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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034782
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/04 20060101AFI20240306BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20240306BHJP
   E05B 81/20 20140101ALI20240306BHJP
【FI】
B60J5/04 H
B60J5/00 N
E05B81/20 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139256
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】萩山 丈士
(72)【発明者】
【氏名】越智 孝司
(72)【発明者】
【氏名】梶原 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】河本 創
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH06
2E250JJ39
2E250LL03
2E250VV02
(57)【要約】
【課題】情報を効率よく表示して視認し易くした作業車両を提供する。
【解決手段】キャビン16に運転者が出入りするときに開閉する開閉ドア26を備え、開閉ドア26は略全面を透過性に構成し、開閉ドア26が半ドア状態を検知すると、全閉状態に移行させる電動のドアクローザ装置31を備え、開閉ドア26に運転者が把持するドアフレーム36を設け、ドアフレーム36は操縦席7側方のフェンダ25近傍からドアクローザ装置31近傍に亘って設けられ、ドアフレーム36にドアクローザ装置31へ電気を供給する電線33を配策した。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビン(16)に運転者が出入りするときに開閉する開閉ドア(26)を備え、開閉ドア(26)は略全面を透過性に構成し、開閉ドア(26)が半ドア状態を検知すると、全閉状態に移行させる電動のドアクローザ装置(31)を備え、開閉ドア(26)に運転者が把持するドアフレーム(36)を設け、ドアフレーム(36)は操縦席(7)側方のフェンダ(25)近傍からドアクローザ装置(31)近傍に亘って設けられ、ドアフレーム(36)にドアクローザ装置(31)へ電気を供給する電線(33)を配策したことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
フェンダ(25)からドアフレーム(36)まで開閉ドア(26)のヒンジ(27)部を経由して電線(33)を配策した請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
走行車体前部に設けた電源からキャビン(16)内に配策された電線(33)は、キャビン(16)内においてフロア(17)面を這わせて操縦席(7)側方のフェンダ(25)に配策した請求項1又は請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
キャビン(16)に運転者が出入りするときに開閉する開閉ドア(26)を備え、開閉ドア(26)は略全面を透過性に構成し、開閉ドア(26)が半ドア状態を検知すると、全閉状態に移行させる電動のドアクローザ装置(31)を備え、ドアクローザ装置(31)に蓄電器(40)を設け、開閉ドア(26)が閉まっているときに走行車体に設けられた電源から蓄電器(40)に給電する構成としたことを特徴とする作業車両。
【請求項5】
キャビン(16)に前部支柱(18)を備え、開閉ドア(26)が閉まっている状態におけるドアクローザ装置(31)近傍まで前部支柱(18)に沿って電線(42)を配策するようにした請求項4に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農用トラクタなどの作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
ドアが完全に締まり切っていない状態、いわゆる半ドア状態を検出するとモータ駆動によりドアを完全にロックする車両用ドアクローザ装置が公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-235706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般車両の場合はモータに電気を供給する配線をドア内部に配策することができるが、走行車体に作業機を装着して圃場内を作業するトラクタ等の作業車両においては、作業時に周辺の様子をよく確認できるようにドア全体が透明なガラスで構成されていることが多い。そのため、ドア内部に配線を通すと見栄えを悪くし、これを解消することが困難であった。
【0005】
本発明は、ガラス張りのドアにドアクローザ装置を設けることが可能な作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、キャビン16に運転者が出入りするときに開閉する開閉ドア26を備え、開閉ドア26は略全面を透過性に構成し、開閉ドア26が半ドア状態を検知すると、全閉状態に移行させる電動のドアクローザ装置31を備え、開閉ドア26に運転者が把持するドアフレーム36を設け、ドアフレーム36は操縦席7側方のフェンダ25近傍からドアクローザ装置31近傍に亘って設けられ、ドアフレーム36にドアクローザ装置31へ電気を供給する電線33を配策した。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、フェンダ25からドアフレーム36まで開閉ドア26のヒンジ27部を経由して電線33を配策する。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、走行車体前部に設けた電源からキャビン16内に配策された電線33は、キャビン16内においてフロア17面を這わせて操縦席7側方のフェンダ25に配策した構成とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、キャビン16に運転者が出入りするときに開閉する開閉ドア26を備え、開閉ドア26は略全面を透過性に構成し、開閉ドア26が半ドア状態を検知すると、全閉状態に移行させる電動のドアクローザ装置31を備え、ドアクローザ装置31に蓄電器40を設け、開閉ドア26が閉まっているときに走行車体に設けられた電源から蓄電器40に給電する構成とした。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、キャビン16に前部支柱18を備え、開閉ドア26が閉まっている状態におけるドアクローザ装置31近傍まで前部支柱18に沿って電線42を配策するようにした。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、ドアフレーム36にドアクローザ装置31に電気を供給する電線33を配策したから、略全面に透過性を有する開閉ドア26に設けられたドアクローザ装置31に電気を供給する電線33を、外観を損なうことなく配策できる。
【0012】
請求項2に記載の発明によると、請求項1に記載の効果に加え、フェンダ25からドアフレーム36まではヒンジ27部を経由して電線が配策されるようになっているから、外観を損なうことなく電線33を配策できる。
【0013】
請求項3に記載の発明によると、請求項1又は請求項2に記載の効果に加え、走行車体前部に設けた電源からキャビン16内に配策された電線33は、キャビン16内においてフロア17面を這わせて操縦席7側方のフェンダ25に配策した構成であるから、走行車体前部に設けられた電源からドアクローザ装置31に至るまで外観を損なうことなく電線を配策できる。
【0014】
請求項4に記載の発明によると、ドアクローザ装置31内に蓄電器40を設け、開閉ドア26が閉まっているときに走行車体に設けられた電源から蓄電器40に給電する構成としたから、略全面に透過性を有する開閉ドア26に設けられたドアクローザ装置31に電気を供給する電線42について、外観を損なうことなく配策できる。開閉ドア26が閉まっているときにドアクローザ装置31の蓄電器40に給電することにより、ドア閉時にドアクローザ装置31に電線33がつながっていなくても作動させることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明によると、請求項4に記載の効果に加え、キャビン16に前部支柱18を備え、開閉ドア26が閉まっている状態におけるドアクローザ装置31近傍まで前部支柱18に沿って電線42を配策するようにしたから、略全面に透過性を有する開閉ドア26に設けられたドアクローザ装置31に電気を供給する電線42について、外観を損なうことなく配策できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態にかかる農用トラクタの側面図である。
図2】同トラクタのキャビン内部の概要側面図である。
図3】同キャビン内一部の斜視図である。
図4】(A)同トラクタのアウタードアノブ及びその周辺構造の斜視図、(B)インナードアノブ及びその周辺構造の斜視図である。
図5】同トラクタのキャビン内ダッシュボード及びフロア一部の斜視図である。
図6】(A)同トラクタのドアフレーム支持構成を示す斜視図、(B)その一部分解した斜視図である。
図7】本発明の実施形態にかかる農用トラクタの別例のキャビン内部の斜視図である。
図8】同別例のキャビン内部の概要側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図1は、トラクタを示すものであり、この走行車体1前部のボンネット2内部にディーゼルエンジンEを搭載し、このエンジンEの回転動力をミッションケース3内の変速装置に伝え、この変速装置で減速された回転動力を前輪4及び後輪5に伝えるようにしている。エンジンEの後方に前輪4を操舵するステアリングハンドル6が装備され、更に、その後方には運転席7が設置されている。ミッションケース3の後上部には油圧シリンダケース8を備え、このシリンダケース8の左右両側には、油圧昇降機構の一部を構成するリフトアーム9が回動自在に取り付けられている。リフトアーム9は昇降用油圧シリンダ10の伸縮作動により上下動する。車体後部には、トップリンク11と左右のロアーリンク12からなる3点リンク機構を設け、同リンク機構にロータリ作業機Rを装着し、リフトロッド13を介してロアーリンク12をリフトアーム9に連結することにより、作業機Rを昇降可能に構成している。
【0019】
前記ハンドル6や運転席7等は、キャビン16によって覆われている。キャビン16は、例えば防振ゴム等の弾性部材を介して車体に固定されてあり、車体の振動がキャビン16に伝達されにくくしている。
【0020】
尚キャビン16は、フロア17と、フロア17左右前部に立設した前部支柱18と、運転席7の後部左右に立設した後部支柱19と、前後中間部に立設する中間支柱20と、これら支柱上端同士を接続する上フレーム21とによって一体化した枠組み構成とし、ルーフ22で覆われている。そして、前記運転席7を支持するボックス状のシートフレーム23、運転席7後面を囲う後部プレート24、後輪5の上部を覆う左右フェンダ25等を剛体化して強度を確保し、さらに、前後側面にはガラス窓部を構成し、左右開閉ドア26部から昇降できる。
【0021】
開閉ドア26は、ガラスドア形態で透過性を備え、上辺と下辺を有し前側は前部支柱18に沿い後部下方はフェンダ25に後部上方は中間支柱20に沿う形状とした強化ガラス26Gの周囲にシール材26Sを嵌合構成してなる。開閉ドア26の後部と前記中間支柱20との間には、上下2か所にヒンジ27を構成する。上下軸芯のヒンジ部27aとしたヒンジ27は中間支柱20及び開閉ドア26各外側から固定しており、開閉ドア26は外方に向けて回動でき、キャビン16の左右を開放できる。
【0022】
開閉ドア26の前部下方の外側には、アウタードアノブ28を有する。また、対向する開閉ドア26の内側にはインナードアノブ29を設けている。そしてインナードアノブ29を支持する開閉ドア26の内側にロック機構30を設けてなる。したがって、開閉ドア26の外側からアウタードアノブ28を引くとロック解除され、開閉ドア26はヒンジ27部中心に前方が開いてキャビン16側方が開放できる。作業者は操縦席7に搭乗して開閉ドア26を閉めてロック機構30の係合作用で開閉ドア26を閉鎖状態でロックする。なお、内側の作業者はインナードアノブ29の操作でロック機構30を解除して開閉ドア26を開くことができる。
【0023】
開閉ドア26のロック機構30には、所謂半ドアの非完全ロック状態を検知して開閉ドア全閉の完全ロック状態に作動する電動ドアクローザ装置31を備えている。このドアクローザ装置31には非完全ロック状態を検知する検知手段(図示省略)や非完全ロック検知によってドアを完全ロック状態に作動する電動モータ(図示省略)を備えている。
【0024】
次に、ドアクローザ装置31への電気用配線、すなわち電動モータ31bへの電源供給用配線や検知手段31aの各種信号授受用配線、について説明する。なお、配線の種類としてはワイヤー、ケーブル、ハーネス等機器や用途によって区別して利用されるが、以下電線33と総称する。前記ステアリングハンドル6を支持し上面には操作パネル(図示せず)を備えたダッシュボード35の一側に沿って配策された電線33は、フロア17を経てフェンダ25上面に沿わせている(図5)。フェンダ25上面において、中間支柱20の内面近傍を配策した後、開閉ドア26の内側に設けるドアフレーム36内を通過し、ドアクローザ装置31へと配策する構成である。
【0025】
前記ドアフレーム36は、開閉ドア16の内側に前後に渡って固定保持されるもので、強化ガラス16G内面とは適宜離れて設けられていてキャビン16内の作業者が把持して開閉ドア26の開閉動作を行うことができる。ドアフレーム36の後端側は、前記ヒンジ27のうち下方側のヒンジ27に対応して共締めで固定するブラケット部材36aに適宜連結され、ドアフレーム36の前端側は、強化ガラス16Gに形成する取付穴36bに適宜に固定される構成であるが、その位置は前記ロック機構30及びドアクローザ装置31を収容するケース部材37の近傍としている。具体的には、ドアフレーム36は、後半部は略水平姿勢を呈しその前後中間部から前方はケース部材37方向に斜めに屈曲して接近し、さらに上方に屈曲してケース部材37の上方に離れた取付穴36bに至る形状としている(図2図3)。
【0026】
前記ドアフレーム36内に電線33を通し、この電線33はケース部材37に最接近する箇所からドアフレーム36外に出てケース部材37内ドアクローザ装置31の検知手段31aや電動モータ31bに通じてことができる。
【0027】
前記したように、ドアフレーム36は操縦席7側方のフェンダ25近傍からドアクローザ装置31近傍に亘って設けられ、ドアフレーム36にドアクローザ装置31に電気を供給する電線33を配策したから、略全面に透過性を有する開閉ドア26に設けられたドアクローザ装置31に電気を供給する電線33を、外観を損なうことなく配策できる。
【0028】
ここで、前記電線33が、フェンダ25からドアフレーム36に至る構成について詳細に説明する。フェンダ25(図例では左側)上面に形成したカップホルダ38の外側面に余裕空間を形成し、この余裕空間に電線33を適宜の弛みを持たせて配置する。開閉ドア26の開閉に伴いドアフレーム36の特に基端部が接近又は離反に対応するために、電線33途中部に余裕を持たせるためである。そして、開閉ドア26のヒンジ27部に至る電線は、電線保護カバー39に覆われてドアフレーム36に入り込む構成である。なお、電線略カバー39の固定は前記ブラケット部材36a同様にヒンジ27に対応して共締めされている(図6)。
【0029】
上記のように、フェンダ25からドアフレーム36まではヒンジ27部を経由して電線が配策されるようになっているから、外観を損なうことなく電線33を配策でき、開閉ドア26の開閉による電線33の影響を最小限にして配策できる。
【0030】
前記のように、走行車体前部に設けた電源からキャビン16内に配策された電線33は、キャビン16内においてフロア17面を這わせて操縦席7側方のフェンダ25に配策した構成であるから、走行車体前部に設けられた電源からドアクローザ装置31に至るまで外観を損なうことなく電線を配策できる。
【0031】
次いで、図7図8に基づきドアクローザ装置31の改良構成について説明する。ドアクローザ装置31の電動モータを作動する蓄電池40を内装し、この蓄電池40に充電する充電器41をケース部材37の近傍に配置するものである。そして、充電器用電線42はキャビンルーフ22から前部支柱18に沿って配策する構成としている。なお、キャビンルーフ22内には適宜電源からの電線を要するものとする。さらに、この充電器41による電池40充電のタイミングは、エンジンE駆動中でかつ開閉ドア26は閉じのときとする。
【0032】
このように、ドアクローザ装置31内に蓄電器40を設け、開閉ドア26が閉まっているときに走行車体に設けられた電源から蓄電器40に給電する構成としたから、略全面に透過性を有する開閉ドア26に設けられたドアクローザ装置31に電気を供給する電線42について、外観を損なうことなく配策できる。開閉ドア26が閉まっているときにドアクローザ装置31の蓄電器40に給電することにより、ドア閉時にドアクローザ装置31に電線33がつながっていなくても作動させることができる。
【0033】
また、キャビン16に前部支柱18を備え、開閉ドア26が閉まっている状態におけるドアクローザ装置31近傍まで前部支柱18に沿って電線42を配策するようにしたから、略全面に透過性を有する開閉ドア26に設けられたドアクローザ装置31に電気を供給する電線42について、外観を損なうことなく配策できる。
【符号の説明】
【0034】
7操縦席
16キャビン
17フロア
25フェンダ
26開閉ドア
27ヒンジ
31ドアクローザ装置
33電線
40蓄電器
42電線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8