(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034711
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】枚葉印刷機のスイング装置
(51)【国際特許分類】
B65H 5/12 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
B65H5/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139155
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】714000460
【氏名又は名称】リョービMHIグラフィックテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】甲賀 達也
【テーマコード(参考)】
3F101
【Fターム(参考)】
3F101CA10
3F101CB00
3F101CD02
3F101LA06
3F101LB03
(57)【要約】
【課題】損傷を招くことなく不正紙を咥えることを確実に阻止する。
【解決手段】給紙部からの枚葉紙を受取位置と印刷部への受渡位置との間を移動し、受取位置で枚葉紙を咥え、受渡位置で咥えを開く爪4を備えるスイング部と、爪を咥え姿勢と開放姿勢とに開閉し、爪が枚葉紙を受取位置で咥えないように規制可能なストッパ51を有する爪開閉機構5と、受取位置にある爪4が咥え姿勢より開いた第1開放姿勢となるように、ストッパ51に当接する第1当接部61と受取位置にある爪4が第1開放姿勢より開いた第2開放姿勢となるように、ストッパ51に当接する第2当接部62が形成され、不正紙を検出した検出信号により、第1当接部61がストッパ51に当接する第1位置に位置するように規制部6を移動させる第1機構部7と、第1位置から第2位置に位置するように規制部6を移動させる第2機構部8と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枚葉紙を給紙する給紙部と、該給紙部が給紙した枚葉紙を印刷する印刷部と、を備える枚葉印刷機に設けられ、前記給紙部からの枚葉紙を前記印刷部へ受け渡す枚葉印刷機のスイング装置であって、
前記給紙部からの枚葉紙を受け取る受取位置と、受け取った枚葉紙を印刷部へ受け渡す受渡位置との間を移動するように構成されるとともに、前記受取位置で枚葉紙を咥え、かつ、前記受渡位置で前記咥えを開放するよう構成された爪を備えるスイング部と、
前記給紙部において不正な姿勢の枚葉紙である不正紙を検出する検出手段と、
前記爪を咥え姿勢と開放姿勢とに開閉するように構成され、前記爪が枚葉紙を前記受取位置で咥えないように規制可能なストッパを有する爪開閉機構と、
前記受取位置にある前記爪が咥え姿勢より開いた第1開放姿勢となるように、前記ストッパに当接して前記爪開閉機構の動きを規制する第1当接部、及び、前記受取位置にある前記爪が前記第1開放姿勢より開いた第2開放姿勢となるように、前記ストッパに当接して前記爪開閉機構の動きを規制する第2当接部が形成されるとともに、前記第1当接部及び前記第2当接部が前記ストッパに当接しない退避位置、前記第1当接部が前記ストッパに当接する第1位置、前記第2当接部が前記ストッパに当接する第2位置を移動可能な規制部と、
前記検出手段からの不正紙を検出した時の検出信号に基づいて、前記退避位置から前記第1位置に位置するように前記規制部を移動させる第1機構部と、
前記検出手段からの不正紙を検出した時の検出信号に基づいて、前記第1位置に位置した状態から前記第2位置に位置するように前記規制部を移動させる第2機構部と、
を備えていることを特徴とする枚葉印刷機のスイング装置。
【請求項2】
前記第1機構部を駆動する第1駆動部と、前記第1駆動部とは別に構成され、前記第2機構部を駆動する第2駆動部と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の枚葉印刷機のスイング装置。
【請求項3】
前記規制部と前記第1駆動部とは、両者の相対距離を不変に連結するリンク部材で連結されていることを特徴とする請求項2に記載の枚葉印刷機のスイング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給紙部からの枚葉紙を印刷部へ渡すための枚葉印刷機のスイング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記枚葉印刷機のスイング装置は、給紙部と印刷部との間を往復するスイング部に備える爪で枚葉紙を咥えて印刷部へ搬送する。前記爪を開閉させる爪開閉機構は、スイング部のスイング軸に遊装され爪を開閉させる紙咥えカムと、スイング部のスイング動作に同期して回転する咥えタイミングカムと、この咥えタイミングカムのカム面に押し付けられるカムフォロアを備えるカムレバーと、カムレバーの揺動を紙咥えカムに伝達するためにカムレバーと紙咥えカムとを連結するリンクと、を備えている。また、前記スイング装置には、不正紙検出手段により不正紙が検出されると、ソレノイドを駆動することにより前記カムレバーの切欠きに係合して該カムレバーの揺動を規制するための停止爪を備えている。カムレバーの揺動が規制されると、リンクを介して紙咥えカムの動きが規制されて爪が閉じることが阻止され、不正紙と検出された枚葉紙を爪が咥えて印刷部へ搬送することを防止している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、前記停止爪の先端部を切り欠いて段状に形成することで、高速運転時における確実な係合と、係合維持状態における衝突音の軽減を実現するとされている。
【0004】
具体的には、高速運転時に不正紙を検出した場合には、まず、停止爪の先端面とは反対側の基部側に該先端面と略平行に立ち上げられた切欠きの段部(段差面)にカムレバーの切欠き(被係合部)が係合してカムレバーの揺動を規制することで、爪が半開きの状態となるように爪の閉じ方向への移動量を制限し、爪が枚葉紙を咥えることを阻止する。
【0005】
その後の機械回転によりカムレバーの切欠きが停止爪から離間する方向へ揺動して停止爪との係合(接触)が解除された時に、停止爪が圧縮コイルバネの付勢力によってカムレバー側へ回動することで、停止爪の先端面がカムレバーの切欠きに係合する位置へ移動してカムレバーの揺動を更に規制する。これにより爪の閉じ方向への移動量をより小さく制限するとともに、カムレバーが停止爪に衝突する時に発生する音を低減することができるとされている。
【0006】
ところが、カムレバーの動作速度が、印刷機の運転速度に比例するのに対し、停止爪を動かすソレノイドの動作速度は、印刷機の運転速度に依らず一定であるため、特定の比較的低い低速度では、停止爪の動作タイミングによっては、停止爪の切欠きの角部とカムレバーの切欠きや先端面の角部とが衝突してしまい、角が欠ける等の損傷を招くことがあり、早期改善が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、損傷を招くことなく不正紙を咥えることを確実に阻止することができる枚葉印刷機のスイング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る枚葉印刷機のスイング装置は、枚葉紙を給紙する給紙部と、該給紙部が給紙した枚葉紙を印刷する印刷部と、を備える枚葉印刷機に設けられ、前記給紙部からの枚葉紙を前記印刷部へ受け渡す枚葉印刷機のスイング装置であって、前記給紙部からの枚葉紙を受け取る受取位置と、受け取った枚葉紙を印刷部へ受け渡す受渡位置との間を移動するように構成されるとともに、前記受取位置で枚葉紙を咥え、かつ、前記受渡位置で前記咥えを開放するよう構成された爪を備えるスイング部と、前記給紙部において不正な姿勢の枚葉紙である不正紙を検出する検出手段と、前記爪を咥え姿勢と開放姿勢とに開閉するように構成され、前記爪が枚葉紙を前記受取位置で咥えないように規制可能なストッパを有する爪開閉機構と、前記受取位置にある前記爪が咥え姿勢より開いた第1開放姿勢となるように、前記ストッパに当接して前記爪開閉機構の動きを規制する第1当接部、及び、前記受取位置にある前記爪が前記第1開放姿勢より開いた第2開放姿勢となるように、前記ストッパに当接して前記爪開閉機構の動きを規制する第2当接部が形成されるとともに、前記第1当接部及び前記第2当接部が前記ストッパに当接しない退避位置、前記第1当接部が前記ストッパに当接する第1位置、前記第2当接部が前記ストッパに当接する第2位置を移動可能な規制部と、前記検出手段からの不正紙を検出した時の検出信号に基づいて、前記退避位置から前記第1位置に位置するように前記規制部を移動させる第1機構部と、前記検出手段からの不正紙を検出した時の検出信号に基づいて、前記第1位置に位置した状態から前記第2位置に位置するように前記規制部を移動させる第2機構部と、を備えていることを特徴としている。
【0010】
上記構成によれば、検出手段により不正紙を検出すると、第1機構部は、第1当接部がストッパに当接しない退避位置から当接する第1位置に位置するように規制部を移動させる。これにより、爪の閉じ方向への移動量を咥え姿勢より開いた第1開放姿勢までに制限し、爪が枚葉紙を咥えることを阻止する。第2機構部は、第1当接部が第1位置に位置している状態から、第2当接部がストッパに当接する第2位置に位置するように規制部を移動させる。これにより、爪の閉じ方向への移動量を第1開放姿勢より開いた第2開放姿勢までに制限した状態で、爪が枚葉紙を咥えることを阻止する。このように、第1機構部と第2機構部とで規制部の移動を段階的に行わせることで、規制部の移動時に規制部の角部とストッパの角部が当接することを抑制でき、規制部及びストッパの損傷を招くことを防止できる。
【0011】
また、本発明に係る枚葉印刷機のスイング装置は、前記第1機構部を駆動する第1駆動部と、前記第1駆動部とは別に構成され、前記第2機構部を駆動する第2駆動部と、を備えていてもよい。
【0012】
上記のように、第1機構部を駆動する第1駆動部と第2機構部を駆動する第2駆動部を設けることによって、規制部の移動時に規制部の角部とストッパの角部が当接することをより一層抑制することができる。
【0013】
また、本発明に係る枚葉印刷機のスイング装置は、前記規制部と前記第1駆動部とが、両者の相対距離を不変に連結するリンク部材で連結されていてもよい。
【0014】
上記のように、規制部と前記第1駆動部とが、両者の相対距離を不変に連結するリンク部材で連結されることによって、規制部の動きの応答性を向上させることができる。これにより、規制部の移動を開始するまでの時間的な余裕が大きくなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ストッパに当接して爪開閉機構の動きを段階的に規制する第1当接部及び第2当接部が形成される規制部を設けることによって、損傷を招くことなく不正紙を咥えることを確実に阻止することができる枚葉印刷機のスイング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】印刷機のスイング装置を示し、給紙胴と給紙部の一部を示す側面図である。
【
図2】
図1のスイング軸に回転可能に取り付けられた爪開閉カムと爪開閉カムにより開閉する爪を示す側面図である。
【
図3】タイミングカムにより爪を開閉する爪開閉機構を示す側面図であり、受取位置の爪が開放する状態を示している。
【
図4】同爪開閉機構を示す側面図であり、受取位置の爪が閉じる状態を示している。
【
図5】同爪開閉機構を示す側面図であり、不正紙を検出して第1当接部を第1位置に移動させた状態を示している。
【
図6】同爪開閉機構を示す側面図であり、第1当接部を第1位置に移動させた後、ストッパが第1当接部に当接して爪開閉カムの回動を制限している状態を示している。
【
図7】同爪開閉機構を示す側面図であり、第1位置に第1当接部を移動させた状態から、第2当接部を第2位置に位置させた状態を示している。
【
図8】同爪開閉機構を示す側面図であり、第2位置に第2当接部を移動させた後、ストッパが第2当接部に当接して爪開閉カムの回動を制限している状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態にかかる印刷機のスイング装置について、図面を参照しながら説明する。図では、スイング装置の全ての構成部品を一つの図で描くと、部品同士が重なって煩雑になり、わかり難くなるので、部品を分けて図示している。
図1では、給紙胴2と給紙部のフィーダ装置1と前当て17とスイング部3とを示している。
図2では、爪4と爪4を開閉する爪開閉カム11とを示している。
図3~
図8は、タイミングカム13により爪4を開閉する爪開閉機構5を示している。
【0018】
スイング装置は、枚葉紙を給紙する給紙部と、給紙部が給紙した枚葉紙を印刷する印刷部と、を備える枚葉印刷機に設けられる。給紙部は、枚葉紙が積まれた紙積み台(図示せず)及び紙積み台からの枚葉紙を搬送するフィーダ装置1を備えている。印刷部は、この実施形態では、印刷ユニット(図示せず)に枚葉紙を受け渡すための給紙胴2のみを図示している。
【0019】
スイング装置は、具体的には、爪4を備えるスイング部3と、不正紙を検出する検出手段(図示せず)と、ストッパ51を有する爪開閉機構5と、爪開閉機構5の動きを段階的(2段階)に規制する規制部6と、検出手段からの不正紙を検出した時の検出信号に基づいて、規制部6を移動させる第1機構部7及び第2機構部8と、を備えている。
【0020】
スイング部3は、
図1に示すように、スイング軸31と、スイング軸31に取り付けられたスイングアーム32と、を備え、給紙部からの枚葉紙Pを受け取る受取位置(
図1に示す位置)と、受け取った枚葉紙を印刷部(給紙胴2)へ受け渡す受渡位置との間を往復移動するように構成されている。スイング軸31は、図示していない左右のフレームに回動自在に支持されている。そのスイング軸31に印刷機からの動力が伝えられることで所定角度往復揺動する。すなわち、スイング部3は、所定角度往復揺動する。
【0021】
爪4は、スイングアーム32に回転自在に支持された爪軸9に取り付けられた爪アーム10の先端部(
図2では右端部)に取り付けられ、爪軸9の回動によって、受取位置で枚葉紙Pを咥え、受渡位置で咥えを開放(解除)できるように構成されている。爪軸9における爪4の反対側には、爪開閉カムフォロア12が取り付けられている。爪開閉カムフォロア12は、爪軸9内に備えるトーションバー(図示せず)のバネ力により爪開閉カム11に押し付けられている。また、スイングアーム32には、爪4との間で枚葉紙Pを咥えるための爪台4Aが取り付けられている。
【0022】
爪開閉機構5は、
図3に示すように、爪開閉カム11と、タイミングカム13と、揺動レバー14と、リンク15と、ストッパ51と、を備えている。爪開閉カム11は、スイング軸31に揺動可能に遊嵌されており、給紙胴2(
図1)と一体回転するタイミングカム13に追従して揺動する揺動レバー14にリンク15を介して連結されている。したがって、タイミングカム13が図に矢印で示す時計回りに回転することにより、揺動レバー14が回転軸16を中心に揺動される。この揺動レバー14の揺動運動が、リンク15を介して爪開閉カム11に伝達される。これにより、爪開閉カム11がスイング軸31を中心として所定角度揺動すると、爪開閉カムフォロア12の爪開閉カム11への転接による爪軸9の回動によって、爪4が爪台4Aとの間で枚葉紙を咥える(挟持する)ことができる咥え姿勢(閉じた姿勢)と咥える(挟持する)ことができない開放姿勢(開いた姿勢)とに姿勢変更する。
【0023】
爪開閉カム11は、
図2に示すように、扇形状に形成され、回動方向(周方向)中央部に大径の大径部11Aを備え、大径部11Aの回動方向(周方向)両側に両端側に向かって縮径して小径になる小径部11B,11Cを備えている。爪開閉カムフォロア12が、大径部11Aに対接した時に爪4が咥え姿勢となり、小径部11B又は11Cに対接した時に爪4が開放姿勢になる。
【0024】
揺動レバー14は、
図3に示すように、長手方向中間部に設けられた回転軸16回りに回動自在に構成され、一端部(
図3の右端部)にタイミングカム13に当接するカムフォロア18が取り付けられ、他端部(
図3の左端部)にストッパ51が取り付けられている。カムフォロア18は、爪開閉カム11を時計回りに付勢する圧縮コイルバネ19の付勢力がリンク15を介して揺動レバー14に伝達されることで、タイミングカム13に押し付けられる。ストッパ51は、金属からなり、揺動レバー14の他端部において右側(規制部6側)へ突設されており、その先端に規制部6と当接するフラットな当接面51Aを備えている。詳細には、ストッパ51は、揺動レバー14の他端部に貫通配置された軸部20Aの規制部6側端に備える円盤状の突出部20Bの先端面20bから右側(規制部6側)へ突設されている。先端面20bにおけるストッパ51の下側には、後述する第2当接部62との干渉を避けるための凹部20Cが形成されている。
【0025】
ストッパ51は、検出手段からの不正紙を検出した時の検出信号に基づいて、爪4が不正紙として検出された枚葉紙Pを咥えないように、すなわち、爪4が咥え姿勢にならないように、爪開閉カム11の揺動角度を規制するためのものである。
【0026】
検出手段は、後述する前当て17の枚葉紙搬送方向上流側に設けられ、枚葉紙が二枚以上重なっていることや枚葉紙の前端及び左右端が正しい位置に位置決めされていないこと等、枚葉紙の不正な姿勢等を検出することにより、不正紙であると判断して検出信号を図示していない制御部に出力する。出力された信号により、制御部は、爪4が枚葉紙を咥えないように第1機構部7及び第2機構部8の作動を制御する。
【0027】
また、給紙部には、搬送される枚葉紙の搬送方向前端(始端)が当接して枚葉紙の搬送を一時的に阻止することで枚葉紙の搬送方向前端を揃えるための前当て17(
図1参照)を備えている。この前当て17に枚葉紙Pが到着した後の所定のタイミングで受取位置に位置しているスイング部3の爪4が閉じて枚葉紙Pの前端を咥える。咥えた後に、前当て17が作動位置(枚葉紙を止める位置)から枚葉紙搬送方向下流側に倒れ込む待機位置へ移動した後に、爪4が給紙胴2との受渡位置まで移動して給紙胴2に備える給紙胴用爪21へ枚葉紙Pを受け渡す(爪4は開く)。枚葉紙Pを受け渡したのちは、爪4は受取位置へ復帰する。
【0028】
規制部6は、第1当接部61と、第1当接部61よりもさらにストッパ51側に突出する第2当接部62と、回動部材23と、作動片24を有している。第1当接部61と第2当接部62は、高さ方向に隣り合うように一体形成され、ストッパ51側へ突出している。第1当接部61と第2当接部62はストッパ51側を向く平面として形成されている。この実施形態では、第1当接部61が上側に位置し、第2当接部62が下側に位置している。
【0029】
第1当接部61は、受取位置にある爪4が枚葉紙を咥えることができる咥え姿勢より開いた第1開放姿勢となるように、ストッパ51の当接面51Aに当接して爪開閉機構5の動きを規制する。第1開放姿勢の爪4は枚葉紙を咥えることができない。第2当接部62は、受取位置にある爪4が前記第1開放姿勢より開いた第2開放姿勢となるように、ストッパ51の当接面51Aに当接して爪開閉機構5の動きを規制する。第2開放姿勢の爪4は枚葉紙を咥えることができない。
【0030】
規制部6の回動部材23は円柱状に形成されており、支軸22に回転自在に支持されている。第1当接部61と第2当接部62は、回動部材23の外周部のうちのストッパ51側(左側)の部位に取り付けられている。規制部6の作動片24は、回動部材23の外周部のうちの右側の部位に突設されている。作動片24の下側には、作動片24を下方へ引っ張ることができるソレノイド25が配置されている。ソレノイド25(詳細には後述するプランジャー25A)と作動片24とは、上下に延びるアルミ製のリンク部材26で相対距離不変に連結されている。規制部6と、リンク部材26と、ソレノイド25とから第1機構部7を構成している。ソレノイド25は、第1機構部7を駆動する第1駆動部を構成する。作動片24と第1駆動部(ソレノイド25)とが、両者の相対距離を不変に連結するリンク部材26で連結されることによって、規制部6の動きの応答性を向上させることができる。これにより、規制部6の移動を開始するまでの時間的な余裕が大きくなる。
【0031】
ソレノイド25は、駆動時には、励磁用コイルの励磁によって、プランジャー25Aを後退させるプル型に構成されている。非駆動時(励磁用コイルが非励磁の時)は、プランジャー25Aは、規制部6を反時計回りに付勢する引張コイルスプリング28の付勢力がリンク部材24を介して伝わることで上方へ突出している。このとき、作動片24がその上方へ設置されている位置決めボルト29に当接することでプランジャー25Aの突出位置が決まる(
図3参照)。また、作動片24が位置決めボルト29に当接した状態では、第1当接部61は、ストッパ51の当接面51Aに当接しない退避位置(
図3、4参照)に位置する。位置決めボルト29の下方への突出量を調整することによって、退避位置を調整することができる。ソレノイド25の励磁用コイルの励磁によってプランジャー25Aが引張コイルスプリング28の付勢力に抗して下方へ後退すると、リンク部材24を介して規制部6が支軸22を中心として時計回りに所定角度回転する。この時計回りの所定角度の回転によって、第1当接部61がストッパ51の当接面51Aに当接しない退避位置(
図4参照)からストッパ51の当接面51Aに当接する第1位置(
図6参照)に移動する。これにより、爪4の閉じ方向への移動量を咥え姿勢より開いた第1開放姿勢までに制限し、爪4が枚葉紙を咥えることを阻止する。なお、この時計回りの所定角度の回転では、第2当接部62は、ストッパ51の当接面51Aに当接する位置には到達していない。
【0032】
また、
図3等に示すように、ソレノイド25は、複数の部品からなる枠体27に取り付けられており、この枠体27と共に、ソレノイド25の左側でかつ上側に位置する紙面に直交する水平軸Xを中心として時計回りに傾動可能に設置されている。枠体27及びソレノイド25は、不図示の弾性部材による位置保持力によって、
図3から
図5に示す垂直姿勢を維持している。
【0033】
枠体27の下端部には、エアシリンダ30のピストンロッド30Aが連結されている。エアシリンダ30のシリンダチューブ30Bが印刷機のフレームに固定された固定部材33に取り付けられている。ピストンロッド30Aは、非作動時は、シリンダチューブ30Bから押し出された状態(伸びた状態)となり、作動時は、シリンダチューブ30Bに引き込まれた状態(縮んだ状態)となる。ピストンロッド30Aが伸びた状態では、枠体27及びソレノイド25は、垂直姿勢を維持する。一方、ピストンロッド30Aが縮んだ状態では、枠体27及びソレノイド25が一体的に水平軸Xを中心として時計回りに傾動(回転)する。ソレノイド25の駆動によって第1当接部61がストッパ51の当接面51Aに当接する第1位置に位置した状態(
図6参照)にある規制部6は、さらにピストンロッド30Aが縮んだ状態になると、ソレノイド25が水平軸Xを中心として時計回りに傾動(回転)することで、リンク部材26を介してさらに支軸22を中心として時計回りに回動する。この回動によって第2当接部62がストッパ51の当接面51Aに当接する第2位置(
図7参照)に移動する。これにより、爪4の閉じ方向への移動量を第1開放姿勢よりさらに開いた第2開放姿勢までに制限し、爪4が枚葉紙を咥えることを阻止する。枠体27とエアシリンダ30は、第2機構部8を構成している。エアシリンダ30が、第2機構部8を駆動する第2駆動部を構成する。
【0034】
図3及び
図4では、不正紙が検出されていない通常の印刷状態を示している。つまり、ソレノイド25及びエアシリンダ30が非作動状態で規制部6の第1当接部61と第2当接部62がストッパ51に接触しない退避位置に位置している状態である。
図3は、タイミングカム13の最も大径の面にカムフォロア18が当接している状態である。この状態からタイミングカム13が矢印方向に回転すると、カムフォロア18のカム面13Aへの追従によって揺動レバー14が揺動し、リンク15を介して爪開閉カム11を
図4に示す位置へ回動する。
図4は、タイミングカム13の最も小径の面の範囲にカムフォロア18が当接している状態である。そして所定のタイミングで受取位置に移動しているスイング部3の爪4が爪開閉カム11の大径部11Aによって閉じられて枚葉紙を咥える。咥えた後は、前述したように、前当て17が作動位置から待機位置へ移動した後に、爪4が給紙胴2との受渡位置まで移動して給紙胴2に備える給紙胴用爪21へ枚葉紙を受け渡す。受け渡しの直後に、爪4は、爪開閉カム11の小径部11Cによって開く。こののちは、爪4は、受取位置へ復帰する。
【0035】
次に、不正紙が検出されて爪4が受取位置で閉じないように規制部6を移動させることについて説明する。不正紙が検出されると、先ずソレノイド25を駆動する。ソレノイド25の駆動によって、タイミングカム13の回転に伴いストッパ51の当接面51Aが第1当接部61に干渉しない位置に位置しているタイミング(例えば
図3のタイミング)で、第1当接部61がストッパ51の当接面51Aに当接しない退避位置からストッパ51の当接面51Aに当接する第1位置(
図5参照)に移動する。第1当接部61のストッパ51の当接面51Aへの当接によって揺動レバー14の揺動角度は制限され、
図6に示すように、タイミングカム13の小径の範囲には当接できなくなる。揺動レバー14の揺動角度が制限されることで、爪開閉カム11の回動角度が制限され、爪4を閉じることができない。つまり、爪4の閉じ方向への移動量を咥え姿勢より開いた第1開放姿勢までに制限し、爪4が枚葉紙を咥えることを阻止する。
【0036】
なお、この第1当接部61がストッパ51の当接面51Aに当接している状態では、タイミングカム13の最も大径の面にカムフォロア18が当接している時に当接面51Aと第1当接部61との間に比較的大きな隙間S1が形成される。そしてタイミングカム13の回転によって揺動レバー14が揺動してストッパ51の当接面51Aが第1当接部61に当接するときは、タイミングカム13のカム形状から比較的大きな速度で当接(衝突)することになり、大きな音(衝突音)が発生し続けることになってしまう。
【0037】
そこで、ソレノイド25の駆動後短時間のうちにエアシリンダ30も短縮作動させることで、大きな音が発生し続けることを防止している。エアシリンダ30の短縮作動によって、タイミングカム13の回転に伴いストッパ51の当接面51Aが第2当接部62に干渉しない位置に位置しているタイミング(例えば
図5のタイミング)で、規制部6が第1位置(
図5参照)から第2位置(
図7参照)へ移動する(
図7参照)。そして第2当接部62のストッパ51の当接面51Aへの当接によって揺動レバー14の揺動角度はさらに制限されて、揺動レバー14の揺動角度もさらに制限される(
図8参照)。これにより、爪開閉カム11の回動角度がさらに制限され、爪4の閉じ方向への移動量を第1開放姿勢より開いた第2開放姿勢までに制限し、爪4が枚葉紙を咥えることを確実に阻止する。この状態では、タイミングカム13の最も大径の面にカムフォロア18が当接している時に当接面51Aと第2当接部62との間に形成される隙間S2(
図7参照)は、隙間S1(
図5参照)よりも小さくなる。したがって、タイミングカム13の回転によって揺動レバー14が揺動してストッパ51の当接面51Aが第2当接部62に当接するときの速度は小さくなり、よって、大きな音が発生し続けることを防止できる。このように、規制部6の移動を段階的(2段階)に行わせることで、大きな音が発生し続けることを防止できると共に、規制部6の移動時に第2当接部62の上側の角部とストッパ51の当接面51Aの下側の角部が当接して損傷を招くことを防止できる。また、規制部6の移動時に第2当接部62の上側の角部とストッパ51の角部が当接して規制部6がはじかれることや大きな当接音が発生することを防止できる。因みに、前記隙間S2を大きくすることによって、規制部6を一回の移動で第2位置に位置させることが可能であるが、隙間S2が大きくなると、ストッパ51が規制部6に衝突するときの衝突音がさらに大きくなる等の不都合が発生する。そのため、本発明のように段階的(2段階)に規制部6を移動させることで、
図7に示す隙間S2をできる限り小さくすることができる。
【0038】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0039】
前記実施形態では、第1機構部7を駆動する第1駆動部と第2機構部8を駆動する第1駆動部とは別の第2駆動部とを設けたが、第1機構部7及び第2機構部8を1つの駆動部で駆動するように構成してもよい。
【0040】
また、前記実施形態では、第1当接部61と第2当接部62とを上下方向に隣り合うように配置したが、左右(水平)方向で第1当接部61と第2当接部62とが並ぶように配置してもよい。この場合、規制部6を左右(水平)方向に段階的(2段階)に移動させることになる。
【0041】
また、前記実施形態では、規制部6をストッパ51の下方から上方へ移動させる構成であったが、規制部6をストッパ51の上方から下方へ移動させる構成であってもよい。この場合、第1当接部61が下側で第2当接部62が上側に配置された規制部6に構成することになる。
【0042】
また、前記実施形態では、規制部6により揺動レバー14の揺動を規制して爪4が閉じることを阻止するように構成したが、爪開閉カム11の回動を規制部6により規制して爪4が閉じることを阻止する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0043】
1…フィーダ装置、2…給紙胴、3…スイング部、4…爪、4A…爪台、5…爪開閉機構、6…規制部、7…第1機構部、8…第2機構部、9…爪軸、10…爪アーム、11…爪開閉カム、11A…大径部、11B,11C…小径部、12…爪開閉カムフォロア、13…タイミングカム、13A…カム面、14…揺動レバー、15…リンク、16…回転軸、17…前当て、18…カムフォロア、19…圧縮コイルバネ、20A…軸部、20B…突出部、20C…凹部、20b…先端面、21…給紙胴用爪、22…支軸、23…回動部材、24…作動片、25…ソレノイド(第1駆動部)、25A…プランジャー、26…リンク部材、27…枠体、28…引張コイルスプリング、29…位置決めボルト、30…エアシリンダ(第2駆動部)、30A…ピストンロッド、30B…シリンダチューブ、31…スイング軸、32…スイングアーム、33…固定部材、51…ストッパ、51A…当接面、61…第1当接部、62…第2当接部、P…枚葉紙、S1,S2…隙間、X…水平軸