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特開2024-34705燃料電池、燃料電池システム、発電装置、及び航空機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034705
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】燃料電池、燃料電池システム、発電装置、及び航空機
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/2465 20160101AFI20240306BHJP
   H01M 8/248 20160101ALI20240306BHJP
   H01M 8/0247 20160101ALI20240306BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20240306BHJP
   H01M 8/2425 20160101ALI20240306BHJP
   H01M 8/2475 20160101ALI20240306BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20240306BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20240306BHJP
   H01M 8/04111 20160101ALI20240306BHJP
【FI】
H01M8/2465
H01M8/248
H01M8/0247
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
H01M8/2425
H01M8/2475
H01M8/00 Z
H01M8/04 Z
H01M8/04111
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139142
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 孝之
(72)【発明者】
【氏名】岡井 敬一
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126AA22
5H126AA23
5H126AA25
5H126BB06
5H126FF10
5H127AA07
5H127AB04
5H127AB28
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA40
5H127BA59
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB20
5H127BB37
(57)【要約】
【課題】圧力変化に対する耐久性が高い燃料電池、燃料電池システム、発電装置、及び航空機を提供すること。
【解決手段】本発明の一形態に係る燃料電池は、少なくとも1つのセルユニットと、セルブロックと、圧力差影響抑制部とを具備する。前記少なくとも一つのセルユニットは、電解質層を燃料電極と酸化剤電極とで挟んだ発電セルと、前記燃料電極側に燃料ガスの流路を形成する第1のセパレータと、前記酸化剤電極側に酸化剤ガスの流路を形成する第2のセパレータとを有する。前記セルブロックは、前記少なくとも1つのセルユニットからなる。前記圧力差影響抑制部は、前記セルブロックにおいて最も外側に配置される前記第1のセパレータ及び前記第2のセパレータの少なくとも一方を対象セパレータとして、前記対象セパレータの変形を抑制する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質層を燃料電極と酸化剤電極とで挟んだ発電セルと、前記燃料電極側に燃料ガスの流路を形成する第1のセパレータと、前記酸化剤電極側に酸化剤ガスの流路を形成する第2のセパレータとを有する少なくとも一つのセルユニットと、
前記少なくとも1つのセルユニットからなるセルブロックと、
前記セルブロックにおいて最も外側に配置される前記第1のセパレータ及び前記第2のセパレータの少なくとも一方を対象セパレータとして、前記対象セパレータに対する圧力差による影響を抑制する圧力差影響抑制部と
を具備する燃料電池。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池であって
前記圧力差影響抑制部は、圧力差による前記対象セパレータの変形、及び圧力差による前記対象セパレータ周りでの漏洩の少なくとも一方を抑制する機構である
燃料電池。
【請求項3】
請求項1に記載の燃料電池であって、
前記少なくとも1つのセルユニットは、複数のセルユニットであり、
前記セルブロックは、前記燃料ガスの流路と前記酸化剤ガスの流路とが交互に形成されるように前記複数のセルユニットを積層した積層体である
燃料電池。
【請求項4】
請求項1から3のうちいずれか1項に記載の燃料電池であって、
前記圧力差影響抑制部は、前記対象セパレータの外側から圧力を作用させる圧力機構である
燃料電池。
【請求項5】
請求項4に記載の燃料電池であって、
前記圧力機構は、前記燃料ガス及び前記酸化剤ガスのうち前記発電セルを挟んで前記対象セパレータとは反対側に流れる対象ガスと同等の圧力を前記対象セパレータの外側から作用させる
燃料電池。
【請求項6】
請求項5に記載の燃料電池であって、
前記圧力機構は、前記対象セパレータの外側から圧力を作用させる作用ガスの流路を前記対象セパレータの外側に形成する
燃料電池。
【請求項7】
請求項6に記載の燃料電池であって、
前記作用ガスは、前記対象ガスであり、
前記圧力機構は、前記作用ガスの流路を、前記対象ガスと共通する流入路及び流出路に接続する
燃料電池。
【請求項8】
請求項7に記載の燃料電池であって、
前記圧力機構は、前記作用ガスの流路として、前記発電セルに沿った前記対象ガスの流路と同様の流路を形成する
燃料電池。
【請求項9】
請求項1から3のうちいずれか1項に記載の燃料電池であって、
前記圧力差影響抑制部は、前記対象セパレータに沿って設けられ前記対象セパレータの剛性を補強する補強機構である
燃料電池。
【請求項10】
請求項9に記載の燃料電池であって、
前記補強機構は、前記対象セパレータに沿って設けられた溝部又はリブ部を含む
燃料電池。
【請求項11】
請求項1から3のうちいずれか1項に記載の燃料電池であって、
前記電解質層は、固体酸化物電解質により構成される
燃料電池。
【請求項12】
請求項1から3のうちいずれか1項に記載の燃料電池であって、
加圧容器内に配置される
燃料電池。
【請求項13】
加圧容器と、
電解質層を燃料電極と酸化剤電極とで挟んだ発電セルと、前記燃料電極側に燃料ガスの流路を形成する第1のセパレータと、前記酸化剤電極側に酸化剤ガスの流路を形成する第2のセパレータとを有する少なくとも一つのセルユニットと、
前記少なくとも1つのセルユニットからなるセルブロックと、
前記セルブロックにおいて最も外側に配置される前記第1のセパレータ及び前記第2のセパレータの少なくとも一方を対象セパレータとして、前記対象セパレータに対する圧力差による影響を抑制する圧力差影響抑制部とを有し、前記加圧容器に格納される燃料電池と、
前記燃料電池に前記燃料ガスを供給する第1の供給ラインと、
前記燃料電池に前記酸化剤ガスを供給する第2の供給ラインと
を具備する燃料電池システム。
【請求項14】
加圧容器と、
電解質層を燃料電極と酸化剤電極とで挟んだ発電セルと、前記燃料電極側に燃料ガスの流路を形成する第1のセパレータと、前記酸化剤電極側に酸化剤ガスの流路を形成する第2のセパレータとを有する少なくとも一つのセルユニットと、
前記少なくとも1つのセルユニットからなるセルブロックと、
前記セルブロックにおいて最も外側に配置される前記第1のセパレータ及び前記第2のセパレータの少なくとも一方を対象セパレータとして、前記対象セパレータに対する圧力差による影響を抑制する圧力差影響抑制部とを有し、前記加圧容器に格納される燃料電池と、
発電機と、
空気を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機により圧縮された空気と前記燃料ガスとを燃焼させる燃焼器と、前記燃焼器からの燃焼ガスを駆動源として前記圧縮機及び前記発電機を駆動するタービンとを有するガスタービンと、
前記燃料電池に前記燃料ガスを供給し、前記燃料電池から排出された前記燃料ガスを前記燃焼器に供給する第1の供給ラインと、
前記燃料電池に前記酸化剤ガスとして前記圧縮機により圧縮された空気を供給し、前記加圧容器に加圧ガスとして前記圧縮機により圧縮された空気を供給し、前記燃料電池から排出された空気を前記燃焼器に供給する第2の供給ラインと
を具備する発電装置。
【請求項15】
請求項14に記載の発電装置を具備する
航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池、燃料電池システム、発電装置、及び航空機に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、電解質の両面を電極で挟んだ発電用のセルを用いて構成される。この発電用のセルの両面には燃料となる気体及び酸化剤となる気体を通す流路がそれぞれ形成される。例えば特許文献1には、平板型のセル本体を積層した四辺形の燃料電池スタックについて記載されている。この燃料電池スタックでは、燃料ガス及び酸化剤ガスを供給・排出する4つのガスマニホールドが四辺形の4隅にそれぞれ設けられる。またセル本体の一方の面側に形成された燃料ガス流路には、燃料ガスを供給・排出するマニホールドが接続され、セル本体の他方の面側に形成された酸化剤ガス流路には、酸化剤ガスを供給・排出するマニホールドが接続される(特許文献1の明細書段落[0026][0031]図1図3等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-117707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池は、航空機、自動車、発電といった様々な分野での応用が期待されている。一方で燃料電池の用途や使用状況等によっては、発電用のセルの周辺を流れる気体の圧力が変化し、燃料電池が破損する可能性がある。このため、圧力変化に対する耐久性を向上することが可能な技術が求められている。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、圧力変化に対する耐久性が高い燃料電池、燃料電池システム、発電装置、及び航空機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る燃料電池は、少なくとも1つのセルユニットと、セルブロックと、圧力差影響抑制部とを具備する。
前記少なくとも一つのセルユニットは、電解質層を燃料電極と酸化剤電極とで挟んだ発電セルと、前記燃料電極側に燃料ガスの流路を形成する第1のセパレータと、前記酸化剤電極側に酸化剤ガスの流路を形成する第2のセパレータとを有する。
前記セルブロックは、前記少なくとも1つのセルユニットからなる。
前記圧力差影響抑制部は、前記セルブロックにおいて最も外側に配置される前記第1のセパレータ及び前記第2のセパレータの少なくとも一方を対象セパレータとして、前記対象セパレータに対する圧力差による影響を抑制する。
【0007】
この燃料電池では、少なくとも1つのセルユニットによりセルブロックが構成される。各セルユニットでは、発電セルを構成する電解質層の燃料電極側及び酸化剤電極側に、燃料ガスの流路を形成する第1のセパレータ及び酸化剤ガスの流路を形成する第2のセパレータがそれぞれ配置される。また燃料電池には、セルブロックの最も外側に配置される第1及び第2のセパレータの少なくとも一方を対象セパレータとして、圧力差による変形や漏洩等の影響を抑制する圧力差影響抑制部が設けられる。これにより、例えば対象セパレータに隣接する発電セルの圧力による変形等が抑制され、圧力変化に対する耐久性を高くすることが可能となる。
【0008】
前記圧力差影響抑制部は、圧力差による前記対象セパレータの変形、及び圧力差による前記対象セパレータ周りでの漏洩の少なくとも一方を抑制する機構であってもよい。
【0009】
前記少なくとも1つのセルユニットは、複数のセルユニットであってもよい。この場合、前記セルブロックは、前記燃料ガスの流路と前記酸化剤ガスの流路とが交互に形成されるように前記複数のセルユニットを積層した積層体であってもよい。
【0010】
前記圧力差影響抑制部は、前記対象セパレータの外側から圧力を作用させる圧力機構であってもよい。
【0011】
前記圧力機構は、前記燃料ガス及び前記酸化剤ガスのうち前記発電セルを挟んで前記対象セパレータとは反対側に流れる対象ガスと同等の圧力を前記対象セパレータの外側から作用させてもよい。
【0012】
前記圧力機構は、前記対象セパレータの外側から圧力を作用させる作用ガスの流路を前記対象セパレータの外側に形成してもよい。
【0013】
前記作用ガスは、前記対象ガスであってもよい。この場合、前記圧力機構は、前記作用ガスの流路を、前記対象ガスと共通する流入路及び流出路に接続してもよい。
【0014】
前記圧力機構は、前記作用ガスの流路として、前記発電セルに沿った前記対象ガスの流路と同様の流路を形成してもよい。
【0015】
前記圧力差影響抑制部は、前記対象セパレータに沿って設けられ前記対象セパレータの剛性を補強する補強機構であってもよい。
【0016】
前記補強機構は、前記対象セパレータに沿って設けられた溝部又はリブ部を含んでもよい。
【0017】
前記電解質層は、固体酸化物電解質により構成されてもよい。
【0018】
加圧容器内に配置されてもよい。
【0019】
本発明の一形態に係る燃料電池システムは、加圧容器と、燃料電池と、第1の供給ラインと、第2の供給ラインとを具備する。
前記燃料電池は、
電解質層を燃料電極と酸化剤電極とで挟んだ発電セルと、前記燃料電極側に燃料ガスの流路を形成する第1のセパレータと、前記酸化剤電極側に酸化剤ガスの流路を形成する第2のセパレータとを有する少なくとも一つのセルユニットと、
前記少なくとも1つのセルユニットからなるセルブロックと、
前記セルブロックにおいて最も外側に配置される前記第1のセパレータ及び前記第2のセパレータの少なくとも一方を対象セパレータとして、前記対象セパレータに対する圧力差による影響を抑制する圧力差影響抑制部とを有し、前記加圧容器に格納される。
前記第1の供給ラインは、前記燃料電池に前記燃料ガスを供給する。
前記第2の供給ラインは、前記燃料電池に前記酸化剤ガスを供給する。
【0020】
本発明の一形態に係る発電装置は、加圧容器と、燃料電池と、発電機と、ガスタービンと、第1の供給ラインと、第2の供給ラインとを具備する。
前記燃料電池は、
電解質層を燃料電極と酸化剤電極とで挟んだ発電セルと、前記燃料電極側に燃料ガスの流路を形成する第1のセパレータと、前記酸化剤電極側に酸化剤ガスの流路を形成する第2のセパレータとを有する少なくとも一つのセルユニットと、
前記少なくとも1つのセルユニットからなるセルブロックと、
前記セルブロックにおいて最も外側に配置される前記第1のセパレータ及び前記第2のセパレータの少なくとも一方を対象セパレータとして、前記対象セパレータに対する圧力差による影響を抑制する圧力差影響抑制部とを有し、前記加圧容器に格納される。
前記ガスタービンは、空気を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機により圧縮された空気と前記燃料ガスとを燃焼させる燃焼器と、前記燃焼器からの燃焼ガスを駆動源として前記圧縮機及び前記発電機を駆動するタービンとを有する。
前記第1の供給ラインは、前記燃料電池に前記燃料ガスを供給し、前記燃料電池から排出された前記燃料ガスを前記燃焼器に供給する。
前記第2の供給ラインは、前記燃料電池に前記酸化剤ガスとして前記圧縮機により圧縮された空気を供給し、前記加圧容器に加圧ガスとして前記圧縮機により圧縮された空気を供給し、前記燃料電池から排出された空気を前記燃焼器に供給する。
【0021】
本発明の一形態に係る航空機は、前記発電装置を具備する。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、圧力変化に対する耐久性が高い燃料電池、燃料電池システム、発電装置、及び航空機を提供することが可能となる。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る燃料電池を含む発電装置の構成例を示す模式図である。
図2】燃料電池のセルユニットの構成例を示す模式図である。
図3】燃料電池のセルユニットの構成例を示す模式図である。
図4】燃料電池の構成例を示す模式図である。
図5】圧力機構の構成例を示す模式図である。
図6】比較例として挙げる燃料電池の構成例を示す模式図である。
図7】ガスタービン起動時の圧力変化を示すグラフである。
図8】セルユニットごとの電流電圧特性を示すグラフである。
図9図4に示す燃料電池における圧力状態の一例を示す模式図である。
図10図4に示す燃料電池における圧力状態の他の一例を示す模式図である。
図11】圧力機構の他の構成例を示す模式図である。
図12】圧力機構の他の構成例を示す模式図である。
図13】圧力機構の他の構成例を示す模式図である。
図14】複合発電ジェットエンジンを搭載した航空機の一例を示す模式図である。
図15】複合発電ジェットエンジンの構成例を示す模式図である。
図16】他の実施形態に係る圧力差影響抑制部の一例を示す模式図である。
図17】他の実施形態に係る圧力差影響抑制部の一例を示す模式図である。
図18】他の実施形態に係る圧力差影響抑制部の一例を示す模式図である。
図19】他の実施形態に係る地上設置型の発電装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0025】
[発電装置]
図1は、本発明の一実施形態に係る燃料電池を含む発電装置の構成例を示す模式図である。発電装置100は、燃料電池10とガスタービン13とを組み合わせたコンバインド発電を行う装置である。発電装置100を構成する燃料電池10及びガスタービン13では、共通の酸化剤ガス及び燃料ガスが用いられる。
【0026】
発電装置100では、燃料電池10に供給する酸化剤ガスがガスタービン13の圧縮機51により抽出される。この酸化剤ガスは燃料ガスとともに燃料電池10に供給される。燃料電池10での発電後、燃料電池10から排出された余剰の酸化剤ガス及び燃料ガスは、ガスタービン13の燃焼器52に供給される。燃焼器52から噴出する燃焼ガスによりガスタービン13に設けられたタービン53が回転し、タービン53に接続された発電機12が駆動される。このように、発電装置100は、燃料電池10による発電とガスタービン13による発電とを行うコンバインド発電システムとして構成される。
【0027】
図1に示す発電装置100は、航空機に搭載される。発電装置100により生成される電力は、例えば航空機の推進ファンの動力となるモータ等を駆動するために用いられる。
図1に示すように、発電装置100は、燃料電池10と、加圧容器11と、発電機12と、ガスタービン13と、燃料タンク14と、燃料用供給ライン15と、空気用供給ライン16とを有する。
【0028】
燃料電池10には、平板型の発電セル20が用いられる。発電セル20は電解質の両面に電極を設けた構造を有する。一方の電極には燃料ガスが供給され、他方の電極には酸化剤ガスが供給される。
燃料電池10は、典型的には、複数の発電セル20を積層した積層体(セルスタック)として構成される。平板型の燃料電池10は、円筒型に比べ燃料電池10の本体の体積を抑えることが可能であり、この点で航空機へ適用する形態として好ましい。
なお、図1には、燃料電池10として、1つの発電セル20を含むセルユニット5が模式的に図示されている。セルユニット5は、燃料電池10の基本単位である。実際の燃料電池10は、複数のセルユニット5を積層して構成される。複数のセルユニット5を積層したセルスタックの構成については、図4を参照して後述する。
【0029】
本実施形態では、燃料電池10の電解質層21が、固体酸化物電解質により構成される。従って燃料電池10は、固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)となる。また、発電装置100は、SOFCとGT(ガスタービン13)とを組み合わせたSOFC-GT複合発電ジェットエンジンの一部として機能する。
SOFCは、例えば700℃から1000℃程度の比較的高温で運転される電池であり、高温の廃熱を回収することが期待できる。またSOFCを構成する部材は全て固体であることから、装置の構成が簡単になり、安定した性能や長寿命化が期待できる。
航空機では、SOFCの利用により、ジェット燃料等を利用した従来のターボファンエンジンと比べ、熱効率や推進効率を大幅に向上した推進機関を実現することが可能である。
【0030】
本実施形態では、燃料電池10に供給される燃料ガスとして水素ガス1が用いられる。また酸化剤ガスとして空気2が用いられる。水素と空気との化学反応により発電を行う燃料電池10からは、水(H2O)と化学反応せずに残る水素及び酸素だけが排出される。
なお燃料ガスや酸化剤ガスの種類は限定されない。例えば燃料ガスとして、各種の炭化水素、アルコール、一酸化炭素等が用いられてもよい。また酸化剤ガスとして、空気が用いられてもよい。
【0031】
燃料電池10には、水素ガス1の入口となる水素入口24、水素ガス1の出口となる水素出口25、空気2の入口となる空気入口26、及び空気2の出口となる空気出口27がそれぞれ設けられる。水素入口24及び水素出口25は、燃料用供給ライン15に接続され、空気入口26及び空気出口27は、空気用供給ライン16に接続される。水素ガス1及び空気2は、エンジン(ガスタービン13)の運転と連動して供給され、作動圧力、温度、流量が変化していく。燃料電池10(スタック本体)は、加圧容器11に格納される。燃料電池10の具体的な構成については、後に詳しく説明する。
【0032】
加圧容器11は、燃料電池10を格納する容器である。加圧容器11は、容器内部の気圧が容器外部の気圧よりも高い状態(加圧雰囲気)を維持できるように構成される。
図1に示すように、加圧容器11には、容器内部に連通するように、空気用供給ライン16と容器放圧弁17とが接続される。空気用供給ライン16からは、容器内部に圧縮された空気2が供給される。容器放圧弁17は、容器内部の高圧の空気2を容器外部に放出する弁である。容器放圧弁17としては、例えば容器内部の圧力が所定の圧力以上となった場合に圧力を逃がす圧力調整弁(安全弁)や遠隔操作の自動弁等が用いられる。
この他、加圧容器11の隔壁を貫通して燃料電池10につながる各種の配管(水素ガス1や空気2を供給・排出するための配管等)が設けられる。
【0033】
発電機12は、ガスタービン13に接続される。具体的には、発電機12は、ガスタービン13に設けられた回転軸50に接続され、回転軸50により回転駆動されることで電力を発生させる。発電機12の種類は限定されず、任意の形式の発電機を用いることが可能である。発電機12により生成された電力は、燃料電池10により生成された電力とともに、モータやバッテリー等に供給される。
【0034】
ガスタービン13は、圧縮機51と、燃焼器52と、タービン53とを有する。
本実施形態では、ガスタービン13として、水素ガス1を燃料とする水素ガスタービンが用いられる。また、ガスタービン13は、発電機12を駆動するための動力源である。従ってガスタービン13及び発電機12により、水素ガスタービン発電機が構成される。
【0035】
なお、ガスタービン13は、燃焼ガスの噴流(ジェット)により推進力を得るジェットエンジンとして構成されてもよい。例えば、ガスタービン13は、ターボファンエンジンとして構成されてもよい。この他、本発明に係るジェットエンジンには、噴流を生成し、タービン53を用いて回転力を生成しプロペラやファンによる推進力として変換し用いる場合も含まれる。
【0036】
圧縮機51は、ガスタービン13に取り込まれた空気2を圧縮する。圧縮機51は、回転軸50を介してタービン53と接続され、タービン53(回転軸50)の回転によって駆動される圧縮機である。圧縮機51の具体的な構成は限定されず、例えば軸流式圧縮機、遠心式圧縮機、斜流圧縮機等の任意の形式の圧縮機が用いられてよい。
燃焼器52は、水素ガス1を燃焼させる水素燃焼器である。燃焼器52は、圧縮機51により圧縮された空気2(圧縮空気)と水素ガス1とを燃焼させ、高温高圧の燃焼ガスを生成する。燃焼器52から噴出した燃焼ガスは、燃焼器52の下流に配置されたタービン53に送り込まれる。
タービン53は、回転軸50に接続され、燃焼器52からの燃焼ガスを駆動源として圧縮機51及び発電機12を駆動する。燃焼ガスを受けたタービン53は回転軸50とともに回転し、回転軸50により圧縮機51及び発電機12が回転駆動される。
【0037】
燃料タンク14は、燃料電池10及びガスタービン13(燃焼器52)の燃料を貯蔵するタンクである。本実施形態では、燃料タンク14は、水素を貯蔵する水素タンクである。これに限定されず、例えば液化水素を貯蔵可能なように構成され、高圧の断熱容器や低圧の断熱容器内に燃料昇圧用のポンプが備え付けられたタンク等が燃料タンク14として用いられてもよい。
【0038】
燃料用供給ライン15は、燃料電池10に水素ガス1を供給し、燃料電池10から排出された水素ガス1をガスタービン13の燃焼器52に供給する。本実施形態では、燃料用供給ライン15は、第1の供給ラインに相当する。
燃料用供給ライン15は、水素配管55aと、流量調整弁56aと、水素配管55bとを有する。また燃料用供給ライン15は、後述する空気用供給ライン16と共通の配管として、合流配管57を有する。なお図1では、水素ガス1が通る経路を太い点線で模式的に図示している。
【0039】
水素配管55aは、水素を貯蔵する燃料タンク14と燃料電池10の水素入口24とをつなぐ配管である。燃料タンク14に貯蔵された水素ガスもしくは液化水素は、例えば臨界状態のまま水素配管55a内を圧送される。また液化水素は、水素配管55aを通過する過程で気化し、水素入口24には水素ガス1が供給される。
流量調整弁56aは、水素配管55aに設けられ、燃料電池10や燃焼器52に対する水素ガス1の供給量を調整する。流量調整弁56aとしては、例えば極低温用の電磁流量調整弁等が用いられる。
【0040】
水素配管55bは、燃料電池10の水素出口25と合流配管57とをつなぐ配管である。燃料電池10から排出された高温の水素ガス1は、水素配管55bを通過して合流配管57に供給される。
合流配管57は、水素配管55bを通過した水素ガス1と後述する空気配管58bを通過した空気2とが合流する配管である。なお燃焼器52に挿入する部位によっては、水素ガス1と空気2とを合流せずに個別の配管として接続してもよい。
【0041】
空気用供給ライン16は、燃料電池10に酸化剤ガスとして圧縮機51により圧縮された空気2(圧縮空気)を供給し、燃料電池10から排出された空気2を燃焼器52に供給する。
また、空気用供給ライン16は、加圧容器11に加圧ガスとして圧縮機51により圧縮された空気2を供給する。本実施形態では、空気用供給ライン16は、第2の供給ラインに相当する。
空気用供給ライン16は、空気配管58aと、流量調整弁56bと、流路制御弁59と、流量計46と、空気配管58bと、容器加圧弁47と、外部空気源48と、流量調整弁56cとを有する。
【0042】
空気配管58aは、ガスタービン13の圧縮機51と燃料電池10の空気入口26とをつなぐ配管である。空気配管58aには、圧縮機51の出口側から空気入口26にかけて、流量調整弁56b、流路制御弁59、及び流量計46がこの順番で接続される。
流量調整弁56bは、圧縮機51から空気配管58aへの空気2(圧縮空気)の供給量を調整する。流量調整弁56bとしては、例えば高圧ガス用の電磁流量調整弁等が用いられる。
流路制御弁59は、圧縮機51から空気配管58aへ供給される空気2の流路を開閉する。流量調整弁56bとしては、例えば電磁遮断弁等が用いられる。
流量計46は、空気配管58aから燃料電池10に供給される空気2の流量を測定する。
【0043】
空気配管58bは、燃料電池10の空気出口27と合流配管57とをつなぐ配管である。燃料電池10から排出された高温の空気2は、空気配管58bを通過して合流配管57に供給される。また合流配管57は、ガスタービン13の燃焼器52に接続される。従って、合流配管57は、燃料電池10から排出された高温の水素ガス1及び空気2が混合された混合ガスを燃焼器52に供給する。
【0044】
容器加圧弁47は、空気配管58aを加圧容器11の容器内部に接続する配管上に設けられ、空気配管58a内の圧縮空気により加圧容器11を加圧する弁である。容器加圧弁47としては、例えば空気配管58a側の圧力を調整して加圧容器11側に供給する圧力調整弁(減圧弁)等が用いられる。
このように発電装置100は、容器加圧弁47及び容器放圧弁17により加圧容器11の圧力を調整して、燃料電池10の内圧と外圧とを均圧させる構成となっている。
【0045】
外部空気源48は、ガスタービン13とは独立して空気2を取り込む装置であり、空気配管58aに接続される。外部空気源48としては、例えば外部から取り込んだ空気2を圧縮して排出する空気圧縮機が用いられる。外部空気源48は、例えば発電装置100の起動時にガスタービン13(圧縮機51)に代えて空気配管58aに空気2を供給する。
流量調整弁56cは、外部空気源48と空気配管58aとの間に設けられ、外部空気源48から空気配管58aへの空気2の供給量を調整する。流量調整弁56cとしては、例えば高圧ガス用の電磁流量調整弁等が用いられる。
【0046】
発電装置100では、圧縮機51又は外部空気源48から空気配管58aへ空気2が供給される。
例えば、発電装置100の起動時に、圧縮機51(回転軸50)の回転数が低い状態では圧縮機51は十分な圧力の圧縮空気を発生させることができない。この場合、流路制御弁59により圧縮機51からの空気2の流路がカットされ、空気配管58aには外部空気源48から空気2が供給される。また例えば圧縮機51から十分な圧力の空気2が供給可能になった場合、流路制御弁59が開き圧縮機51からの空気配管58aに空気2が供給される。この時、流量調整弁56cは外部空気源48から空気配管58aへの空気2の供給をカットする。このように通常の運転時には、圧縮機51からの空気2が燃料電池10に供給される。
【0047】
また圧縮機51や外部空気源48から空気配管58aに供給された空気2の流量(供給量)は、空気入口26の前段に設けられた流量計46により測定され、その測定結果に基づいて上流の流量調整弁56bや流量調整弁56cによる空気2の流量調整が行われる。
圧縮機51又は外部空気源48から空気配管58aへ空気2の供給は、排他的に切り替えられてもよいし、一時的に併用されてもよい。
【0048】
[燃料電池のセルユニットの構成]
図2及び図3は、燃料電池10のセルユニット5の構成例を示す模式図である。図2には、加圧容器11に格納されたセルユニット5を示す断面図が模式的に図示されている。また図3には、セルユニット5の一部を拡大した斜視図が模式的に図示されている。
セルユニット5は、燃料電池10の基本単位であり、各セルユニット5が発電機能を備えている。セルユニット5は、上記した発電セル20と、第1のインターコネクタ31と、第2のインターコネクタ32と、シール部33と、第1の集電材34と、第2の集電材35とを有する。
【0049】
発電セル20は、電解質層21と、燃料極(アノード)22と、空気極(カソード)23とを有する。電解質層21、燃料極22、及び空気極23は、いずれも平板状に構成される。発電セルは、電解質層21を燃料極22と空気極23とで挟んだ構造となっている。本実施形態では、燃料極22は、燃料電極に相当し、空気極23は、酸化剤電極に相当する。
【0050】
電解質層21は、高温で酸素イオンの導電性の良い材料であり、例えばジルコニア系材料、セリア系材料、ペロブスカイト系材料の酸化物が用いられる。また、高温で高いイオン導電性を持つものであれば、例えばプロトン伝導性酸化物等の他の形式でもよい。燃料極22は、水素ガス1に接する電極である。燃料極22の材料には、例えばNi、Co等の金属やそれらを用いた多孔質サーメットが用いられる。空気極23は、空気2に接する電極である。空気極23は、高温の酸化性雰囲気にさらされるため、そのような環境でも化学的に安定した材料で構成される。空気極23の材料には、例えば電気伝導性の高いペロブスカイト型の酸化物材料が用いられる。
【0051】
図2に示す発電セル20では、燃料極22の一方の面(燃料極22の図中上側の面)に、その面内に収まるように電解質層21が形成される。また電解質層21の燃料極22とは反対側の面(電解質層21の図中上側の面)に、その面内に収まるように空気極23が形成される。従って、発電セル20は、燃料極22により電解質層21及び空気極23を支持する燃料極サポート型のセルとなる。この場合、図示を省略した支持部材(セルホルダ)に燃料極22が固定される。
なお、空気極23により電解質層21及び燃料極22を支持する空気極サポート型の発電セル20や、強度や靭性の高い薄膜の耐熱金属を挟むメタルサポート型の発電セル20等が用いられてもよい。
【0052】
電解質層21、燃料極22、及び空気極23の平面形状は、例えば円形状であり、それぞれの中心が平面視で重なるように配置して円板型の発電セル20が構成される。発電セル20の直径は、例えば5cm~30cmの範囲で適宜設定される。また発電セル20の厚み(燃料極22、電解質層21、及び空気極23を積層した合計の厚み)は、例えば0.5mm程度である。図2では、発電セル20の平面サイズに対して厚みが強調して図示されているが、実際には発電セル20は非常に薄い部材となる。
なお、発電セル20(電解質層21、燃料極22、及び空気極23)の平面形状や厚み等は限定されず、要求される発電性能や装置重量等に応じて適宜設定されてよい。
【0053】
第1のインターコネクタ31は、発電セル20の燃料極22と対向して配置される板状の部材である。第1のインターコネクタ31は、燃料極22側に水素ガス1の流路を形成する。
第2のインターコネクタ32は、発電セル20の空気極23と対向して配置される板状の部材である。第2のインターコネクタ32は、空気極23側に空気2の流路を形成する。
第1のインターコネクタ31及び第2のインターコネクタ32は、セルユニット5において水素ガス1及び空気2の流れを分離するセパレータとして機能する。本実施形態では、第1のインターコネクタ31は、第1のセパレータに相当し、第2のインターコネクタ32は、第2のセパレータに相当する。
【0054】
第1のインターコネクタ31の燃料極22に向けられる面には、水素ガス1の流路となる水素流路部36が形成される。水素流路部36には、例えば水素ガス1を通過させるための隙間や溝が含まれる。また第2のインターコネクタ32の空気極23に向けられる面には、空気2の流路となる空気流路部37が形成される。空気流路部37には、例えば空気2を通過させるための隙間や溝が含まれる。
水素流路部36及び空気流路部37に設けられる流路パターンは、互いに同じパターンであってもよいし、互いに異なるパターンであってもよい。
【0055】
図3に示す例では、水素流路部36(空気流路部37)として、第1のインターコネクタ31(第2のインターコネクタ32)の表面に互いに離間した複数の凸部38が設けられる。複数の凸部38は、薄い円柱型の突起であり、一定の間隔で格子状に配置される。水素流路部36(空気流路部37)を設けることで、燃料極22(空気極23)の全面にわたって水素ガス1(空気2)の流路を確保することが可能となる。凸部38を用いた流路パターンにより、水素ガス1や空気2を流路全体に拡散することが可能となる。また、溝を形成するような場合と比べ、軽量化を図ることが可能となる。
【0056】
なお、水素流路部36や空気流路部37のパターンは限定されない。例えば直線状の溝(図12及び図13等参照)や曲線状の溝により流路が構成されてもよい。また分散して配置された凸部や溝を組み合わせて流路が形成されてもよい。
【0057】
また第1のインターコネクタ31の水素流路部36が形成される面とは反対側の面、及び第2のインターコネクタ32の空気流路部37が形成される面とは反対側の面は、それぞれ他のセルユニット5と接続される接続面として機能する。接続面は、典型的には平面として構成される。
【0058】
また第1のインターコネクタ31及び第2のインターコネクタ32は、高い電気伝導性を持つ材料により構成される。第1のインターコネクタ31は、後述する第1の集電材34を介して燃料極22に電気的に接続される。また第2のインターコネクタ32は、後述する第2の集電材35を介して空気極23に電気的に接続される。従ってセルユニット5において、第1のインターコネクタ31は、アノード(燃料極)に接続された電極として機能し、第2のインターコネクタ32は、カソード(空気極)に接続された電極として機能する。
【0059】
シール部33は、発電セル20を挟んで流れる水素ガス1及び空気2が漏れないように、第1のインターコネクタ31及び第2のインターコネクタ32の間に設けられた封止部材である。またシール部33は、第1のインターコネクタ31及び第2のインターコネクタ32を電気的に分離する絶縁部材としても機能する。
シール部33としては、絶縁性のシート材料(マイカシート等)や、絶縁性の材料と金属等を組み合わせた複合部材等が用いられる。
【0060】
第1の集電材34は、発電セル20の燃料極22と第1のインターコネクタ31との間に設けられ、燃料極22と第1のインターコネクタ31とを電気的に接続する。第2の集電材35は、発電セル20の空気極23と第2のインターコネクタ32との間に設けられ、空気極23と第2のインターコネクタ32とを電気的に接続する。
第1の集電材34及び第2の集電材35を設けることで、発電セル20が発電する電力を効率的に取り出すことが可能となる。
【0061】
第1の集電材34及び第2の集電材35は、水素ガス1及び空気2の流れを阻害しないように通気性のある部材を用いて構成される。、例えば、金属メッシュ、エキスパンドメタル、ポーラスメタル等が第1の集電材34及び第2の集電材35として用いられる。なお、第1の集電材34及び第2の集電材35を必ずしも設ける必要はない。例えば第1のインターコネクタ31と燃料極22とを直接接続してもよいし、第2のインターコネクタ32と空気極23とを直接接続してもよい。また第1の集電材34及び第2の集電材35のどちらか一方を設けるような構成も可能である。
【0062】
図2に示すように、第1のインターコネクタ31と燃料極22との間の空間には、水素入口24と水素出口25とが接続され、第1の集電材34を通過する水素ガス1の流路が形成される。また第2のインターコネクタ32と空気極23との間の空間には、空気入口26と空気出口27とが接続され、第2の集電材35を通過する空気2の流路が形成される。
【0063】
なお図2に示す第1のインターコネクタ31には、厚み方向から見て発電セル20と重なる位置に、水素入口24に接続される貫通孔と、水素出口25に接続される貫通孔とが模式的に図示されている。また第2のインターコネクタ32には、厚み方向から見て発電セル20と重なる位置に、空気入口26に接続される貫通孔と、空気出口27に接続される貫通孔とが模式的に図示されている。実際のセルユニット5には、発電セル20と重なるような貫通孔は設けられず、セルユニット5は、後述する水素供給路、水素排出路、空気供給路、及び空気排出路に接続される。
【0064】
また、図3に示すように、本実施形態では、水素ガス1が流れる方向と、空気2が流れる方向とが厚み方向から見て互いに直交するように設定される。これにより、水素ガス1用の入出路と空気2用の入出路を互いに離れた位置に配置することが可能となる。なお、水素ガス1及び空気2の流れる方向を、厚み方向から見て互いに同一方向(平行流)に設定することや反対方向(対抗流)に設定することも可能である。
【0065】
このようにセルユニット5は、電解質層21、燃料極22、及び空気極23を積層した平板型の発電セル20の両サイドに燃料(水素ガス1)と空気2がそれぞれ流れる構造となる。このようなセルユニット5を数10枚から100枚程度重ね合わせることによりスタック構造の燃料電池10が構成される。
【0066】
[燃料電池の全体の構成]
図4は、燃料電池10の構成例を示す模式図である。
燃料電池10は、セルスタック6と、水素供給路40と、水素排出路41と、空気供給路42と、空気排出路43と、電力取り出し部45と、圧力差影響抑制部60とを有する。なお図4では、加圧容器11の図示を省略している。また図4では、水素ガス1及び空気2の流れが、それぞれ点線のライン及び実線のラインにより模式的に図示されている。
【0067】
セルスタック6は、セルユニット5からなるセルブロックであり、セルユニット5が複数重なって構成される。具体的には、セルスタック6は、水素ガス1の流路と空気2の流路とが交互に形成されるように複数のセルユニット5を積層した積層体である。これは、あるセルユニット5の第1のインターコネクタ31と、他のセルユニット5の第2のインターコネクタ32とが接するように複数のセルユニット5を積層した形態である。従って、セルスタック6には、水素ガス1の流路と、発電セル20と、空気2の流路とが、この順番で繰り返し配置される。
【0068】
以下では、図中の上側及び下側を、セルスタック6(燃料電池10)の上側及び下側として説明する。なお、上側及び下側といった記載は、セルスタック6の配置や姿勢を限定するものではない。
また図4では各セルユニット5は、第1のインターコネクタ31(水素ガス1の流路)が下側となり、第2のインターコネクタ32(空気2の流路)が上側となるように配置される。これに限定されず、第1のインターコネクタ31が上側となり、第2のインターコネクタ32が下側となるような配置も可能である。またセルスタック6の積層方向は、上下方向に限定されず、積層方向が左右方向(水平方向)となるようにセルスタック6が配置されてもよい。
【0069】
図4には、3つのセルユニット5を積層したセルスタック6が模式的に図示されている。このうち、最も上側に配置されるセルユニット5を最上セルユニット5aと記載し、最も下側に配置されるセルユニット5を最下セルユニット5bと記載する。また最上セルユニット5aと最下セルユニット5bとの間のセルユニット5を中間セルユニット5cと記載する。
セルスタック6では、最上セルユニット5aの第1のインターコネクタ31と、中間セルユニット5cの第2のインターコネクタ32とが接続される。また中間セルユニット5cの第1のインターコネクタ31と、最下セルユニット5bの第2のインターコネクタ32とが接続される。
なおセルユニット5の積層数はこれに限定されず、任意の個数のセルユニット5が積層されてよい。
【0070】
また図4に示す例では、隣合うセルユニット5のうち、一方のセルユニット5において第1のインターコネクタ31となる部材と、他方のセルユニット5において第2のインターコネクタ32となる部材が別々の部材であった。これに限定されず、一方のセルユニット5において第1のインターコネクタ31となる部材と、他方のセルユニット5において第2のインターコネクタ32となる部材とを1つの部材として構成してもよい。
【0071】
例えば、隣合うセルユニット5に共通の部材として、一方の面に水素流路部36が形成され、他方の面に空気流路部37が形成された板状のセパレータが用いられる。この場合、共通の部材は、一方のセルユニット5にとっては第1のインターコネクタ31として機能し、他方のセルユニット5にとっては第2のインターコネクタ32として機能する。このような構成により、燃料電池10の軽量化を図ることが可能となる。
【0072】
水素供給路40は、水素入口24に接続され各セルユニット5に水素ガス1を供給する流路である。水素排出路41は、水素出口25に接続され各セルユニット5から水素ガス1を排出する流路である。水素供給路40及び水素排出路41は、各セルユニット5の第1のインターコネクタ31と発電セル20との間の空間にそれぞれ接続される。
【0073】
空気供給路42は、空気入口26に接続され各セルユニット5に空気2を供給する流路である。空気排出路43は、空気出口27に接続され各セルユニット5から空気2を排出する流路である。空気供給路42及び空気排出路43は、各セルユニット5の第2のインターコネクタ32と発電セル20との間の空間にそれぞれ接続される。
【0074】
水素供給路40及び空気供給路42は、水素ガス1及び空気2を分配して供給するガスマニホールドであり、水素排出路41及び空気排出路43は、水素ガス1及び空気2を集約して排出するガスマニホールドである。
水素供給路40、水素排出路41、空気供給路42、空気排出路43は、例えばセルスタック6の積層方向から見て、発電セル20と重ならない周辺部分に設けられる。また例えば、外部配管等を用いて構成されてもよい。
【0075】
電力取り出し部45は、セルスタック6として構成された燃料電池10から電力を取り出す端子である。ここでは、セルスタック6の最も外側に配置される第2のインターコネクタ32(最上セルユニット5aの第2のインターコネクタ32)にプラス極側の電力取り出し部45aが設けられる。また、セルスタック6の最も外側に配置される第1のインターコネクタ31(最下セルユニット5bの第1のインターコネクタ31)にマイナス極側の電力取り出し部45bが設けられる。
【0076】
1つのセルユニット5は、第2のインターコネクタ32がプラス側の電極となり、第1のインターコネクタ31がマイナス側の電極となる電池と見做すことが可能である。従って図4に示すように複数のセルユニット5を積層したセルスタック6は、複数の電池(セルユニット5)が直列に接続された1つの電池として機能する。またプラス極側の電力取り出し部45a及びマイナス極側の電力取り出し部45bは、燃料電池10全体の電力を取り出すための端子となる。このように、燃料電池10は、最上端のインターコネクタおよび最下端のインターコネクタより電流を取り出す構成となっている。
【0077】
圧力差影響抑制部60は、対象インターコネクタ30に対する圧力差による影響を抑制する。ここで、対象インターコネクタ30は、圧力差による影響を抑制する対象となるインターコネクタである。具体的には、セルスタック6において最も外側に配置される第1のインターコネクタ31及び第2のインターコネクタ32の少なくとも一方が対象インターコネクタ30となる。本実施形態では、対象インターコネクタ30は、対象セパレータに相当する。
【0078】
図4に示す例では、セルスタック6の最も外側に配置される第1のインターコネクタ31(最下セルユニット5bの第1のインターコネクタ31)と、セルスタック6の最も外側に配置される第2のインターコネクタ32(最上セルユニット5aの第2のインターコネクタ32)との両方が対象インターコネクタ30となる。これら2つの対象インターコネクタ30に対して、その変形を抑制する圧力差影響抑制部60がそれぞれ設けられる。
以下では、対象インターコネクタ30となる、第1のインターコネクタ31を、第1のインターコネクタ31tと記載する。また対象インターコネクタ30となる、第2のインターコネクタ32を、第2のインターコネクタ32tと記載する。
【0079】
また対象インターコネクタ30に対する圧力差とは、例えば対象インターコネクタ30の内側及び外側での圧力の違いである。対象インターコネクタ30の内側は、対象インターコネクタ30の発電セル20に向けられる側であり、外側は発電セル20に向けられる側とは反対側を意味する。
【0080】
対象インターコネクタ30に圧力差がかかることで、例えば対象インターコネクタ30が変形するといった影響や、対象インターコネクタ30の周りで水素ガスや空気等が漏洩するといった影響が考えれる。
圧力差影響抑制部60は、このような圧力差による対象インターコネクタ30の変形、及び圧力差による対象インターコネクタ30周りでの漏洩を抑制する機構である。
【0081】
本実施形態では、圧力差影響抑制部60は、対象インターコネクタ30の外側から圧力を作用させる圧力機構61である。図4に示す燃料電池10には、第2のインターコネクタ32tに対して図中上側の面から圧力を作用させる圧力機構61aと第1のインターコネクタ31tに対して図中下側の面から圧力を作用させる圧力機構61bとが設けられる。
【0082】
圧力機構61は、対象ガスと同等の圧力を対象インターコネクタ30の外側から作用させる。ここで対象ガスとは、水素ガス1及び空気2のうち発電セル20を挟んで対象インターコネクタ30とは反対側に流れるガスである。つまり、圧力機構61は、セルスタック6の最も外側に配置される発電セル20の内側を流れるガス(対象ガス)と同等の圧力を対象インターコネクタ30に加える機構である。
【0083】
例えば、圧力機構61aでは、最上セルユニット5aの発電セル20を挟んで第2のインターコネクタ32tとは反対側に流れる水素ガス1が、対象ガスとなる。従って、圧力機構61aは、水素ガス1と同様の圧力を第2のインターコネクタ32tに外側から作用させる。また、圧力機構61bでは、最下セルユニット5bの発電セル20を挟んで第1のインターコネクタ31tとは反対側に流れる空気2が、対象ガスとなる。従って、圧力機構61bは、空気2と同様の圧力を第2のインターコネクタ32tに外側から作用させる。
このように対象インターコネクタ30に圧力を作用させることで、発電セル20及び対象インターコネクタ30に対して外向きにかかる圧力をキャンセルすることが可能となる。
【0084】
具体的には、圧力機構61は、対象インターコネクタ30の外側から圧力を作用させる作用ガスの流路を対象インターコネクタ30の外側に形成する。ここで作用ガスとは、圧力機構61において対象ガスと同等の圧力を発生させるためのガスである。作用ガスの種類は限定されず、任意のガスを用いることが可能である。
図4に示すように、圧力機構61は、作用ガスの流路となる最外流路62を有する。最外流路62は、平面的に広がる流路である。最外流路62の平面形状及び平面サイズは、例えばセルユニット5内に形成される水素ガス1や空気2の流路と同様の平面形状及び平面サイズに設定される。
【0085】
また作用ガスは、典型的には、対象ガスである。この場合、圧力機構61は、作用ガスの流路である最外流路62を、対象ガスと共通する流入路及び流出路に接続する。対象ガスと共通する流入路とは、水素供給路40又は空気供給路42である。また対象ガスと共通する流出路とは、水素排出路41又は空気排出路43である。
【0086】
例えば、セルスタック6上側の圧力機構61aの最外流路62は、水素供給路40及び水素排出路41に接続され、作用ガスとして圧力機構61aの対象ガスである水素ガス1が流れる流路となる。また、セルスタック6下側の圧力機構61bの最外流路62は、空気供給路42及び空気排出路43に接続され、圧力機構61bの対象ガスである空気2が流れる流路となる。
最外流路62を対象ガスの流入路及び流出路に接続することで、対象ガスと同等の圧力を容易に発生させることが可能となる。ただし、最外流路には対象ガスの流れは必須ではなく、圧力が作用すればよいため、流入路、流出路のどちらかを塞いでもよい。
【0087】
図5は、圧力機構61の構成例を示す模式図である。ここでは、図4の最上セルユニット5aの第2のインターコネクタ32tに設けられる圧力機構61aについて説明する。なお、ここで記載する圧力機構61aについての説明は、圧力機構61bについての説明として適宜読み替えることが可能である。
図5に示すように、圧力機構61は、流路部材63と、蓋部材64とを有する。
【0088】
流路部材63は、最外流路62を形成する板状の部材である。流路部材63の一方の面には、作用ガス流路部65が形成される。作用ガス流路部65には、作用ガス(図5では圧力機構61aの対象ガスである水素ガス1)を通過させるための隙間や溝が含まれる。これらの隙間や溝のパターンが作用ガスの流路パターンとなる。
蓋部材64は、流路部材63の作用ガス流路部65に対向して配置される平板状の部材であり、作用ガス流路部65を閉じる蓋として機能する。
【0089】
本実施形態では、第1のインターコネクタ31と同様の部材が、流路部材63として用いられる。従って、作用ガス流路部65には、第1のインターコネクタ31に設けられる水素流路部36と同様の流路パターンが形成される。ここでは、作用ガス流路部65として、互いに離間した複数の凸部38が設けられる。
【0090】
流路部材63は、作用ガス流路部65を外側(図中の上側)に向けて、対象インターコネクタ30である第2のインターコネクタ32tに接続される。また作用ガス流路部65に対向して蓋部材64が配置される。蓋部材64と流路部材63(作用ガス流路部65)との間の空間が最外流路62となる。
このように、圧力機構61は、最外流路62として、発電セル20に沿った対象ガス(図5では水素ガス1)の流路と同様の流路を形成する。これにより、図5では、最上セルユニット5aの発電セル20(最上セル)に対して、セルスタック6の他の発電セル20と同様に水素ガス1の圧力に応じた荷重を加えることが可能となる。
【0091】
[発電セルに加わる荷重]
以下では、燃料電池を流れるガス(水素ガス1や空気2)によって、発電セル20に加わる荷重について説明する。
図6は、比較例として挙げる燃料電池の構成例を示す模式図である。図6に示す燃料電池105には、図4と同様に構成されたセルスタック6が設けられる。なお燃料電池105には、圧力差影響抑制部60(圧力機構61)は設けられない。ここでは、一例として水素ガス1の圧力により発電セル20に加わる荷重について説明する。
【0092】
セルユニット5には、発電セル20(燃料極22)と第1のインターコネクタ31(水素流路部36)との間に水素ガス1の流路が形成される。水素ガス1の圧力は、流路の内側から外側に向けて流路の壁面を押す力(荷重)を発生させる。このため、発電セル20に対しては図中の上向きに荷重が加わり、第1のインターコネクタ31に対しては図中の下向きに荷重が加わる。図6では、水素ガス1の圧力により発生する荷重が白抜きの矢印を用いて模式的に図示されている。
【0093】
セルユニット5を積層したセルスタック6では、セルユニット5内の発電セル20に対して、隣接する他のセルユニット5を流れる水素ガス1の圧力に応じた荷重が加わることが考えられる。なお、他のセルユニット5を流れる水素ガス1に起因する荷重は、他のセルユニット5の第1のインターコネクタ31を介して間接的に伝えられる荷重である。
【0094】
例えば、最下セルユニット5bの発電セル20(最下セル)には、最下セルユニット5b内を流れる水素ガス1により上向きに荷重が加わるとともに、中間セルユニット5c内を流れる水素ガス1により下向きに荷重が加わる。
同様に、中間セルユニット5cの発電セル20(中間セル)には、中間セルユニット5c内を流れる水素ガス1により上向きに荷重が加わるとともに、最上セルユニット5a内を流れる水素ガス1により下向きに荷重が加わる。
【0095】
このように、最下セル及び中間セルに対しては、水素ガス1の圧力に応じた上向き及び下向き双方の荷重が加わることになる。従って、最下セル及び中間セルに加わる水素ガス1の圧力による荷重は実質的にキャンセルされる。
【0096】
一方で、最上セルユニット5aの発電セル20(最上セル)には、最上セルユニット5a内を流れる水素ガス1により上向きに荷重が加わるが、最上セルユニット5aの上側には水素ガス1の流路は設けられていないため、最上セルに対して、水素ガス1による下向きの荷重が加わることはない。
このように、最上セルに対しては、水素ガス1の圧力に応じた上向きの荷重だけが加わることになる。このため、水素ガス1の圧力によっては、最上セルの変形や破損が生じる可能性がある。また最上セルユニット5aに供給される水素ガス1が漏洩する可能性も考えられる。
【0097】
また、セルユニット5を流れる空気2の圧力により各発電セル20に加わる荷重についても水素ガス1の場合と同様に説明可能である。例えば最上セル及び中間セルに対しては、空気2の圧力に応じた上向き及び下向きの荷重が加わることになり、空気2の圧力による荷重がキャンセルされる。一方で、最下セルに対しては、空気2の圧力に応じた下向きの荷重だけが加わることになる。このため、空気2の圧力によっては、最下セルの変形や破損が生じる可能性がある。また最下セルユニット5bに供給される空気2が漏洩する可能性も考えられる。
【0098】
図1を参照して説明したように、燃料電池とガスタービンとを組み合わせて発電を行うシステムでは、燃料電池に用いられる水素ガス1及び空気2の流路は、ガスタービンにも接続される。このため、水素ガス1及び空気2の圧力は、ガスタービンの動作に連動して変化する。以下ではガスタービンと組み合わせた燃料電池の実験結果について説明する。
【0099】
図7は、ガスタービン起動時の圧力変化を示すグラフである。このグラフは、実験用の燃料電池を用いて測定したデータである。実験用の燃料電池は、図6に示す燃料電池105と同様に、圧力差影響抑制部60(圧力機構61)を設けていないセルスタック6を2つ組み合わせて構成されている。従って、実験用の燃料電池には、最上セルが2つ含まれ最下セルが2つ含まれる。
またデータの測定は、図1を参照して説明した発電装置100と同様のシステムに実験用の燃料電池を接続して行った。
【0100】
図7には、ガスタービン13を起動する際の実験用の燃料電池の水素入口24(SOFC Hydrogen Inlet)における水素ガス1の圧力P1、空気入口26(SOFC Air Inlet)における空気2の圧力P2、加圧容器11(Chamber)の圧力P3の時間変化がプロットされている。またガスタービン13に設けられた圧縮機51の回転速度(HPC Rotational Speed)の時間変化がプロットされている。
また、図7の横軸は時間(sec)であり、左側の縦軸は圧力(kPaA(絶対圧))であり、右側の縦軸は回転速度(rpm)である。
【0101】
ここでは、圧縮機51の回転速度が0の状態から、ガスタービン13を60秒でアイドリング状態(回転速度が約4.5×104rpmとなる状態)にする起動動作を行った。ガスタービン13の起動時は、圧縮機51が十分に動作していない。このため流路制御弁59を閉じ、外部空気源48から空気2を供給するモードによりガスタービン13を起動した。
【0102】
また、実験用の燃料電池における、水素ガス1の圧力P1、空気2の圧力P2、及び加圧容器11の圧力P3について、各圧力の差圧が5kPa以内に抑制した。つまり、P1とP2との差圧、P2とP3との差圧、及びP1とP3との差圧が、いずれも5kPa以内となるように各圧力を制御した。これは容器加圧弁47や容器放圧弁17等を適宜調整することで実現可能である。このように、差圧を5kPa以内に抑制した場合には、実験用の燃料電池を破損させることなく動作させることが可能であった。
【0103】
一方で、差圧が大きい場合には、燃料電池が破損する可能性がある。
図1に示すシステムでは、ガスタービン13の起動や出力変化等の運転状態に合わせて水素ガス1及び空気2の圧力や流量が変化し、これとともに加圧容器11内の圧力も変化する。この時、急激な出力変化を行うと、水素流路圧力(水素ガス1の圧力P1)、空気流路圧力(空気2の圧力P2)、及び加圧容器11の圧力P3がつりあわず、各差圧により発電セル20の破損や集電材の剥離が発生することが考えられる。
図6を参照して説明したように、特に最上セル及び最下セルには、非対称な圧力荷重が作用する。このため、最上セルまたは最下セルが破壊される可能性が高い。
【0104】
図8は、セルユニットごとの電流電圧特性を示すグラフである。図8の横軸は発電セル20を流れる電流(A)であり、縦軸は発電セル20に発生する電圧(V)である。図8には、不調になった実験用の燃料電池に含まれるセルユニット5ごとに発電セル20の電流電圧特性がプロットされている。
【0105】
実験では、水素ガス1の圧力P1、空気2の圧力P2、及び加圧容器11の圧力P3の差圧が10kPaを超えるような運転をした場合に、実験用の燃料電池が不調になった。なお燃料電池が不調になっているか否かの判定は、各セルユニット5(発電セル20)の電圧をモニタリングすることで行った。
【0106】
図8には、互いに同様の電流電圧特性をもったセルユニット5のグループ#0がある。このグループ#0は、発電セル20が通常動作を行っているグループであり、破損等が発生していないと考えられる。
一方で、不調になった発電セル20では、内部抵抗が増大するため、電流を流した時に電圧低下が顕著に起こる。図8に示すchAのセルユニット5及びchBのセルユニット5では、グループ#0に対して電流を増加させた場合に著しく電圧が低下しており、発電セル20が破損していることがわかる。
【0107】
今回、chAのセルユニット5及びchBのセルユニット5は、ともにセルスタック6の最も上側に配置された最上セルユニット5a(最上セル)であった。これは、10kPaを超える差圧が発生するオペレーションの過程で、最上セルに対して非対称な圧力荷重が作用したことで、最上セルが破損したものと考えられる。
【0108】
例えば産業用のガスタービンと燃料電池とを組み合わせる場合、数十分から数時間のオーダーで長い時間をかけて起動、停止、出力調整を行っている。これにより、圧力の急激な変化をなくし発電セル20の破壊を回避することが出来る。
これに対し、航空機にガスタービンと燃料電池とを組み合わせた発電装置を適用する場合、急速な起動や加速・減速に対応する出力制御が必要である。このため、地上用発電と異なり作動環境が急激に変化することが考えられる。例えば発電装置を航空機の動力として用いるためには、離陸時や上昇時に数10秒で出力を調整する必要がある。
【0109】
このような急激な圧力変化は、上記したように発電セル20の破損をもたらし、燃料電池の動作を損ねる可能性がある。特に平板型の燃料電池を用いる場合には、その上端もしくは下端のセル(最上セルや最下セル)に対して非対称の圧力荷重が加わることとなり、非対称な変形により破壊に至ることが多い。このため、急激な圧力変化に対する燃料電池の耐久性を確保する必要があった。
【0110】
[圧力機構の動作]
図9は、図4に示す燃料電池における圧力状態の一例を示す模式図である。図9では、圧力機構61を設けた燃料電池10において、水素ガス1の圧力により発電セル20に加わる荷重について説明する。
水素ガス1に注目した場合、最下セルユニット5bの発電セル20(最下セル)及び中間セルユニット5cの発電セル(中間セル)には、図6と同様に、水素ガス1の圧力に応じた上向き及び下向きの荷重が加わる。これにより、最下セル及び中間セルに加わる水素ガス1の圧力による荷重は実質的にキャンセルされる。
【0111】
一方、最上セルユニット5aの上側には水素ガス1が流れる最外流路62を形成する圧力機構61aが設けられる。最外流路62を流れる水素ガス1の圧力により、最外流路62の内側から外側に向けて流路の壁面を押す力(荷重)が発生する。ここでは、最外流路62の上側の壁面を形成する蓋部材64に対して上向きに荷重が加わり、下側の壁面を形成する流路部材63に対して下向きに荷重が加わる。このうち下向きの荷重は、最上セルユニット5aの第2のインターコネクタ32を介して最上セルユニット5aの発電セル20(最上セル)にも作用する。
【0112】
すなわち最上セルに対しては、その直下を通る水素ガス1から上向きの荷重が加わり、圧力機構61aの最外流路62を通る水素ガス1から下向きの荷重が加わることになる。この結果、最上セルに加わる水素ガス1の圧力による荷重は、最下セルや中間セルの場合と同様に実質的にキャンセルされる。
【0113】
このように、圧力機構61aは、セルスタック6の上端に設けられた発電セル20(最上セル)に対して、上下方向から作用する圧力(荷重)を均等にするセル均圧機構として機能する。なお、本開示において均圧機構とは、ガスの圧力を均等にする機構ではなく、発電セル20に加わる圧力(荷重)を均等にする機構のことである。
圧力機構61aを設けることで、例えば空気2の圧力や加圧容器11の圧力に対する水素ガス1の圧力の差圧が大きくなった場合でも、最上セルに非対称な圧力荷重が加わる事態を防ぐことが可能となる。
【0114】
また図10には、空気2の圧力により発電セル20に加わる荷重が模式的に図示されている。図10に示すように、空気2に注目した場合、最下セルに対しては、その直上を通る空気2から下向きの荷重が加わり、圧力機構61bの最外流路62を通る空気2から上向きの荷重が加わることになる。この結果、最下セルに加わる空気2の圧力による荷重は、最上セルや中間セルの場合と同様に実質的にキャンセルされる。
【0115】
このように、圧力機構61bは、セルスタック6の下端に設けられた発電セル20(最下セル)に対して、上下方向から作用する圧力(荷重)を均等にするセル均圧機構として機能する。
圧力機構61bを設けることで、例えば水素ガス1の圧力や加圧容器11の圧力に対する空気2の圧力の差圧が大きくなった場合でも、最下セルに非対称な圧力荷重が加わる事態を防ぐことが可能となる。
【0116】
このように、本実施形態に係る燃料電池10では、最上セルユニット5aの発電セル20(最上セル)の上側にある空気流路のさらに上側に、水素流路を形成する圧力機構61aが設けられる。また最下セルユニット5bの発電セル20(最下セル)の下側にある水素流路のさらに下側に、空気流路を形成する圧力機構61bが設けられる。
圧力機構61a及び61bは、最上セル及び最下セルに加わる圧力の均圧化を目的としたセル均圧機構である。
【0117】
これにより、水素側もしくは空気側だけに加圧や減圧が発生した場合に、最上セル及び最下セルを含む全ての発電セル20に対して、同じように、上下双方から圧迫される方向に圧力荷重を作用させることが可能となる。これにより、セルスタック6において発生する非対称な圧力荷重に対し、最上セル及び最下セルの耐久性を向上させることが可能となる。
【0118】
具体的には、最上セルや最下セルについて、非対称な変形が発生することを防止し、各セルの破損を回避することが可能となる。また例えば、最上セルや最下セルについて、インターコネクタ及び集電材との密着度が低下するといった事態を防止することが可能となり、各セルの集電効率が低下するといった事態を回避することが可能となる。
さらに、圧力機構61a及び61bにより、上側及び下側の対象インターコネクタ30(最上セルユニット5aの第2のインターコネクタ32t及び最下セルユニット5bの第1のインターコネクタ31t)における圧力差が抑制される。これにより、最上セルユニット5a及び最下セルユニット5bのシール性能が向上し、水素ガス1や空気2の漏洩を抑制することが可能となる。
このように、圧力機構61a及び61bを設けることで、圧力変化に対し耐久性の高い平板形の燃料電池10を実現することが可能となる。
【0119】
例えば図7及び図8を参照して説明したように、圧力機構61を設けない実験用の燃料電池では、10kPa程度の差圧発生時に最上セルが損傷した。これに対し、本実施形態に係る圧力機構61を設けることで、数十kPa程度の差圧が発生しても損傷しない燃料電池10が実現可能である。
これにより、圧力変化に対する耐久性を高く、急速な起動や出力制御が必要となる航空機にも十分に適用可能な平板型の燃料電池10を提供することが可能となる。
【0120】
[圧力機構の他の構成例]
図11図13は、圧力機構の他の構成例を示す模式図である。図11図13では、最上セルユニット5aの第2のインターコネクタ32tに設けられる圧力機構110、111、112について説明する。なお、ここで記載する圧力機構110、111、112についての説明は、最下セルユニット5bの第1のインターコネクタ31tに設けられる圧力機構の説明として適宜読み替えることが可能である。
【0121】
図11に示す圧力機構110は、流路部材63を用いて構成される。なお圧力機構110には、図5等に示す蓋部材64は用いられない。
板状の流路部材63は、複数の凸部38からなる作用ガス流路部65が形成された面を、最上セルユニット5aの第2のインターコネクタ32tに向けて配置される。この場合、流路部材63(作用ガス流路部65)と第2のインターコネクタ32tとの間の空間が、最外流路62となる。また流路部材63としては、各インターコネクタと同様の部材を用いることが可能である。
圧力機構110は、蓋部材を用いない分、図5に示す圧力機構61と比べて軽量である。
【0122】
図12では、第1のインターコネクタ31及び第2のインターコネクタ32として、一方の面に複数の平行な溝39が形成された板状の部材が用いられる。第1のインターコネクタ31に形成された溝39は、水素流路部36として機能し、第2のインターコネクタ32に形成された溝39は、空気流路部37として機能する。このように、水素ガス1や空気2の流路として平行な溝39が設けられてもよい。
また、第1のインターコネクタ31及び第2のインターコネクタ32は、溝39の方向が水素ガス1及び空気2の流れる方向となるように配置される。従って、第1のインターコネクタ31及び第2のインターコネクタ32の溝39の方向は、厚み方向からみて直交する。
平行な溝39を用いた流路パターンにより、流れが阻害されにくいため、水素ガス1や空気2を流路全体にスムーズに供給することが可能となる。また、溝39の構造により第1のインターコネクタ31や第2のインターコネクタ32を曲がりにくくすることが可能となる。
【0123】
図12に示す圧力機構111は、複数の平行な溝39からなる作用ガス流路部65が形成された流路部材63と、平板上の蓋部材64とを用いて構成される。流路部材63としては、各インターコネクタと同様の部材を用いることが可能である。
流路部材63は、作用ガス流路部65を外側(図中の上側)に向けて、第2のインターコネクタ32tに接続される。また作用ガス流路部65に対向して蓋部材64が配置される。この場合、流路部材63(作用ガス流路部65)と蓋部材64との間の空間が、最外流路62となる。なお、流路部材63の溝39の方向は、第1のインターコネクタ31の溝39の方向と平行に配置される。
圧力機構111の最外流路62は、第1のインターコネクタ31と発電セル20との間に形成される水素ガス1の流路と同様の流路となる。これにより、水素ガス1により発電セル20にかかる荷重を十分にキャンセルすることが可能となる。
【0124】
図13に示す圧力機構112は、図12に示す圧力機構111を変形した実施例である。圧力機構112は、図12と同様の流路部材63を用いて構成される。なお圧力機構112には、蓋部材64は用いられない。
板状の流路部材63は、複数の平行な溝39からなる作用ガス流路部65が形成された面を、最上セルユニット5aの第2のインターコネクタ32tに向けて配置される。この場合、流路部材63(作用ガス流路部65)と第2のインターコネクタ32tとの間の空間が、最外流路62となる。
また、流路部材63の内側には、最外流路62に対する変形を抑制するための複数の平行な溝39を設けているが、流路部材63の外側に溝を追加してもよい。
圧力機構112は、蓋部材を用いない分、図12に示す圧力機構61と比べ軽量である。
【0125】
この他、圧力機構の具体的な構成は限定されない。例えば、流路部材63に設けられる流路パターンは、必ずしもインターコネクタに設けられる流路パターンと同じである必要は無い。従って、複数の凸部38が形成されたインターコネクトを使用したセルスタック6に対して、平行な溝39が形成された流路部材63を用いて圧力機構を構成してもよい。逆に、平行な溝39が形成されたインターコネクトを使用したセルスタック6に対して、複数の凸部38が形成された流路部材63を用いて圧力機構を構成してもよい。
【0126】
[発電装置100を搭載した航空機]
近年、脱炭素化の動きに合わせ、水素を燃料に利用した航空機の開発や、航空機を電動化する研究が盛んに進められている。このような、航空機への水素適用や電動化に合わせ、燃料電池を利用した電動航空機が注目されている。
【0127】
一般に、燃料電池を航空機へ適用するメリットとしては、燃料から高い効率で電気エネルギーを得られる点に加え、発電時の損失として発生する熱を回収することにより新たなエネルギー源として利用することが可能である点が挙げられる。このため、航空機に燃料電池を適用する際には、ガスタービン等の内燃機関とのコンバインド発電に用いることが有望である。以下では、本実施形態に係る燃料電池10を適用した航空機について説明する。
【0128】
図14は、複合発電ジェットエンジンを搭載した航空機70の一例を示す模式図である。航空機70は、胴体71と、主翼72と、尾翼73と、複数の電動ファン74とを有する。また航空機70には、燃料電池10(SOFC)とガスタービン13とをコンバインド化させ水素燃料により発電する複合発電ジェットエンジン75が搭載される。上記した電動ファン74は、複合発電ジェットエンジン75の推進機構となる。
【0129】
図14に示す航空機70は、胴体71と翼(主翼72及び尾翼73)を一体的に設計したブレンデッドウィングボディ型の機体形状を備え、扁平な胴体71の側面に左右の主翼72が設けられ、胴体71の後側に左右の尾翼73が設けられる。左右の尾翼73の間には、複数の電動ファン74が配置される。ここでは8つの電動ファン74が設けられるが、電動ファン74の数は限定されない。
【0130】
図15は、複合発電ジェットエンジンの構成例を示す模式図である。
複合発電ジェットエンジン75は、発電装置100と、電力制御部76と、複数の電動ファン74とを有する。このうち、発電装置100は、例えば図1を参照して説明したように、燃料電池10及びガスタービン13を組み合わせたコンバインド発電を行う装置である。
なお、燃料電池10には、水素燃料タンク77から水素燃料(水素ガス1)が供給される。水素燃料タンク77は図1に示す燃料タンク14に相当する。またガスタービン13には、燃料電池10から排出された水素燃料と、ジェット燃料タンク78から供給されるジェット燃料とが供給される。
燃料の組み合わせは水素燃料とジェット燃料の双方を利用する方式としているが、全てを水素燃料として、ガスタービン13には燃料電池10から排出された水素燃料のみが供給されるような方式としてもよい。また、水素燃料の代替として都市ガス、LPガスなど炭化水素系の燃料を用いてもよい。
【0131】
電力制御部76は、発電装置100の燃料電池10及びガスタービン13により生成された電力の変換、合成、分配等の電力制御を行う。例えば燃料電池10が生成する直流の電力は、合成分配部80にそのまま入力される。またガスタービン13に接続された発電機12が生成する交流の電力は、コンバータ79により直流の電力に変換されて、合成分配部80に入力される。
【0132】
合成分配部80は、バッテリー81に接続される。バッテリー81は、発電装置100からの電力で充電されるとともに、必要に応じて合成分配部80に電力を供給する。
また合成分配部80は、燃料電池10、ガスタービン13(発電機12)、及びバッテリー81からの電力を合成し、複数の電動ファン74ごとに対応して設けられた複数のインバータ82に分配する。各インバータ82は、合成分配部80からの直流の電力を交流に変換して電動ファン74のモータ83に出力する。
【0133】
複数の電動ファン74は、各々がモータ83と、ギア84と、ファン85とを有する。モータ83は、インバータ82から供給される電力により回転する。ギア84は、モータ83の回転を所定のギア比でファン85に伝える。モータ83がギア84を介してファン85が回転することで推進力が発生する。
【0134】
複合発電ジェットエンジン75において水素ガス1を燃料とした場合、燃料電池10及びガスタービン13では、二酸化炭素が発生しない。従って、複合発電ジェットエンジン75を搭載した航空機70は、二酸化炭素等の温室効果ガスの発生を抑制したエミッションフリー航空機となる。
【0135】
この推進システムは、既存のジェットエンジンよりも、推進効率及び熱効率が向上すると期待される。具体的には、電動ファン74の多発分散化により、機械エネルギーから推進エネルギーへの変換効率である推進効率が向上する。また燃料電池10を用いたガスタービン13の複合化により、燃料の発熱エネルギーから機械エネルギーへの変換効率である熱効率が向上する。
これにより、航空機70の搭載水素量を減らし、水素タンクの小型化を図ることが可能となる。この結果、エミッションフリー航空機は既存の航空機よりも長距離の航空輸送を実現することが可能となる。
【0136】
本発明は、平板型の燃料電池10において、水素ガス1や空気2の圧力が急激に変化するような場合に最上セルや最下セルに非対称な荷重が加わることを抑制したものである。このような燃料電池10を複合発電ジェットエンジン75に適用することで、航空機70に要求される圧力範囲で安定して動作可能な発電システムを提供可能であり、信頼性の高いエミッションフリー航空機を実現することが可能となる。
【0137】
以上、本実施形態に係る燃料電池10では、複数のセルユニット5によりセルスタック6が構成される。各セルユニット5では、発電セル20を構成する電解質層21の燃料極22側及び空気極23側に、水素ガス1の流路を形成する第1のインターコネクタ31及び空気2の流路を形成する第2のインターコネクタ32がそれぞれ配置される。また燃料電池10には、セルスタック6の最も外側に配置される第1のインターコネクタ31及び第2のインターコネクタ32の両方を対象インターコネクタ30として、圧力差による変形や漏洩等の影響を抑制する圧力差影響抑制部60が設けられる。これにより、例えば対象インターコネクタ30に隣接する発電セル20(最上セル及び最下セル)の圧力による変形等が抑制され、圧力変化に対する耐久性を高くすることが可能となる。
【0138】
<その他の実施形態>
本発明は、以上説明した実施形態に限定されず、他の種々の実施形態を実現することができる。
【0139】
上記した実施形態では、圧力差影響抑制部60として、セル均圧機構として機能する圧力機構が設けられた。また圧力機構において、圧力を作用させる作用ガスとしては、セルユニット5を流れる水素ガス1や空気2が利用された。
これに限定されず、セルユニット5を流れる水素ガス1や空気2とは別の作用ガスが用いられてもよい。この場合、燃料電池10において燃料や酸化剤として消費されるガスとは別のガスが作用ガスとして用いられる。作用ガスの種類は、水素や空気でもよいし、窒素等の他の不活性ガスが混入してもよい。
【0140】
圧力機構61(最外流路62)内での作用ガスの圧力は、水素ガス1や空気2の圧力に応じて設定される。例えば水素ガス1(空気2)の圧力が測定される。そして、水素ガス1(空気2)と同様の圧力にするべき作用ガスについては、その圧力が測定した水素ガス1の同様の圧力に調整される。このように、水素ガス1や空気2の圧力に応じて、作用ガスの圧力をアクティブに調整してもよい。これにより、発電セル20に加わる荷重を細かく調整することが可能となる。
【0141】
また上記では圧力機構を構成する部材として、溝や凸部による流路パターンが形成された流路部材を用いる場合について説明した。例えば流路パターンが形成されていない平板部材だけを用いて圧力機構を構成してもよい。これは、上記した各圧力機構において、流路部材の代わりに平板部材を用いた構成である。このように流路パターンがない場合でも、対象インターコネクタに圧力を作用させることが可能である。
【0142】
また圧力機構において、対象インターコネクタに圧力を作用させる方法は限定されない。例えば水や油等の液体を使って圧力を加える機構が用いられてもよい。また、ピストンやモータ等を使って機械的に圧力をかける機構が用いられてもよい。これらの機構は、水素ガス1や空気2の圧力に応じて適宜制御される。
【0143】
圧力差影響抑制部60は、必ずしも対象インターコネクタに圧力を作用させる機構である必要はない。圧力差影響抑制部60は、対象インターコネクタに沿って設けられ対象インターコネクタの剛性を補強する補強機構であってもよい。
【0144】
図16図18は、他の実施形態に係る圧力差影響抑制部の一例を示す模式図である。図16図18に示す圧力差影響抑制部60は、いずれも対象インターコネクタ30の機械的な剛性を高めるために設けられた補強機構である。補強機構を設けることで、対象インターコネクタ30自身の変形が抑制され、結果として対象インターコネクタ30に隣接する発電セル20の変形を抑制することが可能となる。また対象インターコネクタ30が変形しにくくなるため、その周辺のシール性能が向上し、水素ガス1や空気2の漏洩を抑制することも可能である。
以下では、最上セルユニット5aの第2のインターコネクタ32tが対象インターコネクタ30である場合について説明する。なお、ここで記載する説明は、最下セルユニット5bの第1のインターコネクタ31tが対象インターコネクタ30である場合にも適用可能である。
【0145】
図16に示す補強機構66aは、対象インターコネクタ30に沿って設けられた溝部67を含む。溝部67は、対象インターコネクタ30の外側(発電セル20に向けられる側とは反対側)に形成された複数の溝である。例えば互いに平行な直線状の溝が溝部67として形成される。また例えば、対象インターコネクタ30に曲がりやすい軸方向がある場合には、その軸方向と直交するように溝が形成される。
【0146】
例えば対象インターコネクタ30の内側の流路パターンが平行な溝パターンである場合(図12及び図13等参照)、溝パターンの延在方向が対象インターコネクタ30が曲がりやすくなる軸方向となる。この場合、対象インターコネクタ30の外側には、内側の溝パターンの延在方向と直交するように溝部67が設けられる。これにより、対象インターコネクタ30の変形を十分に抑制することが可能となる。
【0147】
この他、溝部67の具体的な構成は限定されず、対象インターコネクタ30の変形を抑制可能なように、曲線状の溝や折れ曲がりのある溝等が適宜用いられてもよい。
溝部67を含む補強機構66aは、対象インターコネクタ30の厚みを大幅に増大させることなく、その剛性を効果的に高めることが可能である。また、切削加工やプレス加工を用いることで容易に製造することが可能である。
【0148】
図17に示す補強機構66bは、対象インターコネクタ30に沿って設けられたリブ部68を含む。リブ部68は、対象インターコネクタ30の外側に形成された複数のリブである。例えば互いに平行な直線状の突出部がリブ部68として形成される。また溝部67の場合と同様に、対象インターコネクタ30に曲がりやすい軸方向がある場合には、その軸方向と直交するように平行な突出部が形成される。
【0149】
リブ部68の具体的な構成は限定されない。例えば曲線状の突出部や折れ曲がりのある突出部等が適宜用いられてもよい。また、線状の突出部に限らず、例えば格子状の突出部がリブ部68として形成されてもよい。
リブ部68を含む補強機構66bは、対象インターコネクタ30の厚みが比較的薄いままでも剛性を効果的に高めることが可能である。これにより、軽量でありながら変形しにくい対象インターコネクタ30を実現することが可能となる。
【0150】
図18に示す補強機構66cは、対象インターコネクタ30よりも剛性の高い補強部材69である。ここでは、対象インターコネクタ30の平面形状と同形同大の平板部材が補強部材69として用いられる。補強部材69は、対象インターコネクタ30よりも剛性の高い材質で構成されるか、剛性の高い構造となるように構成される。
このように、補強部材69を追加するだけでも、対象インターコネクタ30の変形を容易に抑制することが可能である。
【0151】
ここまでの実施例では、主に最上セルユニット5a及び最下セルユニット5bの両方に圧力差影響抑制部60(圧力機構61や補強機構66)が設けられた。これに限定されず、圧力差影響抑制部60を最上セルユニット5a及び最下セルユニット5bのどちらか一方に設けた構成も可能である。すなわちセルスタック6において最も外側に配置される第1のインターコネクタ31及び第2のインターコネクタ32のどちらか一方を対象として、圧力差影響抑制部60が設けられてもよい。例えば圧力変化により破損しやすい側にだけ圧力差影響抑制部60を設けるといったことも可能である。
【0152】
また、燃料電池10は複数のセルユニット5を積層したセルスタック6として構成されなくてもよく、例えば単一のセルユニット5により燃料電池10が構成されてもよい。この場合、セルユニット5を構成する第1のインターコネクタ31及び第2のインターコネクタ32の少なくとも一方に対して、圧力差影響抑制部60が設けられる。
【0153】
燃料電池10は、航空機以外に搭載されてもよい。例えば、燃料電池10を自動車、列車、船舶等に搭載してもよい。また航空ドローンや宇宙機等の飛翔体に燃料電池10を搭載してもよい。この他、本発明は任意の移動体の電力源として適用可能である。
また燃料電池10は、移動体に搭載する場合に限定されず、定置型の発電装置に用いられてもよい。
【0154】
図19は、他の実施形態に係る地上設置型の発電装置の一例を示す模式図である。
図19に示す発電装置200は、定置発電用複合サイクルシステムであり、燃料電池210(SOFC)とマイクロガスタービン213とを組み合わせたハイブリットシステムである。発電装置200は、都市ガスやLPガス等を改質して得られる水素ガス1を燃料として発電を行う装置である。ここでは水素ガス1及び空気2の流れが細い点線の矢印及び細い実線の矢印で模式的に図示されている。
【0155】
都市ガスのラインから水素ガス1が供給され、その一部は燃料電池210に供給され、他の一部はマイクロガスタービン213の燃焼器52に供給される。燃料電池210を通過して高温になった水素ガス1は、一部が燃焼器52に供給され、他の一部は再度燃料電池210に供給される(再循環ブロワ)。再循環ブロワにより、燃料電池210における発電効率を向上することが可能である。
【0156】
マイクロガスタービン213の圧縮機51で圧縮された空気2は、再生熱交換器86を介して燃料電池210に供給される。燃料電池210を通過して高温になった空気2は、燃焼器52に供給され、水素ガス1とともに燃焼される。このときの燃焼ガスによりマイクロガスタービン213のタービン53が回転される。また再生熱交換器86は、タービン53から排出される燃焼ガスと、圧縮機51から出た空気2との熱交換を行い、空気2を加熱して排出する。さらに、再生熱交換器86から排出された燃焼ガスは、廃熱回収部87により熱エネルギーとして回収される。この熱エネルギーは、例えば給湯システムや暖房システム等に利用される。
【0157】
例えば、従来の発電システムでは、ガスタービン起動後に数百時間程度で燃料電池が定格出力に到達するような運転を行っていた。これは、急激な圧力変化による燃料電池の破損を回避するためのオペレーションである。
【0158】
これに対し、本発明を適用した発電装置200には、圧力差影響抑制部60が設けられた燃料電池210が用いられるため、圧力変化に対する耐久性が高い。
これにより、例えば緊急時の急激な起動・停止を可能とする高効率なガスタービン発電機やガスタービンエンジンを実現することが可能となる。
また、家庭用に用いられる発電システムでは、システムの頻繁なON・OFFが想定されるが、本発明を適用することで急激な起動・停止が可能な家庭用燃料電池システムを実現することが可能となる。
【0159】
上記では、主に燃料電池とガスタービンとを組み合わせたコンバインド発電システムについて説明した。燃料電池は、ガスタービンと組み合わせて用いる必要は無い。例えば燃料電池が単体で用いられる場合にも、本発明を適用することで、圧力変化に対する燃料電池の耐久性を向上することが可能である。
【0160】
上記では、主に燃料電池として固体酸化物形燃料電池(SOFC)を用いる場合について説明した。これに限定されず、他の種類の燃料電池に対して本発明を適用することも可能である。例えば、固体高分子形燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)、リン酸形燃料電池(PAFC:Phosphoric Acid Fuel Cell)、溶融炭酸塩形燃料電池(MCMF:Molten Carbonate Fuel Cell)等の他のタイプの燃料電池に本発明が適用されてもよい。
【0161】
以上説明した本発明に係る特徴部分のうち、少なくとも2つの特徴部分を組み合わせることも可能である。すなわち各実施形態で説明した種々の特徴部分は、各実施形態の区別なく、任意に組み合わされてもよい。また上記で記載した種々の効果は、あくまで例示であって限定されるものではなく、また他の効果が発揮されてもよい。
【符号の説明】
【0162】
1…水素ガス
2…空気
5…セルユニット
6…セルスタック
10、210…燃料電池
11…加圧容器
12…発電機
13…ガスタービン
20…発電セル
30…対象インターコネクタ
31…第1のインターコネクタ
32…第2のインターコネクタ
51…圧縮機
52…燃焼器
53…タービン
60…圧力差影響抑制部
61、61a、61b、110、111、112…圧力機構
66a、66b、66c…補強機構
70…航空機
100、200…発電装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
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図18
図19