(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034701
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】地盤強度算出装置、地盤強度算出方法、および地盤強度算出プログラム
(51)【国際特許分類】
E02D 1/02 20060101AFI20240306BHJP
E02D 7/02 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
E02D1/02
E02D7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139137
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】591063486
【氏名又は名称】一般財団法人先端建設技術センター
(71)【出願人】
【識別番号】000129758
【氏名又は名称】株式会社ケー・エフ・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 直人
(72)【発明者】
【氏名】阿波 宏司
(72)【発明者】
【氏名】山本 拓治
【テーマコード(参考)】
2D043
2D050
【Fターム(参考)】
2D043AA01
2D043AC01
2D043BA10
2D050AA06
2D050CB12
(57)【要約】
【課題】一定の体積の地盤を掘削するのに要した打撃力のエネルギーを算出することにより、より直接的に地盤強度を評価する。
【解決手段】本発明に係る地盤強度算出装置は、各時刻における掘削深度の単位時間当たりの変化量と、各時刻における削孔具の加速度より算出される単位時間当たりの打撃回数と、ダウンザホールハンマへと供給される圧縮空気のエア圧とを用いて、地盤の単位体積当たりの打撃力のエネルギーを演算する。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダウンザホールハンマにより削孔具に回転力と断続的な打撃力とを加えることで地盤を掘削する掘削機を用いて、前記地盤の強度を計測する地盤強度算出装置であって、
各時刻における前記削孔具の掘削深度を取得する掘削深度取得部と、
各時刻における前記削孔具の加速度を取得する加速度取得部と、
コンプレッサから前記ダウンザホールハンマへと供給される圧縮空気のエア圧を取得するエア圧取得部と、
前記掘削深度ごとに、前記地盤の単位体積当たりの前記打撃力のエネルギーを演算する演算部と、
を備える地盤強度算出装置。
【請求項2】
前記演算部は、前記エア圧を用いて、1回の打撃当たりの前記打撃力のエネルギーを算出する、
請求項1に記載の地盤強度算出装置。
【請求項3】
前記演算部は、
前記各時刻における前記削孔具の加速度から、前記削孔具による単位時間当たりの打撃回数を計測し、
前記1回の打撃当たりの前記打撃力のエネルギーに、前記単位時間当たりの打撃回数を乗じて、前記単位時間当たりの前記打撃力のエネルギーを算出する、
請求項2に記載の地盤強度算出装置。
【請求項4】
各時刻における単位時間当たりの前記掘削深度の変化量を取得する変化量取得部をさらに備え、
前記演算部は、前記各時刻における単位時間当たりの前記掘削深度の変化量と、前記単位時間当たりの前記打撃力のエネルギーとを用いて、前記各時刻における、前記地盤の単位体積当たりの前記打撃力のエネルギーを算出する、
請求項3に記載の地盤強度算出装置。
【請求項5】
前記演算部は、前記各時刻における掘削深度と、前記各時刻における、前記地盤の単位体積当たりの前記打撃力のエネルギーとから、前記掘削深度ごとの、前記地盤の単位体積当たりの前記打撃力のエネルギーを算出する、
請求項4に記載の地盤強度算出装置。
【請求項6】
ダウンザホールハンマにより削孔具に回転力と断続的な打撃力とを加えることで地盤を掘削する掘削機を用いて、コンピュータが、前記地盤の強度を計測する地盤強度算出方法であって、
各時刻における前記削孔具の掘削深度を取得する掘削深度取得ステップと、
各時刻における前記削孔具の加速度を取得する加速度取得ステップと、
コンプレッサから前記ダウンザホールハンマへと供給される圧縮空気のエア圧を取得するエア圧取得ステップと、
前記掘削深度ごとに、前記地盤の単位体積当たりの前記打撃力のエネルギーを演算する演算ステップと、
を実行する地盤強度算出方法。
【請求項7】
ダウンザホールハンマにより削孔具に回転力と断続的な打撃力とを加えることで地盤を掘削する掘削機を用いて、前記地盤の強度を計測する地盤強度算出プログラムであって、
コンピュータに、
各時刻における前記削孔具の掘削深度を取得する掘削深度取得ステップと、
各時刻における前記削孔具の加速度を取得する加速度取得ステップと、
コンプレッサから前記ダウンザホールハンマへと供給される圧縮空気のエア圧を取得するエア圧取得ステップと、
前記掘削深度ごとに、前記地盤の単位体積当たりの前記打撃力のエネルギーを演算する演算ステップと、
を実行させるための地盤強度算出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤強度算出装置、地盤強度算出方法、および地盤強度算出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁、建物等の構造物の基礎として、および地滑り等の土塊の移動を抑制するために、鋼管杭が広く利用されている。この鋼管杭の施工では、鋼管杭の先端が、支持層となる強固な地盤まで到達していることが重要である。そのため、従来から、鋼管杭の先端が支持層まで到達していることを確認する様々な方法が開発されてきた。
【0003】
例えば、特許文献1では、削孔具による単位時間当たりの打撃回数を削孔具の掘削速度で除した後、削孔具の単位時間当たりの最大加速度振幅を乗じて算出する強度指標によって、地盤を掘削しつつ、地盤の強度を正確に判断する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の手法により算出される強度指標値は、地盤に対しての強度換算値であり、地盤強度を反映したものではあるが、直接的に地盤強度に相当するものではない。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、一定の体積の地盤を掘削するのに要した打撃力のエネルギーを算出することにより、より直接的に地盤強度を評価できる、地盤強度算出装置および地盤強度算出プログラム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。
【0008】
すなわち、第1の観点に係る地盤強度算出装置は、ダウンザホールハンマにより削孔具に回転力と断続的な打撃力とを加えることで地盤を掘削する掘削機を用いて、前記地盤の強度を計測する地盤強度算出装置であって、各時刻における前記削孔具の掘削深度を取得する掘削深度取得部と、各時刻における前記削孔具の加速度を取得する加速度取得部と、コンプレッサから前記ダウンザホールハンマへと供給される圧縮空気のエア圧を取得するエア圧取得部と、前記掘削深度ごとに、前記地盤の単位体積当たりの前記打撃力のエネルギーを演算する演算部と、を備える。
【0009】
当該構成によれば、前記地盤強度算出装置は、前記掘削深度ごとに、前記地盤の単位体積当たりの前記打撃力のエネルギーを演算する。ここで、係る単位体積当たりの打撃力のエネルギーは、一定の体積の地盤を掘削するのに要した打撃力のエネルギーを表している。それゆえ、前記地盤強度算出装置は、係る単位体積当たりの打撃力のエネルギーを掘削深度ごとに算出することにより、従来の地盤強度算出装置に比べて、より直接的に、掘削深度ごとに地盤の強度を評価することができる。
【0010】
第2の観点に係る地盤強度算出装置は、上記第1の観点に係る地盤強度算出装置において前記演算部は、前記エア圧を用いて、1回の打撃当たりの(つまり、1ストローク当たりの)前記打撃力のエネルギーを算出してもよい。当該構成によれば、前記地盤強度算出装置は、前記エア圧を用いて、1回の打撃当たりの打撃力のエネルギーを精緻に算出することができる。
【0011】
第3の観点に係る地盤強度算出装置は、上記第2の観点に係る地盤強度算出装置において前記演算部は、前記各時刻における前記削孔具の加速度から、前記削孔具による単位時間当たりの打撃回数を計測してもよく、前記1回の打撃当たりの打撃力のエネルギーに、前記単位時間当たりの打撃回数を乗じて、前記単位時間当たりの前記打撃力のエネルギーを算出してもよい。当該構成によれば、前記地盤強度算出装置は、前記各時刻における前記削孔具の加速度から、前記削孔具による単位時間当たりの打撃回数を計測することができる。そして、前記地盤強度算出装置は、計測した「単位時間当たりの打撃回数」を、前記1回の打撃当たりの打撃力のエネルギーに乗じて、前記単位時間当たりの前記打撃力のエネルギーを精緻に算出することができる。
【0012】
第4の観点に係る地盤強度算出装置は、上記第3の観点に係る地盤強度算出装置において、各時刻における単位時間当たりの前記掘削深度の変化量を取得する変化量取得部をさらに備えてもよい。例えば、前記変化量取得部は、前記各時刻における前記削孔具の掘削深度から、前記各時刻における単位時間当たりの前記掘削深度の変化量を取得してもよい。そして、前記演算部は、前記各時刻における単位時間当たりの前記掘削深度の変化量と、前記単位時間当たりの前記打撃力のエネルギーとを用いて、前記各時刻における、前記地盤の単位体積当たりの前記打撃力のエネルギーを算出してもよい。当該構成によれば、前記地盤強度算出装置は、前記各時刻における単位時間当たりの前記掘削深度の変化量と、前記単位時間当たりの前記打撃力のエネルギーとを用いて、前記各時刻における前記地盤の単位体積当たりの前記打撃力のエネルギーを精緻に算出できる。
【0013】
第5の観点に係る地盤強度算出装置は、上記第4の観点に係る地盤強度算出装置において前記演算部は、前記各時刻における掘削深度と、前記各時刻における、前記地盤の単位体積当たりの前記打撃力のエネルギーとから、前記掘削深度ごとの、前記地盤の単位体積当たりの前記打撃力のエネルギーを算出してもよい。当該構成によれば、前記地盤強度算出装置は、前記各時刻における掘削深度と、前記各時刻における、前記地盤の単位体積当たりの前記打撃力のエネルギーとから、前記掘削深度ごとの、前記地盤の単位体積当たりの前記打撃力のエネルギーを精緻に算出することができる。
【0014】
上記各観点に係る地盤強度算出装置の別の態様として、本発明の一側面は、以上の各構成の全部またはその一部を実現する情報処理方法であってもよいし、プログラムであってもよいし、このようなプログラムを記憶した、コンピュータその他装置、機械等が読み取り可能な記憶媒体であってもよい。ここで、コンピュータ等が読み取り可能な記憶媒体とは、プログラム等の情報を、電気的、磁気的、光学的、機械的、または、化学的作用によって蓄積する媒体である。また、本発明の一側面は、上記いずれかの形態に係る地盤強度算出装置により構成される分類システムであってもよい。
【0015】
例えば、第6の観点に係る地盤強度算出方法は、ダウンザホールハンマにより削孔具に回転力と断続的な打撃力とを加えることで地盤を掘削する掘削機を用いて、コンピュータが、前記地盤の強度を計測する地盤強度算出方法であって、各時刻における前記削孔具の掘削深度を取得する掘削深度取得ステップと、各時刻における前記削孔具の加速度を取得する加速度取得ステップと、コンプレッサから前記ダウンザホールハンマへと供給される圧縮空気のエア圧を取得するエア圧取得ステップと、前記掘削深度ごとに、前記地盤の単位体積当たりの前記打撃力のエネルギーを演算する演算ステップと、を実行する。
【0016】
また、第7の観点に係る地盤強度算出プログラムは、ダウンザホールハンマにより削孔具に回転力と断続的な打撃力とを加えることで地盤を掘削する掘削機を用いて、前記地盤の強度を計測する地盤強度算出プログラムであって、コンピュータに、各時刻における前記削孔具の掘削深度を取得する掘削深度取得ステップと、各時刻における前記削孔具の加速度を取得する加速度取得ステップと、コンプレッサから前記ダウンザホールハンマへと供給される圧縮空気のエア圧を取得するエア圧取得ステップと、前記掘削深度ごとに、前記地盤の単位体積当たりの前記打撃力のエネルギーを演算する演算ステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、一定の体積の地盤を掘削するのに要した打撃力のエネルギーを算出することにより、より直接的に地盤強度を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明が適用される場面の一例を模式的に示す。
【
図2】本発明の一実施形態に係る掘削機の構成の一例を例示する。
【
図3】
図2の掘削機に用いられる地盤強度算出装置のハードウェア構成の一例を例示する。
【
図4】
図3の地盤強度算出装置の機能構成の一例を例示する。
【
図5】エンコーダによって測定された時刻ごとの掘削深度の波形データの一例、および、加速度センサによって測定された時刻ごとの振動の波形データの一例を例示する。
【
図6】
図5の掘削深度の波形データから抽出された、掘削期間中の掘削深度の波形データの一例を例示する。
【
図7】
図5の振動の波形データから抽出された、掘削期間中の振動の波形データの一例を例示する。
【
図8】
図7の波形データからノイズを除去した、掘削期間中の振動の波形データの一例を例示する。
【
図9】
図8の波形データから周波数解析によって得られた周波数と加速度振幅との関係を示すグラフの一例を例示する。
【
図10】
図9のグラフから得られた、掘削期間における、単位時間毎の打撃回数を示すグラフの一例を例示する。
【
図11】
図9のグラフから抽出した、各単位時間における、最も大きな加速度振幅の頻度分布を示すグラフの一例を例示する。
【
図12】ピストンを介して削孔ビットへと伝達される力について説明する図である。
【
図13】
図3の地盤強度算出装置が出力する、各掘削深度における、一定の体積の地盤を掘削するのに要した打撃力のエネルギー等を示す情報の一例を例示する。
【
図14】
図3の地盤強度算出装置が実行する、地盤強度算出処理の処理手順の一例を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。ただし、以下で説明する本実施形態は、あらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。つまり、本発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。なお、本実施形態において登場するデータを自然言語により説明しているが、より具体的には、コンピュータが認識可能な疑似言語、コマンド、パラメタ、マシン語等で指定される。
【0020】
§1 適用例
まず、
図1を用いて、本発明が適用される場面について説明する。
図1は、本実施形態に係る地盤強度算出装置1の適用場面の一例を模式的に例示する。
図1の例では、地盤強度算出装置1は、鋼管杭を打設する位置CPを掘削する掘削機2に設けられ、例えば、地盤の掘削の進行に伴って地盤の強度を算出可能に構成される。
図1に示す例には、鋼管杭を打設する位置CPに掘削機2が配置されている。この掘削機2は、ダウンザホールハンマ25により削孔具(後述する削孔ビット28)に打撃を加えて地盤を掘削するタイプの掘削機である。オペレータは、操作盤221を介して掘削機2の駆動装置22を操作することで、対象の位置CPを掘削し、鋼管5を打設する削孔を形成することができる。掘削の際には、エア供給ホース9を介してコンプレッサ7から駆動装置22へと圧縮空気が供給される。係る圧縮空気により、ダウンザホールハンマ25は、削孔ビット28に打撃を加えるようになっており、係る圧縮空気のエア圧P
airはエア圧力計8によって計測される。地盤強度算出装置1は、このような掘削機2のガイドセル21に取り付けられた情報処理装置である。
【0021】
地盤強度算出装置1は、エア圧Pairを用いて1ストローク(1回)の打撃当たりの打撃力のエネルギーEstを算出し、さらに、エネルギーEstに所定時間(単位時間)毎の打撃回数Nhを乗じて、所定時間当たりの打撃力のエネルギーEptを算出する。その上で、地盤強度算出装置1は、エネルギーEptと掘削深度の単位時間(例えば、1秒)当たりの変化量Apとを用いて、地盤の単位体積当たりの打撃力のエネルギー(打撃掘削体積比エネルギー)であるEbitを算出する。係るEbitは、一定の体積の地盤を掘削するのに要した打撃力のエネルギーを表している。それゆえ、地盤強度算出装置1は、係るEbitを掘削深度ごとに算出することにより、従来の地盤強度算出装置に比べて、より直接的に、掘削深度ごとの地盤の強度を評価することができる。以下、地盤強度算出装置1および掘削機2について、その詳細に説明する。
【0022】
§2 構成例
[掘削機]
次に、掘削機2について、
図2も参照しつつ詳細に説明する。
図2は、本実施形態に係る掘削機2の削孔機構の一例を例示する。
図2に示すように、この掘削機2は、ダウンザホールハンマ25によって、いわゆる回転打撃式で掘削する削孔機構を備えている。
【0023】
より詳細に説明すると、この掘削機2は、地盤上に立設される柱状のガイドセル21と、当該ガイドセル21に対してチェーン駆動により上下方向に昇降自在に取り付けられた駆動装置22と、を備えている。駆動装置22の回転軸には、打設する鋼管5内に挿入可能な中空の削孔ロッド23が取り付けられており、削孔ロッド23の先端には、ガイドスリーブ24を介して、ダウンザホールハンマ25が取り付けられている。さらに、ダウンザホールハンマ25には、ガイドデバイス26を介して、削孔ビット28が取り付けられている。削孔ビット28は、本発明の「削孔具」に相当する。一方、外管であり杭となる鋼管5の先端には、ケーシングシュー51が取り付けられている。ケーシングシュー51は、その先方に削孔ビット28を突出させた状態でガイドデバイス26と係合するように構成されている。
【0024】
前述の通り、掘削の際には、駆動装置22に、コンプレッサ7から圧縮空気が供給される。駆動装置22は、削孔ロッド23を所定方向に回転させながら、当該削孔ロッド23内に圧縮空気を送り込む。削孔ロッド23内に送り込まれた圧縮空気は、ガイドスリーブ24を介してダウンザホールハンマ25内のシリンダに送入される。この圧縮空気により、ダウンザホールハンマ25は、その内部のピストン251(ハンマピストン)を往復させて、削孔ビット28を含むビット部分に打撃を加えるようになっている。加えて、削孔ロッド23の回転により削孔ビット28も回転している。この回転および打撃により、掘削面が削られていく。すなわち、掘削機2は、削孔ビット28を回転させながら、ダウンザホールハンマ25により削孔ビット28に打撃を加えることで地盤を掘削する。
【0025】
ここで、削孔ビット28は、偏心拡径構造を有している。すなわち、掘削の際に、削孔ビット28を所定方向(例えば、左ネジ方向)に回転させると、ガイドデバイス26がケーシングシュー51に係合し、削孔ビット28は、ケーシングシュー51の先から突出した後に、径方向外側に飛び出す、すなわち、拡径する。これにより、削孔ビット28は、鋼管5よりもやや大きい径の孔を掘削する。削孔ビット28に設けられているリーマ27は、削孔ビット28が地盤を掘削している際に、偏心拡径して削孔を横方向に拡げる。
【0026】
なお、外管である鋼管5は、打撃力も回転力も受けないが、ケーシングシュー51がガイドデバイス26に係合していることによって、削孔ビット28の推進と共に牽引されて、地中に貫入打設されていく。また、削孔ビット28が地中に進むにつれて、駆動装置22も下方に移動していく。
【0027】
一方、掘削を終了して、削孔ビット28を回収する際には、削孔ビット28を上記とは反対方向に回転させる。これにより、ガイドデバイス26とケーシングシュー51との係合は外れると共に、削孔ビット28の拡径は解除される。そのため、鋼管5内を挿通させて、削孔ビット28を回収することができる。以上のような構成により、本実施形態に係る掘削機2は、鋼管5を打設する孔を掘削することができる。
【0028】
[地盤強度算出装置]
(ハードウェア構成)
次に、
図3を用いて、地盤強度算出装置1のハードウェア構成の一例を説明する。
図3は、本実施形態に係る地盤強度算出装置1のハードウェア構成の一例を模式的に例示する。
図3に示すように、この地盤強度算出装置1は、制御部11、制御部11で実行されるプログラム121等を記憶する記憶部12、および、外部装置と接続するための外部インタフェース13が電気的に接続されたコンピュータである。制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を含む。なお、
図3では、外部インタフェースを「外部I/F」と記載している。
【0029】
この地盤強度算出装置1には、各外部インタフェース13を介して、エンコーダ15、加速度センサ16、および、エア圧力計8が接続されている。
【0030】
エンコーダ15は、掘削機2(特に、削孔ビット28)の掘削深度を取得するために用いられる。このエンコーダ15には、各時刻における掘削深度を測定可能な公知のエンコーダが適宜採用されてよい。例えば、エンコーダ15として、ムトーエンジニアリング社製のD1000Z等のワイヤ式リニアエンコーダを利用することができる。
【0031】
ワイヤ式リニアエンコーダは、ワイヤの引出し量で装置の移動距離を計測するエンコーダである。このワイヤ式リニアエンコーダによれば、駆動装置22を昇降させるチェーンの移動量を計測することができる。
図1および
図2に示されるように、エンコーダ15は、例えば、ガイドセル21の上端付近に取り付けられる。
【0032】
チェーンの移動量は、駆動装置22の降下量に対応し、駆動装置22の降下量は、掘削機2の削孔ビット28の貫入量(掘削深度)に対応する。そのため、地盤強度算出装置1は、ワイヤ式リニアエンコーダ(エンコーダ15)の測定データ(例えば、後述する第1データDt1)に基づいて、掘削機2の掘削深度(例えば、各時刻における、掘削深度)を算出する。また、地盤強度算出装置1は、各時刻における掘削深度から、単位時間当たりのチェーンの移動量を算出し、係る単位時間当たりのチェーンの移動量を、各時刻における「掘削深度の単位時間当たりの変化量Ap」として取得することができる。すなわち、地盤強度算出装置1は、エンコーダ15から、各時刻における削孔ビット28の掘削深度、および、各時刻における「掘削深度の単位時間当たりの変化量Ap」のそれぞれを示す情報(データ)を取得することができる。
【0033】
一方、加速度センサ16は、地盤の打撃を行う掘削機2(特に、削孔ビット28)の単位時間当たりの打撃回数Nhを取得するために用いられる。この加速度センサ16には、対象物の加速度を測定可能な公知の加速度センサが適宜採用されてよい。例えば、加速度センサ16として、テクノサイエンス社製のBL100を利用することができる。
【0034】
本実施形態では、加速度センサ16は、ガイドセル21の上端側に取り付けられている。ガイドセル21には、駆動装置22および削孔ロッド23を介して、ダウンザホールハンマ25による打撃の振動が伝達する。すなわち、ガイドセル21は、ダウンザホールハンマ25が削孔ビット28を打撃するのに応じて振動している。
【0035】
したがって、ガイドセル21に取り付けた加速度センサ16によって、ダウンザホールハンマ25の打撃に応じた振動を測定することができる。そのため、地盤強度算出装置1は、加速度センサ16の測定データ(例えば、後述する第2データDt2)に基づいて、削孔ビット28の打撃回数Nhをカウントし、打撃回数情報を取得することができる。加速度センサは安価に入手可能であるため、本実施形態によれば、地盤強度算出装置1の製造コストを抑えることができる。
【0036】
なお、加速度センサ16を取り付ける位置は、このような例に限定されなくてもよく、削孔ビット28の打撃による振動を測定可能な位置であれば、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。例えば、加速度センサ16は、駆動装置22に取り付けられてもよい。
【0037】
エア圧力計8は、エア供給ホース9を介してコンプレッサ7から駆動装置22へと供給される圧縮空気のエア圧Pair(例えば、ピストン251の1ストローク当たりの(つまり、1回の打撃当たりの)、エア圧Pair)を計測するために用いられる。詳細は後述するが、地盤強度算出装置1は、加速度センサ16によって計測される振動から、各打撃を特定することができ、つまり、各打撃の時刻を特定することができる。そこで、地盤強度算出装置1は、各打撃の時刻と、エア圧力計8によって計測される経時的なエア圧Pairとから、1ストローク当たり(つまり、各打撃)のエア圧Pairを特定することができる。例えば、地盤強度算出装置1は、各打撃の時刻に対応するエア圧Pairを、「1ストローク当たりの(つまり、各打撃の)エア圧Pair」として特定する。このエア圧力計8には、圧縮空気のエア圧を測定可能な公知のエア圧計が適宜採用されてよい。本実施形態では、エア圧力計8は、エア供給ホース9中を流れる圧縮空気のエア圧Pairを計測可能な位置に設けられている。
【0038】
例えば、エア圧力計8は、コンプレッサ7から掘削機2(駆動装置22)へと圧縮空気を供給する過程において、掘削機2側(つまり、ダウンザホールハンマ25に近い側)で、圧縮空気のエア圧を所定の間隔(例えば、256Hz)で測定する。ここで、一般的に、コンプレッサ7側で設定されたエア圧を維持するように、コンプレッサ7は駆動装置22へ送る圧縮空気の風量を自動調整するが、掘削機2側で圧縮空気を消費することにより、圧縮空気のエア圧が或る程度(例えば、10%程度)低下する。そこで、エア圧力計8は、所定の間隔でエア圧を測定し、測定したエア圧を、「コンプレッサ7から駆動装置22へと供給される圧縮空気のエア圧Pair」として地盤強度算出装置1に通知する(出力する)。つまり、エア圧力計8は、掘削機2が圧縮空気を消費した分のエア圧の変動(エア圧の低下)を精密に測定し、「コンプレッサ7から駆動装置22へと供給される圧縮空気のエア圧Pair」を示す情報として、その測定結果を地盤強度算出装置1に通知できる。
【0039】
また、記憶部12は、例えば、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等の補助記憶装置である。記憶部12に記憶されるプログラム121は、地盤強度算出装置1の制御部11に各構成要素を制御させ、後述する地盤強度算出に関する各処理を実行させるためのプログラムである。このプログラム121は、本発明の「地盤強度算出プログラム」に相当する。このプログラム121は、記憶媒体91に記憶されていてもよい。
【0040】
記憶媒体91は、コンピュータその他装置、機械等が記録されたプログラム等の情報を読み取り可能なように、当該プログラム等の情報を、電気的、磁気的、光学的、機械的または化学的作用によって蓄積する媒体である。本実施形態に係る地盤強度算出装置1は、外部インタフェース13を介してドライブ18に接続可能であり、このドライブ18により記憶媒体91に記憶された情報を読み取ることで、プログラム121を取得してもよい。
【0041】
なお、
図3では、記憶媒体91の一例として、CD(Compact Disk)、DVD(Digital Versatile Disk)等のディスク型の記憶媒体が例示されている。しかしながら、記憶媒体91の種類は、ディスク型に限定される訳ではなく、ディスク型以外であってもよい。ディスク型以外の記憶媒体として、例えば、フラッシュメモリ等の半導体メモリを挙げることができる。
【0042】
本実施形態に係る地盤強度算出装置1は、以上のようなハードウェア構成を有する。ただし、地盤強度算出装置1の具体的なハードウェア構成に関して、実施の形態に応じて、適宜、構成要素の省略、置換、および追加が可能である。例えば、制御部11は、複数のプロセッサを含んでもよい。また、地盤強度算出装置1は、提供されるサービス専用に設計された情報処理装置の他、デスクトップ型PC(Personal Computer)、タブレットPC等の汎用の情報処理装置であってもよい。さらに、地盤強度算出装置1は、1または複数台の情報処理装置により構成されてもよい。
【0043】
(ソフトウェア構成)
次に、
図4を用いて、地盤強度算出装置1の機能構成の一例を説明する。
図4は、本実施形態に係る地盤強度算出装置1の機能構成の一例を模式的に例示する。本実施形態では、地盤強度算出装置1の制御部11が、記憶部12に記憶されたプログラム121をRAMに展開する。そして、制御部11は、RAMに展開されたプログラム121をCPUにより解釈および実行して、各構成要素を制御する。これにより、地盤強度算出装置1は、掘削深度取得部111、変化量取得部112、加速度取得部113、エア圧取得部114、演算部115、出力部116、および、履歴作成部117を備えるコンピュータとして機能する。以下、これらの機能構成について説明する。
【0044】
掘削深度取得部111は、削孔ビット28の掘削深度を取得し、特に、各時刻における削孔ビット28の掘削深度を取得する。例えば、掘削深度取得部111は、各時刻における削孔ビット28の掘削深度を示す第1データDt1(深度-時刻(経過時間)データ)を取得する。第1データDt1は、エンコーダ15によって計測された、各時刻における削孔ビット28の掘削深度(移動量)を示す情報であってもよい。第1データDt1は、例えば、
図5の上段に例示するような、各時刻における削孔ビット28の掘削深度を示すデータである。掘削深度取得部111は、第1データDt1を、CSV形式のデータとして取得してもよい(読み込んでもよい)。
【0045】
掘削深度取得部111は、取得した第1データDt1から「掘削時(掘削期間)におけるデータ」を抽出し、すなわち、「掘削期間中の各時刻における、削孔ビット28の掘削深度」を示す抽出深度データEddを抽出する。例えば、エンコーダ15から取得する第1データDt1には、「杭鋼管(鋼管5)を接続するために駆動装置22をいったん上に引き上げてから、再度、削孔打設していくまでの時間(期間)」などの非掘削期間のデータが含まれていると考えられる。そこで、掘削深度取得部111は、取得した第1データDt1から非掘削期間のデータを除去して、「掘削期間中の各時刻における、削孔ビット28の掘削深度」を示す抽出深度データEddを抽出する。抽出深度データEddは、例えば、
図6に例示するような、「掘削期間中の各時刻における、削孔ビット28の掘削深度」を示すデータである。掘削深度取得部111は、第1データDt1から抽出した抽出深度データEddを、演算部115に出力する。掘削深度取得部111は、抽出深度データEddを、演算部115に加えて変化量取得部112に出力してもよい。
【0046】
変化量取得部112は、掘削深度の単位時間当たりの変化量Apを取得し、特に、各時刻における掘削深度の単位時間当たりの変化量Ap(例えば、掘削期間中の各時刻における、掘削深度の単位時間当たりの変化量Ap)を取得する。変化量取得部112は、取得した「掘削期間中の各時刻における、掘削深度の単位時間当たりの変化量Ap」を、演算部115に出力する。
【0047】
変化量取得部112は、「掘削期間中の各時刻における、削孔ビット28の掘削深度」を示す抽出深度データEddから、「掘削期間中の各時刻における、掘削深度の単位時間当たりの変化量Ap」を取得してもよい(計測してもよい)。例えば、変化量取得部112は、「掘削期間中の各時刻における、削孔ビット28の掘削深度」を示す抽出深度データEddから、掘削期間中の各時刻における、単位時間当たりの削孔ビット28の移動量(掘削深度の変化量)を計測する。変化量取得部112は、計測した「掘削期間中の各時刻における、単位時間当たりの削孔ビット28の移動量」を「掘削期間中の各時刻における、掘削深度の単位時間当たりの変化量Ap」として取得する。
【0048】
加速度取得部113は、削孔ビット28の加速度A
bitを取得し、特に、各時刻における削孔ビット28の加速度A
bitを取得する。例えば、加速度取得部113は、各時刻における削孔ビット28の加速度A
bitを示す第2データDt2(加速度-時刻(経過時間)データ)を取得する。第2データDt2は、加速度センサ16によって計測された、各時刻における削孔ビット28の加速度A
bitを示す情報であってもよい。第2データDt2は、例えば、
図5の下段に例示するような、各時刻における削孔ビット28の加速度A
bitを示すデータである。加速度取得部113は、第2データDt2を、CSV形式のデータとして取得してもよい(読み込んでもよい)。
【0049】
加速度取得部113は、取得した第2データDt2から掘削時(掘削期間)のデータを抽出し、すなわち、「掘削期間中の各時刻における、削孔ビット28の加速度A
bit」を示す抽出加速度データEdaを抽出する。第1データDt1と同様に、加速度センサ16から取得する第2データDt2には、非掘削期間のデータが含まれていると考えられる。そこで、加速度取得部113は、取得した第2データDt2から非掘削期間のデータを除去して、「掘削期間中の各時刻における、削孔ビット28の加速度A
bit」を示す抽出加速度データEdaを抽出する。抽出加速度データEdaは、例えば、
図7に例示するような、「掘削期間中の各時刻における、削孔ビット28の加速度A
bit」を示すデータである。
【0050】
加速度取得部113は、「掘削期間中の各時刻における、削孔ビット28の加速度A
bit」を示す抽出加速度データEdaからノイズを除去し、例えば、フィルタを適用してノイズを除去する。係るフィルタの一例として、1~30Hzの周波数帯域のみを通過させるバンドパスフィルタを挙げることができる。ノイズ除去後の抽出加速度データEdaを
図8に例示する。加速度取得部113は、ノイズ除去後の抽出加速度データEdaを、演算部115に出力する。
【0051】
上述の通り、掘削深度取得部111は、各時刻における削孔ビット28の掘削深度を示す第1データDt1(深度-時刻(経過時間)データ)から、「掘削期間中の各時刻における、削孔ビット28の掘削深度」を示す抽出深度データEddを抽出する。また、加速度取得部113は、各時刻における削孔ビット28の加速度A
bitを示す第2データDt2(加速度-時刻(経過時間)データ)から、「掘削期間中の各時刻における、削孔ビット28の加速度A
bit」を示す抽出加速度データEdaを抽出する。例えば、掘削深度取得部111および加速度取得部113は、それぞれ、時刻の変化に対して深度および加速度A
bitの少なくとも一方の変化がない期間のデータを、「非掘削期間」のデータとして、第1データDt1および第2データDt2から除去してもよい。また、掘削深度取得部111および加速度取得部113は、それぞれ、所定の掘削深度まで達した時刻から、係る所定の掘削深度よりも浅い掘削深度が表れる時刻までの期間のデータを、「非掘削期間」のデータとして、第1データDt1および第2データDt2から除去してもよい。さらに、掘削深度取得部111および加速度取得部113は、それぞれ、加速度A
bitが所定期間以上「0」である期間のデータを、「非掘削期間」のデータとして、第1データDt1および第2データDt2から除去してもよい。
図5に示す例では、時刻t0~t1、t2~t3、t4~t5の期間が「掘削時(掘削期間)」とされ、時刻t1~t2、t3~t4、t5~の期間は、「非掘削期間」とされる。そこで、掘削深度取得部111は、第1データDt1における、時刻t0~t1、t2~t3、t4~t5の期間のデータを、抽出深度データEddとして取得する(抽出する)。また、加速度取得部113は、第2データDt2における、時刻t0~t1、t2~t3、t4~t5の期間のデータを、抽出加速度データEdaとして取得する(抽出する)。
【0052】
エア圧取得部114は、コンプレッサ7からダウンザホールハンマ25へと供給される圧縮空気のエア圧Pairを示すデータを取得し、例えば、1ストローク当たりの(つまり、1回の打撃当たりの)エア圧Pairを示すデータを取得する。エア圧取得部114が取得するエア圧Pair示すデータは、エア圧力計8によって計測された「コンプレッサ7からダウンザホールハンマ25へと供給される圧縮空気のエア圧Pair」を示す情報であってもよい。例えば、エア圧取得部114は、エア圧力計8から、コンプレッサ7からダウンザホールハンマ25へと供給される圧縮空気の、1ストローク当たりのエア圧Pairを示すデータを取得してもよい。エア圧取得部114は、エア圧Pairを示すデータを、CSV形式のデータとして取得してもよい(読み込んでもよい)。エア圧取得部114は、掘削深度取得部111および加速度取得部113と同様に、エア圧力計8から取得する「各時刻におけるエア圧Pairを示すデータ」から、「掘削時(掘削期間中)」の「(1ストローク当たりの)エア圧Pairを示すデータ」を抽出してもよい。すなわち、エア圧取得部114は、「(1ストローク当たりの)エア圧Pairを示すデータ」から、「非掘削期間」のデータを除去して、「掘削期間中」の「(1ストローク当たりの)エア圧Pairを示すデータ」を抽出してもよい。エア圧取得部114は、コンプレッサ7からダウンザホールハンマ25へと供給される圧縮空気のエア圧Pairを示す情報(データ)を、演算部115に出力する。例えば、エア圧取得部114は、「1ストローク当たりのエア圧Pairを示すデータ(特に、掘削期間中の、1ストローク当たりのエア圧Pairを示すデータ)」を、演算部115に出力する。
【0053】
演算部115は、掘削深度ごとに、地盤の単位体積当たりの打撃力のエネルギーを示すEbitを演算する。すなわち、演算部115は、掘削深度ごとに、削孔ビット28による単位時間当たりの打撃回数Nhと、エア圧Pairとを用いて、地盤の単位体積当たりの打撃力のエネルギーEbitを演算する。具体的には、演算部115は、「掘削期間中の各時刻における、削孔ビット28の加速度Abit」から、「掘削期間中の各時刻における、削孔ビット28の単位時間(例えば、1秒)毎の打撃回数Nh」を計測する。また、演算部115は、掘削期間中の1ストローク当たりのエア圧Pairを用いて、掘削期間中の1ストローク当たり(つまり、1回の打撃当たり)の打撃力のエネルギーを示す打撃力のエネルギーEstを算出する。そして、演算部115は、1ストローク当たりの打撃力のエネルギーEstに「掘削期間中の各時刻における、削孔ビット28の単位時間(例えば、1秒)毎の打撃回数Nh」を乗じて、「掘削期間中の各時刻における、単位時間当たりの打撃力のエネルギーEpt」を算出する。演算部115は、係る「掘削期間中の各時刻における、単位時間当たりの打撃力のエネルギーEpt」と「掘削深度の単位時間当たりの変化量Ap」とを用いて、地盤の単位体積当たりの打撃力のエネルギー(打撃掘削体積比エネルギー)であるEbitを算出する。
【0054】
(各時刻における、単位時間毎の打撃回数の計測)
演算部115は、「掘削期間中の各時刻における、削孔ビット28の加速度Abit」を示す抽出加速度データEdaから、「各時刻における、削孔ビット28による単位時間(例えば、1秒)毎の打撃回数Nh」を計測する。例えば、演算部115は、ノイズ除去後の抽出加速度データEdaから、「各時刻における、削孔ビット28による単位時間毎の打撃回数Nh」を計測する。以下、その詳細を説明する。
【0055】
前述の通り、掘削機2には、加速度センサ16が設けられており、加速度センサ16は、削孔ビット28の打撃に応じた振動(加速度A
bit)を測定する。加速度取得部113は、加速度センサ16によって測定された各時刻における振動(加速度A
bit)を、第2データDt2として取得し、取得した第2データDt2から抽出加速度データEdaを抽出し、さらに、ノイズを除去する。演算部115は、ノイズ除去後の抽出加速度データEdaによって示される、掘削期間中の加速度(加速度振幅)の波形に対して、単位時間(例えば、1秒)毎にFFT等の周波数解析を行う。周波数解析に際して演算部115は、短時間フーリエ変換(Short-time Fourier transform、Short-term Fourier transform、STFT)を用いてもよい。係る周波数解析により、演算部115は、掘削期間中の、単位時間毎の周波数と加速度A
bit(加速度振幅)との関係を示す情報を特定する。演算部115が周波数解析により特定する「掘削期間における、単位時間毎の周波数と加速度振幅との関係を示す情報」は、例えば、
図9に例示するグラフによって示される情報であってもよい。
図9に例示するグラフは、演算部115が上述の周波数解析により特定する、「掘削期間における、単位時間毎の周波数と加速度振幅との関係」の一例を示している。
【0056】
そして、演算部115は、係る「掘削期間における、単位時間毎の周波数と加速度振幅との関係」を示す情報から、「各単位時間(例えば1秒)において、最も大きな加速度振幅(最大加速度)」を抽出する。さらに、演算部115は、係る最大加速度(最大加速度振幅)の周波数を特定する。つまり、演算部115は、「各単位時間において、最も加速度振幅が大きい周波数」を特定する。係る「各単位時間において、最も加速度振幅が大きい周波数」は、「各単位時間における(つまり、単位時間毎の)打撃回数Nh」と見なすことができる。すなわち、加速度振幅が最大であるということは、削孔ビット28による打撃力のエネルギーが最も高いこと、つまり、実際に打撃を行っていることを意味する。そのため、演算部115は、「掘削期間における、単位時間毎の周波数と加速度振幅との関係」を示す情報から、各打撃を特定することができ、例えば、各打撃の時刻を特定することができる。そして、削孔ビット28による単位時間毎の打撃回数Nhは、単位時間毎の振動回数、つまり周波数として現れる。そのため、各単位時間において加速度振幅が最大である周波数は、単位時間毎の削孔ビット28による打撃回数Nhと見なすことができる。
図10は、上述の手法により、演算部115が「掘削期間における、単位時間毎の周波数と加速度振幅との関係」を示す情報から算出した、「掘削期間における、単位時間毎の削孔ビット28による打撃回数Nh」を示す図である。
【0057】
ここで、演算部115は、「掘削期間における、単位時間毎の削孔ビット28による打撃回数Nh」を計測するに際して、抽出した最大加速度から異常データを除去してもよい。例えば、演算部115は、閾値Thを設定して、係る閾値Th以下の最大加速度を示すデータを、「掘削期間における、単位時間毎の削孔ビット28による打撃回数Nh」を計測するに際して、ノイズ除去後の抽出加速度データEdaから除去してもよい。演算部115は、閾値Thを、以下のように設定してもよい。
【0058】
すなわち、演算部115は、「掘削期間における、単位時間毎の周波数と加速度振幅との関係」を示す情報から抽出した「各単位時間(例えば1秒)における、最も大きな加速度振幅(最大加速度)」の頻度分布(最大加速度頻度分布)を算出する。
図11は、演算部115が算出する最大加速度頻度分布の一例を示す図である。演算部115は、
図11に例示されるような最大加速度頻度分布から、最大加速度が現地盤よりも小さくなるスライム掘削等の異常データを除去するための閾値Thを設定する。
図11に示す例では、演算部115は、紙面左端の点線で示した楕円で囲まれるデータを異常データとし、係る異常データを除去するための閾値Thを設定する。そして、演算部115は、設定した閾値Thよりも大きな最大加速度(最大加速度振幅)の周波数から、「単位時間毎の削孔ビット28による打撃回数Nh」を計測する。
【0059】
(1ストローク当たりの打撃力のエネルギーの算出)
演算部115は、掘削期間中の1ストローク当たりのエア圧Pairを用いて、掘削期間中の1ストローク当たり(つまり、1回の打撃当たり)の打撃力のエネルギーを示す打撃力のエネルギーEstを算出する。例えば、演算部115は、打撃力のエネルギーEstを、コンプレッサ7からダウンザホールハンマ25へと供給される圧縮空気のエア圧Pairから算出する。以下、演算部115による打撃力のエネルギーEstの算出について、その詳細を説明する。
【0060】
図12に示すように、圧縮空気の圧力(エア圧)P
air(MPa=N/mm
2)がピストン251(ハンマピストン)内を通過することにより伝達される力F
air[N]は、ピストン251の直径(ピストン内直径)をΦ[mm]として、以下の数式(1)により表わされる。
【数1】
【0061】
この力F
airが、ピストン251(質量M
piston[kg])を各ストロークにおいてLs[mm]動かした時の速度でもって、削孔ビット28(質量M
bit[kg])に作用すると考える。今、初速を0とし、エア圧P
airにより、ピストン251の速度V
pistonを求めると、以下のようになる。すなわち、運動方程式(力=質量×加速度)により、先ず以下の数式(2)が成立する。
【数2】
【0062】
したがって、ピストン251の速度V
pistonは、以下の数式(3)によって表すことができる。
【数3】
【0063】
そして、各ストロークにおいてL
s[mm]移動するのに必要な時間t
sは、以下の数式(4)、数式(5)、および、数式(6)により算出される。
【数4】
【数5】
【数6】
【0064】
したがって、ピストン251の速度V
pistonは、以下の数式(7)で表される。
【数7】
【0065】
今、ピストン251が削孔ビット28に衝突する時は、一次弾性衝突であり、削孔ビット28は静止しているとすれば、削孔ビット28の速度V
bitは、以下の数式(8)で表される。
【数8】
【0066】
削孔ビット28の速度V
bitが得られたので、1ストローク当たりの打撃力のエネルギーE
stは、以下の数式(9)で表される。
【数9】
【0067】
以上に説明した通り、地盤強度算出装置1(演算部115)は、1ストローク(1回の打撃)当たりの打撃力のエネルギーEstを、削孔ビット28の質量Mbit[kg]と、削孔ビット28の速度Vbitとにより算出することができる。そして、数式(1)~(8)を用いて説明した通り、速度Vbitは、エア圧Pairを用いて算出することができる。具体的には、演算部115は、エア圧Pair、ピストン251の直径φ、削孔ビット28の質量Mbit、ピストン251の質量Mpiston、および、1ストロークにおけるピストン251の移動距離Lsによって、削孔ビット28の速度Vbitを算出することができる。つまり、地盤強度算出装置1(例えば、演算部115)は、掘削期間中の1ストローク当たりのエア圧Pairを用いて、例えば、エア圧Pairを用いて算出される速度Vbitを用いて、1ストローク当たりの打撃力のエネルギーEstを算出することができる。
【0068】
特に、演算部115が「1ストローク当たりの打撃力のエネルギーを示す打撃力のエネルギーEst」を算出するのに用いるエア圧Pairは、上述の通り、単位時間(例えば、1秒)に対して十分に短い所定の間隔(例えば、256Hz)で測定されたものである。そのため、係るエア圧Pairは、掘削機2が掘削により消費したエア圧の変動分(エア圧の低下分)を高精度に示している。そこで、演算部115は、掘削機2が掘削により消費したエア圧の変動分を高精度に示すエア圧Pairを用いて、「1ストローク当たりの打撃力のエネルギーを示す打撃力のエネルギーEst」を精緻に算出することができる。
【0069】
(単位時間当たりの打撃力のエネルギーの算出)
演算部115は、上述の方法によって「掘削期間中の、1ストローク当たりの打撃力のエネルギーEst」を求めると、さらに、「掘削期間中の各時刻における、単位時間当たりの打撃力のエネルギーEpt」を算出する。すなわち、演算部115は、1ストローク当たりの打撃力のエネルギーEstに、「掘削期間中の各時刻における、削孔ビット28の単位時間(例えば、1秒)毎の打撃回数Nh」を乗じて、「掘削期間中の各時刻における、単位時間当たりの打撃力のエネルギーEpt」を算出する。
【0070】
(単位体積当たりの打撃力のエネルギー(打撃掘削体積比エネルギー)の算出)
演算部115は、掘削期間中の各時刻における、地盤の単位体積当たりの打撃力のエネルギー(打撃掘削体積比エネルギー)であるEbitを算出する。演算部115は、「掘削期間中の各時刻における、単位時間当たりの打撃力のエネルギーEpt」と、変化量取得部112により取得された「掘削深度の単位時間当たりの変化量Ap」とを用いて、掘削期間中の各時刻における、打撃掘削体積比エネルギーEbitを算出する。例えば、演算部115は、単位時間当たりの打撃力のエネルギーEptに、掘削深度の単位時間当たりの変化量Apと、削孔ビット28による削孔径とを乗じて、「掘削期間中の各時刻における、打撃掘削体積比エネルギーEbit」を算出する。
【0071】
(各掘削深度における単位体積当たりの打撃力のエネルギーの算出)
演算部115は、「掘削期間中の各時刻における、削孔ビット28の掘削深度」を示す抽出深度データEddと、「掘削期間中の各時刻における、打撃掘削体積比エネルギーEbit」とから、各掘削深度における単位体積当たりの打撃力のエネルギーEbitを算出する。演算部115は、算出した「各掘削深度における単位体積当たりの打撃力のエネルギー(打撃掘削体積比エネルギー)Ebit」を出力部116に通知する。「各掘削深度における単位体積当たりの打撃力のエネルギーEbit」は、「各掘削深度における(つまり、掘削深度毎の)、打撃掘削体積比エネルギーEbit」と言い換えてもよい。「各掘削深度における単位体積当たりの打撃力のエネルギー(打撃掘削体積比エネルギー)Ebit」は、「各掘削深度における、一定の体積の地盤を掘削するのに要した打撃力のエネルギー」を表している。
【0072】
演算部115は、さらに、変化量取得部112が取得した「掘削期間中の各時刻における掘削深度の単位時間当たりの変化量Ap」と、「(掘削期間中の)各時刻における削孔ビット28の掘削深度」とから、以下の情報を生成してもよい。すなわち、演算部115は、「各掘削深度における、掘削深度の単位時間当たりの変化量Ap(掘進速度)を示す情報」を生成してもよい。演算部115は、生成した「各掘削深度における、掘削深度の単位時間当たりの変化量Apを示す情報」を出力部116に通知(出力)してもよい。
【0073】
出力部116は、演算部115によって算出された「各掘削深度における単位体積当たりの打撃力のエネルギーEbit」を出力し、例えば、外部の表示装置等(一例を挙げれば、操作盤221)に出力して、係る情報を表示させる。
【0074】
また、出力部116は、演算部115により生成された「各掘削深度における、掘削深度の単位時間当たりの変化量Apを示す情報」を、「各掘削深度における打撃掘削体積比エネルギーE
bitを示す情報」と併せて、外部の表示装置等に出力してもよい。
図13は、出力部116が出力する、「各掘削深度における打撃掘削体積比エネルギーE
bitを示す情報」等の一例を示す図である。
【0075】
履歴作成部117は、例えば、演算部115が生成した「各掘削深度における打撃掘削体積比エネルギーEbitを示す情報」を、記憶部12等の記憶装置に保存する。また、履歴作成部117は、演算部115が生成した「各掘削深度における、掘削深度の単位時間当たりの変化量Apを示す情報」等を、「各掘削深度における打撃掘削体積比エネルギーEbitを示す情報」と併せて、記憶装置に保存してもよい。
【0076】
なお、本実施形態では、これらの機能がいずれも汎用のCPUによって実現される例を説明している。しかしながら、これらの機能の一部または全部が、1または複数の専用のプロセッサにより実現されてもよい。また、地盤強度算出装置1の機能構成に関して、実施形態に応じて、適宜、機能の省略、置換、および追加が行われてもよい。例えば、「各掘削深度における打撃掘削体積比エネルギーEbitを示す情報」等を保存しない場合には、履歴作成部117は省略されてもよい。各機能に関しては後述する動作例で詳細に説明する。
【0077】
§3 動作例
次に、
図14を用いて、地盤強度算出装置1の動作例を説明する。
図14は、本実施形態に係る地盤強度算出装置1による地盤強度算出の処理手順の一例を例示する。以下で説明する処理手順は、本発明の「地盤強度算出方法」に相当する。ただし、以下で説明する処理手順は一例に過ぎず、各処理は可能な限り変更されてよい。
【0078】
(ステップS110)
まず、ステップS110では、制御部11は、掘削深度取得部111、加速度取得部113、および、エア圧取得部114として機能し、第1データDt1、第2データDt2、および、圧縮空気のエア圧Pairを示すデータを取得する。第1データDt1(深度-時刻(経過時間)データ)は、各時刻における削孔ビット28の掘削深度を示すデータである。第2データDt2(加速度-時刻(経過時間)データ)は、各時刻における削孔ビット28の加速度Abitを示すデータである。圧縮空気のエア圧Pairを示すデータは、コンプレッサ7からダウンザホールハンマ25へと供給される圧縮空気のエア圧Pairを示すデータである。例えば、制御部11は、CSV形式の第1データDt1、第2データDt2、および、圧縮空気のエア圧Pairを示すデータを読み込む。ステップS110は、本発明の「掘削深度取得ステップ」、「加速度取得ステップ」、および、「エア圧取得ステップ」の一例である。
【0079】
(ステップS120)
ステップS120では、制御部11は、掘削深度取得部111および加速度取得部113として機能し、第1データDt1および第2データDt2のそれぞれから、掘削時(掘削期間)のデータを抽出する。すなわち、制御部11は、第1データDt1から非掘削期間のデータを除去して、「掘削期間中の各時刻における、削孔ビット28の掘削深度」を示す抽出深度データEddを抽出する。また、制御部11は、第2データDt2から非掘削期間のデータを除去して、「掘削期間中の各時刻における、削孔ビット28の加速度Abit」を示す抽出加速度データEdaを抽出する。
【0080】
(ステップS130)
ステップS130では、制御部11は、加速度取得部113として機能し、S120の抽出後の加速度-時刻データから、つまり、抽出加速度データEdaから、ノイズを除去する。例えば、制御部11は、抽出加速度データEdaにバンドパスフィルタ(1~30Hz)を適用してノイズを除去する。
【0081】
(ステップS140)
ステップS140では、制御部11は、演算部115として機能し、ノイズ除去後の加速度-時刻データに対して、つまり、ノイズ除去後の抽出加速度データEdaに対して、周波数解析を実行する。例えば、制御部11は、ノイズ除去後の抽出加速度データEdaに対し、単位時間(例えば、1秒)毎にFFT(STFT)をかけ、周波数と加速度Abitとの関係を解析する。
【0082】
(ステップS150)
ステップS150では、制御部11は、演算部115として機能し、S140の解析によって特定した「単位時間毎の周波数と加速度Abit(加速度振幅)との関係」から、単位時間毎の最大加速度を抽出し、打撃回数Nhと加速度Abitとの関係を特定する。すなわち、制御部11は、抽出した最大加速度(最大加速度振幅)の周波数から、「単位時間毎の削孔ビット28による打撃回数Nh」を計測する。
【0083】
(ステップS160)
ステップS160では、制御部11は、演算部115として機能し、ステップS150で抽出した最大加速度の頻度分布(最大加速度頻度分布)を算出し、異常データを除去するための閾値Thを設定する。例えば、制御部11は、最大加速度頻度分布を描いて、係る最大加速度頻度分布に基づいて、最大加速度が現地盤よりも小さくなるスライム掘削等の異常データを除去するための閾値Thを設定する。制御部11は、設定した閾値Th以下の最大加速度のデータを、単位時間毎の打撃回数Nhを計測する際に参照するデータから除去してもよい(除外してもよい)。すなわち、制御部11は、設定した閾値Thよりも大きな最大加速度(最大加速度振幅)の周波数から、「単位時間毎の削孔ビット28による打撃回数Nh」を計測してもよい。
【0084】
(ステップS170)
ステップS170では、制御部11は、変化量取得部112として機能し、掘削深度の単位時間当たりの変化量Apを示すデータを取得する。例えば、制御部11は、掘削期間中の各時刻における、掘削深度の単位時間当たりの変化量Apを示すデータを取得する。制御部11は、「掘削期間中の各時刻における、削孔ビット28の掘削深度」を示す抽出深度データEddから、掘削深度の単位時間当たりの変化量Apを計測してもよい。
【0085】
(ステップS181)
ステップS181では、制御部11は、演算部115として機能し、コンプレッサ7からダウンザホールハンマ25へと供給される圧縮空気のエア圧Pairを用いて、1ストローク当たり(つまり、1回の打撃当たり)の打撃力のエネルギーEstを算出する。上述の通り、制御部11は、例えば、エア圧Pairに基づいて算出される速度Vbitを用いて、1ストローク当たりの打撃力のエネルギーEstを算出する。
【0086】
(ステップS182)
ステップS182では、制御部11は、演算部115として機能し、単位時間当たりの打撃力のエネルギーEptを算出する。すなわち、制御部11は、S181において算出した1ストローク当たりの打撃力のエネルギーEstに、S150において計測した単位時間毎の打撃回数Nhを乗じて、単位時間当たりの打撃力のエネルギーEptを算出する。
【0087】
(ステップS183)
ステップS183では、制御部11は、演算部115として機能し、「単位時間当たりの打撃力のエネルギーEpt」と、掘削深度の単位時間当たりの変化量Apとを用いて、地盤の単位体積当たりの打撃力のエネルギー(打撃掘削体積比エネルギー)Ebitを算出する。すなわち、制御部11は、単位時間当たりの打撃力のエネルギーEptに、掘削深度の単位時間当たりの変化量Ap(×削孔ビット28による削孔径)を乗じて、地盤の単位体積当たりの打撃力のエネルギー(打撃掘削体積比エネルギー)Ebitを算出する。制御部11は、係る地盤の単位体積当たりの打撃力のエネルギーEbitを、掘削期間中の各時刻について算出する。そして、演算部115は、「掘削期間中の各時刻における、打撃掘削体積比エネルギーEbit」と、「掘削期間中の各時刻における、削孔ビット28の掘削深度」とから、各掘削深度における単位体積当たりの打撃力のエネルギーEbitを算出する。ステップS140、S150、S181~S183は、本発明の「演算ステップ」の一例である。
【0088】
(ステップS190)
ステップS190では、制御部11は、出力部116として機能し、S183にて生成した「各掘削深度における、単位体積当たりの打撃力のエネルギーEbit」を出力する。すなわち、制御部11は、各時刻における掘削深度と、ステップS183において算出した「(各時刻における)地盤の単位体積当たりの打撃力のエネルギー(打撃掘削体積比エネルギー)Ebit」とから、各掘削深度における、単位体積当たりの打撃力のエネルギーEbitを出力する。制御部11は、「各掘削深度における、掘削深度の単位時間当たりの変化量Apを示す情報」等を、「各掘削深度における、単位体積当たりの打撃力のエネルギーEbit」と併せて出力してもよい。
【0089】
<その他>
なお、上記処理手順について、実施の形態に応じて、適宜、ステップの省略、置換、および追加が可能である。例えば、掘削期間中のデータへの抽出、ノイズ除去、および、スライム掘削等の異常データを除去するための閾値Thの設定を行なわない場合、上記ステップS120、S130、S160の処理は省略されてもよい。
【0090】
また、本実施形態に係る地盤強度算出装置1には、スピーカ、ディスプレイ等の出力装置が無線或いは有線で接続していてもよい。この場合、制御部11は、出力装置を介して、「掘削深度毎の、単位体積当たりの打撃力のエネルギーEbitを示す情報」および「掘削深度毎の、掘削深度の単位時間当たりの変化量Apを示す情報」等を出力してもよい。これにより、オペレータは、出力される情報に基づいて、掘削している地盤の強度を確認しながら、操作盤221を操作して、掘削機2による鋼管5の打設を行うことができる。
【0091】
以上に説明した通り、本実施形態に係る地盤強度算出方法は、掘削機2を用いて、地盤強度算出装置1(コンピュータ)が地盤の強度を計測する地盤強度算出方法である。掘削機2は、ダウンザホールハンマ25により削孔ビット28(削孔具)に回転力と断続的な打撃力とを加えることで地盤を掘削する。本実施形態に係る地盤強度算出方法は、掘削深度取得ステップ(S110)と、加速度取得ステップ(S110)と、エア圧取得ステップ(S110)と、を実行する。掘削深度取得ステップは、各時刻における削孔ビット28の掘削深度を示す第1データDt1(深度-時刻(経過時間)データ)を取得する。加速度取得ステップは、各時刻における削孔ビット28の加速度Abitを示す第2データDt2(加速度-時刻(経過時間)データ)を取得する。エア圧取得ステップは、コンプレッサ7からダウンザホールハンマ25へと供給される圧縮空気のエア圧Pairを示すデータを取得する。本実施形態に係る地盤強度算出方法は、さらに、「掘削深度ごとに、地盤の単位体積当たりの打撃力のエネルギーEbitを演算する」演算ステップ(S140、S150、S181~S183)を実行する。
【0092】
[特徴]
以上の通り、本実施形態に係る地盤強度算出装置1は、ダウンザホールハンマ25により削孔ビット28(削孔具)に回転力と断続的な打撃力とを加えることで地盤を掘削する掘削機2を用いて、地盤の強度を計測する地盤強度算出装置である。地盤強度算出装置1は、掘削深度取得部111、加速度取得部113、エア圧取得部114、および、演算部115を備える。掘削深度取得部111は、各時刻における削孔ビット28の掘削深度を示す第1データDt1(深度-時刻(経過時間)データ)を取得する。加速度取得部113は、各時刻における削孔ビット28の加速度Abitを示す第2データDt2(加速度-時刻(経過時間)データ)を取得する。エア圧取得部114は、コンプレッサ7からダウンザホールハンマ25へと供給される圧縮空気のエア圧Pairを示すデータを取得する。演算部115は、掘削深度ごとに、地盤の単位体積当たりの打撃力のエネルギーEbitを演算する。
【0093】
当該構成によれば、地盤強度算出装置1は、掘削深度ごとに、地盤の単位体積当たりの打撃力のエネルギーEbitを演算する。ここで、係る単位体積当たりの打撃力のエネルギーEbitは、一定の体積の地盤を掘削するのに要した打撃力のエネルギーを表している。それゆえ、地盤強度算出装置1は、係る単位体積当たりの打撃力のエネルギーEbitを掘削深度ごとに算出することにより、従来の地盤強度算出装置に比べて、より直接的に、掘削深度ごとに地盤の強度を評価することができる。
【0094】
演算部115は、エア圧Pairを用いて、1ストローク当たり(つまり、1回の打撃当たり)の打撃力のエネルギーを示す打撃力のエネルギーEstを算出する。当該構成によれば、地盤強度算出装置1は、エア圧Pairを用いて、1回の打撃当たりの打撃力のエネルギーEstを精緻に算出することができる。数式(1)~(9)を用いて説明したように、地盤強度算出装置1は、例えば、エア圧Pairに基づいて算出される速度Vbitを用いて、1ストローク当たりの打撃力のエネルギーEstを精緻に算出することができる。
【0095】
演算部115は、各時刻における削孔ビット28の加速度Abitから、削孔ビット28による単位時間当たりの打撃回数Nhを計測する。そして、演算部115は、1回の打撃当たりの打撃力のエネルギーEstに、単位時間当たりの打撃回数Nhを乗じて、単位時間当たりの打撃力のエネルギーEptを算出する。当該構成によれば、地盤強度算出装置1は、各時刻における削孔ビット28の加速度Abitから、削孔ビット28による単位時間当たりの打撃回数Nhを計測することができる。そして、地盤強度算出装置1は、計測した「単位時間当たりの打撃回数Nh」を、1回の打撃当たりの打撃力のエネルギーEstに乗じて、単位時間当たりの打撃力のエネルギーEptを精緻に算出することができる。
【0096】
地盤強度算出装置1はさらに変化量取得部112を備え、変化量取得部112は、各時刻における掘削深度の単位時間当たりの変化量Apを取得する。例えば、変化量取得部112は、各時刻における削孔ビット28の掘削深度から、各時刻における掘削深度の単位時間当たりの変化量Apを取得してもよい。演算部115は、各時刻における掘削深度の単位時間当たりの変化量Apと、単位時間当たりの打撃力のエネルギーEptとを用いて、各時刻における、地盤の単位体積当たりの打撃力のエネルギーEbitを算出する。当該構成によれば、地盤強度算出装置1は、各時刻における掘削深度の単位時間当たりの変化量Apと、単位時間当たりの打撃力のエネルギーEptとを用いて、各時刻における、地盤の単位体積当たりの打撃力のエネルギーEbitを精緻に算出することができる。
【0097】
演算部115は、各時刻における掘削深度と、各時刻における、地盤の単位体積当たりの打撃力のエネルギーEbitとから、掘削深度ごとの、地盤の単位体積当たりの打撃力のエネルギーEbitを算出する。当該構成によれば、地盤強度算出装置1は、各時刻における掘削深度と、各時刻における、地盤の単位体積当たりの打撃力のエネルギーEbitとから、掘削深度ごとの、地盤の単位体積当たりの打撃力のエネルギーEbitを精緻に算出することができる。
【0098】
§4 変形例
以上、本発明の実施の形態を詳細に説明してきたが、前述までの説明はあらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。例えば、以下のような変更が可能である。なお、以下の変形例は適宜組み合わせ可能である。
【0099】
<4.1>
例えば、上記実施形態では、地盤強度算出装置1は、ガイドセル21に取り付けられている。しかしながら、地盤強度算出装置1の配置は、このような例に限定されなくてもよく、ガイドセル21以外の場所に配置されてもよい。
【0100】
また、例えば、エンコーダ15、加速度センサ16、エア圧力計8が無線通信可能であれば、地盤強度算出装置1は、エンコーダ15、加速度センサ16、エア圧力計8と無線通信可能な範囲に適宜配置してもよい。この場合、地盤強度算出装置1は、エンコーダ15、加速度センサ16、エア圧力計8から定期的に測定データを受信してもよい。地盤強度算出装置1は、受信した測定データを適宜処理することで、第1データDt1、第2データDt2、圧縮空気のエア圧Pairを示すデータを取得することができる。
【0101】
また、例えば、上記実施形態では、地盤強度算出装置1は、エンコーダ15、加速度センサ16、エア圧力計8に直接接続されている。しかしながら、地盤強度算出装置1とエンコーダ15、加速度センサ16、エア圧力計8との間に無線通信可能なコンピュータ(以下、「通信装置」と記載する)を配置してもよい。すなわち、エンコーダ15、加速度センサ16、エア圧力計8を通信装置に接続し、地盤強度算出装置1は、通信装置を介して、エンコーダ15、加速度センサ16、エア圧力計8の測定データを取得してもよい。
【0102】
なお、鋼管杭の打設は、電源の存在しない場所で行われる場合がある。このような場合には、可能な限り、電気の消費の少ない方法で、上記地盤強度算出の処理が実行されるのが好ましい。そのため、このような場合には、各装置間で無線通信を行うのではなく、上記実施形態のように、通信の少ない方法を採用するのが好ましい。なお、地盤強度算出装置1には、適宜、バッテリを内蔵させてよい。
<4.2>
上記実施形態では、ワイヤ式リニアエンコーダにより掘削深度を取得している。しかしながら、掘削深度を測定する方法は、このような例に限定されなくてもよく、ワイヤ式リニアエンコーダ以外のエンコーダが用いられてもよいし、エンコーダ以外のセンサが用いられてもよい。例えば、掘削深度の測定には、ロータリエンコーダを用いることができる。
【符号の説明】
【0103】
1…地盤強度算出装置、2…掘削機、121…プログラム、91…記憶媒体、
25…ダウンザホールハンマ、28…削孔ビット(削孔具)、111…掘削深度取得部、
112…変化量取得部、113…加速度取得部、114…エア圧取得部114、
115…演算部115、
Abit…加速度、Ap…掘削深度の単位時間当たりの変化量、
Ebit…単位体積当たりの打撃力のエネルギー、
Est…1回の打撃当たりの打撃力のエネルギー、
Ept…単位時間当たりの打撃力のエネルギー、
Pair…エア圧、Nh…単位時間当たりの打撃回数、
S110…掘削深度取得ステップ、S110…加速度取得ステップ、
S110…エア圧取得ステップ、S140…演算ステップ、S150…演算ステップ、
S181…演算ステップ、S182…演算ステップ、S183…演算ステップ