(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034741
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】検査方法、検査装置および検査プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 11/07 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
G06F11/07 172
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139204
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 邦孝
【テーマコード(参考)】
5B042
【Fターム(参考)】
5B042KK13
(57)【要約】
【課題】電磁波に関する録画映像の乱れ検査の工数を減少させることができる検査方法、検査装置および検査プログラムを提供する。
【解決手段】実施形態の一態様に係る検査方法においては、カメラから出力され既知の特性を有する映像データを録画し、録画した映像データにおいて異常が検出された場合、異常が検出された映像データを含む録画ファイルに、異常が検出されたことを示す識別情報を付与する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラから出力され既知の特性を有する映像データを録画し、
録画した前記映像データにおいて異常が検出された場合、異常が検出された前記映像データを含む録画ファイルに、異常が検出されたことを示す識別情報を付与する、
検査方法。
【請求項2】
検査用の電磁波が印加された状態で前記映像データを録画し、
録画した前記映像データにおいて前記電磁波の印加による異常の有無を検出する、
請求項1に記載の検査方法。
【請求項3】
前記映像データが表示される表示画面を複数の領域に分割し、前記複数の領域ごとに異常の有無を検出する、
請求項1に記載の検査方法。
【請求項4】
前記映像データの特性は輝度値を含み、
前記映像データの前記輝度値に基づき、前記映像データにおける異常の有無を検出する、
請求項1に記載の検査方法。
【請求項5】
前記映像データの前記輝度値が前記既知の特性を示す輝度値に対して変化した場合、前記映像データにおける異常を検出する、
請求項4に記載の検査方法。
【請求項6】
前記既知の特性を示す輝度値を含む閾値範囲が予め設定され、
前記映像データの前記輝度値が前記閾値範囲外となった場合に、前記輝度値が変化したと判定し、前記映像データにおける異常を検出する、
請求項5に記載の検査方法。
【請求項7】
前記録画ファイルにマーキングすることで前記識別情報を付与する、
請求項1に記載の検査方法。
【請求項8】
前記録画ファイルのファイル名を変更することで前記識別情報を付与する、
請求項1に記載の検査方法。
【請求項9】
コントローラを備えた検査装置であって、
前記コントローラは、
既知の特性を有する映像データにおいて異常が検出された場合、異常が検出された前記映像データを含む録画ファイルに、異常が検出されたことを示す識別情報を付与する、
検査装置。
【請求項10】
コンピュータに、
既知の特性を有する映像データにおいて異常が検出された場合、異常が検出された前記映像データを含む録画ファイルに、異常が検出されたことを示す識別情報を付与する、
手順を実行させる、検査プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査方法、検査装置および検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検査用の電磁波を検査対象の機器に印加し、電磁波による機器への影響の有無を検査する試験(いわゆるEMC(Electromagnetic Compatibility)試験)に関する技術が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術には電磁波に関する検査、特に録画映像の乱れを検出する工数を減少させるという点で、さらなる改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、電磁波に関する録画映像の乱れ検査の工数を減少させることができる検査方法、検査装置および検査プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、検査方法において、カメラから出力され既知の特性を有する映像データを録画し、録画した前記映像データにおいて異常が検出された場合、異常が検出された前記映像データを含む録画ファイルに、異常が検出されたことを示す識別情報を付与する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電磁波に関する録画映像の乱れ検査の工数を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る検査方法の概要を説明するための図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る検査装置を含むドライブレコーダの構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、録画ファイル記憶部に記憶される録画ファイルの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、電磁波の印加による異常の有無を検出する処理を説明する図である。
【
図5】
図5は、表示部に表示される録画ファイルの一覧を示す図である。
【
図6】
図6は、検査装置が実行する処理手順を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、変形例に係る表示部に表示される録画ファイルの一覧を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する検査方法、検査装置および検査プログラムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
(実施形態)
<検査装置による検査方法の概要>
以下では先ず、実施形態に係る検査方法の概要について
図1を参照して説明する。
図1は、実施形態に係る検査方法の概要を説明するための図である。
【0011】
以下では、電磁波に関する録画映像の乱れ検査の対象となる機器(供試機器)がドライブレコーダ10である例を示す。ドライブレコーダ10は、図示しない車両に搭載され、車両の周囲や車室内をカメラ20で撮像して映像データを記録する処理などを実行可能な機器である。
【0012】
なお、ここでは、検査対象の機器がドライブレコーダ10である例を示すが、これに限定されるものではなく、例えばビデオカメラやスマートフォンなどカメラを備えるその他の種類の機器であってもよい。
【0013】
ところで、ドライブレコーダ10は、例えば開発段階において、電磁波に関する検査(EMC試験)が行われる。具体的には、EMC試験として、ドライブレコーダ10に検査用の電磁波を印加し、かかる電磁波によって異常(例えばカメラ20によって撮像された映像の乱れ)が発生するか否かの検査が行われる。なお、検査用の電磁波を印加して異常の有無を検査する試験は、例えばイミュニティ試験やEMS(Electromagnetic Susceptibility)試験などとも呼ばれる。また、上記した映像の乱れは、電磁波の印加に限らず、各種の要因で起こり得る。
【0014】
しかしながら、従来技術にあっては、電磁波に関する録画映像の乱れ検査の工数が比較的多く、改善の余地があった。具体的には、従来技術においては、検査用の電磁波を印加した状態で、ドライブレコーダはカメラから出力される映像データを録画し、録画された映像データの全てを作業者が目視して映像乱れなどの異常が発生しているか否かの検査を行っていた。そのため、作業者が異常の有無を検査する作業時間(すなわち目視する時間)は、映像データを録画する時間と同じ時間かかることになり、よって検査完了までに多くの時間を要し、録画映像の乱れ検査の工数が比較的多くなっていた。
【0015】
そこで、本実施形態に係る検査方法にあっては、電磁波に関する録画映像の乱れ検査の工数を減少させることができるようにした。
【0016】
具体的には、
図1に示すように、実施形態に係る検査方法は、例えば検査システム1が備える検査装置40によって実行される。詳しくは、検査システム1は、ドライブレコーダ10と、印加装置100とを備える。
【0017】
印加装置100は、検査対象であるドライブレコーダ10に対して電磁波Aを印加する装置である。詳しくは、印加装置100は、電磁波に関する検査の規定に即した電磁波Aを出力してドライブレコーダ10に印加する。例えば、印加装置100は、検査の規定に即して電磁波Aの周波数や強度を時間経過とともに変化させながら、ドライブレコーダ10に電磁波Aを印加する。
【0018】
ドライブレコーダ10は、カメラ20と、本体部30とを備える。カメラ20は、レンズ20aを介して周囲を撮像し、撮像した映像データを本体部30へ出力する。
【0019】
ここで、本実施形態に係るカメラ20にあっては、既知の特性を有する映像データを出力するように構成される。言い換えると、カメラ20にあっては、電磁波Aが印加されて検査が行われるとき、予め推定可能な特性を有する映像データを出力するように構成される。
【0020】
具体的には、カメラ20のレンズ20aには、キャップBが取り付けられる。詳しくは、キャップBは、レンズ20aを覆うように取り付けられる。キャップBの色は、例えば白色であるが、これに限定されるものではない。すなわち、キャップBの色は、後述するように映像乱れによって映像データの特性が変化し易い色(ここでは白色)が好ましいが、任意の色に設定可能である。なお、映像データの特性には、例えば映像データにおける画素の輝度値(Y値)が含まれるが、これについては後述する。また、映像データの特性は、上記した輝度値に限定されるものではない。
【0021】
カメラ20は、上記のようにキャップBが取り付けられることで、キャップB(正確にはキャップBの内側)を撮像した映像データを出力することとなる。かかるキャップBを撮像した映像データについては、実験等を通じてその特性(ここでは輝度値)を予め検出することができる、言い換えると特性を既知とすることができる。
【0022】
このように、本実施形態にあっては、カメラ20にキャップBが取り付けられることで、カメラ20は、既知の特性を有する映像データを出力することとなる。なお、上記では、カメラ20にキャップBが取り付けられる例を示したが、これに限定されるものではなく、カメラ20が既知の特性を有する映像データを出力できれば、例えばレンズ20aを布で覆うなどその他の構成であってもよい。
【0023】
本体部30は、カメラ20に接続される。また、本体部30は、検査装置40を備える。検査装置40は、電磁波に関する検査を行う。具体的には、検査装置40は、カメラ20から出力される映像データを録画する、より具体的には、検査用の電磁波Aが印加された状態で、カメラ20から出力される映像データを録画する(ステップS1)。詳しくは、検査装置40は、カメラから出力される映像データであって、既知の特性を有する映像データを記憶部60(
図2参照)に記録する。
【0024】
なお、検査装置40は、所定時間が経過するごとに映像データを含む録画ファイルを生成し、生成した録画ファイルを記憶部60に記録する。従って、記憶部60には、所定時間ごとに生成された複数の録画ファイルが記録されることとなる。なお、上記した所定時間は、予め任意の値(例えば1分)に設定されるが、これに限定されるものではない。
【0025】
次いで、検査装置40は、録画した映像データにおける異常の有無を検出する(ステップS2)。詳しくは、検査装置40は、録画した映像データの特性(ここでは輝度値)に基づき、電磁波Aの印加による異常(例えば映像乱れ)の有無を検出する。
【0026】
具体的に説明すると、映像データは、電磁波Aの印加による影響を受けた場合、映像にノイズが入って映像乱れが生じる。この映像乱れにより、映像データの特性である輝度値は変化する。そこで、本実施形態に係る検査装置40は、録画した映像データの輝度値をモニタし、録画した映像データの輝度値が既知の特性を示す輝度値に対して変化した場合、映像データにおける異常を検出する、すなわち、電磁波Aの印加による異常が発生したと判定する。
【0027】
他方、検査装置40は、録画した映像データの輝度値が既知の特性を示す輝度値に対して変化していない場合、映像データにおける異常は発生していないと判定する。なお、ステップS2の処理は、ステップS1の処理と並行して行われるが、これに限定されるものではない。
【0028】
そして、検査装置40は、録画した映像データにおいて異常が検出された場合、異常が検出された映像データを含む録画ファイルに、異常が検出されたことを示す識別情報を付与する(ステップS3)。詳しくは、検査装置40は、録画した映像データにおいて電磁波Aの印加による異常が検出された場合、当該映像データを含む録画ファイルに識別情報を付与する。
【0029】
一例として、検査装置40は、複数の録画ファイルの一覧を表示部21(後述する
図2参照)に表示し、かかる一覧において、異常が検出された映像データを含む録画ファイルにマーキングすることで(後述する
図5参照)、識別情報を付与する。
【0030】
これにより、本実施形態にあっては、電磁波に関する録画映像の乱れ検査の工数を減少させることができる。すなわち、本実施形態において、検査の作業者は、複数の録画ファイルのうち、識別情報が付与された録画ファイルの映像データだけを目視することで、異常(詳しくは電磁波Aの印加による異常)を確認することが可能になる。また、録画ファイルに識別情報が付与されない場合(すなわち電磁波Aの印加による異常が検出されなかった場合)、作業者による映像データの目視確認を不要にすることも可能になる。
【0031】
従って、本実施形態にあっては、例えば録画された映像データの全てを作業者が確認していた従来技術に比べて、作業者が異常を確認する作業時間を大幅に減少させることができ、結果として電磁波に関する録画映像の乱れ検査の工数を減少させることができる。
【0032】
なお、上記では、録画映像の乱れ(異常)の要因が電磁波Aの印加である例を示したが、これに限定されるものではなく、本実施形態に係る検査装置40は、上記のように構成することで、各種の要因で起こった録画映像の乱れ(異常)を検出することができる。
【0033】
<検査装置を含むドライブレコーダの構成>
次に、実施形態に係る検査装置40を含むドライブレコーダ10の構成について、
図2を用いて説明する。
図2は、実施形態に係る検査装置40を含むドライブレコーダ10の構成例を示すブロック図である。なお、
図2のブロック図では、本実施形態の特徴を説明するために必要な構成要素のみを機能ブロックで表しており、一般的な構成要素についての記載を省略している。
【0034】
換言すれば、
図2のブロック図に図示される各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。例えば、各機能ブロックの分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。
【0035】
また、
図2以降の説明では、既に説明済みの構成要素については、説明を簡略するか、省略する場合がある。
【0036】
図2に示すように、ドライブレコーダ10は、上記したカメラ20と、表示部21と、検査装置40とを備える。カメラ20は、カメラ20の周囲を撮像し、撮像した映像データを検査装置40へ出力する。なお、電磁波に関する検査時、カメラ20は、上記したキャップB(
図1参照)が取り付けられ、既知の特性を有する映像データを検査装置40へ出力する。
【0037】
表示部21は、カメラ20によって撮像された映像データなどを表示するディスプレイである。また、表示部21は、電磁波に関する検査時、映像データを含む複数の録画ファイルの一覧などを表示することができる。
【0038】
検査装置40は、コントローラ(制御部)50と、記憶部60とを備える。記憶部60は、例えば、不揮発性メモリやデータフラッシュ、ハードディスクドライブといった記憶デバイスで構成される記憶部である。かかる記憶部60は、録画ファイル記憶部61を備えるとともに、各種プログラムなどが記憶される。
【0039】
録画ファイル記憶部61には、録画ファイルが記憶(記録)される。ここで、
図3を用いて録画ファイル記憶部61に記憶される録画ファイルについて説明する。
図3は、録画ファイル記憶部61に記憶される録画ファイルの一例を示す図である。
【0040】
図3に示すように、録画ファイル記憶部61には、複数の録画ファイルが記憶される。録画ファイルには、「ファイルID」、「録画ファイル名」、「映像データ」、「録画日時」および「識別情報」等の項目が含まれ、各項目のデータは互いに関連付けられている(紐付けられている)。
【0041】
「ファイルID」は、録画ファイルを識別する情報である。「録画ファイル名」は、録画ファイルの名称を示す情報である。「映像データ」は、カメラ20から出力されて録画された映像データである。なお、
図3に示す例では、便宜上、「映像データ」を「E01」といったように抽象的な記載とするが、「E01」には具体的な情報が記憶されるものとする。
【0042】
「録画日時」は、映像データが録画された日時を示す情報である。「識別情報」は、電磁波の印加による異常が検出されたことを示す識別情報である。「識別情報」には、「あり」および「なし」のいずれかの情報が含まれる。識別情報が「あり」の場合、対応する映像データ(ここでは映像データE02)において電磁波の印加による異常が検出されたことを意味し、「なし」の場合、対応する映像データ(ここでは映像データE01,E03,E04)において異常が検出されていないことを意味する。
【0043】
図3に示す例では、ファイルID「D01」で識別される録画ファイルは、録画ファイル名が「録画ファイル01」、映像データが「E01」、録画日時が「2022/7/1 12:00」、識別情報が「なし」であることを示している。また、ファイルID「D02」で識別される録画ファイルは、録画ファイル名が「録画ファイル02」、映像データが「E02」、録画日時が「2022/7/1 12:01」、識別情報が「あり」であることを示している。
【0044】
図2の説明に戻ると、コントローラ50は、録画部51と、検出部52と、付与部53と、表示制御部54とを備え、例えば、CPU(Central Processing Unit)、(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブ、入出力ポートなどを有するコンピュータや各種の回路を含む。コンピュータのCPUは、例えば、ROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、コントローラ50の録画部51、検出部52、付与部53および表示制御部54として機能する。
【0045】
また、コントローラ50の録画部51、検出部52、付与部53および表示制御部54の少なくともいずれか一部または全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成することもできる。
【0046】
録画部51は、カメラ20から出力された映像データを録画する。詳しくは、録画部51は、印加装置100(
図1参照)から検査用の電磁波が印加された状態で、カメラ20から出力された映像データであって既知の特性を有する映像データを、録画ファイル記憶部61に記憶する。
【0047】
このとき、録画部51は、映像データを含む録画ファイルを生成して録画ファイル記憶部61に記憶する。例えば、録画部51は、映像データ、録画ファイル名および録画日時の情報などを含む録画ファイルを生成して録画ファイル記憶部61に記憶する。なお、録画部51は、映像データのサイズ(データ容量)などその他の情報を録画ファイルに含めてもよい。
【0048】
検出部52は、録画した映像データにおいて異常の有無を検出する、詳しくは電磁波の印加による異常の有無を検出する。より詳しくは、検出部52は、録画した映像データの特性に基づき、例えば映像乱れなど電磁波の印加による異常の有無を検出する。ここでは、映像データの特性として、映像データにおける画素の輝度値(Y値)を用いる。
【0049】
上記した電磁波の印加による異常の有無を検出する処理について、
図4を参照して詳説する。
図4は、電磁波の印加による異常の有無を検出する処理を説明する図である。
【0050】
図4に示すように、本実施形態に係る検出部52は、映像データが表示される表示部21の表示画面を複数の領域(
図4の例では4個)21a~21dに分割する、正確には表示画面を仮想的に複数の領域21a~21dに分割する。そして、検出部52は、分割した複数の領域21a~21dごとに電磁波の印加による異常の有無を検出する。
【0051】
詳しく説明すると、カメラ20から出力される映像データの特性(輝度値)は、上記したように既知とされる。
図4の例では、映像データにおいて、領域21aにおける既知の輝度値が170、領域21bの既知の輝度値が170、領域21cの既知の輝度値が200、領域21dの既知の輝度値が200である。
【0052】
また、本実施形態では、複数の領域21a~21dごとに、既知の特性を示す輝度値を含む閾値範囲が予め設定される。この閾値範囲は、映像データに異常が発生していないと推定可能な輝度値の範囲を示す。
【0053】
一例として、閾値範囲は、既知の輝度値に対して所定値を加算した値を上限値、所定値を減算した値を下限値とするように設定される。例えば、領域21aにおける閾値範囲は、既知の輝度値(ここでは170)を含む160~180に設定される。
【0054】
なお、上記した所定値や閾値範囲は、任意の値に設定可能である。また、既知の輝度値に対して加算する所定値と減算する所定値とは、互いに異なる値に設定されてもよい。また、上記では、理解の便宜のため、既知の輝度値および閾値範囲などを具体的な数値で示したが、これらの数値はあくまでも例示であって限定されるものではない。
【0055】
そして、電磁波に関する検査時、検出部52は、録画した映像データの輝度値を測定してモニタする(監視する)。検出部52は、測定した輝度値(すなわち録画した映像データの輝度値)が、既知の特性を示す輝度値に対して変化した場合、映像データにおける異常を検出する、すなわち、電磁波の印加による異常が発生したと判定する。
【0056】
詳しくは、
図4に示すように、映像データは、電磁波の印加による影響を受けた場合、ノイズFが入って映像乱れが生じる。この映像乱れにより、映像データの輝度値は変化することから、検出部52は、かかる変化があった場合に、映像データにおける異常を検出する。
【0057】
より詳しくは、検出部52は、映像データの輝度値が閾値範囲外となった場合に、輝度値が変化したと判定し、映像データにおける異常を検出する。なお、
図4の例では、複数の領域21a~21dのうち、ノイズFが入って映像乱れが生じた領域21a,21bの輝度値が閾値範囲外となって映像データにおける異常が検出される。
【0058】
一方、検出部52は、映像データの輝度値が閾値範囲内であり、輝度値が変化していない場合、映像データにおける異常は発生していないと判定する。
【0059】
このように、本実施形態に係る検出部52は、映像データの輝度値に基づき、映像データにおける異常の有無を検出するようにしたので、例えば映像データの輝度値をモニタする簡易な構成で、映像データにおける異常の有無を精度良く検出することが可能になる。
【0060】
また、本実施形態に係る検出部52は、映像データの輝度値が既知の特性を示す輝度値に対して変化した場合、映像データにおける異常を検出するようにした。これにより、例えばノイズFが入って映像乱れが生じたことを、輝度値の変化によって精度良く検知でき、よって映像データにおける異常の有無をより精度良く検出することが可能になる。
【0061】
また、本実施形態においては、既知の特性を示す輝度値を含む閾値範囲が予め設定され、検出部52は、映像データの輝度値が閾値範囲外となった場合に、輝度値が変化したと判定し、映像データにおける異常を検出するようにした。このように、閾値範囲にある程度の幅を持たせることで、例えば電磁波の影響以外で輝度値がわずかに変化した場合に、電磁波による異常と検出してしまうなどの誤検出の発生を抑制することができる。
【0062】
また、本実施形態に係る検出部52は、複数の領域21a~21dごとに電磁波の印加による異常の有無を検出するようにした。これにより、例えばノイズFが表示部21の表示画面に対して比較的小さい場合であっても、表示画面を分割した小さい領域21a~21dにおいてノイズFを検知することが可能となり、よって映像データにおける異常の有無をより一層精度良く検出することが可能になる。
【0063】
なお、
図4では、複数の領域の数が4個である例を示したが、これに限られず、2~3個、あるいは5個以上であってもよい。また、表示画面は、複数の領域に分割されず、1個の領域であってもよい。
【0064】
図2の説明を続けると、付与部53は、録画した映像データにおいて異常が検出された場合、詳しくは、電磁波の印加による異常が検出された場合、異常が検出された映像データを含む録画ファイルに識別情報を付与する。
【0065】
具体的には、付与部53は、録画ファイル記憶部61にアクセスし、複数の録画ファイルのうち、異常が検出された映像データを含む録画ファイルに対応する識別情報を「あり」に設定する(
図3のファイルID「D02」の録画ファイル参照)。
【0066】
表示制御部54は、録画ファイル記憶部61に記憶された複数の録画ファイルの一覧を表示部21に表示させる。ここで、表示部21に表示される録画ファイルの一覧について、
図5を参照して説明する。
図5は、表示部21に表示される録画ファイルの一覧70を示す図である。
【0067】
図5に示すように、表示制御部54は、表示部21に録画ファイルの一覧70を表示させる。一覧70には、録画ファイル記憶部61の録画ファイルのデータに基づき、例えば録画ファイル名、マーキング71、録画日時などの情報が含まれる。
【0068】
上記したマーキング71は、異常が検出された映像データを含む録画ファイルであることを示す。すなわち、表示制御部54は、異常が検出された映像データを含む録画ファイルにマーキング71を付すようにして、録画ファイルの一覧70を表示させる。
【0069】
これにより、本実施形態にあっては、電磁波に関する録画映像の乱れ検査の工数を減少させることができる。すなわち、本実施形態において、検査の作業者は、複数の録画ファイルのうち、識別情報が付与された録画ファイル(ここではマーキング71が付された)映像データだけを目視することで、電磁波の印加による異常を確認することが可能になる。
【0070】
従って、本実施形態にあっては、例えば録画された映像データの全てを作業者が確認していた従来技術に比べて、作業者が異常を確認する作業時間を大幅に減少させることができ、結果として電磁波に関する録画映像の乱れ検査の工数を減少させることができる。
【0071】
また、本実施形態にあっては、上記したように、録画ファイルにマーキングすることで識別情報を付与するようにしたので、作業者は、異常が検出された映像データを含む録画ファイルを容易に認識することができる。
【0072】
<実施形態に係る検査装置の制御処理>
次に、検査装置40における具体的な処理手順について
図6を用いて説明する。
図6は、検査装置40が実行する処理手順を示すフローチャートである。
【0073】
図6に示すように、検査装置40は、カメラ20から出力される映像データを録画する(ステップS10)。詳しくは、検査装置40は、検査用の電磁波が印加された状態で、カメラ20から出力される映像データを録画する。かかる映像データは、既知の特性を有する映像データである。
【0074】
次いで、検査装置40は、録画した映像データにおいて異常が検出されたか否かを判定する(ステップS11)。詳しくは、検査装置40は、録画した映像データにおいて電磁波の印加による異常(例えば映像乱れ)の有無を検出する。検査装置40は、映像データにおいて異常が検出されたと判定された場合(ステップS11,Yes)、異常が検出された映像データを含む録画ファイルに識別情報を付与する(ステップS12)。一方、検査装置40は、映像データにおいて異常が検出されていないと判定された場合(ステップS11,No)、ステップS12の処理をスキップする。
【0075】
次いで、検査装置40は、電磁波に関する検査が終了して映像データの録画が完了したか否かを判定する(ステップS13)。検査装置40は、映像データの録画が完了していないと判定された場合(ステップS13,No)、ステップS10の処理に戻る。他方、検査装置40は、映像データの録画が完了したと判定された場合(ステップS13,Yes)、そのまま処理を終了する。
【0076】
上述してきたように、実施形態に係る検査方法は、カメラから出力され既知の特性を有する映像データを録画し、録画した映像データにおいて異常が検出された場合、異常が検出された映像データを含む録画ファイルに、異常が検出されたことを示す識別情報を付与する。これにより、電磁波に関する録画映像の乱れ検査の工数を減少させることができる。
【0077】
(変形例)
次いで、実施形態の変形例に係る検査方法について
図7を参照しつつ説明する。
図7は、変形例に係る表示部21に表示される録画ファイルの一覧70を示す図である。なお、以下においては、実施形態と共通の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0078】
図7に示すように、変形例において、表示制御部54は、録画ファイルの一覧70において、異常が検出された映像データを含む録画ファイルのファイル名を変更するようにした。
【0079】
具体的には、表示制御部54は、録画ファイルの一覧70において、異常が検出された映像データを含む録画ファイルのファイル名(ここでは「録画ファイル02」)を、例えば「録画ファイル02_xxx」に変更するようにした。
【0080】
このように、変形例にあっては、異常が検出された映像データを含む録画ファイルのファイル名を変更することで識別情報を付与するようにしたので、作業者は、異常が検出された映像データを含む録画ファイルを容易に認識することができる。
【0081】
なお、上記では、検査装置40がドライブレコーダ10に含まれる例を示したが、これに限られず、例えば検査装置40は、ドライブレコーダ10とは別体となるように構成してもよい。
【0082】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0083】
10 ドライブレコーダ
40 検査装置
50 コントローラ