(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034716
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】タイヤ製造方法及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
B29D 30/72 20060101AFI20240306BHJP
B60C 13/00 20060101ALI20240306BHJP
B29C 33/02 20060101ALI20240306BHJP
B29C 35/02 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
B29D30/72
B60C13/00 C
B29C33/02
B29C35/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139164
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安永 智一
(72)【発明者】
【氏名】和田 武蔵
【テーマコード(参考)】
3D131
4F202
4F203
4F215
【Fターム(参考)】
3D131BC31
3D131BC47
3D131GA01
3D131LA28
4F202AA45
4F202AB03
4F202AD01
4F202AD11
4F202AF10
4F202AH20
4F202CA21
4F202CK28
4F202CU02
4F202CY30
4F203AA45
4F203AB03
4F203AD01
4F203AD11
4F203AH20
4F203DA11
4F203DB01
4F203DC01
4F203DL10
4F215AH20
4F215VA03
4F215VD09
4F215VL22
4F215VL27
4F215VP37
(57)【要約】
【課題】タイヤの装飾性を高めることができ、しかも装飾性を高めるための色素がタイヤの変形によって脱落する心配が少ないタイヤ製造方法及びタイヤを提供する。
【解決手段】タイヤベース色とは異なる色彩のカラー粉末7をタイヤ加硫金型のタイヤ成形面5に液状物である潤滑剤6を介して付着させる付着工程と、その付着工程の後、未加硫のタイヤの外表面をタイヤ成形面5に押し当てて前記タイヤに加硫成形を施す加硫工程と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤベース色とは異なる色彩のカラー粉末をタイヤ加硫金型のタイヤ成形面に液状物を介して付着させる付着工程と、
前記付着工程の後、未加硫のタイヤの外表面を前記タイヤ成形面に押し当てて前記タイヤに加硫成形を施す加硫工程と、を備えるタイヤ製造方法。
【請求項2】
前記付着工程は、前記タイヤ成形面に前記液状物を塗布する第1の段階と、前記第1の段階の後、前記タイヤ成形面に前記カラー粉末を塗布する第2の段階と、を含む、請求項1に記載のタイヤ製造方法。
【請求項3】
前記タイヤ成形面は、前記タイヤのサイドウォールに表示マークを形成するための凹凸部を含み、
前記第1の段階では、揮発性溶剤である前記液状物を前記タイヤ成形面に塗布し、
前記第2の段階では、前記凹凸部の隅部に溜まった前記揮発性溶剤を介して前記カラー粉末を付着させる、請求項2に記載のタイヤ製造方法。
【請求項4】
前記付着工程は、前記第2の段階の後、前記タイヤ成形面に付着していない前記カラー粉末をエアブローにより除去する第3の段階を含む、請求項2又は3に記載のタイヤ製造方法。
【請求項5】
前記付着工程では、予め調製した前記カラー粉末と前記液状物との混合物を前記タイヤ成形面に塗布する、請求項1に記載のタイヤ製造方法。
【請求項6】
タイヤベース色とは異なる色彩のカラー粉末が外表面に加硫接着されているタイヤ。
【請求項7】
サイドウォールの外表面に形成された表示マークの輪郭に沿って前記カラー粉末が加硫接着されている、請求項6に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤ製造方法及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、サイドウォールの模様や文字を蓄光塗料で表示することにより装飾性を高めたタイヤが記載されている。当該文献に記載の実施例では、蓄光顔料と寒水とを混合して蓄光塗料を作成し、それをタイヤのサイドウォールに刷毛で塗布している。また、別の実施例では、既成の蓄光シートを切り取って文字板を作成し、それをゴム糊や熱圧着によって貼り付けている。しかし、かかる手法により付された蓄光塗料は、タイヤの変形(例えば、走行時のサイドウォールの撓み)に伴って脱落する懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、タイヤの装飾性を高めることができ、しかも装飾性を高めるための色素がタイヤの変形によって脱落する心配が少ないタイヤ製造方法及びタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のタイヤ製造方法は、タイヤベース色とは異なる色彩のカラー粉末をタイヤ加硫金型のタイヤ成形面に液状物を介して付着させる付着工程と、前記付着工程の後、未加硫のタイヤの外表面を前記タイヤ成形面に押し当てて前記タイヤに加硫成形を施す加硫工程と、を備えるものである。
【0006】
本開示のタイヤは、タイヤベース色とは異なる色彩のカラー粉末が外表面に加硫接着されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】タイヤ軸方向から見たタイヤの要部を示す正面図
【
図3】タイヤ加硫金型のタイヤ成形面の要部を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0009】
図1は、タイヤ軸方向から見たタイヤTの要部を示す正面図である。タイヤTは、ビード部1と、そのビード部1からタイヤ径方向外側に延びたサイドウォール2と、サイドウォール2のタイヤ径方向外側端に連なって接地面を形成するトレッド3とを備えた空気入りタイヤである。タイヤ径方向は、タイヤTの直径に沿った方向であり、
図1の上下方向に相当する。
図1において上側がタイヤ径方向外側となり、下側がタイヤ径方向内側となる。タイヤ軸方向は、タイヤTの回転軸と平行な方向である。
【0010】
タイヤTのサイドウォール2には、表示マーク4を構成する文字「O」が形成されている。実際には複数の文字がタイヤ周方向に沿って配列されているが、
図1では「O」以外の文字について図示を省略している。タイヤ周方向は、タイヤTの回転軸周りの方向であり、
図1の左右方向に概ね相当する。表示マーク4は、タイヤTのメーカ名やブランド名、タイヤサイズ、製造年週などの情報を表示する。表示マーク4には、文字に代えて又は加えて、記号や図形、模様などが含まれる場合がある。
【0011】
表示マーク4は、加硫成形によってサイドウォール2に形成された隆起部や窪み部によって形成される。
図1,2に示すように、表示マーク4は、サイドウォール2に形成された隆起部20によって形成されている。隆起部20は、サイドウォール2のプロファイルに沿った表面2aから隆起している。隆起部20は、表示マーク4の輪郭に沿って延びている。隆起部20は、文字の外側を縁取る第1隆起部21と、文字の内側を縁取る第2隆起部22とを有する。「T」や「Y」などの文字であれば、隆起部20は第1隆起部21のみを有することになる。
【0012】
隆起部20で囲まれた領域には、互いに平行に配列された多数のリッジ31からなるセレーション30が形成されている。リッジ31は、例えば断面三角形状の凸条によって形成される。リッジ31の延在方向は特に限定されるものではない。表面2aを基準としたリッジ31の高さは、隆起部20の高さよりも小さく設定されているが、これらが同じ大きさであっても構わない。セレーション30を省略することも可能であり、セレーション30の代わりに平滑面が形成されていてもよい。
【0013】
このような表示マーク4は、一般にはタイヤベース色と同じ色彩で形成されるため、表示マーク4とその周辺部との区別がつき難い。したがって、表示マーク4の視認性が向上するようにタイヤTの装飾性を高めることが望ましい。このタイヤTでは、タイヤベース色とは異なる色彩のカラー粉末7が外表面に加硫接着されており、それによって表示マーク4の視認性の向上を図っている。本実施形態では、隆起部20にカラー粉末7が加硫接着されている。より詳しくは、隆起部20の頂面と側面とがなす角部にカラー粉末7が加硫接着されている。
【0014】
ここで、「タイヤベース色」とは、タイヤTの外表面(主にはサイドウォール2やトレッド3の外表面)を構成するゴムの色であり、通常は黒色である。黒色以外のゴム(例えば、白色ゴム)がサイドウォール2の一部に用いられる場合もあるが、タイヤベース色は、露出面積の最も多いゴムの色(通常は黒色)として定義される。また、「タイヤベース色とは異なる色彩」とは、色の三要素である「色相」、「明度」、「彩度」のうち少なくとも一つがタイヤベース色と相違することを意味する。これらのうち少なくとも「色相」がタイヤベース色と相違していることが好ましい。
【0015】
図3は、タイヤTを成形するタイヤ加硫金型のタイヤ成形面5において
図2に対応する箇所の断面を示す。タイヤ成形面5は、サイドウォール2を成形するサイドモールド10の内面に形成されている。タイヤ成形面5は、サイドウォール2に表示マーク4を形成するための凹凸部を含む。凹凸部は、隆起部20を形成するための凹部40と、セレーション30を形成するための凹部50とを備える。凹部50は、リッジ31を形成するための凹条を含んでいる。加硫成形時にサイドウォール2のゴムが凹凸部に押し当たることで、この凹凸部を転写した形状の表示マーク4が形成される。
【0016】
図1,2に示したカラー粉末7が外表面に加硫接着されているタイヤTは、カラー粉末7をタイヤ成形面5に液状物を介して付着させる付着工程と、その付着工程の後、未加硫のタイヤの外表面をタイヤ成形面5に押し当てて該タイヤに加硫成形を施す加硫工程と、を経ることにより製造できる。以下では、付着工程について、
図4を参照しながら説明する。
図4は、タイヤ成形面5の凹凸部の一部を拡大して示している。加硫工程については、従来のタイヤの加硫成形と同様に実施できるため、詳しい説明を省略する。
【0017】
タイヤ成形面5は、一般的に鉄材などにより形成されており、保守作業にてブラスト洗浄が施される。ブラスト洗浄後、
図4(A)のように、防錆剤となる、さび止め潤滑剤6(以下、単に「潤滑剤6」と呼ぶ)をタイヤ成形面5に塗布する。潤滑剤6は、例えばスプレーで噴霧することにより塗布される。本実施形態では潤滑剤6が揮発性溶剤であるため、塗布してから間もなく気化するが、その過程で
図4(B)のように凹凸部の隅部に潤滑剤6が溜まった状態となる。尚、揮発性の液状物でなくても、その塗布量を調整することにより
図4(B)の状態を得ることは可能である。
【0018】
凹凸部の隅部に潤滑剤6が溜まった状態において、
図4(C)のようにカラー粉末7をタイヤ成形面5に塗布する。カラー粉末7は、タイヤベース色とは異なる色彩を有している。カラー粉末7は、例えばスプレーで噴霧することにより塗布される。カラー粉末7は、潤滑剤6が溜まった箇所(
図4の例では凹凸部の隅部)に付着する。その後、必要に応じて、タイヤ成形面5にエアブローを施し、
図4(D)のようにタイヤ成形面5に付着していないカラー粉末7を除去する。これにより、凹凸部の隅部にカラー粉末7が付着したタイヤ成形面5が得られる。
【0019】
図4(D)に示したタイヤ成形面5を有するサイドモールド10を加硫機に装着し、それを用いてタイヤに加硫成形を施すと、タイヤ成形面5に付着したカラー粉末7がタイヤTの外表面に加硫接着される(
図1,2参照)。これにより、タイヤTの装飾性を高めることができる。しかも、装飾性を高めるための色素(即ち、カラー粉末7)は、擦っても簡単には取れない状態となり、タイヤTの撓みや伸縮に対しても柔軟に追従するので、タイヤTの変形によって脱落する心配が少ない。
【0020】
加硫成形の回数を重ねてカラー粉末7の転写量が少なくなってきたら、加硫機に装着されているタイヤ加硫金型(のサイドモールド10)に対してカラー粉末7を補充する。カラー粉末7の補充は、
図4で説明したような潤滑剤6の塗布、カラー粉末7の塗布、及び、エアブローによって行うことができる。カラー粉末7の補充は、定期的に、例えば所定回数の加硫成形を終える度に、繰り返し実行することが考えられる。
【0021】
カラー粉末7の色は、タイヤベース色とは異なる色彩であれば特に限定されず、黒色でも構わない。したがって、例えば、表示マーク4の輪郭を周囲よりも濃い黒色にすることで装飾性を高めてもよい。但し、表示マーク4をより目立たせる観点から、カラー粉末7の色は、白色や黄色など、タイヤベース色として一般的な黒色以外であることが好ましい。また、カラー粉末7は、夜間でも目立つように蓄光性を有してもよく、かかる場合の発光色としては黄緑色やピンク色などが例示される。
【0022】
カラー粉末7には無機顔料が好ましく用いられる。一般に、無機顔料は、有機顔料よりも耐熱性や隠ぺい力に優れるためである。無機顔料としては、例えば、金属酸化物、黒色を呈するカーボンブラック、青色を呈する群青(ウルトラマリン)、アルミ色を呈するアルミニウム粉、白色を呈するタルク(滑石)が用いられる。金属酸化物としては、白色を呈する酸化チタン、緑色を呈する酸化クロム、黄色を呈する黄色酸化鉄(黄鉄)、赤茶色を呈する赤色酸化鉄(べんがら)、黒色を呈する黒色酸化鉄(鉄黒)が例示される。青色の他にバイオレット色、ローズ色、ピンク色に変性された群青も利用可能である。
【0023】
無機顔料としての蓄光顔料をカラー粉末7に用いることも有用である。蓄光顔料としては、例えば、酸化アルミニウム、炭酸ストロンチウム及びレアアースを焼成して得られるセラミック粉末が挙げられる。かかる蓄光顔料は、発光色として緑色、青色またはピンク色を呈するが、これら以外の色でも構わない。
【0024】
また、ブラスト洗浄で用いられるブラスト粉(洗浄粉)をカラー粉末7として用いることが可能である。かかるブラスト粉としては、白色を呈するガラスビーズ、白色を呈するプラスチックビーズ、ステン色(メタル色)を呈するステンレスビーズなどが例示される。
【0025】
上述のように、本実施形態では、付着工程が、タイヤ成形面5に液状物を塗布する第1の段階(
図4(A)参照)と、その第1の段階の後、タイヤ成形面5にカラー粉末7を塗布する第2の段階(
図4(C)参照)とを含む。本実施形態では、液状物として潤滑剤6を用いる例を示すが、これに限定されない。但し、潤滑剤6を液状物として用いることにより、保守作業においてタイヤ成形面5に塗布される潤滑剤6を利用してカラー粉末7を付着させることができるため、作業の効率化を図ることができる。
【0026】
上述のように、本実施形態において、第1の段階では、揮発性溶剤である潤滑剤6をタイヤ成形面5に塗布している。また、第2の段階では、凹凸部の隅部に溜まった揮発性溶剤(潤滑剤6)を介してカラー粉末7を付着させている。これにより、
図1,2のように表示マーク4の輪郭に沿ってカラー粉末7が加硫接着されたタイヤTを簡便に製造できる。かかるタイヤTによれば、表示マーク4の輪郭を強調することにより装飾性を高めて、表示マーク4の視認性を効果的に向上することができる。
【0027】
図4(B)には、凹部40の隅部に潤滑剤6が溜まっている様子が示されているが、凹部50の隅部(リッジ31を形成するための凹条の底部)にも潤滑剤6が溜まっていてもよい。その場合は、凹部50の隅部にカラー粉末7が付着するため、各リッジ31の先端にカラー粉末7が加硫接着し、それによってセレーション30が装飾される。また、本実施形態では、凹凸部の隅部のみにカラー粉末7を付着させているが、これに限られない。例えば、凹部40の底面全体にカラー粉末7を付着させてもよく、それにより隆起部20の頂面全体にカラー粉末7を加硫接着させることができる。
【0028】
カラー粉末7を付着させたくない箇所には、カラー粉末7の塗布時にマスキングを施すことが考えられる。例えば、セレーション30をカラー粉末7による装飾の対象外とする場合は、カラー粉末7の塗布時に凹部50をマスキングして、カラー粉末7の付着を防止すればよい。マスキングには、所定の形状に切り抜いた型板(ステンシルプレート)が好ましく用いられる。
図1のようにセレーション30を対象外として表示マーク4の輪郭のみにカラー粉末7を加硫接着させた場合は、カラー粉末7によって表示マーク4が縁取られるため、表示マーク4を効果的に目立たせることができる。
【0029】
本実施形態では、付着工程が、第2の段階の後、タイヤ成形面5に付着していないカラー粉末7をエアブローにより除去する第3の段階を含む例を示したが、これに限定されない。上述したようなマスキングを利用した場合などにおいて、必要箇所のみにカラー粉末7が付着した状態が得られるときは、余分なカラー粉末7を除去するためのエアブローを省略してもよい。
【0030】
本実施形態では、付着工程が上記の如き第1及び第2の段階を含む例を示したが、これに限られない。例えば、付着工程では、予め調製したカラー粉末7と液状物との混合物をタイヤ成形面5に塗布する、としてもよい。かかる混合物は、タイヤ成形面5の所要の部位に刷毛で塗布したり、上述したマスキングを施して塗布したりすることが考えられる。この場合の液状物としては、タイヤ成形においてゴム部材同士を接着するために使用される一般的なゴム糊を用いることが可能である。
【0031】
ゴム糊は、ゴム組成物を有機溶媒で溶解したものである。ゴム組成物としては、ジエン系ゴムに充填剤及び加硫剤などを配合したものが挙げられる。ジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)などが挙げられる。充填剤としては、カーボンブラック又はシリカが一般的である。加硫剤としては、硫黄が一般的である。有機溶媒としては、ゴム用揮発油やトルエン、キシレンなどのゴムを溶解する揮発性の各種有機溶媒が挙げられる。
【0032】
本実施形態において、表示マーク4は、サイドウォール2の表面2aから隆起した隆起部20によって形成されているが、これに限られない。例えば、
図5,6に示した表示マーク8のように、表面2aから窪んだ窪み部60によって形成されていてもよい。この例では、窪み部60の側面と表面2aとがなす角部にカラー粉末7が加硫接着されている。これにより、表示マーク8の輪郭を目立たせて視認性の向上を図っている。この場合における付着工程について、
図7を参照しながら説明する。
図7(A)~(D)は、それぞれ
図4(A)~(D)に対応しているため、重複した説明は省略する。
【0033】
図7は、表示マーク8を形成するためのタイヤ成形面5の凹凸部を示す。この凹凸部は、窪み部60を形成するための凸部70を備える。まずは、
図7(A)のように潤滑剤6をタイヤ成形面5に塗布する。そして、
図7(B)のように凹凸部の隅部に潤滑剤6が溜まった状態になったら、
図7(C)のようにカラー粉末7をタイヤ成形面5に塗布する。その後、タイヤ成形面5にエアブローを施し、
図7(D)のようにタイヤ成形面5に付着していないカラー粉末7を除去する。これを用いて加硫成形を施すことにより、
図5,6のようなカラー粉末7で装飾された表示マーク8が形成される。
【0034】
本実施形態では、カラー粉末7がサイドウォール2の外表面に加硫接着されている例を示したが、これに限られず、例えばトレッド3の外表面に加硫接着されていてもよい。付着工程では、トレッド3を成形するトレッドモールドの内面に形成されたタイヤ成形面に潤滑剤6などの液状物を介してカラー粉末7を付着させればよい。その場合、例えばトレッド3に設けられるブロックやリブの頂面と側面とがなす角部にカラー粉末7を加硫接着させて、タイヤの装飾性を高めることが考えられる。
【0035】
[1]
上記の通り、本実施形態のタイヤ製造方法は、タイヤベース色とは異なる色彩のカラー粉末7をタイヤ加硫金型のタイヤ成形面5に潤滑剤6(液状物の一例)を介して付着させる付着工程と、その付着工程の後、未加硫のタイヤの外表面をタイヤ成形面5に押し当ててタイヤに加硫成形を施す加硫工程と、を備える。これによってタイヤTの装飾性を高めることができ、しかも装飾性を高めるための色素(カラー粉末7)がタイヤTの変形によって脱落する心配が少ない
【0036】
[2]
上記[1]のタイヤ製造方法において、付着工程は、タイヤ成形面5に潤滑剤6を塗布する第1の段階と、その第1の段階の後、タイヤ成形面4にカラー粉末7を塗布する第2の段階と、を含むことが好ましい。これにより、タイヤ成形面5に塗布した潤滑剤6を介してカラー粉末7を付着させることができる。
【0037】
[3]
上記[2]のタイヤ製造方法において、タイヤ成形面5は、タイヤTのサイドウォール2に表示マーク4を形成するための凹凸部を含み、第1の段階では、揮発性溶剤である潤滑剤6をタイヤ成形面5に塗布し、第2の段階では、凹凸部の隅部に溜まった揮発性溶剤(即ち、潤滑剤6)を介してカラー粉末7を付着させることが好ましい。これにより、表示マーク4の輪郭に沿ってカラー粉末7が加硫接着されたタイヤTが得られるため、表示マーク4の視認性を効果的に向上できる。
【0038】
[4]
上記[2]又は[3]のタイヤ製造方法では、付着工程が、第2の段階の後、タイヤ成形面5に付着していないカラー粉末7をエアブローにより除去する第3の段階を含むものでもよい。かかる構成によれば、余分なカラー粉末7を簡単に除去できる。
【0039】
[5]
上記[1]のタイヤ製造方法において、付着工程では、予め調製したカラー粉末7と液状物との混合物をタイヤ成形面5に塗布するものでもよい。かかる混合物は、タイヤ成形面5の所要の部位に刷毛で塗布したり、上述したマスキングを施して塗布したりすることが考えられる。
【0040】
[6]
また、本実施形態のタイヤTは、タイヤベース色とは異なる色彩のカラー粉末7が外表面に加硫接着されているものである。これにより、タイヤTの装飾性を高めることができ、しかも装飾性を高めるための色素(カラー粉末7)がタイヤTの変形によって脱落する心配が少ない。このようなカラー粉末7は、タイヤTの外表面や、鋭利な刃物で切断したタイヤTの断面を観察することにより、加硫成形後のタイヤTにおいて判別可能である。
【0041】
[7]
上記[6]のタイヤTにおいて、サイドウォール2の外表面に形成された表示マーク4の輪郭に沿ってカラー粉末7が付着していることが好ましい。これにより、表示マーク4の視認性を効果的に向上して、タイヤTの装飾性を更に高めることができる。
【0042】
本開示の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、この実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、更に、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【0043】
本開示のタイヤ製造方法及びタイヤは、上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。本開示のタイヤ製造方法及びタイヤは、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。また、上述した実施形態で採用されている各構成については、任意に組み合わせて採用することが可能である。
【符号の説明】
【0044】
2 サイドウォール
3 トレッド
4 表示マーク
5 タイヤ成形面
6 さび止め潤滑剤(液状物の一例)
7 カラー粉末
8 表示マーク