(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003480
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】クリップ
(51)【国際特許分類】
A61M 25/01 20060101AFI20240105BHJP
【FI】
A61M25/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102659
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141829
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 牧人
(74)【代理人】
【識別番号】100123663
【弁理士】
【氏名又は名称】広川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】栗田 朋香
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA28
4C267BB19
4C267BB56
4C267BB70
4C267HH07
(57)【要約】
【課題】簡易な構造で、ガイドワイヤをコイル状に巻いた状態で保持可能なクリップを提供する。
【解決手段】可撓性を有する医療用の長尺デバイスをコイル状に巻いた状態で保持するクリップ10であって、磁気吸引力を有する第1磁性体32を含む第1保持部20と、第2磁性体42を含む第2保持部22と、第1保持部20と第2保持部22とを連結する連結部24と、を有し、連結部24は、コイル状に巻かれた状態の長尺デバイスが接触する接触面50を有するクリップ10である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する医療用の長尺デバイスをコイル状に巻いた状態で保持するクリップであって、
磁気吸引力を有する第1磁性体を含む第1保持部と、
第2磁性体を含む第2保持部と、
前記第1保持部と前記第2保持部とを連結する連結部と、を有し、
前記連結部は、コイル状に巻かれた状態の前記長尺デバイスが接触する接触面を有するクリップ。
【請求項2】
前記第1保持部は、前記第1磁性体を覆う第1被覆部を有し、
前記第2保持部は、前記第2磁性体を覆う第2被覆部を有し、
前記第1被覆部と前記第2被覆部のうち少なくとも一方は、前記長尺デバイスを収容可能な凹部を表面に少なくとも1つ有する請求項1に記載のクリップ。
【請求項3】
前記連結部は、前記第1保持部と前記第2保持部との間に延びるスリットを有する請求項1または2に記載のクリップ。
【請求項4】
前記連結部は、前記接触面に圧縮部材を有する請求項1または2に記載のクリップ。
【請求項5】
前記第1保持部と前記第2保持部のうち少なくとも一方は、前記長尺デバイスと接触する圧縮部材を表面に有する請求項1または2に記載のクリップ。
【請求項6】
前記クリップは、前記第1保持部と連結され前記第1磁性体と引き合う第3磁性体を含む第3保持部を有する請求項1または2に記載のクリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用の長尺デバイスをコイル状に巻いた状態で保持するクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
血管内治療では、ガイドワイヤやカテーテルなどの様々な医療用の長尺デバイスが使用される。血管内治療の手技中、術者は、ガイドワイヤを体外に抜去し、再び血管内に挿入することがある。体外に抜去されたガイドワイヤは、再挿入されるまでの間、コイル状に巻かれ、液体で満たされた容器内に一時的に保管される。
【0003】
ガイドワイヤの基端部は、剛性および弾性が高い材料で形成されている。これにより、ガイドワイヤは、コイル状に巻かれた状態から直線状の状態に戻ろうとし、液体で満たされた容器内から意図せずに飛び出して汚染されてしまうことがある。そのため、ガイドワイヤをコイル状に巻かれた状態で保持する手段が提案されている。
【0004】
特許文献1には、ハンドルで操作可能なヒンジで接続され、閉鎖位置から開放位置へと互いに可動である2つの顎部に設けられた接触表面間に、可撓性の長尺デバイスを保持する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許公開第2020/0289744号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の保持装置は、ヒンジ部やハンドルなど、コイル状に巻かれた長尺デバイスのループが引っかかりやすい複雑な構造を有している。そのため、液体で満たされた容器内に複数の長尺デバイスが保管されている場合、取り出そうとする目的の長尺デバイスのループが、容器内に保管されている他の長尺デバイスの保持装置に引っかかりやすい。この状態で目的の長尺デバイスを取り出そうとすると、長尺デバイスに表面の損傷や折れ曲がりが生じる可能性がある。また、容器から目的の長尺デバイスのみを取り出すことが困難となり、目的の長尺デバイスとともに取り出された他の長尺デバイスが手術台から落下して汚染される可能性もある。したがって、術者は、容器から目的の長尺デバイスを取り出す作業に注意を要する。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、簡易な構造で、医療用の長尺デバイスをコイル状に巻いた状態で保持可能なクリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明に係るクリップは、可撓性を有する医療用の長尺デバイスをコイル状に巻いた状態で保持するクリップであって、磁気吸引力を有する第1磁性体を含む第1保持部と、第2磁性体を含む第2保持部と、前記第1保持部と前記第2保持部とを連結する連結部と、を有し、前記連結部は、コイル状に巻かれた状態の前記長尺デバイスが接触する接触面を有する。
【発明の効果】
【0009】
上記のように構成したクリップは、第1保持部と第2保持部とを互いに密着させる、あるいはそれぞれが他の対象物の面に密着することにより、連結部の接触面でコイル状に巻かれた長尺デバイスのループを保持することができる。クリップは、簡易な構造であるため、液体で満たされた容器内に複数の長尺デバイスが保管されている場合であっても、取り出そうとする目的の長尺デバイスのループが容器内に保管されている他の長尺デバイスを保持しているクリップに引っかかりにくい。そのため、クリップは、長尺デバイスに表面の損傷や折れ曲がりが生じることを抑制できる。
【0010】
前記第1保持部は、前記第1磁性体を覆う第1被覆部を有し、前記第2保持部は、前記第2磁性体を覆う第2被覆部を有し、前記第1被覆部と前記第2被覆部のうち少なくとも一方は、前記長尺デバイスを収容可能な凹部を表面に少なくとも1つ有してもよい。これにより、クリップは、剛性および弾性が高い長尺デバイスの基端部を凹部に収容し2つの保持部で挟んで保持することにより、コイル状に巻かれた長尺デバイスのループがほどけることを抑制できる。
【0011】
前記連結部は、前記第1保持部と前記第2保持部との間に延びるスリットを有してもよい。これにより、クリップは、コイル状に巻かれた長尺デバイスのループを長尺デバイスの長軸方向に沿って離間した2点で保持することができるため、長尺デバイスを安定的に保持できる。また、連結部は、スリットにより柔軟性が向上するため、連結部を長尺デバイスに巻き付けて使用する場合の巻き付け作業が容易となる。
【0012】
前記連結部は、前記接触面に圧縮部材を有してもよい。圧縮部材が変形して長尺デバイスのループの外周に密着することにより、長尺デバイスのループの外周と連結部との間の空間が小さくなる。長尺デバイス長尺デバイスその結果、クリップは、連結部でコイル状に巻かれた長尺デバイスのループを保持した際に、ループがほどけることを抑制できる。
【0013】
前記第1保持部と前記第2保持部のうち少なくとも一方は、前記長尺デバイスと接触する圧縮部材を表面に有してもよい。これにより、クリップは、第1保持部と第2保持部との間に剛性および弾性が高い長尺デバイスの基端部を挟むように配置することで、圧縮部材が変形することにより、長尺デバイスを保持できる。
【0014】
前記クリップは、前記第1保持部と連結され前記第1磁性体と引き合う第3磁性体を含む第3保持部を有してもよい。これにより、クリップは、第1保持部と第3保持部との間に、他の対象物を挟んで保持することができる。その結果、クリップは、当該クリップによってコイル状に巻かれた状態で保持された長尺デバイスが手術台などから落下して汚染されることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】クリップの(a)正面図と(b)側面図である。
【
図2】コイル状に巻いたガイドワイヤにクリップを配置した状態の正面図である。
【
図3】クリップでコイル状に巻いたガイドワイヤを保持した状態のクリップ付近断面図である。
【
図4】クリップでコイル状に巻いたガイドワイヤを保持した状態の正面図である。
【
図5】連結部の一端部付近を他端部付近に巻き付けてガイドワイヤを保持した場合のクリップ付近側面図である。
【
図6】他の対象物の面に第1保持部と第2保持部とを密着させてガイドワイヤを保持した状態のクリップ付近断面図である。
【
図7】(a)第1変形例に係るクリップの側面図と、(b)第2変形例に係るクリップの側面図、および(c)第3変形例に係るクリップの側面図である。
【
図10】第6変形例に係るクリップの(a)正面図と(b)側面図である。
【
図11】第6変形例に係るクリップを容器の側面に固定しつつ、クリップでガイドワイヤを保持した状態のクリップ付近断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。
【0017】
本発明の実施形態に係るクリップは、ガイドワイヤ60などの医療用の長尺デバイスをコイル状に巻いた状態で保持するものである。なお、本明細書では、ガイドワイヤ60の血管に挿入する側を「先端」若しくは「先端側」、操作する手元側を「基端」若しくは「基端側」と称することとする。
【0018】
図1(a)、
図1(b)に示すように、クリップ10は、第1保持部20と第2保持部22および連結部24とを有している。連結部24は可撓性を有し、屈曲させることができる。連結部24を屈曲させることで、第1保持部20と第2保持部22とを対向させて密着させることができる。
【0019】
第1保持部20は、略円盤状に形成され、第1磁性体32と、第1磁性体32を被覆する第1被覆部34とを有している。第1被覆部34の正面側に露出する面は、第1表面35である。第1被覆部34の背面側に露出する面は第1裏面36である。
【0020】
第1保持部20が有する第1磁性体32は、磁気吸引力を有している。第1磁性体32は、磁気吸引力を有する磁性体として、合金磁石、フェライト磁石、希土類磁石などの永久磁石を用いることができる。第1磁性体32は、第1保持部20より第1被覆部34により被覆される分だけ小さく形成されている。
【0021】
第1被覆部34は、第1表面35に凹部37を有している。凹部37は、略円形状の第1表面35を横切るように、円の直径に沿って直線状に延びている。凹部37が延びる向きは、連結部24が第1保持部20と第2保持部22との間で延びる方向と直交する方向である。凹部37には、第1保持部20と第2保持部22とを密着させた状態で、ガイドワイヤ60の基端部を挟んで保持することができる。
【0022】
凹部37は、底面が断面円弧状となるように形成されている。凹部37の幅と深さは、第1被覆部34が弾性変形可能であることから、凹部37に納めるガイドワイヤ60の直径よりわずかに小さくてもよい。また、凹部37の幅と深さは、ガイドワイヤ60の直径より大きくてもよい。凹部37がガイドワイヤ60の直径より大きくても、多くのガイドワイヤ60は金属製であることから、第1磁性体32の磁気吸引力により保持される。このため、凹部37の幅と深さは、0.2mm~1.0mmの範囲に設定される。なお、凹部37の断面形状は、
図1に示す形状に限られず、矩形状やV字状であってもよい。
【0023】
第2保持部22は、略円盤状に形成され、第2磁性体42と、第2磁性体42を被覆する第2被覆部44とを有している。第2被覆部44の正面側に露出する面は、第2表面45である。第2被覆部44の背面側に露出する面は第2裏面46である。
【0024】
第2保持部22が有する第2磁性体42は、第1磁性体32と引き合うことができる材料で形成される。具体的には、第2磁性体42は、酸化鉄、酸化クロム、コバルト、フェライト、非酸化金属磁性体などの強磁性体を含む材料で形成される。第2磁性体42は、第1磁性体32と同じ形状で同じ大きさとすることができる。また、第2磁性体42は、第1磁性体32と異なる形状、大きさであってもよい。
【0025】
第2磁性体42は、第1磁性体32と同様の永久磁石であってもよい。この場合、第2磁性体42の磁極の向きは、連結部24を屈曲させて第1保持部20と第2保持部22とを対向させた際に、第1磁性体32と第2磁性体とが引き合うように配置される。これにより、第1保持部20の第1表面35と第2保持部22の第2表面45とが引き合って、互いに密着できる。
【0026】
第2被覆部44は、第1被覆部34と同様の形状に形成できる。
図1において、第2被覆部44の第2表面45は凹部37を有していないが、凹部37を有していてもよい。
【0027】
第1保持部20と第2保持部22の直径は、10mm~30mm、好ましくは15mm~25mmである。第1保持部20と第2保持部22の厚みは、2mm~10mm、好ましくは3mm~8mmである。
【0028】
第1保持部20は、第1裏面36側が第1表面35側よりやや大きい直径を有している。また、第2保持部22は、第2裏面46側が第2表面45側よりやや大きい直径を有している。これにより、第1保持部20と第2保持部22とを密着した状態から、術者が指で容易に離間させることができる。なお、第1保持部20および第2保持部22の形状は、円盤状に限られず、矩形状など他の形状であってもよい。
【0029】
第1被覆部34と第2被覆部44は、可撓性を有する樹脂で形成される。これにより、第1被覆部34と第2被覆部44は、ガイドワイヤ60を損傷させることを抑制できる。可撓性を有する樹脂は、具体的には、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂を用いることができる。また、第1被覆部34と第2被覆部44を形成する樹脂は顔料を含んでいてもよい。これにより、複数のガイドワイヤ60を保管する場合に、クリップ10の色によって、術者がガイドワイヤ60を容易に識別できる。
【0030】
第1被覆部34の第1裏面36や第2被覆部44の第2裏面46は、ガイドワイヤ60を識別可能な文字や記号が表示されていてもよい。文字や記号は、第1裏面36や第2裏面46に予め表示されていてもよい。あるいは、第1裏面36や第2裏面46が、術者により文字や記号を記入できる、または記入済のラベルを貼付できるように形成されていてもよい。
【0031】
連結部24は、第1保持部20の中心位置と第2保持部22の中心位置とを通る直線に沿って延び、第1保持部20と第2保持部22とを連結している。連結部24のうち第1表面35および第2表面45側の面は、コイル状に巻かれた状態のガイドワイヤ60が接触する接触面50である。接触面50は、第1表面35および第2表面45と同一平面上にあって連続している。ただし、接触面50は、第1表面35や第2表面45と同一平面上でなくてもよく、段差を介して連続していてもよい。
【0032】
連結部24は、第1保持部20と第2保持部22との間に延びるスリット52を有している。これにより、連結部24は、コイル状に巻かれたガイドワイヤ60のループをガイドワイヤ60の長軸方向に沿って離間した2点で保持できる。このため、クリップ10は、ガイドワイヤ60を安定的に保持できる。また、連結部24は、スリット52を有することにより、柔軟性が向上する。このため、クリップ10は、連結部24をガイドワイヤ60に巻き付けて使用する場合の巻き付け作業が容易である。なお、連結部24は、スリット52を有していなくてもよい。また、連結部24は、複数のスリット52を有していてもよい。
【0033】
連結部24は、第1被覆部34や第2被覆部44と同じ材料で形成できる。連結部24は、第1被覆部34および第2被覆部44と一体的に形成されている。ただし、連結部24は、第1被覆部34や第2被覆部44と別体に形成されて、これらと連結されてもよい。
【0034】
連結部24は、長さが10mm~20mm、幅が2mm~10mm、厚みが0.5mm~5mmに形成される。
【0035】
連結部24の接触面50は、ガイドワイヤ60の外表面との間に生じる摩擦力を大きくする表面形状を有していてもよい。このような表面形状は、例えば、凹凸形状、縦縞形状、横縞形状などの模様を設ける、あるいは、粗面化処理を施すなどによって、形成できる。
【0036】
クリップ10の使用方法について説明する。クリップ10を使用する前に、術者は、予めガイドワイヤ60をコイル状に巻き、複数のループを形成する。次に、
図2に示すように、術者は、ガイドワイヤ60のループをクリップ10の連結部24の接触面50上に配置する。このとき、ガイドワイヤ60のループは、連結部24の長さ方向(連結部24が延びる方向)と交差するように配置される。
【0037】
ガイドワイヤ60の基端部61は、第1保持部20の凹部37に収容される。ガイドワイヤ60は、第1磁性体32によって、第1保持部20に保持された状態となる。
【0038】
次に、術者は、ガイドワイヤ60のループが湾曲の内側となるように連結部24を屈曲させ、第1保持部20の第1表面35と第2保持部22の第2表面45とを近づける。
図3、
図4に示すように、第1表面35と第2表面45とを近づけることで、第1磁性体32と第2磁性体42とが引きつけあい、両者が密着する。これによって、ガイドワイヤ60のループは連結部24によって保持される。また、ガイドワイヤ60の基端部61は、第1保持部20の凹部37と第2保持部22の第2表面45とに囲まれて、脱落しないように保持される。
【0039】
連結部24を屈曲させる際、連結部24が長く、ガイドワイヤ60のループを保持した際に空間ができる場合には、術者は、連結部24をガイドワイヤ60のループに複数回巻き付けてもよい。また、
図5に示すように、術者は、連結部24の長さ方向一端部を長さ方向他端部付近に巻き付けるようにしてもよい。これにより、ガイドワイヤ60のループの外周と連結部24との間の空間が小さくなるので、ガイドワイヤ60のループを確実に固定して、ループがほどけることを抑制できる。また、術者は、連結部24をガイドワイヤ60に巻き付ける際に、第1保持部20または第2保持部22をスリット52内に通過させるようにしてもよい。
【0040】
一のガイドワイヤ60を保持したクリップ10は、他のガイドワイヤ60を保持したクリップ10と密着させてもよい。複数のクリップ10は、第1磁性体32または第2磁性体42の磁気吸引力によって互いに密着させることができる。この際、一方の第1裏面36または第2裏面46が、他方の第1裏面36または第2裏面46と密着する。これによって、ループ状に巻かれた複数のガイドワイヤ60を積層して保管できる。また、第1保持部20や第2保持部22が一定の厚みを有しているので、積層された複数のガイドワイヤ60同士が離間する。これにより、複数のガイドワイヤ60を保管する場合に、ガイドワイヤ60同士が絡まることを抑制できる。したがって、複数のガイドワイヤ60のうち特定のガイドワイヤ60を取り出す際に、当該ガイドワイヤ60を保持するクリップ10を他のガイドワイヤ60を保持するクリップ10から分離するだけで、当該ガイドワイヤ60を容易に取り出すことができる。
【0041】
図6に示すように、クリップ10は、第1保持部20と第2保持部22を他の対象物の面70に密着させることで、ガイドワイヤ60のループを保持してもよい。この場合、第1保持部20の第1表面35と第2保持部22の第2表面45とが、それぞれ面70に密着し、ガイドワイヤ60は、面70と連結部24とに囲まれて保持される。このようにガイドワイヤ60を保持するには、第1磁性体32と第2磁性体42の両方が磁気吸引力を有する永久磁石である必要がある。また、面70は、第1磁性体32および第2磁性体42と引き合う材料である必要がある。面70は、例えばステンレス製のバットの一面とすることができる。
【0042】
第1変形例に係るクリップ80について説明する。
図7(a)に示すように、クリップ80は、第1保持部81の第1被覆部83に第1凹部87を、第2保持部82の第2被覆部84に第2凹部88を、それぞれ有している。第1凹部87と第2凹部88は、それぞれ断面半円状の形状を有している。第1保持部81と第2保持部82とが密着することで、第1凹部87と第2凹部88とが対向し、内部に略円形状の空間が形成される。クリップ80は、第1保持部81と第2保持部82とによって形成された空間にガイドワイヤ60を収容できる。この場合、第1凹部87と第2凹部88の深さは、ガイドワイヤ60の半径よりやや小さくてもよく、0.13mm~1.00mmの範囲に設定できる。
【0043】
第2変形例に係るクリップ90について説明する。
図7(b)に示すように、クリップ90は、第1保持部91の第1被覆部93に第1凹部97と第2凹部98の2つの凹部を有している。第1凹部97は、第2凹部98より大きく形成されている。ガイドワイヤ60の基端部は、ガイドワイヤ60の先端部より細くなっている。このため、第1凹部97は、ガイドワイヤ60の基端部を収容し、第1凹部97より小さい第2凹部98は、ガイドワイヤ60の先端部を収容する。このように、第1保持部91に凹部を2つ設けてガイドワイヤ60の先端部と基端部の両方を保持することで、クリップ90は、ガイドワイヤ60のコイル状に巻かれたループがほどけることをより抑制できる。また、ガイドワイヤ60の先端部の絡み合いを抑制できるため、ガイドワイヤ60の損傷も抑制できる。さらには、術者がガイドワイヤ60を血管内に挿入する際に、ガイドワイヤ60の先端部を容易に見つけることができる。
【0044】
第3変形例に係るクリップ100について説明する。
図7(c)に示すように、クリップ100は、第1保持部101の第1被覆部103に凹部107を有している。凹部107は、幅広に形成されている。凹部107の幅は、ガイドワイヤ60の基端部における直径の1.2~2倍である。これにより、凹部107には、ガイドワイヤ60の先端部と基端部の両方を収容できる。クリップ100は、1つの凹部107でガイドワイヤ60の先端部と基端部を保持するので、第2変形例のクリップ90と同様の効果を得ることができる。
【0045】
第4変形例に係るクリップ110について説明する。
図8に示すように、クリップ110は、第1保持部111の第1表面115と第2保持部112の第2表面116に、それぞれ面状の圧縮部材117を有している。圧縮部材117は、圧縮されることで変形する樹脂で形成されている。具体的には、圧縮部材117は、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などを用いることができる。また、圧縮部材117は、発泡体やスポンジなどの多孔質体とすることもできる。
【0046】
術者が、第1保持部111の第1表面115と第2保持部112の第2表面116との間にガイドワイヤ60を挟むと、クリップ110は、圧縮部材117が圧縮変形し、ガイドワイヤ60を保持できる。圧縮部材117は、
図8のように第1表面115と第2表面116の両方に設けられてもよいし、第1表面115と第2表面116の一方にのみ設けられてもよい。
【0047】
図8において、第1表面115と第2表面116は、いずれも凹部を有していないが、一方に凹部を設け、他方に圧縮部材117を設けてもよい。この場合に、凹部を有する側には圧縮部材を設けなくてもよいし、凹部の表面に圧縮部材117を配置してもよい。凹部の表面に圧縮部材117を配置した場合、クリップ110は、ガイドワイヤ60の保持力を向上させることができる。また、凹部に圧縮部材を配置しなかった場合において、クリップ110は、ガイドワイヤ60の基端部を凹部に収容して保持しつつ、ガイドワイヤ60の先端部を圧縮部材117により保持することもできる。
【0048】
第5変形例に係るクリップ120について説明する。
図9に示すように、クリップ120は、連結部123の接触面124に圧縮部材125を有している。圧縮部材125は、第4変形例に係るクリップ110が有する圧縮部材117と同様である。圧縮部材125が変形してガイドワイヤ60のループの外周に密着することにより、ガイドワイヤ60のループの外周と連結部123との間の空間が小さくなる。これにより、クリップ120は、コイル状に巻いたガイドワイヤ60のループを連結部123が保持した際に、ループがほどけることを抑制できる。
【0049】
第6変形例に係るクリップ130について説明する。
図10(a)、
図10(b)に示すように、クリップ130は、第1保持部131と第2保持部132とが第1連結部134で連結され、第1保持部131と第3保持部133とが第2連結部135で連結されている。第3保持部133は第3磁性体138を有している。第3磁性体138は、第1保持部131が有する第1磁性体136と引き合うように構成されている。このため、第3磁性体138は、第1磁性体136と引き合う強磁性体、または、第1磁性体136と引き合うように磁極が配置された永久磁石である。なお、第2保持部132が有する第2磁性体137も、第1磁性体136と引き合うように構成されている。第1保持部131の第1表面131aと第2保持部132の第2表面132aには、それぞれ凹部139が形成されている。
【0050】
図11に示すように、クリップ130は、液体を満たした容器140の壁面を第1保持部131と第3保持部133で挟むことで、容器140を保持できる。また、クリップ130は、第1保持部131と第2保持部132により、コイル状に巻いたガイドワイヤ60のループを保持できる。このように、クリップ130は、第3保持部133を有することで、他の対象物への固定とガイドワイヤ60の保持の両方を行うことができる。なお、第1保持部131と第3保持部133で挟む他の対象物の面は、例えば、手術用ドレープなどであってもよい。
【0051】
以上のように、本実施形態に係る態様(1)のクリップ10は、可撓性を有する医療用の長尺デバイスをコイル状に巻いた状態で保持するクリップ10であって、磁気吸引力を有する第1磁性体32を含む第1保持部20と、第2磁性体42を含む第2保持部22と、第1保持部20と第2保持部22とを連結する連結部24と、を有し、連結部24は、コイル状に巻かれた状態の長尺デバイスが接触する接触面50を有する。このように構成したクリップ10は、第1保持部20と第2保持部22とを互いに密着させる、あるいはそれぞれが他の対象物の面に密着することにより、連結部24の接触面50でコイル状に巻かれた長尺デバイスのループを保持することができる。クリップ10は、簡易な構造であるため、液体で満たされた容器内に複数の長尺デバイスが保管されている場合であっても、取り出そうとする目的の長尺デバイスのループが、容器内に保管されている他の長尺デバイスを保持しているクリップ10に引っかかりにくい。そのため、クリップ10は、長尺デバイスに表面の損傷や折れ曲がりが生じることを抑制できる。また、クリップ10は、クリップ10同士を第1磁性体32の磁気吸引力によって互いに密着させることで、ループ状に巻かれた複数の長尺デバイスを積層して保管できる。第1保持部20や第2保持部22が一定の厚みを有していることから、積層された複数の長尺デバイスが離間し、長尺デバイス同士が絡まることを抑制できる。したがって、複数の長尺デバイスのうち特定の長尺デバイスを取り出す際に、当該長尺デバイスを保持するクリップ10を他の長尺デバイスを保持しているクリップ10から分離するだけで、当該長尺デバイスを容易に取り出すことができる。
【0052】
態様(2)のクリップ10は、態様(1)のクリップ10において、第1保持部20が、第1磁性体32を覆う第1被覆部34を有し、第2保持部22は、第2磁性体42を覆う第2被覆部44を有し、第1被覆部34と第2被覆部44のうち少なくとも一方は、長尺デバイスを収容可能な凹部37を表面に少なくとも1つ有する。これにより、クリップ10は、剛性および弾性が高い長尺デバイスの基端部を凹部37に収容し2つの保持部で挟んで保持することにより、コイル状に巻かれた長尺デバイスのループがほどけることを抑制できる。
【0053】
態様(3)のクリップ10は、態様(1)または態様(2)のクリップ10において、連結部24が、第1保持部20と第2保持部22との間に延びるスリット52を有する。これにより、クリップ10は、コイル状に巻かれた長尺デバイスのループを長尺デバイスの長軸方向に沿って離間した2点で保持することができるため、長尺デバイスを安定的に保持できる。また、連結部24は、スリット52により柔軟性が向上するため、連結部24を長尺デバイスに巻き付けて使用する場合の巻き付け作業が容易となる。
【0054】
態様(4)のクリップ120は、態様(1)~(3)のいずれか1つのクリップにおいて、連結部123が、接触面124に圧縮部材125を有する。これにより、クリップ120は、圧縮部材125が変形して長尺デバイスのループの外周に密着することにより、長尺デバイスのループの外周と連結部123との間の空間が小さくなる。その結果、クリップ120は、連結部123でコイル状に巻かれた長尺デバイスのループを保持した際に、ループがほどけることを抑制できる。
【0055】
態様(5)のクリップ110は、態様(1)~(4)のいずれか1つのクリップにおいて、第1保持部111と第2保持部112のうち少なくとも一方が、長尺デバイスと接触する圧縮部材117を表面に有する。これにより、クリップ110は、第1保持部111と第2保持部112との間に剛性および弾性が高い長尺デバイスの基端部を挟むように配置することで、圧縮部材117が変形することにより、長尺デバイスを保持できる。
【0056】
態様(6)のクリップ130は、態様(1)~(5)のいずれか1つのクリップにおいて、クリップ130が、第1保持部131と連結され第1磁性体136と引き合う第3磁性体138を含む第3保持部133を有する。これにより、クリップ130は、第1保持部131と第3保持部133との間に、他の対象物を挟んで保持することができる。その結果、クリップ130は、当該クリップ130によってコイル状に巻かれた状態で保持された長尺デバイスが手術台などから落下して汚染されることを抑制できる。
【0057】
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。上述の実施形態において医療用の長尺デバイスはガイドワイヤ60であるが、カテーテルなど他の長尺デバイスであってもよい。
【符号の説明】
【0058】
10 クリップ
20 第1保持部
22 第2保持部
24 連結部
32 第1磁性体
34 第1被覆部
35 第1表面
36 第1裏面
37 凹部
42 第2磁性体
44 第2被覆部
45 第2表面
46 第2裏面
50 接触面
52 スリット
60 ガイドワイヤ
70 面