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特開2024-34700半導体装置および半導体装置の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034700
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】半導体装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
H01L21/304 631
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139136
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北野 三千矢
(72)【発明者】
【氏名】橋本 達也
【テーマコード(参考)】
5F057
【Fターム(参考)】
5F057AA37
5F057BA15
5F057CA14
5F057DA11
5F057EC02
5F057EC05
5F057EC09
5F057FA16
(57)【要約】      (修正有)
【課題】半導体装置の歩留まり改善のために、ウエハと保護テープとの間の密着性を改善する半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、おもて面の外周領域にポリイミド膜の密着層140が設けられたウエハ1を用意する段階と、前記ウエハのおもて面の上方、かつ、密着層上に保護テープ120を貼付する段階と、前記保護テープのおもて面を切削する段階と、前記保護テープを介して前記ウエハを研削装置で保持して、前記ウエハの裏面を研削する段階と、を備える。半導体装置は、ウエハと、前記ウエハのおもて面の中央領域に設けられた半導体デバイスと、おもて面において、前記中央領域を囲む外周領域に設けられたポリイミド膜の密着層と、を備える。
【選択図】図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
おもて面の外周領域に密着層が設けられたウエハを用意する段階と、
前記ウエハのおもて面の上方に保護テープを貼付する段階であって、前記密着層上に前記保護テープを貼付する段階と、
前記保護テープのおもて面を切削する段階と、
前記保護テープを介して前記ウエハを研削装置で保持して、前記ウエハの裏面を研削する段階と、
を備える半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記外周領域は、前記ウエハのおもて面において半導体デバイスが設けられた中央領域を囲む領域である
請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記外周領域の幅は、2mm以上、6mm以下である
請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記ウエハのおもて面において、前記密着層の外周端は、前記ウエハの外周端よりも内側にある
請求項2または3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記密着層は、前記ウエハの外周端から3mm以上、4mm以下の範囲に設けられる
請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記密着層に対する前記保護テープの粘着力は、前記ウエハに対する前記保護テープの粘着力よりも大きい
請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記密着層は、有機薄膜である
請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記密着層は、レジストである
請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記密着層は、ポリイミド膜である
請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記ウエハを用意する段階は、前記外周領域において、前記ウエハの少なくとも半周に前記密着層を形成する段階を有する
請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記ウエハを用意する段階は、前記外周領域において、前記ウエハの全周に前記密着層を形成する段階を有する
請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記密着層の厚さは、0μmよりも大きく、20μm以下である
請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記ウエハの裏面を研削する段階の後に、前記保護テープを除去する段階を備える
請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
ウエハと、
前記ウエハのおもて面の中央領域に設けられた半導体デバイスと、
おもて面において、前記中央領域を囲む外周領域に設けられたポリイミド膜の密着層と、
を備える半導体装置。
【請求項15】
前記密着層は、前記外周領域において、前記ウエハの少なくとも半周に設けられている
請求項14に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記密着層は、前記外周領域において、前記ウエハの全周に設けられている
請求項15に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記密着層は、前記ウエハの外周端から3mm以上、4mm以下の範囲に設けられている
請求項14に記載の半導体装置。
【請求項18】
前記密着層の厚さは、0μmよりも大きく、20μm以下である
請求項14に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「ウエーハのデバイス領域を囲繞する外周余剰領域にのみ環状粘着層を貼着可能な表面保護テープを提供する」と記載されている。特許文献2には、「ウエーハの表面に貼着された該保護テープの基材フィルムの表面全面を粘着材層には達しない範囲でバイト工具28で切削し、表面を平坦に形成する保護テープ切削工程」と記載されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2013-243310号
[特許文献2] 特開2013-21017号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
半導体装置の歩留まり改善のために、ウエハと保護テープとの間の密着性を改善することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、半導体装置の製造方法を提供する。半導体装置の製造方法は、おもて面の外周領域に密着層が設けられたウエハを用意する段階と、前記ウエハのおもて面の上方に保護テープを貼付する段階であって、前記密着層上に保護テープを貼付する段階と、前記保護テープのおもて面を切削する段階と、前記保護テープを介して前記ウエハを研削装置で保持して、前記ウエハの裏面を研削する段階と、を備える。
【0005】
前記外周領域は、前記ウエハのおもて面において半導体デバイスが設けられた中央領域を囲む領域であってよい。
【0006】
前記外周領域の幅は、2mm以上、6mm以下であってよい。
【0007】
前記ウエハのおもて面において、前記密着層の外周端は、前記ウエハの外周端よりも内側にあってよい。
【0008】
前記密着層は、前記ウエハの外周端から3mm以上、4mm以下の範囲に設けられてよい。
【0009】
前記密着層に対する前記保護テープの粘着力は、前記ウエハに対する前記保護テープの粘着力よりも大きくてよい。
【0010】
前記密着層は、有機薄膜であってよい。
【0011】
前記密着層は、レジストであってよい。
【0012】
前記密着層は、ポリイミド膜であってよい。
【0013】
前記ウエハを用意する段階は、前記外周領域において、前記ウエハの少なくとも半周に前記密着層を形成する段階を有してよい。
【0014】
前記ウエハを用意する段階は、前記外周領域において、前記ウエハの全周に前記密着層を形成する段階を有してよい。
【0015】
前記密着層の厚さは、0μmよりも大きく、20μm以下であってよい。
【0016】
方法は、前記ウエハの裏面を研削する段階の後に、前記保護テープを除去する段階を備えてよい。
【0017】
本発明の第2の態様においては、ウエハと、前記ウエハのおもて面の中央領域に設けられた半導体デバイスと、おもて面において、前記中央領域を囲む外周領域に設けられたポリイミド膜の密着層と、を備える半導体装置を提供する。
【0018】
前記密着層は、前記外周領域において、前記ウエハの少なくとも半周に設けられていてよい。
【0019】
前記密着層は、前記外周領域において、前記ウエハの全周に設けられていてよい。
【0020】
前記密着層は、前記ウエハの外周端から3mm以上、4mm以下の範囲に設けられていてよい。
【0021】
前記密着層の厚さは、0μmよりも大きく、20μm以下であってよい。
【0022】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】半導体装置100の製造方法の一例を説明する図である。
図2】半導体装置100の製造方法の一例を説明する図である。
図3A】工程S110~S160終了後のウエハ1の断面図の一例を示す。
図3B】工程S110~S160終了後のウエハ1の断面図の一例を示す。
図3C】ポリイミド膜の密着層140が設けられたウエハ1の上面図の一例を示す。
図3D】ポリイミド膜の密着層140が設けられたウエハ1の上面図の一例を示す。
図3E】レジストの密着層140が設けられたウエハ1の上面図の一例を示す。
図4】保護テープ120が貼付されたウエハ1の断面図の一例を示す。
図5A】保護テープ切削工程S180の開始時におけるウエハ1の断面図の一例を示す。
図5B】保護テープ切削工程S180の実行中におけるウエハ1の断面図の一例を示す。
図5C】保護テープ切削工程S180における切削装置130の上面図の一例を示す。
図5D】保護テープ切削工程S180の完了後におけるウエハ1の断面図の一例を示す。
図6A】裏面研削工程S210の開始時におけるウエハ1の断面図の一例を示す。
図6B】裏面研削工程S210の完了後におけるウエハ1の断面図の一例を示す。
図7】保護テープ120が除去された後のウエハ1の断面図の一例を示す。
図8】比較例に係る半導体製造の製造方法における保護テープ切削工程におけるウエハ1の断面図の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、又、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。また、1つの図面において、同一の機能、構成を有する要素については、代表して符合を付し、その他については符合を省略する場合がある。
【0025】
本明細書においては半導体基板の深さ方向と平行な方向における一方の側を「上」、他方の側を「下」と称する。基板、層またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面をおもて面、他方の面を裏面と称する。「上」、「下」の方向は、重力方向または半導体モジュールの実装時における方向に限定されない。
【0026】
本明細書では、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する場合がある。直交座標軸は、構成要素の相対位置を特定するに過ぎず、特定の方向を限定するものではない。例えば、Z軸は地面に対する高さ方向を限定して示すものではない。なお、+Z軸方向と-Z軸方向とは互いに逆向きの方向である。正負を記載せず、Z軸方向と記載した場合、+Z軸および-Z軸に平行な方向を意味する。本明細書では、半導体基板のおもて面および裏面に平行な直交軸をX軸およびY軸とする。また、半導体基板のおもて面および裏面と垂直な軸をZ軸とする。本明細書では、Z軸の方向を深さ方向と称する場合がある。また、本明細書では、X軸およびY軸を含めて、半導体基板のおもて面および裏面に平行な方向を、水平方向と称する場合がある。
【0027】
本明細書において「同一」または「等しい」のように称した場合、製造ばらつき等に起因する誤差を有する場合も含んでよい。当該誤差は、例えば10%以内である。
【0028】
図1および図2は、半導体装置100の製造方法の一例を説明する図である。図1は、ウエハのおもて面における工程、図2はウエハの裏面における工程を示す。ここでは、ウエハの裏面研削工程およびその関連工程を中心に説明し、他の工程の説明を簡略化または省略している。
【0029】
ウエハの裏面研削工程は、ウエハの裏面を研削して薄化する工程であり、半導体装置の特性向上のために重要な工程である。裏面研削工程中のダメージからウエハを保護するために、裏面研削工程に先立って、ウエハのおもて面に保護テープが貼付される。
【0030】
図1および図2に併せて図3A図7を適宜参照しつつ、半導体装置100の製造方法を説明する。
【0031】
半導体装置100は、ウエハ1を備える。本例におけるウエハ1は、上面視における形状がほぼ円形のシリコン基板である。ウエハ1には、切り出された場合にチップとなる領域が複数個形成される。一例として、ウエハ1の直径は、200±5mmまたは300mm±5mmであるが、この値に限定されるものではない。
【0032】
なお、本明細書において、「半導体装置」は、チップであってよく、あるいは、複数のチップが形成されたウエハであってもよい。半導体装置100は、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)、FWD(Free Wheel Diode)等のダイオードおよびこれらを組み合わせたRC(Reverse Conducting)-IGBT、並びにMOSトランジスタ等を備えてもよい。
【0033】
半導体装置100の製造方法は、熱酸化工程S110、ゲート形成工程S120、不純物注入工程S130、おもて面電極形成工程S140、ポリイミド膜形成工程S150、保護レジスト形成工程S160、保護テープ貼付工程S170、保護テープ切削工程S180、裏面研削工程S210、保護テープ剥離工程S220、不純物注入工程S230、保護レジスト除去工程S240、アニール工程S250および裏面電極形成工程S260を備える。
【0034】
熱酸化工程S110において、ウエハ1を高温の酸素に晒して熱酸化することにより、ウエハ1のおもて面に酸化膜が形成される。この酸化膜はエッチングなどにより部分的に除去してよい。ゲート形成工程S120において、ウエハ1のおもて面をエッチングしてゲートトレンチを形成し、ゲートトレンチの内壁に酸化膜または窒化膜を成膜してゲート絶縁膜を形成した後、ゲート絶縁膜よりも内側を不純物がドープされたポリシリコン等で埋め込むことにより、ゲートが形成される。
【0035】
不純物注入工程S130において、ウエハ1のおもて面21から、レジストマスクを用いて、所定の領域に不純物がイオン注入される。おもて面電極形成工程S140において、ウエハ1のおもて面21の上方におもて面電極3または配線等が形成される。これらの工程により、ウエハ1にトランジスタ等の半導体デバイスのおもて面素子構造が形成される。
【0036】
次に、ポリイミド膜形成工程S150において、ウエハ1のおもて面21の上方に、おもて面素子構造を保護するためのポリイミド膜が形成される。ポリイミド膜形成工程S150は、ウエハ1のおもて面21にポリイミドを塗布する工程と、エッジリンス処理でウエハの外周端近傍および裏面23に回り込んだポリイミドを除去する工程と、中央領域2に塗布されたポリイミドを硬化する工程をと含む。なお、半導体装置100の製造方法は、工程S110~S150に代えて、同様の工程を経たウエハ1を用意する工程を備えてもよい。
【0037】
次に、保護レジスト形成工程S160において、ポリイミド膜5の上方に保護レジスト9が形成される。保護レジスト9は、後続の不純物注入工程S230中に、おもて面素子構造を汚染および破損から保護する。保護レジスト9は、ウエハ1のおもて面21にレジストを垂らしてスピンコートした後、保護レジスト9を設けない領域において有機溶剤によるエッジリンス処理でレジストを溶解除去することによって形成される。あるいは、保護レジスト9は、ウエハ1のおもて面21にスピンコートした感光性レジストを露光または非露光した後、保護レジスト9を設けない領域のレジストを現像液で除去することによって形成されてもよい。
【0038】
図3Aおよび図3Bは、工程S110~S160終了後のウエハ1の断面図の一例を示す。図3Aは、複数のチップが形成されるウエハ1の中央領域2の拡大断面図であり、図3Bは、ウエハ1全体の概略断面図である。ウエハは、複数のチップが形成される中央領域2と、中央領域2を囲む領域を外周領域6とを有する。一例において、外周領域6の幅は、2mm以上、6mm以下である。
【0039】
図3Aは、おもて面素子構造の上方に設けられたおもて面電極3と、おもて面電極3およびウエハ1のおもて面21に接して設けられたポリイミド膜5と、これらを覆って設けられた保護レジスト9とを示す。
【0040】
それぞれのおもて面電極3は、不純物注入領域(不図示)に対応して設けられている。ポリイミド膜5は、隣接するおもて面素子構造の上方に設けられたポリイミド膜5から分離されている。ポリイミド膜5には開口が設けられ、おもて面電極3の少なくとも一部を露出させている。保護レジスト9は、上面視で、ウエハ1の中央領域2の全体を少なくとも覆って設けられている。
【0041】
図3Aからわかるように、ウエハ1の中央領域2では、ウエハ1のおもて面21におもて面電極3、ポリイミド膜5、またはこれらの両方が設けられたことに応じて、これらの構造を覆う保護レジスト9の上面に凹凸が生じている。また、図3Aでは省略しているが、ウエハ1のおもて面21自体にも凹凸が存在する。
【0042】
図3Bは、ウエハ1において、複数のチップが形成される中央領域2と、中央領域2を囲む外周領域6とを示す。図3B以降の図では、簡略化のために、ウエハ1のおもて面21の上方に設けられたおもて面電極3等の構造を省略し、これらの構造による凹凸と、ウエハ1のおもて面21自体の凹凸とをまとめて、ウエハ1のおもて面21の凹凸として示している。また、図示された凹凸の数は例に過ぎず、縮尺も実際とは異なる。
【0043】
ウエハ1の厚さ方向(Z軸方向)において、ウエハ1の裏面23を基準とした厚さの最大値TMAXと最小値TMINとの差をTTV(Total Thickness Variation)という。一例において、ウエハ1のTTVは10μm以下である。
【0044】
本例に係る半導体装置100の製造方法は、外周領域6に密着層140を形成する工程を備える。後述の保護テープ貼付工程S170において貼付される保護テープの密着層140に対する粘着力は、ウエハ1に対する粘着力よりも大きい。つまり、外周領域6に密着層140が設けられていない場合と比べ、本例の半導体装置100では、保護テープ120が密着層140を介してウエハ1のおもて面21により強固に密着する。あるいは、半導体装置100の製造方法は、外周領域6に密着層140を形成する工程に代えて、外周領域6に密着層140が設けられたウエハ1を用意する工程を備えてもよい。
【0045】
密着層140の、ウエハの厚さ方向(Z軸方向)における厚さは、0μmよりも大きく、20μm以下である。密着層140の厚さは、TTV以下であってよい。密着層140の厚さは、10μm以下であってもよい。このような厚さ範囲とすることで、密着層140の形成によるウエハ1のTTV増大を抑制し、裏面研削工程S210において加工厚さ精度への影響を防ぐ。
【0046】
本例の密着層140は、有機薄膜である。本願発明者らが調査したところ、保護テープ120との密着性が良好だったのは有機薄膜であった。一例において、密着層140は、ポリイミド膜である。この場合、密着層140は、ポリイミド膜形成工程S150において、中央領域2に設けられるポリイミド膜5と同じプロセスで形成されてよい。つまり、ポリイミド膜形成工程S150において、エッジリンス処理で除去するポリイミド膜5の範囲を調整することにより、外周領域6に密着層140が形成されてよい。一例において、ポリイミド膜の密着層140が形成される場合、エッジリンス処理でポリイミドが除去される範囲は、ウエハ1の外周端から3mm~7mmの範囲である。これにより、ウエハ1のおもて面21において、密着層140の外周端は、ウエハ1の外周端よりも内側に位置し、ウエハ1の裏面23へのポリイミドの回り込みを防止する。
【0047】
図3Cおよび図3Dは、ポリイミド膜の密着層140が設けられたウエハ1の上面図の一例を示す。図3Cおよび図3Dでは、密着層140が設けられた領域を斜線のハッチングで示す。なお、図3Cおよび図3Dでは、簡略化のため、中央領域2に設けられたポリイミド膜5は省略している。
【0048】
本例の密着層140は、外周領域6において、ウエハの少なくとも半周にわたって形成される。図3Cの密着層140は、外周領域6において、ウエハの全周にわたって形成されており、図3Dの密着層140は、外周領域6において、ウエハの半周にわたって形成されている。密着層140は、外周領域6の中で、後述の保護テープ切削工程S180で切削工具が進入する領域に少なくとも形成される。
【0049】
本例の密着層140は、ポリイミド膜5から分離されていてよい。保護テープ120の剥離を防ぐためには、密着層140をできるだけウエハ1の外周端近くに設けることが望ましい。しかしながら、密着層140がウエハ1の外周端に近過ぎると、密着層140がウエハ1の裏面23側へ回り込んでしまうおそれがある。よって、密着層140とウエハ1の外周端との距離を上述の範囲とすることで、保護テープ120の剥離を防ぎつつ、ウエハ1の裏面23側への密着層140の回り込みを防ぐ事ができる。一例において、密着層140は、ウエハ1の外周端から3mm以上、4mm以下の範囲に設けられる。なお、工程の都合などにより、密着層140はこの範囲外に設けられてもよい。
【0050】
あるいは、密着層140は、レジストであってよい。一例において、密着層140は、レジストである。この場合、密着層140は、保護レジスト形成工程S160において、中央領域2においてポリイミド膜5の上方に設けられる保護レジスト9と同じプロセスで形成されてよい。つまり、保護レジスト形成工程S160において、エッジリンス処理で除去する保護レジスト9の範囲を調整することにより、外周領域6に密着層140が形成されてよい。一例において、レジストの密着層140が形成される場合、エッジリンス処理でレジストが除去される範囲は、ウエハ1の外周端から2mm~6mmの範囲である。これにより、ウエハ1のおもて面21において、密着層140の外周端は、ウエハ1の外周端よりも内側に位置し、ウエハ1の裏面23へのレジストの回り込みを防止する。
【0051】
図3Eは、レジストの密着層140が設けられたウエハ1の上面図の一例を示す。図3Eでは、密着層140が設けられた領域を斜線のハッチングで示す。本例の密着層140は、中央領域2の全体と、外周領域6の少なくとも一部とにわたって形成される。つまり、本例では、保護レジスト9が密着層140を兼ねている。
【0052】
次に、保護テープ貼付工程S170において、ウエハ1のおもて面21に保護テープ120が貼付される。図4は、保護テープ120が貼付されたウエハ1の断面図の一例を示す。保護テープは、一般に、BG(バックグラインド)テープと称される。保護テープ120は、おもて面121および裏面123を有する。保護テープ120は、裏面123が密着層140と接するように、ウエハ1のおもて面21に貼付される。保護テープ120は、後述する裏面研削工程S210において、おもて面素子構造を汚染および破損から保護する。
【0053】
一例において、保護テープ120は、基材および粘着剤が積層された構造を有する。保護テープ120の直径は、ウエハの直径より大きくてよい。保護テープ120の厚さは、100~300μmである。保護テープ120は、おもて面21の全面を覆ってよい。貼付された保護テープ120のおもて面121には、ウエハ1のおもて面21の凹凸に従って、凹凸が生じる。
【0054】
次に、保護テープ切削工程S180において、保護テープ120のおもて面121が切削される。図5Aは、保護テープ切削工程S180の開始時におけるウエハ1の断面図の一例を示す。図5Bは、保護テープ切削工程S180の実行中におけるウエハ1の断面図の一例を示す。図5Cは、保護テープ切削工程S180における切削装置130の上面図の一例を示す。図5Dは、保護テープ切削工程S180の完了後におけるウエハ1の断面図の一例を示す。
【0055】
切削装置130は、テーブル132および切削工具134を有する。テーブル132は、ウエハを載置して支持する台であり、一例において、チャックテーブルである。ウエハは、ウエハ1の裏面23を介して、テーブル132上に支持される。切削工具134は、刃先を有する工具であり、一例において、ダイヤモンドバイトである。切削工具134は、テーブル132の上面と平行な面(XY面)上を、回転方向D2に向かって高速回転する。
【0056】
テーブル132は、ウエハ1の裏面23を支持した状態で、テーブル移動方向D1(Y軸方向)に移動し、高速回転する切削工具134の下方に配置される。テーブル132が切削工具134の下方に配置されると、切削工具134の刃先は進入方向D3でウエハの上方に進入して保護テープ120と接触し、回転方向D2に沿って保護テープ120を切削する。一例において、保護テープ120の切削厚さは、保護テープ120のおもて面121から10μm以上、50μm以下である。
【0057】
なお、図5Cでは、密着層140が外周領域6の全周にわたって設けられたウエハ(図3C)を用いる例を示しているが、これに限定されない。図3Dおよび図3Eのウエハが用いられてもよい。
【0058】
テーブル132が、高速回転する切削工具134の下方で、テーブル移動方向D1およびその逆方向への移動を繰り返すことにより、保護テープ120のおもて面121が平坦化される。これにより、図5Dに示すように、ウエハ1の裏面23から保護テープ120のおもて面121までの距離が均一となる。
【0059】
次に、裏面研削工程S210において、保護テープ120を介してウエハを研削装置150で保持して、ウエハ1の裏面23が研削される。図6Aは、裏面研削工程S210の開始時におけるウエハ1の断面図の一例を示す。図6Bは、裏面研削工程S210の完了後におけるウエハ1の断面図の一例を示す。
【0060】
研削装置150は、テーブル152および砥石154を有する。テーブル152は、ウエハを載置して支持する台であり、一例において、チャックテーブルである。ウエハは、保護テープ120の平坦化されたおもて面121を介して、テーブル152上に支持される。砥石154は、テーブル152上に支持されたウエハ1の裏面23を研削する。
【0061】
裏面研削工程S210において、ウエハ1の裏面23から保護テープ120のおもて面121までの距離が均一化し、ウエハ1の裏面23が平坦化される。裏面研削工程S210は、研削されたウエハ1の裏面23を、エッチングすることで加工歪みを取り去る工程を含んでよい。
【0062】
従来、裏面研削工程は、保護テープのおもて面の凹凸を残したまま保護テープをテーブル上に支持して行われていた。そのため、裏面研削工程において、テーブルから半導体基板の裏面までの距離を均一化しても、保護テープのおもて面の凹凸が半導体基板の厚さに反映され、裏面研削工程後に半導体基板の裏面に凹凸が生じることがあった。
【0063】
これに対し、本例では、裏面研削工程S210より前に保護テープ切削工程S180を行い、テーブル152が保護テープ120の平坦化されたおもて面121を支持することにより、テーブル152からウエハ1の裏面23までの距離を均一化することにより、ウエハ1の裏面23を平坦化することができる。
【0064】
また、図6Bに示すように、裏面研削工程S210において、砥石154が外周領域6を残して裏面23を研削することにより、外周領域6において、裏面23から突出した凸部24が、ウエハの外周端に沿って全周にわたり形成されてよい。凸部24を設けることにより、ウエハの反りが低減され、強度が向上するので、ウエハの取り扱いが容易となり、さらなる薄化が可能となる。
【0065】
次に、保護テープ剥離工程S220において、保護テープ120が剥離により除去される。図7は、保護テープ120が除去された後のウエハ1の断面図の一例を示す。保護テープ120を裏面研削工程S210の終了後速やかに除去することにより、裏面研削工程S210で保護テープ120に付着した汚れ、削り屑等を除去し、後続の工程を円滑に進めることができる。
【0066】
次に、不純物注入工程S230において、ウエハ1の裏面23から、レジストマスクを用いて、所定の領域に不純物がイオン注入される。保護レジスト除去工程S240において、ウエハ1のおもて面21の上方に設けられた保護レジスト9が除去される。除去手段の例は、保護レジスト形成工程S160で説明した通りであり、ここでは説明を省略する。おもて面21の外周領域6に設けられた密着層140がレジストである場合、密着層140も併せて除去されてよい。
【0067】
アニール工程S250において、不純物注入工程S130および不純物注入工程S230において注入された不純物が活性化され、拡散する。裏面電極形成工程S260において、ウエハ1の裏面23の下方に裏面電極または配線等が形成される。これらの工程により、ウエハ1にトランジスタ等の半導体デバイスの裏面素子構造が形成される。
【0068】
図8は、比較例に係る半導体製造の製造方法における保護テープ切削工程におけるウエハ1の断面図の一例を示す。比較例に係る半導体製造の製造方法は、ウエハのおもて面の外周領域に密着層を形成する工程を備えていない。その他の工程は、本例に係る半導体製造の製造方法と共通するので、説明を省略する。
【0069】
従来、保護テープ切削工程において、切削工具134の進入時に、保護テープ120の外周端に接触した切削工具134が、保護テープ120をウエハ1のおもて面21から剥離させることがあった。この原因としては、切削工具134の刃先が鈍化していること、保護テープ120の粘着力が弱いこと等が挙げられる。保護テープ120が剥離すると、保護テープ貼付工程のやり直しまたはウエハ自体の廃棄が必要となり、コスト上昇または歩留まりの低下を招く。
【0070】
保護テープ120の剥離を防止するために、一般的に用いられる保護テープよりも粘着力の大きいテープを用いることが考えられるが、裏面研削工程後の保護テープ剥離工程において、保護テープが剥離せずウエハを損傷させるおそれがある。
【0071】
本例に係る半導体製造の製造方法においては、おもて面21の外周領域6に密着層140が設けられたウエハを用意することにより、保護テープ120とウエハ1との密着性が向上するので、保護テープ切削工程S180における保護テープ120の剥離を抑制することができる。
【0072】
密着層140は、従来のおもて面素子構造の形成工程と同じ工程、すなわち、ポリイミド膜形成工程S150または保護レジスト形成工程S160で形成することができるので、別途プロセスを増やす必要がない。そのため、粘着力の強い保護テープを用いる場合と比較して、コスト上昇を抑制することができる。
【0073】
また、図3Cのように、ポリイミド膜5の密着層140が外周領域6にのみ設けられている場合、密着層140が設けられていない領域(例えば、中央領域2)に対する保護テープ120の粘着力は、密着層140に対する保護テープ120の粘着力よりも小さいので、裏面研削工程S210後には保護テープ120を容易に剥離することができるので、保護テープ剥離工程S220のスループットを向上させる事により、さらなるコストダウンが可能である。
【0074】
さらに、図3Dのように、ポリイミド膜5の密着層140が外周領域6の一部にのみ設けられている場合、保護テープ120の粘着力を増大させた領域がさらに限定的になるので、裏面研削工程S210後には保護テープ120をさらに容易に剥離することができ、さらなるコストダウンが可能である。
【0075】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0076】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0077】
1・・・ウエハ、2・・・中央領域、3・・・おもて面電極、5・・・ポリイミド膜、6・・・外周領域、9・・・保護レジスト、21・・・おもて面、23・・・裏面、24・・・凸部、120・・・保護テープ、121・・・おもて面、123・・・裏面、100・・・半導体装置、130・・・切削装置、132・・・テーブル、134・・・切削工具、140・・・密着層、150・・・研削装置、152・・・テーブル、154・・・砥石
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図7
図8