(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034764
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】蓄熱性熱伝導材料
(51)【国際特許分類】
C09K 5/14 20060101AFI20240306BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20240306BHJP
C08K 5/01 20060101ALI20240306BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20240306BHJP
C08K 3/38 20060101ALI20240306BHJP
C08K 3/01 20180101ALI20240306BHJP
C09K 5/06 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
C09K5/14 E
C08L75/04
C08K5/01
C08K3/22
C08K3/38
C08K3/01
C09K5/06 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139229
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】飯田 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】芦田 桂子
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CK021
4J002DE077
4J002DE087
4J002DE097
4J002DE107
4J002DE137
4J002DE147
4J002DF017
4J002DJ007
4J002DJ017
4J002DK007
4J002EA016
4J002FD017
4J002FD206
4J002FD207
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】熱伝導性が高く、かつ蓄熱量が大きく、高温環境でも蓄熱材料の流動化を抑制可能な蓄熱性熱伝導材料を提供することを目的とする。
【解決手段】蓄熱材料と、熱伝導性フィラーと、ベース樹脂と、を含み、前記熱伝導性フィラーは、比表面積が0.5m2/g以上であり、前記蓄熱材料が90重量部に対して、前記熱伝導性フィラーが30重量部以上の割合で含まれ、前記ベース樹脂は、水酸基を1分子中に2以上有するポリオールと、前記ポリオールの水酸基と反応可能な官能基を1分子中2以上有するイソシアネートと、を含むポリウレタンを有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄熱材料と、熱伝導性フィラーと、ベース樹脂と、を含み、
前記熱伝導性フィラーは、比表面積が0.5m2/g以上であり、
前記蓄熱材料が90重量部に対して、前記熱伝導性フィラーが30重量部以上の割合で含まれ、
前記ベース樹脂は、水酸基を1分子中に2以上有するポリオールと、前記ポリオールの水酸基と反応可能な官能基を1分子中2以上有するイソシアネートと、を含むポリウレタンを有することを特徴とする蓄熱性熱伝導材料。
【請求項2】
前記熱伝導性フィラーは、平均粒子径(d50)が40μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の蓄熱性熱伝導材料。
【請求項3】
前記蓄熱材料は、炭素原子数が16以上、40以下のアルカンであることを特徴とする請求項1または2に記載の蓄熱性熱伝導材料。
【請求項4】
前記熱伝導性フィラーは、絶縁性を有するセラミックス材料を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の蓄熱性熱伝導材料。
【請求項5】
前記熱伝導性フィラーは、酸化アルミニウム、または窒化ホウ素であることを特徴とする請求項4に記載の蓄熱性熱伝導材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱性熱伝導材料に関する。
【背景技術】
【0002】
発熱体と放熱部材との間に設けられ、熱を伝搬させる伝熱材料は、例えば、グリースタイプ、ギャップフィラータイプ、シートタイプなど、様々な形態のものが知られている。これらの伝熱材料を用いることで、例えば、発熱体で生じた熱を、金属筐体やヒートシンクなどの放熱部材から効率よく放熱することができる。こうした伝熱材料は、発熱体と放熱部材との間に設置することで、発熱体と放熱部材との間の熱抵抗を小さくすることができる。
【0003】
近年、各種電子機器の高性能化・集積化が進むにつれて、構成部品(発熱体)の動作に伴い発生する熱を外部に効率よく放熱できるように、放熱性を高めた構造が求められている。一方、例えば、車載用のバッテリなどでは、走行状態によって出力が変化し、これにより、短時間で大きな発熱が生じることがあり、こうした不均一な発熱では、最大発熱時に放熱が追い付かないことがある。このため、熱伝導性材料に蓄熱性の材料を加えることで、一時的に大きな熱を蓄熱によって吸収し、熱を伝える速度を遅らせる方法が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、蓄熱物質として、炭素原子数を限定したノルマルパラフィンを所定の割合で含む放熱成形体用組成物が開示されている。
また、特許文献2では、熱可塑性ベースポリマに熱伝導性フィラーを加え、ショアA硬度およびショアD硬度を所定の範囲にした蓄熱ポリマ成形体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6893741号公報
【特許文献2】特許第6315480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された放熱成形体用組成物は、蓄熱物質の融点を超える温度環境であっても、組成物を流動化させずに形状を保持するために、ゲル化剤を添加する必要があった。こうしたゲル化剤は蓄熱性にも熱伝導性にも寄与しないため、単位質量あたりの蓄熱量と熱伝導率が共に低下し、かつ製造コストも増加するという課題があった。
【0007】
また、特許文献2に開示された蓄熱ポリマ成形体は、成分として熱可塑性ベースポリマを使用しているため、軟化温度以上の環境では組成物の形状を保持できず、流動化するという課題があった。粒子径の大きい熱伝導性フィラーを用いるため、フィラーが組成物中で沈降してしまい、組成物が不均一になりやすいという課題もあった。
【0008】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、熱伝導性が高く、かつ蓄熱量が大きく、高温環境でも蓄熱材料の流動化を抑制可能な蓄熱性熱伝導材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の一実施形態の蓄熱性熱伝導材料は、以下の手段を提案している。
(1)本発明の態様1の蓄熱性熱伝導材料は、蓄熱材料と、熱伝導性フィラーと、ベース樹脂と、を含み、前記熱伝導性フィラーは、比表面積が0.5m2/g以上であり、前記蓄熱材料が90重量部に対して、前記熱伝導性フィラーが30重量部以上の割合で含まれ、前記ベース樹脂は、水酸基を1分子中に2以上有するポリオールと、前記ポリオールの水酸基と反応可能な官能基を1分子中2以上有するイソシアネートと、を含むポリウレタンを有することを特徴とする。
【0010】
本発明の態様1の蓄熱性熱伝導材料によれば、蓄熱材料が固体から液体へ相変化することによって、相変化の融解熱により発熱を吸収するため、例えば、放熱対象物の発熱量が急激に上昇し、熱伝導性フィラーの熱伝導では対処しきれない熱を、この蓄熱材料によって蓄熱できる。よって、例えば、発熱量の変動が大きいリチウムイオン電池の放熱部材として本実施形態の蓄熱性熱伝導材料を適用すれば、リチウムイオン電池から発生した熱による温度上昇を抑制することが可能となる。
【0011】
そして、本発明の態様1の蓄熱性熱伝導材料は、熱伝導性フィラーとして比表面積が0.5m2/g以上のものを用い、かつ、蓄熱材料が90重量部に対して、熱伝導性フィラーが30重量部以上の割合とし、ベース樹脂として、水酸基を1分子中に2以上有するポリオールと、前記ポリオールの水酸基と反応可能な官能基を1分子中2以上有するイソシアネートと、を含むポリウレタンを有することにより、例えば、高温環境であっても、蓄熱材料が流動化して流出したり、熱伝導性フィラーが沈殿して不均一になったりする懸念が無く、長期間に渡って、繰り返し発熱サイクルに耐えうる、耐久性の高い蓄熱性熱伝導材料を実現することができる。
【0012】
(2)本発明の態様2は、態様1の蓄熱性熱伝導材料において、前記熱伝導性フィラーは、平均粒子径(d50)が40μm以下であることを特徴とする。
【0013】
(3)本発明の態様3は、態様1または2の蓄熱性熱伝導材料において、前記蓄熱材料は、炭素原子数が16以上、40以下のアルカンであることを特徴とする。
【0014】
(4)本発明の態様4は、態様1から3のいずれか1つの蓄熱性熱伝導材料において、前記熱伝導性フィラーは、絶縁性を有するセラミックス材料を含むことを特徴とする。
【0015】
(5)本発明の態様5は、態様4の蓄熱性熱伝導材料において、前記熱伝導性フィラーは、酸化アルミニウム、または窒化ホウ素であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、熱伝導性が高く、かつ蓄熱量が大きく、高温環境でも蓄熱材料の流動化を抑制可能な蓄熱性熱伝導材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施例1の試料の加熱後の様子を示す写真である。
【
図2】従来の比較例1の試料の加熱後の様子を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態の蓄熱性熱伝導材料について説明する。なお、以下に示す各実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0019】
本実施形態の蓄熱性熱伝導材料は、蓄熱材料と、熱伝導性フィラーと、ベース樹脂と、を含んでいる。
蓄熱材料は、放熱対象物が熱伝導性フィラーの熱伝導特性を超えるような急激な温度上昇をした時に、放熱対象物の熱を一時的に蓄熱するためのものである。こうした蓄熱材料の例としては、炭素原子数が16以上、40以下のアルカンであればよい。本実施形態では、蓄熱材料として、ノルマルパラフィン(特に炭素原子数が16~40のアルカンの混合物)を用いている。一例として、融点が43℃、融解潜熱量が190J/gのノルマルパラフィンを用いた。
【0020】
こうしたパラフィンは、固液相転移型の潜熱蓄熱材料である。この固液相転移型の潜熱蓄熱材料とは、放熱対象物から熱を吸収する際に、固相から液相へと相変化し、その相変化(融解)の潜熱によって蓄熱する相変化型の蓄熱材料(相変化材料)のことである。
【0021】
固液相転移型の潜熱蓄熱材料の中でも、特にパラフィンは、比較的大きい潜熱を有し、かつ単位体積当たりの蓄熱量が大きく、融解と凝固を繰り返しても安定した放熱と蓄熱作用を得ることができる。また、放熱対象物を腐食しにくく、かつ、安価であり、更に分子量等に応じて相変化温度(融点)を容易に調節できるという、蓄熱材料として好ましい性状を有している。
【0022】
なお、潜熱蓄熱材料は、1種を単独で用いても良いし2種以上の材料の混合物や共晶を用いても良いし、1種以上の材料を主成分として更に他の副成分(水和塩、脂肪酸、多価アルコール、水等)を添加した混合物を用いてもよい。
【0023】
このように、蓄熱材料として、固液相転移型等の相変化材料を使用する場合には、必要とする相変化温度(固液相転移型の相変化材料の場合、融点に相当)に応じた材料、即ち、目的の温度範囲に相変化温度(融点)を有する材料を選択すればよい。
【0024】
例えば、本実施形態の蓄熱性熱伝導材料を、自動車等の車載用のリチウムイオン電池の放熱媒体に適用する場合、リチウムイオン電池(放熱対象物)の作動温度の範囲内(温度変化の範囲内)に相変化温度(融点)を有する固液相転移型の潜熱蓄熱材を使用することで、自動車の加速時など、リチウムイオン電池の発熱量が急激に上昇しようとする際に、こうした蓄熱材料が固体から液体へ相変化することによって、相変化の融解熱により熱を吸収するため、リチウムイオン電池から発生した熱による温度上昇を抑制することが可能となる。
【0025】
具体的には、性能や耐久性等の観点から、潜熱温度域が40℃以上、70℃以下の範囲内にあるものが好ましい。潜熱温度域が40℃未満のものでは、高温下において蓄熱容量がすぐに限界を超えてしまい、効果的に電池の温度上昇を抑制することが困難となる。また、リチウムイオン電池の作動時以外でも、バッテリの周囲の温度変化により相変化の繰り返しが生じやすいため、性能低下や劣化の速度が速く耐久性が低下する懸念がある。
【0026】
一方、リチウムイオン電池の使用限界温度の上限が、通常は60℃~70℃程度であることから、潜熱温度域が70℃以上のものでは相変化の潜熱をほとんど利用できず、相変化して蓄熱するまでに電池の発熱温度が高くなりすぎる懸念がある。
【0027】
熱伝導性フィラーは、放熱対象物の熱や蓄熱材料に一時的に蓄熱された熱を、低温側に向けて伝搬させるものである。熱伝導性フィラーは、ベース樹脂に対して均一に混錬が可能な粉末状や粒子状のものであればよい。また、本実施形態の蓄熱性熱伝導材料を、リチウムイオン電池など電気部品の放熱媒体に適用する場合、熱伝導性フィラーとしては絶縁性を有する材料を用いることが好ましい。
【0028】
本実施形態の熱伝導性フィラーは、比表面積が0.5m2/g以上、平均粒子径(d50)が40μm以下のものを用いることが好ましい。
熱伝導性フィラーの比表面積が0.5m2/g未満では、蓄熱材料が融点以上となる温度領域において、蓄熱性熱伝導材料が流動化して配置箇所から流出する懸念がある。また、熱伝導性フィラーが沈殿して蓄熱性熱伝導材料が不均一になる懸念がある。なお、熱伝導性フィラーの比表面積の上限に特に制限はないが、熱伝導性フィラーの比表面積は400m2/g以下が望ましい。
一方、熱伝導性フィラーの平均粒子径(d50)が40μmを超えると、蓄熱材料が融点以上となる温度領域において、蓄熱性熱伝導材料が流動化して配置箇所から流出する懸念がある。また、熱伝導性フィラーが沈殿して蓄熱性熱伝導材料が不均一になる懸念がある。なお、熱伝導性フィラーの平均粒子径の下限に特に制限はないが、熱伝導性フィラーの平均粒子径は0.005μm以上が望ましい。
【0029】
熱伝導性フィラーは、例えば、絶縁性を有するセラミックス材料であればよく、具体的には、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、酸化ベリリウム、酸化銅、酸化ジルコニウム、酸化カルシウム等の金属酸化物や、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化珪素等の金属窒化物が挙げられる。熱伝導性フィラーとしては、これらうち、酸化アルミニウム、窒化ホウ素が好ましい。特に酸化アルミニウムは、安価で容易に入手が可能である点で、熱伝導性フィラーの構成材料として特に好ましい。
【0030】
熱伝導性フィラーの配合割合は、蓄熱材料を90重量部とした時に、熱伝導性フィラーが30重量部以上の割合になるように配合する。蓄熱材料を90重量部とした時に、熱伝導性フィラーが30重量部未満では、蓄熱材料が融点以上となる温度領域において、蓄熱材料が流動化して、蓄熱性熱伝導材料が配置箇所から流出する懸念がある。なお、蓄熱材料を90重量部とした時の熱伝導性フィラーは、3000重量部以下が望ましい。
【0031】
ベース樹脂は、蓄熱材料、および熱伝導性フィラーを分散させる基材である。
ベース樹脂の具体例としては、ポリウレタン(PU)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、ABS樹脂、アクリルニトリルスチレン(AS)樹脂などが挙げられる。
なお、ベース樹脂と蓄熱材料、および熱伝導性フィラーの混合割合は、ベース樹脂10質量部に対して、蓄熱材料が1~3000重量部、熱伝導フィラーが30~3000重量部の範囲が望ましい。
【0032】
本実施形態では、これらベース樹脂のうち、水酸基を1分子中に2以上有するポリオールと、このポリオールの水酸基と反応可能な官能基を1分子中2以上有するイソシアネートとを含むポリウレタン(PU)樹脂をベース樹脂として用いている。以下の式1にポリオール成分の構造式の例を示す。また、式2に、イソシアネート成分の構造式の例を示す。また、式3にポリウレタン(PU)樹脂の構造式の例を示す。
【0033】
HO-R’-OH・・・(1)
OCN-R-NCO・・・(2)
【0034】
【0035】
以上の様な構成の本実施形態の蓄熱性熱伝導材料によれば、蓄熱材料が固体から液体へ相変化することによって、相変化の融解熱により熱を吸収するため、例えば、放熱対象物の発熱量が急激に上昇し、熱伝導性フィラーの熱伝導では対処しきれない熱を、この蓄熱材料によって蓄熱できる。よって、例えば、発熱量の変動が大きい車載用のリチウムイオン電池の放熱部材として本実施形態の蓄熱性熱伝導材料を適用すれば、リチウムイオン電池から発生した熱による温度上昇を抑制することが可能となる。
【0036】
そして、本実施形態の蓄熱性熱伝導材料は、熱伝導性フィラーとして比表面積が0.5m2/g以上、平均粒子径(d50)が40μm以下のものを用い、かつ、蓄熱材料が90重量部に対して、熱伝導性フィラーが30重量部以上の割合としたので、例えば、リチウムイオン電池の使用限界温度の上限温度範囲(60℃~70℃程度)であっても、蓄熱材料が流動化して流出したり、熱伝導性フィラーが沈殿して不均一になったりする懸念が無く、長期間に渡って、繰り返し発熱サイクルに耐えうる、耐久性の高い蓄熱性熱伝導材料を実現することができる。
【0037】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【実施例0038】
本発明の蓄熱性熱伝導材料の効果を検証した。
(試料の調整)
(a)蓄熱材料、熱伝導性フィラー、ポリオールをそれぞれ秤量し、混合して混合物(試料)を得る。
(b)(a)の混合物を蓄熱材料の融点以上の温度で加熱し、蓄熱材料を融解させる。
(c)(b)で得られた混合物を混合、混練する。
(d)(c)で得られた混練物にイソシアネートを加え、更に混練する。
(e)(d)で得られた混練物を終夜、室温で硬化させて、蓄熱性熱伝導材料を得る。
(f)(e)で得られた蓄熱性熱伝導材料の熱伝導率、蓄熱量、形状保持性を評価する。
本発明の実施例1-9、および従来の比較例1-4の各原料、および組成比を表1に纏めて示す。
【0039】
熱伝導率は、樹脂材料熱抵抗測定装置(PCMシリーズ:日立テクノロジーアンドサービス株式会社製)を用いて測定した。
蓄熱量は、示差走査熱量計(DSC)(DSC7020:日立ハイテクサイエンス株式会社製)を用いて測定した。
形状保持性は、蓄熱性熱伝導材料を1cm角のブロック状に成形し、100℃で10分間保持した後、形状の変化を評価した。
実施例1-9、比較例1-4の評価項目の結果を表1に示す。
【0040】
【0041】
表1に示す結果によれば、蓄熱材料と熱伝導性フィラーとベース樹脂とを含み、比表面積が0.5m
2/g以上、平均粒子径(d50)が40μm以下の熱伝導性フィラーを用い、蓄熱材料が90重量部に対して、熱伝導性フィラーを30重量部以上の割合で配合した実施例1-9の試料は、いずれも形状保持性に優れ、高い熱伝導率と優れた蓄熱性とを両立しうることが確認できた。参考として、実施例1の蓄熱性熱伝導材料の100℃加熱後の様子を
図1に示す。
図1によれば、100℃加熱後も試料は流動化せずに形状を維持している。
【0042】
一方、ベース樹脂を含まない比較例1、ベース樹脂としてイソシアネートを含まない比較例2、熱伝導性フィラーの比表面積が0.5m
2/g未満の比較例3、および蓄熱材料が90重量部に対して熱伝導性フィラーが30重量部未満の比較例4は、100℃で10分間保持すると、いずれも流動化して形状を保持できず、熱伝導率は測定できなかった。参考として、比較例1の蓄熱性熱伝導材料の100℃加熱後の様子を
図2に示す。
図2によれば、100℃加熱後は試料が流動化し、形状が維持できず液状になっている。
【0043】
これにより、蓄熱材料と熱伝導性フィラーとベース樹脂とを含み、比表面積が0.5m2/g以上、平均粒子径(d50)が40μm以下の熱伝導性フィラーを用い、蓄熱材料が90重量部に対して、熱伝導性フィラーを30重量部以上の割合で配合した蓄熱性熱伝導材料は、優れた蓄熱性と、高温時(例えば100℃)の形状保持性とが得られることが確認できた。