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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003479
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】プレスインペラ及びポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/22 20060101AFI20240105BHJP
【FI】
F04D29/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102658
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000148209
【氏名又は名称】株式会社川本製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】山下 英吾
(72)【発明者】
【氏名】鷲津 維摩
(72)【発明者】
【氏名】大杉 洋人
(72)【発明者】
【氏名】清水 孝司
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA02
3H130AB12
3H130AB25
3H130AB46
3H130BA03C
3H130BA24C
3H130BA66C
3H130CB09
3H130DA02Z
3H130EA06C
3H130EA07C
3H130EA08C
3H130EB02C
3H130ED01C
3H130ED02C
(57)【要約】
【課題】ポンプ性能の安定化及び強度の向上が可能なプレスインペラ及びポンプ装置を提供すること。
【解決手段】インペラ33は、主板41と、主板41と対向して設けられ、中心に流体の入口となる吸込口42a、外周縁側に形成された軸方向に直交する方向に延びる平板部42b、及び、吸込口42a及び平板部42bを連続し、平板部42bに対して直線状に傾斜する傾斜部42cを有する、平板部42b及び主板41の外周縁側が前記流体の出口を構成する側板42と、主板41及び側板42の間に配置される複数の羽根43と、を備える。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主板と、
前記主板と対向して設けられ、中心に流体の入口となる吸込口、外周縁側に形成された軸方向に直交する方向に延びる平板部、及び、前記吸込口及び前記平板部を連続し、前記平板部に対して直線状に傾斜する傾斜部を有する、前記平板部及び前記主板の外周縁側が前記流体の出口を構成する側板と、
前記主板及び前記側板の間に配置される複数の羽根と、
を備えるプレスインペラ。
【請求項2】
径方向外方における前記羽根の内周面の端部から、前記羽根の内周面の端部の接線方向に直交する方向で前記羽根の内周面と対向する他の前記羽根の外周面までの距離をAとしたときに、前記側板の外周縁から前記側板の前記平板部及び前記傾斜部の稜部である絞り始点部までの距離Lは、
1/4A≦L≦3/4A
である、請求項1に記載のプレスインペラ。
【請求項3】
前記主板及び前記側板の対向方向における前記羽根の前記入口の高さをW1、前記羽根の前記出口の高さをW2としたときに、
前記羽根の前記入口及び前記出口の高さ比W1/W2は、
2≦W1/W2≦3
である、請求項1に記載のプレスインペラ。
【請求項4】
ポンプの吸込口径に対し、前記吸込口の入口径及び前記複数の羽根の入口径は、1.0~1.3の範囲である、請求項1に記載のプレスインペラ。
【請求項5】
前記主板に挿入される挿入部及び前記主板に溶接される座部を有するインペラハブをさらに備え、
前記主板は、中心に形成された前記インペラハブの一部を挿入する開口を有し、
前記主板の前記開口の内径は、前記インペラハブの前記座部の外径及び前記側板の前記吸込口の内径よりも小径である、請求項1に記載のプレスインペラ。
【請求項6】
前記インペラハブは、バランスホールを有する、請求項5に記載のプレスインペラ。
【請求項7】
ポンプケーシングと、
前記ポンプケーシングに収容される請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のプレスインペラと、
前記ポンプケーシングを覆うポンプカバーと、
前記プレスインペラに接続される回転軸と、
を備えるポンプ装置。
【請求項8】
モータ軸を有するモータと、
前記回転軸及び前記モータ軸を接続する軸継手と、
を備える請求項7に記載のポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス加工した部材を溶接することで形成されるプレスインペラ及びポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従前から、インペラとして、鋼板をプレス加工し、主板及び側板の間に複数の羽根を配置して、主板、側板及び複数の羽根をレーザ溶接することで製造する、所謂プレスインペラが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、ポンプ性能やインペラの強度を低下させることなく容易に製作できるインペラとして、外形側の流路を分割させる技術(例えば、特許文献2参照)や、入口流路形状を正方形にする技術(例えば、特許文献3参照)も知られている。また、インペラの流路形状を入口から出口に向かって変える技術(例えば、特許文献4参照)も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-062983号公報
【特許文献2】特開2005-023794号公報
【特許文献3】特開2002-122095号公報
【特許文献4】特許第4566741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、プレス加工を行った部材を溶接する技術では、プレス加工時に生じるスプリングバック等によって主板及び側板に反りが生じる。このため、インペラの流路高さ等が製品毎に異なり、ポンプ性能にバラツキが生じる虞や、溶接強度が低下する虞等、ポンプ性能が安定しない虞がある。
【0006】
そこで、本発明は、ポンプ性能の安定化及び強度の向上が可能なプレスインペラ及びポンプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係るインペラは、主板と、前記主板と対向して設けられ、中心に流体の入口となる吸込口、外周縁側に形成された軸方向に直交する方向に延びる平板部、及び、前記吸込口及び前記平板部を連続し、前記平板部に対して直線状に傾斜する傾斜部を有する、前記平板部及び前記主板の外周縁側が前記流体の出口を構成する側板と、前記主板及び前記側板の間に配置される複数の羽根と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ポンプ性能の安定化及び強度の向上が可能なプレスインペラ及びポンプ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るポンプ装置の構成を示す部分断面図。
図2】本発明の一実施形態に係るインペラの構成を示す正面図。
図3】同インペラの構成を示す断面図。
図4】異なる側板絞り始点部のインペラの要部構成を、それぞれ断面で示す説明図。
図5】ポンプの吸込口径に対するインペラの吸込口径比の一例を示す説明図。
図6】実施形態のインペラ及び比較例のインペラの羽根入口の構成を、それぞれ断面で示す説明図。
図7】同インペラの製造方法の一例を示す流れ図。
図8】実施形態のインペラと比較例のインペラの吸込性能を示す説明図。
図9】本発明の他の実施形態に係るインペラの構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係るポンプ装置1及びインペラ33の構成について、図1乃至図8を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るポンプ装置1の構成を示す部分断面図であり、図2は、本発明の一実施形態に係るインペラ33の構成を示す正面図であり、図3は、インペラ33の構成を示す断面図である。図4は、異なる側板絞り始点部42dのインペラ33の出口側の構成を、それぞれ断面で示す説明図である。図5は、ポンプ12の吸込口31aの吸込口径に対するインペラ33の吸込口径比の一例を示す説明図であり、図6は、実施形態のインペラ33及び比較例のインペラの羽根入口の構成を、それぞれ断面で示す説明図である。図7は、インペラ33の製造方法の一例を示す流れ図であり、図8は、実施形態のインペラ33と比較例のインペラの吸込性能を示す説明図である。
【0011】
図1に示すように、ポンプ装置1は、例えば、モータ11と、ポンプ12と、軸継手13と、軸カバー14と、を備える。ポンプ装置1は、例えば、モータ11及びポンプ12を固定するベース15を備える。図1に示す例では、ポンプ装置1は、横軸ポンプであるが、縦軸ポンプであっても良い。
【0012】
モータ11は、モータケーシング21と、モータケーシング21に収容される固定子と、固定子により回転する回転子と、回転子に固定されるモータ軸22と、を備える。モータ11は、ポンプ12に接続され、モータ軸22が回転することで、ポンプ12を駆動する。モータケーシング21は、ベース15に固定される。モータ軸22は、軸継手13を介してポンプ12に接続される。
【0013】
ポンプ12は、ポンプケーシング31と、ケーシングカバー32と、インペラ33と、回転軸34と、を備える。また、ポンプ12は、1つ又は2つのライナリング35と、メカニカルシール等の軸封部材36と、を備える。ポンプ12は、軸継手13を介して回転軸34がモータ軸22に接続される。ポンプ12は、インペラ33を単数有する単段ポンプであってもよく、また、インペラ33を複数有する多段ポンプであってもよい。
【0014】
ポンプケーシング31は、例えば、ベース15に固定される。ポンプケーシング31は、吸込口31a及び吐出口31bを有する。また、ポンプケーシング31は、インペラ33を収容する。ポンプケーシング31は、軸方向で一端側に吸込口31aを有し、軸方向で他端側がインペラ33を挿入可能な開口31cが形成される。また、ポンプケーシング31の周面、例えば、上端には、吐出口31bが形成されるとともに、下端に、ベース15に固定する脚部31dが形成される。
【0015】
ケーシングカバー32は、ポンプケーシング31の開口31cを覆う。ケーシングカバー32は、回転軸34を挿入可能、且つ、軸封装置を取り付け可能に形成される。
【0016】
図2及び図3に示すように、インペラ33は、主板41と、側板42と、複数の羽根43と、インペラハブ44と、を備える。インペラ33は、金属材料をプレス加工することで形成された主板41、側板42及び複数の羽根43をレーザ溶接により一体に組みたてられた、所謂プレスインペラである。
【0017】
主板41は、1枚又は複数枚設けられる。例えば、図2及び図3の例においては、主板41が1枚用いられる例を示す。主板41は、平板状、且つ、円板状に形成される。主板41は、中央に形成され、インペラハブ44が配置される開口41aを有する。また、主板41は、複数の羽根43を配置する複数の溝や孔を有する構成であってもよい。
【0018】
側板42は、円板状に形成される。側板42は、中央に形成された吸込口42aを有する。側板42は、複数の羽根43を配置する複数の溝や孔を有する構成であってもよい。円板状に形成される側板42は、外周縁から径方向内方の中途部まで平板状に形成される平板部42bと、平板部42b及び吸込口42aを連続する、平板部42bに対して直線状に傾斜する傾斜部42cと、を備える。
【0019】
吸込口42aの内径は、主板41の開口41aの内径よりも大径に形成される。平板部42bは、環状に形成される。傾斜部42cは、環状に形成され、平板部42b及び吸込口42aと一体に形成される。例えば、側板42は、平板部42b及び傾斜部42cを一枚の平板からプレス加工することで形成される。なお、吸込口42aは、平板部42b及び傾斜部42cとともに、一枚の平板からプレス加工を行っても良く、また、平板部42b及び傾斜部42cとは別に成形し、その後、傾斜部42cの中央に溶接により固定される構成であってもよい。
【0020】
主板41及び側板42の対向方向における幅(羽根43の高さ)は、中心側から外周縁に向かって、傾斜部42cの傾斜方向沿って漸次小さくなり、そして、平板部42bにおいて一定となる。即ち、主板41及び側板42は、インペラ33の隣り合う羽根43間に形成される流路の入口(インペラ33の中心側の開口)から出口(インペラ33の外周縁側の開口)に向かって幅が漸次小さくなり、そして、傾斜部42c及び平板部42bの稜部(以下、側板絞り始点部42d)で最も幅が小さくなり、その後、平板部42bにおいて、最も小さい幅で一定となる。
【0021】
複数の羽根43は、例えば、周方向に等間隔に配置される。羽根43は、レーザ溶接等の溶接によって、主板41及び側板42に固定される。例えば、主板41及び複数の羽根43、並びに、側板42及び複数の羽根43は、主板41及び側板42のそれぞれ外主面側から溶接される。羽根43は、例えば、厚さが一定に形成され、一以上の曲率中心を有する所定の曲率半径で湾曲する。複数の羽根43は、軸方向(主板41及び側板42の対向方向)に沿って延びる所謂二次元形状であってもよく、また、軸方向に対して傾斜する所謂三次元形状であってもよい。
【0022】
羽根43の主板41側の端面は、例えば、主板41の主面に沿った方向(軸心方向に直交する方向)に延びる。また、羽根43の側板42側の端面は、平板部42bと対向する部位において、主板41の主面に沿った方向(軸心方向に直交する方向)に延び、側板絞り始点部42dから吸込口42aに向かって、即ち傾斜部42cと対向する部位において、傾斜部42cと同じ傾斜角度θで軸心方向に対して傾斜して延びる。羽根43のインペラ33の中央側の端部は、吸込口42aと略同じ位置に配置される。
【0023】
インペラハブ44は、外径が部分的に異なる円筒状に形成され、主板41の中心に設けられる。インペラハブ44は、レーザ溶接等の溶接によって、主板41に固定される。インペラハブ44は、例えば、回転軸34を挿入する孔部44aと、主板41の開口41aに挿入される挿入部44bと、主板41の側板42と対向する主面と反対側の主面と当接する座部44cと、ライナリング35と対向する筒部44dと、を備える。
【0024】
孔部44aは、例えば、内周面に形成されたキー溝を有する。挿入部44bは、主板41の内部に配置される外周面に形成された、水の流れ方向を案内する傾斜面44eと、挿入部44bに軸方向を貫通して形成されたバランスホール44fと、を有する。挿入部44bの先端面は、回転軸34を固定するボルト等の締結部材の座面となる。挿入部44bは、座部44cに隣接する部位の外径が開口41aの内径と同一又は開口41aの内径よりも若干小径に形成される。また、挿入部44bは、例えば、座部44cに隣接する部位よりも先端側が、傾斜面44eにより先端側に向かって漸次縮径し、先端において、一定の外径に形成される。挿入部44bの最大外径は、側板42の吸込口42aの内径よりも小径に形成される。
【0025】
筒部44dは、座部44cの外周縁から軸方向に延びる円筒状に形成され、座部44cの外径と同じ外径に形成される。筒部44dは、ライナリング35と所定の隙間を空けて対向する。
【0026】
このようなインペラ33の構成について、図4乃至図6を用いて以下詳述する。なお、図3に示すインペラ33は、ポンプ12の吸込口径が50mmの例を示す。
【0027】
インペラ33は、側板42の吸込口42aの内径(インペラ33(側板42)の入口径)をφD1、平板部42b及び傾斜部42cの稜部である側板絞り始点部42dの径φD2、側板42の外径(外周縁の径)をφD3としたときに、φD1<φD2<φD3に設定される。
【0028】
例えば、平板部42b及び傾斜部42cの稜部である側板絞り始点部42dの側板42(又は羽根43)の外周縁からの距離Lは、1/4A≦L≦3/4Aの範囲内に設定される。
【0029】
ここで、「A」とは、図2に示すように、インペラ33の径方向外方における羽根43の内周面の端部(羽根43の外周縁の内端)から、該羽根43の内周面の端部の接線方向に直交する方向で該羽根43の内周面と対向する羽根43の外周面までの距離である。図2中において、側板絞り始点部42dが設けられる距離L(1/4A≦L≦3/4A)の範囲を部分的に記載する。
【0030】
例えば、距離Lが1/2Aであるときの側板絞り始点部42dの径φD2が基準値であり、距離Lが1/4Aであるときの側板絞り始点部42dの径φD2が最大値であり、距離Lが3/4Aであるときの側板絞り始点部42dの径φD2の最小値となる。図4において、φD2が基準値、最大値及び最小値におけるインペラ33の側板絞り始点部42dの構成を断面で示す。なお、距離Lが1/4Aより小さいと、側板絞り始点部42dから外周縁までの間の流路における流路断面形状が変化しやすくなり、距離Lが3/4Aより大きいと、同じインペラ33の径としたときに、傾斜部42cの傾斜角度θが大きくなり、側板42のスプリングバックが生じやすい。
【0031】
インペラ33の中央側の複数の羽根43の端部の接円の径φd1は、側板42の吸込口42aの内径φD1と略同じ径(φD1≒φd1)である。具体的には、複数の羽根43の端部の接円の径φd1は、側板42の吸込口42aの内径φD1と同じか、若干小さいか又は大きい。より具体的には、複数の羽根43の端部の接円の径φd1が側板42の吸込口42aの内径φD1と同じか、若干小さいか又は大きいインペラ33は、側板42の吸込口42aの内径φD1及び複数の羽根43の端部の接円の径φd1が、ポンプ12の吸込口径φD4に対する吸込口径比が1.0~1.3に設定される。
【0032】
実施例として、吸込口径φD4が40mm、50mm、65mmの例を図5に示す。図5に示すように、ポンプ12の吸込口径φD4が40mmのときに、φD1は48mmであり、吸込口径比が1.2、φd1は45mmであり、吸込口径比が1.1である。図5に示すように、ポンプ12の吸込口径φD4が50mmのときに、φD1は58mmであり、吸込口径比が1.2、φd1は62mmであり、吸込口径比が1.2である。また、吸込口径φD4が50mmであり、φD1は60mm、吸込口径比が1.2のときであって、φd1が50mmのとき、吸込口径比は1.0であり、φd1が55mmのとき、吸込口径比は1.1であり、φd1が60mmのとき、吸込口径比は1.2である。図5に示すように、ポンプ12の吸込口径φD4が65mmのときに、φD1は78mmであり、吸込口径比が1.2、φd1は72mmであり、吸込口径比が1.1である。図5に示す例では、複数の羽根43の中心側の端部は、傾斜部42c及び吸込口42aの稜部に配置される。
【0033】
なお、図6の中段に示すように、例えば、傾斜部42c上に羽根43の端部が存し、複数の羽根43の端部の接円の径φd1が側板42の吸込口42aの内径φD1よりも大きい(φD1<φd1)、より具体的には、側板42の吸込口42aの内径φD1のポンプ12の吸込口径φD4に対する吸込口径比が1.0~1.3であり、且つ、複数の羽根43の端部の接円の径φd1のポンプ12の吸込口径φD4に対する吸込口径比が1.3よりも大きいと、羽根43の係りが減少するため、ポンプ性能が低下する。
【0034】
また、図6の下段に示すように、羽根43の端部が吸込口42a上に存し、複数の羽根43の端部の接円の径φd1が側板42の吸込口42aの内径φD1よりも小さい(φD1>φd1)、より具体的には、側板42の吸込口42aの内径φD1のポンプ12の吸込口径φD4に対する吸込口径比が1.0~1.3であり、且つ、複数の羽根43の端部の接円の径φd1のポンプ12の吸込口径φD4に対する吸込口径比が1.0よりも小さいと、隣り合う羽根43の開口幅(羽根43の入口径)が小さくなり、吸込性能が低下する。
【0035】
なお、図6の上段には、実施形態のインペラ33として、複数の羽根43の端部の接円の径φd1は、側板42の吸込口42aの内径φD1と略同じ径(φD1≒φd1)、具体的には、側板42の吸込口42aの内径φD1及び複数の羽根43の端部の接円の径φd1のそれぞれのポンプ12の吸込口径φD4に対する吸込口径比が1.0~1.3である例を示す。
【0036】
また、複数の羽根43により形成される入口の流路断面積は、出口の流路断面積を100%としたときに、150%~200%に設定される。図3に示すインペラ33の例においては、インペラ33の複数の羽根43による入口の流路断面積は、出口の流路断面積を100%としたときに、166%とした例である。入口の流路断面積の下限値(150%)は、ポンプ性能及び吸い込み性能を考慮した値であり、また、上限値(200%)は、側板42の傾斜部42cの傾斜角度θが増加するため、側板42に反りが生じやすくなる値である。即ち、側板42の傾斜部42cの傾斜角度θが増加すると、スプリングバックが生じやすくなるとともに、スプリングバック量が増加し、性能のバラツキや溶接強度の低下の要因となる。例えば、上限値(200%)を超えた場合の一例においては、傾斜部42cにおける傾斜角度θが15°以上となる。
【0037】
また、インペラ33は、複数の羽根43により形成される流路の入口における高さをW1とし、出口における高さW2としたときに、入口及び出口の高さの比W1/W2は、2≦W1/W2≦3に設定される。ここで、流路の高さとは、主板41及び側板42の軸方向の距離である。また、流路の入口における高さW1は、羽根43のインペラ33の中心側における高さである。
【0038】
また、インペラ33の側板42の平板部42bに対する傾斜部42cの傾斜角度θは、8°≦θ<12°に設定される。インペラハブ44の座部44cの外径φD5は、主板41の開口41aの内径、及び、側板42の吸込口42aの内径φD1よりも大径(φD1<φD5)に形成される。
これらのように、インペラ33の構成が設定される。
【0039】
回転軸34は、一端側にインペラ33を固定する。回転軸34は、ケーシングカバー32から外部へと配置され、他端側に軸継手13が設けられる。
【0040】
ライナリング35は、ポンプケーシング31及び/又はケーシングカバー32とインペラ33との間に設けられる。具体例として、ライナリング35は、ポンプケーシング31及びケーシングカバー32のそれぞれに固定される。ポンプケーシング31に固定されたライナリング35は、インペラ33の吸込口42aと所定の隙間を空けて対向する。ケーシングカバー32に固定されたライナリング35は、インペラ33の筒部44dと所定の隙間を空けて対向する。
【0041】
メカニカルシール36は、回転軸34とケーシングカバー32との間を軸封する。
【0042】
軸継手13は、モータ軸22及び回転軸34を接続する。
【0043】
軸カバー14は、モータ軸22、回転軸34及び軸継手13を覆う。例えば、軸カバー14は、ポンプケーシング31及びベース15に固定される第1カバー51と、ベース15に固定される第2カバー52と、を備える。第1カバー51は、例えば、複数の軸受け部材51aを有し、回転軸34を回転可能に支持する。第1カバー51は、例えば、メカニカルシール36からの水の漏洩を確認可能に、一部が開口する。第2カバー52は、回転軸34の一部及びモータ軸22の一部及び軸継手13を覆う。
【0044】
ベース15は、ポンプ装置1の設置個所に固定される。ベース15は、ネジ穴を複数有し、モータ11、ポンプ12及び軸カバー14をボルト等の締結部材によって固定可能に形成される。
【0045】
このように構成されたポンプ装置1のインペラ33は、図7に示すように、先ず、金属板からプレス型及びプレス機を用いて、プレス加工を行うことで、主板41、側板42及び複数の羽根43がそれぞれ成形される(ステップST1)。次に、溶接用の取り付け型に側板42を配置し、羽根43を側板42に配置し(ステップST2)、側板42に複数の羽根43を溶接し、中間成形品を作成する(ステップST3)。次に、中間成形品nを取り付け型に配置することで複数の羽根43及び主板41を配置し(ステップST4)、中間成形品の複数の羽根43及び主板41を溶接する(ステップST5)。
【0046】
なお、溶接は、オペレータによる手作業により行う構成であってもよく、また、プログラムによって溶接機により自動的に行う構成であってもよい。
【0047】
次に、本実施形態のインペラ33と、比較例として従来のインペラとの性能の違いを説明する。図8に示すように、実施形態のインペラ33は、W1=10.6mm、W2=3.8mm、W1/W2=2.8とした。このとき、実施形態のインペラ33は、L=1/2Aである。比較例のインペラは、W1=6.6mm、W2=4.5mm、W1/W2=1.5とした。これら実施形態のインペラ33及び比較例のインペラで吸込性能(吸上可能高さ)を、それぞれ流量が0.2m/min及び0.4m/minのときに求めた。また、ポンプの比速度Nsを、Ns=150とした。
【0048】
図8に示すように、実施形態のインペラ33は、流量が0.2m/minであるときの吸込性能は9mであり、流量が0.4m/minであるときの吸込性能は7.5mであった。これに対し、比較例のインペラは、流量が0.2m/minであるときの吸込性能は8mであり、流量が0.4m/minであるときの吸込性能は5.5mであった。この例からも、実施形態のインペラ33は、比較例である従来のインペラに比較して、吸込性能が向上していることが明らかである。
【0049】
このように構成されたインペラ33及びインペラ33を用いたポンプ装置1によれば、側板42に平板部42bと、平板部42bに対して直線状に傾斜する傾斜部42cと、を設け、側板絞り始点部42dの側板42(又は羽根43)の外周縁からの距離Lを1/4A≦L≦3/4Aの範囲内に設定し、傾斜部42cの傾斜角度θを8°≦θ≦12°とした。
【0050】
これにより、複数の羽根43の入口側から出口側への流路断面積形状の変化を緩やかにし、そして、平板部42bの長さを確保できることから、出口側の流路における軸方向の高さを一定とした領域を確保することができる。
【0051】
よって、インペラ33は、複数の羽根43による入口流路断面積を向上支えることができるため、吸込性能を向上できるとともに、出口流路における断面形状の変化を少なくできるため、ポンプ性能が安定する。
【0052】
また、傾斜部42cの傾斜角度θを極力小さくできることから、側板42の成形におけるスプリングバック(反り)の発生を小さくすることができるため、インペラ33の流路高さに製品毎のバラツキが生じることを防止できる。よって、インペラ33は、ポンプ性能にバラツキが生じることを防止できるとともに、生産性が向上し、溶接強度が低下することを防止できる。また、複数の羽根43の入口流路断面積を向上することができるため、インペラ33の溶接に用いる溶接治具を簡素化することが可能となり、生産性の向上及びイニシャルコストの低減もできる。
【0053】
また、インペラ33は、側板42の吸込口42aの内径(側板入口径)φD1及び複数の羽根43の端部の接円の径φd1を、略同じ径(φD1≒φd1)とし、ポンプ12の吸込口径φD4に対する吸込口径比を1.0~1.3とした。これにより、インペラ33は、複数の羽根43の入口径が小さくなることを抑制し、羽根43のかかりが減少することを抑制できることから、吸込性能及びポンプ性能が低下することを防止できる。
【0054】
また、側板42の吸込口42aの内径φD1よりも、インペラハブ44の座部44cの外径φD5が大きい(φD1<φD5)ことから、主板41及びインペラハブ44の溶接部の表面積を向上させることができる。これにより、インペラ33の強度、並びに、主板41及びインペラハブ44の溶接強度を向上させることが可能となる。
【0055】
また、インペラ33に側板42側及び主板41側の圧力差によるスラスト荷重が印加されたとしても、インペラハブ44にスラスト荷重が印加される範囲が増えることで、主板41に印加されるスラスト荷重を低減することも可能となる。
【0056】
上述したように本実施形態に係るインペラ33及びインペラ33を用いたポンプ装置1によれば、プレスインペラとしても、主板41、側板42及び複数の羽根43を上述した構成とすることで、ポンプ性能の安定化、及び、強度の向上が可能となる。
【0057】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されない。上述した例では、インペラ33は、インペラハブ44にバランスホール44fを設ける構成を説明したがこれに限定されず、例えば、図10に示す他の実施形態のインペラ33のように、インペラハブ44は、バランスホール44fを有さない構成としてもよい。また、バランスホール44fを有さない構成とする場合には、ケーシングカバー32にライナリング35を設けない構成とし、インペラハブ44に筒部44dを設けない構成としてもよい。
【0058】
即ち、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0059】
1…ポンプ装置、11…モータ、12…ポンプ、13…軸継手、14…軸カバー、15…ベース、21…モータケーシング、22…モータ軸、31…ポンプケーシング、31a…吸込口、31b…吐出口、31c…開口、31d…脚部、32…ケーシングカバー、33…インペラ、34…回転軸、35…ライナリング、36…軸封部材、41…主板、41a…開口、42…側板、42a…吸込口、42b…平板部、42c…傾斜部、42d…側板絞り始点部、43…羽根、44…インペラハブ、44a…孔部、44b…挿入部、44c…座部、44d…筒部、44e…傾斜面、44f…バランスホール、51…第1カバー、51a…軸受け部材、52…第2カバー。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
図9