(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034744
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】容器詰紅茶飲料、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23F 3/16 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
A23F3/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139208
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】391058381
【氏名又は名称】キリンビバレッジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】戸倉 藍
(72)【発明者】
【氏名】千葉 彩香
【テーマコード(参考)】
4B027
【Fターム(参考)】
4B027FB13
4B027FC05
4B027FE08
4B027FK03
4B027FK04
4B027FK09
4B027FP72
4B027FP81
4B027FP85
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、光劣化臭が抑制された容器詰紅茶飲料、及びその製造方法等を提供することにある。
【解決手段】タンニンの含有濃度が50mg/L以上であり、かつ、リナロール含有濃度が0.5ppm以上4ppm未満である容器詰紅茶飲料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンニンの含有濃度が50mg/L以上であり、かつ、リナロール含有濃度が0.5ppm以上4ppm未満である容器詰紅茶飲料。
【請求項2】
タンニンの含有濃度が50mg/L以上150mg/L以下である、請求項1に記載の容器詰紅茶飲料。
【請求項3】
pHが4.5以下である、請求項1に記載の容器詰紅茶飲料。
【請求項4】
甘味料をさらに含有する、請求項1に記載の容器詰紅茶飲料。
【請求項5】
カフェインの含有濃度が100mg/L以下である、請求項1に記載の容器詰紅茶飲料。
【請求項6】
カフェインの含有濃度が50mg/L以下である、請求項1~5のいずれかに記載の容器詰紅茶飲料。
【請求項7】
タンニンの含有濃度が50mg/L以上である容器詰紅茶飲料の製造において、リナロール含有濃度が0.5ppm以上4ppm未満となるように調製する、前記容器詰紅茶飲料の製造方法。
【請求項8】
タンニンの含有濃度が50mg/L以上である容器詰紅茶飲料の製造において、リナロール含有濃度が0.5ppm以上4ppm未満となるように調製する、前記容器詰紅茶飲料において、光劣化臭を抑制する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器詰紅茶飲料、及びその製造方法等に関する。より詳細には、光劣化臭が抑制された容器詰紅茶飲料、及びその製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
茶飲料は、独特な香気と、苦味、渋味が醸し出す爽やかな風味から、古くから嗜好飲料、健康飲料として親しまれてきた代表的な飲料である。茶飲料には、緑茶、半発酵茶(烏龍茶)、発酵茶(紅茶)等、各種の茶から調製されたものがあり、近年は、缶詰、ペットボトル詰、又は紙パック等の容器詰飲料として、流通に供されている。紅茶飲料は、紅茶の独特な香気と、苦味、渋味をもつ味覚から、嗜好の面から或いは健康志向の面から、茶飲料の中でも特に愛用されている飲料の一つであり、各種香味バリエーションに調製された紅茶飲料が、缶やペットボトルなどに充填された容器詰紅茶飲料として提供されている。
【0003】
ところで、紅茶飲料は、カフェインを含有しているため、睡眠の質を低下させたり、ミネラルの排出を促進したりすることが知られている。また、カフェインを過剰摂取は、悪心、不眠、心悸亢進等の有害作用の原因になるともされている。このため、子供、高齢者、妊娠中や授乳中の女性などは、紅茶飲料やコーヒー飲料などの過剰な摂取を控えた方がよいとされている。このような状況から、近年、カフェインをほとんど含有しない、いわゆるカフェインレス紅茶飲料が開発されている(例えば、特許文献1)。しかし、カフェインレス紅茶飲料などの、カフェインが低減された紅茶飲料は、通常の紅茶よりも呈味が弱く、飲み応えが乏しいという問題があった。
【0004】
また、容器詰紅茶飲料は、流通や販売の際に光照射を受けると、光劣化臭(金属臭、プラスチック臭)が発生するという問題があった。かかる問題に関連して、例えば特許文献2には、単位体積あたりのタンニン量に対するグリセロ糖脂質量の比率が0.001以上である容器詰め茶飲料において、茶飲料にカラメルを含有させることにより、茶飲料成分の光劣化を抑制する方法が開示されている。
しかしながら、所定濃度以上のタンニンを含有する容器詰紅茶飲料において、所定濃度のリナロールを含有させることによって、光劣化臭が抑制された容器詰紅茶飲料が得られることはこれまでに知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-050959号公報
【特許文献2】特開2017-74014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、光劣化臭が抑制された容器詰紅茶飲料、及びその製造方法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述したように、容器詰紅茶飲料には、光劣化臭(金属臭、プラスチック臭)が発生するという問題があった。
【0008】
また、カフェインレス紅茶飲料などのように、カフェインが低減された紅茶飲料には、茶の呈味が弱く、飲みごたえに乏しいという問題があった。このような紅茶飲料において、紅茶葉や紅茶エキスをより多く用いると、飲みごたえは増加するものの、タンニン濃度も上昇する。本発明者らは、カフェインが低減された紅茶飲料において、タンニン濃度が上昇するほど、生じる光劣化臭が強くなることや、かかる光劣化臭はカフェイン濃度が低いほど強くなることを見いだした。
【0009】
本発明者はさらに、所定濃度以上のタンニンを含有する容器詰紅茶飲料に、所定濃度のリナロールを含有させることによって、光劣化臭が抑制された容器詰紅茶飲料が得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)タンニンの含有濃度が50mg/L以上であり、かつ、リナロール含有濃度が0.5ppm以上4ppm未満である容器詰紅茶飲料;
(2)タンニンの含有濃度が50mg/L以上150mg/L以下である、上記(1)に記載の容器詰紅茶飲料;
(3)pHが4.5以下である、上記(1)に記載の容器詰紅茶飲料;
(4)甘味料をさらに含有する、上記(1)に記載の容器詰紅茶飲料;
(5)カフェインの含有濃度が100mg/L以下である、上記(1)に記載の容器詰紅茶飲料;
(6)カフェインの含有濃度が50mg/L以下である、上記(1)~(5)のいずれかに記載の容器詰紅茶飲料;
(7)タンニンの含有濃度が50mg/L以上である容器詰紅茶飲料の製造において、リナロール含有濃度が0.5ppm以上4ppm未満となるように調製する、前記容器詰紅茶飲料の製造方法;
(8)タンニンの含有濃度が50mg/L以上である容器詰紅茶飲料の製造において、リナロール含有濃度が0.5ppm以上4ppm未満となるように調製する、前記容器詰紅茶飲料において、光劣化臭を抑制する方法;
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光劣化臭が抑制された容器詰紅茶飲料、及びその製造方法等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、
[1]タンニンの含有濃度が50mg/L以上であり、かつ、リナロール含有濃度が0.5ppm以上4ppm未満である容器詰紅茶飲料(以下、「本発明の飲料」とも表示する。);
[2]タンニンの含有濃度が50mg/L以上である容器詰紅茶飲料の製造において、リナロール含有濃度が0.5ppm以上4ppm未満となるように調製する、前記容器詰紅茶飲料の製造方法(以下、「本発明の製造方法」とも表示する。);
[3]タンニンの含有濃度が50mg/L以上である容器詰紅茶飲料の製造において、リナロール含有濃度が0.5ppm以上4ppm未満となるように調製する、前記容器詰紅茶飲料において、光劣化臭を抑制する方法(以下、「本発明の抑制方法」とも表示する。);
等の実施態様を含む。
【0013】
(紅茶抽出物)
紅茶飲料には紅茶抽出物が含まれる。本明細書において、「紅茶抽出物」とは、紅茶葉を抽出処理に供することにより得られる抽出物を意味する。また、本明細書において紅茶抽出物には、紅茶葉からの抽出液(紅茶抽出液)それ自体や、その加工品類(例えば、紅茶抽出液を濃縮処理や粉末化処理等した紅茶抽出物エキス)等が含まれる。
【0014】
紅茶抽出物の原料として利用できる紅茶葉は特に限定されず、例えばCamelliasinensisの中国種(var.sinensis)、アッサム種(var.assamica)又はそれらの雑種から得られる茶葉から発酵工程を経て製茶されたものが挙げられる。茶期、茶葉の形状、産地、品種、等級、及び発酵条件等も特に限定されず、当業者が適宜設定することができる。また、紅茶葉を抽出する際の茶葉の量、溶媒の量、抽出温度、抽出時間等の条件も特に限定されず、通常紅茶葉を抽出する際の条件を用いることができる。
【0015】
本発明の紅茶飲料に含まれる紅茶抽出物は、カフェインが低減した紅茶抽出物でなくてもよいが、光劣化臭がより強く感じられ、本発明の意義をより多く享受することができるという観点から、カフェインが低減した紅茶抽出物(以下、「低カフェイン紅茶抽出物」とも表示する。)であることが好ましい。低カフェイン紅茶抽出物は、カフェインが低減した紅茶葉や、カフェインが低減した紅茶抽出エキスなどの、カフェインが低減した紅茶抽出物を用いることにより調製することができる。
【0016】
低カフェイン紅茶抽出物は、市販されている低カフェイン紅茶抽出物を用いて調製してもよいし、カフェインが低減していない通常の紅茶抽出物のカフェインを低減して調製してもよい。低カフェイン紅茶抽出物としては、チャノキの葉や茎などの摘採物から製造された紅茶葉を原料に抽出して得られる抽出物であって、通常の紅茶抽出物よりもカフェインが低減されているものであればその形態や製造方法は特に限定されない。低カフェイン紅茶抽出物を得る方法としては、特に制限されず、超臨界二酸化炭素抽出や熱水抽出によってカフェインを予め除去した紅茶葉から、紅茶抽出物を製造する方法、熱水抽出によって得られる紅茶抽出物を、活性炭や酸性白土、活性白土などの吸着材により吸着除去処理する方法、紅茶抽出液を、セラミック膜、限外ろ過膜、逆浸透膜、ナノろ過膜を組み合わせた膜処理する方法などが挙げられる。なお、低カフェイン紅茶抽出物は、低カフェインの紅茶抽出液それ自体であってもよいし、その加工品類(例えば、紅茶抽出物エキス)であってもよい。
【0017】
(紅茶飲料)
本発明において「紅茶飲料」としては、紅茶抽出物を含む飲料を意味する。
【0018】
(タンニンの含有濃度)
本発明の飲料におけるタンニンの含有濃度としては、50mg/L以上であれば特に制限されない。本発明の紅茶飲料におけるタンニンの含有濃度の上限としては、特に制限されないが、光劣化臭の抑制効果をより多く得る観点から、150mg/L以下が好ましく挙げられる。
【0019】
本発明において、飲料中のタンニン濃度は、例えば、紅茶抽出液を調製する際の、紅茶葉の使用量や、紅茶抽出液の加工品の使用量を調整すること等により調整することができる。
【0020】
本発明の飲料中のタンニン濃度は、酒石酸鉄吸光光度法(好ましくは、日本食品分析センター編「五訂 日本食品標準成分分析マニュアルの解説」(日本食品分析センター編、中央法規、2001年7月、p.252)に記載の公定法)を用いて測定することができる。
【0021】
(リナロールの含有濃度)
本発明の飲料におけるリナロールの含有濃度としては、0.5pm以上であれば特に制限されないが、光劣化臭の抑制効果をより多く得る観点から、好ましくは1ppm以上又は1.5ppm以上、より好ましくは2ppm以上又は2.5ppm以上が挙げられる。また、かかるリナロール含有濃度として、香味の調和をより多く維持する観点から、例えば4ppm未満が挙げられ、好ましくは3.5ppm以下が挙げられる。また、香味の調和をより多く維持することと、光劣化臭の抑制効果をより多く得ることとのバランスの観点から、1ppm以上4ppm未満(又は1ppm以上3.5ppm以下、又は、1.5ppm以上4ppm未満、又は、1.5ppm以上3.5ppm以下)が好ましく、2ppm以上4ppm未満(又は2ppm以上3.5ppm以下、又は、2.5ppm以上4ppm未満、又は、2.5ppm以上3.5ppm以下)がより好ましく挙げられる。
【0022】
本発明において、飲料中のリナロール濃度は、例えば、リナロール又はリナロール含有組成物を飲料に含有させる量を調整すること等により調整することができる。リナロールやリナロール含有組成物は市販されているものを用いることができる。
【0023】
本発明の飲料中のリナロール濃度は、ガスクロマトグラフィーや高速液体クロマトグラフィーを用いた方法など、公知の方法によって測定することができる。
【0024】
(カフェインの含有濃度)
本発明の飲料におけるカフェインの含有濃度としては、特に制限されず、例えば0~300mg/Lが挙げられるが、光劣化臭が問題となりやすく、本発明の意義をより多く享受し得る観点から、好ましくは0~100mg/L(又は6~100mg/L)、より好ましくは0~50mg/L(又は6~50mg/L)あるいは0~24mg/L(又は6~24mg/L)、さらに好ましくは0~15mg/L(又は6~15mg/L)あるいは0~6mg/Lが挙げられる。また、光劣化臭の抑制効果をより多く得る観点から、本発明の飲料におけるカフェインの含有濃度として、0~50mg/L(又は6~50mg/L)が挙げられ、好ましくは15~50mg/Lが挙げられる。
【0025】
本発明において、飲料中のカフェイン濃度は、本発明の飲料の調製の際に用いる紅茶抽出物におけるカフェイン濃度を調整すること等により調整することができる。
【0026】
本発明の飲料中のカフェイン濃度は、ガスクロマトグラフィーや高速液体クロマトグラフィーを用いた方法など、公知の方法によって測定することができる。
【0027】
(甘味料)
本発明の飲料は、甘味料を含有していなくてもよいし、含有していてもよい。
本発明における「甘味料」としては、果糖、ブドウ糖、タガトース、アラビノース等の単糖、乳糖、トレハロース、麦芽糖、ショ糖等の二糖、粉末水あめ等の多糖といった結晶性糖類;や、マルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖等のオリゴ糖;水あめ、異性化液糖(例えば果糖ぶどう糖液糖)等の非結晶性糖類;マルチトール、ラクチトール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール等の糖アルコール;スクラロース、ステビア、甘草抽出物、ソーマチン、グリチルリチン、サッカリン、アスパルテーム、アセスルファムK等の高甘味度甘味料;を挙げることができ、中でも、糖アルコール及び高甘味度甘味料のいずれでもない甘味料である糖類(すなわち、結晶性糖類や非結晶性糖類)が好ましく挙げられる。甘味料は1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
本発明の飲料が甘味料を含有している場合の、甘味料の含有量としては特に制限されないが、飲料中の甘味料の糖度で、例えば0.01~15°Bx、0.1~15°Bx、1~15°Bx、3~15°Bx、0.01~10°Bx、0.1~10°Bx、1~10°Bx、3~10°Bx、などが挙げられ、あるいは、飲料中の甘味料の、ショ糖換算の甘味度で、例えば0.01~15w/v%、0.1~15w/v%、1~15w/v%、3~15w/v%、0.01~10w/v%、0.1~10w/v%、1~10w/v%、3~10w/v%などが挙げられる。
なお、甘味料を2種以上併用している場合は、上記甘味料の糖度又は甘味度は、複数種の甘味料の糖度又は甘味度の合計の数値である。
【0029】
本発明における「ショ糖換算の甘味度(w/v%)」とは、以下の数式により算出される数値を意味する。
【0030】
(数式)
甘味度=甘味料含有量(g/100mL)×その甘味料の相対甘味度
【0031】
上記の「甘味料含有量(g/100mL)」とは、本発明の飲料100mL当たりに含まれる甘味料(g)の濃度(g/100mL)を表し、上記の相対甘味度とは、20℃でのショ糖の甘さを1とした場合の、ある特定の種類の甘味料の相対的な甘みの強さを意味する。したがって、本発明における上記「甘味度」は、ショ糖換算した甘味料の濃度(g/100mL)を表しており、本発明の飲料を摂取した者が感じる感覚としての甘味の程度を反映したものである。本発明の飲料に2種類以上の甘味料が含まれている場合は、甘味料の種類ごとに「甘味料含有量(g/100mL)×相対甘味度」の値を算出し、算出した各数値の総和をその本発明の飲料の甘味度とする。本発明の飲料における甘味料の含有量は、その飲料について例えばHPLC法、GC-MS法、LC-MS法などの公知の方法を適用することにより測定することができる。
【0032】
各種甘味料の相対甘味度は公知であるが、以下に例を挙げる。
ぶどう糖(0.7)、果糖(0.6)、乳糖(0.4)、マルトース(0.4)、ソルビトール(0.7)、エリスリトール(0.8)、マルチトール(0.8)、ステビア(150)、グリチルリチン(170)、アセスルファムK(200)、アスパルテーム(200)、サッカリン(300)、スクラロース(600)、アリテーム(2000)、ソーマチン(3000)。なお、上記に挙げた甘味料を用いた場合、本明細書における甘味度は、上記に挙げた相対甘味度の数値を用いて算出した甘味度を意味する。
【0033】
本発明の甘味度の算出例として、0.001gのぶどう糖(相対甘味度0.7)と、0.00001gのスクラロース(相対甘味度600)とを含む本発明の飲料の甘味度を求める。この場合、本発明における甘味度は、0.001×0.7で算出される数値(「0.0007」)と、0.000001×600で算出される数値(「0.0006」)の総和で導かれ、0.0013w/v%となる。
【0034】
(pH)
本発明の飲料のpHとしては、特に制限されないが、例えば3~6、又は、3以上6未満が挙げられ、光劣化臭の抑制効果をより多く得る観点から、3~4.5又は3.8~4.5が好ましく挙げられる。
【0035】
該pHの調整は、本発明の飲料の香味設計に応じて、例えば、酸味料の添加の有無や、酸味料の濃度を調整すること、あるいは、アルカリ塩の添加の有無や、アルカリ塩の濃度を調整することにより行うことができる。
【0036】
上記の酸味料としては、クエン酸、リン酸、グルコン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、フィチン酸、酢酸、コハク酸、又はそれらの塩が挙げられ、クエン酸又はその塩が好ましく挙げられる。かかる塩としては、ナトリウム塩、カルシウム塩が好ましく挙げられる。酸味料の好適な態様として、クエン酸、及び、クエン酸三ナトリウムの組み合わせが挙げられる。
【0037】
上記のアルカリ塩としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、その他ナトリウム塩を含むアルカリ剤などの群から選ばれる1種又は2種以上のアルカリ剤を用いることが好ましく、炭酸水素ナトリウムなどのナトリウム塩を用いることがさらに好ましい。
【0038】
容器詰紅茶飲料のpHは、pHメーターを用いて常法により測定することができる。
【0039】
(本発明の飲料)
本発明の飲料としては、タンニンの含有濃度が50mg/L以上であり、かつ、リナロール含有濃度が0.5ppm以上4ppm未満である容器詰紅茶飲料である限り特に制限されない。単に、タンニンの含有濃度が50mg/L以上である容器詰紅茶飲料は従来から公知である。本発明の飲料は、タンニンの含有濃度が50mg/L以上であることに加えて、リナロール含有濃度が0.5ppm以上4ppm未満であること以外は、用いる製造原料、製造方法並びに製造条件において、通常の容器詰紅茶飲料と特に相違する点はない。
【0040】
本発明の飲料は、タンニンなどを含む紅茶抽出物、及びリナロールを必須成分として含有している。本発明の飲料には、本発明の効果を妨げない範囲で、任意成分を含有していてもよい。かかる任意成分としては、酸味料、香料、色素、甘味料、乳原料、食品添加剤(例えば、酸化防止剤(ビタミンC等)、保存料、増粘安定剤、乳化剤、食物繊維、pH調整剤、苦味料)が挙げられる。
【0041】
(容器)
本発明の飲料において、容器とは内容物と外気との接触を断つことができる密閉容器を意味し、例えば、金属缶、樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル)、紙容器、瓶、パウチ容器などが挙げられる。中でも、光劣化臭の抑制がより重要となる点で、プラスチック製ボトル等の光透過性容器が好ましく挙げられる。
本発明の飲料は、加熱殺菌されていなくてもよいが、加熱殺菌されていることが好ましい。
【0042】
(本発明の製造方法)
本発明の製造方法としては、タンニンの含有濃度が50mg/L以上である容器詰紅茶飲料の製造において、リナロール含有濃度が0.5ppm以上4ppm未満となるように調製する、前記容器詰紅茶飲料の製造方法である限り特に制限されない。本発明の容器詰紅茶飲料は、タンニンの含有濃度が50mg/L以上であり、かつ、リナロール含有濃度が0.5ppm以上4ppm未満となるように調製すること以外は、容器詰紅茶飲料の一般的な製造方法により製造することができる。容器詰紅茶飲料の一般的な製造方法は公知であり、例えば、紅茶抽出液を調製し、調合工程、充填工程、加熱殺菌工程を経て紅茶飲料を製造することができる。本発明の飲料の製造においては、前述の任意成分を添加してもよく、これら任意成分の添加時期は特に制限されない。なお、前述の紅茶飲料の一般的な製造方法としては、より詳細には、例えば、「改訂新版ソフトドリンクス」(株式会社光琳)を参考とすることができる。
【0043】
本発明における「リナロール含有濃度が0.5ppm以上4ppm未満となるように調製する」方法としては、本発明の飲料におけるリナロール含有濃度が0.5ppm以上4ppm未満となるように、容器詰紅茶飲料の製造工程のいずれかでリナロールを紅茶飲料に含有させる方法である限り特に制限されず、例えば、紅茶抽出液にリナロールを含有させる方法が挙げられる。かかるリナロールとしては、リナロールや、リナロール含有組成物を用いることができる。
【0044】
(加熱殺菌)
本発明の製造方法は、紅茶飲料を加熱殺菌する工程を含んでいてもよい。かかる加熱殺菌する方法としては、容器詰飲料における通常の加熱殺菌方法を特に制限なく用いることができる。例えば、金属缶のように充填後に加熱殺菌できる場合にあっては、食品衛生法に定められた殺菌条件等で殺菌処理を行うことができる。また、PETボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、充填前に該飲料を、あらかじめ上記と同等の殺菌条件で、例えばプレート式熱交換器等を用いて高温短時間殺菌(UHT殺菌)した後、一定の温度まで冷却し、殺菌済み容器に充填する等の方法を採用することができる。
【0045】
(本発明の抑制方法)
本発明の抑制方法としては、タンニンの含有濃度が50mg/L以上である容器詰紅茶飲料の製造において、リナロール含有濃度が0.5ppm以上4ppm未満となるように調製する、前記容器詰紅茶飲料において、光劣化臭を抑制する方法である限り特に制限されない。
【0046】
タンニンの含有濃度が50mg/L以上である容器詰紅茶飲料の製造において、リナロール含有濃度が0.5ppm以上4ppm未満となるように調製する方法は、上記の(本発明の製造方法)に記載した方法と同様の方法を用いることができる。
【0047】
(光劣化臭が抑制された容器詰紅茶飲料)
本発明の飲料は、光劣化臭が抑制された容器詰紅茶飲料である。本発明における「光劣化臭」とは、紅茶飲料が光を受けたことにより生じる、金属臭やプラスチック臭を意味する。
【0048】
本明細書において、「光劣化臭が抑制された」容器詰紅茶飲料としては、リナロールの含有濃度が0.5ppm未満(好ましくは検出限界以下)であること以外は、同種の原料を同じ最終濃度となるように用いて同じ製法で製造した飲料(以下、「コントロール飲料」とも表示する。)と比較して、本発明における官能が向上した飲料などが挙げられる。
【0049】
ある紅茶飲料における、光劣化臭の程度や、かかる光劣化臭の程度が本発明におけるコントロール飲料と比較してどのようであるか(例えば、光劣化臭が抑制されているかどうか、どの程度抑制されているか)は、訓練されたパネルであれば、容易かつ明確に決定することができる。
【0050】
光劣化臭の評価の基準や、パネル間の評価のまとめ方は、一般的な方法を用いることができる。飲料における光劣化臭の程度を評価するパネルの人数は1名であってもよいが、客観性がより高い評価を得る観点から、パネルの人数の下限を、例えば3名以上、好ましくは5名以上とすることができ、また、評価試験をより簡便に実施する観点から、パネルの人数の上限を、例えば7名以下とすることができる。パネルが2名以上の場合の飲料における光劣化臭の程度の評価は、その飲料における光劣化臭の程度についてのパネル全員の評価の平均を採用してもよく、例えば、各評価基準に評価点が付与されている場合、パネル全員の評価点の平均値をその飲料における光劣化臭の程度の評価として採用してもよい。前述のように、評価点の平均値を採用する場合は、その平均値の小数第2位を四捨五入した値を採用してもよい。なお、パネルが2名以上である場合には、各パネルの評価のばらつきを低減するために、実際の官能評価試験を行う前に、各パネルの評価基準ができるだけ揃うように評価基準を共通化する作業を行っておくことが好ましい。かかる共通化作業としては、光劣化臭の程度が最も大きいときの評価点に相当する、その光劣化臭の程度の認識をパネル間であらかじめ共通化した上で、各サンプル飲料の評価を行うことが挙げられる。また、このような評価基準に関する事前の共通化作業により、例えば、評価点が1点;2点;3点;4点;5点の5段階である場合の、各パネルによる光劣化臭の程度の評価の標準偏差が0.5以内となるようにしておくことが好ましい。
【0051】
ある容器詰紅茶飲料における、光劣化臭の程度は、例えば後述の実施例の試験3等に記載の官能評価法と同様の方法、好ましくは、同じ方法により評価することができる。より具体的には、「光劣化臭の程度」については、サンプル飲料における光劣化臭の程度を、「1点:光劣化臭が非常に強い」、「2点:光劣化臭がある」、「3点:光劣化臭がややある」、「4点:光劣化臭がほぼない」、「5点:光劣化臭がない」の5段階で評価し、例えば複数のパネルによる評価点(平均値の小数第2位を四捨五入した値)で2.0点以上、好ましくは3.0点以上の飲料が、光劣化臭が抑制された飲料として挙げられる。
なお、本発明における、光劣化臭が抑制された容器詰紅茶飲料の好ましい態様として、「光劣化臭の程度」が3.0点以上である飲料が好ましく挙げられ、「光劣化臭の程度」が4.0点以上である飲料がさらに好ましく挙げられ、「光劣化臭の程度」が5.0点である飲料がさらにより好ましく挙げられる。
【0052】
本発明の飲料は、香味の調和が維持されていなくてもよいが、香味の調和が維持されていることが好ましい。
本明細書において、「香味の調和が維持された」容器詰紅茶飲料とは、リナロールが高濃度であることによる香味不調和がない飲料を意味し、具体的には、リナロールの含有濃度が4ppm未満、好ましくは3.5ppm以下や3ppm以下である飲料が挙げられる。
【0053】
ある紅茶飲料における、香味の調和の程度は、訓練されたパネルであれば、容易かつ明確に決定することができる。
【0054】
香味の調和の評価の基準や、パネル間の評価のまとめ方は、一般的な方法を用いることができる。飲料における香味の調和の程度を評価するパネルの人数は1名であってもよいが、客観性がより高い評価を得る観点から、パネルの人数の下限を、例えば3名以上、好ましくは5名以上とすることができ、また、評価試験をより簡便に実施する観点から、パネルの人数の上限を、例えば7名以下とすることができる。パネルが2名以上の場合の飲料における香味の調和の程度の評価は、その飲料における香味の調和の程度についてのパネル全員の評価の平均を採用してもよく、例えば、各評価基準に評価点が付与されている場合、パネル全員の評価点の平均値をその飲料における香味の調和の程度の評価として採用してもよい。前述のように、評価点の平均値を採用する場合は、その平均値の小数第2位を四捨五入した値を採用してもよい。なお、パネルが2名以上である場合には、各パネルの評価のばらつきを低減するために、実際の官能評価試験を行う前に、各パネルの評価基準ができるだけ揃うように評価基準を共通化する作業を行っておくことが好ましい。かかる共通化作業としては、香味の調和の程度が最も大きいときの評価点に相当する、その香味の調和の程度の認識をパネル間であらかじめ共通化した上で、各サンプル飲料の評価を行うことが挙げられる。また、このような評価基準に関する事前の共通化作業により、例えば、評価点が1点;2点;3点;4点;5点の5段階である場合の、各パネルによる香味の調和の程度の評価の標準偏差が0.5以内となるようにしておくことが好ましい。
【0055】
ある容器詰紅茶飲料における、香味の調和の程度は、例えば後述の実施例の試験3等に記載の官能評価法と同様の方法、好ましくは、同じ方法により評価することができる。より具体的には、「香味の調和」については、サンプル飲料における香味の調和を、「1点:自然な調和が取れていない」、「2点:自然な調和がやや取れていない」、「3点:自然な調和が取れている」、「4点:自然な調和がより取れている」、「5点:自然な調和が大幅に取れている」の5段階で評価し、例えば複数のパネルによる評価点(平均値の小数第2位を四捨五入した値)で2.0点以上、好ましくは2.3点以上の飲料、より好ましくは3.0点以上の飲料が、香味の調和が維持された飲料として挙げられる。
【0056】
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【実施例0057】
試験1.[タンニン含有濃度の、光劣化臭への影響]
紅茶飲料のタンニン含有濃度が、光劣化臭の程度にどのような影響を与えるかを、以下の実験により調べた。
【0058】
(1.紅茶飲料の調製)
カフェインレスの紅茶葉を80℃のお湯に入れて7分間抽出し固液分離を行い、各紅茶抽出液を作製した。これらの紅茶抽出液のタンニン値を、日本食品分析センター編「五訂 日本食品標準成分分析マニュアルの解説」(日本食品分析センター編、中央法規、2001年7月、p.252)に記載の公定法(酒石酸鉄吸光度法)にて測定した。各紅茶抽出液のタンニン濃度を、表2記載のタンニン濃度となるように調整した。
上記の紅茶抽出液に、表2記載の配合量でグラニュー糖、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、及び、ビタミンCを添加して混合した後、106.5℃、30秒間加熱殺菌処理して、試験例1~6の容器詰紅茶飲料サンプルをそれぞれ調製した。
なお、カフェイン濃度による影響を排除するために、試験例1~5にカフェインを添加して、試験例1~5のカフェイン含有濃度が、試験例6のカフェイン含有濃度(32mg/L)と同じカフェイン含有濃度となるように調整した。
【0059】
(2.官能評価試験)
得られた試験例1~6の紅茶飲料サンプルの光劣化臭の程度について、訓練した専門パネル4名によって、以下の表1に記載されるような5段階の評価基準で官能評価試験を行った。
なお、各試験例サンプルにおける光劣化臭の程度の評価としては、各パネルの評価点の平均値の小数第2位を四捨五入した値を採用した。
【0060】
【0061】
試験例1~6の紅茶飲料サンプルについての官能評価試験の結果を表2に示す。
【0062】
【0063】
表2の結果から分かるように、タンニン濃度が20mg/Lの場合(試験例1)は、光劣化臭の問題はほぼ生じなかったが、タンニン濃度が50mg/L以上の場合は、光劣化臭の問題が発生し、タンニン濃度が高いと光劣化臭が強い傾向が認められた。
【0064】
試験2.[カフェイン含有濃度の、光劣化臭への影響]
紅茶飲料のカフェイン含有濃度が、光劣化臭の程度にどのような影響を与えるかを、以下の実験により調べた。
【0065】
(1.紅茶飲料の調製)
表3記載の配合量や濃度となるように、試験1に記載の調製法にしたがって、試験例3、7及び8の容器詰紅茶飲料サンプルをそれぞれ調製した。
【0066】
(2.官能評価試験)
得られた試験例3、7及び8の紅茶飲料サンプルの光劣化臭の程度について、前述の表1の評価基準を用いて、試験1記載の官能評価方法で官能評価試験を行った。その結果を表3に示す。
【0067】
【0068】
表3の結果から分かるように、タンニン濃度が同じ試験例においては、カフェイン濃度が低いほど、光劣化臭が強くなる傾向が認められた。
【0069】
試験3.[リナロールの、光劣化臭への影響]
紅茶飲料にリナロールを含有させると、光劣化臭の程度にどのような影響を与えるかを、以下の実験により調べた。
【0070】
(1.紅茶飲料の調製)
表5及び表6記載の配合量や濃度となるように、試験1に記載の調製法にしたがって、試験例7、9~15の紅茶飲料サンプルをそれぞれ調製した。ただし、試験例9~15については、試験1の調製法とは異なり、所定濃度になるようにリナロールを含有させた。
【0071】
(2.官能評価試験)
得られた試験例7、9~15の紅茶飲料サンプルの光劣化臭の程度について、前述の表1の評価基準を用いて、試験1記載の官能評価方法で官能評価試験を行った。その結果を表5及び表6に示す。
【0072】
また、得られた試験例7、9~15の紅茶飲料サンプルの「香味の調和」、具体的には、「リナロールが高濃度であることによる香味不調和の程度の多少」について、訓練した専門パネル4名によって、以下の表4に記載されるような5段階の評価基準で官能評価試験を行った。
【0073】
【0074】
試験例7、9~15の紅茶飲料サンプルについての「香味の調和」の官能評価試験の結果を表5及び表6に示す。
【0075】
【0076】
【0077】
表5及び表6の結果から、リナロールの含有濃度が0.5ppm以上であると、光劣化臭が抑制され、光劣化臭をより多く抑制する観点から、リナロールの含有濃度は好ましくは1ppm以上、より好ましくは2ppm以上であることが示された。
一方、香味の調和の観点から、リナロールの含有濃度は4ppm未満、好ましくは3ppm以下であることが好ましいことが示された。
【0078】
試験4.[カフェイン含有濃度の、光劣化臭への影響]
紅茶飲料のカフェイン含有濃度が、光劣化臭の程度にどのような影響を与えるかを、以下の実験により調べた。
【0079】
(1.紅茶飲料の調製)
表7記載の配合量や濃度となるように、試験1に記載の調製法にしたがって、試験例11、16~18の紅茶飲料サンプルをそれぞれ調製した。ただし、これらの試験例については、試験1の調製法とは異なり、所定濃度になるようにリナロールを含有させた。
【0080】
(2.官能評価試験)
得られた試験例11、16~18の紅茶飲料サンプルの光劣化臭の程度及び「香味の調和」について、試験3記載の官能評価方法で官能評価試験を行った。その結果を表7に示す。
【0081】
【0082】
表7の結果から、タンニン濃度が同じ試験例においては、カフェイン濃度が所定の範囲である場合に、光劣化臭がより多く抑制されることが示された。かかるカフェイン濃度として、例えば15~50mg/L以下が好ましく挙げられた。
【0083】
試験5.[タンニン含有濃度の、光劣化臭への影響]
紅茶飲料のタンニン含有濃度が、光劣化臭の程度にどのような影響を与えるかを、以下の実験により調べた。
【0084】
(1.紅茶飲料の調製)
表8記載の配合量や濃度となるように、試験1に記載の調製法にしたがって、試験例11、19~22の紅茶飲料サンプルをそれぞれ調製した。ただし、これらの試験例については、試験1の調製法とは異なり、所定濃度になるようにリナロールを含有させた。
【0085】
(2.官能評価試験)
得られた試験例11、19~22の紅茶飲料サンプルの光劣化臭の程度及び「香味の調和」について、試験3記載の官能評価方法で官能評価試験を行った。その結果を表8に示す。
【0086】
【0087】
表8の結果から、タンニン濃度は、光劣化臭の抑制の観点や、香味の調和の観点から、50~150mg/Lであることが好ましいことが示された。
【0088】
試験6.[pHの、光劣化臭への影響]
紅茶飲料のpHが、光劣化臭の程度にどのような影響を与えるかを、以下の実験により調べた。
【0089】
(1.紅茶飲料の調製)
表9記載の配合量や濃度となるように、試験1に記載の調製法にしたがって、試験例23~25の紅茶飲料サンプルをそれぞれ調製した。
表10記載の配合量や濃度となるように、試験1に記載の調製法にしたがって、試験例11、26~28の紅茶飲料サンプルをそれぞれ調製した。ただし、これらの試験例11、26~28については、試験1の調製法とは異なり、所定濃度になるようにリナロールを含有させた。また、試験例24、25、27、28については、所定濃度の酸味料を配合した上で、所定のpHになるように重曹を添加して調整した。
【0090】
(2.官能評価試験)
得られた試験例23~25の紅茶飲料サンプルの光劣化臭の程度について、前述の表1の評価基準を用いて、試験1記載の官能評価方法で官能評価試験を行った。その結果を表9に示す。
【0091】
【0092】
表9の結果から分かるように、pH6のサンプル飲料(試験例25)では、光劣化臭の問題はほぼ生じなかったが、pH3.8やpH4.5のサンプル飲料(試験例23、24)では光劣化臭の課題が生じることが示された。また、pHが低いほど、光劣化臭が強くなる傾向が認められた。
【0093】
(2.官能評価試験)
前述の試験例11、26~28の紅茶飲料サンプルの光劣化臭の程度及び「香味の調和」について、試験3記載の官能評価方法で官能評価試験を行った。その結果を表10に示す。
【0094】
【0095】
表9と表10において同じpH同士の試験例(例えば、試験例25と28、試験例24と27、試験例23と26)を比較すると、いずれのpHであっても、リナロールを含有させると、光劣化臭を抑制できることが示された。また、リナロールを含まない場合(表9)と比較した光劣化臭の抑制の程度がより大きいことから、pHは、4.5以下であること、又は、3.8~4.5であることが好ましいことが示された。