(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034773
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04Q 9/00 20060101AFI20240306BHJP
H04Q 9/02 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
H04Q9/00 301B
H04Q9/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139244
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140958
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137888
【弁理士】
【氏名又は名称】大山 夏子
(74)【代理人】
【識別番号】100190942
【弁理士】
【氏名又は名称】風間 竜司
(72)【発明者】
【氏名】畠 直輝
【テーマコード(参考)】
5K048
【Fターム(参考)】
5K048AA04
5K048BA21
5K048BA41
5K048DA01
5K048EB02
5K048EB03
5K048FC04
5K048HA01
5K048HA02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】遠隔制御される移動体の操縦性の低下を抑制する。
【解決手段】遠隔操作システムにおいて、情報処理装置の演算部は、オペレータによる操縦部への操作入力に基づいて、遠隔地に存在し、ネットワーク40を介して互いに通信可能に接続される移動体1の移動に対する速度指令を制御する指令値制御部と、前記速度指令が指示する速度と、前記移動体の実際の速度との差に基づいて、前記操縦部に加えられる前記操作入力に対する反力を制御する反力制御部と、を備える。通信遅延により発生する速度指令が指示する速度と移動体の実際の速度の差を操縦部への反力で制御することで、操縦性の低下を改善する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オペレータによる操縦部への操作入力に基づいて、遠隔地に存在する移動体の移動に対する速度指令を制御する指令値制御部と、
前記速度指令が指示する速度と、前記移動体の実際の速度との差に基づいて、前記操縦部に加えられる前記操作入力に対する反力を制御する反力制御部と、
を備える、情報処理装置。
【請求項2】
前記操縦部は、回動可能な3以上の回動軸と、前記オペレータによって把持され、前記3以上の回動軸によって3以上の自由度で動作可能なハンドルとを有し、
前記操作入力に対する反力は、前記ハンドルに対して与えられる、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記操縦部は、前記移動体の操縦を開始する入力が行われた時点での前記ハンドルの姿勢を操縦起点とし、
前記反力は、前記操縦起点に前記ハンドルを戻すように作用する、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記反力制御部は、前記速度指令が指示する速度と、前記移動体の実際の速度との差が大きいほど、前記操作入力に対する反力が大きくなるように前記反力を制御する、請求項1~3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記反力には絶対値に上限が設けられる、請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記速度指令は、ネットワークを介して前記移動体に送信される、請求項1~3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記オペレータには、前記移動体に搭載された撮像装置で撮像され、前記ネットワークを介して送信された画像が提示される、請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記ネットワークを介した送受信には、通信遅延が生じる、請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
演算処理装置によって、
オペレータによる操縦部への操作入力に基づいて、遠隔地に存在する移動体の移動に対する速度指令を制御するステップと、
前記速度指令が指示する速度と、前記移動体の実際の速度との差に基づいて、前記操縦部に加えられる前記操作入力に対する反力を制御するステップと、
を含む、情報処理方法。
【請求項10】
コンピュータを、
オペレータによる操縦部への操作入力に基づいて、遠隔地に存在する移動体の移動に対する速度指令を制御する指令値制御部と、
前記速度指令が指示する速度と、前記移動体の実際の速度との差に基づいて、前記操縦部に加えられる前記操作入力に対する反力を制御する反力制御部と、
として機能させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信ネットワークの発達によって、遠隔地に存在するロボット又はマニピュレータなどの装置を遠隔制御することが一般的になっている。
【0003】
ただし、通信ネットワークでは通信時に遅延が発生してしまうため、リアルタイム性が重視される遠隔制御では、通信遅延を考慮することが重要となる。そこで、遠隔制御では、通信遅延による操縦性の低下を抑制する技術が種々検討されている。
【0004】
例えば、下記の特許文献1には、遠隔地に存在するマニピュレータの制御端に作用する触覚及び力覚情報を操作者に提示するバイラテラル制御において、推定された通信外乱に基づいて通信遅延を補償する技術が開示されている。また、下記の特許文献2には、同様のバイラテラル制御において、通信ネットワークの状態に応じてマニピュレータ側又は操作者側の制御パラメータを動的に変更することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2006/046500号
【特許文献2】特開2008-119757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の特許文献1及び2に開示された技術は、マニピュレータと物体との接触反力を操作者に提示する際の通信遅延に対応する技術である。そのため、上記の特許文献1及び2に開示された技術では、移動体などの速度を有する対象を遠隔で操縦する場合において、通信遅延による操縦性の低下を改善することは困難であった。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、遠隔制御される移動体の操縦性の低下を抑制することが可能な、新規かつ改良された情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、オペレータによる操縦部への操作入力に基づいて、遠隔地に存在する移動体の移動に対する速度指令を制御する指令値制御部と、前記速度指令が指示する速度と、前記移動体の実際の速度との差に基づいて、前記操縦部に加えられる前記操作入力に対する反力を制御する反力制御部と、を備える、情報処理装置が提供される。
【0009】
前記操縦部は、回動可能な3以上の回動軸と、前記オペレータによって把持され、前記3以上の回動軸によって3以上の自由度で動作可能なハンドルとを有し、前記操作入力に対する反力は、前記ハンドルに対して与えられてもよい。
【0010】
前記操縦部は、前記移動体の操縦を開始する入力が行われた時点での前記ハンドルの姿勢を操縦起点とし、前記反力は、前記操縦起点に前記ハンドルを戻すように作用してもよい。
【0011】
前記反力制御部は、前記速度指令が指示する速度と、前記移動体の実際の速度との差が大きいほど、前記操作入力に対する反力が大きくなるように前記反力を制御してもよい。
【0012】
前記反力には絶対値に上限が設けられてもよい。
【0013】
前記速度指令は、ネットワークを介して前記移動体に送信されてもよい。
【0014】
前記オペレータには、前記移動体に搭載された撮像装置で撮像され、前記ネットワークを介して送信された画像が提示されてもよい。
【0015】
前記ネットワークを介した送受信には、通信遅延が生じてもよい。
【0016】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、演算処理装置によって、オペレータによる操縦部への操作入力に基づいて、遠隔地に存在する移動体の移動に対する速度指令を制御するステップと、前記速度指令が指示する速度と、前記移動体の実際の速度との差に基づいて、前記操縦部に加えられる前記操作入力に対する反力を制御するステップと、を含む、情報処理方法が提供される。
【0017】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータを、オペレータによる操縦部への操作入力に基づいて、遠隔地に存在する移動体の移動に対する速度指令を制御する指令値制御部と、前記速度指令が指示する速度と、前記移動体の実際の速度との差に基づいて、前記操縦部に加えられる前記操作入力に対する反力を制御する反力制御部と、として機能させる、プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように本発明によれば、遠隔制御される移動体の操縦性の低下を抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る遠隔操作システムの全体構成を示す模式図である。
【
図4】操縦装置の具体的な構成を示す模式図である。
【
図5】移動体及び情報処理装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図6】情報処理装置の指令値制御部及び反力制御部が実行する処理を示すブロック図である。
【
図7】通信遅延に起因する反力を考慮した場合の移動体の前進移動量を示すグラフ図である。
【
図8】通信遅延に起因する反力を考慮しない場合の移動体の前進移動量を示すグラフ図である。
【
図9】変形例に係る情報処理装置の指令値制御部及び反力制御部が実行する処理を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0021】
<1.遠隔操作システム>
まず、
図1~
図4を参照して、本発明の一実施形態に係る遠隔操作システムの全体構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る遠隔操作システムの全体構成を示す模式図である。
図2及び
図3は、移動体1の具体的な構成を示す模式図である。
図4は、操縦装置30の具体的な構成を示す模式図である。
【0022】
図1に示すように、遠隔操作システムは、移動体1と、情報処理装置20と、表示装置21と、操縦装置30とを備える。移動体1と、情報処理装置20とは遠隔地に存在しており、ネットワーク40を介して互いに通信可能に接続される。これによれば、図示しないオペレータは、表示装置21に表示される画像及び情報を視認しながら操縦装置30を操作することで、遠隔地に存在する移動体1を遠隔制御することができる。
【0023】
移動体1は、移動機構を備え、操縦装置30に入力された操作入力に基づいて移動するロボット装置である。移動体1は、例えば、無線通信などを介してネットワーク40に接続されてもよい。例えば、
図2及び
図3に示すように、移動体1は、移動機構11と、撮像装置12a,12b,12c,12dとを備えたロボット装置であってもよい。
【0024】
移動機構11は、動力によって駆動されることで、移動体1を任意の場所に移動させることが可能な機構である。移動機構11は、2以上の車輪であってもよく、2以上の脚、2以上の脚車輪、無限軌道、又は空気浮揚などであってもよい。さらには、移動機構11は、固定翼又は回転翼などの空中を飛行可能な機構であってもよい。
【0025】
撮像装置12a,12b,12c,12dは、移動体1の前後左右に搭載され、移動体1の周囲の環境を撮像するカメラなどである。撮像装置12a,12b,12c,12dは、180°近い視野角を有する広角な魚眼カメラであってもよい。撮像装置12a,12b,12c,12dにて撮像された画像は、ネットワーク40を介して情報処理装置20に送信され、表示装置21に表示される。これによれば、オペレータは、表示装置21に表示された画像を視認することで、移動体1の周囲の環境の状態を把握すると共に移動体1の状態を監視することができる。
【0026】
情報処理装置20は、表示装置21及び操縦装置30の入出力を制御することで、移動体1とオペレータとの間の情報の入出力を制御する。具体的には、情報処理装置20は、ネットワーク40を介して移動体1から受信した画像及び情報に基づいて表示装置21に表示させる画像を生成することで、移動体1から受信した画像及び情報をオペレータに提示することができる。また、情報処理装置20は、オペレータから操縦装置30に入力された操作入力に基づいて移動体1への移動指令を生成することで、オペレータからの遠隔制御を移動体1に伝達することができる。
【0027】
表示装置21は、情報処理装置20で生成された画像が表示される画像表示装置である。表示装置21は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ装置、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display: LCD)装置、又はOLED(Organic Light Emitting Diode)装置などであってもよい。表示装置21には、移動体1から受信した画像及び情報に基づいて生成された画像が表示される。
【0028】
操縦装置30は、オペレータによって移動体1への移動指示が操作入力される入力装置である。操縦装置30は、例えば、ボタン、スイッチ、レバー、又はハンドルなどの入力手段と、入力手段への入力に基づいて信号を生成する入力制御回路とから構成されてもよい。
【0029】
図4に示すように、操縦装置30は、図示しない駆動装置にて駆動可能な回動軸32a,32b,32cと、回動軸32a,32b,32cにて3自由度で操作可能なハンドル31とを備える。ハンドル31は、オペレータによって把持されると共にx,y,z方向に動かされる。
【0030】
情報処理装置20は、図示しないエンコーダにて回動軸32a,32b,32cの各々の角度を検出し、検出した角度からハンドル31のx,y,z方向の移動量を算出することができる。これにより、情報処理装置20は、操縦装置30に操作入力されたオペレータからの移動指令をハンドル31の移動方向及び移動量として取得することができる。また、情報処理装置20は、算出したx,y,z方向の移動量に応じて、ハンドル31に操作入力に対する数N程度の反力を生じさせてもよい。これにより、操縦装置30は、オペレータからの操作入力が終了した際に、ばね要素によってハンドル31の位置を操作入力がされていない操縦起点に押し戻すことができる。
【0031】
ネットワーク40は、有線又は無線によって接続された通信網である。例えば、ネットワーク40は、インターネット通信網、家庭内LAN(Local Area Network)、社内LAN、赤外線通信網、ラジオ波通信網、又は衛星通信網などであってもよい。
【0032】
移動体1及び情報処理装置20は、ネットワーク40を介して相互にデータを送受信する。具体的には、移動体1は、ネットワーク40を介して、移動体1に搭載された撮像装置12a,12b,12c,12dで撮像した画像、移動体1の移動に関する情報、及び移動体1の電源に関する情報などを情報処理装置20に送信することができる。また、情報処理装置20は、ネットワーク40を介して、操縦装置30へのオペレータの操作入力に基づいて生成された移動指令を移動体1に送信することができる。
【0033】
ただし、ネットワーク40を介したデータの送受信には、送受信するデータ量、及びネットワーク40の回線速度によって通信遅延が発生する。そのため、移動体1の実際の移動と、表示装置21を視認したオペレータによる操縦装置30への操作入力との間にはタイムラグが発生してしまう。本実施形態に係る遠隔制御システムでは、操縦装置30への操作入力に対する反力を制御することで、上記タイムラグから生じるオペレータの移動体1への過操作を抑制することができる。本実施形態に係る遠隔制御システムによれば、通信遅延による移動体1の過操作を抑制することで、通信遅延による移動体1の操縦性の低下を抑制することができる。
【0034】
<2.情報処理装置の構成>
続いて、
図5を参照して、上述した移動体1及び情報処理装置20の具体的な機能構成について説明する。
図5は、移動体1及び情報処理装置20の機能構成を示すブロック図である。
【0035】
(移動体1)
図5に示すように、移動体1は、演算部110と、入出力部120と、通信部130と、記憶部140と、電源部150とを備える。
【0036】
入出力部120は、撮像装置12(すなわち撮像装置12a,12b,12c,12d)、移動機構11、及びエンコーダ部13と、演算部110との間での各種データの入出力を行う接続インタフェースである。入出力部120は、例えば、USB(Universal Serial Bus)ポート、IEEE1394ポート、又はSCSI(Small Computer System Interface)ポートなどであってもよく、RS-232Cポート、光オーディオ端子、又はHDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)ポートなどであってもよい。
【0037】
通信部130は、ネットワーク40に接続するための通信デバイスなどで構成された通信インタフェースである。通信部130は、例えば、無線LAN(Local Area Network)、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、又はWUSB(Wireless USB)用の通信カードなどであってもよい。
【0038】
記憶部140は、移動体1のデータ格納用の機器である。記憶部140は、例えば、記憶媒体、記憶媒体にデータを記録する記録装置、記憶媒体からデータを読み出す読出装置、及び記憶媒体に記録されたデータを削除する削除装置等を含んでもよい。記憶部140は、情報処理装置20から取得した特定の拠点のマップデータを記憶してもよく、移動体1の移動に関するパラメータを記憶してもよい。
【0039】
電源部150は、移動体1の動力源であり、移動体1の各部に電力を供給する。電源部150は、電力を蓄積したバッテリーを含んでもよい。電源部150は、例えば、リチウムイオン二次電池を含んでもよい。
【0040】
演算部110は、移動体1におけるデータ処理全般を行うと共に、移動体1の動作全般を制御する。演算部110は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)の協働により、移動体1のデータ処理及び動作制御を行ってもよい。CPUは、各種プログラムに従って演算及び制御を行う演算処理装置である。ROMは、CPUが使用するプログラム及び演算パラメータ等を記憶する。RAMは、CPUの実行において使用するプログラム、及びプログラムの実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する。
【0041】
具体的には、演算部110は、駆動制御部111、通信処理部113、映像エンコード部114、及びバッテリー監視部115を含む。
【0042】
駆動制御部111は、情報処理装置20から受信した移動指令を実行するように移動機構11を駆動させる。具体的には、駆動制御部111は、エンコーダ部13にて計測された移動機構11の駆動状況に関する情報に基づいて、移動指令が指示する移動方向及び移動速度となるように移動機構11を駆動させてもよい。
【0043】
映像エンコード部114は、撮像装置12から取得した移動体1の周囲環境の撮像画像を圧縮処理する。圧縮処理された撮像画像は、ネットワーク40を介して、情報処理装置20に送信される。映像エンコード部114は、圧縮処理によって撮像画像のデータ量を削減することができるため、撮像画像の送信時の通信遅延を低減することができる。
【0044】
バッテリー監視部115は、電源部150の状態を監視する。具体的には、バッテリー監視部115は、電源部150から電源部150に含まれるバッテリーに関する情報を取得することで、電源部150の状態を監視する。例えば、バッテリー監視部115は、電源部150に含まれるバッテリーの残量、又はエラー通知に関する情報などを電源部150から取得してもよい。
【0045】
通信処理部113は、移動体1と情報処理装置20との間の通信を制御する。具体的には、通信処理部113は、移動体1の周囲環境の圧縮画像、移動体1の移動状態を示す情報、及び電源部150に含まれるバッテリーの残量に関する情報などを情報処理装置20に送信してもよい。また、通信処理部113は、移動体1の移動を指示する移動指令を情報処理装置20から受信してもよい。
【0046】
(情報処理装置20)
情報処理装置20は、演算部210と、入出力部220と、通信部230と、記憶部240とを備える。
【0047】
入出力部220は、表示装置21及び操縦装置30と、演算部210との間での各種データの入出力を行う接続インタフェースである。入出力部120は、例えば、USBポート、IEEE1394ポート、又はSCSIポートなどであってもよく、RS-232Cポート、光オーディオ端子、又はHDMI(登録商標)ポートなどであってもよい。
【0048】
通信部230は、ネットワーク40に接続するための通信デバイスなどで構成された通信インタフェースである。通信部230は、例えば、無線LAN、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、又はWUSB用の通信カードなどであってもよい。
【0049】
記憶部240は、情報処理装置20のデータ格納用の機器である。記憶部240は、例えば、記憶媒体、記憶媒体にデータを記録する記録装置、記憶媒体からデータを読み出す読出装置、及び記憶媒体に記録されたデータを削除する削除装置等を含んでもよい。記憶部240は、複数の拠点のマップデータを記憶してもよく、移動体1に実行させた移動指令のログを記憶してもよい。なお、記憶部240に記憶された特定の拠点のマップデータは、移動体1が存在する拠点に応じて移動体1に送信されてもよい。
【0050】
演算部210は、情報処理装置20におけるデータ処理全般を行うと共に、情報処理装置20の動作全般を制御する。演算部210は、CPU、ROM、及びRAMの協働により、情報処理装置20のデータ処理及び動作制御を行ってもよい。CPUは、各種プログラムに従って演算及び制御を行う演算処理装置である。ROMは、CPUが使用するプログラム及び演算パラメータ等を記憶する。RAMは、CPUの実行において使用するプログラム、及びプログラムの実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する。
【0051】
具体的には、演算部210は、指令値制御部211、反力制御部212、通信処理部213、及び映像デコード部214を含む。
【0052】
指令値制御部211は、オペレータによる操縦装置30への操作入力に基づいて、移動体1への移動指令を生成する。具体的には、指令値制御部211は、操縦装置30のハンドル31が操縦起点から移動した方向及び量に基づいて、移動体1への移動指令を生成してもよい。
【0053】
指令値制御部211が生成する移動指令には、移動体1の移動方向を指示する方向指令、及び移動体1の移動速度を指示する速度指令が含まれる。したがって、指令値制御部211は、ハンドル31が操縦起点から移動した量に比例した速さの移動速度になるように移動体1に指示する速度指令を生成してもよい。また、指令値制御部211は、移動体1の正面を前方として、ハンドル31が操縦起点から移動した方向と同じ方向に進むように移動体1に指示する方向指令を生成してもよい。
【0054】
なお、操縦装置30のハンドル31の操縦起点は、操縦装置30の図示しないボタン又はレバーの押下によって決定されてもよい。オペレータは、移動体1の遠隔制御を行う前に、前述のボタン又はレバーを押し下げることでハンドル31の操縦起点を決定することができる。
【0055】
反力制御部212は、操縦装置30のハンドル31に生じる反力を制御する。具体的には、操縦装置30のハンドル31が操縦起点から移動された場合、反力制御部212は、ハンドル31の操縦起点からの移動量に応じた反力(例えば、最大で数N程度)を操作入力に対して生じさせてもよい。これにより、反力制御部212は、オペレータからの操作入力が終了した際に、ばね要素によってハンドル31の位置を操縦起点に押し戻すことができる。また、反力制御部212は、オペレータがハンドル31を操縦起点から急激に大きく移動させてしまうことを防止することができる。
【0056】
本実施形態に係る情報処理装置20では、反力制御部212は、さらに、速度指令が指示する移動速度と、移動体1の実際の移動速度との差に基づいて、操作入力に対してハンドル31に生じる反力を制御する。具体的には、反力制御部212は、速度指令が指示する移動速度と、移動体1の実際の移動速度との差が大きいほど、操作入力に対してハンドル31により大きな反力を生じさせてもよい。
【0057】
速度指令が指示する移動速度と、移動体1の実際の移動速度との差が大きいということは、ネットワーク40の通信遅延によるタイムラグに起因して、オペレータが指示する移動速度と、移動体1の実際の移動速度とが乖離していることを意味する。このような場合、反力制御部212は、オペレータによる操縦装置30への操作入力を抑制するために、操作入力に対してハンドル31により大きな反力を生じさせる。これによれば、オペレータによる操縦装置30への操作入力が自然と小さくなるため、反力制御部212は、オペレータが意図せず移動体1を過操作してしまうことを抑制することができる。したがって、本実施形態に係る情報処理装置20は、通信遅延による移動体1の過操作を抑制することで、移動体1の操縦性の低下を抑制することができる。
【0058】
映像デコード部214は、移動体1から受信した移動体1の周囲環境の圧縮画像を解凍すると共に、解凍された移動体1の周囲環境の撮像画像を画像処理することで、表示装置21に表示される画像を生成する。具体的には、映像デコード部214は、移動体1の周囲環境の撮像画像を画像処理することで、移動体1を上空から俯瞰する俯瞰画像を生成してもよい。また、映像デコード部214は、オペレータからの入力に基づいて、生成した俯瞰画像の視線方向を任意の方向に変更してもよい。
【0059】
通信処理部213は、情報処理装置20と移動体1との間の通信を制御する。具体的には、通信処理部213は、移動体1の移動を指示する移動指令を移動体1に送信してもよい。また、通信処理部213は、撮像装置12の撮像画像、移動体1の移動状態を示す情報、及び電源部150に含まれるバッテリーの残量に関する情報などを移動体1から受信してもよい。
【0060】
以上の構成によれば、本実施形態に係る情報処理装置20は、操縦装置30への操作入力に対する反力を制御することで、通信遅延による移動体1の過操作を抑制することができる。したがって、本実施形態に係る情報処理装置20は、通信遅延による移動体1の操縦性の低下を抑制することができる。
【0061】
<3.情報処理装置の動作>
次に、
図6を参照して、情報処理装置20の具体的な動作の流れについて説明する。
図6は、情報処理装置20の指令値制御部211及び反力制御部212が実行する処理を示すブロック図である。
【0062】
本実施形態に係る遠隔制御システムでは、オペレータは、まず、操縦装置30の図示しないボタン又はレバーを押し下げることで、ハンドル31の操縦起点を決定する。これにより、オペレータは、把持した操縦装置30のハンドル31を操縦起点から前後方向に移動させることで、移動体1を前後に移動させることができる。また、オペレータは、ハンドル31を操縦起点から左右方向に移動させることで、移動体1を左右に旋回運動又は並進移動させることができる。
【0063】
具体的には、
図6に示すように、指令値制御部211は、オペレータからの操作入力f
hに対して、ハンドル31の順運動学モデルH
1を用いて、ハンドル31の移動量及び移動方向を導出する。次に、指令値制御部211は、ハンドル31の移動量及び移動方向から移動体1の移動方向及び移動速度の指令値への変換係数C
1を用いて、ハンドル31の移動量及び移動方向をオペレータが指示する移動体1の移動方向及び移動速度の指令値V
refに変換する。このとき、反力制御部212は、ハンドル31の操縦起点からの移動量θ
1と、ハンドル31のばね反力係数S
pとを用いて、ハンドル31に加えられた操作入力f
hにフィードバックする反力f
fを制御する。操作入力f
hに対するフィードバックである反力f
fは、ハンドル31に対して操作入力f
hに対するばね要素として作用する。
【0064】
続いて、オペレータが指示する移動体1の移動方向及び移動速度の指令値Vrefは、T1秒の通信遅延を生じさせるネットワーク40を介して移動体1に送信される。移動体1は、受信した移動方向及び移動速度の指令値Vrefに基づいて、移動機構11の駆動を制御する。ここで、移動体1は、移動機構11の位置及び姿勢に関するオドメトリ情報Odommsg、移動体1の実際の移動速度Vmsg、及び撮像装置12の撮像画像などを情報処理装置20に送信してもよい。
【0065】
また、移動体1の実際の移動速度Vmsgは、T2秒の通信遅延を生じさせるネットワーク40を介して情報処理装置20の反力制御部212にフィードバックされる。反力制御部212は、オペレータが指示する移動体1の移動速度の指令値Vrefと、移動体1の実際の移動速度Vmsgとの差分(Vref-exp(-T1-T2)s*Vmsg)を導出する。なお、exp(-T1-T2)sは、ラプラス演算子sを用いて表したT1+T2秒の通信遅延による無駄時間要素である。続いて、反力制御部212は、導出した差分に対して、フィードバック係数C2を作用させることで、通信遅延に起因する反力fmを決定する。通信遅延に起因する反力fmは、ハンドル31のアクチュエータモデルAhapに基づいてハンドル31に加えられる。
【0066】
これにより、操縦装置30のハンドル31には、オペレータによる操作入力fhと、操作入力fhに対するフィードバックである反力ffと、通信遅延に起因する反力fmとが作用することになる。したがって、情報処理装置20は、オペレータによる操作入力fhに対して、通信遅延に起因する実際の移動速度と、指示される移動速度との差に応じた反力fmを作用させることができる。
【0067】
なお、上記の通信遅延に起因する実速度と指示速度との差に応じた反力をハンドル31に作用させる機能は、オペレータによってオンオフが制御されてもよい。また、フィードバック係数C2は、オペレータによって任意に値が制御されてもよい。
【0068】
<4.作用効果>
続いて、
図7及び
図8を参照して、本実施形態に係る情報処理装置20の作用効果について説明する。
図7は、通信遅延に起因する反力を考慮した場合の移動体1の前進移動量を示すグラフ図である。
図8は、通信遅延に起因する反力を考慮しない場合の移動体1の前進移動量を示すグラフ図である。
【0069】
本実施形態に係る情報処理装置20は、オペレータによる操作入力によって指示された移動速度と、移動体1の実際の移動速度との差分を短い周期(例えば、1m秒)で演算することができる。したがって、情報処理装置20は、オペレータによる操作入力が加えられた操縦装置30のハンドル31に対して、ハンドル31を操縦起点に押し戻す反力を短い周期で制御して加えることにより、操作入力を通信遅延の大小に応じて抑制することができる。
【0070】
オペレータの操作入力fhは、例えば、開始時点から0.5秒後に0.5秒間で0.2m/sまで加速し、1秒間速度を維持した後、0.5秒間で減速して停止する台形波形のパターンとする。したがって、操作入力どおりに移動体1が移動した場合、移動体1は、台形波形の面積相当の0.3m移動することとなる。
【0071】
例えば、
図7に示すように、通信遅延に起因する反力を生じさせる場合、前進方向へのオペレータの操作入力f
h(最大値2N)の台形波形に対して、通信遅延による遅れ時間が大きいほど、移動体1の前進移動量及び移動速度が抑制される。一方で、
図8に示すように、通信遅延に起因する反力を生じさせない場合、前進方向へのオペレータの操作入力f
h(最大値2N)の台形波形に対して、通信遅延による遅れ時間の大小に関わらず、移動体1の前進移動量は同じとなる。
【0072】
したがって、オペレータが表示装置21にて移動体1の移動位置を確認しながら移動体1を遠隔制御した場合、移動体1は、遅れ時間が大きいほど目標の移動位置に対して移動し過ぎることになる。本実施形態に係る情報処理装置20は、通信遅延に起因する反力によって移動体1の前進移動量及び移動速度を抑制することができるため、目標の移動位置からの移動体1の移動し過ぎを抑制することができる。
【0073】
また、情報処理装置20は、通信遅延が大きく、移動体1の実際の移動速度と、オペレータが操作入力によって指示される移動速度との差が大きいほど、移動体1の前進移動量及び移動速度を抑制することができる。これによれば、情報処理装置20は、オペレータが操作入力によって指示される移動速度と、移動体1の実際の移動速度とのギャップを解消させるように操縦装置30のハンドル31に加えられる反力を制御することができる。よって、情報処理装置20は、通信遅延による移動体1の操縦性の低下を抑制することができる。
【0074】
<5.変形例>
さらに、
図9を参照して、本実施形態に係る情報処理装置20の変形例について説明する。
図9は、変形例に係る情報処理装置20の指令値制御部211及び反力制御部212が実行する処理を示すブロック図である。
【0075】
図9に示すように、情報処理装置20の変形例では、反力制御部212は、オペレータが指示する移動体1の移動速度の指令値V
refと、移動体1の実際の移動速度V
msgとの差分(V
ref-exp(-T
1-T
2)s*V
msg)にフィードバック係数C
2を作用させた後、さらに飽和要素Lmを作用させる。
【0076】
飽和要素Lmは、操縦装置30のハンドル31に加えられる反力fmの大きさに上限を設定するために設けられる。具体的には、飽和要素Lmは、反力fmの絶対値が所定値よりも大きい場合、反力fmの絶対値を所定値に制限する。
【0077】
なお、飽和要素Lmが設定する反力fmの上限は、移動体1の移動方向によって変更されてもよい。例えば、飽和要素Lmが設定する反力fmの上限は、移動体1の進行方向のほうが他の方向よりも低く設定されてもよい。また、飽和要素Lmが設定する反力fmの上限は、移動体1の移動方向に関わらず同じであってもよい。
【0078】
情報処理装置20の変形例では、操縦装置30のハンドル31に加えられる反力の大きさが制限されるため、遠隔制御される移動体1の移動速度の低減量が抑制される。したがって、情報処理装置20の変形例では、移動体1の移動速度が低速になり過ぎることを回避することができるため、移動体1による移動の効率を維持することが可能である。
【0079】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0080】
また、本明細書において説明した情報処理装置による一連の処理は、ソフトウェア、ハードウェア、及びソフトウェアとハードウェアとの組み合せのいずれを用いて実現されてもよい。ソフトウェアを構成するプログラムは、例えば、各装置の内部又は外部に設けられる記憶媒体(非一時的な媒体:non-transitory media)に予め格納される。そして、各プログラムは、例えば、コンピュータによる実行時にRAMに読み込まれ、CPUなどのプロセッサにより実行される。上記記憶媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等である。また、上記のコンピュータプログラムは、記憶媒体を用いずに、例えば、ネットワークを介して配信されてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 移動体
11 移動機構
12 撮像装置
13 エンコーダ部
20 情報処理装置
21 表示装置
30 操縦装置
31 ハンドル
40 ネットワーク
110 演算部
111 駆動制御部
113 通信処理部
114 映像エンコード部
115 バッテリー監視部
120 入出力部
130 通信部
140 記憶部
150 電源部
210 演算部
211 指令値制御部
212 反力制御部
213 通信処理部
214 映像デコード部
220 入出力部
230 通信部
240 記憶部