(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034763
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】汎用コンバインの脱穀装置
(51)【国際特許分類】
A01F 12/22 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
A01F12/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139228
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】渡部 寛樹
【テーマコード(参考)】
2B094
【Fターム(参考)】
2B094AA03
2B094AA11
2B094EA05
2B094EB12
2B094EB14
2B094FA04
2B094GB01
2B094GB05
2B094GB07
2B094GB13
2B094GC01
2B094GC06
(57)【要約】
【課題】本発明は、汎用コンバインの脱穀装置の扱胴を簡単な構造で強固にすることで、軽量にして駆動負荷を軽減し、製造コストを低下することを課題とする。
【解決手段】脱穀装置4の扱室10内にインペラ31とロータ32で構成する扱胴11を軸架する汎用コンバインにおいて、軸方向視で円状に配するバーフレーム50に円環状帯鉄からなる外形リング52を軸方向一定間隔で配し、このリング52に放射状に突起するツース58を設けたことを特徴とする汎用コンバインの脱穀装置とする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀装置(4)の扱室(10)内にインペラ(31)とロータ(32)で構成する扱胴(11)を軸架する汎用コンバインにおいて、軸方向視で円状に配するバーフレーム(50)に円環状帯鉄からなる外形リング(52)を軸方向一定間隔で配し、この外形リング(52)に放射状に突起するツース(58)を設けたことを特徴とする汎用コンバインの脱穀装置。
【請求項2】
複数の円弧リング(52a)の端部を重ねて連結して円環状に形成して外形リング(52)とした請求項1に記載の汎用コンバインの脱穀装置。
【請求項3】
ツース(58)をバーフレーム(50)と重なる位置で外形リング(52)に配置したことを特徴とする請求項1に記載の汎用コンバインの脱穀装置。
【請求項4】
ツース(58)に螺旋面を設けたことを特徴とする請求項1に記載の汎用コンバインの脱穀装置。
【請求項5】
ツース(58)をU字状に曲げたU字杆ツース(58A)として回転方向に後退角を持たせて外形リング(52)に突出して固着したことを特徴とする請求項1に記載の汎用コンバインの脱穀装置。
【請求項6】
軸方向で隣り合う外形リング(52)に跨ってU字杆ツース(58A)を設けたことを特徴とする請求項1に記載の汎用コンバインの脱穀装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汎用コンバインに搭載する脱穀装置の扱胴に関する。
【背景技術】
【0002】
汎用コンバインは、特開2016―187327号公報に記載されているように、穀粒を稔らせた穀稈を圃場から刈り取って、脱穀装置に投入して穀粒を脱穀分離してその穀粒をグレンタンクに溜めて脱穀済みの排桿を圃場に排出するようにしている。
【0003】
そして、脱穀装置に軸架する扱胴は、軸方向視で円筒形状ドラム部の表面に扱歯取付部材で扱歯を立設している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
汎用コンバインの脱穀装置に設ける扱胴は、円筒形状ドラムの周面に扱歯を立設しているが、強度を保つために内部に六角筒状ドラムを設けた複雑な構造となっている。
【0006】
本発明は、汎用コンバインの脱穀装置の扱胴を簡単な構造で強固にすることで、軽量にして駆動負荷を軽減し、製造コストを低下することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
【0008】
請求項1の発明は、脱穀装置4の扱室10内にインペラ31とロータ32で構成する扱胴11を軸架する汎用コンバインにおいて、軸方向視で円状に配するバーフレーム50に円環状帯鉄からなる外形リング52を軸方向一定間隔で配し、この外形リング52に放射状に突起するツース58を設けたことを特徴とする汎用コンバインの脱穀装置とする。
【0009】
請求項2の発明は、複数の円弧リング52aの端部を重ねて連結して円環状に形成して外形リング52とした請求項1に記載の汎用コンバインの脱穀装置とする。
【0010】
請求項3の発明は、ツース58をバーフレーム50と重なる位置で外形リング52に配置したことを特徴とする請求項1に記載の汎用コンバインの脱穀装置とする。
【0011】
請求項4の発明は、ツース58に螺旋面を設けたことを特徴とする請求項1に記載の汎用コンバインの脱穀装置とする。
【0012】
請求項5の発明は、ツース58をU字状に曲げたU字杆ツース58Aとして回転方向に後退角を持たせて外形リング52に突出して固着したことを特徴とする請求項1に記載の汎用コンバインの脱穀装置とする。
【0013】
請求項6の発明は、軸方向で隣り合う外形リング52に跨ってU字杆ツース58Aを設けたことを特徴とする請求項1に記載の汎用コンバインの脱穀装置とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明で、扱室10に軸架される扱胴11のロータ32が軸方向視で円状に配するバーフレーム50に円環状帯鉄からなる外形リング52を軸方向一定間隔で配してこの外形リング52にツース58を設けているので、簡単に構成され、外形リング52が鉄板をプレスによって成形され、部品が容易に作成される。
【0015】
請求項2の発明で、円弧状の円弧リング52aをその端部を重ねて連結して円環状に形成して外形リング52を作成するので、鉄板を利用して無駄なく円弧リング52aをプレスで成形されるので、材料が無駄なく利用され製作がコストダウンになる。
【0016】
請求項3の発明で、扱室10内で脱穀穀稈に送り作用して強い反作用を受けるツース58が外形リング52のバーフレーム50との連結部に設けられているので、扱胴11が強固に構成される。
【0017】
請求項4の発明で、ツース58による脱穀作用と共にツース58の螺旋面で脱穀処理物が効果的に後方へ送られ、脱穀と共に脱穀処理物の停滞を防ぎ、脱穀装置の性能向上となる。
【0018】
請求項5の発明で、外形リング52に設けるU字杆ツース58Aが穀稈に絡まって脱穀処理を効果的に行える。
【0019】
請求項6の発明で、軸方向で隣り合う外形リング52がU字杆ツース58Aで一体に連結されてロータ32が強固となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態にかかるコンバインの正面図である。
【
図4】同コンバインの脱穀装置の前後方向の縦断面図である。
【
図9】本発明の別実施例のロータの横断面図である。
【
図10】本発明の更に別実施例のロータの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1~3に示すように、汎用コンバインは、機体フレーム1の下側に土壌面を走行する左右一対のクローラからなる走行装置2が設けられ、機体フレーム1の前側に圃場の穀稈を収穫する刈取前処理装置3が設けられ、刈取前処理装置3の後方左側に収穫された穀稈を脱穀・選別処理する脱穀装置4が設けられ、刈取前処理装置3の後方右側に操縦者が搭乗する操縦部5が設けられている。操縦部5を囲むキャビン59の上面にソーラーパネル60を設け、日光で発電する電力をバッテリーに充電する。
【0022】
操縦部5の下側にエンジンを内装するエンジンルーム6が設けられ、操縦部5の後側に脱穀・選別処理された穀粒を貯留するグレンタンク7が設けられ、グレンタンク7の後側に穀粒を外部に排出する排出オーガ8が設けられている。
【0023】
刈取前処理装置3は、圃場の穀稈を起立させながら後側に搬送する搬送装置3Aと、搬送装置3Aの後側下部に搬送された穀稈の株元を切断する刈刃装置3Bと、搬送装置3Aの後側に搬送された穀稈を左側に寄せ集めるオーガ装置3Cと、寄せ集められた穀稈を脱穀装置4に搬送するフィーダハウス3Dから構成されている。
【0024】
図4に示すように、脱穀装置4は、穀稈を脱穀する扱室10と、脱穀された穀粒を選別する選別室20から形成されている。
【0025】
扱室10の前後壁には、フィーダハウス3Dから搬送されてくる穀稈を脱穀する扱胴11が架設され、扱胴11の下側には、扱胴11の外周下部に沿って半円弧形状に形成された受網12が設けられている。また、扱胴11の上部は、開閉可能な扱胴カバー13で覆われており、扱胴カバー13の内周部には、穀稈を扱室10の後部に案内する送塵板(図示省略)が設けられている。
【0026】
選別室20の上部には、扱室10から漏下してくる穀粒を選別処理する揺動選別装置21が設けられている。揺動選別装置21の下部には、前側から順に、揺動選別装置21に選別風を送風する唐箕25と、唐箕25の後方に選別風の送風方向を変更する風割26と、揺動選別装置21から漏下してくる穀粒をグレンタンク7に搬送する1番螺旋27と、揺動選別装置21の後部から漏下してくる枝梗等が付着した穀粒を揺動選別装置21の前部の選別棚に再搬送する2番螺旋28が設けられている。
【0027】
図5,6に示すように、扱胴11は、扱室10の前後壁に回転自在に架設される回転軸30と、回転軸30の前部に支持された円錐台形状のインペラ31とロータ32から形成されている。
【0028】
インペラ31は、円形状の前板40と、前板40よりも径が大きい円形状の後板41と、前板40と後板41の外周部を連結する側板42から形成されている。
【0029】
側板42の外周面には、インペラ31の前部に搬送された穀稈をインペラ31の後部に搬送する上下一対の搬送螺旋43が立設されている。これにより、インペラ31に移送されてきた穀稈をインペラ31の前部から後部に効率よく搬送してロータ32に移送することができる。
【0030】
搬送螺旋43の前面には、円周方向に所定角度を隔てて側板42と搬送螺旋43の前面下部を連結する略三角形状の補強リブ44が設けられている。これにより、搬送螺旋43の剛性を高めて、穀稈から搬送螺旋43に加わる負荷による搬送螺旋43の変形を抑制することができる。
【0031】
ロータ32は、前後方向に二分割されてインペラ31の後側に設けられた前ロータ32Aと、前ロータ32Aの後側に設けられた後ロータ32Bから形成されている。なお、前後方向に二分割せず一体として形成することもできる。
【0032】
前ロータ32Aは、インペラ31の後板41と回転軸30の中間部に設けられた中間板35の間に設けられ、後ロータ32Bは、回転軸30の中間板35と回転軸30の後板36の間に設けられている。なお、中間板35は、回転軸30の前後方向の中間部に設けられた左右方向の縦断面が六角形状の中間支持部材34の外周面に立設している。
【0033】
前ロータ32Aは、前後方向に延在する6本のバーフレーム50と、前後方向に延在する3本の前後フレーム51と、前後フレーム51に前後方向に所定の間隔を隔てて支持された外形リング52から形成されている。
図5には外形リング52の一部の拡大を示している。
【0034】
同様に、後ロータ32Bは、前後方向に延在する6本のバーフレーム50と、前後方向に延在する3本の前後フレーム51と、前後フレーム51に前後方向に所定の間隔を隔てて支持された外形リング52から形成されている。
【0035】
前ロータ32Aと後ロータ32Bは同一構造なので、以下では前ロータ32Aで説明する。
図7に示すように、前ロータ32Aの前後フレーム51の前部は、周方向に三分割された分割プレート53を介してインペラ31の後板41の後面に装着され、前後フレーム51の後部は、周方向に三分割された分割プレート54を介して回転軸30の中間板35の前面に装着されている。なお、矢印は回転方向を示している。
【0036】
分割プレート53の外周部は、後板41の外周部に沿うように円弧状に形成され、分割プレート53の内周部は、中間支持部材34の外周部に沿うように頂角が120度に形成された三角形状の切欠き部が形成されている。
【0037】
分割プレート53の外周部には、周方向に所定の間隔を隔ててバーフレーム50を挿通させる外周部が開口された円状の開口部53Aが2個形成されている。これにより、分割プレート53とバーフレーム50の連結を強固に行うことができ、分割プレート53の外周部の外側にバーフレーム50が延出するのを抑制することができる。
【0038】
同様に、分割プレート54の外周部は、中間板35の外周部に沿うように円弧状に形成され、分割プレート54の内周部は、中間支持部材34の外周部に沿うように頂角が120度に形成された三角形状の切欠き部が形成されている。
【0039】
分割プレート54の外周部には、周方向に所定の間隔を隔ててバーフレーム50を挿通させる外周部が開口された円状の開口部54Aが2個形成されている。これにより、分割プレート54とバーフレーム50の連結を強固に行うことができ、分割プレート54の外周部の外側にバーフレーム50が延出するのを抑制することができる。
【0040】
分割プレート53と分割プレート54の回転方向の上手部には前後方向に延在する上手前後フレーム55が架設され、分割プレート53と分割プレート54の回転方向の下手部には前後方向に延在する下手前後フレーム56が架設連結されている。
【0041】
上手前後フレーム55の左右方向の縦断面形状はL字状に形成され、上手前後フレーム55の外周部は回転方向の上手方向に延在して形成されている。また、下手前後フレーム56の左右方向の縦断面形状はL字状に形成され、下手前後フレーム56の外周部は回転方向の上手方向に延在して形成されている。
【0042】
前後フレーム51は、分割プレート53と分割プレート54の下手側に架設された下手前後フレーム56と、この分割プレート53と分割プレート54の回転方向の下手側に隣接する分割プレート53と分割プレート54の上手側に架設された上手前後フレーム55をボルト等の締結部材によって連結して形成し、下手前後フレーム56の外周部の外周面に上手前後フレーム55の外周部の内周面を重ね合わせて形成している。これにより、上手前後フレーム55と下手前後フレーム56の連結部に穀稈が絡み付くのを抑制することができる。
【0043】
図8は、ロータ32の横断面図を示している。外形リング52は、鋼板を円環状にプレス打ち抜きで形成した円環リング形状で、外周の所定間隔で三角状に突出するツース58を一体形成している。そして、この外形リング52はロータ32の前後に円状に配置するバーフレーム50の外周に溶接で一体に取り付けている。ツース58の側面は螺旋方向に傾斜させて脱穀時に送り作用する。
【0044】
なお、外形リング52とバーフレーム50の溶接位置はツース58の位置とすることでロータ32を強固に構成できる。
【0045】
なお、
図9に示す如く、外形リング52は円周三分割で円弧リング52aを形成し、両端部を前から前後に重ね合わせて溶接で円環状に形成することも出来る。
【0046】
図10は、外形リング52の周囲に棒材をU字状に曲げたU字杆ツース58Aを回転方向に後退角を持たせて突設した構成で、開いた側を外に向けているが、逆にして突条にしても良い。U字杆ツース58Aは外に開いた状態と閉じた状態を交互に配置したりロータ32の前後位置で配置を異ならせることも出来る。また、このU字杆ツース58Aを隣り合う外形リング52に跨らせて螺旋状に固着すると外形リング52が倒れ難く強固に出来る。
【0047】
なお、外形リング52に設けるツース58はロータ32の前側で螺旋傾斜を緩く後側で螺旋傾斜を大きくすることで脱穀処理物の脱穀と後方排出が良好になる。
【符号の説明】
【0048】
4 脱穀装置
10 扱室
11 扱胴
31 インペラ
32 ロータ
50 バーフレーム
52 外形リング
52a 円弧リング
ツース 58
58A U字杆ツース