IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034785
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】接着剤組成物及びフィルム状封止材
(51)【国際特許分類】
   C09J 163/00 20060101AFI20240306BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240306BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20240306BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
C09J163/00
C09J11/06
C09J7/35
C09K3/10 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139263
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】楠木 貴行
(72)【発明者】
【氏名】安藤 雅郎
(72)【発明者】
【氏名】市六 信広
(72)【発明者】
【氏名】中川 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】若宮 淳志
(72)【発明者】
【氏名】松重 優子
【テーマコード(参考)】
4H017
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4H017AA04
4H017AB08
4H017AC03
4H017AC19
4H017AD06
4H017AE05
4J004AA13
4J004AB05
4J004FA04
4J040EC311
4J040JB02
4J040JB08
4J040KA13
4J040KA23
4J040NA19
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低粘度、低温硬化、高接着性かつ封止前後でペロブスカイト型の太陽電池の発電性能を維持する高信頼性エポキシ樹脂系接着剤組成物やフィルム状封止材を提供する。
【解決手段】(A)2官能型エポキシ樹脂、3官能以上のエポキシ樹脂、及び飽和型酸無水物、の反応生成物、(B)UV感応性反応開始剤、及び(C)希釈溶剤を含有する接着剤組成物であって、前記(A)成分は、前記2官能型エポキシ樹脂と3官能以上のエポキシ樹脂のエポキシ基の合計モル数の前記飽和型酸無水物のモル数に対する比率が1.30~3.00となり、前記2官能型エポキシ樹脂のモル数が2官能型エポキシ樹脂と3官能以上のエポキシ樹脂の合計モル数に対して0.001~0.15となることを特徴とする接着剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(2)で示される2官能型エポキシ樹脂、下記一般式(3)で示される3官能以上のエポキシ樹脂、及び下記一般式(4)で示される飽和型酸無水物、の反応生成物、(B)UV感応性反応開始剤、及び(C)希釈溶剤を含有する接着剤組成物であって、
前記(A)成分は、下記一般式(1)で表される化合物であり、
【化1】
(式中、Aは飽和型2価の炭化水素基である。Bはそれぞれ独立に一般式(1a)又は一般式(1b)で表される基である。Rは置換又は非置換の2価の有機基であって、脂肪族炭化水素基、芳香族環、又は複素環を含む。Rは置換又は非置換の3価以上の有機基であって、脂肪族炭化水素基、芳香族環、又は複素環を含む。Zは単結合又は酸素原子である。kは2以上の整数である。*は結合手である。繰り返し単位lと繰り返し単位mの順序は式中において任意である。)
【化2】
(式中、R、Zは上記と同じである。)
【化3】
(式中、R、Z、kは上記と同じである。)
【化4】
(式中、Aは上記と同じである。)
前記2官能型エポキシ樹脂、3官能以上のエポキシ樹脂、飽和型酸無水物の量は、前記2官能型エポキシ樹脂と3官能以上のエポキシ樹脂のエポキシ基の合計モル数の前記飽和型酸無水物のモル数に対する比率が1.30~3.00となる量で、かつ、前記2官能型エポキシ樹脂のモル数が2官能型エポキシ樹脂のモル数と3官能以上のエポキシ樹脂の合計モル数に対して0.001~0.15となる量であることを特徴とする接着剤組成物。
【請求項2】
前記反応生成物が前記2官能型エポキシ樹脂、前記3官能以上のエポキシ樹脂、及び前記飽和型酸無水物、を重合したポリマーであって、該ポリマーの重量平均分子量が2000から20000であることを特徴とする請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記(A)成分として、更に前記一般式(1)で表される化合物に下記一般式(6)で表されるアルコキシシラン化合物またはその部分加水分解物を反応させてなる下記一般式(5)に示す反応生成物を含有するものであることを特徴とする請求項1に記載の接着剤組成物。
【化5】
【化6】
(式中、A、R、R、Z、k、*は上記と同じである。B’はそれぞれ独立に一般式(5a)又は一般式(5b)で表される基である。Z’は、それぞれ独立にR(ORSi-、又は一般式(6)のアルコキシシラン化合物の部分加水分解物に由来する基である。Rはビニル基、スチリル基、アクリル基、メタクリル基、アミノ基、メルカプト基、ウレイド基、イソシアネート基を含む1価の有機基であり、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基を含む1価の有機基である。)
【請求項4】
前記2官能型エポキシ樹脂は下記一般式(2’)で示されるBisA型エポキシ樹脂であり、前記3官能以上のエポキシ樹脂は下記一般式(3’)で示されるトリアジン環型3官能エポキシ樹脂であり、前記飽和型酸無水物は下記一般式(4’)で示される飽和炭化水素型酸無水物であることを特徴とする請求項1に記載の接着剤組成物。
【化7】
(式中、nは1以上の整数である。)
【化8】
【化9】
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の接着剤組成物の乾固物からなるフィルム状封止材。
【請求項6】
前記フィルム状封止材が更に残存溶剤を含み、前記残存溶剤がジメチルホルムアミド及び/又はジメチルスルホキシドであり、前記フィルム状封止材の質量当たりの残存量が5000ppm以下のものであることを特徴とする請求項5に記載のフィルム状封止材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物及びフィルム状封止材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の再生可能エネルギーの需要増加にともない透明な太陽電池が求められている。透明な太陽電池としてペロブスカイト型太陽電池が候補となるが、商用利用を考えた場合に単結晶やアモルファスシリコン型の太陽電池と異なり、ビルの壁面や窓に取り付けるために大面積に適用可能なフィルム型で透明な太陽電池が求められている。このような透明でフィルム型の太陽電池を実現するために低粘度、低温硬化、高接着性かつ封止前後での高信頼性接着剤求められている(特許文献1)。
【0003】
従来、エポキシ樹脂と飽和炭化水素型酸無水物の接着剤組成物は低粘度と、高透明性に優れるが、ペロブスカイト型太陽電池に適用可能な低温での硬化が困難であるために封止前後での発電性能維持能力に劣る。よって単純なエポキシ樹脂と飽和炭化水素型酸無水物の接着剤組成物は未硬化なため発電性能低下が著しく好適な太陽電池封止用の接着剤組成物やフィルム状封止材となりえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-89946号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、低粘度、低温硬化、高接着性かつ封止前後でペロブスカイト型の太陽電池の発電性能を維持する高信頼性エポキシ樹脂系接着剤組成物やフィルム状封止材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明では、(A)下記一般式(2)で示される2官能型エポキシ樹脂、下記一般式(3)で示される3官能以上のエポキシ樹脂、及び下記一般式(4)で示される飽和型酸無水物、の反応生成物、(B)UV感応性反応開始剤、及び(C)希釈溶剤を含有する接着剤組成物であって、
前記(A)成分は、下記一般式(1)で表される化合物であり、
【化1】
(式中、Aは飽和型2価の炭化水素基である。Bはそれぞれ独立に一般式(1a)又は一般式(1b)で表される基である。Rは置換又は非置換の2価の有機基であって、脂肪族炭化水素基、芳香族環、又は複素環を含む。Rは置換又は非置換の3価以上の有機基であって、脂肪族炭化水素基、芳香族環、又は複素環を含む。Zは単結合又は酸素原子である。kは2以上の整数である。*は結合手である。繰り返し単位lと繰り返し単位mの順序は式中において任意である。)
【化2】
(式中、R、Zは上記と同じである。)
【化3】
(式中、R、Z、kは上記と同じである。)
【化4】
(式中、Aは上記と同じである。)
前記2官能型エポキシ樹脂、3官能以上のエポキシ樹脂、飽和型酸無水物の量は、前記2官能型エポキシ樹脂と3官能以上のエポキシ樹脂のエポキシ基の合計モル数の前記飽和型酸無水物のモル数に対する比率が1.30~3.00となる量で、かつ、前記2官能型エポキシ樹脂のモル数が2官能型エポキシ樹脂のモル数と3官能以上のエポキシ樹脂の合計モル数に対して0.001~0.15となる量であることを特徴とする接着剤組成物を提供する。
【0007】
このような接着剤組成物であれば、低粘度、低温硬化、高接着性かつ封止前後でペロブスカイト型の太陽電池の発電性能を維持できる信頼性の高いエポキシ樹脂系接着剤組成物となる。
【0008】
この場合、前記反応生成物が前記2官能型エポキシ樹脂、前記3官能以上のエポキシ樹脂、及び前記飽和型酸無水物、を重合したポリマーであって、該ポリマーの重量平均分子量が2000から20000であることが好ましい。
【0009】
このような接着剤組成物であれば、上記本発明の効果がより好ましいものとなる。
【0010】
また、本発明では、前記(A)成分として、更に前記一般式(1)で表される化合物に下記一般式(6)で表されるアルコキシシラン化合物またはその部分加水分解物を反応させてなる下記一般式(5)に示す反応生成物を含有するものであることが好ましい。
【化5】
【化6】
(式中、A、R、R、Z、k、*は上記と同じである。B’はそれぞれ独立に一般式(5a)又は一般式(5b)で表される基である。Z’は、それぞれ独立にR(ORSi-、又は一般式(6)のアルコキシシラン化合物の部分加水分解物に由来する基である。Rはビニル基、スチリル基、アクリル基、メタクリル基、アミノ基、メルカプト基、ウレイド基、イソシアネート基を含む1価の有機基であり、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基を含む1価の有機基である。)
【0011】
このような接着剤組成物であれば、ガラス等の基材に対する高接着性を実現することができる。
【0012】
また本発明では、前記2官能型エポキシ樹脂は下記一般式(2’)で示されるBisA型エポキシ樹脂であり、前記3官能以上のエポキシ樹脂は下記一般式(3’)で示されるトリアジン環型3官能エポキシ樹脂であり、前記飽和型酸無水物は下記一般式(4’)で示される飽和炭化水素型酸無水物であることが好ましい。
【化7】
(式中、nは1以上の整数である。)
【化8】
【化9】
【0013】
このような接着剤組成物であれば、上記本発明の効果が更により好ましいものとなる。
【0014】
また本発明は、上記接着剤組成物の乾固物からなるフィルム状封止材を提供する。
【0015】
このようなフィルム状封止材であれば、封止前後でペロブスカイト型の太陽電池の発電性能を維持する良好な性能を与えることができる。
【0016】
前記フィルム状封止材は更に残存溶剤を含み、前記残存溶剤がジメチルホルムアミド及び/又はジメチルスルホキシドであり、前記フィルム状封止材の質量当たりの残存量が5000ppm以下のものであることが好ましい。
【0017】
残存溶剤としてジメチルホルムアミドやジメチルスルホキシドが接着剤層中に5000ppm以下含まれる場合であれば、J-V特性に特に悪い影響はない。
【発明の効果】
【0018】
本発明の接着剤組成物やフィルム状封止材は、接着性、密着性、透明性接着剤及び接着フィルム等に使用でき、塗料分野、電気分野、自動車分野、建築・建材分野等に幅広く使用することができる。それは従来の透明樹脂に比べて、特に低温硬化性に優れた特性を示す。この特性により従来の透明樹脂系では対応できなかったような低温硬化性と封止前後でペロブスカイト型の太陽電池の発電性能を維持するため、好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明者は、上記従来の欠点を解消すべく鋭意検討を行った結果、エポキシ樹脂と飽和炭化水素型酸無水物の反応形式だけではなく、例えば、トリアジン環含有3官能型エポキシ樹脂を含有し、BisA型エポキシ樹脂に対して所定量のトリアジン環含有3官能型エポキシ樹脂を含有して3次元型のポリマー構造を構築することにより高接着化を実現した。飽和炭化水素型酸無水物に対してエポキシ含量を過剰に配合して、オリゴマーを作製することによりフィルム状組成物化を実現した。また飽和炭化水素型酸無水物に対してエポキシ含量を過剰に配合し、かつ所定の範囲にすることにより低粘度のフィルム状組成物とした。またガラスに対する高接着性を実現するためアルコキシシラン部分加水分解物を配合し、上記により本発明のエポキシ樹脂接着剤組成物(フィルム状接着剤組成物)が、低粘度、高接着性、低温硬化かつ封止前後でペロブスカイト型の太陽電池の発電性能を維持する良好な性能を与える特性を有することを知見し、本発明をなすに至った。
【0020】
即ち、本発明は、(A)下記一般式(2)で示される2官能型エポキシ樹脂、下記一般式(3)で示される3官能以上のエポキシ樹脂、及び下記一般式(4)で示される飽和型酸無水物、の反応生成物、(B)UV感応性反応開始剤、及び(C)希釈溶剤を含有する接着剤組成物であって、
前記(A)成分は、下記一般式(1)で表される化合物であり、
【化10】
(式中、Aは飽和型2価の炭化水素基である。Bはそれぞれ独立に一般式(1a)又は一般式(1b)で表される基である。Rは置換又は非置換の2価の有機基であって、脂肪族炭化水素基、芳香族環、又は複素環を含む。Rは置換又は非置換の3価以上の有機基であって、脂肪族炭化水素基、芳香族環、又は複素環を含む。Zは単結合又は酸素原子である。kは2以上の整数である。*は結合手である。繰り返し単位lと繰り返し単位mの順序は式中において任意である。)
【化11】
(式中、R、Zは上記と同じである。)
【化12】
(式中、R、Z、kは上記と同じである。)
【化13】
(式中、Aは上記と同じである。)
前記2官能型エポキシ樹脂、3官能以上のエポキシ樹脂、飽和型酸無水物の量は、前記2官能型エポキシ樹脂と3官能以上のエポキシ樹脂のエポキシ基の合計モル数の前記飽和型酸無水物のモル数に対する比率が1.30~3.00となる量で、かつ、前記2官能型エポキシ樹脂のモル数が2官能型エポキシ樹脂のモル数と3官能以上のエポキシ樹脂の合計モル数に対して0.001~0.15となる量であることを特徴とする接着剤組成物である。
【0021】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0022】
本発明は、低粘度、低温硬化、高接着性かつ封止前後でペロブスカイト型の太陽電池の発電性能を維持する高信頼性エポキシ樹脂系接着剤組成物とフィルム状封止材に関するものである。
【0023】
本発明の接着剤組成物は、(A)特定の2官能型エポキシ樹脂、3官能以上のエポキシ樹脂、及び飽和型酸無水物、の反応生成物、(B)UV感応性反応開始剤、及び(C)希釈溶剤を含有するものであって、前記2官能型エポキシ樹脂、3官能以上のエポキシ樹脂、飽和型酸無水物の量は、前記2官能型エポキシ樹脂と3官能以上のエポキシ樹脂のエポキシ基の合計モル数の前記飽和型酸無水物のモル数に対する比率が1.30~3.00となる量で、かつ、前記2官能型エポキシ樹脂のモル数が2官能型エポキシ樹脂のモル数と3官能以上のエポキシ樹脂の合計モル数に対して0.001~0.15となる量であることを特徴とする。上記(A)~(C)成分以外に必要に応じて他の成分を含むこともできる。また、本発明の接着剤組成物は、フィルム状とすることもできる(フィルム状接着剤組成物)。
以下、本発明の接着剤組成物の構成成分について説明する。
【0024】
[(A)成分]
(A)成分は、下記一般式(2)で示される2官能型エポキシ樹脂、下記一般式(3)で示される3官能以上のエポキシ樹脂、及び下記一般式(4)で示される飽和型酸無水物、の反応生成物であって、下記一般式(1)で表される化合物である。
【化14】
【0025】
上記式中、Aは飽和型2価の炭化水素基である。Bはそれぞれ独立に一般式(1a)又は一般式(1b)で表される基である。Rは置換又は非置換の2価の有機基であって、脂肪族炭化水素基、芳香族環、又は複素環を含む。Rは置換又は非置換の3価以上の有機基であって、脂肪族炭化水素基、芳香族環、又は複素環を含む。Zは単結合又は酸素原子である。kは2以上の整数である。*は結合手である。繰り返し単位lと繰り返し単位mの順序は式中において任意である。
【0026】
【化15】
(式中、R、Zは上記と同じである。)
【化16】
(式中、R、Z、kは上記と同じである。)
【化17】
(式中、Aは上記と同じである。)
【0027】
このように、一般式(1)で示される化合物は、2官能型エポキシ樹脂、3官能以上のエポキシ樹脂、及び飽和型酸無水物(飽和炭化水素型酸無水物)の反応生成物であり、骨格中に2官能型エポキシのエポキシ残基、3官能以上のエポキシのエポキシ残基を有するものである。
【0028】
(A)成分の合成において、後述する特定の化合物(2官能型エポキシ樹脂、3官能以上のエポキシ樹脂、飽和型酸無水物)は、前記2官能型エポキシ樹脂と3官能以上のエポキシ樹脂のエポキシ基の合計モル数の前記飽和型酸無水物のモル数に対する比率が1.30~3.00となる量で、かつ、前記2官能型エポキシ樹脂のモル数が2官能型エポキシ樹脂のモル数と3官能以上のエポキシ樹脂の合計モル数に対して0.001~0.15となる量で反応させる。一般式(1)中のlとmは以上の条件を満たす数である。
【0029】
<2官能型エポキシ樹脂>
一般式(1)で示される化合物の合成反応に用いる2官能型エポキシ樹脂は、下記一般式(2)で示される。ここでRは置換又は非置換の2価の有機基であって、脂肪族炭化水素基、芳香族環、又は複素環を含む。Zは単結合又は酸素原子である。
【化18】
【0030】
本発明で前記2官能型エポキシ樹脂(一般式(2)成分)として用いられるエポキシ樹脂は、分子中に2個のエポキシ基を有する化合物である。特に、エポキシ当量が50~5000g/eqであることが好ましく、より好ましくは100~500g/eqである。
【0031】
該エポキシ樹脂は重量平均分子量が通常10000未満、好ましくは400~9000、より好ましくは500~8000である。
なお、重量平均分子量(Mw)はゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定される、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である(以下同じ)。
【0032】
このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、またはこれらのハロゲン化物のジグリシジルエーテル、並びに、これらの化合物の縮重合物(いわゆるビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等);ブタジエンジエポキシド、ビニルシクロヘキセンジオキシド等のジエンのエポキシド;レゾルシンのジグリシジルエーテル、1,4-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)ジフェニルエーテル、1,4-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)シクロヘキセン、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート等の、1,2-ジヒドロキシベンゼン、レゾルシノール等の2価フェノールまたは2価アルコールとエピクロルヒドリンとを縮合させて得られるエポキシグリシジルエーテル或いはポリグリシジルエステルなどが挙げられる。また、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等のノボラック型フェノール樹脂(或いはハロゲン化ノボラック型フェノール樹脂)とエピクロルヒドリンとを縮合させて得られるエポキシノボラック(即ち、ノボラック型エポキシ樹脂);過酸化法によりエポキシ化した、エポキシ化ポリオレフィン、エポキシ化ポリブタジエン;ナフタレン環含有エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;フェノールアラルキル型エポキシ樹脂;ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂;シクロペンタジエン型エポキシ樹脂などの2価型のエポキシ樹脂が挙げられる。
【0033】
これらの中でも一般式(2)成分として好ましいものは、室温で液状であるビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である。
【0034】
一般式(2)成分として市販品を用いることもできる。市販品としては、例えばBisA型エポキシ樹脂のJER-1001(三菱ケミカル(株)製)を挙げることができる。
【0035】
これらのエポキシ樹脂は1種単独でも2種以上の組み合わせとしても使用することができる。
【0036】
<3官能以上のエポキシ樹脂>
一般式(1)で示される化合物の合成反応に用いる3官能以上のエポキシ樹脂は、下記一般式(3)で示される。ここでRは置換又は非置換の3価以上の有機基であって、脂肪族炭化水素基、芳香族環、又は複素環を含む。Zは単結合又は酸素原子である。kは2以上の整数であって、2であることが好ましい。
【化19】
【0037】
3官能以上のエポキシ樹脂としては、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂、3官能以上の芳香族又は脂肪族エポキシ樹脂があげられる。複素環型エポキシ樹脂としては、例えば、トリアジン骨格のような複素環を有するエポキシ樹脂があげられる。3官能以上の芳香族エポキシ樹脂としては、多価フェノールのエポキシ樹脂が挙げられ、3官能以上の脂肪族エポキシ樹脂としては多価アルコールのエポキシ樹脂があげられる。
【0038】
(グリシジルアミン型エポキシ樹脂)
グリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンなどのジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルスルホンなどのジアミノジフェニルスルホン型エポキシ樹脂、例えば、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジル1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、ヒダントイン型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂が挙げられる。
その他のグリシジルアミン型エポキシ樹脂の具体例としては、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(製品名エポトートYH-434L、新日鉄住金化学株式会社)、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-1,3-ベンゼンジ(メタンアミン)(製品名TETRAD-X、三菱ガス化学株式会社)、4-(グリシジロキシ)-N,N-ジグリシジルアニリン、3-(グリシジロキシ)-N,N-ジグリシジルアニリン等があげられる。
【0039】
これらのエポキシ樹脂は1種単独でも2種以上の組み合わせとしても使用することができる。
【0040】
(複素環型エポキシ樹脂)
複素環型エポキシ樹脂としては、例えば、1,3,5-トリアジン核誘導体エポキシ樹脂などのトリアジン誘導体エポキシ樹脂が好ましいものとして挙げられる。特にイソシアヌレート環を有するエポキシ樹脂は、耐光性や電気絶縁性に優れており、1つのイソシアヌレート環に対して、2価のエポキシ基を有するものが好ましく、3価のエポキシ基を有するものがより好ましい。このような、複素環型エポキシ樹脂の具体例としては、トリグリシジルイソシアヌレート(製品名TEPIC-S、日産化学工業株式会社)等があげられる。
【0041】
(3官能以上の芳香族又は脂肪族エポキシ樹脂)
3官能以上の芳香族又は脂肪族エポキシ樹脂としては、一分子中に3個以上のエポキシ基を有するフェノールノボラック、クレゾールノボラック等のノボラック型フェノール樹脂(或いはハロゲン化ノボラック型フェノール樹脂)とエピクロルヒドリンとを縮合させて得られるエポキシノボラック(即ち、ノボラック型エポキシ樹脂);過酸化法によりエポキシ化した、エポキシ化ポリオレフィン、エポキシ化ポリブタジエン;ナフタレン環含有エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;フェノールアラルキル型エポキシ樹脂;ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂;シクロペンタジエン型エポキシ樹脂があげられる。
さらに、3官能以上の芳香族エポキシ樹脂の具体例としては、4官能ナフタレン型エポキシ樹脂(製品名エピクロンHP-4700、DIC株式会社)、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂(製品名1032H60、三菱化学株式会社)等をあげることができる。
【0042】
<飽和型酸無水物>
一般式(1)で示される化合物の合成反応に用いる飽和型酸無水物は、下記一般式(4)で示される。ここでAは飽和型2価の炭化水素基である。
【化20】
【0043】
エポキシ樹脂硬化剤である上記酸無水物は飽和型酸無水物であれば特に限定されない。飽和型酸無水物には、例えば、コハク酸無水物、メチルコハク酸、エチルコハク酸、2,2-ジメチルコハク酸、3-オキサビシクロ(3,1,0)ヘキサン-2,4-ジオン、テトラデシルコハク酸、ヘキサデシルコハク酸、2-オクタデシルコハク酸、ヘキサヒドロフタル酸、3-メチルヘキサヒドロフタル酸、4-メチルヘキサヒドロフタル酸、3-エチルヘキサヒドロフタル酸、4-エチルヘキサヒドロフタル酸等のヘキサヒドロフタル酸類、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ(2,2,2)オクタン-2,3-ジカルボキシアンハイドライド、ノルカンタリジン、カンタリジン等が挙げられる。
【0044】
上記飽和型酸無水物として市販品を用いることもできる。市販品としては、例えばリカシッドMH(新日本理化(株)製)が挙げられる。
【0045】
これらの飽和型酸無水物は1種単独でも2種以上の組み合わせとしても使用することができる。
【0046】
本発明において、一般式(1)で表される化合物((A)成分)は、一般式(2)で示される2官能型エポキシ樹脂、一般式(3)で示される3官能以上のエポキシ樹脂、及び一般式(4)で示される飽和型酸無水物、の反応生成物である。
そして、前記2官能型エポキシ樹脂、3官能以上のエポキシ樹脂、飽和型酸無水物の量は、前記2官能型エポキシ樹脂と3官能以上のエポキシ樹脂のエポキシ基の合計モル数(総エポキシ基のモル数)の前記飽和型酸無水物のモル数(酸無水物のモル数)に対する比率((総エポキシ基のモル数)/(酸無水物のモル数))が1.30~3.00となる量で、かつ、前記2官能型エポキシ樹脂のモル数が2官能型エポキシ樹脂のモル数と3官能以上のエポキシ樹脂の合計モル数に対して0.001~0.15となる量(2官能型エポキシ樹脂比率)であることが必要である。各成分の比率をこのような範囲内とすることにより、低粘度、低温硬化、高接着性かつ封止前後でペロブスカイト型の太陽電池の発電性能を維持する高信頼性エポキシ樹脂系接着剤組成物やフィルム状封止材を得ることができる。
一方、(総エポキシ基のモル数)/(酸無水物のモル数)が1.30未満では未反応硬化剤が硬化物中に残り、得られる硬化物の耐湿性を悪化させる場合やプレポリマー化しても室温で固形化が難しい場合があり、硬化後の接着強度が劣るうえ、発電性能が大きく低下する。また、(総エポキシ基のモル数)/(酸無水物のモル数)が3.00を超えると硬化不良が生じ、信頼性が低下する場合がある。2官能型エポキシ樹脂比率は、0.001未満であったり0.15を超えたりすると3次元型のポリマー構造を構築することができないため硬化後の接着強度が劣るうえ、発電性能が大きく低下する。
【0047】
上記プレポリマーを合成するには、上記した2官能型エポキシ樹脂、3官能以上のエポキシ樹脂及び飽和型酸無水物を、50~200℃、好ましくは60~120℃、より好ましくは70~110℃にて、1~20時間、好ましくは2~15時間混合し、反応させる方法が挙げられる。さらに後述する各成分を添加して目的の樹脂を製造してもよく、その添加する成分の順序もどのような順序であってもよい。例えば、2官能型エポキシ樹脂、3官能以上のエポキシ樹脂及び飽和型酸無水物を加熱混合する際に、3官能以上のエポキシ樹脂の一部をその他の成分と先に加熱混合し(第1の加熱混合)、得られた反応物に残りの3官能以上のエポキシ樹脂を加えて更に加熱混合して(第2の加熱混合)目的の反応生成物を得ることができる。このとき、第1の加熱混合と第2の加熱混合とで、温度、攪拌時間、攪拌手段などが異なっていてもよい。上記加熱混合は、後述する希釈溶剤の存在下で行ってもよい。
【0048】
本発明の接着剤組成物に含まれる上記反応生成物が2官能型エポキシ樹脂、3官能以上のエポキシ樹脂、及び飽和型酸無水物、を重合したポリマーであって、該ポリマーの重量平均分子量が2000から20000であることが好ましい。重量平均分子量が2000以上であれば、接着剤組成物をフィルム状にすることができ、20000以下であれば、溶融粘度が好適で、接着力も十分になる。
【0049】
重量平均分子量はGPCにより測定される、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。GPCの測定条件は以下の通りである。
[測定条件]
展開溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流量:0.6mL/min
検出器:示差屈折率検出器(RI)
カラム:TSKGuardcolomn SuperH-L
TSKgelSuperH4000(6.0mm I.D.×15cm×1)
TSKgelSuperH3000(6.0mm I.D.×15cm×1)
TSKgelSuperH2000(6.0mm I.D.×15cm×2)
(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:20μL(濃度0.5質量%のTHF溶液)
【0050】
<アルコキシシラン化合物とアルコキシシラン部分加水分解物>
本発明の接着剤組成物では、前記(A)成分として、更に前記一般式(1)で表される化合物に下記一般式(6)で表されるアルコキシシラン化合物またはその部分加水分解物を反応させてなる下記一般式(5)に示す反応生成物を含有するものであることが好ましい。
【化21】
【化22】
(式中、A、R、R、Z、k、*は上記と同じである。B’はそれぞれ独立に一般式(5a)又は一般式(5b)で表される基である。Z’は、それぞれ独立にR(ORSi-、又は一般式(6)のアルコキシシラン化合物の部分加水分解物に由来する基である。Rはビニル基、スチリル基、アクリル基、メタクリル基、アミノ基、メルカプト基、ウレイド基、イソシアネート基を含む1価の有機基であり、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基を含む1価の有機基である。)
【0051】
一般式(1)で表される化合物に一般式(6)で表されるアルコキシシラン化合物またはその部分加水分解物(以下、「アルコキシシラン化合物等」ともいう)を反応させてなる一般式(5)に示す反応生成物を含有する接着剤組成物(又はフィルム状接着剤組成物)は、アルコキシシラン化合物等が加水分解性のアルコキシリル基を有するため、ガラス等に対する高接着性を実現することができる。
【0052】
アルコキシシランまたはアルコキシシラン部分加水分解縮合物成分は、少なくとも上記一般式(6)で示されるアルコキシシランのうち1種又は2種以上を含むアルコキシシランの加水分解縮合反応により合成した部分加水分解縮合物であり、重量平均分子量が300以上30000以下で、残存アルコキシ量が2wt%以上50wt%以下であるアルコキシシラン部分加水分解縮合物である。
【0053】
一般式(6)で示されるアルコキシシランのうち1種又は2種以上を含むアルコキシシランの加水分解縮合反応により合成した部分加水分解縮合物とは、3官能性のシロキサン単位を主成分とする3次元網目構造を有するシリコーンであり、一般式(6)で示されるアルコキシシランのうち1種又は2種以上を含むアルコキシシランの加水分解縮合反応で直接合成された部分加水分解縮合物の他に、一般式(6)で示されるアルコキシシランのうち1種又は2種以上を含むアルコキシシランの加水分解縮合反応を経て更に加水分解縮合反応により合成された部分加水分解縮合物も含む。一般式(6)のアルコキシシラン部分加水分解縮合物は、3官能性シロキサン単位を有していれば特に限定されない。
【0054】
一般式(6)で示される3官能性アルコキシシランを含むアルコキシシランの部分加水分解縮合物の例としては、(i)旭化成ワッカー(株)製:SY231(メトキシ基、フェニル基、メチル基を含む(アルコキシ当量222))、SY550(メトキシ基、フェニル基、メチル基を含む)、SY300(水酸基、フェニル基、プロピル基を含む(水酸基価3重量%))、SY409(水酸基、フェニル基、メチル基を含む(水酸基価2.5重量%))、SY430(水酸基、フェニル基を含む(水酸基価5重量%))、IC836(水酸基、フェニル基を含む(水酸基価3.5重量%))、(ii)信越化学工業(株)製:ストレートシリコーンレジン:KR220L(固体)、KR242A、KR271、KR282(重量平均分子量(Mw)=100000~200000、水酸基を含む(水酸基価1重量%))、KR300、KR311(Mw=6000~10000、水酸基を含む(水酸基価4.5重量%))、シリコーン中間体:KC89(メトキシ基、メチル基を含む(メトキシ基含有量45重量%))、KR500(メトキシ基を含む(メトキシ基含有量30重量%))、KR212(Mw=2000~3000、水酸基、メチル基、フェニル基を含む(水酸基価5重量%))、KR213(メトキシ基、メチル基、フェニル基を含む(メトキシ基含有量22重量%))、KR9218(メトキシ基、メチル基、フェニル基を含む(メトキシ基含有量15重量%))、KR251、KR400、KR255、KR216、KR152、(iii)東レ・ダウコーニング(株)製:シリコーンレジン:804RESIN(フェニルメチル系)、805RESIN(フェニルメチル系)、806ARESIN(フェニルメチル系)、840RESIN(フェニルメチル系)、SR2400(メチル系)、シリコーン中間体:3037INTERMEDIATE(Mw=1000、メトキシ基、フェニル基、メチル基を含む(メトキシ基含有量18重量%))、3074INTERMEDIATE(Mw=1400、メトキシ基、フェニル基、メチル基を含む(メトキシ基含有量17重量%))、Z-6018(Mw=2000、水酸基、フェニル基、プロピル基を含む(水酸基価6重量%))、217FLAKE(Mw=2000、水酸基、フェニル基を含む(水酸基価6重量%))、220FLAKE(Mw=3000、水酸基、フェニル基、メチル基を含む(水酸基価6重量%))、233FLAKE(Mw=3000、水酸基、フェニル基、メチル基を含む(水酸基価6重量%))、249FLAKE(Mw=3000、水酸基、フェニル基、メチル基を含む(水酸基価6重量%))、QP8-5314(Mw=200、メトキシ基、フェニル基、メチル基を含む(メトキシ基含有量42重量%))、SR2402(Mw=1500、メトキシ基、メチル基を含む(メトキシ基含有量31重量%))、AY42-161(Mw=1500、メトキシ基、メチル基を含む(メトキシ基含有量36重量%))、AY42-162(Mw=2500、メトキシ基、メチル基を含む(メトキシ基含有量33重量%))、AY42-163(Mw=4500、メトキシ基、メチル基を含む(メトキシ基含有量25重量%))、(iv)東亜合成(株)製:シルセスキオキサン誘導体、OX-SQ(オキセタニル基を含む(官能基当量:263g/eq))、OX-SQ-H(オキセタニル基を含む(官能基当量:283g/eq))、OX-SQSI-20(オキセタニル基を含む(官能基当量:262g/eq))、AC-SQ(アクリロイル基を含む(官能基当量:165g/eq))、及びこれらのアルコキシシラン部分加水分解縮合物を、更に加水分解縮合反応させたアルコキシシラン部分加水分解縮合物等が挙げられる。
【0055】
本発明の接着剤組成物において、一般式(1)で表される化合物は、以下の2官能型エポキシ樹脂、3官能エポキシ樹脂、及び飽和型酸無水物、の反応生成物であることが好ましい。
即ち、前記2官能型エポキシ樹脂は下記一般式(2’)で示されるBisA型エポキシ樹脂であり、前記3官能以上のエポキシ樹脂は下記一般式(3’)で示されるトリアジン環型3官能エポキシ樹脂であり、前記飽和型酸無水物は下記一般式(4’)で示される飽和炭化水素型酸無水物であることが好ましい。具体的には、前記BisA型エポキシ樹脂がJER-1001(三菱ケミカル(株)製)であり、前記トリアジン環型3官能エポキシ樹脂がTEPIC-S(日産化学(株)製)であり、前記飽和炭化水素型酸無水物がリカシッドMH(新日本理化(株)製)であることができる。
【0056】
【化23】
(式中、nは1以上の整数である。)
【化24】
【化25】
【0057】
[(B)成分]
本発明の接着剤組成物は、(B)成分としてUV感応性反応開始剤を含有する。
本発明においては、UV感応性反応開始剤(光カチオン重合開始剤)を必要とするが、これは光により樹脂の重合を開始する化合物であり、このような機能を有する化合物であれば特に限定はなく、いずれでも使用することができる。UV感応性反応開始剤の好ましい例としては、下記式(7)で表される構造を有するオニウム塩を挙げることができる。このオニウム塩は、光反応し、ルイス酸を放出する化合物である。
{R1R2R3R4Y}m+{MXn+mm- (7)
【0058】
式(7)において、カチオンはオニウムイオンであり、Yは、S、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O、I、Br、Cl又はN(ジアゾ基)であり、R1、R2、R3及びR4は同一又は異なる有機基であり、a,b,c及びdはそれぞれ0~3の整数であって、(a+b+c+d)はYの価数に等しい。
ここで、R1~R4の有機基としては、例えばフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等のアリール基、C1~C18のアルキル基によりモノ及びポリ置換されたアリール基、フェノキシフェニル基、チオフェニルフェニル基等が例示される。
【0059】
Mは、ハロゲン化物錯体{MXn+m}の中心原子を構成する金属又はメタロイドであり、例えば、B、P、As、Sb、Fe、Sn、Bi、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr、Mn、Co等である。Xは、例えばF、Cl、Br等のハロゲン原子であり、mはハロゲン化物錯体イオンの正味の電荷であり、nはMの原子価である。
【0060】
式(7)において、オニウムイオンの具体例としては、ジフェニルヨードニウム、4-メトキシジフェニルヨードニウム、ビス(4-メチルフェニル)ヨードニウム、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム、トリフェニルスルフォニウム、ジフェニル-4-チオフェノキシフェニルスルホニウム、ビス{4-(ジフェニルスルフォニオ)-フェニル}スルフィド、ビス{4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエチル)フェニル)スルフォニオ)-フェニル}スルフィド、η-2,4-(シクロペンタジフェニル){1,2,3,4,5,6-η-(メチルエチル)ベンゼン}-鉄(1+)等が挙げられる。
【0061】
式(7)において、陰イオンの具体例としては、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサクロロアンチモネート等が挙げられる。これらのUV感応性反応開始剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0062】
UV感応性反応開始剤として市販品を用いてもよく、例えば、サンアプロ社製のCPI-300が挙げられる。
【0063】
なお、これらUV感応性反応開始剤は、有機成分合計量の0.1~10質量%、特に1~3質量%の範囲で添加することが好適である。添加量が0.1質量%以上であれば硬化性が良好であり、10質量%以下であれば硬化性に優れるが、保存性が良好なものになる。
【0064】
[(C)成分]
本発明の接着剤組成物は、(C)成分として希釈溶剤を含有する。
希釈溶剤としては、通常、有機溶媒を用いる。有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(以下、「MEK」とも略称する)、シクロヘキサノン等のケトン溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル溶媒;セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;アニソール等の芳香族エーテル溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド溶媒;ソルベントナフサ等の芳香族系混合溶媒;が挙げられる。芳香族系混合溶媒としては、例えば、「スワゾール」(丸善石油社製、商品名)、「イプゾール」(出光興産社製、商品名)が挙げられる。溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0065】
[その他の成分]
本発明の接着剤組成物には、その他必要に応じてアルコキシシラン化合物等、加熱硬化型触媒、無機酸化物微粒子、酸化防止剤、界面活性剤、貯蔵安定剤、レベリング剤、光安定剤などを配合することもできる。
【0066】
[接着剤組成物の特徴]
(溶融粘度)
接着剤組成物の溶融粘度としては5から500mPa・sが好ましい。溶融粘度が500mPa・s以下であれば、ペロブスカイト太陽電池への密着力が十分になる。溶融粘度が5mPa・s以上であれば、ローラーなどでペロブスカイト太陽電池への貼り付け時に、凹部にある空気を追い出すことが容易になり、ボイドが発生しにくくなる。
なお、溶融粘度は、例えば、レオメーター(HAAKE MARS II(英弘精機株式会社製))を使用し、ギャップ500μm、サンプル径8mm、昇温速度10℃/min、周波数1Hzで25℃から200℃までの範囲で測定を行えばよい。
【0067】
(硬化温度)
接着剤組成物の硬化温度としては、60℃から120℃が好ましい。120℃以下であれば、ペロブスカイト層の破壊が発生することなく発電効率も十分である。60℃以上であれば、接着剤組成物(フィルム状のものなど)の保管が常温で可能になり、冷蔵、冷凍保管が不要となる。冷蔵、冷凍保管により(フィルム状)接着剤組成物に結露が発生するとペロブスカイト層の溶解原因となるが、上記接着剤組成物であれば、このような問題は起こらない。
【0068】
[フィルム状封止材]
本発明のフィルム状封止材は、上記接着剤組成物の乾固物からなり、本発明の接着剤組成物から希釈溶剤を蒸発乾固させたものである。
本発明のフィルム状封止材は、接着性、密着性、透明性接着剤及び接着フィルム等に使用でき、塗料分野、電気分野、自動車分野、建築・建材分野等に幅広く使用することができる。それは従来の透明樹脂に比べて、特に低温硬化性に優れた特性を示す。この特性により従来の透明樹脂系では対応できなかったような低温硬化性と封止前後でペロブスカイト型太陽電池の発電性能を維持するため、好適に用いることができる。
【0069】
(フィルム状封止材の作製方法)
前記フィルム状封止材は、支持体上に封止材の層を形成することを含む製造方法によって、製造できる。封止材の層は、例えば、封止材(接着剤)及び溶媒を含む接着剤組成物(ワニス)を用意することと、このワニスを支持体上に塗布することと、塗布されたワニスを乾燥させる(蒸発乾固する)ことと、を含む方法によって形成し得る。
フィルム状封止材は、例えば、以下のようにして製造できる。
上述したエポキシ樹脂の50%アニソールワニスに光酸発生剤(UV感応性反応開始剤)を添加してエポキシ樹脂アニソール溶液を得る。このエポキシ樹脂アニソール溶液を、バーコーターを用いて、シリコーン系剥離剤で表面処理した剥離性PETフィルム状に塗布する。エポキシ樹脂接着剤を塗布したPETフィルムを乾燥機で乾燥して(蒸発乾固して)所定厚さの接着層を有するエポキシフィルム状封止材を得る。
【0070】
ワニスの乾燥は、例えば、加熱法、熱風吹き付け法などを用いうる。乾燥条件は、特に制限はなく、温度は、例えば50℃~100℃でありうる。また、乾燥時間は、好ましくは1分以上、より好ましくは3分以上であり、好ましくは60分以下、より好ましくは15分以下である。支持体上にワニスを塗布後、その塗布されたワニスを乾燥することにより、溶媒が除去されて(蒸発乾固して)封止材の層が支持体上に得られる。
【0071】
フィルム状封止材の製造方法は、必要に応じて、封止材の層を加熱することを含んでいてもよい。加熱により、封止材に含まれる反応性基の反応を進行させることができるので、架橋反応及び重合反応等の反応を適切な程度に進行させて、封止材の層の硬度を高めることができる。この加熱は、粘着型封止材を用いる場合に好適である。特に、酸無水物基及びエポキシ基等の反応性基を有する成分を含む粘着型封止材を用いる場合に、前記の加熱を行うことが好ましい。このような封止前の加熱によっては、封止対象に含まれる成分の熱劣化を避けることができる。加熱条件は、特に制限はない。加熱温度は、50℃~200℃が好ましく、100℃~180℃がより好ましく、120℃~160℃がさらに好ましい。加熱時間は、15分~120分が好ましく、30分~100分がより好ましい。
【0072】
フィルム状封止材の製造方法は、必要に応じて、保護フィルムを設けることを含んでいてもよい。保護フィルムは、例えば、保護フィルムと、封止材の層とを貼り合わせることによって設けうる。封止材の層の加熱を行う場合、保護フィルムは、封止材の層の加熱前に設けてもよく、封止材の層の加熱後に設けてもよい。
【0073】
フィルム状封止材は更に残存溶剤を含んでも良いが、フィルム状封止材中の残存溶剤は少ない方が封止材の特性を考慮すると好ましい。希釈溶剤として上記に挙げたものが残存溶剤となり得るが、フィルム状封止材の質量当たりの残存量は、5000ppm以下が好ましく、さらに3000ppm以下がさらに好ましく、1000ppm以下であることが特に好ましい。残存溶剤がこのような範囲内であれば、ペロブスカイト型太陽電池のJ-V特性に影響を与えることはない。
フィルム状封止材が更に残存溶剤を含み、前記残存溶剤がジメチルホルムアミド(DMF)又はジメチルスルホキシド(DMSO)であり、前記フィルム状封止材の質量当たりの残存量が5000ppm以下のものであることが好ましい。残存溶剤としてDMF、DMSOが接着剤層中に5000ppm以下含まれる場合であれば、J-V特性に特に悪い影響はない。
【0074】
(フィルム状封止材の使い方)
前記のフィルム状封止材は、ペロブスカイト層、電極等の封止対象の封止のために用いることができる。フィルム状封止材を用いた封止方法は、通常、フィルム状封止材の封止材の層を封止対象にラミネートすることを含む。フィルム状封止材が保護フィルムを備える場合、通常は、保護フィルムを剥離した後で、前記のラミネートが行われる。ラミネートの方法は、バッチ式であってもよく、ロールを用いた連続式であってもよい。
【0075】
通常、前記のラミネートによれば、封止対象上に封止材の層及び支持体がこの順に設けられる。よって、ラミネート後の封止対象は、封止材の層及び支持体によって被覆されうる。フィルム状封止材を用いた封止方法においては、支持体の剥離を行わずに、封止材の層及び支持体で封止対象を被覆した状態を得てもよい。この状態においては、封止対象は、封止材の層だけでなく支持体によっても封止されるので、水分の浸入を効果的に抑制することができる。例えば、バリア層を備える支持体、金属箔を備える支持体などのように、耐透湿性の高い支持体を備えるフィルム状封止材を用いる場合、前記のように封止材の層及び支持体による封止を行うことが好ましい。
【0076】
フィルム状封止材を用いた封止方法は、例えば、前記のラミネートの後で支持体を剥離して、封止材の層で封止対象を被覆した状態を得てもよい。この状態においても、封止対象を封止する封止材の層によって、水分の浸入を効果的に抑制することができる。例えば、バリア層を備えない支持体、金属箔を備えない支持体などのように、高い耐透湿性を有さない支持体を備えるフィルム状封止材を用いる場合、前記のように封止材の層による封止を行うことが好ましい。
【0077】
フィルム状封止材を用いた封止方法は、例えば、更に封止基材を設けることを含んでいてもよい。特に、前記のように支持体の剥離を行う場合、支持体の剥離によって露出した封止材の層の面に、適切な封止基材を設けることが好ましい。このような封止基材としては、例えば、上述した支持体と同じフィルムを用いてもよく、ガラス板、金属板、鋼板等の剛直な板材を用いてもよい。封止基材を設けることにより、水分の浸入を更に効果的に抑制できる。
【0078】
フィルム状封止材を用いた封止方法は、例えば、ラミネート後に、封止材の層を硬化させることを含んでいてもよい。通常は、封止材の層に熱を加えることにより、封止材に含まれる反応性基の架橋反応及び重合反応等の反応を進行させて、封止材の層を熱硬化させる。これにより、封止対象と封止材との密着性を向上させたり、封止材の層の機械的強度を向上させたりできるので、封止材による封止能力が高められる。よって、水分の浸入及び鉛の漏出を特に効果的に抑制できる。このようなラミネート後の熱硬化は、熱硬化型封止材を用いる場合に好適である。
【0079】
前記の熱硬化の際、通常は、適切な熱処理装置によって封止材の層を加熱する。熱処理装置としては、例えば、熱風循環式オーブン、赤外線ヒーター、ヒートガン、高周波誘導加熱装置などが挙げられる。また、例えば、ヒートツールを封止材の層に圧着することにより、封止材の層を加熱してもよい。封止対象と封止材の層との密着性を高める観点から、硬化温度は、50℃以上が好ましく、55℃以上がより好ましく、60℃以上が特に好ましい。また、封止対象に含まれる成分の熱劣化を抑制する観点から、硬化温度は、150℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましく、80℃以下がさらに好ましい。硬化時間は、10分以上が好ましく、20分以上がより好ましい。
【0080】
上述したいずれの封止方法でも、封止材の層による封止が達成される。よって、封止対象にペロブスカイト層などの鉛含有部が含まれる場合、鉛含有部への水分の浸入だけでなく、鉛含有部からの鉛の漏出も抑制することができる。
【0081】
本発明の接着剤組成物とフィルム状封止材においては、後述するように光硬化が可能であるため、硬化のための加熱(例えば、60-120℃/60秒)は必要ではないが、これらを基材(ガラスなど)に転写するために、必要に応じて熱をかけてもよい。熱をかけて柔らかくすることで相手の基材(ガラスなど)に密着させることができ、その後常温に戻して支持フィルムを剥がすこともできる。相手基材への転写温度は、例えば60-120℃、好ましくは80℃-100℃である。転写時間は10-180秒、好ましくは30-120秒である。次いで、光照射により硬化することができる。
【0082】
本発明の接着剤組成物とフィルム状封止材は、UV感応性反応開始剤を含んでおり、光硬化が可能である。例えば、光照射により室温(25℃)程度の低温でも硬化することができる。光硬化の条件は、UV感応性反応開始剤など組成物の成分に応じて設定すればよく、例えば、365nmの紫外線を、460mW/cm、3000mJ/cmで照射することで低温硬化が可能である。光硬化における照射条件は、例えば200-3000mW/cm、好ましくは300-1000mW/cmである。
【0083】
本発明の接着剤組成物とフィルム状封止材は、低温で硬化して良好な接着力(接着強度)を発揮する。接着強度は、以下のようにして評価することができる。
まず、接着剤組成物(エポキシ樹脂組成物)を用意する。エポキシ樹脂組成物を20μmになるように離型剤付き50μm厚PETフィルム(ニッパ株式会社製LS-2)に塗付し、100℃,10分乾燥して溶剤を揮発させ、PET-エポキシ樹脂組成物の2層フィルムを得た。次いで、アルミナ基板にPET-エポキシ樹脂組成物の2層フィルムのエポキシ樹脂組成物側が対向するように被せ、真空ラミネータにて加熱(60-120℃,各60sec)しながら加圧(0.1atm)し、エポキシ樹脂組成物とアルミナ基板を密着させる。室温まで冷却後、PETフィルムを剥離してエポキシ樹脂組成物の層を露出させる。
エポキシ樹脂組成物層の上に一辺が5*5*1mmのガラス片を5個置き、次いで、紫外光(365nm,460mW/cm)を照射することで硬化させ、接着試験片を作製する。作製した接着試験片に対し、ダイボンドテスター(装置名:DageSeries4000 Bondtester、テストスピード:200μm/s、テスト高さ:10.0μm、測定温度:25℃)を用いて切断時の接着力(接着強度)を測定する。
【実施例0084】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記例において、部は質量部を示す。また、合成例における「(総エポキシ基のモル数)/(酸無水物のモル数)」は、2官能型エポキシ樹脂と3官能以上のエポキシ樹脂のエポキシ基の合計モル数(総エポキシ基のモル数)の飽和型酸無水物のモル数(酸無水物のモル数)に対する比率であり、「2官能型エポキシ樹脂比率」は、(2官能型エポキシ樹脂のモル数)/[(2官能型エポキシ樹脂のモル数)+(3官能以上のエポキシ樹脂のモル数)]の値である。
【0085】
(実施例1-3、比較例1)
[合成例1]
環流冷却器を連結したコック付き25mlの水分定量受器、温度計、撹拌器を備えた1Lのセパラブルフラスコに、BisA型エポキシ樹脂JER-1001(三菱ケミカル(株)製)19.70部、トリアジン環型3官能エポキシ樹脂TEPIC-S(日産化学(株)製)31.89部、リカシッドMH(新日本理化(株)製)48.41部を仕込み、90℃で150分撹拌反応を行うことにより、エポキシリッチのポリマーを合成した。ここにアニソール100部を添加してエポキシアニソール溶液を作製した。(総エポキシ基のモル数)/(酸無水物のモル数)は1.27であり、2官能型エポキシ樹脂比率は0.17であった。
【0086】
[合成例2]
環流冷却器を連結したコック付き25mlの水分定量受器、温度計、撹拌器を備えた1Lのセパラブルフラスコに、BisA型エポキシ樹脂JER-1001(三菱ケミカル(株)製)1.45部、トリアジン環型3官能エポキシ樹脂TEPIC-S(日産化学(株)製)30.27部、リカシッドMH(新日本理化(株)製)48.91部、90℃で150分撹拌反応を行うことにより、エポキシリッチのポリマーを合成した。その後、再度TEPIC-S(日産化学(株)製)19.37部、次にアニソール100部を添加してエポキシアニソール溶液を作製した。(総エポキシ基のモル数)/(酸無水物のモル数)は1.73であり、2官能型エポキシ樹脂比率は0.096であった。
【0087】
[合成例3]
環流冷却器を連結したコック付き25mlの水分定量受器、温度計、撹拌器を備えた1Lのセパラブルフラスコに、BisA型エポキシ樹脂JER-1001(三菱ケミカル(株)製)1.45部、トリアジン環型3官能エポキシ樹脂TEPIC-S(日産化学(株)製)49.64部、リカシッドMH(新日本理化(株)製)48.91部、90℃で150分撹拌反応を行うことにより、エポキシリッチのポリマーを合成した。再度TEPIC-S(日産化学(株)製)19.37部、次にアニソール100部を添加して、その後このエポキシリッチのポリマー中にKBM-803(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン:信越化学(株)製)0.3部を添加して、75℃で撹拌し120分撹拌反応を行うことにより、アルコキシシランを付加したエポキシリッチのポリマーを合成した。ここにアニソール100部を添加してエポキシアニソール溶液を作製した。(総エポキシ基のモル数)/(酸無水物のモル数)は2.41であり、2官能型エポキシ樹脂比率は0.069であった。
【0088】
[作製例1]
下記に示す方法でペロブスカイト太陽電池を作製した。
[MAPbI・DMF錯体]
PbI(2.305g,5.0mmol)とヨウ化メチルアンモニウム(MAI;CHNHI;795mg,5.0mmol)をジメチルホルムアミド(DMF;5.0mL,MAPbI;1.0Mに相当)に溶解した溶液をスクリュー管に投入した。クッション層として、DMFを数滴スクリュー管の壁をつたわらせて溶液の上に置いた。この上に、ゆっくりと貧溶媒(トルエン)を入れ、DMFの層と貧溶媒層の体積比が1:1になるようにして、容器にフタをして室温で静置した。約一日で溶媒が拡散し、無色針状の結晶が生成した。ろ過で集め、室温で20分間減圧乾燥を行い3.167g(収率94%)の針状結晶を得た。
上記で得た結晶のDMF溶液(ろ過及び乾燥する前の溶液)とMAIを1:1のモル比で溶解した1.55MのDMF溶液を、メソポーラスTiO層の上に200μL(2.5cm角電極一枚あたり)スピンコートし、終了3秒前に2秒間で450μLのトルエンを添加した。得られた透明膜を、すぐに100℃以下で30分間加熱し、その後100℃で30分間加熱(アニール処理)することで、高純度のペロブスカイト材料であるMAPbIが得られた。
【0089】
前駆体溶液:
作製例1で得たMAPbI・DMF錯体(1040mg,1.5mmol)を量りとり、60℃、30mmHgで4時間減圧乾燥した。その後、得られた錯体を1mLのDMSOに投入して2分間攪拌して溶解させた。
【0090】
上記前駆体溶液を使用して得たペロブスカイト型太陽電池の太陽電池特性を測定した。
【0091】
ペロブスカイト型太陽電池
パターン化した透明導電性ガラス基板(FTO,25mm×25mm,Asahi Glass Co.,Ltd.,Japan)を、1質量%中性洗剤水溶液、アセトン、2-プロパノール及び蒸留水の順でそれぞれ10分間超音波洗浄した。最後に、15分間のUVオゾン洗浄を行った。
【0092】
エタノール(Wako,超脱水)39mLにチタンジ(イソプロポキシド)ビス(アセチルアセトナート)(Ti(OiPr)(acac),2-プロパノールの75質量%溶液,Tokyo Chemical Industry Co.,Ltd.,Japan)を1mL加えた。上記のFTO基板(透明電極)を450℃のホットプレートに並べ、Ti(OiPr)(acac)溶液をスプレー(キャリアガス:N、0.5MPa)で吹き付け、コンパクトTiO層(約30nm)を作製した。さらに、得られた基板を、TiCl(440μL,special grade,Wako Pure Chemical Industries Ltd.,Japan)の水溶液100mLに70℃で30分間浸漬した。その後、基板を500℃で20分間焼成し、(正孔)ブロッキング層を形成した。
【0093】
得られたコンパクトTiO層((正孔)ブロッキング層)の上に、TiOペースト(PST-18NR,JGC Catalysts and Chemicals Ltd.)のエタノール溶液(paste:ethanol=1:8(質量比))を約190μL(2.5cm角電極一枚あたり)スピンコートして、約100~150nmの厚みのメソポーラスTiO層(電子輸送層)を形成した。
【0094】
直前にUVオゾン処理したメソポーラスTiO層(電子輸送層)まで作製した基板をグローブボックスに入れた。PbI及びMAIを1:1(モル比)の混合物に対して、DMFとDMSOの混合溶媒(Vol,3:1)を濃度が1.5Mになるように加えた溶液を調整した。MAIの添加・溶解後、この溶液をメソポーラスTiO層(電子輸送層)に約250μL(2.5cm角電極一枚あたり)基板に塗布し、スピンコートし、その最中に0.5mLのトルエンを落とし、透明なフィルムを得た(スロープ5秒で5000rpmにし、さらに5秒間スピンコートした最後の1秒間でトルエンを滴下し、スロープ5秒で停止させた)。得られたフィルムを、40℃で5分間、55℃で5~30分間アニールし、その後75℃で5分間、続いて100℃で30分間アニールして、約500nmの厚みの平坦で緻密なペロブスカイト層を作製した。
【0095】
正孔輸送材料(Spiro-OMeTAD;2,2’,7,7’-テトラキス(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミン)-9,9’-スピロビフルオレン,61.3mg,0.050M)、[トリス(2-(1H-ピラゾル-1-イル)-4-tert-ブチルピリジン)コバルト(III)トリス(ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)](FK209;11.3mg,0.0075M)と4-tert-ブチルピリジン(TBP;24.4μL,0.165M,Aldrich)、及びリチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LITFSI;7.6mg,0.027M,Wako Pure Chemical Industries Co.,Ltd.)を1mLのクロロベンゼンに溶解させた。30分間撹拌後、溶液をメンブランフィルターでろ過し、ろ液をペロブスカイト層上にスピンコートした。得られた基板を70℃で30分間アニールして正孔輸送層(約200nm)を形成した後、真空蒸着により、正孔輸送層の上に80nmの金電極をつけ、ペロブスカイト型太陽電池を得た。
【0096】
なお、エポキシフィルム状封止材、エポキシ樹脂封止ペロブスカイト太陽電池試験片の作製方法、粘度、接着力(接着強度)の測定方法は下記の通りである。
【0097】
[エポキシフィルム状封止材作製方法]
上述したエポキシ樹脂の50%アニソールワニス200部にサンアプロ社製のCPI-300 2.5部を添加し、エポキシ樹脂アニソール溶液を、バーコーターを用いて、シリコーン系剥離剤で表面処理した剥離性PETフィルム状に塗布した。エポキシ樹脂接着剤を塗布したPETフィルムを100℃・10分の条件で乾燥機で乾燥し、20μmの接着層を有するエポキシフィルム状封止材(接着剤)を得た。
【0098】
[エポキシ樹脂封止ペロブスカイト太陽電池試験片作製方法]
本発明のエポキシ樹脂封止ペロブスカイト太陽電池試験片は、上述したエポキシフィルム状封止材をペロブスカイト太陽電池試験片上に80もしくは100℃・60秒で真空ラミネートを実施し、そのあと室温(25℃)で365nm UV-LED、460mW/cm、3000mJ/cmで照射しエポキシ樹脂封止ペロブスカイト太陽電池試験片を得た。
【0099】
[粘度測定方法]
合成例で得られたワニス(エポキシアニソール溶液)の粘度は25℃の恒温水槽中にてオストワルド粘度計により測定を行った。
【0100】
[接着強度]
合成例1~3で得られたエポキシ樹脂組成物(エポキシアニソール溶液)を固形分率が50%になるよう、アニソール溶剤に溶解し、フッ素シリコーンを塗布したPETフィルムにバーコーターによって25μmの厚さで塗布し、100℃・10分で溶剤を乾燥して20μm厚みの接着層を得た。これを5mm*5mm*725μmの石英片に100℃*60秒で張り付けて、その後、30mm*75mm*2mmのガラス試験片に石英層-エポキシ層-ガラス層となるように間に挟んで、100℃,6kgf/cm,60秒で圧着し、室温(25℃)で365nm UV-LED、460mW/cm、3000mJ/cmを照射してエポキシ樹脂層を硬化した。このように接着用試験片を製造した。その後、Dage社製のDage4000接着試験機を用いて、速度0.5mm/分で剪断接着力を測定した。
【0101】
[J-V特性評価方法]
実施例及び比較例のペロブスカイト太陽電池の光電変換特性について、JIS C 8913:2005の結晶系太陽電池セル出力測定方法に準拠する方法で測定した。ソーラーシミュレーター(OTENTO-SUNIII、分光計器製)に、AM1.5Gのエアマスフィルターを組み合わせ、測定用光源の光量は基準太陽電池セルを用いて、100mW/cmに調整した。
実際の測定においては、測定面積が0.1cmになるようにマスクをした太陽電池素子に光照射をしながら、ソースメーター(2400型、ケースレーインスツルメンツ製)を用いてJ-Vカーブ特性を測定し、その結果から、短絡電流(Jsc)、開放電圧(Voc)、曲線因子(FF)、直列抵抗(Rs)、および並列抵抗(Rsh)を導出した。更に、光電変換効率(PCE)は以下の式により算出した。なお、初期PCEは、上記エポキシフィルム状封止材について求めたものであり、封止後PCEは、上記エポキシ樹脂封止ペロブスカイト太陽電池試験片について求めたものである。
PCE(%)=(Jsc(mA/cm)×Voc(V)×FF/100(mW/cm))×100
【0102】
結果を表1に示す。
【0103】
【表1】
【0104】
本発明の接着剤組成物(合成例2,3のワニス)から得たフィルム状封止材を用いた実施例1-3では、組成物の粘度は低く、低温硬化でき、接着性に優れ、封止前後でペロブスカイト型太陽電池の発電性能を維持することができた。一方、(総エポキシ基のモル数)/(酸無水物のモル数)が1.30未満で2官能型エポキシ樹脂比率が0.15を超える本発明に該当しない比較例1は、組成物の粘度が高く、接着性も劣るうえ、封止後のペロブスカイト型太陽電池の発電性能が著しく低下した。
【0105】
本明細書は、以下の態様を包含する。
[1]:(A)下記一般式(2)で示される2官能型エポキシ樹脂、下記一般式(3)で示される3官能以上のエポキシ樹脂、及び下記一般式(4)で示される飽和型酸無水物、の反応生成物、(B)UV感応性反応開始剤、及び(C)希釈溶剤を含有する接着剤組成物であって、
前記(A)成分は、下記一般式(1)で表される化合物であり、
【化26】
(式中、Aは飽和型2価の炭化水素基である。Bはそれぞれ独立に一般式(1a)又は一般式(1b)で表される基である。Rは置換又は非置換の2価の有機基であって、脂肪族炭化水素基、芳香族環、又は複素環を含む。Rは置換又は非置換の3価以上の有機基であって、脂肪族炭化水素基、芳香族環、又は複素環を含む。Zは単結合又は酸素原子である。kは2以上の整数である。*は結合手である。繰り返し単位lと繰り返し単位mの順序は式中において任意である。)
【化27】
(式中、R、Zは上記と同じである。)
【化28】
(式中、R、Z、kは上記と同じである。)
【化29】
(式中、Aは上記と同じである。)
前記2官能型エポキシ樹脂、3官能以上のエポキシ樹脂、飽和型酸無水物の量は、前記2官能型エポキシ樹脂と3官能以上のエポキシ樹脂のエポキシ基の合計モル数の前記飽和型酸無水物のモル数に対する比率が1.30~3.00となる量で、かつ、前記2官能型エポキシ樹脂のモル数が2官能型エポキシ樹脂のモル数と3官能以上のエポキシ樹脂の合計モル数に対して0.001~0.15となる量であることを特徴とする接着剤組成物。
[2]:前記反応生成物が前記2官能型エポキシ樹脂、前記3官能以上のエポキシ樹脂、及び前記飽和型酸無水物、を重合したポリマーであって、該ポリマーの重量平均分子量が2000から20000であることを特徴とする[1]に記載の接着剤組成物。
[3]:前記(A)成分として、更に前記一般式(1)で表される化合物に下記一般式(6)で表されるアルコキシシラン化合物またはその部分加水分解物を反応させてなる下記一般式(5)に示す反応生成物を含有するものであることを特徴とする[1]又は[2]に記載の接着剤組成物。
【化30】
【化31】
(式中、A、R、R、Z、k、*は上記と同じである。B’はそれぞれ独立に一般式(5a)又は一般式(5b)で表される基である。Z’は、それぞれ独立にR(ORSi-、又は一般式(6)のアルコキシシラン化合物の部分加水分解物に由来する基である。Rはビニル基、スチリル基、アクリル基、メタクリル基、アミノ基、メルカプト基、ウレイド基、イソシアネート基を含む1価の有機基であり、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基を含む1価の有機基である。)
[4]:前記2官能型エポキシ樹脂は下記一般式(2’)で示されるBisA型エポキシ樹脂であり、前記3官能以上のエポキシ樹脂は下記一般式(3’)で示されるトリアジン環型3官能エポキシ樹脂であり、前記飽和型酸無水物は下記一般式(4’)で示される飽和炭化水素型酸無水物であることを特徴とする[1]から[3]のいずれか1つに記載の接着剤組成物。
【化32】
(式中、nは1以上の整数である。)
【化33】
【化34】
[5]:[1]から[4]のいずれか1つに記載の接着剤組成物の乾固物からなるフィルム状封止材。
[6]:前記フィルム状封止材が更に残存溶剤を含み、前記残存溶剤がジメチルホルムアミド及び/又はジメチルスルホキシドであり、前記フィルム状封止材の質量当たりの残存量が5000ppm以下のものであることを特徴とする[5]に記載のフィルム状封止材。
【0106】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(2)で示される2官能型エポキシ樹脂、下記一般式(3)で示される3官能以上のエポキシ樹脂、及び下記一般式(4)で示される飽和型酸無水物、の反応生成物、(B)UV感応性反応開始剤、及び(C)希釈溶剤を含有する接着剤組成物であって、
前記(A)成分は、下記一般式(1)で表される化合物であり、
【化1】
(式中、Aは飽和型2価の炭化水素基である。Bはそれぞれ独立に一般式(1a)又は一般式(1b)で表される基である。Rは置換又は非置換の2価の有機基であって、脂肪族炭化水素基、芳香族環、又は複素環を含む。Rは置換又は非置換の3価以上の有機基であって、脂肪族炭化水素基、芳香族環、又は複素環を含む。Zはそれぞれ独立に単結合又は酸素原子である。kは2以上の整数である。*は結合手である。繰り返し単位lと繰り返し単位mの順序は式中において任意である。)
【化2】
(式中、R、Zは上記と同じである。)
【化3】
(式中、R、Z、kは上記と同じである。)
【化4】
(式中、Aは上記と同じである。)
前記2官能型エポキシ樹脂、3官能以上のエポキシ樹脂、飽和型酸無水物の量は、前記2官能型エポキシ樹脂と3官能以上のエポキシ樹脂のエポキシ基の合計モル数の前記飽和型酸無水物のモル数に対する比率が1.30~3.00となる量で、かつ、前記2官能型エポキシ樹脂のモル数が2官能型エポキシ樹脂のモル数と3官能以上のエポキシ樹脂の合計モル数に対して0.001~0.15となる量であることを特徴とする接着剤組成物。
【請求項2】
前記反応生成物が前記2官能型エポキシ樹脂、前記3官能以上のエポキシ樹脂、及び前記飽和型酸無水物、を重合したポリマーであって、該ポリマーの重量平均分子量が2000から20000であることを特徴とする請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記(A)成分として、更に前記一般式(1)で表される化合物に下記一般式(6)で表されるアルコキシシラン化合物またはその部分加水分解物を反応させてなる下記一般式(5)に示す反応生成物を含有するものであることを特徴とする請求項1に記載の接着剤組成物。
【化5】
【化6】
(式中、A、R、R、Z、k、*は上記と同じである。B’はそれぞれ独立に一般式(5a)又は一般式(5b)で表される基である。Z’は、それぞれ独立にR(ORSi-、又は一般式(6)のアルコキシシラン化合物の部分加水分解物に由来する基である。Rはビニル基、スチリル基、アクリル基、メタクリル基、アミノ基、メルカプト基、ウレイド基、イソシアネート基を含む1価の有機基であり、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基を含む1価の有機基である。)
【請求項4】
前記2官能型エポキシ樹脂は下記一般式(2’)で示されるBisA型エポキシ樹脂であり、前記3官能以上のエポキシ樹脂は下記一般式(3’)で示されるトリアジン環型3官能エポキシ樹脂であり、前記飽和型酸無水物は下記一般式(4’)で示される飽和炭化水素型酸無水物であることを特徴とする請求項1に記載の接着剤組成物。
【化7】
(式中、nは1以上の整数である。)
【化8】
【化9】
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の接着剤組成物の乾固物からなるフィルム状封止材。
【請求項6】
前記フィルム状封止材が更に残存溶剤を含み、前記残存溶剤がジメチルホルムアミド及び/又はジメチルスルホキシドであり、前記フィルム状封止材の質量当たりの残存量が5000ppm以下のものであることを特徴とする請求項5に記載のフィルム状封止材。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0043
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0043】
エポキシ樹脂硬化剤である上記酸無水物は飽和型酸無水物であれば特に限定されない。飽和型酸無水物には、例えば、コハク酸無水物、メチルコハク酸、エチルコハク酸、2,2-ジメチルコハク酸、3-オキサビシクロ(3,1,0)ヘキサン-2,4-ジオン、テトラデシルコハク酸、ヘキサデシルコハク酸、2-オクタデシルコハク酸の無水物、ヘキサヒドロフタル酸、3-メチルヘキサヒドロフタル酸、4-メチルヘキサヒドロフタル酸、3-エチルヘキサヒドロフタル酸、4-エチルヘキサヒドロフタル酸等のヘキサヒドロフタル酸無水物類、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ(2,2,2)オクタン-2,3-ジカルボキシアンハイドライド、ノルカンタリジン、カンタリジン等が挙げられる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0069
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0069】
(フィルム状封止材の作製方法)
前記フィルム状封止材は、支持体上に封止材の層を形成することを含む製造方法によって、製造できる。封止材の層は、例えば、封止材(接着剤)及び溶媒を含む接着剤組成物(ワニス)を用意することと、このワニスを支持体上に塗布することと、塗布されたワニスを乾燥させる(蒸発乾固する)ことと、を含む方法によって形成し得る。
フィルム状封止材は、例えば、以下のようにして製造できる。
上述したエポキシ樹脂の50%アニソールワニスに光酸発生剤(UV感応性反応開始剤)を添加してエポキシ樹脂アニソール溶液を得る。このエポキシ樹脂アニソール溶液を、バーコーターを用いて、シリコーン系剥離剤で表面処理した剥離性PETフィルムに塗布する。エポキシ樹脂接着剤を塗布したPETフィルムを乾燥機で乾燥して(蒸発乾固して)所定厚さの接着層を有するエポキシフィルム状封止材を得る。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0094
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0094】
直前にUVオゾン処理したメソポーラスTiO層(電子輸送層)まで作製した基板をグローブボックスに入れた。PbI及びMAIを1:1(モル比)の混合物に対して、DMFとDMSOの混合溶媒(Vol,3:1)を濃度が1.5Mになるように加えた溶液を調整した。MAIの添加・溶解後、この溶液をメソポーラスTiO層(電子輸送層)に約250μL(2.5cm角電極一枚あたり)塗布し、スピンコートし、その最中に0.5mLのトルエンを落とし、透明なフィルムを得た(スロープ5秒で5000rpmにし、さらに5秒間スピンコートした最後の1秒間でトルエンを滴下し、スロープ5秒で停止させた)。得られたフィルムを、40℃で5分間、55℃で5~30分間アニールし、その後75℃で5分間、続いて100℃で30分間アニールして、約500nmの厚みの平坦で緻密なペロブスカイト層を作製した。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0097
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0097】
[エポキシフィルム状封止材作製方法]
上述したエポキシ樹脂の50%アニソールワニス200部にサンアプロ社製のCPI-300 2.5部を添加し、エポキシ樹脂アニソール溶液を、バーコーターを用いて、シリコーン系剥離剤で表面処理した剥離性PETフィルムに塗布した。エポキシ樹脂接着剤を塗布したPETフィルムを100℃・10分の条件で乾燥機で乾燥し、20μmの接着層を有するエポキシフィルム状封止材(接着剤)を得た。