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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034765
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】歩行動作評価システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20240306BHJP
   A61H 3/04 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
A61B5/11
A61H3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139230
(22)【出願日】2022-09-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ▲1▼発行日 令和4年2月28日 ▲2▼刊行物 令和4年東北地区若手研究者研究発表会「音・光・電波・エネルギー・システム・材料とその応用」,講演資料/YS-20-F11/東北地区若手研究者研究発表会
(71)【出願人】
【識別番号】597124316
【氏名又は名称】学校法人東北工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】丸山 次人
(72)【発明者】
【氏名】小川 和敏
(72)【発明者】
【氏名】中山 英久
【テーマコード(参考)】
4C038
4C046
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VA12
4C038VA14
4C038VB11
4C038VC20
4C046AA24
4C046AA52
4C046CC01
4C046DD23
4C046DD26
4C046DD27
4C046DD33
4C046EE05
4C046EE24
4C046EE25
4C046EE32
(57)【要約】
【課題】使用者の歩行訓練の進捗度合いや歩行機能の回復度合いを定量的に評価するために有用な情報を使用者やスタッフが適切に得ることができる歩行動作評価システムを提供する。
【解決手段】リハビリ用歩行車1は、肘載せ部3L,3R及びグリップ4L,4Rと、肘荷重センサ11L,11R及び手荷重センサ12L,12Rと、本体処理部60とを有する。本体処理部60は、歩行車1の使用者Pの歩行動作に関する評価指標として、手肘自立度指標と、手肘左右均衡度指標及びその変動分と、手肘優位度指標及びその変動分とを肘荷重及び手荷重の検出値に基づいて算出し、算出した評価指標を2次元グラフによって表示器61で表示させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面上を該床面に対して相対的に移動自在なフレームと、該フレームの上部に配置され、使用者が左右の肘を各々載せ得るように該フレームに搭載された一対の肘載せ部と、該肘載せ部の前方に配置され、前記使用者が左右の手で各々把持し得るように該フレームに搭載された一対のグリップとを備え、前記使用者がその各肘を前記肘載せ部に載せた状態、又は前記使用者がその各手で前記グリップを把持した状態、又は前記使用者がその各肘を前記肘載せ部に載せ、かつその各手で前記グリップを把持した状態で、該使用者の歩行動作に伴い、該使用者と共に前記床面に対して相対的に移動し得るように構成されたリハビリ用歩行車を用いて、前記使用者の歩行動作に関する所定種類の評価指標を算出する機能を有する歩行動作評価システムであって、
前記使用者の各肘を載せた前記肘載せ部のそれぞれに該肘から作用する荷重である肘荷重を検出する第1荷重センサと、
前記使用者の各手で把持された前記グリップのそれぞれに該手から作用する荷重である手荷重を検出する第2荷重センサと、
前記肘荷重及び前記手荷重の検出値から前記使用者の歩行動作に関する前記評価指標を算出する評価指標算出部と
を備え、
前記評価指標算出部は、前記評価指標として、
(1)前記使用者の左右両側における上下方向の前記肘荷重の検出値の総荷重と上下方向の前記手荷重の検出値の総荷重との総和と、該使用者の体重との比率を1から引いた値である手肘自立度指標と、
(2)前記使用者の左側における上下方向の前記肘荷重の検出値と上下方向の前記手荷重の検出値との総荷重である左総荷重と、該使用者の右側における上下方向の前記肘荷重の検出値と上下方向の前記手荷重の検出値との総荷重である右総荷重との比率又は差又は絶対差又は該差と該使用者の体重との比率又は該絶対差と該使用者の体重との比率である手肘左右均衡度指標と、該手肘左右均衡度指標の変動分である手肘左右均衡度変動指標と、
(3)前記使用者の左右両側における上下方向の前記肘荷重の検出値の総荷重である肘総荷重と、左右両側における上下方向の前記手荷重の検出値の総荷重である手総荷重との比率又は差又は絶対差又は該差と該使用者の体重との比率又は該絶対差と該使用者の体重との比率である手肘優位度指標と、該手肘優位度指標の変動分である手肘優位度変動指標とを算出することを特徴とする歩行動作評価システム。
【請求項2】
請求項1記載の歩行動作評価システムにおいて、
前記評価指標算出部により算出された評価指標を表示する表示部を備え、
前記表示部は、(1)前記手肘自立度指標と、(2)前記手肘左右均衡度指標および前記手肘左右均衡度変動指標と、(3)前記手肘優位度指標および前記手肘優位度変動指標とを2次元グラフとして表示することを特徴とする歩行動作評価システム。
【請求項3】
請求項1記載の歩行動作評価システムにおいて、
前記評価指標算出部は、前記評価指標として、さらに、
(4)前記使用者の左右両側における上下方向の前記手荷重の検出値の総荷重と該使用者の体重との比率、又は左右両側における上下方向の前記手荷重の検出値と前方方向への前記手荷重の検出値との総荷重と該使用者の体重との比率を1から引いた値である両手自立度指標と、
(5)前記使用者の左側における上下方向の前記手荷重の検出値と該使用者の右側における上下方向の前記手荷重の検出値との比率又は差又は絶対差又は該差と該使用者の体重との比率又は該絶対差と該使用者の体重との比率、又は左側における上下方向の前記手荷重の検出値と前方方向への前記手荷重の検出値との総荷重と、右側における上下方向の前記手荷重の検出値と前方方向への前記手荷重の検出値との総荷重との比率又は差又は絶対差又は該差と該使用者の体重との比率又は該絶対差と該使用者の体重との比率である両手左右均衡度指標と、該両手左右均衡度指標の変動分である両手左右均衡度変動指標と、
(6)前記使用者の左右両側おける前方方向への前記手荷重の検出値の総荷重と上下方向の前記手荷重の検出値の総荷重との比率又は差又は絶対差又は該差と該使用者の体重との比率又は該絶対差と該使用者の体重との比率である両手前進度指標と、該両手前進度指標の変動分である両手前進度変動指標とを算出することを特徴とする歩行動作評価システム。
【請求項4】
請求項3記載の歩行動作評価システムにおいて、
前記評価指標算出部により算出された評価指標を表示する表示部を備え、
前記表示部は、(4)前記両手自立度指標と、(5)前記両手左右均衡度指標および前記両手左右均衡度変動指標と、(6)前記両手前進度指標および前記両手前進度変動指標とを2次元グラフとして表示することを特徴とする歩行動作評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リハビリ用歩行車を使用した歩行動作評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自立歩行が困難な使用者の歩行訓練を補助するための歩行車を用いた歩行訓練用システムとして、例えば特許文献1、2、3に見られるような歩行車を用いた歩行訓練用システムが提案されている。これらのシステムは、車輪を介して床面上を移動可能なフレームと、起立した使用者の体重を支えるための左右一対の肘載せ部、あるいは左右一対のグリップとを備えている。そして、使用者は、左右の肘を肘載せ部に載せ、あるいは左右の手でグリップを把持することで、自身の上体を支え、この状態で、歩行動作を行うことができる。
【0003】
また、特許文献1に見られるシステムでは、肘載せ部を有するU字型の上肢支持部に掛かる荷重を複数の荷重センサで計測して、荷重分布の状態を使用者にフィードバックしている。また、特許文献2に見られるシステムでは、グリップに掛かる荷重から歩行動作時の足上げ姿勢を推定し、その推定結果に基づく歩行機能の回復度合いに応じて訓練シナリオの変更を行っている。また特許文献3に見られるシステムでは、歩行距離、心拍数、腕振り幅を指標にして歩行機能の回復度合いを評価している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-188147号公報
【特許文献2】特開2019-205817号公報
【特許文献3】特開2020-062163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2、3に見られるような歩行車は、病院や介護施設等において、脚の運動機能の不具合や衰え等によって自立歩行が困難な使用者の歩行訓練等のリハビリ用途でしばしば使用される。この場合、医師や、看護師、介護士、セラピスト等、歩行訓練に携わるスタッフが、使用者の歩行訓練の進捗度合いや歩行機能の回復度合いを適宜、判断して訓練内容を変更することが必要になる。例えば、使用者が、肘載せ部を有する歩行車を使用せずとも、シルバーカー、もしくは杖を使用して歩行動作を行い得る状態に回復したのか否かの判断等を行い、歩行車からシルバーカー、もしくは杖を使った歩行訓練に移行することが必要になる。
【0006】
しかしながら、従来、当該判断は、使用者の歩行動作の目視による観察結果や、使用者の感想、熟練スタッフの経験等に基づいて行われることが一般的であった。このため、当該判断が客観性に欠けるものとなりやすいと共に、スタッフによってばらつきを生じやすい。ひいては、当該判断が不適切なものとなる懸念があった。
また、使用者にとっても、従来の歩行車では、歩行訓練の効果や、歩行機能の回復度合いを定量的に認識し難いため、歩行訓練のモチベーションを高めにくいといった問題もあった。
【0007】
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、使用者の歩行訓練の進捗度合いや歩行機能の回復度合いを定量的に評価するために有用な情報を使用者やスタッフが適切に得ることができる歩行動作評価システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の歩行動作評価システムは、上記の目的を達成するために、
床面上を該床面に対して相対的に移動自在なフレームと、該フレームの上部に配置され、使用者が左右の肘を各々載せ得るように該フレームに搭載された一対の肘載せ部と、該肘載せ部の前方に配置され、前記使用者が左右の手で各々把持し得るように該フレームに搭載された一対のグリップとを備え、前記使用者がその各肘を前記肘載せ部に載せた状態、又は前記使用者がその各手で前記グリップを把持した状態、又は前記使用者がその各肘を前記肘載せ部に載せ、かつその各手で前記グリップを把持した状態で、該使用者の歩行動作に伴い、該使用者と共に前記床面に対して相対的に移動し得るように構成されたリハビリ用歩行車を用いて、前記使用者の歩行動作に関する所定種類の評価指標を算出する機能を有する歩行動作評価システムであって、
前記使用者の各肘を載せた前記肘載せ部のそれぞれに該肘から作用する荷重である肘荷重を検出する第1荷重センサと、
前記使用者の各手で把持された前記グリップのそれぞれに該手から作用する荷重である手荷重を検出する第2荷重センサと、
前記肘荷重及び前記手荷重の検出値から前記使用者の歩行動作に関する前記評価指標を算出する評価指標算出部と
を備え、
前記評価指標算出部は、前記評価指標として、
(1)前記使用者の左右両側における上下方向の前記肘荷重の検出値の総荷重と上下方向の前記手荷重の検出値の総荷重との総和と、該使用者の体重との比率を1から引いた値である手肘自立度指標と、
(2)前記使用者の左側における上下方向の前記肘荷重の検出値と上下方向の前記手荷重の検出値との総荷重である左総荷重と、該使用者の右側における上下方向の前記肘荷重の検出値と上下方向の前記手荷重の検出値との総荷重である右総荷重との比率又は差又は絶対差又は該差と該使用者の体重との比率又は該絶対差と該使用者の体重との比率である手肘左右均衡度指標と、該手肘左右均衡度指標の変動分である手肘左右均衡度変動指標と、
(3)前記使用者の左右両側における上下方向の前記肘荷重の検出値の総荷重である肘総荷重と、左右両側における上下方向の前記手荷重の検出値の総荷重である手総荷重との比率又は差又は絶対差又は該差と該使用者の体重との比率又は該絶対差と該使用者の体重との比率である手肘優位度指標と、該手肘優位度指標の変動分である手肘優位度変動指標とを算出することを特徴とする(第1発明)。
【0009】
なお、第1発明において、前記フレームが「床面上を該床面に対して相対的に移動自在」であるというのは、フレームが固定された床面上を移動し得る態様に限らず、フレームに対して移動式の床面が移動し得る態様を含む。
【0010】
また、「手肘自立度指標」は、それを構成する値(比率を1から引いた値)そのものに限らず、当該値に対して単調変化(単調増加又は単調減少)の関係を有する値(例えば、当該値にゼロでない任意の定数値を乗じた値、あるいは、当該値と任意の定数値との差もしくは和の値等)であってもよい、同様に、「手肘左右均衡度指標」は、それを構成する値(比率、差、絶対差)そのものに限らず、当該値に対して単調変化の関係を有する値であってもよい、同様に、「手肘優位度指標」は、それを構成する値(比率、差、絶対差)そのものに限らず、当該値に対して単調変化の関係を有する値であってもよい、
【0011】
かかる第1発明では、前記手肘自立度指標は、使用者が、リハビリ用歩行車の肘載せ部に左右の肘を載せると共に、左右の手でグリップを把持した状態で、歩行動作を行ったときに(以降、この歩行動作を手肘支持方向動作という)、自身の体重のうち、どれだけの重量を手及び肘に頼ることなく自身の脚で支えているかを表す指標として機能する。
【0012】
また、前記手肘左右均衡度指標は、上記手肘支持歩行動作において、左側の手及び肘で支える力と、右側の手及び肘で支える力とのバランスの度合を表す指標として機能する。そして、前記手肘左右均衡度変動指標は、手肘左右均衡度指標のばらつき度合を表す指標として機能する。
【0013】
また、前記手肘優位度指標は、上記手肘支持歩行動作において、使用者が自身の体重を手で支える力と、肘で支える力との割合を表す指標として機能する。そして、前記手肘優位度変動指標は、手肘優位度指標のばらつき度合を表す指標として機能する。
【0014】
従って、第1発明によれば、手肘自立度指標と、手肘左右均衡度指標及び手肘左右均衡度変動指標と、手肘優位度指標及び手肘優位度変動指標とによって、リハビリ用歩行車を利用した手肘支持歩行動作において、肘や手で自身の体重をどのように支えているのかが定量的に明確になる。よって、第1発明によれば、使用者の歩行訓練の進捗度合いや歩行機能の回復度合いを定量的に評価するために有用な情報を使用者やスタッフが適切に得ることが可能となる。
【0015】
かかる第1発明では、前記評価指標算出部により算出された評価指標を表示する表示部を備え、前記表示部は、(1)前記手肘自立度指標と、(2)前記手肘左右均衡度指標および前記手肘左右均衡度変動指標と、(3)前記手肘優位度指標および前記手肘優位度変動指標とを2次元グラフとして表示することが好ましい(第2発明)。
【0016】
これによれば、手肘自立度指標と、手肘左右均衡度指標及び手肘左右均衡度変動指標と、手肘優位度指標及び手肘優位度変動指標が2次元グラフによって表示されるので、これらの指標を使用者あるいはスタッフが容易に視覚的に認識することが可能となる。
【0017】
また、第1発明又は第2発明では、前記評価指標算出部は、前記評価指標として、さらに、
(4)前記使用者の左右両側における上下方向の前記手荷重の検出値の総荷重と該使用者の体重との比率を1から引いた値、又は左右両側における上下方向の前記手荷重の検出値と前方方向への前記手荷重の検出値との総荷重と該使用者の体重との比率を1から引いた値である両手自立度指標と、
(5)前記使用者の左側における上下方向の前記手荷重の検出値と該使用者の右側における上下方向の前記手荷重の検出値との比率又は差又は絶対差又は該差と該使用者の体重との比率又は該絶対差と該使用者の体重との比率、又は左側における上下方向の前記手荷重の検出値と前方方向への前記手荷重の検出値との総荷重と、右側における上下方向の前記手荷重の検出値と前方方向への前記手荷重の検出値との総荷重との比率又は差又は絶対差又は該差と該使用者の体重との比率又は該絶対差と該使用者の体重との比率である両手左右均衡度指標と、該両手左右均衡度指標の変動分である両手左右均衡度変動指標と、
(6)前記使用者の左右両側おける前方方向への前記手荷重の検出値の総荷重と上下方向の前記手荷重の検出値の総荷重との比率又は差又は絶対差又は該差と該使用者の体重との比率又は該絶対差と該使用者の体重との比率である両手前進度指標と、該両手前進度指標の変動分である両手前進度変動指標とを算出することが好ましい(第3発明)。
【0018】
なお、第3発明において、「両手自立度指標」は、それを構成する値(比率を1から引いた値)そのものに限らず、当該値に対して単調変化(単調増加又は単調減少)の関係を有する値(例えば、当該値にゼロでない任意の定数値を乗じた値、あるいは、当該値と任意の定数値との差もしくは和の値等)であってもよい、同様に、「両手左右均衡度指標」は、それを構成する値(比率、差、絶対差)そのものに限らず、当該値に対して単調変化の関係を有する値であってもよい、同様に、「両手前進度指標」は、それを構成する値(比率、差、絶対差)そのものに限らず、当該値に対して単調変化の関係を有する値であってもよい、
【0019】
かかる第3発明では、前記両手自立度指標は、使用者が、リハビリ用歩行車のグリップを左右の手で把持した状態で、歩行動作を行ったときに(以降、この歩行動作を、両手支持歩行動作という)、自身の体重のうち、どれだけの重量を両手に頼ることなく自身の脚で支えているかを表す指標として機能する。
【0020】
また、前記両手左右均衡度指標は、上記両手支持歩行動作において、左手で支える力と、右手で支える力とのバランスの度合を表す指標として機能する。そして、前記両手左右均衡度変動指標は、両手左右均衡度指標のばらつき度合を表す指標として機能する。
【0021】
また、前記両手前進度指標は、上記両手支持歩行動作において、使用者が両手で発生する力のうち、前進力と重力方向の力との割合を表す指標として機能する。そして、前記両手前進度変動指標は、両手前進度指標のばらつき度合を表す指標として機能する。
【0022】
従って、第3発明によれば、両手自立度指標と、両手左右均衡度指標及び両手左右均衡度変動指標と、両手前進度指標及び両手前進度変動指標とによって、リハビリ用歩行車を利用した両手支持歩行動作において、両手でどのように力を発生させているのかが定量的に明確になる。よって、第3発明によれば、使用者の歩行訓練の進捗度合いや歩行機能の回復度合いを定量的に評価するために有用な情報を使用者やスタッフが適切に得ることが可能となる。
【0023】
上記第3発明では、前記評価指標算出部により算出された評価指標を表示する表示部を備え、前記表示部は、(4)前記両手自立度指標と、(5)前記両手左右均衡度指標および前記両手左右均衡度変動指標と、(6)前記両手前進度指標および前記両手前進度変動指標とを2次元グラフとして表示することが好ましい(第4発明)。
【0024】
これによれば、両手自立度指標と、両手左右均衡度指標及び両手左右均衡度変動指標と、両手前進度指標及び両手前進度変動指標が2次元グラフによって表示されるので、これらの指標を使用者あるいはスタッフが容易に視覚的に認識することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態のリハビリ用歩行車(歩行動作評価システム)の全体の斜視図。
図2】実施形態のリハビリ用歩行車の前部の斜視図。
図3】実施形態のリハビリ用歩行車の情報処理に関する構成を示すブロック図。
図4】第1フェーズの歩行訓練(手肘支持歩行動作)に応じて表示される評価情報の例を示すグラフ。
図5】第2フェーズの歩行訓練(両手支持歩行動作)に応じて表示される評価情報の例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の一実施形態を、以下に図1図5を参照して説明する。図1及び図2を参照して、本実施形態のリハビリ用歩行車1(以降、単に歩行車1という)は、床面上を移動自在なフレーム2と、フレーム2の上部に配置され、使用者Pが左右の肘を各々載せ得るようにフレーム2に搭載された一対の肘載せ部3L,3Rと、肘載せ部3L,3Rの前方に配置され、使用者Pが左右の手で各々把持し得るようにフレーム2に搭載された一対の第1グリップ4L,4R及び一対の第2グリップ5L,5Rとを備える。
【0027】
なお、本実施形態の歩行車1は、歩行動作評価システムとしての機能を併せ持つ。また、本実施形態の歩行車1では、第1グリップ4L,4Rが、本発明におけるグリップとして機能するものであり、第2グリップ5L,5Rは、歩行車1を停止させるブレーキ操作を行うための付加的なグリップである。また、本実施形態の歩行車1では、フレーム2の前後方向及び左右方向(又は歩行車1の前後方向及び左右方向)は、図1及び図2に示す方向である。以降の説明では、特に言及しない限り、「前後方向」及び「左右方向」は、図1及び図2に示す方向を意味する。また、本実施形態の説明では、「L」を付加した参照符号は、歩行車1の左側の部材を示す参照符号、「R」を付加した参照符号は、歩行車1の右側の部材を示す参照符号である。ただし、左右を区別する必要が無いときは、「L」、「R」の付加を省略することがある。
【0028】
フレーム2は、上下に間隔を存して配置された上部フレーム21及び下部フレーム22と、上部フレーム21及び下部フレーム22を連結する縦フレーム23L,23Rと、下部フレーム22に組付けられた4つの車輪24とを備える。
【0029】
上部フレーム21及び下部フレーム22は、いずれも、上方から見て概略U字型に形成されたフレームであり、それぞれの開放側端部を後方に向けるように配置されている。
【0030】
縦フレーム23L,23Rは、上部フレーム21及び下部フレーム22の左側と右側とに各々上下方向に延在して配置されている。そして、縦フレーム23L,23Rのそれぞれの上端部が、上部フレーム21の左側部と右側部とに各々固定され、それぞれの下端部が、下部フレーム22の左側部と右側部とに各々固定されている。これにより、上部フレーム21と下部フレーム22とが左右の縦フレーム23L,23Rを介して連結されている。
【0031】
4つの車輪24は、下部フレーム22の左右それぞれの側部の前部と後部とに各々配置され、下部フレーム22の下側で床面に接地して、該床面上を転動し得ると共に、ヨー方向(上下方向の軸周り方向)に転回し得るように下部フレーム22に組付けられている。これらの各車輪24は、例えば自在キャスター等により構成され得る。
【0032】
本実施形態では、フレーム2は、上記の如く構成されているので、床面に接地された車輪24が転動し、さらに、適宜、転回することによって、床面上を任意の方向に移動可能である。
【0033】
肘載せ部3L,3Rは、それぞれ、前後方向に長尺な形状に形成されていると共に、その上面がクッション性を有する平坦面状に形成されている。そして、肘載せ部3L,3Rのそれぞれは、上部フレーム21の左右の各側部の上側で各側部に各々装着されている。この場合、各肘載せ部3は、フレーム2に対する前後方向の位置あるいは左右方向の位置を調整し得るように、上部フレーム21の左右の各側部に装着されていてもよい。
【0034】
第1グリップ4L,4Rのそれぞれは、左右の肘載せ部3L,3Rのそれぞれの前方にて、左右方向に延在するように配置されている。そして、第1グリップ4L,4Rは、図2に示すように、上部フレーム21の前部(左右の両側部を連結する部分)の上面から前方に張り出すように延設された平板状の第1基台41に、一対のプレート部材43L,43Rと、一対の取付部材42L,42Rとを介して取り付けられている。
【0035】
具体的には、取付部材42L,42Rは、それぞれ、第1基台41の上面のうち左右方向の中央よりも左側の箇所と右側の箇所とに、左右方向に延在するように配置され、それぞれ、後述の第2荷重センサ12L,12Rを介して該第1基台41に固定されている。また、プレート部材43L,43Rは、それぞれ、左側の取付部材42Lと右側の取付部材42Rとから、それぞれの法線方向を前後方向に向けた姿勢で上方に向かって起立するように、該取付部材42L,42Rのそれぞれに取り付けられている。なお、図2では、各プレート部材43に複数の穴が穿設されているが、これらの穴は無くてもよい。
【0036】
そして、左側の第1グリップ4Lは、左側のプレート部材43Lの上部の左端部から左向きに延在するように該プレート部材43Lに装着され、右側の第1グリップ4Rは、右側のプレート部材43Rの上部の右端部から右向きに延在するように該プレート部材43Rに装着されている。この場合、第1グリップ4L,4Rは、例えばプレート部材43L,43Rのそれぞれから突設された図示しない芯材を第1グリップ4L,4Rのそれぞれに挿入することで、プレート部材43L,43Rに各々装着される。
【0037】
第2グリップ5L,5Rのそれぞれは、第1グリップ4L,4Rのそれぞれの前側で、上下方向に延在するように配置されている。そして、第2グリップ5L,5Rは、図2に示すように、それぞれの下端部が、上部フレーム21の前部の左寄りの部分と右寄りの部分とのそれぞれに、取付部材51L,51Rのそれぞれを介して取り付けられている。
【0038】
また、第2グリップ5L,5Rには、車輪24のうちの左右の後輪(下部フレーム22の後部側の車輪24)にワイヤー53L,53Rを介して制動力を作用させるためのブレーキレバー52L,52Rが各々付設されている。
【0039】
本実施形態の歩行車1の機構的構成は以上の如く構成されている。このように構成された歩行車1では、使用者Pは、図1に示すように、上部フレーム21及び下部フレーム22の左右の両側部の間に起立した状態で、左右の肘をそれぞれ肘載せ部3L,3Rに載せたり、左右の手で第1グリップ4L,4Rのそれぞれのそれぞれを把持することが可能である。そして、使用者Pが、左右の肘をそれぞれ肘載せ部3L,3Rに載せると共に、左右の手で第1グリップ4L,4Rのそれぞれを把持した状態で歩行動作(手肘支持歩行動作)を行うことで、歩行車1が使用者Pと共に床面上を移動する。
【0040】
あるいは、使用者Pが、左右の肘をそれぞれ肘載せ部3L,3Rに載せずに、左右の手で第1グリップ4L,4Rのそれぞれを把持した状態で歩行動作(両手支持歩行動作)を行うことで、歩行車1が使用者Pと共に床面上を移動する。
【0041】
本実施形態の歩行車1には、さらに、図3に示すように、表示器61を含む情報処理装置6と、複数のセンサとが搭載されている。複数のセンサには、左右の肘載せ部3L,3Rのそれぞれに使用者Pの左右の肘のそれぞれから作用する荷重(肘荷重)を検出するための第1荷重センサ11L,11R(以降、肘荷重センサ11L,11Rという)と、左右の第1グリップ4L,4Rのそれぞれに使用者Pの左右の手のそれぞれから作用する荷重(手荷重)を検出するための第2荷重センサ12L,12R(以降、手荷重センサ12L,12Rという)とが含まれる。肘荷重センサ11L,11Rは、本発明における第1荷重センサに相当し、手荷重センサ12L,12Rは本発明における第2荷重センサに相当する。
【0042】
各肘荷重センサ11は、例えば、ロードセル等の力センサにより構成され、図1に示す如く、各肘載せ部3に作用する肘荷重が伝達されるように、各肘載せ部3と上部フレーム21の側部との間に介装されている。この場合、本実施形態では、各肘荷重センサ11は、各肘載せ部3に作用する肘荷重のうち、上下方向(重力方向)の肘荷重(以降、上下方向肘荷重ということがある)を検出し得るように構成されている。
【0043】
各手荷重センサ12は、例えば、ロードセル等の力センサにより構成され、図2に示す如く、各第1グリップ4に作用する手荷重が各プレート部材43を介して伝達されるように、各取付部材42に組付けられている。この場合、本実施形態では、各手荷重センサ12は、各第1グリップ4に作用する手荷重のうち、上下方向の手荷重(以降、上下方向手荷重ということがある)と前方方向への手荷重(以降、前方方向手荷重ということがある)とを検出し得るように構成されている。なお、各手荷重センサ12は、2軸方向の手荷重を検出し得る一体型のセンサでもよいが、上下方向手荷重と前方方向手荷重とを各別のセンサで検出し得るように構成されたものであってもよい。
【0044】
情報処理装置6は、本実施形態では、表示器61を有する本体処理部60と、補助処理部65とを備える。補助処理部65は、主に、計測データの取得処理等を行う機能を有する処理部であり、例えば、図示しないマイコン等のプロセッサ、メモリ(RAM、ROM等)、インターフェース回路、通信回路等を含む1つ以上の電子回路ユニットにより構成される。そして、補助処理部65は、歩行車1の任意の適所に搭載されている。例えば、図1に示す如く、フレーム2の縦フレーム23L(又は23R)に補助処理部65が搭載され得る。
【0045】
この補助処理部65には、肘荷重センサ11L,11R及び手荷重センサ12L,12Rのそれぞれの検出信号が入力される。そして、補助処理部65は、実装されたハードウェア構成及びプログラム(ソフトウェア)により実現される機能として、肘荷重センサ11L,11Rのそれぞれの検出信号から左右それぞれの肘荷重(上下方向肘荷重)を計測する肘荷重計測部65aと、手荷重センサ12L,12Rのそれぞれの検出信号から左右それぞれの手荷重(上下方向手荷重及び前方方向手荷重)を計測する手荷重計測部65bと本体処理部60と有線又は無線による通信を行う通信処理部65cとを有する。
【0046】
本体処理部60は、本実施形態では、例えば、液晶ディスプレイ等により構成される表示器61を有するタブレット端末、あるいは、モバイルパソコン等により構成される。表示器61は、本発明における表示部に相当する。そして、歩行車1は、本体処理部60を着脱自在に装着可能な端末搭載部63を備えている。
【0047】
具体的には、図1及び図2を参照して、歩行車1は、上部フレーム21の下面から、前記第1基台41の前側まで前方に張り出すように延設された平板状の第2基台64を備えており、この第2基台64の上面の前部(第1基台41の前端よりも前方に張り出した部分)に、端末搭載部63が取り付けられている。
【0048】
この場合、端末搭載部63は、本体処理部60の表示器61が、使用者Pの頭部に向くようにして、本体処理部60を起立姿勢で装着し得るように構成されていると共に、本体処理部60の傾斜角度を調整するための操作部63aが備えられている。なお、図1は、端末搭載部63に本体処理部60を装着した状態を示しており、図2は、端末搭載部63から本体処理部60を取り外した状態を示している。本体処理部60を端末搭載部63に装着した状態では、歩行車1を使用して歩行動作を行う使用者Pが、本体処理部60の表示器61の画面を随時、視認することが可能である。
【0049】
上記のように構成された端末搭載部63に装着される本体処理部60は、図示しないマイコン等のプロセッサ、メモリ(RAM、ROM等)、インターフェース回路、通信回路等を含む電子回路ユニットを内蔵していると共に、所要の歩行訓練用アプリケーション(プログラム)があらかじめインストールされている。そして、本体処理部60は、実装されたハードウェア構成と歩行訓練用アプリケーションとにより実現される機能として、使用者の歩行動作に関する様々な評価指標を算出する評価指標算出部60aと、評価指標に基づく評価情報を出力する評価情報出力部60bと、補助処理部65と有線又は無線による通信を行う通信処理部60cとを有する。
【0050】
補足すると、本体処理部60は、表示器61を備えない電子回路ユニットにより構成されていてもよい。そして、本体処理部60と別体の表示器が歩行車1に着脱自在に装着され、あるいは、あらかじめ搭載されていてもよい。
【0051】
次に、使用者Pの歩行訓練に係る歩行車1の作動を説明する。本実施形態では、歩行訓練を行おうとする使用者Pは、スタッフの指示に従って、歩行車1を使用した歩行訓練を行う。ここで、歩行訓練のフェーズは、使用者が自身の体重を主に両肘で支える両肘支持フェーズ(on elbowsのフェーズ)と、両手で支える両手支持フェーズ(on handsのフェーズ)と、片手で支える片手支持フェーズ(on a handのフェーズ)との3つのフェーズに分類され得る。
【0052】
そして、本実施形態の歩行車1を使用した歩行訓練は、例えば第1フェーズ及び第2フェーズの2つのフェーズに分類される。第1フェーズの歩行訓練は、使用者の歩行動作の形態を両肘支持フェーズから両手支持フェーズに移行するための訓練である。この歩行訓練では、使用者Pは左右の肘を肘載せ部3L、3Rに載せ、かつ左右の手で第1グリップ4L、4Rを把持し、自身の上体を、左右の肘及び左右の手で支えながら歩行動作を行う訓練である。本実施形態では、かかる第1フェーズの歩行訓練での使用者Pの歩行動作が、本発明における手肘支持歩行動作に相当するものである。
【0053】
また、第2フェーズの歩行訓練は、使用者の歩行動作の形態を両手支持フェーズから片手支持フェーズに移行するための訓練である。この歩行訓練では、使用者Pは左右の手で第1グリップ4L、4Rを把持し、自身の上体を、主に左右の手(両手)で支えながら歩行動作を行う訓練である。本実施形態では、かかる第2フェーズの歩行訓練での使用者Pの歩行動作が、本発明における両手支持歩行動作に相当するものである。
【0054】
第1フェーズの歩行訓練(手肘支持歩行動作による歩行訓練)は、使用者Pの腕力を極力回復する(使用者Pがその体重の多くを肘より手で支えられるようにする)ことを主目的とする歩行訓練である。このため、第1フェーズの歩行訓練では、使用者Pは、左右の上下方向肘荷重を極力小さくして、左右の上下方向手荷重で体重を支えるようにすることを目標として歩行動作を行うようにスタッフから指示される。また、情報処理装置6の本体処理部60は、スタッフの操作等によって、第1フェーズ用の処理を実行するように設定される。
【0055】
第1フェーズの歩行訓練では、使用者Pは、1回の歩行訓練において、例えば5m程度の直線距離を歩行車1を押しながら歩く。この時、情報処理装置6の補助処理部65の肘荷重計測部65aが、肘荷重センサ11L,11Rの出力から左右の各肘に関する上下方向肘荷重の検出値EL(i),ER(i)を一定の処理周期で逐次取得すると共に、補助処理部65の手荷重計測部65bが、手荷重センサ12L,12Rの出力から左右の各手に関する上下方向手荷重の検出値HL(i),HR(i)を所定の処理周期で逐次取得する。この場合、処理周期は、例えば1秒間に5~10回の周期であり得る。
【0056】
上下方向肘荷重 の検出値EL(i),ER(i)及び上下方向手荷重の検出値HL(i),HR(i)は、補助処理部65から本体処理部60に逐次送信される。そして、本体処理部60の評価指標算出部60aが、これらの検出値EL(i),ER(i),HL(i),HR(i)から、使用者Pの歩行動作に関する3種類の評価指標の瞬時値として、手肘自立度指標S_he(i)と、手肘左右均衡度指標X_he(i)と、手肘優位度指標Y_he(i)とを逐次、次式(1)、(2)、(3)により算出してメモリに時系列的に記憶保持する。これにより、手肘自立度指標S_he(i)、手肘左右均衡度指標X_he(i)、及び手肘優位度指標Y_he(i)のそれぞれについてN個(=1秒間のサンプル数×歩行訓練の時間[秒])のデータ(瞬時値)が蓄積される。

S_he(i)=(1-(HL(i)+HR(i)+EL(i)+ER(i))/W)×100 [%] ……(1)
X_he(i)=((HR(i)+ER(i))-(HL(i)+EL(i))) /W×100 [%] ……(2)
Y_he(i)=((HL(i)+HR(i))-(EL(i)+ER(i)))/W×100 [%] ……(3)
【0057】
ここで、Wは、本体処理部60にあらかじめ入力された使用者Pの体重である。従って、本実施形態では、手肘自立度指標S_he(i)は、左右両側における上下方向肘荷重及び上下方向手荷重の総荷重と使用者Pの体重との比率(当該総荷重を体重Wで正規化した値)を1から引いた値を表す評価指標、手肘左右均衡度指標X_he(i)は、右側におけるに上下方向肘荷重及び上下方向手荷重の総荷重と、左側における上下方向肘荷重及び上下方向手荷重の総荷重との差と、使用者Pの体重との比率を表す評価指標(当該差を体重Wで正規化した値)、手肘優位度指標Y_he(i)は、左右両側における上下方向手荷重の総荷重と、左右両側における上下方向肘荷重の総荷重との差と、使用者Pの体重Wとの比率(当該差を体重Wで正規化した値)である。
【0058】
本体処理部60は、歩行訓練中において、上記のように逐次算出される手肘自立度指標S_he(i)、手肘左右均衡度指標X_he(i)、及び手肘優位度指標Y_he(i)のそれぞれの値、あるいは、その値の経時変化を示すグラフを評価情報出力部60bにより、リアルタイムで表示器61に表示させる。これにより、使用者は、手肘自立度指標S_he(i)、手肘左右均衡度指標X_he(i)、及び手肘優位度指標Y_he(i)のそれぞれ値(瞬時値)が、自身の歩行動作中にどのように推移していくのかを表示器61によりリアルタイムで確認しながら、歩行訓練をを行うことができる。
【0059】
第1フェーズの歩行訓練の終了後においては、評価指標算出部60aは、1回の歩行訓練時の手肘自立度指標の代表値(S_he)~、手肘左右均衡度指標の代表値(X_he)~、及び手肘優位度指標の代表値(Y_he)~を算出する。本実施形態では、代表値(S_he)~、 (X_he)~、 (Y_he)~のそれぞれとして、次式(4)、(5)、(6)で示すように、手肘自立度指標S_he(i)、手肘左右均衡度変動指標X_he(i)、及び手肘優位度指標Y_he(i)のそれぞれの蓄積されたN個のデータの中央値である第2四分位数S_he(q2)、X_he(q2)、Y_he(q2)が算出される。

(S_he )~=S_he(i)の第2四分位数S_he(q2) ……(4)
(X_he )~=X_he(i)の第2四分位数X_he(q2) ……(5)
(Y_he )~=Y_he(i)の第2四分位数Y_he(q2) ……(6)
【0060】
なお、S_he(i)、X_he(i)、Y_he(i)のそれぞれの値の分布が正規分布に近い場合は、代表値(S_he)~、 (X_he)~、 (Y_he(i))~のそれぞれとして、平均値を算出してもよい。
【0061】
さらに、評価指標算出部60aは、1回の歩行訓練で蓄積された手肘左右均衡度指標X_he (i)と手肘優位度指標Y_he (i) (i=1~N)に基づいて、X_he (i)の変動分(変化幅)を表す評価指標としての手肘左右均衡度変動指標ΔX_heと、Y_he (i)の変動分(変化幅)を表す評価指標としての手肘優位度変動指標ΔY_heを算出する。本実施形態では、次式(7)、(8)で示すように、X_he (i)の第3四分位数X_he(q3)と、第1四分位数X_he(q1)との差が手肘左右均衡度変動指標ΔX_heとして算出され、Y_he (i)の第3四分位数Y_he(q3)と、第1四分位数Y_he(q1)との差が手肘優位度変動指標ΔY_heとして算出される。

ΔX_he=X_he(i) の第3四分位数X_he(q3)-第1四分位数X_he (q1) ……(7)
ΔY_he=Y_he(i) の第3四分位数Y_he(q3)-第1四分位数Y_he (q1) ……(8)
【0062】
なお、X_he(i) およびY_he(i) のそれぞれの値の分布が正規分布に近い場合は、ΔX_he、ΔY_heとして標準偏差又は分散を算出してもよい。
【0063】
上記のように算出されるΔX_he、ΔY_heは、使用者Pの歩行動作中の安定度(あるいは変動度)を表す指標であり、それぞれ、使用者Pの身体の左右の揺れ及び前後の揺れが少ないと小さな値となる。
【0064】
本体処理部60は、次に、上記の如く算出した(S_he)~、 (X_he)~、 (Y_he)~、ΔX_he、ΔY_heに基づく評価情報を表示部61に表示させる処理を評価情報出力部60bにより実行する。この場合、評価情報出力部60bは、図4に例示する如く、手肘左右均衡度指標X_heを横軸(又は縦軸)、手肘優位度指標Y_heを縦軸(又は横軸)とする2次元座標平面を設定し、この座標平面上に、(X_he)~、 (Y_he)~、ΔX_he、ΔY_heに応じた位置及びサイズを有するひし形状の四角形ABCDを配置した2次元グラフの画像データを表示器61に表示させる。
【0065】
この場合、ひし形状の四角形ABCDは、次のように設定される。すなわち、上記座標平面上で、手肘左右均衡度指標及び手肘優位度指標の代表値(X_he)~(=X_he(q2))、 (Y_he)~(=Y_he(q2))により規定される点Q=[X_he(q2) 、Y_he(q2)]の位置が四角形ABCDの代表位置として設定される。そして、ひし形状の四角形の4つの頂点のうち、点Qから横軸方向にずれた二つの頂点として、手肘左右均衡度指標X_he(i)の第1四分位数X_he(q1)を横軸座標値とする点A=[X_he(q1)、Y_he(q2)]と、手肘左右均衡度指標X_he(i)の第3四分位数X_he(q3)を横軸座標値とする点C=[X_he(q3)、Y_he(q2)]とが設定される。
【0066】
また、点Qから縦軸方向にずれた二つの頂点として、手肘優位度指標Y_he(i)の第1四分位数Y_he(q1)を縦軸座標値とする点B=[X_he(q2)、Y_he(q1)]と、手肘優位度指標Y_he(i)のの第3四分位数Y_he(q3)を縦軸座標値とする点D=[X_he(q2)、Y_he(q3)]とが設定される。
【0067】
これにより、四角形ABCDの横軸方向の幅と、縦軸方向の幅とは、それぞれ、手肘左右均衡度変動指標ΔX_he、手肘優位度変動指標ΔY_heに一致する幅に設定される。
【0068】
なお、ひし形状の四角形ABCDの代表位置及び各頂点の座標を、四分位数を用いて設定したが、例えばX_he(i),Y_he(i)のそれぞれの平均値及び標準偏差を用いてひし形状の四角形ABCDを設定してもよい。その場合には、四角形ABCDの代表位置の座標として[X_he(i)の平均値,Y_he(i)の平均値]を設定し、点A、B、C、Dの座標として、それぞれ、[X_he(i)の平均値-標準偏差,Y_he(i)の平均値]、[X_he(i)の平均値、Y_he(i)の平均値-標準偏差]、[X_he(i)の平均値+標準偏差,Y_he(i)の平均値]、[X_he(i)の平均値、Y_he(i)の平均値+標準偏差]を設定すればよい。
【0069】
評価情報出力部60bは、以上の如く、手肘左右均衡度変動指標X_heを横軸、手肘優位度指標Y_heを縦軸とする2次元座標平面を設定し、この座標平面上に、(X_he)~、 (Y_he)~、ΔX_he、ΔY_heに応じた位置及びサイズを有するひし形状の四角形ABCDを配置した2次元グラフの画像データを表示器61に表示させる。
【0070】
なお、ひし形状の四角形ABCDの代わりに、例えば楕円を表示しても良い。この場合、当該楕円は、手肘左右均衡度指標及び手肘優位度指標の代表値(X_he)~(=X_he(q2))、 (Y_he)~(=Y_he(q2))により規定される点Q=[X_he(q2) 、Y_he(q2)]の位置を中心として、長軸の長さを2a、 短軸の長さを2b、焦点の座標を(√(a2-b2)+(X_he)~,(Y_he)~)、(-√(a2-b2)+(X_he)~,(Y_he)~)として、次式(9)により表される楕円である。
(x-(X_he)~)2/ a2+(y-(Y_he)~)2/ b2 =1 ……(9)
ただし、
a=ΔX_he/2 ……(9a)
b=ΔY_he/2 ……(9b)
【0071】
加えて、本実施形態では、評価情報出力部60bは、例えば四角形ABCDの色を、手肘自立度指標の代表値(S_he)~(=S_he(q2))に応じて変化させる。例えば、手肘自立度指標の代表値(S_he)~の値が大きくなるに伴い、四角形ABCDの色が黄色系から緑色系、あるいは、緑色系から青色系の色に変化していくように四角形ABCDの色を設定することができる。
【0072】
なお、四角形ABCDの色の代わりに、例えば四角形ABCDの模様等を手肘自立度指標の代表値(S_he)~(=S_he(q2))に応じて変化させるようにしてもよい。
【0073】
第1フェーズの歩行訓練では、上記の如く、手肘自立度指標の代表値(S_he)~と、手肘左右均衡度指標の代表値(X_he)~及び手肘優位度指標の代表値(Y_he)~と、手肘左右均衡度変動指標ΔX_he及び手肘優先度変動指標ΔY_heとに応じた2次元グラフの画像データを表示器61で表示させることができるので、第1フェーズの歩行訓練の進捗度合を定量的に評価する上で有用な情報を視覚的な情報として判りやすく表示器61で表示させることができる。このため、スタッフは、第1フェーズの歩行訓練の進捗度合を適切に判断することができる。
【0074】
次に、第2フェーズの歩行訓練に関して説明する。第2フェーズの歩行訓練は、使用者Pがその体重の多くを手と脚で支えられるようにすることを主目的とする歩行訓練である。このため、第2フェーズの歩行訓練では、使用者Pは、左右の上下方向手荷重を極力小さくして、左右の脚で体重を支えるとともに、左右の手による前方方向手荷重を高めることを目標として歩行動作を行うようにスタッフから指示される。また、情報処理装置6の本体処理部60は、スタッフの操作等によって、第2フェーズ用の処理を実行するように設定される。
【0075】
第2フェーズの歩行訓練では、使用者Pは、1回の歩行訓練において、例えば5m程度の直線距離を歩行車1を押しながら歩く。この時、情報処理装置6の補助処理部65の手荷重計測部65bが、手荷重センサ12L,12Rの出力から左右の各手に関する上下方向手荷重の検出値HL(i),HR(i)と、左右の各手に関する前方方向手荷重の検出値HLF(i),HRF(i)を所定の処理周期で逐次取得する。この場合、処理周期は、例えば1秒間に5~10回の周期であり得る。
【0076】
上下方向手荷重の検出値HL(i),HR(i)及び前方方向手荷重HLF(i),HRF(i)は、補助処理部65から本体処理部60に逐次送信される。そして、本体処理部60の評価指標算出部60aが、これらの検出値HL(i),HR(i),HLF(i),HRF(i)から、使用者Pの歩行動作に関する3種類の評価指標の瞬時値として、両手自立度指標S_bh (i)と、両手左右均衡度指標X_bh(i)と、両手前進度指標Y_bh(i)とを逐次、次式(11)、(12)、(13)により算出してメモリに時系列的に記憶保持する。これにより、両手自立度指標S_bh(i)、両手左右均衡度指標X_bh(i)、及び両手前進度指標Y_bh(i)のそれぞれについてN個(=1秒間のサンプル数×歩行訓練の時間[秒])のデータ(瞬時値)が蓄積される。

S_bh(i)=(1-(HLF(i)+HRF(i)+HL(i)+HR(i))/W)×100 [%]
……(11)
X_bh(i)=((HR(i)+HRF (i))-(HL(i)+HLF(i))) /W×100 [%]
……(12)
Y_bh(i)=((HLF(i)+HRF(i))-(HL(i)+HR(i)))/W×100 [%]
……(13)
【0077】
ここで、本実施形態では、両手自立度指標S_bh(i)は、左右両側における上下方向手荷重と前方方向手荷重との総荷重と、使用者Pの体重との比率(当該総荷重を体重Wで正規化した値)を1から引いた値を表す評価指標、両手左右均衡度指標X_he(i)は、右側におけるに上下方向手荷重及び前方方向手荷重の総荷重と、左側における上下方向手荷重及び前方方向手荷重の総荷重との差と、使用者Pの体重との比率を表す評価指標(当該差を体重Wで正規化した値)、両手前進度指標Y_bh(i)は、左右両側における前方方向手荷重の総荷重と、左右両側における上下方向手荷重の総荷重との差と、使用者Pの体重Wとの比率(当該差を体重Wで正規化した値)である。
【0078】
本体処理部60は、歩行訓練中において、上記のように逐次算出される両手自立度指標S_bh(i)、両手左右均衡度指標X_bh(i)、及び両手前進度指標Y_bh(i)のそれぞれの値、あるいは、その値の経時変化を示すグラフを評価情報出力部60bにより、リアルタイムで表示器61に表示させる。これにより、使用者は、両手自立度指標S_bh(i)、両手左右均衡度指標X_bh(i)、及び両手前進度指標Y_bh(i)のそれぞれ値(瞬時値)が、自身の歩行動作中にどのように推移していくのかを表示器61によりリアルタイムで確認しながら、歩行訓練をを行うことができる。
【0079】
第2フェーズの歩行訓練の終了後においては、評価指標算出部60aは、1回の歩行訓練時の両手自立度指標の代表値(S_bh)~、両手左右均衡度指標の代表値(X_bh)~、及び両手前進度指標の代表値(Y_bh)~を算出する。本実施形態では、代表値(S_bh)~、 (X_bh)~、 (Y_bh)~のそれぞれとして、次式(14)、(15)、(16)で示すように、両手自立度指標S_bh(i)、両手左右均衡度指標X_bh(i)、及び両手前進度指標Y_bh(i)のそれぞれの蓄積されたN個のデータの中央値である第2四分位数S_bh(q2)、X_bh(q2)、Y_bh(q2)が算出される。

(S_bh )~=S_bh)の第2四分位数S_bh(q2) ……(14)
(X_bh )~=X_bh(i)の第2四分位数X_bh(q2) ……(15)
(Y_bh )~=Y_bh(i)の第2四分位数Y_bh(q2) ……(16)
【0080】
なお、S_bh(i)、X_bh(i)、Y_bh(i)のそれぞれの値の分布が正規分布に近い場合は、代表値(S_bh)~、 (X_bh)~、 (Y_bh)~のそれぞれとして、平均値を算出してもよい。
【0081】
さらに、評価指標算出部60aは、1回の歩行訓練で蓄積された両手左右均衡度指標X_bh (i)と両手前進度指標Y_bh (i) (i=1~N)に基づいて、X_bh (i)の変動分(変化幅)を表す評価指標としての両手左右均衡度変動指標ΔX_bhと、Y_bh (i)の変動分(変化幅)を表す評価指標としての両手前進度変動指標ΔY_bhを算出する。本実施形態では、次式(17)、(18)で示すように、X_bh (i)の第3四分位数X_bh(q3)と、第1四分位数X_bh(q1)との差が手肘左右均衡度変動指標ΔX_bhとして算出され、Y_bh (i)の第3四分位数bh(q3)と、第1四分位数Y_bh(q1)との差が両手前進度変動指標ΔY_bhとして算出される。

ΔX_bh=X_bh(i) の第3四分位数X_bh(q3)-第1四分位数X_bh (q1) ……(17)
ΔY_bh=Y_bh(i) の第3四分位数Y_bh(q3)-第1四分位数Y_bh (q1) ……(18)
【0082】
なお、X_bh(i) およびY_bh(i) のそれぞれの値の分布が正規分布に近い場合は、ΔX_bh、ΔY_bhとして標準偏差又は分散を算出してもよい。
【0083】
上記のように算出されるΔX_bh、ΔY_bhは、使用者Pの歩行動作中の安定度(あるいは変動度)を表す指標であり、それぞれ、使用者Pの身体の左右の揺れ及び前後の揺れが少ないと小さな値となる。
【0084】
本体処理部60は、次に、上記の如く算出した(S_bh)~、 (X_bh)~、 (Y_bh)~、ΔX_bh、ΔY_bhに基づく評価情報を表示部61に表示させる処理を評価情報出力部60bにより実行する。この場合、評価情報出力部60bは、図5に例示する如く、両手左右均衡度指標X_bhを横軸(又は縦軸)、両手前進度指標Y_bhを縦軸(又は横軸)とする2次元座標平面を設定し、この座標平面上に、(X_bh)~、 (Y_bh)~、ΔX_bh、ΔY_bhに応じた位置及びサイズを有するひし形状の四角形ABCDを配置した2次元グラフの画像データを表示器61に表示させる。
【0085】
この場合、ひし形状の四角形ABCDは、次のように設定される。すなわち、上記座標平面上で、両手左右均衡度指標及び両手前進度指標の代表値(X_bh)~(=X_bh(q2))、 (Y_bh)~(=Y_bh(q2))により規定される点Q=[X_bh(q2) 、Y_bh(q2)]の位置が四角形ABCDの代表位置として設定される。そして、ひし形状の四角形の4つの頂点のうち、点Qから横軸方向にずれた二つの頂点として、両手左右均衡度指標X_bh(i)の第1四分位数X_bh(q1)を横軸座標値とする点A=[X_bh(q1)、Y_bh(q2)]と、両手左右均衡度指標X_bh(i)の第3四分位数X_bh(q3)を横軸座標値とする点C=[X_bh(q3)、Y_bh(q2)]とが設定される。
【0086】
また、点Qから縦軸方向にずれた二つの頂点として、両手前進度指標Y_bh(i)の第1四分位数Y_bh(q1)を縦軸座標値とする点B=[X_bh(q2)、Y_bh(q1)]と、両手前進度指標Y_bh(i)のの第3四分位数Y_bh(q3)を縦軸座標値とする点D=[X_bh(q2)、Y_bh(q3)]とが設定される。
【0087】
これにより、四角形ABCDの横軸方向の幅と、縦軸方向の幅とは、それぞれ、両手左右均衡度変動指標ΔX_bh、両手前進度変動指標ΔY_bhに一致する幅に設定される。
【0088】
なお、ひし形状の四角形ABCDの代表位置及び各頂点の座標を、四分位数を用いて設定したが、例えばX_bh(i),Y_bh(i)のそれぞれの平均値及び標準偏差を用いてひし形状の四角形ABCDを設定してもよい。その場合には、四角形ABCDの代表位置の座標として[X_bh(i)の平均値,Y_bh(i)の平均値]を設定し、点A、B、C、Dの座標として、それぞれ、[X_bh(i)の平均値-標準偏差,Y_bh(i)の平均値]、[X_bh(i)の平均値、Y_bh(i)の平均値-標準偏差]、[X_bh(i)の平均値+標準偏差,Y_bh(i)の平均値]、[X_bh(i)の平均値、Y_bh(i)の平均値+標準偏差]を設定すればよい。
【0089】
評価情報出力部60bは、以上の如く、両手左右均衡度指標X_heを横軸、両手前進度指標Y_bhを縦軸とする2次元座標平面を設定し、この座標平面上に、(X_bh)~、 (Y_bh)~、ΔX_bh、ΔY_bhに応じた位置及びサイズを有するひし形状の四角形ABCDを配置した2次元グラフの画像データを表示器61に表示させる。
【0090】
なお、ひし形状の四角形ABCDの代わりに、例えば楕円を表示しても良い。この場合、当該楕円は、両手左右均衡度指標及び両手前進度指標の代表値(X_bh)~(=X_bh(q2))、 (Y_bh)~(=Y_bh(q2))により規定される点Q=[X_bh(q2) 、Y_bh(q2)]の位置を中心として、長軸の長さを2a、 短軸の長さを2b、焦点の座標を(√(a2-b2)+(X_bh)~,(Y_bh)~)、(-√(a2-b2)+(X_bh)~,(Y_bh)~)として、次式(19)により表される楕円である。
(x-(X_bh)~)2/a2+(y-(Y_bh)~)2/ b2 = 1 ……(19)
ただし、
a=ΔX_bh/2 ……(19a)
b=ΔY_bh/2 ……(19b)
【0091】
加えて、本実施形態では、評価情報出力部60bは、例えば四角形ABCDの色を、両手自立度指標の代表値(S_bh)~(=S_bh(q2))に応じて変化させる。例えば、両手自立度指標の代表値(S_bh)~の値が大きくなるに伴い、四角形ABCDの色が黄色系から緑色系、あるいは、緑色系から青色系の色に変化していくように四角形ABCDの色を設定することができる。
【0092】
なお、四角形ABCDの色の代わりに、例えば四角形ABCDの模様等を両手自立度指標の代表値(S_bh)~(=S_bh(q2))に応じて変化させるようにしてもよい。
【0093】
第2フェーズの歩行訓練では、上記の如く、両手自立度指標の代表値(S_bh)~と、両手左右均衡度指標の代表値(X_bh)~及び両手前進度指標の代表値(Y_bh)~と、両手左右均衡度変動指標ΔX_bh及び両手前進度変動指標ΔY_bhとに応じた2次元グラフの画像データを表示器61で表示させることができるので、第2フェーズの歩行訓練の進捗度合を定量的に評価する上で有用な情報を視覚的な情報として判りやすく表示器61で表示させることができる。このため、スタッフは、第2フェーズの歩行訓練の進捗度合を適切に判断することができる。
【0094】
なお、本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態を採用することもできる。以下の他の実施形態をいくつか例示する。前記実施形態では、第1フェーズの歩行訓練での評価指標のうち、手肘自立度指標を前記式(1)により算出したが、例えば、(HL(i)+HR(i)+EL(i)+ER(i))/Wを、手肘自立度指標の代わりの指標として算出してもよい。この場合、該指標は、手肘依存度指標という意味となり,歩行訓練時には、使用者にこの指標が小さくなるように歩くよう指示することになる。
【0095】
また、前記実施形態では、第1フェーズの歩行訓練での評価指標のうち、手肘左右均衡部指標を前記式(2)により算出したが、例えば、(HR(i)+ER(i))と(HL(i)+EL(i))との比率、あるいは、(HR(i)+ER(i))と(HL(i)+EL(i))との差、あるいは、(HR(i)+ER(i))と、(HL(i)+EL(i))と)との絶対差、あるいは、該絶対差を使用者Pの体重Wで除算してなる比率を手肘左右均衡部指標として算出してもよい。
【0096】
また、前記実施形態では、第1フェーズの歩行訓練での評価指標のうち、手肘優先度部指標を前記式(3)により算出したが、例えば、(HL(i)+HR(i))と(EL(i)+ER(i))との比率、あるいは、両者の差、あるいは、両者の絶対差、あるいは該絶対差を使用者Pの体重で除算してなる比率を手肘優先度指標として算出してもよい。
【0097】
また、前記実施形態では、第2フェーズの歩行訓練での評価指標のうち、両手自立度指標を前記式(11)により算出したが、例えば、(HLF(i)+HRF(i)+HL(i)+HR(i))/Wを両手自立度指標の代わりの指標として算出したり、あるいは、(1-(HL(i)+HR(i))/W)を両手自立度指標として算出したり、あるいは、 (HL(i)+HR(i))/Wを両手自立度指標の代わりの指標として算出してもよい。この場合、(HLF(i)+HRF(i)+HL(i)+HR(i))/Wあるいは(HL(i)+HR(i))/Wは、両手依存度指標という意味となり,歩行訓練時には、使用者にこの指標が小さくなるように歩くよう指示することになる。
【0098】
また、前記実施形態では、第2フェーズの歩行訓練での評価指標のうち、両手左右均衡度指標を前記式(12)により算出したが、例えば(HR(i)+HRF (i))と(HL(i)+HLF(i)))との比率、もしくは差もしくは絶対差、あるいは、該絶対差を使用者Pの体重で除算してなる比率、あるいは、HR(i)とHL(i)との比率もしくは差もしくは絶対差、あるいは、該差もしくは絶対差を使用者Pの体重で除算してなる比率を両手左右均衡度指標として算出してもよい。
【0099】
また、前記実施形態では、第2フェーズの歩行訓練での評価指標のうち、両手前進度指標を前記式(13)により算出したが、例えば、(HLF(i)+HRF(i))と (HL(i)+HR(i))との比率、もしくは両者の差、もしくは両者の絶対差、あるいは該絶対差を使用者Pの体重で除算してなる比率を両手前進度指標として算出してもよい。
また、前記実施形態では、本体処理部60が歩行車1に搭載されるが、本体処理部60は、歩行車1と別体として配置されるものであってもよい。
【0100】
また、前記実施形態では、歩行動作評価システムとして、肘載せ部3L,3R及びグリップ4L,4Rが搭載されたフレーム2が、固定された床面上を移動する歩行車1を備えるシステムを例示したが、本発明の歩行動作評価システムにおけるリハビリ用歩行車は、例えば、トレッドミル型のウォーキングマシン等のように移動式の床面(使用者の歩行動作に応じて移動する床面)を備える装置に組み込まれたものであってもよい。この場合、使用者の歩行動作(移動式の床面上での歩行動作)に応じてリハビリ用歩行車のフレームに対して床面が相対的に移動することになる。
【符号の説明】
【0101】
1…リハビリ用歩行車(歩行動作評価システム)、2…フレーム、3L,3R…肘載せ部、4L,4R…第1グリップ(グリップ)、61…表示器(表示部)、11L,11R…肘荷重センサ(第1荷重センサ)、12L,12R…手荷重センサ(第2荷重センサ)、60a…評価指標算出部。
図1
図2
図3
図4
図5