送信器150から送信されるビーコン信号との混信を避けるために、その電波到達範囲151が半径約1mの範囲となるように送信電波強度が設定されている。なお、以下の説明では、各ビーコン送信器150を区別する必要がある場合には、輪止め装置104Aに搭載されたビーコン送信器150を「ビーコン送信器150A」と呼称し、輪止め装置104Bに搭載されたビーコン送信器150を「ビーコン送信器150B」と呼称し、輪止め装置104Cに搭載されたビーコン送信器150を「ビーコン送信器150C」と呼称し、輪止め装置104Dに搭載されたビーコン送信器150を「ビーコン送信器150D」と呼称する。
【0089】
車両側受信部90は、車体2の左側の前輪5fの近傍に設けられた左前受信器91Aと、車体2の右側の前輪5fの近傍に設けられた右前受信器91Bと、車体2の左側の後輪5rの近傍に設けられた左後受信器91Cと、車体2の右側の後輪5rの近傍に設けられた右後受信器91Dとを備えている。各受信器91A~91Dは、各輪止め装置104のビーコン送信器150と無線通信が可能な無線受信器として構成されている。各受信器91A~91Dは、ビーコン送信器150から送信されるビーコン信号を受信することで、そのビーコン信号に付加されたID情報をビーコン情報としてコントローラ60に送信す
る。なお、以下では、左前受信器91A、右前受信器91B、左後受信器91Cおよび右後受信器91Dを纏めて「受信器91」と総称する場合がある。
【0090】
ここで、前述したとおり、ビーコン送信器150の電波到達範囲151は、例えば半径約1mの範囲に設定されている。そのため、本実施形態では、輪止め装置104(ビーコン送信器150)の設置位置に依らず、ビーコン送信器150の電波到達範囲151内に、2個以上の受信器91が同時に配置されないようになっている。すなわち、1個のビーコン送信器150から送信されるビーコン信号が複数の受信器91で同時に受信されることはなく、1個のビーコン送信器150から送信されるビーコン信号は最寄りの1個の受信器91のみで受信が可能とされる。但し、1個のタイヤ車輪5の前後に輪止め装置104をそれぞれ設置した場合には、それぞれの輪止め装置104のビーコン送信器150の電波到達範囲151内に、そのタイヤ車輪5の近傍にある受信器91が配置される位置関係となるため、その場合には当該1個の受信器91において2個のビーコン送信器150からのビーコン信号を同時に受信して、その2つのビーコン情報をコントローラ60に送信することになる。
【0091】
コントローラ60は、上記第1実施形態と同様に、作動制御部61と、車体傾斜判定部62と、輪止め判定部63と、輪止め設置個数算出部64と、警報作動部65とを有している。なお、作動制御部61、車体傾斜判定部62、輪止め設置個数算出部64,警報作動部65については、上述の第1実施形態等と同様のため、ここでは重複説明を省略して、輪止め判定部63のみを説明する。
【0092】
輪止め判定部63は、各受信器91から取得するビーコン情報に基づいて、各タイヤ車輪5に輪止め装置104が設置されているか否かを判定する。具体的には、輪止め判定部63は、左前受信器91Aから取得するビーコン情報に基づいて左側の前輪5fに設置された輪止め装置104を特定し、右前受信器91Bから取得するビーコン情報に基づいて右側の前輪5fに設置された輪止め装置104を特定し、左後受信器91Cから取得するビーコン情報に基づいて左側の後輪5rに設置された輪止め装置104を特定し、右後受信器91Dから取得するビーコン情報に基づいて右側の後輪5rに設置された輪止め装置104を特定する。
【0093】
ここで、本実施形態では、前述したように、ビーコン送信器150の電波到達範囲151が近距離(例えば半径約1m)に設定されており、互いに異なるタイヤ車輪5に設置された輪止め装置104のビーコン送信器150から送信されるビーコン信号同士が1個の受信器91において混信することがないため、各受信器91から取得したビーコン情報(ビーコンID)に対応するビーコン送信器150(輪止め装置104)が、当該受信器91の最寄りにあるビーコン送信器150(輪止め装置104)であると一義的に判定することができる。
【0094】
以上、第4実施形態の安全装置によれば、輪止め装置104にビーコン送信器150を取り付けるとともに、各タイヤ車輪5の近傍に受信器91を取り付けて、そのビーコン信号を受信した受信器91の近傍にあるタイヤ車輪5に当該輪止め装置104が設置されていることを検出することで、作業者が誤って輪止め装置104の設置を忘れるといったヒューマンエラーを抑制して、車両の逸走防止を図ることが可能となる。
【0095】
また、第4実施形態の安全装置によれば、上記第1実施形態と同様に、車両全体に設置された輪止め装置104の合計設置個数が4個未満(タイヤ車輪5の合計個数未満)であるときに警報作動を実行することで、輪止め装置104の設置忘れや意図的な未設置をより効果的に防止することが可能となる。
【0096】
さらに、第4実施形態の安全装置によれば、上記第1実施形態と同様に、車両全体に4個の輪止め装置104が設置されていたとしても、駐車路面の傾斜角度(車体2の傾斜角度)に応じた適正な配置となっていない場合に警報作動を実行することで、駐車路面が平坦地であるか傾斜地であるかに関らず車両の逸走を効果的に防止することができ、作業の安全性を一層向上させることが可能となる。
【0097】
なお、第4実施形態では、輪止め装置104に搭載されたビーコン送信器150の電波到達距離(電波到達範囲)を近距離(例えば半径約1m)に設定して、互いに異なるタイヤ車輪5に設置された輪止め装置104のビーコン送信器150同士が混信しないように構成したが、上記第3実施形態においても、車両上に搭載されたビーコン送信器81の電波到達距離(電波到達範囲)を近距離(例えば半径約1m)に設定して、各ビーコン送信器81同士が混信しないようにして、各輪止め装置103の送受信器140から取得したビーコン情報(ビーコンID)に対応するビーコン送信器81が、当該輪止め装置103の最寄りにあるビーコン送信器81であると一義的に判定するように構成してもよい。
【0098】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば適宜改良可能である。
【0099】
上記実施形態では、警報作動として、例えば警報ランプや警報ブザー等からなる警報装置17の作動を例示して説明したが、この構成に限定されるものではなく、警報作動として、ジャッキ10f,10rの作動規制やブーム30の作動規制を適用してもよい。つまり、警報作動部65から警報指令信号が出力されたときに、ジャッキ操作又はブーム操作が行われても作動制御部61がその操作信号を受け付けないようにする、あるいは、作動制御部61がジャッキ操作又はブーム操作に基づく操作信号を受け付けたとしても各電磁比例制御バルブを電磁駆動しないようにする、など作動制御部61に対して動作制限が課されるようにすることが好ましい。
【0100】
また、上記実施形態では、本車両に装備される輪止め装置101(103,104)の個数(合計個数)が4個であったが、この構成に限定されるものではなく、5個以上の輪止め装置101(103,104)が装備されていてもよい。その場合には、警報作動部65は、輪止め装置101(103,104)の合計設置個数の判定として、輪止め装置101(103,104)の合計設置個数が4個以上であるか否かを判定し、輪止め装置101(103,104)の合計設置個数が4個未満である場合に警報作動することになる。また、警報作動部65は、輪止め装置101(103,104)の配置位置の判定として、車体傾斜判定部62により車体2が傾斜姿勢である(駐車路面が傾斜地である)と判定されている場合に、全てのタイヤ車輪5に輪止め装置101(103,104)が1個以上設置されているか否かを判定し、輪止め装置101(103,104)の合計設置個数が1個以上設置されていない場合に警報作動することになる。
【0101】
また、上記実施形態では、本発明に係る作業用車両として、トラックマウント式の高所作業車を例示して説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、軌陸作業車や橋梁点検車、クレーン車などの他の作業用車両を適用してもよい。また、上記実施形態では、エンジンの動力をPTO機構(パワーテイクオフ機構)によって取り出して油圧ポンプを駆動するPTO駆動型の高所作業車を例示して説明したが、これに限定されるものではなく、電気駆動型(バッテリ駆動型)の高所作業車や、その両者を具備して動力源を選択的に切り替えるハイブリッド型の高所作業車であってもよい。
【符号の説明】
【0102】
1 高所作業車
2 車体
5 タイヤ車輪
10 ジャッキ装置
16 車体傾斜検出器
17 警報装置
30 ブーム
60 コントローラ
61 作動制御部
62 車体傾斜判定部
63 輪止め判定部
64 輪止め設置個数算出部
65 警報作動部
70 車両側受信部(第1実施形態、第2実施形態)
71 受信器(第1実施形態)
81 ビーコン送信器(第3実施形態)
85 車両側受信部(第3実施形態)
90 車両側受信部(第4実施形態)
91 受信器(第4実施形態)
101 輪止め装置(第1実施形態、第2実施形態)
103 輪止め装置(第3実施形態)
104 輪止め装置(第4実施形態)
120 輪止め部材
130 ビーコン送信器(第1実施形態、第2実施形態)
140 送受信器(第3実施形態)
150 ビーコン送信器(第4実施形態)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14