(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034755
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】表示システムおよび表示方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240306BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
G08G1/16 C
H04N7/18 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139220
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 学
(72)【発明者】
【氏名】槌谷 裕志
【テーマコード(参考)】
5C054
5H181
【Fターム(参考)】
5C054CA04
5C054CA05
5C054CC02
5C054EA01
5C054EA05
5C054FC07
5C054FC13
5C054FC14
5C054FD03
5C054FD07
5C054FE05
5C054FE06
5C054FE09
5C054FE12
5C054FF03
5C054HA30
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF05
5H181FF22
5H181FF32
5H181FF40
5H181LL01
5H181LL04
5H181LL08
(57)【要約】
【課題】自車両の周囲における交通参加者の存在を、運転者に対し、認識容易に且つ現実感のある態様で伝えること。
【解決手段】表示システムは、自車両の現在位置を取得する位置取得部と、自車両の現在位置と地図情報とに基づいて自車両の周囲環境を示す仮想環境画像を生成する環境画像生成部と、実環境映像から交通参加者の映像部分である参加者映像を抽出する部分映像抽出部と、自車両の運転者の転回意図の有無を判断する転回判断部と、仮想環境画像に参加者映像を対応する位置に嵌め込み合成した合成画像を生成して表示装置に表示する表示制御部と、を備え、表示制御部は、自車両が転回しないときは、運転者の前方視線に対応した仮想環境画像を含む前方仮想画像に基づく合成画像を表示し、自車両が転回しようとするときは、運転者の転回方向の視線に対応した仮想環境画像を含む側方仮想画像基づく合成画像を表示装置に表示する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の現在位置を取得する位置取得部と、
自車両の現在位置と地図情報とに基づいて、自車両の周囲環境を示す仮想画像である仮想環境画像を生成する環境画像生成部と、
自車両の周囲の実環境映像を取得して、前記実環境映像から交通参加者の映像部分である参加者映像を抽出する部分映像抽出部と、
自車両の運転者が転回しようとしているか否かを判断する転回判断部と、
前記仮想環境画像に前記抽出した参加者映像のそれぞれを前記仮想環境画像上の対応する位置に嵌め込み合成した合成画像を生成して表示装置に表示する表示制御部と、
を備え、
前記環境画像生成部は、自車両が転回しようとしていないときは、運転者の前方視線に対応した前記仮想環境画像を含む前方仮想画像を生成し、自車両が転回しようとしているときは、運転者の転回方向の視線に対応した前記仮想環境画像を含む側方仮想画像を生成し、
前記表示制御部は、自車両が転回しようとしていないときは、前記前方仮想画像に基づく前記合成画像を前記表示装置に表示し、自車両が転回しようとしているときは、前記側方仮想画像に基づく前記合成画像を前記表示装置に表示する、
表示システム。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記側方仮想画像に基づく前記合成画像を、前記表示装置の表示スクリーン上の、前記前方仮想画像に基づく前記合成画像の表示範囲より前記転回方向の側へずれた表示範囲に表示する、
請求項1に記載の表示システム。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記表示装置の表示スクリーン上において、前記合成画像を、自車両の進行方向先に対応する前記合成画像上の位置が、当該合成画像の表示範囲の中心となるように表示する、
請求項1に記載の表示システム。
【請求項4】
前記表示装置の前記表示スクリーンは、自車両のインストルメントパネルに設けられた、車幅方向に横長に延在する表示パネルである、
請求項2に記載の表示システム。
【請求項5】
前記表示装置の前記表示スクリーンは、自車両のインストルメントパネルに車幅方向に配置された複数の表示パネルで構成される、
請求項2に記載の表示システム。
【請求項6】
前記表示装置は、自車両のピラーの手前に配された追加の表示パネルを含む、
請求項4に記載の表示システム。
【請求項7】
前記環境画像生成部は、自車両が転回しようとしているときは、前記運転者の前方視線に対応した前記仮想環境画像の画角を転回方向に広げた、前記運転者の転回方向の視線に対応した前記仮想環境画像を含む前記側方仮想画像を生成する、
請求項1に記載の表示システム。
【請求項8】
前記表示制御部は、自車両が転回しようとしているときは、前記側方仮想画像に基づく前記合成画像を、前記表示装置の表示スクリーン上において、前記前方仮想画像に基づく前記合成画像のための表示範囲を前記転回方向の側へ広げた範囲に表示する、
請求項7に記載の表示システム。
【請求項9】
前記表示制御部は、所定の時間間隔で、現在時刻における前記仮想環境画像と前記参加者映像に基づく合成画像を生成して、現在時刻における前記合成画像を前記表示装置にリアルタイムに表示する、
請求項1に記載の表示システム。
【請求項10】
前記仮想環境画像は、自車両の現在位置を含む前記周囲環境を俯瞰する画像であり、前記仮想環境画像上の自車両に対応する位置に、自車両を示すグラフィック表現である仮想自車表現が重畳表示される、
請求項1ないし9のいずれか一項に記載の表示システム。
【請求項11】
表示システムが備えるコンピュータが実行する表示方法であって、
自車両の現在位置を取得するステップと、
自車両の現在位置と地図情報とに基づいて、自車両の周囲環境を示す仮想画像である仮想環境画像を生成するステップと、
自車両の周囲の実環境映像を取得して、前記実環境映像から交通参加者の映像部分である参加者映像を抽出するステップと、
自車両の運転者が転回しようとしているか否かを判断するステップと、
前記仮想環境画像に前記抽出した参加者映像のそれぞれを前記仮想環境画像上の対応する位置に嵌め込み合成した合成画像を生成して表示装置に表示するステップと、
を有し、
前記生成するステップでは、自車両が転回しようとしていないときは、運転者の前方視線に対応した前記仮想環境画像を含む前方仮想画像を生成し、自車両が転回しようとしているときは、運転者の転回方向の視線に対応した前記仮想環境画像を含む側方仮想画像を生成し、
前記表示するステップでは、自車両が転回しようとしていないときは、前記前方仮想画像に基づく前記合成画像を前記表示装置に表示し、自車両が転回しようとしているときは、前記側方仮想画像に基づく前記合成画像を前記表示装置に表示する、
表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両の周囲環境を表示する表示システムおよび表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通参加者の中でも脆弱な立場にある人々にも配慮した持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する取り組みが活発化している。この実現に向けて予防安全技術に関する研究開発を通して交通の安全性や利便性をより一層改善する研究開発に注力している。
【0003】
特許文献1には、自車両外に設置されたカメラを用いて撮像された映像を幾何変換して、自車両の上方から視た場合の映像や自車両の前方の仮想ミラーから視た場合の映像に変換して表示する、画像受信表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、予防安全技術においては、自車両の安全走行のため、運転者の知覚を補完する表示装置を用いた情報提供において、運転者に対し自車両の周囲における交通環境を認識容易に伝えることが課題である。
この点、特許文献1に記載の技術において表示される映像は、自車両の上方や仮想ミラーなどの固定点から視た映像であり、直進や左右への転回など、運転シーンの移り変わりに伴って視線方向を動的に変化させる必要のある運転者にとっては、実際の目視で捉える光景との乖離が大きい映像となり得る。このため、上記従来の技術では、運転者に交通環境を認識容易に伝えることには限界がある。
本願は、上記課題の解決のため、自車両の周囲における交通環境を、実際の運転シーンに合わせて運転者に認識容易に伝えることで、自車両走行についての予防安全を達成することを目的としたものである。そして、延いては持続可能な輸送システムの発展に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様は、自車両の現在位置を取得する位置取得部と、自車両の現在位置と地図情報とに基づいて、自車両の周囲環境を示す仮想画像である仮想環境画像を生成する環境画像生成部と、自車両の周囲の実環境映像を取得して、前記実環境映像から交通参加者の映像部分である参加者映像を抽出する部分映像抽出部と、自車両の運転者が転回しようとしているか否かを判断する転回判断部と、前記仮想環境画像に前記抽出した参加者映像のそれぞれを前記仮想環境画像上の対応する位置に嵌め込み合成した合成画像を生成して表示装置に表示する表示制御部と、を備え、前記環境画像生成部は、自車両が転回しようとしていないときは、運転者の前方視線に対応した前記仮想環境画像を含む前方仮想画像を生成し、自車両が転回しようとしているときは、運転者の転回方向の視線に対応した前記仮想環境画像を含む側方仮想画像を生成し、前記表示制御部は、自車両が転回しようとしていないときは、前記前方仮想画像に基づく前記合成画像を前記表示装置に表示し、自車両が転回しようとしているときは、前記側方仮想画像に基づく前記合成画像を前記表示装置に表示する、表示システムである。
本発明の他の態様によると、前記表示制御部は、前記側方仮想画像に基づく前記合成画像を、前記表示装置の表示スクリーン上の、前記前方仮想画像に基づく前記合成画像の表示範囲より前記転回方向の側へずれた表示範囲に表示する。
本発明の他の態様によると、前記表示制御部は、前記表示装置の表示スクリーン上において、前記合成画像を、自車両の進行方向先に対応する前記合成画像上の位置が、当該合成画像の表示範囲の中心となるように表示する。
本発明の他の態様によると、前記表示装置の前記表示スクリーンは、自車両のインストルメントパネルに設けられた、車幅方向に横長に延在する表示パネルである。
本発明の他の態様によると、前記表示装置の前記表示スクリーンは、自車両のインストルメントパネルに車幅方向に配置された複数の表示パネルで構成される。
本発明の他の態様によると、前記表示装置は、自車両のピラーの手前に配された追加の表示パネルを含む。
本発明の他の態様によると、前記環境画像生成部は、自車両が転回しようとしているときは、前記運転者の前方視線に対応した前記仮想環境画像の画角を転回方向に広げた、前記運転者の転回方向の視線に対応した前記仮想環境画像を含む前記側方仮想画像を生成する。
本発明の他の態様によると、前記表示制御部は、自車両が転回しようとしているときは、前記側方仮想画像に基づく前記合成画像を、前記表示装置の表示スクリーン上において、前記前方仮想画像に基づく前記合成画像のための表示範囲を前記転回方向の側へ広げた範囲に表示する。
本発明の他の態様によると、前記表示制御部は、所定の時間間隔で、現在時刻における前記仮想環境画像と前記参加者映像に基づく合成画像を生成して、現在時刻における前記合成画像を前記表示装置にリアルタイムに表示する。
本発明の他の態様によると、前記仮想環境画像は、自車両の現在位置を含む前記周囲環境を俯瞰する画像であり、前記仮想環境画像上の自車両に対応する位置に、自車両を示すグラフィック表現である仮想自車表現が重畳表示される。
本発明の他の態様は、表示システムが備えるコンピュータが実行する表示方法であって、自車両の現在位置を取得するステップと、自車両の現在位置と地図情報とに基づいて、自車両の周囲環境を示す仮想画像である仮想環境画像を生成するステップと、自車両の周囲の実環境映像を取得して、前記実環境映像から交通参加者の映像部分である参加者映像を抽出するステップと、自車両の運転者が転回しようとしているか否かを判断するステップと、前記仮想環境画像に前記抽出した参加者映像のそれぞれを前記仮想環境画像上の対応する位置に嵌め込み合成した合成画像を生成して表示装置に表示するステップと、を有し、前記生成するステップでは、自車両が転回しようとしていないときは、運転者の前方視線に対応した前記仮想環境画像を含む前方仮想画像を生成し、自車両が転回しようとしているときは、運転者の転回方向の視線に対応した前記仮想環境画像を含む側方仮想画像を生成し、前記表示するステップでは、自車両が転回しようとしていないときは、前記前方仮想画像に基づく前記合成画像を前記表示装置に表示し、自車両が転回しようとしているときは、前記側方仮想画像に基づく前記合成画像を前記表示装置に表示する、表示方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、自車両の周囲における交通環境を、実際の運転シーンに合わせて運転者に認識容易に伝えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る表示システムが搭載された自車両の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、自車両の車室内の構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る表示システムの構成を示す図である。
【
図4】
図4は、前方仮想画像に基づく合成画像および側方仮想画像に基づく合成画像の、表示装置における表示位置の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、自車両が右折する際の、側方仮想画像に基づく合成画像の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、表示システムのプロセッサが実行する表示方法の手順を示すフロー図である。
【
図7】
図7は、表示システムが合成画像を表示する表示装置の他の例を示す図である。
【
図8】
図8は、表示システムが合成画像を表示する表示装置の更に他の例を示す図である。
【
図9】
図9は、前方仮想画像に基づく合成画像および側方仮想画像に基づく合成画像の、表示装置における表示位置の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係る表示システム1が搭載された車両である自車両2の構成の一例を示す図、
図2は、自車両2の車室内の構成の一例を示す図である。表示システム1は、自車両2に搭載され、自車両2の周囲環境(以下、単に周囲環境ともいう)の仮想画像である仮想環境画像を表示装置12に表示して、周囲環境内における交通参加者の存在を運転者Dに伝える。
【0011】
自車両2には、周囲環境のうち自車両2の前方を撮影する前方カメラ3aと、自車両2の左右側方を撮影する左側方カメラ3bおよび右側方カメラ3cと、が配されている。以下、前方カメラ3a、左側方カメラ3b、および右側方カメラ3cを総称して、カメラ3ともいうものとする。前方カメラ3aは、例えば、フロントバンパー付近に配され、左側方カメラ3bおよび右側方カメラ3cは、例えば、左右のドアミラーに配されている。自車両2は、車両後方の周囲環境を撮影する後方カメラ(不図示)を更に備えてもよい。
自車両2には、また、周囲環境に存在する物体を検知する物体検知装置4が搭載されている。物体検知装置4は、例えば、レーダ、ソナー、及び又はライダー(Lidar)であり得る。
【0012】
自車両2には、さらに、少なくとも自車両2の走行速度の情報および方向指示器(不図示)の操作についての情報を収集する車両監視装置5と、自車両2の現在位置の位置情報をGNSS衛星から受信するGNSS受信機6と、地図情報を用いて経路案内を行うナビゲーション装置7と、が搭載されている。
【0013】
自車両2の車室内には、インストルメントパネル13の上に、車幅方向に横長に延在する表示パネルを表示スクリーン15とする表示装置12が設けられている。表示装置12は、例えば、タッチパネルである。表示装置12の表示スクリーン15は、例えば、運転席10の側のピラー11aの下部から、車幅方向に沿って反対側のピラー11bの下部まで延在している。以下、ピラー11aおよび11bを総称してピラー11ともいうものとする。
【0014】
図3は、表示システム1の構成を示す図である。
表示システム1は、プロセッサ20とメモリ21と、有する。メモリ21は、例えば、揮発性及び又は不揮発性の半導体メモリ、及び又はハードディスク装置等により構成される。プロセッサ20は、例えば、CPU等を備えるコンピュータである。プロセッサ20は、プログラムが書き込まれたROM、データの一時記憶のためのRAM等を有する構成であってもよい。そして、プロセッサ20は、機能要素又は機能ユニットとして、位置取得部23と、転回判断部24と、環境画像生成部25と、部分映像抽出部26と、車両検知部27と、表示制御部28と、を備える。
【0015】
プロセッサ20が備えるこれらの機能要素は、例えば、コンピュータであるプロセッサ20が、メモリ21に保存された表示プログラム22を実行することにより実現される。なお、表示プログラム22は、コンピュータ読み取り可能な任意の記憶媒体に記憶させておくことができる。これに代えて、プロセッサ20が備える上記機能要素の全部又は一部を、それぞれ一つ以上の電子回路部品を含むハードウェアにより構成することもできる。
【0016】
位置取得部23は、GNSS受信機6により位置情報を受信して、自車両2の現在位置を取得する。
【0017】
転回判断部24は、自車両2の運転者Dが転回しようとしているか否か(すなわち、運転者Dの転回意図の有無)を判断する。例えば、転回判断部24は、従来技術に従い、自車両2の方向指示器(不図示)の操作に関する情報、及び又は自車両2の予定走行経路についての情報に基づいて、自車両2の運転者が転回しようとしているか否かを判断する。すなわち、転回判断部24は、例えば、自車両2の方向指示器が操作されたときは、点灯された方向指示器が示す方向へ、運転者Dが転回しようとしているものと判断する。また、転回判断部24は、例えば、自車両2が交差点の手前を走行時に、予定走行経路がその交差点を右折又は左折するものであるときは、運転者Dは右折又は左折のための転回をしようとしているものと判断する。ここで、自車両2の方向指示器の操作に関する情報は、車両監視装置5から取得され得る。また、自車両2の予定走行経路の情報は、ナビゲーション装置7から取得され得る。
【0018】
なお、自車両2は操縦は、人である運転者Dに代えて、自律運転を行うコンピュータであってもよい。このため、以下では、自車両2の操縦がコンピュータである場合を含む広い概念として、「自車両2の運転者が転回しようとしている」ことを、単に「自車両2が転回しようとしている」ともいうものとする。この意味で、「運転者Dの転回意図」は、「自車両2における転回実行の判断」と言い換えることもできる。
【0019】
環境画像生成部25は、自車両2の現在位置と地図情報とに基づいて、自車両2の周囲環境を示す仮想画像である仮想環境画像を生成する。地図情報は、例えば、ナビゲーション装置7から取得され得る。本実施形態では、環境画像生成部25が生成する仮想環境画像は、例えば、自車両の現在位置を含む、周囲環境を俯瞰する3D画像(立体表示画像)である。
【0020】
本実施形態では、特に、環境画像生成部25は、転回判断部24における運転者Dの転回意図についての判断に基づき、自車両2が転回しようとしていないときは、運転者Dの前方視線に対応した(すなわち、前方視線で視た)仮想環境画像を含む前方仮想画像を生成する。また、環境画像生成部25は、転回判断部24における運転者Dの転回意図についての判断に基づき、自車両2が転回しようとしているときは、運転者Dの転回方向の視線に対応した(すなわち、転回方向の視線で視た)仮想環境画像を含む側方仮想画像を生成する。
【0021】
部分映像抽出部26は、カメラ3により自車両2の周囲の実環境映像を取得し、取得した実環境映像から交通参加者の映像部分である参加者映像を抽出する。
車両検知部27は、上記実環境映像から周囲環境内の車両である周囲車両の位置と、車種、サイズ、及び又は色を含む車両属性とを検知する。周囲車両のサイズは、例えば、従来技術に従い、実環境映像における周囲車両の画角と、物体検知装置4が検知したその周囲車両までの距離と、に基づいて算出され得る。また、周囲車両の車種は、例えば、従来技術に従い、メモリ21に予め記憶されたトラック、バス、乗用車、バイクなどの各車種のサイズ及び形状を示すテンプレート画像との画像マッチングにより特定されるものとすることができる。
【0022】
また、車両検知部27は、上記検知した周囲車両が自車両2と接触する可能性の有無を判断する。例えば、車両検知部27は、従来技術に従い、周囲車両の速度についての情報、方向指示器の点灯状態の情報、自車両2の走行速度についての情報、及び又は転回判断部24における運転者Dの展開意図の有無の判断結果に基づいて、上記接触の可能性の有無を判断する。ここで、周囲車両の速度についての情報および方向指示器の点灯状態の情報は、実環境映像から取得され得る。また、自車両2の走行速度についての情報は、車両監視装置5から取得され得る。
【0023】
表示制御部28は、環境画像生成部25が生成した仮想環境画像に、部分映像抽出部26が抽出した参加者映像のそれぞれを仮想環境画像上の対応する位置に嵌め込み合成した合成画像を生成して表示装置12に表示する。例えば、表示制御部28は、所定の時間間隔で、現在時刻における仮想環境画像と参加者映像に基づく合成画像を生成して、現在時刻における合成画像を表示装置12にリアルタイムに表示する。
【0024】
仮想環境画像に嵌め込み合成する際の参加者映像のサイズは、例えば、従来技術に従い、その交通参加者について算出される実サイズを、その参加者映像をはめ込み合成する位置における仮想環境画像の縮尺に合わせて縮小したサイズとすることができる。交通参加者の実サイズは、上述した周囲車両のサイズと同様に、実環境映像におけるその交通参加者の画角と、物体検知装置4が検知したその交通参加者までの距離と、に基づいて算出され得る。
【0025】
表示制御部28は、さらに、自車両2の(又は自車両2を示す)グラフィック表現である仮想自車表現を、仮想環境合画像上の対応する位置に重畳表示して合成画像を生成してもよい。例えば、仮想自車表現は、後方から視た自車両の動きを模擬するグラフィック表示であって、合成画像は、自車両を後方から追尾する視点での、いわゆるチェイスビューであり得る。
【0026】
本実施形態では、特に、表示制御部28は、転回判断部24における運転者Dの転回意図についての判断に基づき、自車両2が転回しようとしていないときは、前方仮想画像に基づく合成画像を表示装置12に表示する。また、表示制御部28は、転回判断部24における運転者Dの転回意図についての判断に基づき、自車両2が転回しようとしているときは、側方仮想画像に基づく合成画像を表示装置12に表示する。
【0027】
また、その際、表示制御部28は、側方仮想画像に基づく合成画像を、表示装置12の表示スクリーン15上の、前方仮想画像に基づく合成画像を表示する位置より転回方向の側へずれた位置に表示する。
【0028】
図4は、前方仮想画像に基づく合成画像および側方仮想画像に基づく合成画像の、表示装置12における表示位置の一例を示す図である。
図4は、
図2に示す車室内の図のうち、運転席10の前方部分を拡大した図であり、ステアリングホイールの図示を省略している。図示一点鎖線のラインCLは、運転席10に着座した運転者Dの身体の中心線を自車両2の長さ方向に沿ってインストルメントパネル13に投影した線である。
【0029】
図4の例では、前方仮想画像に基づく合成画像の表示範囲である前方画像範囲17aは、ラインCLを中心とする図示点線の矩形範囲に設定される。また、左転回の際に左方向視点の側方仮想画像に基づく合成画像の表示範囲である左画像範囲17bは、前方画像範囲17aに対し転回方向である左側へずれた位置に設定される。また、右転回の際に右方向視点の側方仮想画像に基づく合成画像の表示範囲である右画像範囲17cは、前方画像範囲17aに対し転回方向である右側へずれた位置であって、ピラー11aの下部付近に設定される。
【0030】
例えば、表示制御部28は、表示装置12の表示スクリーン15上において、合成画像を、自車両の進行方向先に対応する当該合成画像上の位置が、当該合成画像の表示範囲の中心となるように表示する。これにより、運転者Dは、表示される合成画像からの交通環境の直感認識がより容易となる。
【0031】
なお、前方仮想画像に基づく合成画像、左方向視点の側方仮想画像に基づく合成画像、および右方向視点の側方仮想画像に基づく合成画像は、それぞれ選択的に表示される(すなわち、一の合成画像が表示されるときは、他の合成画像は表示されない)ので、前方画像範囲17a、左画像範囲17b、および右画像範囲17cは、図示のように必ずしも互いに分離している必要はなく、互いの一部の領域が重なっていても良い。
【0032】
表示制御部28は、例えば、前方画像範囲17a、左画像範囲17b、および右画像範囲17cの間を合成画像が移動するような態様で、直進時、左転回時、及び右転回時のそれぞれの合成画像を切り替えて表示するものとすることができる。
【0033】
上記の構成を有する表示システム1では、自車両2の周囲環境が合成画像として表示装置12に表示されるので、運転者Dは、例えば、交通状況についての確認項目の多い交差点での転回時において、ピラー11等の死角に存在する歩行者等の存在を表示装置12の画面上で知ることができるので、運転負荷が軽減される。また、表示装置12に表示される合成画像には、交通参加者の映像が参加者映像として嵌め込み合成されて示されるので、歩行者等の交通参加者の存在を、運転者Dに対してリアルに(すなわち、現実感のある態様で)伝えることができる。
【0034】
また、表示システム1では、合成画像は、自車両2の現在位置の周辺を俯瞰する立体的な仮想環境画像をベースとするので、運転者Dは、複数のカメラ映像から合成される映像が歪みやすい俯瞰ビューに比べて、周囲環境に存在する交通参加者と自車両との位置関係や、交通参加者間の位置関係を把握しやすい。
すなわち、表示システム1では、立体的な仮想環境画像をベースとして、自車両及び交通参加者を含む交通環境の立体的な配置関係の把握を容易としつつ、交通参加者の映像を仮想環境画像に嵌め込み合成することで、交通参加者の存在およびその動きの詳細を、運転者Dにリアルに伝えることができる、という優れた効果を有する。
【0035】
また、表示システム1では、自車両2が転回しようとしていないときは、運転者Dの前方視線に対応した前方仮想画像をベースとする合成画像を表示し、自車両2が転回しようとしているときは、運転者Dの転回方向の視線に対応した側方仮想画像ベースとする合成画像を表示するので、転回方向における交通状況を、運転者Dの目線に沿った直観的に理解し易い画像により運転者Dへ伝えることができる。
【0036】
また、表示システム1では、自車両2が転回しようとしているときは、表示装置12における合成画像の表示位置を、自車両2が転回しようとしてないときの表示位置に比べて転回方向の側へずらすので、表示装置12上の合成画像の位置は、転回に際して運転者Dの頭が回転する方向へ移動することとなる。このため、表示システム1では、運転者Dが合成画像を視認する際に必要となる視線移動量を減らして、合成画像からの交通状況の直観認識を容易にすることができる。
【0037】
また、交通参加者を参加者映像として提示することで、運転者Dは、参加者映像と実環境に存在する交通参加者との相関がとりやすく、実空間での交通参加者の認識が容易となる。さらに、仮想環境画像は、例えば、交差点の位置寸法、車線、歩道以外の不要な情報を省いた表示にすることができるので、運転者Dは、余計な情報に惑わされず、必要な情報に集中することができる。
【0038】
なお、表示システム1において、表示制御部28は、合成画像を表示する際に、歩行者または自転車である交通参加者の参加者映像を強調表示してもよい。上記強調表示は、例えば、参加者映像の外周(すなわち、仮想環境画像との境界)の枠線の少なくとも一部を暖色系の線で表示すること、参加者映像の輝度を周囲より高めること又は変化(例えば点滅)させること、参加者映像の暖色系の色調を強めること、等により行うものとすることができる。
これにより、表示システム1では、運転者Dにとって見落としやすい歩行者や自転車の存在を、より確実かつリアルに運転者Dへ伝えることができる。
【0039】
また、表示制御部28は、合成画像において、周囲車両である交通参加者については、車両検知部27が検知したその周囲車両の車両属性に応じたグラフィック表現である仮想車両表現を、周囲車両表示として、仮想環境画像上の対応する位置に嵌め込み合成して合成画像を生成してもよい。例えば、表示制御部28は、車両属性が示す車種がトラックであるときは、予めメモリ21に記憶したトラックの仮想車両表現を、その車両属性が示す色及びサイズに応じた色及びサイズを用いて、仮想環境画像上に嵌め込み合成して合成画像を生成することができる。
これにより、表示システム1では、交通参加者のうち、グラフィック表現を用いて詳細情報(例えば、速度感、色、サイズ感、車種)を表現し易い車両については、仮想車両表現を用いて表示を行うので、合成画像の生成および表示装置への出力に要する処理負荷が低減され得る。
【0040】
図5は、自車両2が交差点を右折するときに表示制御部28が表示装置12に表示する、側方仮想画像に基づく合成画像の一例を示す図である。側方仮想画像に基づく合成画像30には、自車両2の現在位置における周囲環境を俯瞰する立体的な仮想環境画像31に、自車両2を示す仮想自車表現32と、歩行者である交通参加者の参加者映像33と、対向車として自車両2に接近する周囲車両の周囲車両表示34と、が表示されている。
図5の例では、周囲車両表示34には、デフォルトである仮想車両表現が用いられている。
図5に示す合成画像30において、例えば、自車両2の運転者Dが周囲車両表示34にタッチすると、表示制御部28は、タッチのたびに、周囲車両の仮想車両表現から参加者映像へ又はその逆に、周囲車両表示34を切り替える。
【0041】
表示制御部28は、また、タッチパネルである表示装置12に表示された合成画像上の、周囲車両表示である仮想車両表現がタッチされたことに応じて、当該周囲車両表示を、仮想車両表現から、当該仮想車両表現に対応する交通参加者の参加者映像に切り替えてもよい。すなわち、周囲車両表示は、仮想車両表現をデフォルトとし、表示装置12に表示された合成画像上でのタッチ操作により、周囲車両表示が、仮想車両表現と参加者映像との間で切り替えられるものとすることができる。例えば、
図5に示す合成画像30において、自車両2の運転者Dが周囲車両表示34にタッチすると、表示制御部28は、タッチのたびに、周囲車両の仮想車両表現から参加者映像へ又はその逆に、周囲車両表示34を切り替える。
これにより、表示システム1では、運転者Dが必要に応じて、周囲車両表示を参加者映像に切り替えて、周囲車両についてのより詳細な視覚情報を得ることができる。
【0042】
表示制御部28は、また、周囲車両が自車両と接触する可能性があるとき、すなわち、周囲車両が自車両2と接触する可能性があると車両検知部27が判断したときは、合成画像において、上記周囲車両に対応する周囲車両表示(当該周囲車両の仮想車両表現又は参加者映像)を強調表示してもよい。
これにより、表示システム1では、接触や衝突の可能のある周囲車両の存在を、より確実に運転者Dに伝えることができる。
【0043】
上記強調表示は、上述した歩行者である交通参加者の参加者映像の強調表示と同様に、例えば、周囲車両表示に暖色系の枠線を表示すること、周囲車両表示の輝度を周囲より高めること又は時間的に変化させること、周囲車両表示の暖色系の色調を強めること、等により行うものとすることができる。
【0044】
次に、表示システム1における動作の手順について説明する。
図6は、表示システム1のコンピュータであるプロセッサ20が実行する、自車両2の周囲環境を表示するための、表示方法の処理の手順を示すフロー図である。本処理は、繰り返し実行される。
【0045】
処理を開始すると、まず、位置取得部23は、自車両2の現在位置を取得する(S100)。また、転回判断部24は、自車両2の運転者Dの転回意図の有無を判断する(S102)。続いて、環境画像生成部25は、自車両2の現在位置および地図情報と、上記転回意図の有無の判断結果に基づいて、転回意図の有無に応じた、自車両2の周囲環境を示す仮想画像である仮想環境画像を生成する(S104)。ここで、“転回意図の有無に応じた仮想環境画像を生成する”とは、自車両2が転回しようとしていないときは前方仮想画像を生成し、自車両2が転回しようとしているときは側方仮想画像を生成することをいう。
【0046】
次に、部分映像抽出部26は、車載のカメラ3から自車両2の周囲の実環境映像を取得し、実環境映像から交通参加者の映像部分である参加者映像を抽出する(S106)。また、車両検知部27は、上記実環境映像から周囲環境内の車両である周囲車両の位置と、車種、サイズ、及び又は色を含む車両属性とを検知する(S108)。このとき、車両検知部27は、検知した周囲車両が自車両と接触する可能性の有無を判断してもよい。
【0047】
次に、表示制御部28は、仮想環境画像に、上記検知した周囲車両を示す周囲車両表示と、上記抽出した少なくとも歩行者についての参加者映像を、仮想環境画像上の対応する位置に嵌め込み合成した合成画像を生成する(S110)。ここで、上記周囲車両表示は、デフォルトとして、上記周囲車両を示す仮想車両表現であり得る。
【0048】
そして、表示制御部28は、生成した合成画像を、転回意図の有無に応じた表示装置12上の位置に表示する(S112)。本実施形態では、特に、表示制御部28は、側方仮想画像に基づく合成画像を表示装置12に表示するときは、前方仮想画像に基づく合成画像を表示する位置より転回方向の側へずれた位置に表示する。
【0049】
ステップS112において、表示制御部28は、上述したように、歩行者や自転車の参加者映像を強調表示してもよい。また、上記検知した周囲車両が自車両と接触する可能性があると車両検知部27が判断したときは、表示制御装置は、対応する周囲車両表示を強調表示してもよい。
【0050】
次に、表示制御部28は、タッチパネルである表示装置12に表示した合成画像上のいずれかの周囲車両表示がタッチされたか否かを判断する(S114)。そして、周囲車両表示がタッチされたときは(S114、YES)、表示制御部28は、その周囲車両表示を、仮想車両表現と、その周囲車両の参加者映像との間で切り替えて(S116)、本処理を終了する。一方、いずれの周囲車両表示もタッチされていないときは(S114、NO)、表示制御装置は、本処理を終了する。
【0051】
本処理が終了した後は、プロセッサ20は、ステップS100に戻って本処理を繰り返し、現在時刻における合成画像を、表示装置12にリアルタイムに表示する。
【0052】
[5.他の実施形態]
表示装置12の表示スクリーン15は、上述した実施形態では、車幅方向に横長に延在するものとしたが、これには限られない。表示装置12の表示スクリーン15は、
図7に示すように、インストルメントパネル13上に車幅方向に配置された複数の任意の数の表示パネル、例えば6個の表示パネル151a、151b、151c、151d、151e、および151fで構成されてもよい。以下、表示パネル151a、151b、151c、151d、151e、および151fを総称して表示パネル151という。表示制御部28は、自車両2が転回しようとしているときは、右転回時及び又は左転回時において、側方仮想画像に基づく合成画像を、前方仮想画像に基づく合成画像を表示する一の表示パネル151より転回方向の側にある他の表示パネル151に表示するものとすることができる。これにより、前方仮想画像に基づく合成画像と、側方仮想画像に基づく合成画像とを、互いにずれた位置に表示することのできる表示装置12を、容易に構成することができる。
【0053】
また、表示装置12は、
図8に示すように、自車両2の少なくとも一方のピラー11の手前に配された追加の表示パネル152を含んでもよい。表示制御部28は、自車両2が転回しようとしているときは、右転回時及び又は左転回時において、側方仮想画像に基づく合成画像を、転回方向の側にある追加の表示パネル152に表示するものとすることができる。これにより、運転者Dが合成画像を視認する際に必要となる視線移動量を更に減らすことができる。
図7に示す構成においても同様である。
【0054】
また、環境画像生成部25は、自車両2が転回しようとしているときは、側方仮想画像として、運転者Dの前方視線に対応した仮想環境画像の画角を転回方向に広げた、運転者Dの転回方向の視線に対応した仮想環境画像を含む側方仮想画像を生成してもよい。これにより、運転者Dが視線の移動に伴って目視し得る光景と同様な、前方視線から側方視線へつながる切れ目のない仮想画像を表示し得るので、より直感認識が容易な仮想画像を運転者Dに提供することができる。
【0055】
上記のような側方仮想画像の場合には、表示制御部28は、例えば
図9に示すように、側方仮想画像に基づく合成画像を、表示装置12の表示スクリーン15上において、前方仮想画像に基づく合成画像のための表示範囲である前方画像範囲17a(図示点線矩形)を転回方向の側へ広げた表示範囲である左画像範囲18b(図示一点鎖線の矩形範囲)または右画像範囲18c(図示二点鎖線の矩形範囲)に表示する。これにより、運転者Dが転回時に行う前方から側方への視線移動の方向に拡大された表示範囲に側方仮想画像が表示されるので、さらに直感認識が容易な態様で仮想画像を運転者Dに提供することができる。
【0056】
また、上述した実施形態では、実環境映像は、自車両2が搭載するカメラ3から取得されるものとしたが、周囲環境に存在する街灯カメラから、路車間通信等を介して取得されるものとしてもよい。
また、実環境映像は、自車両2の周囲の車両が備える車載カメラから、通信ネットワークを介した通信により、又は車車間通信により、取得されるものとしてもよい。
【0057】
また、表示制御部28は、上述した実施形態では、歩行者や自転車である交通参加者の参加者映像を強調表示するものとしが、歩行者のうち、子供や高齢者等の注意が必要な歩行者についてのみ強調表示するものとしてもよい。強調表示は、上述した態様のほか、点滅表示や拡大表示であってもよい。
【0058】
表示制御部28は、夜間や雨天時等の直接視界が悪いときにも、環境条件に左右されずに、クリアな仮想環境画像に基づく合成画像を表示装置12に表示させるものとすることができる。
【0059】
カメラ3は、赤外線カメラであってもよい。これにより、暗闇において肉眼では確認できない歩行者の存在を、合成画像上において運転者Dへ伝えることができる。
【0060】
表示制御部28は、表示装置12に表示された合成画像上の任意の位置がタッチされることに応じて、実環境映像のうち上記タッチされた位置の部分映像を、仮想環境画像上に更に嵌め込み合成して合成画像を生成してもよい。
【0061】
なお、本発明は上記の実施形態の構成に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【0062】
[6.上記実施形態によりサポートされる構成]
上述した実施形態は、以下の構成をサポートする。
【0063】
(構成1)自車両の現在位置を取得する位置取得部と、自車両の現在位置と地図情報とに基づいて、自車両の周囲環境を示す仮想画像である仮想環境画像を生成する環境画像生成部と、自車両の周囲の実環境映像を取得して、前記実環境映像から交通参加者の映像部分である参加者映像を抽出する部分映像抽出部と、自車両の運転者が転回しようとしているか否かを判断する転回判断部と、前記仮想環境画像に前記抽出した参加者映像のそれぞれを前記仮想環境画像上の対応する位置に嵌め込み合成した合成画像を生成して表示装置に表示する表示制御部と、を備え、前記環境画像生成部は、自車両が転回しようとしていないときは、運転者の前方視線に対応した前記仮想環境画像を含む前方仮想画像を生成し、自車両が転回しようとしているときは、運転者の転回方向の視線に対応した前記仮想環境画像を含む側方仮想画像を生成し、前記表示制御部は、自車両が転回しようとしていないときは、前記前方仮想画像に基づく前記合成画像を前記表示装置に表示し、自車両が転回しようとしているときは、前記側方仮想画像に基づく前記合成画像を前記表示装置に表示する、表示システム。
構成1の表示システムによれば、運転シーン(転回しようとしているか否か)に合わせて表示装置に表示する合成画像の視点を変更するので、運転者は、進もうとする方向の交通環境を直感認識することが容易となる。すなわち、構成1の表示システムによれば、自車両の周囲における交通環境を、実際の運転シーンに合わせて運転者に認識容易に伝えることができる。
【0064】
(構成2)前記表示制御部は、前記側方仮想画像に基づく前記合成画像を、前記表示装置の表示スクリーン上の、前記前方仮想画像に基づく前記合成画像を表示する位置より前記転回方向の側へずれた位置に表示する、構成1に記載の表示システム。
構成2の表示システムによれば、運転シーンに合わせて表示装置に表示する合成画像の表示位置を変更するので、運転者は、合成画像を視認する際の視線移動が減り、進もうとする方向の交通状況を直感認識することがより容易となる。
【0065】
(構成3)前記表示制御部は、前記表示装置の表示スクリーン上において、前記合成画像を、自車両の進行方向先に対応する前記合成画像上の位置が、当該合成画像の表示範囲の中心となるように表示する、構成1または2に記載の表示システム。
構成3の表示システムによれば、運転者は、表示される合成画像からの交通環境の直感認識がより容易となる。
【0066】
(構成4)前記表示装置の前記表示スクリーンは、自車両のインストルメントパネルに設けられた、車幅方向に横長に延在する表示パネルである、構成2または3に記載の表示システム。
構成4の表示システムによれば、側方仮想画像に基づく合成画像の表示位置を、前方仮想画像に基づく合成画像の表示位置から転回方向へ向かってずれた位置に、容易に表示することができる。
【0067】
(構成5)前記表示装置の前記表示スクリーンは、自車両のインストルメントパネルに車幅方向に配置された複数の表示パネルで構成される、構成2または3に記載の表示システム。
構成5の表示システムによれば、前方仮想画像に基づく合成画像と側方仮想画像に基づく合成画像とを互いにずれた位置に表示することのできる表示装置を、容易に構成することができる。
【0068】
(構成6)前記表示装置は、自車両のピラーの手前に配された追加の表示パネルを含む、構成4または5に記載の表示システム。
構成6の表示システムによれば、転回時における運転者の視線方向の近くに合成画像が表示されるので、運転者が合成画像を視認する際に必要となる視線移動量を更に減らすことができる。
【0069】
(構成7)前記環境画像生成部は、自車両が転回しようとしているときは、前記運転者の前方視線に対応した前記仮想環境画像の画角を転回方向に広げた、前記運転者の転回方向の視線に対応した前記仮想環境画像を含む前記側方仮想画像を生成する、構成1に記載の表示システム。
構成7の表示システムによれば、運転者が視線移動に伴って目視し得る光景と同様な、前方視線から側方視線へつながる切れ目のない仮想画像を表示し得るので、より直感認識が容易な仮想画像を運転者に提供することができる。
【0070】
(構成8)前記表示制御部は、自車両が転回しようとしているときは、前記側方仮想画像に基づく前記合成画像を、前記表示装置の表示スクリーン上において、前記前方仮想画像に基づく前記合成画像のための表示範囲を前記転回方向の側へ広げた範囲に表示する、構成7に記載の表示システム。
構成8の表示システムによれば、運転者が転回時に行う前方から側方への視線移動の方向に拡大された表示範囲に側方仮想画像が表示されるので、さらに直感認識が容易な態様で仮想画像を運転者に提供することができる。
【0071】
(構成9)前記表示制御部は、所定の時間間隔で、現在時刻における前記仮想環境画像と前記参加者映像に基づく合成画像を生成して、現在時刻における前記合成画像を前記表示装置にリアルタイムに表示する、構成1ないし8のいずれかに記載の表示システム。
構成9の表示システムによれば、時々刻々変化する交通環境における運転者の視線の動きに沿った表示装置上の位置に合成画像を表示して、交通参加者の出現や動きを、空間認識が容易であって且つ交通参加者のリアルな存在感のある態様で運転者に伝えることができる。
【0072】
(構成10)前記仮想環境画像は、自車両の現在位置を含む前記周囲環境を俯瞰する画像であり、前記仮想環境画像上の自車両に対応する位置に、自車両を示すグラフィック表現である仮想自車表現が重畳表示される、構成1ないし9のいずれかに記載の表示システム。
構成10の表示システムによれば、自車両を示す仮想自車表現を含んだ、自車両の現在位置の周辺を俯瞰する仮想環境画像をベースとするので、運転者は、映像が歪みやすいカメラ画像合成の俯瞰ビューに比べて、交通参加者と自車両との位置関係や、交通参加者間の位置関係を把握しやすい。
【0073】
(構成11)表示システムが備えるコンピュータが実行する表示方法であって、自車両の現在位置を取得するステップと、自車両の現在位置と地図情報とに基づいて、自車両の周囲環境を示す仮想画像である仮想環境画像を生成するステップと、自車両の周囲の実環境映像を取得して、前記実環境映像から交通参加者の映像部分である参加者映像を抽出するステップと、自車両の運転者が転回しようとしているか否かを判断するステップと、前記仮想環境画像に前記抽出した参加者映像のそれぞれを前記仮想環境画像上の対応する位置に嵌め込み合成した合成画像を生成して表示装置に表示するステップと、を有し、前記生成するステップでは、自車両が転回しようとしていないときは、運転者の前方視線に対応した前記仮想環境画像を含む前方仮想画像を生成し、自車両が転回しようとしているときは、運転者の転回方向の視線に対応した前記仮想環境画像を含む側方仮想画像を生成し、前記表示するステップでは、自車両が転回しようとしていないときは、前記前方仮想画像に基づく前記合成画像を前記表示装置に表示し、自車両が転回しようとしているときは、前記側方仮想画像に基づく前記合成画像を前記表示装置に表示する、表示方法。
構成11の表示方法によれば、仮想環境画像をベースとして交通環境の把握を容易としつつ、参加者映像により交通参加者の存在を運転者にリアルに伝えることができることに加えて、転回方向における交通状況を、転回時の運転者Dの目線に応じた、直観的に理解し易い画像で運転者Dへ伝えることができる。
【符号の説明】
【0074】
1…表示システム、2…自車両、3…カメラ、3a…前方カメラ、3b…左側方カメラ、3c…右側方カメラ、4…物体検知装置、5…車両監視装置、6…GNSS受信機、7…ナビゲーション装置、10…運転席、11、11a、11b…ピラー、12、14…表示装置、13…インストルメントパネル、15…表示スクリーン、151、151a、151b、151c、151d、151e、151f…表示パネル、152…追加の表示パネル、17a…前方画像範囲、17b、18b…左画像範囲、17c、18c…右画像範囲、20…プロセッサ、21…メモリ、22…表示プログラム、23…位置取得部、24…転回判断部、25…環境画像生成部、26…部分映像抽出部、27…車両検知部、28…表示制御部、30…合成画像、31…仮想環境画像、32…仮想自車表現、33…参加者映像、34…周囲車両表示、D…運転者。