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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034789
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】地盤観測システム及び地盤観測方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/43 20100101AFI20240306BHJP
   G01S 19/41 20100101ALI20240306BHJP
【FI】
G01S19/43
G01S19/41
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139274
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000195971
【氏名又は名称】西松建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】黒田 卓也
(72)【発明者】
【氏名】高村 浩彰
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062AA09
5J062BB08
5J062CC07
5J062DD23
5J062FF04
(57)【要約】
【課題】地盤の移動量及び傾斜角の変化を長期間にわたって観測することができる地盤観測システムを提供する。
【解決手段】地盤観測システム1は、観測局10及び集計装置60,70を備える。観測局10は、ポール11、衛星アンテナ17、衛星無線機21及び傾斜角計測器30を有する。第1集計装置60は、衛星無線機21によって送信された電波に乗ったデータから第1計測点96の位置を算出し、その位置のデータを時系列で配列した時系列データ64を蓄積する。第2集計装置70は、傾斜角計測器30によって計測された傾斜角のデータを時系列で配列した時系列データ74を蓄積する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
観測現場に設置される観測局と、前記観測局と通信可能なコンピューターシステムと、を備え、
前記観測局が、
地面に立てられるポールと、
前記ポールの上端の第1計測点に取り付けられ、衛星から衛星波を受信する衛星アンテナと、
前記衛星アンテナに接続され、前記衛星アンテナを通じて前記衛星から前記衛星波を受信することによって前記衛星波に乗った第1データを取得することと、前記衛星波を受信した時刻を表す受信時刻データと前記第1データが乗った電波を送信することとを周期的に行う衛星無線機と、
前記ポールに取り付けられ、互いに直交する水平な二軸の回りの傾斜角を計測することと、その傾斜角を表した傾斜角データが載った電波を送信することとを周期的に行う傾斜角計測器と、を有し、
前記コンピューターシステムは、前記衛星無線機によって送信された前記電波に乗った前記受信時刻データ及び前記第1データを受けるたびに、前記受信時刻データ及び前記第1データから前記第1計測点の位置を算出するとともに、前記第1計測点の位置を表した位置データを記録することによって、前記位置データを時系列で配列した第1時系列データを蓄積し、
前記コンピューターシステムは、前記傾斜角計測器によって送信された前記電波に乗った前記傾斜角データを受けるたびに、前記傾斜角データを記録することによって、前記傾斜角データを時系列で配列した第2時系列データを蓄積する
地盤観測システム。
【請求項2】
前記コンピューターシステムは、前記第1時系列データの前記位置データと前記第2時系列データの前記傾斜角データとに基づいて、前記ポールの下端の第2計測点における位置を算出し、前記第2計測点の位置を表した位置データを時系列で記録することによって、前記位置データを時系列で配列した第3時系列データを蓄積する
請求項1に記載の地盤観測システム。
【請求項3】
前記コンピューターシステムは、前記第2時系列データの各前記傾斜角データから前記第2時系列データの初期の前記傾斜角データを減算することによって、その減算による差を時系列で配列した第4時系列データを蓄積する
請求項1又は2に記載の地盤観測システム。
【請求項4】
前記コンピューターシステムは、前記第3時系列データの各前記位置データから前記第3時系列データの初期の前記位置データを減算することによって、その減算による差を時系列で配列した第5時系列データを蓄積する
請求項2に記載の地盤観測システム。
【請求項5】
前記コンピューターシステムは、前記第2時系列データの各前記傾斜角データから前記第2時系列データの初期の前記傾斜角データを減算することによって、その減算による差を時系列で配列した第4時系列データを蓄積し、
前記コンピューターシステムは、前記第3時系列データの各前記位置データから前記第3時系列データの初期の前記位置データを減算することによって、その減算による差を時系列で配列した第5時系列データを蓄積し、
前記コンピューターシステムは、前記第4時系列データの前記差を時系列でプロットしたグラフと、前記第5時系列データの前記差を時系列でプロットしたグラフとのうち少なくとも一方を表示する
請求項2に記載の地盤観測システム。
【請求項6】
地面から上方に離れた第1計測点に配置された衛星アンテナによって衛星から衛星波を周期的に受信することと、前記衛星波に乗った第1データと前記衛星波の受信時刻データとが乗った電波を送信することとを周期的に行う第1工程と、
前記第1工程により送信された前記電波に乗った前記受信時刻データ及び前記第1データをコンピューターシステムにより受けるたびに、前記受信時刻データ及び前記第1データから前記第1計測点の位置を前記コンピューターシステムにより算出するとともに、前記第1計測点の位置を表した位置データを前記コンピューターシステムにより記録することによって、前記位置データを時系列で配列した第1時系列データを蓄積する第2工程と、
前記第1計測点の下方の前記地面上に配置された傾斜角計測器によって、互いに直交する水平な二軸の回りの傾斜角を計測することと、その傾斜角を表した傾斜角データが載った電波を送信することとを周期的に行う第3工程と、
前記第3工程により送信された前記電波に乗った前記傾斜角データを前記コンピューターシステムにより受けるたびに、前記傾斜角データを前記コンピューターシステムにより記録することによって、前記傾斜角データを時系列で配列した第2時系列データを蓄積する第4工程と、
を含む地盤観測方法。
【請求項7】
前記第1時系列データの前記位置データと前記第2時系列データの前記傾斜角データとに基づいて、前記第1計測点の下方における前記地面上の第2計測点における位置を前記コンピューターシステムにより算出し、前記第2計測点の位置を表した位置データを時系列で前記コンピューターシステムにより記録する第5工程を更に含む
請求項6に記載の地盤観測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤観測システム及び地盤観測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~4は、持ち運ぶことができる携帯型測位装置を開示する。特許文献1~4に開示の測位装置は、航法衛星システムを利用して測位するものである。具体的には、測位装置は、衛星によって送信された衛星波を受信し、衛星波の信号から3次元的な位置を計算し、携帯型測位装置の傾斜角を検出し、検出傾斜角に基づいて3次元的な位置を補正する。特許文献1~4に開示の測位装置によって計測されて補正された3次元的な位置は、その測位装置が設置された地盤の位置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-61510号公報
【特許文献2】特開2015-190935号公報
【特許文献3】特開2019-178983号公報
【特許文献4】特開2021-56012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1~4に開示の測位装置は携帯型であることから、これらの測位装置を用いた計測時間は短く、これらの測位装置は、地質活動に起因した地盤の緩やかな変動を長期間にわたって観測するのに適していない。また、地質活動は地盤を緩やかに移動させるだけでなく、地盤の傾斜も緩やかに変化させるところ、特許文献1~4に開示の測位装置は地盤の傾斜の変化を観測することができない。
そこで、本発明の目的は、地滑り等の地質活動に起因した地盤の移動量及び傾斜角の変化を長期間にわたって観測することができる地盤観測システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するための本発明の第1の側面によれば、地盤観測システムが、観測現場に設置される観測局と、前記観測局と通信可能なコンピューターシステムと、を備え、前記観測局が、地面に立てられるポールと、前記ポールの上端の第1計測点に取り付けられ、衛星から衛星波を受信する衛星アンテナと、前記衛星アンテナに接続され、前記衛星アンテナを通じて前記衛星から前記衛星波を受信することによって前記衛星波に乗った第1データを取得することと、前記衛星波を受信した時刻を表す受信時刻データと前記第1データが乗った電波を送信することとを周期的に行う衛星無線機と、前記ポールに取り付けられ、互いに直交する水平な二軸の回りの傾斜角を計測することと、その傾斜角を表した傾斜角データが載った電波を送信することとを周期的に行う傾斜角計測器と、を有し、前記コンピューターシステムは、前記衛星無線機によって送信された前記電波に乗った前記受信時刻データ及び前記第1データを受けるたびに、前記受信時刻データ及び前記第1データから前記第1計測点の位置を算出するとともに、前記第1計測点の位置を表した位置データを記録することによって、前記位置データを時系列で配列した第1時系列データを蓄積し、前記コンピューターシステムは、前記傾斜角計測器によって送信された前記電波に乗った前記傾斜角データを受けるたびに、前記傾斜角データを記録することによって、前記傾斜角データを時系列で配列した第2時系列データを蓄積する。
【0006】
本発明の第2の側面によれば、前記コンピューターシステムは、前記第1時系列データの前記位置データと前記第2時系列データの前記傾斜角データとに基づいて、前記ポールの下端の第2計測点における位置を算出し、前記第2計測点の位置を表した位置データを時系列で記録することによって、前記位置データを時系列で配列した第3時系列データを蓄積する。
【0007】
本発明の第3の側面によれば、前記コンピューターシステムは、前記第2時系列データの各前記傾斜角データから前記第2時系列データの初期の前記傾斜角データを減算することによって、その減算による差を時系列で配列した第4時系列データを蓄積する。
【0008】
本発明の第4の側面によれば、前記コンピューターシステムは、前記第3時系列データの各前記位置データから前記第3時系列データの初期の前記位置データを減算することによって、その減算による差を時系列で配列した第5時系列データを蓄積する。
【0009】
本発明の第5の側面によれば、前記コンピューターシステムは、前記第4時系列データの前記差を時系列でプロットしたグラフと、前記第5時系列データの前記差を時系列でプロットしたグラフとのうち少なくとも一方を表示する。
【0010】
本発明の第6の側面によれば、地盤観測方法は、地面から上方に離れた第1計測点に配置された衛星アンテナによって衛星から衛星波を周期的に受信することと、前記衛星波に乗った第1データと前記衛星波の受信時刻データとが乗った電波を送信することとを周期的に行う第1工程と、前記第1工程により送信された前記電波に乗った前記受信時刻データ及び前記第1データをコンピューターシステムにより受けるたびに、前記受信時刻データ及び前記第1データから前記第1計測点の位置を前記コンピューターシステムにより算出するとともに、前記第1計測点の位置を表した位置データを前記コンピューターシステムにより記録することによって、前記位置データを時系列で配列した第1時系列データを蓄積する第2工程と、前記第1計測点の下方の前記地面上に配置された傾斜角計測器によって、互いに直交する水平な二軸の回りの傾斜角を計測することと、その傾斜角を表した傾斜角データが載った電波を送信することとを周期的に行う第3工程と、前記第3工程により送信された前記電波に乗った前記傾斜角データを前記コンピューターシステムにより受けるたびに、前記傾斜角データを前記コンピューターシステムにより記録することによって、前記傾斜角データを時系列で配列した第2時系列データを蓄積する第4工程と、を含む。
【0011】
本発明の第7の側面によれば、前記地盤観測方法は、前記第1時系列データの前記位置データと前記第2時系列データの前記傾斜角データとに基づいて、前記第1計測点の下方における前記地面上の第2計測点における位置を前記コンピューターシステムにより算出し、前記第2計測点の位置を表した位置データを時系列で前記コンピューターシステムにより記録する第5工程を更に含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、地盤観測システム及び地盤観測方法は、地質活動に起因した地盤の移動量及び傾斜角の変化を長期間にわたって観測することに貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、観測局を示す。
図2図2は、地盤観測システムを示す。
図3図3は、第1計測点の位置及び傾斜角から第2計測点の位置を算出する方法の説明図である。
図4図4は、第1計測点の位置及び傾斜角から第2計測点の位置を算出する方法の説明図である。
図5図5は、第1計測点の位置及び傾斜角から第2計測点の位置を算出する方法の説明図である。
図6図6は、ディスプレイデバイスに表示されるグラフの一例を示す。
図7図7は、ディスプレイデバイスに表示されるグラフの一例を示す。
図8図8は、ディスプレイデバイスに表示されるグラフの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。ただし、本発明の範囲は、以下に開示された実施形態に限定されない。図面は例示のみのために提供されるため、本発明の範囲は図面の例示に限定されない。
【0015】
[1. 概要]
図1は、観測局10の斜視図である。図1では、観測局10が設置された地面95が2点鎖線により図示されている。図2は、観測局10を備える地盤観測システム1のブロック図である。
【0016】
地盤観測システム1は、観測局10、第1集計装置60、第2集計装置70及び第3集計装置80を備える。観測局10は、観測現場の地面95に設置される。第1集計装置60、第2集計装置70及び第3集計装置80は、観測現場から遠隔な場所にある。第1集計装置60、第2集計装置70及び第3集計装置80のセットが、ネットワークコンピューターシステムである。
【0017】
地盤観測システム1は、複数の衛星99からの衛星波を観測局10により受信するたびに、観測対象たる地盤の表面95(以下、地面95という。)から上方に離れた第1計測点96の3次元的な位置を、衛星波に乗ったデータに基づいてネットワークコンピューターシステムにより算出するとともに、その位置を表す位置データをネットワークコンピューターシステムにより記録する。これにより、地盤観測システム1は、位置データを時系列で配列した時系列データ64,84をネットワークコンピューターシステムにより蓄積する。地盤が変動すれば、観測局10の衛星アンテナ17の位置が変化するところ、衛星アンテナ17の位置の経時的な変化を時系列データ64,84から把握できる。
また、地盤観測システム1は、時系列データ84の各位置データから時系列データ84の初期の位置データを減算することによって差をネットワークコンピューターシステムにより求める。これにより、地盤観測システム1は、算出した差を時系列で並べた時系列データ87をネットワークコンピューターシステムにより蓄積する。衛星アンテナ17の初期位置からの経時的な変化量を時系列データ64,84から把握できる。
【0018】
地盤観測システム1は、第1計測点96から下方へ鉛直に離れた第2計測点97における地面95の2次元的な傾斜角を観測局10により計測するたびに、計測した傾斜角を表す傾斜角データをネットワークコンピュータシステムにより記録する。これにより、地盤観測システム1は、傾斜角データを時系列で配列した時系列データ74,85をネットワークコンピューターシステムにより蓄積する。地盤が変動すれば、地面95の傾きが変化するところ、地面95の傾斜角の経時的な変化を時系列データ74,85から把握できる。
また、地盤観測システム1は、時系列データ85の各傾斜角データから時系列データ85の初期の傾斜角データを減算することによって差を求める。これにより、地盤観測システム1は、算出した差を時系列で並べた時系列データ88をネットワークコンピューターシステムにより蓄積する。地面95の初期傾斜角からの経時的な変化量を時系列データ74,85から把握できる。
【0019】
地盤観測システム1は、時系列データ84及び時系列データ85における同一時刻の位置データ及び傾斜角データから、第2計測点97の3次元的な位置を算出するとともに、その位置を表す位置データをネットワークコンピューターシステムにより記録する。これにより、地盤観測システム1は、第2計測点97の3次元的な位置を表す位置データを時系列で配列した時系列データ86をネットワークコンピューターシステムにより蓄積する。地面95の位置の経時的な変化を時系列データ86から把握できる。
また、地盤観測システム1は、時系列データ86の各位置データから時系列データ86の初期の位置データを減算することによって差をネットワークコンピューターにより求める。これにより、地盤観測システム1は、算出した差を時系列で並べた時系列データ89をネットワークコンピューターにより蓄積する。地面95の初期位置からの経時的な変化量を時系列データ89から把握できる。
【0020】
ここで、3次元的な位置は、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸を有する直交座標系によって表される。X軸及びY軸は水平であり、X軸は東西方向に対して平行であり、Y軸は南北方向に対して平行であり、Z軸は鉛直方向に対して平行である。3次元的な位置のうち第1次元の位置は、X軸方向(東西方向)における位置、つまりX座標によって表される。第2次元の位置は、Y軸方向(南北方向)における位置、つまりY座標によって表される。第3次元の位置は、Z軸方向(高さ方向)における位置、つまりZ座標によって表される。2次元的な傾斜角のうち第1次元の傾斜角はX軸回りの傾斜角であり、第2次元の傾斜角はY軸回りの傾斜角である。計測される傾斜角は水平面を基準としており、第1計測点96における地面95が水平である場合、X軸回りの傾斜角及びY軸回りの傾斜角はゼロである。
【0021】
以下、地盤観測システム1の構成要素について具体的に説明するとともに、地盤観測システム1を用いた地盤観測方法について説明する。
【0022】
[2. 観測局]
観測局10は、ポール11、複数のレッグ12、複数のビーム13、衛星アンテナ17、中継機20及び傾斜角計測器30を有する。
【0023】
[2-1. ポール、レッグ及びビーム]
ポール11は、地面95に鉛直に立てられている。ポール11の下端が地面95に差し込まれ、そのポール11が差し込まれた箇所は第2計測点97の位置に相当する。なお、観測局10の設置当初にはポール11が鉛直であるのに対して、観測局10の設置後に地盤が変動した場合には、ポール11が鉛直方向から傾斜する。
【0024】
レッグ12は、ポール11の上端と下端の間の部分に連結されている。レッグ12は、ポール11との連結箇所から斜めに垂下して、地面95に差し込まれている。レッグ12がポール11を支持することによって、ポール11の傾倒が防止される。
【0025】
ビーム13の両端がポール11とレッグ12のうち2本にそれぞれ連結され、ビーム13が2本の間に架設されている。
【0026】
[2-2. 衛星アンテナ]
衛星アンテナ17は、上空に向けられるとともに、ポール11の上端に取り付けられている。衛星アンテナ17は、複数の衛星99から衛星アンテナ17に伝播された衛星波を受信し、その衛星波から電流を発生させることによって電流信号を生成する。ここで、衛星99は、第1データとしての発信時刻データ、エフェメリスデータ及びアルマナックデータに従って衛星波を変調させることによって、発信時刻データ、エフェメリスデータ及びアルマナックデータを衛星波に乗せて、衛星波を放射する。発信時刻データとは、衛星99が衛星波を発信する時刻を表すデータである。エフェメリスデータは、衛星99それ自体の軌道データである。アルマナックデータは、他の衛星99の軌道データである。
【0027】
衛星アンテナ17の位置は、第1計測点96の3次元的な位置に相当する。衛星アンテナ17がポール11の上端に取り付けられているため、衛星アンテナ17の高さ、つまり第2計測点97から第1計測点96までの距離は、ポール11の長さに相当する。
【0028】
[2-3. 中継機]
中継機20は、ポール11に取り付けられたボックス16に収容されている。中継機20は、衛星アンテナ17から電流信号を受けることによって、複数の衛星99によって送信された衛星波を衛星アンテナ17により周期的に受信する。中継機20は、衛星アンテナ17からの電流信号に基づいて地上波を発生させて、地上波を送信する。中継機20によって送信される地上波には、各衛星99における発信時刻データ、エフェメリスデータ、アルマナックデータ及び受信時刻データが乗っている。受信時刻データとは、中継機20が複数の衛星99から衛星波を受信した時の時刻を表すデータである。中継機20による衛星波の受信周期及び地上波の送信周期は、例えば30分、1時間、2時間、3時間、4時間、8時間、12時間又は24時間である。
【0029】
中継機20は、衛星無線機21、送信アンテナ22、制御回路23、スイッチ回路24及び電源装置25を有する。
【0030】
電源装置25は、例えば一次電池又は二次電池のような電力源を有する。電源装置25は、制御回路23に電力を供給して、制御回路23を動作させる。電源装置25は、スイッチ回路24を介して衛星無線機21に電力を供給して、衛星無線機21を動作させる。なお、電源装置25は、一次電池又は二次電池を有さなくてもよい。この場合、電源装置25は、AC/DCコンバーターを有する。AC/DCコンバーターは、商用等の交流電力を直流電力に変換するとともに、その直流電力を衛星無線機21及び制御回路23に供給する。
【0031】
スイッチ回路24は、衛星無線機21と電源装置25の間に設けられている。スイッチ回路24がオンすると、スイッチ回路24が電源装置25から衛星無線機21への電力供給を許容する。スイッチ回路24がオフすると、スイッチ回路24が電源装置25から衛星無線機21への電力供給を禁止する。
【0032】
制御回路23は、時間を計測するとともに、スイッチ回路24を周期的にオンさせる。制御回路23がスイッチ回路24をオンさせると、電力が電源装置25から衛星無線機21に供給されて、衛星無線機21が動作する。制御回路23がスイッチ回路24をオフさせると、電力が電源装置25から衛星無線機21に供給されず、衛星無線機21が停止する。
【0033】
動作中の衛星無線機21は、複数の衛星99から衛星アンテナ17を通じて衛星波を受信することによって、各衛星99の衛星波に乗った発信時刻データ、エフェメリスデータ及びアルマナックデータを取得する。衛星無線機21は、受信した発信時刻データ、エフェメリスデータ及びアルマナックデータに受信時刻データを重畳し、発信時刻データ、エフェメリスデータ、アルマナックデータ及び受信時刻データに従って地上波を変調させる。これにより、衛星無線機21は、発信時刻データ、エフェメリスデータ、アルマナックデータ及び受信時刻データが乗った地上波を送信アンテナ22により送信する。
【0034】
[2-4. 傾斜角計測器]
傾斜角計測器30は、ポール11、特に地面95に対して近位の箇所に取り付けられている。傾斜角計測器30は、X軸回りの傾斜角及びY軸回りの傾斜角を周期的に計測するとともに、X軸回りの傾斜角及びY軸回りの傾斜角の計測値を送信する。傾斜角計測器30による計測周期は、例えば30分、1時間、2時間、3時間、4時間、8時間、12時間又は24時間である。傾斜角計測器30による計測周期は、中継機20による衛星波の受信周期及び地上波の送信周期の周期に等しい。傾斜角計測器30による計測タイミングは、中継機20による衛星波の受信タイミングに対して同期又は非同期である。
【0035】
傾斜角計測器30は、傾斜センサー31、信号処理回路32、送信機33、送信アンテナ34、制御回路35、スイッチ回路36~38及び電源装置39を有する。
【0036】
電源装置39は、例えば一次電池又は二次電池のような電力源を有する。電源装置39は、制御回路35に電力を供給して、制御回路35を動作させる。電源装置39は、スイッチ回路36を介して傾斜センサー31に電力を供給して、傾斜センサー31を動作させる。電源装置39は、スイッチ回路37を介して信号処理回路32に電力を供給して、信号処理回路32を動作させる。電源装置39は、スイッチ回路38を介して送信機33に電力を供給して、送信機33を動作させる。なお、電源装置39は、商用等の交流電力を直流電力に変換するとともに、その直流電力を衛星無線機21及び制御回路23に供給するAC/DCコンバーターを有してもよい。
【0037】
スイッチ回路36は、傾斜センサー31と電源装置39の間に設けられている。スイッチ回路36がオンすると、スイッチ回路36が電源装置39から傾斜センサー31への電力供給を許容する。スイッチ回路36がオフすると、スイッチ回路36が電源装置39から傾斜センサー31への電力供給を禁止する。
【0038】
スイッチ回路37は、信号処理回路32と電源装置39の間に設けられている。スイッチ回路37がオンすると、スイッチ回路37が電源装置39から信号処理回路32への電力供給を許容する。スイッチ回路37がオフすると、スイッチ回路37が電源装置39から信号処理回路32への電力供給を禁止する。
【0039】
スイッチ回路38は、送信機33と電源装置39の間に設けられている。スイッチ回路38がオンすると、スイッチ回路38が電源装置39から送信機33への電力供給を許容する。スイッチ回路38がオフすると、スイッチ回路38が電源装置39から送信機33への電力供給を禁止する。
【0040】
制御回路35は、時間を計測するとともに、スイッチ回路36~38を同時に且つ周期的にオンさせる。制御回路35がスイッチ回路36~38をオンさせると、電力が電源装置39から傾斜センサー31、信号処理回路32及び送信機33に供給されて、傾斜センサー31、信号処理回路32及び送信機33が動作する。制御回路35がスイッチ回路24をオフさせると、電力が電源装置39から傾斜センサー31、信号処理回路32及び送信機33に供給されず、傾斜センサー31、信号処理回路32及び送信機33が停止する。
【0041】
傾斜センサー31は、X軸回りの傾斜角及びY軸回りの傾斜角を検出することによってX軸回りの傾斜角及びY軸回りの傾斜角を電気信号に変換し、その電気信号を信号処理回路32に出力する。信号処理回路32は、傾斜センサー31の出力信号に対してAD変換等の信号処理を行って、X軸回り及びY軸回りの傾斜角データを送信機33に出力する。送信機33は、信号処理回路32から入力した傾斜角データに従って電波を変調させて、X軸回り及びY軸回りの傾斜角データが乗った電波を送信アンテナ34により送信する。送信機33の無線通信規格は、例えばLPWA(Low Power Wide Area-network:省電力広域ネットワーク)であり、より具体的にはSigfox(登録商標)である。
【0042】
なお、傾斜センサー31が、例えば加速度センサー及びジャイロセンサー等のような慣性センサーに変更されてもよい。加速度センサーは、X軸方向の加速度、Y軸方向の加速度及びZ軸方向の加速度を検出する。ジャイロセンサーは、X軸回りの角加速度、Y軸回りの角加速度及びZ軸回りの角加速度を検出する。信号処理回路32は、慣性センサーによって検出された加速度若しくは角加速度又はこれら両方からX軸回りの傾斜角及びY軸回りの傾斜角を算出して、X軸回り及びY軸回りの傾斜角データを送信機33に転送する。送信機33は、信号処理回路32から入力した傾斜角データに従って電波を変調させて、X軸回り及びY軸回りの傾斜角データが乗った電波を送信アンテナ34により送信する。
【0043】
[3. 第1集計装置]
第1集計装置60は、観測局10から遠隔なデータセンターに設置されている。第1集計装置60は、インターネット90に接続されている。第1集計装置60は、1台のコンピューターから構成されてもよいし、分散処理又は並列処理が可能な複数台のコンピューターから構成されてもよい。第1集計装置60は、クラウドコンピューティングシステムであってもよい。
【0044】
第1集計装置60は、インターネット、ローカルエリアネットワーク、専用回線又はUSB機器等を介して無線装置61に接続されている。無線装置61は、衛星無線機21からアンテナ62を介して電波を受信し、その電波に乗った発信時刻データ、エフェメリスデータ、アルマナックデータ及び受信時刻データを第1集計装置60に転送する。従って、第1集計装置60は、無線装置61を通じて中継機20と通信可能である。
【0045】
第1集計装置60は、記憶装置63に接続されている。記憶装置63は、半導体記憶装置、磁気記憶装置、データサーバー、ファイルサーバー又はNAS(Network Attached Storage)である。
【0046】
第1集計装置60には、プログラムがインストールされている。このプログラムは、以下のような処理を第1集計装置60に実行させる。
【0047】
第1集計装置60は、発信時刻データ、エフェメリスデータ、アルマナックデータ及び受信時刻データを無線装置61から受けるたびに、GNSS(Global Navigation Satellite System:全地球航法衛星システム)の測位法に従って発信時刻データ、エフェメリスデータ、アルマナックデータ及び受信時刻データから3次元的な位置データを算出し、位置データを時系列で記憶装置63に記録する。これにより、第1集計装置60は、時系列データ64を記憶装置63に蓄積する。時系列データ64は、位置データを時系列で配列したデータ列である。位置データは、第1計測点96の3次元的な位置を表すとともに、X座標、Y座標及びZ座標からなる。
【0048】
[4. 第2集計装置]
第2集計装置70は、観測局10から遠隔なデータセンターに設置されている。第2集計装置70は、インターネット90に接続されている。第2集計装置70は、1台のコンピューターから構成されてもよいし、分散処理又は並列処理が可能な複数台のコンピューターから構成されてもよい。第2集計装置70は、クラウドコンピューティングシステムであってもよい。
【0049】
第2集計装置70は、インターネット、ローカルエリアネットワーク、専用回線又はUSB機器等を介して無線装置71に接続されている。無線装置71は、送信機33からアンテナ72を介して電波を受信し、その電波に乗ったX軸回り及びY軸回りの傾斜角データを第2集計装置70に転送する。従って、第2集計装置70は、無線装置71を通じて傾斜角計測器30と通信可能である。
【0050】
第2集計装置70は、記憶装置73に接続されている。記憶装置73は、半導体記憶装置、磁気記憶装置、データサーバー、ファイルサーバー又はNASである。
【0051】
第2集計装置70には、プログラムがインストールされている。このプログラムは、以下のような処理を第2集計装置70に実行させる。
【0052】
第2集計装置70は、X軸回り及びY軸回りの傾斜角データを無線装置71から受けるたびに、X軸回り及びY軸回りの傾斜角データを時系列で記憶装置73に記録する。これにより、第2集計装置70は、時系列データ74を記憶装置73に蓄積する。時系列データ74は、X軸回りの傾斜角データ及びY軸回りの傾斜角データを時系列で配列したデータ列である。
【0053】
[5. 第3集計装置]
第3集計装置80は、インターネット90に接続されている。第3集計装置80は、例えばパーソナルコンピューター、タブレットパーソナルコンピューター、スマートフォン、携帯情報端末及びモバイルコンピューター等のようなコンピューターである。第3集計装置80は、1台のコンピューターから構成されてもよいし、分散処理又は並列処理が可能な複数台のコンピューターから構成されてもよい。
【0054】
第3集計装置80は、記憶装置83に接続されている。記憶装置83は、半導体記憶装置、磁気記憶装置又はNASである。記憶装置83は、第3集計装置80に内蔵されていてもよいし、第3集計装置80に外付けされていてもよい。
【0055】
第3集計装置80には、プログラムがインストールされている。このプログラムは、以下のような処理を第3集計装置80に実行させる。
【0056】
第3集計装置80は、第1集計装置60と協働してデータ同期を実行する。データ同期とは、第1集計装置60と第3集計装置80の間で記憶装置63,83のデータを集約化(consolidate)して、これらのデータを一致させる処理である。つまり、第3集計装置80は、第1集計装置60と協働してデータ同期を実行することによって、記憶装置83の時系列データ84を記憶装置63の時系列データ64に一致させる。従って、同期された時系列データ84は、第1計測点96の3次元的な位置をX座標、Y座標及びZ座標により表した位置データを、時系列で配列したデータ列である。なお、第3集計装置80が、第1集計装置60及び記憶装置63から時系列データ64をダウンロードして、それを時系列データ84として記憶装置83に記録してもよい。
【0057】
第3集計装置80は、第2集計装置70と協働してデータ同期を実行し、記憶装置83の時系列データ85を記憶装置73の時系列データ74に一致させる。従って、同期された時系列データ85は、第2計測点97におけるX軸回り及びY軸回りの傾斜角データを、時系列で配列したデータ列である。なお、第3集計装置80が、第2集計装置70及び記憶装置73から時系列データ74をダウンロードして、それを時系列データ85として記憶装置83に記録してもよい。
【0058】
第3集計装置80は、次式(1)に従って、時系列データ84及び時系列データ85における同一番目(つまり、同一時刻)の位置データ及び傾斜角データから、第2計測点97の3次元的な位置データを算出する。第3集計装置80は、算出した位置データの時系列データ86を記憶装置83に蓄積する。時系列データ86は、第2計測点97の位置データを時系列で配列したデータ列である。
【0059】
【数1】
【0060】
図3図5を参照して、式(1)についてを説明する。
ポール11をXZ平面に平行投影した場合、XZ平面におけるポール11の長さは次式(2)により求められ、第2計測点97のX座標と第2計測点97のX座標の差は次式(3)により求められる。ポール11をYZ平面に平行投影した場合、YZ平面におけるポール11の長さは次式(4)により求められ、第1計測点96のY座標と第2計測点97のY座標の差は次式(5)により求められる。第1計測点96のZ座標と第2計測点97のZ座標の差は次式(6)により求められる。これらの式から式(1)が求まる。
【0061】
【数2】
【0062】
第3集計装置80は、時系列データ84の各位置データから時系列データ84の初期の位置データを減算することによって差を求め、そのような差を時系列で並べた時系列データ87を記憶装置83に記録する。そのように求められた差は第1計測点96の変位データであり、時系列データ87は、第1計測点96の変位データを時系列で配列したデータ列である。
【0063】
第3集計装置80は、時系列データ85の各傾斜角データから時系列データ85の初期の傾斜角データを減算することによって差を求め、そのような差を時系列で並べた時系列データ88を記憶装置83に記録する。そのように求められた差は、第2計測点97におけるX軸回り及びY軸回りの傾斜角変位データであり、時系列データ88は、X軸回り及びY軸回りの傾斜角変位データを時系列で配列したデータ列である。
【0064】
第3集計装置80は、時系列データ86の各位置データから時系列データ86の初期の位置データを減算することによって差を求め、そのような差を時系列で並べた時系列データ89を記憶装置83に記録する。そのように求められた差は第2計測点97の変位データであり、時系列データ89は、第2計測点97の変位データを時系列で配列したデータ列である。
【0065】
第3集計装置80は、時系列データ87に基づいてグラフのイメージを生成する。そして、第3集計装置80は、そのイメージを映像信号に変換し、その映像信号をディスプレイデバイス82に出力する。こうして、第3集計装置80は、グラフのイメージをディスプレイデバイス82に表示する。図6は、ディスプレイデバイス82に表示されたグラフの一例である。図6に示すように、グラフは時系列データ87の各変位データが時系列でプロットされたものであり、グラフの横軸が時間を表し、縦軸が各次元の変位データを表す。このグラフ中のプロット点からなる曲線は、第1計測点96の変位の経時的な変動を表す。
【0066】
同様に、第3集計装置80は、時系列データ84~86,88,89のそれぞれに基づいたグラフのイメージをディスプレイデバイス82に表示する。時系列データ84に基づいたグラフ中の曲線は、第1計測点96の位置の経時的な変動を表す。時系列データ85に基づいたグラフ中の曲線は、第2計測点97におけるX軸回り及びY軸回りの傾斜角の経時的な変動を表す。時系列データ86に基づいたグラフ中の曲線は、第2計測点97の位置の経時的な変動を表す。図7に示すように、時系列データ88に基づいたグラフ中の曲線は、第2計測点97におけるX軸回り及びY軸回りの傾斜角変位の経時的な変動を表す。図8に示すように、時系列データ89に基づいたグラフ中の曲線は、第2計測点97の変位の経時的な変動を表す。
【0067】
なお、第3集計装置80は、前述の各種のグラフの全てをディスプレイデバイス82に表示するのではなく、これらグラフのうち少なくとも1つをディスプレイデバイス82に表示すればよい。第3集計装置80が前述の各種のグラフのうち2以上を表示する場合、これらグラフが同時に表示されてもよいし、順次表示されてもよい。
【0068】
[6. まとめ]
(1) 衛星無線機21は、複数の衛星99から衛星波を周期的に受信することによって、衛星波に乗った発信時刻データ、エフェメリスデータ及びアルマナックデータを周期的に取得する。衛星無線機21は、衛星波を受信するたびに、発信時刻データ、エフェメリスデータ、アルマナックデータ及び受信時刻データが乗った地上波を送信する。第1集計装置60は、発信時刻データ、エフェメリスデータ、アルマナックデータ及び受信時刻データを受けるたびに、発信時刻データ、エフェメリスデータ、アルマナックデータ及び受信時刻データから第1計測点96の位置を計算し、その位置データを記憶装置63に記録することによって、位置データを時系列で配列した時系列データ64を記憶装置63に蓄積する。地質活動に起因した地面95の位置の変化は、時系列データ64から把握できる。よって、地盤観測システム1は、地質活動に起因した地面95の位置の変化を長期間にわたって観測することに貢献する。
【0069】
(2) 衛星無線機21が周期的に動作するところ、衛星無線機21が動作しない時には、電源装置25から衛星無線機21への電力供給が遮断される。そのため、電源装置25の電力消費が抑えられ、衛星無線機21が長期間にわたって衛星波を受信することができる。よって、長期間の時系列データ64を蓄積することができる。
【0070】
(3) 傾斜角計測器30が周期的に傾斜角を計測して、傾斜角データが乗った電波を周期的に送信する。第2集計装置70は、傾斜角データを受けるたびに、その傾斜角データを記憶装置73に記録することによって、傾斜角データを時系列で配列した時系列データ74を記憶装置73に蓄積する。地質活動に起因した地面95の位置の変化は、時系列データ74から把握できる。よって、地盤観測システム1は、地質活動に起因した地面95の傾斜角の変化を長期間にわたって観測することに貢献する。
【0071】
(4) 傾斜角計測器30が周期的に計測の動作をするところ、傾斜角計測器30が計測の動作しない時には、傾斜角計測器30が電力を殆ど消費しない。そのため、電源装置39の電力消費が抑えられ、傾斜角計測器30が長期間にわたって傾斜角を計測することができる。よって、長期間の時系列データ74を蓄積することができる。
【0072】
(5) 中継機20と傾斜角計測器30が互いに独立している。そのため、中継機20と傾斜角計測器30のどちらかに不具合が生じても、地質活動に起因した地面95の変化は、時系列データ64又は時系列データ74から把握できる。
【0073】
(6) 第1集計装置60と第2集計装置70が互いに独立している。第1集計装置60と第2集計装置70のどちらかに不具合が生じても、地質活動に起因した地面95の変化は、時系列データ64又は時系列データ74から把握できる。
【0074】
(7) 第3集計装置80が、第2計測点97の位置データを時系列で配列した時系列データ86を記憶装置83に蓄積する。そのため、地面95の傾斜角が変化し、ポール11が傾いたものとしても、地面95上の第2計測点97の位置の変化が正確に計測される。
【0075】
(8) 第3集計装置80は、時系列データ84の各位置データから時系列データ84の初期の位置データを減算することによって差を求め、そのような差を時系列で並べた時系列データ87を記憶装置83に記録する。そのため、第1計測点96の変位の経時的な変動を時系列データ87から把握できる。
【0076】
(9) 第3集計装置80は、時系列データ85の各傾斜角データから時系列データ85の初期の傾斜角データを減算することによって差を求め、そのような差を時系列で並べた時系列データ88を記憶装置83に記録する。そのため、地面95の傾斜角の変位の経時的な変動を時系列データ88から把握できる。
【0077】
(10) 第3集計装置80は、時系列データ86の各位置データから時系列データ86の初期の位置データを減算することによって差を求め、そのような差を時系列で並べた時系列データ89を記憶装置83に記録する。そのため、第2計測点97における地面95の変位の経時的な変動を時系列データ89から把握できる。
【0078】
(11) 第3集計装置80が各種のグラフのイメージをディスプレイデバイス82に表示するため、ユーザーが地面95の経時的な変動をグラフから視覚的に把握することができる。
【0079】
[7. 変形例]
(1) 傾斜角計測器30の電源装置39が用いられる代わりに、中継機20の電源装置25が傾斜角計測器30に兼用されてもよい。中継機20の電源装置25が用いられる代わりに、傾斜角計測器30の電源装置39が中継機20に兼用されてもよい。
【0080】
(2) 傾斜角計測器30の制御回路35が用いられる代わりに、中継機20の制御回路23が傾斜角計測器30に兼用されてもよい。中継機20の制御回路23が用いられる代わりに、傾斜角計測器30の制御回路35が中継機20に兼用されてもよい。
【0081】
(3) 傾斜センサー31が3次元の傾斜角を検出してもよい。つまり、傾斜センサー31は、X軸回りの傾斜角及びY軸回りの傾斜角に加えて、Z軸回りの傾斜角を検出してもよい。
【0082】
(4) 送信機33の通信規格が変更されることによって、送信機33が無線装置61と通信可能であってもよい。この場合、第1集計装置60が、傾斜角データを時系列で記憶装置63に記録することによって、時系列データ74を記憶装置63に蓄積する。この場合、第3集計装置80が、第1集計装置60と協働してデータ同期を実行することによって、記憶装置83の時系列データ85を記憶装置63の時系列データ74に一致させる。
【0083】
(5) 上記(4)において説明したように、第1集計装置60が時系列データ74を記憶装置63に蓄積した場合、第1集計装置60は、上記式(1)に従って、時系列データ64及び時系列データ74における同一番目の位置データ及び傾斜角データから、第2計測点97の3次元的な位置データを算出してもよい。この場合、第1集計装置60は、算出した位置データを時系列で記憶装置63に記録することによって位置データの時系列データ86を記憶装置83に蓄積する。また、第3集計装置80が時系列データ87を記憶装置83に蓄積したのと同様に、第1集計装置60は、記憶装置63の時系列データ64に基づいて、第2計測点97の変位データを算出して、その変位データを時系列で配列した時系列データ87を記憶装置63に蓄積する。同様に、第1集計装置60は、時系列データ88及び時系列データ89を記憶装置63に蓄積する。また、第3集計装置80が各種のグラフのイメージをディスプレイデバイス82に表示するのと同様に、第1集計装置60が、それに接続されたディスプレイデバイスに各種のグラフのイメージを表示する。
【0084】
(6) 基準となる固定局が観測局10と異なる位置に設置されてもよい。固定局は、観測局10と同様に、衛星アンテナ、衛星無線機、制御回路及び電源装置を有する。固定局は安定された位置に固定され、固定局の移動・傾動が発生しない。固定局の衛星無線機は、複数の衛星99から衛星波を周期的に受信するたびに、受信した発信時刻データ、エフェメリスデータ及びアルマナックデータに受信時刻データを重畳するとともに、発信時刻データ、エフェメリスデータ、アルマナックデータ及び受信時刻データが乗った地上波をアンテナにより送信する。第1集計装置60は、観測局10によって送信された発信時刻データ、エフェメリスデータ、アルマナックデータ及び受信時刻データと、固定局によって送信された発信時刻データ、エフェメリスデータ、アルマナックデータ及び受信時刻データとを無線装置61から受けるたびに、それらのデータから第1計測点96の3次元的な位置データをRTK(Real Time Kinematic)-GNSS又はD(Differential)-GNSSの測位法に従って算出し、位置データを時系列で記憶装置63に記録する。これにより、第1集計装置60は、時系列データ64を記憶装置63に蓄積する。
【符号の説明】
【0085】
1 地盤観測システム
10 観測局
11 ポール
17 衛星アンテナ
21 衛星無線機
30 傾斜角計測器
60 第1集計装置
63 記憶装置
64 時系列データ(第1の時系列データ)
70 第2集計装置
73 記憶装置
74 時系列データ(第2の時系列データ)
80 第3集計装置
82 ディスプレイデバイス
83 記憶装置
84 時系列データ(第1の時系列データ)
85 時系列データ(第2の時系列データ)
86 時系列データ(第3の時系列データ)
88 時系列データ(第4の時系列データ)
89 時系列データ(第5の時系列データ)
95 地面
96 第1計測点
97 第2計測点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8