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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034794
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】ボールねじ装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 25/22 20060101AFI20240306BHJP
   F16H 25/24 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
F16H25/22 J
F16H25/22 A
F16H25/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139279
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100155457
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】石川 慎太朗
(72)【発明者】
【氏名】御厨 功
(72)【発明者】
【氏名】上岡 広樹
【テーマコード(参考)】
3J062
【Fターム(参考)】
3J062AA07
3J062AA18
3J062AB22
3J062BA12
3J062CD08
3J062CD23
3J062CD45
3J062CG83
(57)【要約】
【課題】ナットとねじ軸とを回転方向で係合させて直動部材のストロークを規制するボールねじ装置において、ナットを小型化する。
【解決手段】ボールねじ装置3は、ナット31に設けられたアーム52(ナット側ストッパ)と、ねじ軸32に設けられた凸部51(ねじ軸側ストッパ)とを備える。アーム52と凸部51とを回転方向で当接させることで、ねじ軸32のストロークを規制する。アーム52を、ナット31の内周に設ける。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に雌ねじ部を有するナットと、外周面に雄ねじ部を有するねじ軸と、前記雌ねじ部と前記雄ねじ部とで形成される転走路に配された複数のボールと、前記ナットに設けられたナット側ストッパと、前記ねじ軸に設けられたねじ軸側ストッパとを備え、前記ナット側ストッパと前記ねじ軸側ストッパとを回転方向で当接させることで前記ねじ軸又はナットのストロークを規制するボールねじ装置であって、
前記ナット側ストッパを、前記ナットの内周に設けたことを特徴とするボールねじ装置。
【請求項2】
前記転走路の端部に達した前記ボールを拾い上げて循環させるボール拾い上げ部材を有し、
前記ボール拾い上げ部材に、前記ナット側ストッパを設けた請求項1に記載のボールねじ装置。
【請求項3】
前記ボール拾い上げ部材が、前記雌ねじ部に嵌合するアームを有し、
前記アームを前記ナット側ストッパとして機能させる請求項2に記載のボールねじ装置。
【請求項4】
前記ねじ軸側ストッパと前記ナット側ストッパとを、同一材質で形成し、同一調質を施した請求項1~3の何れか1項に記載のボールねじ装置。
【請求項5】
前記ナットが回転部材、前記ねじ軸が直動部材であり、
前記ねじ軸が、前記雄ねじ部を有するねじ軸本体と、前記ねじ軸側ストッパを有するストッパ部材と、前記ねじ軸本体及び前記ストッパ部材を直径方向に貫通する穴と、前記穴に挿通され、前記ねじ軸本体と前記ストッパ部材を固定するピンとを有し、
前記ピンを、固定側の部材と回転方向で係合させることで、前記ねじ軸の回り止めを行う請求項1~3の何れか1項に記載のボールねじ装置。
【請求項6】
前記ナットが回転部材、前記ねじ軸が直動部材であり、
前記ねじ軸が、前記雄ねじ部を有するねじ軸本体と、前記ねじ軸側ストッパを有するストッパ部材とを有し、
前記ストッパ部材に、固定側の部材と回転方向で係合する回り止めを一体に設けた請求項1~3の何れか1項に記載のボールねじ装置。
【請求項7】
前記ナットを半径方向に貫通する貫通孔を形成し、この貫通孔にピンを挿通し、
前記ピンを前記ナット側ストッパとして機能させる請求項1~3の何れか1項に記載のボールねじ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールねじ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両等の省力化、低燃費化を目的とした電動化が進んでおり、例えば、自動車の自動変速機やブレーキ、ステアリング等の操作を電動モータの力で行うシステムが開発され、市場に投入されている。このような用途に使用されるアクチュエータとして、電動モータの回転運動を直線運動に変換するボールねじ装置を備えた直動アクチュエータが知られている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1に示されている直動アクチュエータは、ナットを回転部材、ねじ軸を直動部材としたボールねじ装置を備える。ナットの端面には、軸方向に突出した係止部が設けられ、ねじ軸の外周には、半径方向に突出した案内突起を有する回り止め部材が固定されている。ねじ軸がストロークエンドに達したら、ねじ軸の外周に固定された回り止め部材の案内突起と、ナットの端面に設けられた係止部とがナットの回転方向で係合し、これによりねじ軸のストロークが規制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5293887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のボールねじ装置では、ナットの端面に、ねじ軸のストロークを規制するための係止部が突出して設けられるため、係止部の分だけナットの軸方向寸法が大きくなる。
【0006】
そこで、本発明は、ナットとねじ軸とを回転方向で係合させて直動部材のストロークを規制するボールねじ装置において、ナットを小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するためになされた本発明は、内周面に雌ねじ部を有するナットと、外周面に雄ねじ部を有するねじ軸と、前記雌ねじ部と前記雄ねじ部とで形成される転走路に配された複数のボールと、前記ナットに設けられたナット側ストッパと、前記ねじ軸に設けられたねじ軸側ストッパとを備え、前記ナット側ストッパと前記ねじ軸側ストッパとを回転方向で当接させることで、前記ねじ軸又はナットのストロークを規制するボールねじ装置であって、前記ナット側ストッパを、前記ナットの内周に設けたことを特徴とする。
【0008】
このように、本発明に係るボールねじ装置では、従来品ではナットの端面から軸方向に突出していたナット側ストッパ(係止部)を、ナットの内周に設けた。これにより、ナットの端面からナット側ストッパが軸方向に突出しないため、ナットの軸方向寸法を縮小できる。
【0009】
上記のボールねじ装置は、転走路の端部に達したボールを拾い上げて循環させるボール拾い上げ部材を有することができる。この場合、ボール拾い上げ部材はナットの内周に露出しているため、このボール拾い上げ部材にナット側ストッパを設けることができる。
【0010】
具体的には、例えば、ボール拾い上げ部材が、雌ねじ部に嵌合するアームを有し、このアームをナット側ストッパとして機能させることができる。
【0011】
ねじ軸側ストッパとナット側ストッパとの硬さが異なると、両ストッパが当接を繰り返すことで、軟らかい方のストッパの摩耗量が大きくなる。従って、ねじ軸側ストッパとナット側ストッパとを、同一材質で形成し、同一調質(例えば熱処理)を施すことが好ましい。
【0012】
ねじ軸は、雄ねじ部を有するねじ軸本体と、ねじ軸側ストッパを有するストッパ部材と、ねじ軸本体及びストッパ部材を直径方向に貫通する穴と、この穴に挿通され、ねじ軸本体とストッパ部材を固定するピンとを有することができる。ナットが回転部材、ねじ軸が直動部材である場合、ねじ軸本体とストッパ部材とを固定する上記のピンを、固定側の部材と回転方向で係合させることで、ねじ軸の回り止めを行うことができる。これにより、回り止めを別途設ける場合と比べて、部品数を削減することができる。
【0013】
また、ねじ軸が、雄ねじ部を有するねじ軸本体と、ねじ軸側ストッパを有するストッパ部材とを有し、ナットが回転部材、ねじ軸が直動部材である場合、ストッパ部材に、固定側の部材と回転方向で係合する回り止めを一体に設けてもよい。
【0014】
上記のボールねじ装置では、ナットを半径方向に貫通する貫通孔を形成し、この貫通孔にピンを挿通し、このピンをナット側ストッパとして機能させてもよい。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、ナットとねじ軸とを回転方向で係合させて直動部材のストロークを規制するボールねじ装置において、ナットを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態に係るボールねじ装置を有する直動アクチュエータの断面図である。
図2】上記ボールねじ装置の断面図である。
図3】上記直動アクチュエータの分解斜視図である。
図4図1のIV-IV線における断面図である。
図5】上記ボールねじ装置の側面図である。
図6図5のVI-VI線における断面図である。
図7】本発明の第2実施形態に係るボールねじ装置のナットの斜視図である。
図8】本発明の第3実施形態に係るボールねじ装置の断面図である。
図9】本発明の第4実施形態に係るボールねじ装置の斜視図である。
図10】本発明の第5実施形態に係るボールねじ装置の側面図である。
図11図10のXI-XI線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の第1実施形態を図1~6に基づいて説明する。
【0018】
図1に示す電動アクチュエータは、出力部材が軸方向に進退移動(直線運動)する、いわゆる直線運動型の電動アクチュエータ(直動アクチュエータ1)である。この直動アクチュエータ1は、電動モータ2と、本発明の第1実施形態に係るボールねじ装置3と、伝達ギヤ機構4と、ハウジング5とを備える。電動モータ2の回転駆動力が、伝達ギヤ機構4を介してボールねじ装置3のナット31に伝達され、ナット31の回転運動がねじ軸32の直線運動に変換される。ハウジング5は、少なくともボールねじ装置3を収容し、図示例ではボールねじ装置3及び伝達ギヤ機構4を収容する。図示例では、ハウジング5が一部品で表されているが、実際には、組立の都合上、ハウジング5が複数の部材に分割されている。
【0019】
尚、以下の説明では、ボールねじ装置3のナット31の回転軸方向(図1の左右方向)を「軸方向」と言い、軸方向でねじ軸32の先端側{操作対象が取り付けられる端部側(図1の左側)}を「前方」、その反対側(図1の右側)を「後方」と言う。また、ナット31の回転軸を中心とした円の半径方向を「半径方向」と言い、この半径方向における外径側及び内径側をそれぞれ「外径側」及び「内径側」と言う。
【0020】
ボールねじ装置3は、筒状のナット31と、ナット31の内周に挿入されたねじ軸32と、複数のボール33とを備える。ナット31は、ハウジング5の内周面に、転がり軸受6を介して回転自在に取り付けられている(図1参照)。転がり軸受6としては、例えば玉軸受やころ軸受が使用可能であり、図示例では深溝玉軸受が使用される。
【0021】
ナット31は、図2及び図3に示すように、ナット本体34と、ナット本体34の軸方向両端に固定されたボール拾い上げ部材としてのエンドデフレクタ35とを有する。図示例では、転がり軸受6の内輪とナット本体34とが一部品として一体に形成されている。ねじ軸32は、ねじ軸本体36と、ねじ軸本体36に固定されたストッパ部材37と、ねじ軸本体36及びストッパ部材37の先端に取り付けられた先端部38(図1参照)とを有する。先端部38には、操作対象を取り付けるための取付部39が設けられる。尚、先端部38を省略し、ねじ軸本体36及びストッパ部材37に取付部39を設けてもよい。
【0022】
図2に示すように、ナット本体34の内周面には、螺旋状の溝から成る雌ねじ部34aが設けられている。ねじ軸本体36の外周面には、螺旋状の溝から成る雄ねじ部36aが設けられている。ナット31の内周にねじ軸32を挿通した状態では、雌ねじ部34aと雄ねじ部36aとが半径方向で対向し、これらで形成される転走路41に多数のボール33が収容されている。換言すると、雌ねじ部34a及び雄ねじ部36aのうち、ボール33と接触して負荷が加わる領域が転走路41となる。これらのボール33を介して雌ねじ部34aと雄ねじ部36aとが螺合することにより、ねじ軸32が、電動モータ2の回転軸2aと平行な状態で支持される。
【0023】
ナット31には、転走路41の終点に達したボール33を始点に戻すための循環路42が設けられる。図示例では、循環路42が、ナット本体34を軸方向に貫通する貫通孔で構成される。エンドデフレクタ35には、転走路41の端部と循環路42の端部とを接続する接続路43が設けられる。ナット31が回転すると、転走路41の一端に達したボール33が、一方のエンドデフレクタ35の接続路43で転走路41から拾い上げられて循環路42に誘導され、他方のエンドデフレクタ35の接続路43を介して転走路41の他端に戻される。
【0024】
ねじ軸32には、ねじ軸側ストッパが設けられる。図示例では、ねじ軸側ストッパが、ストッパ部材37に設けられた凸部51で構成される(図3参照)。図示例の凸部51は、雄ねじ部36aに沿って螺旋状に延び、例えば180°分だけ形成されている。凸部51は、雄ねじ部36aよりも外径側に突出し、螺旋状の凸部51の周方向端部が雄ねじ部36a(ねじ溝)を遮断する壁を形成する。図示例の凸部51は、雄ねじ部36aを反転させた凸形状、すなわち、雌ねじ部34aと略同形状の凸形状を有する。凸部51の外径端は、ねじ軸32の雄ねじ部36aの外径端よりも外径側に配され、ナット31の雌ねじ部34aと嵌合可能とされる(図1参照)。凸部51の外径端は、ナット31の雌ねじ部34aの外径端よりも内径側に配され、これにより凸部51とナット31の雌ねじ部34aとの摺動が回避される。
【0025】
ナット31には、ナット側ストッパが設けられる。図示例では、ナット側ストッパが、エンドデフレクタ35に設けられる。具体的には、エンドデフレクタ35にアーム52が設けられ(図3参照)、このアーム52がナット側ストッパとして機能する。アーム52は、雌ねじ部34aに沿って螺旋状に延び、雌ねじ部34aに嵌合する。アーム52は、雌ねじ部34aよりも内径側に突出し、螺旋状のアーム52の周方向端部が雌ねじ部34a(ねじ溝)を遮断する壁を形成する。図示例のアーム52は、雌ねじ部34aを反転させた凸形状、すなわち、雄ねじ部36aと略同形状の凸形状を有する。アーム52の内径端は、雌ねじ部34aの内径端よりも内径側に配され、ねじ軸32の雄ねじ部36aと嵌合可能とされる(図2参照)。アーム52の外径端は、ねじ軸32の雌ねじ部36aの内径端よりも外径側に配され、これによりアーム52とねじ軸32の雄ねじ部36aとの摺動が回避される。
【0026】
ねじ軸本体36とストッパ部材37は、回転方向で係合する嵌合構造を有している。具体的には、図2及び図3に示すように、ストッパ部材37に、軸方向に延びる挿入孔37aを有する筒部37bを設けると共に、ねじ軸本体36の先端に、挿入孔37aに嵌合する挿入部36bを設ける。挿入孔37a及び挿入部36bは、横断面形状(軸方向と直交する断面形状)が非円形であり、図示例では半円形状(D形状)である。ストッパ部材37の挿入孔37a及びねじ軸本体36の挿入部36bは、予め、凸部51が雄ねじ部36aに対して所定の位置(回転方向の位相)に配されるように形成される。これにより、ねじ軸本体36の挿入部36bをストッパ部材37の挿入孔37aに挿入するだけで、凸部51が雄ねじ部36aに対して所定の位相に配されるため、組立時にねじ軸本体36とストッパ部材37との位相を調整する必要がなく、組立作業が簡略化される。
【0027】
ストッパ部材37の挿入孔37aにねじ軸本体36の挿入部36bを挿入し、ストッパ部材37をねじ軸本体36に設けられた肩面36c(図2参照)に当接させることで、両者が軸方向で位置決めされる。この状態で、図1に示すように、ねじ軸本体36及びストッパ部材37を直径方向に貫通する貫通孔36d、37cにピン61を挿入することにより、両者が固定される。ピン61は、例えば貫通孔36d、37cに圧入される。尚、図2及び図3では、ピン61の図示を省略している。
【0028】
上記のピン61は、ナット31の回転に伴うねじ軸32の連れ回りを規制する回り止めとして機能する。本実施形態では、ピン61が、ねじ軸32の直径方向両側に突出している(図4参照)。ハウジング5の内周面の、直径方向に対向した2箇所には、ガイド部材62が固定される。各ガイド部材62は、軸方向に延びるガイド溝62aを有する。ピン61の両端は、各ガイド溝62a内に配される。ピン61とガイド部材62とがナット31の両回転方向(正回転方向及び逆回転方向)で係合することにより、ねじ軸32の回転が規制される。また、ピン61は、ガイド溝62aと隙間を介して嵌合している。これにより、ピン61がガイド溝62aと摺動しながら、ねじ軸32が軸方向に移動可能とされる。
【0029】
このように、ねじ軸32のねじ軸本体36とストッパ部材37とを固定するピン61を回り止めとして使用することで、回り止めを別途設ける場合と比べて部品数を削減することができる。尚、ガイド溝62aは、ハウジング5を含む固定側の部材に設けられていればよく、例えば、ハウジング5にガイド溝62aを直接形成してもよい。
【0030】
図1に示すように、伝達ギヤ機構4は、電動モータ2の回転軸2aに固定された第1伝達ギヤ4aと、第1伝達ギヤ4aと噛み合う第2伝達ギヤ4bによって構成されている。第2伝達ギヤ4bとナット本体34とは一体に回転可能とされる。図示例では、第2伝達ギヤ4bとナット本体34とが、キー4cを介して回転方向で係合することで、これらが一体に回転可能とされる。尚、ナット本体34と第2伝達ギヤ4bを、一部品として一体に形成してもよい。
【0031】
上記の直動アクチュエータ1において、電動モータ2の回転軸2aが回転すると、その回転運動が第1伝達ギヤ4a及び第2伝達ギヤ4bを介してナット31へ伝達される。そして、ナット31が回転すると、多数のボール33が、転走路41→一方のエンドデフレクタ35の接続路43→循環路42→他方のエンドデフレクタ35の接続路43→転走路41という経路(図2参照)を循環しながら、ねじ軸32が軸方向に前進又は後退する。このとき、ねじ軸32は、ナット31の回転運動によって連れ回ろうとするが、ねじ軸32に設けられたピン61がガイド部材62のガイド溝62aに回転方向で係合することにより(図4参照)、ねじ軸32の回転が規制される。これにより、ねじ軸32が回転することなく前進又は後退する。
【0032】
ねじ軸32を後退させてストロークエンド(後端位置)付近に達すると、ストッパ部材37の後端がナット31の内周に入り込む(図5参照)。そして、図6に示すように、ストッパ部材37の凸部51の周方向端部51aが、ナット31に設けられたエンドデフレクタ35のアーム52の周方向端部52aに回転方向で当接することにより、ナット31の回転が規制され、ねじ軸32のそれ以上後方への移動が規制される。
【0033】
上記の直動アクチュエータ1では、ナット側ストッパとして機能するエンドデフレクタ35のアーム52がナット31の内周に設けられているため、ナット側ストッパをナット31の端面から前方に突出させる従来品と比べて、ナット31の軸方向寸法を縮小できる。
【0034】
また、上記のようにナット31の内周にアーム52(ナット側ストッパ)を設けることで、ねじ軸32の凸部51(ねじ軸側ストッパ)がナット31の内周に入り込んだ位置で、凸部51とアーム52とが当接する。そのため、ナットの端面から突出したナット側ストッパにねじ軸側ストッパを当接させる従来品と比べて、ねじ軸32の後端のストロークエンドをより後方に設定することができる。
【0035】
ねじ軸側ストッパとなるストッパ部材37の凸部51と、ナット側ストッパとなるエンドデフレクタ35のアーム52とは、ねじ軸32が後方のストロークエンドに達する度に回転方向に衝突するため、高強度の材料、例えば金属、具体的には鉄系材料、特に鋼で形成することが好ましい。特に、凸部51とアーム52を同じ材料で形成し、同じ調質(例えば熱処理)を施すことにより、これらを同じ硬さにすることができるため、何れか一方が激しく摩耗することを防止できる。
【0036】
尚、ナット31の軸方向両端に設けられたエンドデフレクタ35のうち、後方側のエンドデフレクタ35のアーム52は、ねじ軸32の凸部51と当接することはないため、ナット側ストッパとして機能しない。従って、後方側のエンドデフレクタ35のアーム52は省略可能であるが、図示例のように両エンドデフレクタ35にアーム52を設けることで、部品を共通化することができる。
【0037】
本発明は上記の実施形態に限られない。以下、本発明の他の実施形態を説明するが、上記の実施形態と同様の点については重複説明を省略する。
【0038】
図7に示す第2実施形態のボールねじ装置3は、ボール拾い上げ部材が、ナット31の軸方向中間部に設けられたデフレクタ54で構成された、いわゆるコマ式のボールねじ装置である。図示例では、軸方向に離間した2箇所にデフレクタ54が設けられている。デフレクタ54の内径面には、循環路及びその両端に設けられた接続路として機能する凹溝55が形成される。凹溝55の両端は、略1リード分の雌ねじ部34a及び雄ねじ部36aで形成される転走路41の両端に接続される。転走路41の終点に達したボール33は、デフレクタ54の凹溝55で拾い上げられて転走路41の始点に戻される。
【0039】
デフレクタ54には、雌ねじ部34aに嵌合するアーム56が設けられる。図示例では、デフレクタ54に一対のアーム56が設けられる。両アーム56は、雌ねじ部34aのうち、転走路41として機能しない部分(負荷が加わらない部分)に嵌合する。デフレクタ54は、ナット本体34を半径方向に貫通する貫通孔34bの内周に配される。デフレクタ54を、ナット本体34の貫通孔34bに内周側から挿入し、アーム56をナット本体34の雌ねじ部34aに内周側から嵌合させた状態で、デフレクタ54をナット31の外径側から加締めることで、デフレクタ54がナット本体34に固定される。
【0040】
コマ式のボールねじ装置3のデフレクタ54には、元々、ナット本体34からの抜けを規制するために上記のようなアーム56が設けられる。本実施形態では、このアーム56をナット側ストッパとして機能させている。ねじ軸32が後方のストロークエンドに達すると、ストッパ部材37の凸部51(図2参照)が、前方側に設けられたデフレクタ54の前方側のアーム56に回転方向から当接し、これによりナット31の回転が規制され、ねじ軸32のそれ以上後方への移動が規制される。このとき、前方側のデフレクタ54の後方側のアーム56や、後方側に設けられたデフレクタ54の両アーム56は、ナット側ストッパとしては機能しない。
【0041】
図8に示す第3実施形態では、ピン61を挿入する場所が上記の実施形態と異なる。本実施形態では、ねじ軸本体36の挿入部36bと、挿入部36bが挿入されるストッパ部材37の挿入孔37aが形成される筒部37bに、直径方向の貫通孔36d、37cが形成され、この貫通孔36d、37cにピン61が挿入される。この場合、例えば、ピン61をストッパ部材37の貫通孔37cにピン61を圧入し、ねじ軸本体36の貫通孔36dとピン61とを半径方向の隙間を介して嵌合させてもよい。
【0042】
図9に示す第4実施形態では、回り止め63がストッパ部材37と一部品として一体形成されている点で、上記の実施形態と異なる。図示例では、一対の回り止め63が、ストッパ部材37の筒部37bから直径方向両側に突出している。この回り止め63の外径端が、ハウジング5に設けられたガイド溝62a(図4参照)内に配される。
【0043】
以上の実施形態では、ボール拾い上げ部材にナット側ストッパを設けた場合を示したが、これに限らず、ナットに、ボール拾い上げ部材とは別に係止部材を設け、この係止部材にナット側ストッパを設けてもよい。例えば図10及び図11に示す第5実施形態では、ナット31に設けられた係止部材としてのピン53をナット側ストッパとして機能させている。図示例では、ナット本体34の前方側端部付近に、ナット本体34を半径方向に貫通する貫通孔34cが設けられ、この貫通孔34cにピン53が圧入されている。ピン53の内径端は、雄ねじ部36aに嵌合可能な位置、すなわち、雌ねじ部34aよりも内径側で、且つ、雄ねじ部36aよりも外径側に配される(図11参照)。このピン53に、ストッパ部材37の凸部51を回転方向で当接させることで、ナット31の回転が規制され、ねじ軸32のそれ以上後方への移動が規制される。本実施形態は、ボールねじ装置3の形態を問わずに適用可能であり、上記のようなエンドデフレクタ式あるいはデフレクタ式(コマ式)のボールねじ装置に限らず、エンドキャップ式のボールねじ装置や、チューブ式のボールねじ装置にも適用可能である。
【0044】
以上の実施形態では、ナット31が回転部材、ねじ軸32が直動部材であるナット回転タイプのボールねじ装置3を示したが、本発明は、ナットが直動部材、ねじ軸が回転部材であるねじ軸回転タイプのボールねじ装置に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 直動アクチュエータ
2 電動モータ
3 ボールねじ装置
4 伝達ギヤ機構
5 ハウジング
6 転がり軸受
31 ナット
32 ねじ軸
33 ボール
34 ナット本体
34a 雌ねじ部
35 エンドデフレクタ(ボール拾い上げ部材)
36 ねじ軸本体
37 ストッパ部材
41 転走路
42 循環路
43 接続路
51 凸部(ねじ軸側ストッパ)
52 アーム(ナット側ストッパ)
62 ガイド部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11