(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034816
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】衝撃吸収床構造の施工方法及び衝撃吸収床構造
(51)【国際特許分類】
E04F 15/00 20060101AFI20240306BHJP
E04F 15/02 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
E04F15/00 601B
E04F15/00 101K
E04F15/02 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139324
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000222495
【氏名又は名称】東リ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519428122
【氏名又は名称】株式会社Magic Shields
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大▲崎▼ 洋
(72)【発明者】
【氏名】梶村 康平
(72)【発明者】
【氏名】下村 明司
【テーマコード(参考)】
2E220
【Fターム(参考)】
2E220AA19
2E220AA44
2E220AA51
2E220AC01
2E220BA19
2E220BC03
2E220CA10
2E220CA23
2E220CA43
2E220CA53
2E220DA02
2E220DB05
2E220DB15
2E220EA11
2E220FA15
2E220GA07Y
2E220GA33Y
2E220GB33X
2E220GB34X
2E220GB35X
2E220GB37X
2E220GB39Y
(57)【要約】
【課題】 床シート材の縁を容易に溶接でき、外観が良好で且つ十分な強度で床シート材の縁間が接合された接合部を有する衝撃吸収床構造の施工方法を提供する。
【解決手段】 敷設面B上に、衝撃を緩和する衝撃吸収材1の複数を敷設して下地層Cを形成する工程、前記下地層C上に、床シート材3の複数を敷設し、前記床シート材3,3の隣接する縁3a,3aを接合することにより、前記下地層C上に表装層Dを形成する工程、を有し、前記下地層Cを形成する工程において、衝撃吸収材1の間に第1方向に延在するスペーサー部材2を介在させつつ、前記複数の衝撃吸収材1を前記敷設面Bに敷設し、前記表装層Dを形成する工程において、前記隣接する床シート材3,3の縁3a,3aを、前記スペーサー部材2上に載せた状態で、前記床シート材3,3の縁3a,3aを接合剤を用いて接合する。
【選択図】
図25
【特許請求の範囲】
【請求項1】
敷設面上に、衝撃を緩和する衝撃吸収材の複数を敷設して下地層を形成する工程、
前記下地層上に、床シート材の複数を敷設し、前記床シート材の隣接する縁を接合することにより、前記下地層上に表装層を形成する工程、を有し、
前記下地層を形成する工程において、衝撃吸収材の間に第1方向に延在するスペーサー部材を介在させつつ、前記複数の衝撃吸収材を前記敷設面に敷設し、
前記表装層を形成する工程において、前記隣接する床シート材の縁を、前記スペーサー部材上に載せた状態で、前記床シート材の縁を接合剤を用いて接合する、衝撃吸収床構造の施工方法。
【請求項2】
前記スペーサー部材が、平坦な表面を有する発泡樹脂からなる上方部を有する、請求項1に記載の衝撃吸収床構造の施工方法。
【請求項3】
前記下地層が、前記床シート材を敷設したときに、前記床シート材の裏面に接する接触部と、前記床シート材の裏面に接しない非接触部と、を有し、前記接触部と前記非接触部が面方向において交互に存在する、請求項1または2に記載の衝撃吸収床構造の施工方法。
【請求項4】
前記表装層を形成する工程において、
第1の床シート材の端部と第2の床シート材の端部を前記スペーサー部材上で重ね合わせ、前記第1の床シート材の端部と第2の床シート材の端部の少なくとも一方を前記スペーサー部材上で切断することにより、前記第1の床シート材の縁とその縁に隣接する第2の床シート材の縁とを形成し、前記隣接した縁を前記接合剤を用いて接合する、請求項1または2に記載の衝撃吸収床構造の施工方法。
【請求項5】
前記スペーサー部材の表面に、吸着補助層が設けられている、請求項1または2に記載の衝撃吸収床構造の施工方法。
【請求項6】
敷設面上に設けられた下地層と、前記下地層上に設けられた表装層と、を有する衝撃吸収床構造であって、
前記下地層が、前記敷設面上に設けられ且つ衝撃を緩和する複数の衝撃吸収材を有し、
前記表装層が、前記下地層上に設けられた複数の床シート材と、前記床シート材の隣接する縁が接合された接合部と、を有し、
前記衝撃吸収材の間に、スペーサー部材が介在されており、
前記接合部が、前記スペーサー部材上に配置されている、衝撃吸収床構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃を吸収できる衝撃吸収床構造の施工方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人が転倒した際やスポーツを行なう際などに、人に加わる衝撃を緩和するために、衝撃を吸収できる床構造が提案されている。
例えば、特許文献1には、弾性のある中空の柱が、壁と第1の端部と閉じた第2の端部とを有する弾性のある中空の柱を備え、前記柱の壁が、前記第1の端部に隣接する領域において前記第2の端部に隣接する領域のつぶれにくい区域に比べてつぶれやすい区域を有する弾性パッドが開示されている。
かかる弾性パッドは、ショアAデュロメータ硬さが40~70のゴムから形成され、衝撃又は荷重を受けたとき第1の端部に隣接する領域がつぶれることによって衝撃を吸収できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
ところで、特許文献1の弾性パッドなどの衝撃吸収材は、敷設面上に敷設して使用されるが、装飾や表面保護などを目的として、前記敷設した衝撃吸収材の上に、床シート材を敷設することが考えられる。その場合に複数の床シート材を敷設する際には、隣接する床シート材の縁同士を突き合わせて接合するという、いわゆる継ぎ目処理を行うことが一般的である。前記縁の接合方法としては、例えば、溶接棒やシーム液などの接合剤を床シート材の縁間に介在させて前記縁を接合する方法;隣接する床シート材の縁同士を突き合わせ、その縁を含む床シート材の端部の表面に跨がってテープを貼る方法;などが挙げられる。
【0005】
上述のテープ貼り方法では、床シート材の表面にテープが存在するので、外観が悪くなる上、経時的にテープの端部が捲れるという問題がある。
このような理由から、接合剤を介して床シート材の縁間を接合することが好ましい。例えば、溶接棒のような接合剤を用いる場合には、熱溶接機の先端ノズルに溶接棒を装着し、それを加熱して軟化させ、隣接する床シート材の縁間に前記先端ノズルを押し込みながら溶接棒を構成する樹脂を縁間に接着させることによって、隣接する床シート材の縁を接合して接合部を形成する。また、シーム液のような接合剤を用いる場合には、継ぎ目処理用ノズル部材にシーム液を充填し、そのノズル部材を通じてシーム液を床シート材の縁間に注入することによって、隣接する床シート材の縁を接合して接合部を形成する。
【0006】
しかしながら、ゴムからなる衝撃吸収材は荷重を受けると変形するので、前記熱溶接機の先端ノズルを押し込んだ際に床シート材が沈み込み、溶接棒による溶接作業が困難になる上、隣接する床シート材の縁の接合が不十分になるおそれがある。このため、接合後に形成される接合部の外観が悪く、さらに、床シート材の縁が経時的に捲れるなどの施工不良を生じるおそれがある。
シーム液を注入する際にも、床シート材に押込み力が加わって衝撃吸収材が変形するおそれがあり、床シート材の縁間においてシーム液が途切れる箇所又は十分な量のシーム液が介在しない箇所が生じるおそれがある。このため、隣接する床シート材の縁の接合が不十分になるおそれがある。特に、衝撃吸収性を向上させるため、比較的小さな荷重で大きく変形するような構造の衝撃吸収材を用いる場合には、前記床シート材の接合作業がより困難である。
【0007】
さらに、衝撃吸収材上に載せた床シート材をカッターなどの切断刃で切断する際にも、衝撃吸収材が変形するので、綺麗に切断できない場合もある。
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、床シート材の縁を容易に接合でき、外観が良好で且つ十分な強度で接合された接合部を有する衝撃吸収床構造の施工方法及び衝撃吸収床構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の衝撃吸収床構造の施工方法は、敷設面上に、衝撃を緩和する衝撃吸収材の複数を敷設して下地層を形成する工程、前記下地層上に、床シート材の複数を敷設し、前記床シート材の隣接する縁を接合することにより、前記下地層上に表装層を形成する工程、を有し、前記下地層を形成する工程において、衝撃吸収材の間に第1方向に延在するスペーサー部材を介在させつつ、前記複数の衝撃吸収材を前記敷設面に敷設し、前記表装層を形成する工程において、前記隣接する床シート材の縁を、前記スペーサー部材上に載せた状態で、前記床シート材の縁を接合剤を用いて接合する。
【0010】
本発明の好ましい施工方法は、前記スペーサー部材が、平坦な表面を有する発泡樹脂からなる上方部を有する。
本発明の好ましい施工方法は、前記下地層が、前記床シート材を敷設したときに、前記床シート材の裏面に接する接触部と、前記床シート材の裏面に接しない非接触部と、を有し、前記接触部と前記非接触部が面方向において交互に存在する。
本発明の好ましい施工方法は、前記表装層を形成する工程において、第1の床シート材の端部と第2の床シート材の端部を前記スペーサー部材上で重ね合わせ、前記第1の床シート材の端部と第2の床シート材の端部の少なくとも一方を前記スペーサー部材上で切断することにより、前記第1の床シート材の縁とその縁に隣接する第2の床シート材の縁とを形成し、前記隣接した縁を前記接合剤を用いて接合する。
本発明の好ましい施工方法は、前記スペーサー部材の表面に、吸着補助層が設けられている。
【0011】
本発明の別の局面によれば、衝撃吸収床構造を提供する。
本発明の衝撃吸収床構造は、敷設面上に設けられた下地層と、前記下地層上に設けられた表装層と、を有する衝撃吸収床構造であって、前記下地層が、前記敷設面上に設けられ且つ衝撃を緩和する複数の衝撃吸収材を有し、前記表装層が、前記下地層上に設けられた複数の床シート材と、前記床シート材の隣接する縁が接合された接合部と、を有し、前記衝撃吸収材の間に、スペーサー部材が介在されており、前記接合部が、前記スペーサー部材上に配置されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の施工方法によれば、床シート材の縁を接合剤を用いて容易に接合できる。かかる方法によって構築される衝撃吸収床構造は、床シート材間の接合部の外観が良好であり、また、隣接する床シート材の縁が十分な強度で接合されているので、耐久性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図5】(a)は、第1実施形態の構造体の側面図、(b)は、同構造体の斜視図、(c)は、同構造体の平面図、(d)は、同構造体の底面図。
【
図9】(a)は、第2実施形態の構造体の側面図、(b)は、同構造体の斜視図、(c)は、同構造体の平面図、(d)は、同構造体の底面図。
【
図11】
図9(c)のXI-XI線で切断した拡大断面図。
【
図12】第2実施形態の構造体の変形例を示す拡大断面図。
【
図13】(a)は、第1実施形態に係るスペーサー部材の斜視図、(b)は、同スペーサー部材の正面図。
【
図14】(a)は、第2実施形態に係るスペーサー部材の正面図、(b)は、第3実施形態に係るスペーサー部材の正面図、(c)は、第4実施形態に係るスペーサー部材の正面図、(d)は、第5実施形態に係るスペーサー部材の正面図。
【
図15】第1実施形態に係る床シート材を表面側から見た平面図。
【
図17】第2実施形態に係る床シート材を表面側から見た平面図。
【
図18】
図15のXVIII-XVIII線で切断した断面図。
【
図20】第1実施形態の施工方法において、敷設面に下地層を形成した後の状態を表面側から見た平面図。
【
図21】下地層の上に床シート材を載せた状態を表面側から見た平面図。
【
図22】
図21のXXII-XXII線で切断した拡大断面図。
【
図23】第1及び第2の床シート材の端部を切断するときの状態を示す拡大断面図。
【
図24】床シート材の端部を切断するときの状態を示す拡大断面図。
【
図25】床シート材の隣接する縁を溶接棒にて接合する過程を示す拡大断面図。
【
図26】第2実施形態の施工方法において、床シート材の隣接する縁をシーム液にて接合する過程を示す拡大断面図。
【
図27】施工方法の他の実施形態において、スペーサー部材を含む下地層の上に床シート材を載せた状態を示す拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について、適宜図面を参照しつつ説明する。
本明細書において、「表面」は、敷設面に衝撃吸収材や床シート材を敷設したときを基準にして、敷設面から遠い側の面を指し、「裏面」は、その反対側の面を指す。平面視は、敷設面に対して鉛直な方向から見ることをいう。
本明細書において「略」は、本発明の属する技術分野において許容される範囲を意味する。
本明細書において、「下限値以上上限値以下」で表される数値範囲は、任意の下限値と任意の上限値を選択し、「任意の下限値以上任意の上限値以下」を設定できるものとする。
また、各図における、厚み及び大きさなどの寸法は、実際のものとは異なっている場合があることに留意されたい。
【0015】
[衝撃吸収床構造]
図1は、衝撃吸収床構造Aの平面図であり、
図2は、衝撃吸収床構造Aの一部分を厚み方向で切断した断面図であり、
図3は、
図2の一部分を拡大した断面図である。
図1乃至
図3を参照して、衝撃吸収床構造Aは、敷設面Bと、前記敷設面B上に設けられた下地層Cと、前記下地層C上に設けられた表装層Dと、を有する。前記下地層Cは、前記敷設面B上に設けられ且つ衝撃を緩和する複数の衝撃吸収材1と、前記衝撃吸収材1の間に介在されたスペーサー部材2と、を有する。前記表装層Dは、前記下地層C上に設けられた複数の床シート材3と、前記床シート材3,3の隣接する縁3a,3aが接合剤に起因して接合された接合部4と、を有する。
【0016】
敷設面Bは、前記下地層Cなどを施工する施工場所の基礎部分である。施工場所である敷設面Bは、建築物の屋内でもよく、建築物の半屋外又は屋外でもよい。
本発明の衝撃吸収床構造Aは、使用者に加わる衝撃を緩和できるので、そのような効果が特に求められる建築物、例えば、介護施設・老人支援施設・障害者支援施設・児童施設などの福祉施設;病院・診療所などの医療機関施設;スポーツジム・遊戯場などのレクリエーション施設;学校の体育館などの教育機関施設;一般家庭;などの各種建築物の床構造に好適に適用できる。
図1は、本発明の衝撃吸収床構造Aを介護施設の部屋の床に適用した場合を例示している。図中、符号B1は、施工場所の外縁に相当する部屋壁を示し、符号B2は、出入り口のドアを示し、符号B3は、出入り口のスロープ部を示す。スロープ部には、衝撃吸収材1などを敷設してもよく、或いは、敷設しなくてもよい。
なお、部屋壁B1と床シート材3の縁3aの間に生じる隙間(いわゆる目地)は、図示しない幅木にて隠蔽されるか、或いは、シーリング材などを充填することにより埋められる。また、スロープ部B3と床シート材3の縁3aの間に生じる隙間は、シーリング材などを充填することにより埋められる。なお、スロープ部を有さない部屋であってもよい。
【0017】
衝撃吸収材1は、後述する構造体11を有し、その複数が敷設面B上に敷き詰められている。例えば、衝撃吸収材1は、部屋壁B1とスペーサー部材2によって区画される領域、部屋壁B1とスペーサー部材2とスロープ部とによって区画される領域に敷設されている。隣り合う衝撃吸収材1は、互いの縁を隣接させて、実質的に隙間無く敷設されている。
前記スペーサー部材2は、平面視で、敷設面Bの第1方向に延在されている。スペーサー部材2の幅w6(前記幅方向の長さ)は、特に限定されないが、余りに大きいと下地層C中に占める衝撃吸収材1の面積割合が相対的に低下し、余りに小さいとスペーサー部材2を衝撃吸収材1の間に介在させる意義が低下する。かかる観点から、スペーサー部材2の幅w6は、10mm以上60mm以下が好ましく、20mm以上40mm以下がより好ましい。
平坦な下地層Cの表面を構成するために、スペーサー部材2の高さと衝撃吸収材1の高さは略同じである。
【0018】
接合部4は、スペーサー部材2に沿って第1方向に延びている。
図1では、長尺帯状の床シート材3を敷設した衝撃吸収床構造Aを例示しており、その床シート材3の長手方向を敷設面Bの第1方向と略平行にして、複数の床シート材3が第2方向に並べて敷設されている。ここで、本明細書において、第1方向と第2方向は、平面視で互いに直交する方向をいう。この場合、第1方向に延びる接合部4が形成される。なお、枚葉状の床シート材3を用いて衝撃吸収床構造Aを構成することもでき(図示せず)、この場合、第1方向及び第2方向のいずれにも沿った隣接した縁が生じるので、第1方向及び第2方向のいずれの方向にも延在するスペーサー部材2及び接合部4が形成される。
接合部4は、スペーサー部材2の幅方向中間部に配置されていてもよく、スペーサー部材2の側縁寄りに配置されていてもよい。施工し易いことから、接合部4は、スペーサー部材2の幅方向中間部に配置される。なお、本明細書において、中間部は、全体の半分の部分という意味ではなく、端と端の間という意味である。スペーサー部材2の幅方向は、敷設面Bに敷設されたときには、第2方向に相当する。
衝撃吸収材1を挟んで隣り合う2つのスペーサー部材2の間隔は、床シート材3の幅以下である。なお、床シート材3の幅は、第2方向における長さをいう。
以下、衝撃吸収材1、スペーサー部材2及び床シート材3を個々に説明した後に、衝撃吸収床構造Aの施工方法を説明する。
【0019】
<衝撃吸収材>
衝撃吸収材1は、衝撃吸収床構造Aの下地層Cを成す。
衝撃吸収材1は、人が歩行するときなどの通常の使用荷重を受けても変形せず、所定の荷重及び速度を超える衝撃が加わると変形し、人へのダメージを緩和する部材である。
衝撃吸収材1は、衝撃吸収能を持つ構造体を有する。衝撃吸収材1は、1つの構造体から構成されていてもよく、或いは、複数の構造体が連設されていてもよい。1度の敷設作業で多数の構造体を同時に敷設できることから、衝撃吸収材1は、連設された複数の構造体からなることが好ましい。
前記構造体は、例えば、中空の錘台状の構造を基本とし、敷設面Bと略水平でない辺に窪みを有する。
【0020】
構造体は、復元性のある材料で形成されることが好ましい。復元性のある材料にて形成された構造体は、荷重を受けて変形した後、荷重が無くなると元の形状に戻ることができる。前記材料としては、例えば、ゴムを含むエラストマー、スポンジなどの弾性体が挙げられる。例えば、構造体11は、NRゴムなどのゴム、或いは、熱可塑性エラストマーで形成される。構造体11がNRゴム(天然ゴム)で形成される場合、そのゴム硬度は、10から100の範囲でよく、50から100の範囲で衝撃吸収能と歩行時の安定性のバランスが向上する。前記構造体11のゴム硬度は、アスカーゴム硬度計C2型を用いて測定される値である。具体的には、常温常圧下で、アスカーゴム硬度計C2型(高分子計器株式会社製)の押針を、測定面に当て、水平になるようにしながら加圧し、水平状態で数値が安定したときの数値を読み取る。
【0021】
図4(a)は、敷設面Bに敷設する前の第1実施形態の衝撃吸収材1を一方側(第2面部112側)から見た斜視図であり、
図4(b)は、同衝撃吸収材1を反対側(第1面部111側)から見た斜視図である。
図5は、同衝撃吸収材1を構成する構造体11の基本単位を表した図であり、(a)は、同構造体11を正面から見た正面図であり、(b)は、同構造体11を斜め上方から見た斜視図であり、(c)は、同構造体11を真上から見た平面図であり、(d)は、同構造体11を真下から見た底面図である。
図6は、構造体11を正面から見た図の拡大である。
図6において、外側から見えない線を破線で表している。
【0022】
図4では、複数の構造体11が連設され、全体として板状を成した衝撃吸収材1を例示している。この衝撃吸収材1は、互いに隣接した複数の構造体11を備えている。図示例では、縦×横=8個の構造体×8個の構造体11が連設された衝撃吸収材1を例示しているが、構造体11の数は、これに限定されるわけではない。
構造体11は、敷設面Bと略平行な外面111aを有する第1面部111と、第1面部111の外面111aと略平行な外面112aを有する第2面部112と、錘台の壁面を構成する壁面部113と、第1面部111の各角から対応する第2面部112の各角を繋ぐ柱となる部分である柱部114と、柱部114に窪んで形成された凹部115と、を有する。第1面部111と第2面部112が柱部114で繋がっていることを条件として、壁面部113を省略してもよい。また、第1面部111、第2面部112、壁面部113、柱部114と別々のパーツのように記載している。これは、構造体11を一体として製造することを想定しているためであり、第1面部111、第2面部112、壁面部113、柱部114のそれぞれの接点は一体として繋がった状態である。もっとも、これらを別々のパーツとして製造し、接着剤や部品で接続して、構造体11を形成してもよい。
各構造体11の第1面部111の縁を、一体的に成形又は接着又は隣接させるなどによって、連設することにより、複数の構造体11からなる衝撃吸収材1が構成されている。
図4では、複数の構造体11が一体的に成形された衝撃吸収材1を例示している。
【0023】
第1面部111は、1辺が外幅w1の平面視略正方形状の枠状である。第1面部111は平面視枠状であるので、
図5(d)に示すように、第1面部111側から構造体11を見ると、第2面部112の内面112bが見える。
第1面部111の外幅w1は、例えば、5mm以上100mm以下であり、好ましくは10mm以上80mm以下であれば製造コストを低く抑えることができ、より好ましくは20mm以上50mm以下であれば施工しやすい高さに構造体11を収めることができる。第1面部111の厚みt1は、例えば、1mm以上10mm以下であり、好ましくは2mm以上5mm以下である。
第2面部112の外面112aは、第1面部111の外面111aと略平行である。なお、図示例では、第2面部112は平坦状であるが、敷設面Bに安定的に敷設できる又は第2面部112の上に床シート材3を敷設できれば、第2面部112の面内に凹凸や穴が形成され、その空隙から、構造体11が変形した際に内部の空気が抜けるように設計してもよい。
【0024】
第2面部112の外面112aは、1辺が幅w3の平面視略正方形状に形成されている。第2面部112の外面112aの幅w3は、第1面部111の外幅w1よりも小さい。また、第2面部112の内面112bの面積は、第2面部112の外面112aの面積よりも小さい。第1面部111の内幅w2と第2面部112の内面112bの幅w4は、式1:幅w4<内幅w2、の関係を満たしている。
第2面部112の厚みt2は、例えば、1mm以上10mm以下であり、好ましくは2mm以上5mm以下である。前記厚みt2が小さすぎると強度が低下し、小さな荷重で変形し、歩行の支障を生じるおそれがある。一方で、前記厚みt2が大きすぎると、大きな荷重が加わった場合でも変形し難くなり、十分な衝撃吸収性を発揮できないおそれがある上、材料コストも高くなる。
【0025】
壁面部113は、第2面部112の外面112aと水平ではない壁面を構成する。第1面部111及び第2面部112が、平面視略正方形状(又は略長方形状)である場合、壁面部113は、4つ存在する。壁面部113は、荷重が加わる部分ではあるが、第1面部111と第2面部112の対応する角が柱部114で繋がっていて、柱部114が荷重を受ける十分な強度があれば、壁面部113を省略してもよい。
柱部114は、第1面部111と第2面部112の各角を繋いでいる。さらに、柱部114の辺の上部において、柱部114の一部分が欠失する形で凹部115が存在する。
前記凹部115は、柱部114に存在し、衝撃吸収における中心的な働きをする部位である。
図7に示すように凹部115が存在することにより、凹部115の周辺は柱部114の中でも厚みが薄くなっており、このため、第1面部111又は第2面部112に一定の荷重等が加わった際、凹部115の部分で柱部114が構造体11の内側に向けて屈曲して衝撃を吸収する。衝撃を吸収した後、荷重が小さくなるに従い、柱部114や第1面部111などの構造体11が有する復元性によって、構造体11が元に形状に復元するようになる。
【0026】
ここで、
図7を参照して、柱部114を定義する。
図7は、概念的に1つの柱部114を構造体11から取り出した斜視図である。凹部115の幅は幅L1である。また、柱部114の角の辺(第2面部112の角から第1面部111に向かって伸びる辺)の、凹部115よりも下の辺を辺114a、内側の辺を辺114bとする。このとき、辺114aの任意の点から、柱部114の外側に面する側面114cと側面114dと等距離で、且つ辺114bに垂直に降ろした線が柱部114の太さにあたり、この長さを厚みt4とする。更に、凹部115の最深部から辺114bに垂直に降ろした線の長さを厚みt5とする。
図7に示すように、凹部115の窪みが最も深い部分(最深部)は、凹部115の中央付近に存在する。
図7の二点破線は、辺114aと辺114bを通る面が凹部115と接する部分であり、凹部115の最深部は当該二点破線上に存在する。厚みt4と厚みt5は、式2:厚みt5<厚みt4、の関係を満たしている。
【0027】
また、
図6において、本実施形態の第1面部111の外面111aから凹部115の最深部までの距離を高さh2とした場合、式3:高さh2≦高さh1/2、の関係を満たしている。つまり、凹部115の最深部は、構造体11の高さh1の半分及び半分より下の位置に存在する。これにより、第1面部111又は第2面部112に一定の荷重等がかかった際、凹部115で柱部114が構造体11の内側に向けて屈曲しやすくなる。
【0028】
なお、凹部115の最深部が、高さh1を四等分した時に、下から2番目の区画の両端を含む区画内に存在してもよく、この場合、凹部115の最深部から柱部114の上下の両端までの距離が十分に取れるため、屈曲時に構造体11が十分に沈み込み、衝撃を吸収し易い。さらに、凹部115の最深部は、高さh1を四等分した時に、上から2番目の区画の上端を含む区画内に存在してもよく、この場合は、前記と同様に凹部115の最深部から柱部114の上下の両端までの距離が十分に取れるため、屈曲時に構造体11が十分に沈み込み、衝撃を吸収し易い。窪みの最深部が、構造体の高さh1を四等分した時に、上から2番目から4番目の区画の両端を含む区画内に存在することにより、屈曲時に構造体11が十分に沈み込み、衝撃を吸収し易くなる。
【0029】
また、
図6において、第1面部111と柱部114が成す角度θ1は、式1が成り立つ範囲であればよい。例えば、角度θ1が、80度以上90度未満の範囲であれば、構造体11の高い衝撃吸収性が発揮され、更に83度から87度の範囲であれば、衝撃力に対して構造体11の構造安定性を的確に確保できる。
なお、構造体11の一例として、第1面部111及び第2面部112の外形が平面視略正方形状である四角錐台の立体構造を記載しているが、それらが他の多角形からなる錘台状の構造でもよい。特に、水平面におけるあらゆる方向の剛性が一定になることが知られている、略六角形の六角錘台が好ましい。
【0030】
第1実施形態の衝撃吸収材1を敷設面Bに敷設する際には、第1面部111の外面111aを敷設面Bに向けて衝撃吸収材1を敷設面Bに載置してもよく、或いは、第2面部112の外面112aを敷設面Bに向けて衝撃吸収材1を敷設面Bに載置してもよい。
図4の紙面下側を敷設面Bと仮定すると、同図(a)に示すように、第1面部111を敷設面Bに向けて衝撃吸収材1を載置した場合には、第2面部112の外面112a上に床シート材3が敷設され、同図(b)に示すように、第2面部112を敷設面Bに向けて衝撃吸収材1を載置した場合には、第1面部111の外面111a上に床シート材3が敷設される。
前者の場合、所定間隔を開けて面方向に存在する複数の第2面部112の外面112aが床シート材3の裏面に接する接触部となり、前記外面112aが存在しない部分は床シート材3の裏面に接しない非接触部となる。後者の場合、平面視格子状に存在する第1面部111の外面111aが床シート材3の裏面に接する接触部となり、前記外面111aが存在しない部分は床シート材3の裏面に接しない非接触部となる。前記接触部と非接触部は、面方向(水平方向)において交互に存在し、複数の接触部を含む仮想面は、1つの平面を成している。
【0031】
なお、衝撃吸収材1は、上記第1実施形態の構造のものに限られず、変形することによって衝撃を緩和する機能を有する構造であれば、適宜変更することができる。
図8(a)は、敷設面Bに敷設する前の第2実施形態の衝撃吸収材1を一方側(第2面部112側)から見た斜視図であり、
図8(b)は、同衝撃吸収材1を反対側(第1面部111側)から見た斜視図である。
図9は、同衝撃吸収材1を構成する構造体11の基本単位を表した図であり、(a)は、同構造体11を正面から見た正面図であり、(b)は、同構造体11を斜め上方から見た斜視図であり、(c)は、同構造体11を真上から見た平面図であり、(d)は、同構造体11を真下から見た底面図である。
図10は、構造体11を正面から見た図の拡大であり、
図11は、その断面図である。
【0032】
第2実施形態の衝撃吸収材1も、1つの構造体11で構成されていてもよいが、複数の構造体11が連設され且つ全体として板状のものが好ましい。
第2実施形態の構造体11も、第1実施形態の構造体11と同様に、第1面部111と、第2面部112と、柱部114と、柱部114に窪んで形成された凹部115と、を有し、必要に応じて、壁面部113をさらに有する。第2実施形態の構造体11の第1面部111、第2面部112、壁面部113、柱部114及び凹部115並びにそれらの幅などは、上記第1実施形態の構造体11のそれらと同様であるので、
図8乃至
図12において符号を援用し、それらの説明を省略する。
【0033】
第2実施形態の構造体11は、第2面部112の面内から第1面部111側へ突出する有底筒状の突出部116が形成されている点において、第1実施形態の構造体11と主として異なっている。突出部116を形成することにより、突出部116の変形によっても衝撃を吸収できるので、衝撃吸収性が向上する。さらに、突出部116によって歩行時に床構造を支える箇所が増加するので、衝撃吸収能と歩行時の安定性のバランス調整がし易く、ひいては両者のバランスが向上する。
前記突出部116は、例えば、平面視で第2面部112の重心を中心とする有底円筒状に形成されている。従って、第2面部112の面内には、前記筒状の突出部116の内周で画成された開口が形成されている。突出部116は、その外面116aが第1面部111の外面111aと同一平面内となるように突出されている。突出部116の外面116aと第1面部111の外面111aが面一とされていることにより、第1面部111を敷設面Bに敷設した場合には、敷設面Bに対する接触面積が大きくなり、衝撃吸収材1を安定的に敷設面Bに敷設でき、或いは、第1面部111の上に床シート材3を敷設した場合には、床シート材3に対する接触面積が大きくなり、床シート材3の表面に非接触部に起因する映り込みが生じることを抑制できる。
なお、
図12に示すように、突出部116の外面116aが第1面部111の外面111aよりも内側に位置するように、突出部116が突出されていてもよい。
【0034】
さらに、第2面部112には、平面視で放射状に複数の凹み部117が形成されている。前記各凹み部117は、前記突出部116の内周から各壁面部113にかけて延在されている。各凹み部117は、僅かな凹みであり、なだらかな弧状面を有する。また、各壁面部113には、それぞれ貫通穴118が形成されている。貫通穴118は、壁面部113の上方であって第2面部112付近に配置されている。前記凹み部117及び貫通穴118を形成することにより、衝撃吸収材1の衝撃吸収能を向上できる。
【0035】
第2実施形態の衝撃吸収材1を敷設面Bに敷設する際にも、第1面部111の外面111aを敷設面Bに向けて衝撃吸収材1を敷設面Bに載置してもよく、或いは、第2面部112の外面112aを敷設面Bに向けて衝撃吸収材1を敷設面Bに載置してもよい。
図8の紙面下側を敷設面Bと仮定すると、同図(a)に示すように、第1面部111を敷設面Bに向けて衝撃吸収材1を載置した場合には、第2面部112の外面112a上に床シート材3が敷設され、同図(b)に示すように、第2面部112を敷設面Bに向けて衝撃吸収材1を載置した場合には、第1面部111の外面111a上に床シート材3が敷設される。
前者の場合、所定間隔を開けて面方向に存在する複数の第2面部112の外面112aが床シート材3の裏面に接する接触部となり、前記外面112aが存在しない部分は床シート材3の裏面に接しない非接触部となる。後者の場合、平面視格子状に存在する第1面部111の外面111a及び突出部116の外面116aが床シート材3の裏面に接する接触部となり、前記外面111a,116aが存在しない部分は床シート材3の裏面に接しない非接触部となる。前記接触部と非接触部は、面方向(水平方向)において交互に存在し、複数の接触部を含む仮想面は、1つの平面を成している。
【0036】
<スペーサー部材>
スペーサー部材2は、幾つかの衝撃吸収材1の縁間に配置される。スペーサー部材2は、2つの床シート材3,3の隣接する縁3a,3aを接合剤にて接合する際に、床シート材3の変形を防止するための部材である。
スペーサー部材2は、硬質の材料から形成されていてもよく、復元性のある材料から形成されていてもよい。
硬質の材料としては、非発泡の合成樹脂、木材、金属、セラミックなどが挙げられる。硬質の材料は、実質的に衝撃吸収能を有さない材料と言える。下地層Cは、衝撃吸収材1及びスペーサー部材2から構成されるが、衝撃吸収材1が下地層Cの殆どの面積を占めるため、スペーサー部材2を硬質の材料で形成しても、衝撃を吸収できる下地層Cを構成できる。もっとも、スペーサー部材2が配置された箇所においても衝撃吸収能を有することが好ましいことから、スペーサー部材2は、復元性のある材料で形成されている部分を有することが好ましい。例えば、スペーサー部材2は、その高さ方向における上方部、中途部及び下方部から選ばれる少なくとも1つの部分が復元性のある材料で形成され、好ましくは少なくとも上方部が復元性のある材料で形成されている。さらに、衝撃を受けた際に衝撃吸収材1の変形によって床シート材3,3が面方向に引っ張られ、接合部4を破断させる力が加わるおそれがあるが、スペーサー部材2が柔軟且つ復元性を有する材料から形成されていることにより、前記接合部4に加わる力を緩和できる。
なお、スペーサー部材2の上方部は、床シート材3の裏面に対面する部分である。スペーサー部材2は、その上方部が復元性のある材料で形成されていれば、その下方部は硬質の材料から形成されていてもよく、或いは、部材全体が復元性のある材料で形成されていてもよい。
前記復元性のある材料で形成されるスペーサー部材2は、衝撃吸収材1と同様に荷重によって変形し且つ荷重が解除されると復元するが、スペーサー部材2は、衝撃吸収材1よりも変形し難いものである必要がある。前記変形し難いとは、敷設面Bに敷設した状態のスペーサー部材2と衝撃吸収材1とにそれぞれ表面側から同じ荷重を加えたときに、スペーサー部材2の方が変形し難いという意味である。
【0037】
スペーサー部材2を形成する復元性のある材料としては、例えば、発泡樹脂、軟質樹脂、ゴムを含むエラストマー、ゴムと樹脂の複合材などが挙げられる。特に、柔軟性及び復元性に優れていることから、スペーサー部材2は、発泡樹脂からなる上方部を有することが好ましく、さらに、衝撃吸収性が高く、前記接合部4に加わる力を大きく軽減できることから、スペーサー部材2の全体が発泡樹脂から形成されていることがより好ましい。また、発泡樹脂は、断熱性が高く熱変形が生じ難いので、溶接棒を用いて接合部4を形成する際に特に好適である。
樹脂の材質及び/又は発泡倍率を設定することにより、弾性を有する発泡樹脂を構成できる。そのような弾性を有する発泡樹脂の材質は、特に限定されず、例えば、ウレタン系樹脂、ポリスチレンなどのスチレン系樹脂、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。前記発泡樹脂の発泡倍率は、特に限定されず、例えば、1.5倍以上60倍以下である。
【0038】
前記復元性のあるスペーサー部材2の上方部をゴム硬度で表すと、例えば、そのゴム硬度は、20以上80以下であり、好ましくは、40以上60以下である。このような硬度の上方部を有するスペーサー部材2を用いることにより、全体に亘って衝撃吸収能を有する下地層Cを構成しつつ、床シート材3の縁3a,3aの接合作業を容易化できる。
前記スペーサー部材2のゴム硬度は、アスカーゴム硬度計C2型を用いて測定される値である。具体的には、常温常圧下で、アスカーゴム硬度計C2型(高分子計器株式会社製)の押針を、測定面に当て、水平になるようにしながら加圧し、水平状態で数値が安定したときの数値を読み取る。
【0039】
図13(a)は、第1実施形態のスペーサー部材2の斜視図を示し、形状の異ならない中途部を省略している。同図(b)は、スペーサー部材2を長手方向に沿って見た正面図を示す。
図13において、スペーサー部材2は、全体として細長い中実棒状体であり、全体的に復元性のある材料で形成されている。また、スペーサー部材2は、正面視で略矩形状、例えば、略長方形状又は略正方形状を成している。スペーサー部材2の上方部の表面は、平坦状である。
【0040】
なお、スペーサー部材2は、
図13に示す形状のものに限られず、適宜変更することができる。例えば、
図14(a)に示すように、スペーサー部材2は、復元性のある材料で形成された上方部21と、硬質の材料から形成された下方部22と、から構成されていてもよい。スペーサー部材2が硬質の下方部22を有する場合、十分な衝撃吸収能を発揮させる点から、上方部21の高さは、スペーサー部材2の全体の高さ×0.7以上1未満であることが好ましい。
【0041】
また、上記では、スペーサー部材2は中実状であるが、例えば、
図14(b)及び(c)に示すように、中空状であってもよい。また、上記では、スペーサー部材2は正面視略矩形状であるが、例えば、
図14(d)に示すような正面視逆凹字状などであってもよい。
【0042】
<床シート材>
床シート材3は、衝撃吸収床構造Aの表装層Dを成す。
図15乃至
図17は、下地層Cに敷設する前の床シート材3を表した図であり、
図15は、第1実施形態の床シート材3を表面側から見た平面図であり、
図16は、同床シート材3を裏面側から見た底面図であり、
図17は、第2実施形態の床シート材3を表面側から見た平面図である。
図15及び
図16を参照して、床シート材3は、平面視で長尺帯状に形成されている。前記長尺帯状は、第1方向長さが第2方向よりも十分に長い平面視略長方形状をいい、例えば、第1方向長さが第2方向長さの3倍以上、好ましくは5倍以上である。長尺帯状の具体的な寸法としては、例えば、短手方向である第2方向長さが500mm以上3000mm以下で、長手方向である第1方向長さが2m以上500m以下などの場合が挙げられる。長尺帯状に形成された床シート材3は、通常、ロールに巻かれて保管及び運搬に供され、施工現場において、所望の形状に裁断して使用される。
【0043】
図17を参照して、床シート材3は、平面視で略正方形状の枚葉状に形成されている。もっとも、枚葉状の床シート材3は、平面視略長方形状、平面視略六角形状などに形成されていてもよい(図示せず)。前記平面視略正方形状又は略長方形状の床シート材3の具体的な寸法としては、例えば、第1方向長さが500mm以上1000mm以下、第2方向長さが500mm以上1000mm以下などの場合が挙げられる。図示例のような枚葉状の床シート材3は、その複数を重ね合わせた状態で、又は、個々にロール状に巻いた状態で保管・運搬に供される。
床シート材3の一度の搬入によって比較的大面積に敷設できることから、長尺帯状の床シート材3を用いることが好ましい。
【0044】
図18及び
図19は、床シート材3のいくつかの層構成を表した断面図である。なお、
図18は、
図15のXVIII-XVIII線(第2方向と平行な方向)で切断した断面図であり、
図18(a)及び(b)は、同様の箇所で切断した他の層構成の断面図である。
図17の床シート材3の層構成についても同様であるので、図面は省略する。
図18及び
図19を参照して、床シート材3は、少なくとも表面樹脂層を有する。つまり、床シート材3は、その表面にパイル糸や布生地を有さず、床シート材3の表面が表面樹脂層にて構成されている。
床シート材3は、柔軟性を有し、好ましくは、クッション性を有する。前記柔軟性の程度としては、例えば、床シート材3の裏面側を巻き芯に向けて、直径10cmの巻き芯の周囲にロール状に巻き付け可能である。また、前記クッション性は、床シート材3の表面を指で裏面側に押した際に凹む程度に撓むことをいう。
床シート材3の全体の厚みは、特に限定されず、例えば、1.0mm以上10mm以下であり、好ましくは、1.2mm以上8mm以下であり、より好ましくは、1.5mm以上5mm以下である。前記床シート材3の全体の厚みは、床シート材3に吸着部が設けられている場合には、その吸着部の厚みを含まないものとする。
【0045】
床シート材3の層構成は、特に限定されず、上述のように表面樹脂層を少なくとも有していればよい。
例えば、床シート材3は、床シート材3の表面を構成する表面樹脂層311と、その裏面側に積層された裏層312と、を有するシート本体31を有し、好ましくは、前記シート本体31の裏面側に吸着部32を有する。
また、シート本体31は、前記表面樹脂層311と裏層312の間に配置され、表面樹脂層311と裏層312を強固に接着する中間層313をさらに有することが好ましい。
前記表面樹脂層311は、1層から構成されていてもよく、2層以上から構成されていてもよい。表面樹脂層311は、発泡された層を含んでいてもよいが、床シート材3の耐久性を高める点で、表面樹脂層311は、発泡された層を含まないことが好ましい。
例えば、前記表面樹脂層311は、非発泡樹脂からなり且つ床シート材3の表面を構成する表面層3111と、デザインを表すデザイン層3112と、を有し、必要に応じて、前記表面層3111の表面側に、非発泡樹脂からなる保護層3113を有していてもよい。前記保護層3113を有する場合、その保護層3113が床シート材3の表面を構成する。
前記表面樹脂層311の表面には、微細な凹凸が形成されていてもよい。このような凹凸は、例えば、梨地模様を成す凹凸(いわゆる梨地エンボス)、木目模様を成す凹凸(いわゆる木目エンボス)などが挙げられる。凹凸の深度(凹の深さ)は、例えば、20μm以上120μm以下であり、好ましくは30μm以上100μm以下である。
【0046】
前記表面樹脂層311の表面層3111は、合成樹脂を含み、1層又は2層以上から構成される。表面層3111の樹脂材料としては、一般的には、熱可塑性樹脂が用いられる。前記熱可塑性樹脂としては、塩化ビニルや塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体などの塩化ビニル系樹脂;ポリオレフィン系樹脂;ウレタン系樹脂;エチレン-酢酸ビニル共重合体などの酢酸ビニル系樹脂;エチレン-メタクリレート樹脂などのアクリル系樹脂;ポリアミド系樹脂;エステル系樹脂;などが挙げられる。これらは、1種単独で、又は2種以上を併用できる。デザイン層3112などと強固に接着することから、表面層3111は、塩化ビニル系樹脂を主成分とする塩化ビニル組成物から形成されていることが好ましい。
本明細書において、主成分樹脂は、その層を構成する樹脂成分(ただし、添加剤を除く)の中で最も多い成分(重量比)をいう。主成分樹脂の量は、その層を構成する樹脂成分全体を100重量%とした場合、40重量%を超え、好ましくは、50重量%以上であり、より好ましくは60重量%以上である。主成分樹脂の量の上限は、100重量%である。主成分樹脂の量が100重量%未満である場合において、その層に含まれる主成分樹脂以外の樹脂は、特に限定されず、公知の樹脂成分を用いることができる。
【0047】
前記表面層3111が塩化ビニル組成物から形成される場合、塩化ビニル系樹脂は、ペースト塩化ビニル樹脂、サスペンジョン塩化ビニル樹脂のいずれを用いてもよい。デザイン層3112と強固に接着でき、製造時の加工性に優れることから、ペースト塩化ビニル樹脂が好ましい。
前記表面層3111を形成する塩化ビニル組成物は、全体を100重量%として、塩化ビニル系樹脂を45重量%以上80重量%以下、DOPなどの可塑剤を15重量%以上50重量%以下含むことが好ましい。前記塩化ビニル組成物は、必要に応じて、添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、従来公知のものを使用でき、例えば、難燃剤、安定剤、吸湿剤、酸化防止剤、滑剤、着色剤、防黴剤などが挙げられる。前記塩化ビニル組成物には、炭酸カルシウムなどの充填剤が含まれていてもよいが、透明性に優れた層を形成できることから、前記塩化ビニル組成物は、炭酸カルシウムなどの充填剤を含まないことが好ましい。
表面層3111の厚みは、特に限定されず、例えば、0.1mm以上1.5mm以下であり、より好ましくは0.2mm以上1.0mm以下である。
【0048】
デザイン層3112は、床シート材3に色彩や柄を表出させることにより、床シート材3にデザインを付与する層である。デザイン層3112は、必要に応じて設けられる。デザイン層3112は、非発泡の層である。デザイン層3112に表されるデザインは、特に限定されず、任意の絵柄、杢調模様、木目模様、石目模様などが挙げられる。
前記デザイン層3112としては、意匠印刷フィルム、着色樹脂シートなどが挙げられる。もっとも、デザイン層3112は、これら例示の層に限られず、デザインを表出できる層であればその他任意のものを用いることができる。前記意匠印刷フィルムは、樹脂フィルム上に印刷インキ、例えば着色剤及び塩化ビニルなどのバインダー樹脂を含むインキを印刷して固化させたものを用いることができる。前記着色樹脂シートは、例えば、顔料などによって着色した樹脂、例えば、主成分樹脂が塩化ビニル系樹脂などをシート状に加工したものを用いることができる。デザイン層3112が塩化ビニル組成物から形成される場合、塩化ビニル系樹脂は、ペースト塩化ビニル樹脂、サスペンジョン塩化ビニル樹脂のいずれを用いてもよい。ペースト塩化ビニル樹脂よりも硬くなることから、デザイン層3112にはサスペンジョン塩化ビニル樹脂を用いることが好ましい。
デザイン層3112の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.002mm以上0.3mm以下であり、好ましくは0.005mm以上0.2mm以下である。
【0049】
保護層3113は、必要に応じて設けられ、保護層3113を有さない場合には、その下側の表面層3111が床シート材3の表面を構成する。
保護層3113は、床シート材3の表面に耐摩耗性や耐傷付き性を付与するために設けられる層であることが好ましい。保護層3113は、透明又は不透明でもよいが、デザイン層3112が設けられる場合には、そのデザイン表示を視認できるようにするため、保護層3113は透明であることが好ましい。なお、保護層3113は、非発泡の層である。
【0050】
保護層3113は、合成樹脂を含む。その樹脂材料は、特に限定されないが、比較的硬い樹脂層から形成されていることが好ましい。保護層3113の樹脂材料としては、加工性の良さから硬化性樹脂組成物を用いることが好ましく、さらに、電離放射線硬化性樹脂組成物を用いることがより好ましく、汎用的であることから、紫外線硬化性樹脂組成物を用いることがさらに好ましい。前記硬化性樹脂組成物としては、紫外線硬化性樹脂などの電離放射線硬化性樹脂以外に、熱硬化性樹脂、非電離放射線により硬化する樹脂組成物などが挙げられる。
前記紫外線硬化性樹脂組成物は、硬化性モノマー及びオリゴマーの少なくとも何れか一方と光重合開始剤とを含み、さらに、溶剤、レベリング剤、微粒子、充填剤、分散剤、可塑剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、酸化防止剤及びチクソトロピー化剤などから選ばれる少なくとも1種の添加剤が含まれている。紫外線硬化性樹脂組成物などの硬化性樹脂組成物は、市販品を用いてもよい。
保護層3113の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.001mm以上0.1mm以下であり、好ましくは0.005mm以上0.07mm以下であり、好ましくは0.01mm以上0.05mm以下である。
【0051】
前記表面樹脂層311と裏層312の間に配置される中間層313は、表面樹脂層311を裏層312に強固に接着させるために設けられる層である。なお、表面樹脂層311が裏層312に直接的に強固に接着可能である場合には、中間層313を省略することもできる。中間層313は、発泡された層でもよいが、接着層として機能させるために非発泡の層であることが好ましい。
中間層313は、合成樹脂を含む。その樹脂材料としては、一般的には、熱可塑性樹脂が用いられる。前記熱可塑性樹脂としては、上述の表面層3111で例示したようなものが挙げられる。中間層313についても、デザイン層3112などと強固に接着することから、上述の塩化ビニル系樹脂を主成分とする塩化ビニル組成物から形成されていることが好ましい。
中間層313の厚みは、特に限定されず、例えば、0.1mm以上0.8mm以下であり、好ましくは0.2mm以上0.7mm以下である。
【0052】
前記裏層312は、1層から構成されていてもよく、2層以上から構成されていてもよい。裏層312は、衝撃吸収材1と協働して、人に加わる衝撃を緩和できることから、発泡された層を含むことが好ましく、また、床シート材3の寸法安定性の観点から、繊維補強されていることが好ましい。
例えば、裏層312は、繊維補強層3121と、裏側樹脂層3122と、を有する。繊維補強層3121は、
図18に示すように、表面樹脂層311と裏側樹脂層3122の間(中間層313を有する場合、中間層313と裏側樹脂層3122の間)に配置されていてもよく、或いは、
図19(a)に示すように、裏側樹脂層3122の厚み方向中間部に埋設されていてもよく、或いは、
図19(b)に示すように、裏側樹脂層3122の裏面に配置されていてもよい。また、繊維補強層3121は、1層に限られず、2層以上であってもよい。繊維補強層3121を2層以上用いる場合には、例えば、1つの繊維補強層3121を前記表面樹脂層311と裏側樹脂層3122の間に配置し且つ他の繊維補強層3121を前記裏側樹脂層3122の裏面に配置することなどが例示される。
【0053】
繊維補強層3121は、ガラス繊維などの繊維をシート状に形成したものである。繊維補強層3121としては、例えば、不織布、織布などが挙げられる。不織布や織布を構成する繊維の材質は、特に限定されず、例えば、ポリエステル、ポリオレフィンなどの合成樹脂繊維;ガラス、カーボンなどの無機繊維;天然繊維などが挙げられる。特に、温度による寸法変化が小さいことから、繊維補強層3121としては、ガラス繊維を含むガラスシートを用いることが好ましい。
【0054】
裏側樹脂層3122は、非発泡でもよいが、上述の理由から発泡された樹脂層であることが好ましい。なお、裏側樹脂層3122は、繊維補強層3121と剥離不能なほどに強固に接着されている。
裏側樹脂層3122を構成する発泡樹脂としては、特に限定されないが、塩化ビニルや塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体などの塩化ビニル系樹脂;ポリウレタンなどのウレタン系樹脂;ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;エチレン-酢酸ビニル共重合体などの酢酸ビニル系樹脂;ポリスチレンなどのスチレン系樹脂;エチレン-メタクリレート樹脂などのアクリル系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレートなどのエステル系樹脂;などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの反応型樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で又は2種以上を併用できる。好ましくは、裏側樹脂層3122は、塩化ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、又はポリオレフィン系樹脂を含む。塩化ビニル系樹脂を主成分樹脂とする発泡された裏側樹脂層3122は、加工性に優れ、比較的安価である。ウレタン系樹脂又はポリオレフィン系樹脂を主成分樹脂とする発泡された裏側樹脂層3122は、柔軟性に優れ、下地層Cに馴染みやすいという利点がある。
【0055】
前記裏側樹脂層3122が塩化ビニル系樹脂を主成分樹脂とする場合、その裏側樹脂層3122は、塩化ビニル組成物を発泡させることによって形成される。裏側樹脂層3122の塩化ビニル系樹脂は、ペースト塩化ビニル樹脂、サスペンジョン塩化ビニル樹脂のいずれを用いてもよい。繊維補強層3121と強固に接着できることから、裏側樹脂層3122にはペースト塩化ビニル樹脂を用いることが好ましい。
前記裏側樹脂層3122を形成する塩化ビニル組成物は、全体を100重量%として、塩化ビニル系樹脂を15重量%以上80重量%以下、炭酸カルシウムなどの充填剤を0重量%以上70重量%以下、DOPなどの可塑剤を10重量%以上50重量%以下含むことが好ましい。なお、充填剤が0重量%は、充填剤を含まないことを意味する。前記塩化ビニル組成物は、必要に応じて、添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、従来公知のものを使用でき、例えば、難燃剤、安定剤、吸湿剤、酸化防止剤、滑剤、着色剤、防黴剤などが挙げられる。
【0056】
発泡された裏側樹脂層3122を形成するための樹脂組成物の発泡方法は、特に限定されず、化学的発泡法、機械的発泡法、物理的発泡法の何れでもよく、また、中空ビーズなどの既発泡剤を用いた発泡、或いは、熱膨張性マイクロカプセルを用いた発泡でもよい。
裏側樹脂層3122の発泡倍率は、特に限定されないが、余りに小さいと衝撃吸収性が低下し、余りに大きいと荷重を受けた後の復元性が低下する。かかる観点から、裏側樹脂層3122の発泡倍率は、1.2倍以上3.5倍以下であることが好ましく、1.5倍以上3.0倍以下であることがより好ましい。
裏側樹脂層3122の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.5mm以上5mm以下であり、好ましくは、1mm以上4mm以下である。
【0057】
図16、
図18及び
図19に示すように、前記シート本体31の裏面側には、必要に応じて吸着部32が設けられる。吸着部32は、床シート材3を下地層Cから引き剥がすことを許容しつつ、床シート材3の面方向への位置ずれや滑りを防止するために、シート本体31に設けられる部分である。
吸着部32は、床シート材3の滑りを防止できる程度の十分な密着力で下地層Cに付着しうるものであれば、その形成材料は、特に限定されない。吸着部32の形成材料としては、下地層Cに対して吸着又は粘着するようなものが挙げられる。吸着による吸着部32は、敷設した床シート材3に荷重が加わっているときには下地層Cに対して強く密着するので、床シート材3のズレを防止でき、他方、前記荷重が加わっていないときには下地層Cに対して弱く密着するので、床シート材3を比較的容易に取り外すことができる。
例えば、前記吸着による吸着部32の形成材料としては、柔軟性を有する発泡樹脂、軟質ゴムなどが挙げられる。前記粘着による吸着部32の形成材料としては、ピールアップ性粘着剤などが挙げられる。特に、吸着部32の形成材料としては、引き剥がした後に吸着部32の形成材料が下地層Cに残存し難いことから、柔軟性を有する発泡樹脂が好ましい。
なお、吸着部32が設けられた床シート材3は、通常、離型シートに貼付された状態で保管・運搬され、敷設時に前記離型シートが剥離される。
【0058】
柔軟性を有する発泡樹脂は、複数の微細孔を有する多孔質構造である。前記発泡樹脂は、連続気泡構造又は独立気泡構造の何れでもよいが、吸盤機能を十分に有し、高い吸着力を発揮することから、連続気泡構造が好ましい。前記発泡樹脂の材質は特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エチレン-酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、エポキシ樹脂、アクリル酸エステル、ポリエステル等の熱可塑性樹脂などが挙げられる。密着性に優れることから、吸着部32の形成材料として、アクリル樹脂を発泡させた発泡アクリル樹脂を用いることが好ましい。発泡樹脂の発泡倍率は、特に限定されないが、下地層Cに対して十分に密着し且つ材料破壊を生じ難くする観点から、1.1倍を超え6倍以下が好ましく、1.6倍以上5倍以下がより好ましく、さらに、1.6倍以上3倍未満が特に好ましい。
【0059】
吸着部32は、シート本体31の裏面に全体的にベタ状に設けられていてもよい(図示せず)。図示例では、吸着部32は、シート本体31の全体に設けられておらず、シート本体31の裏面に部分的に設けられている。つまり、床シート材3の裏面において、シート本体31の裏面が部分的に露出している。
なお、吸着部32の形成範囲を判りやすく図示するため、
図16において、便宜上、吸着部32に網掛けを付加している。なお、
図17の床シート材3についても、同様な吸着部32が設けられていることが好ましい。
【0060】
図示例では、吸着部32は、シート本体31の裏面から突設された複数の凸部からなり、例えば、シート本体31の裏面から鉛直に突出された、平面視帯状の複数の凸部からなる。帯状の各吸着部32は、いずれも床シート材3の第1方向に延びており、複数の吸着部32が、床シート材3の第2方向に略平行に並設されている。
なお、特に図示しないが、帯状の吸着部32は、平面視波状や蛇行状に形成されていてもよい。このように波状や蛇行状に形成することにより、床シート材3の第2方向両側端部にも吸着部32が所々で存在するようになり、端部が浮くことを防止できる。また、吸着部32は、平面視で、略円状、略楕円状、略三角形状や略矩形状などの点状に形成されてもよい。
凸部からなる吸着部32の断面形状は、特に限定されず、
図18及び
図19に示すような、略半楕円形状のほか、略半円弧状、略矩形状、略三角形状などが挙げられる。床シート材3を敷設した際に、均等に変形して下地層Cに良好に密着することから、凸部の断面形状は、略半楕円形状又は略半円弧状が好ましい。複数の凸部の断面形状は、全て同じ形状でもよいし、そのうちの一部の凸部の断面形状が異なっていてもよい。
【0061】
前記凸部(吸着部32)の高さt7は、特に限定されないが、余りに小さいと、床シート材3のズレ防止効果を得られないおそれがあるので、例えば、0.05mm以上1mm以下であり、好ましくは、0.1mm以上0.5mm以下である。なお、凸部(吸着部32)の高さt7は、
図18に示すように、凸部の基部から凸部の頂点までの鉛直長さである。
前記凸部(吸着部32)の幅w7は、特に限定されないが、床シート材3の位置ずれや滑りを効果的に防止でき、敷設した床シート材3を下地層Cから取り外し易くする観点から、凸部の幅w7は、1mm以上20mm以下が好ましく、1.5mm以上5mm以下がより好ましい。なお、前記凸部の平面視形状が帯状で且つその幅が一様でない場合には、前記凸部の幅w7は、最も大きい箇所における幅に該当する。また、前記凸部の平面視形状が点状などのその他の形状である場合においても同様に、最も大きい箇所における幅である。
隣接する凸部(吸着部32)の間隔w8は、特に限定されないが、床シート材3の位置ずれや滑りを効果的に防止でき、敷設した床シート材3を下地層Cから取り外し易くする観点から、隣接する凸部の間隔w8は、1mm以上5mm以下が好ましく、1mm以上3mm以下がより好ましい。各凸部の間隔は、それぞれ異なっていてもよいし、同一でもよい。均等に下地層Cに対して密着することから、各凸部の間隔は、同じであることが好ましい。
また、凸部(吸着部32)の幅w7と凸部(吸着部32)の間隔w8は、同じでもよく、或いは、いずれか一方が大きくてもよい。図示例では、凸部の幅w7が、凸部の間隔w8よりも大きい。
【0062】
[衝撃吸収床構造の施工方法の第1実施形態]
本発明の衝撃吸収床構造Aの施工方法は、幾つかの衝撃吸収材1の間にスペーサー部材2を介在させながら下地層Cを形成し、そのスペーサー部材2の上で、床シート材3,3の隣接する縁3a,3aを接合することを特徴とする。
かかる施工方法は、下地層Cを形成する工程と、床シート材3を敷設して表装層Dを形成する工程と、を有する。
【0063】
<下地層形成工程>
施工場所である敷設面Bの上に、衝撃吸収材1及びスペーサー部材2を敷設する。
衝撃吸収材1は、1度の敷設作業で多数の構造体を同時に敷設できることから、上記のように複数の構造体11が連設された板状のものを用いることが好ましい。
衝撃吸収材1及びスペーサー部材2は、接着剤を介して敷設面Bに接着固定してもよく、或いは、敷設面Bに載置するだけでもよい。床シート材3の裏面に接する接触部の面積割合が大きくなることから、衝撃吸収材1は、第2面部112の外面112aを敷設面Bに向けて敷設することが好ましく、衝撃吸収性に優れ、床シート材3の映り込みを抑制できることから、上記第2実施形態の衝撃吸収材1を敷設することが好ましい。
【0064】
図20は、敷設面Bに衝撃吸収材1及びスペーサー部材2を敷設した状態を表面側から見た平面図である。なお、
図20において、紙面右側及び下側の構造を省略している。
例えば、
図20に示すように、上記第2実施形態の衝撃吸収材1の縁を部屋壁B1側に当接させ、順に衝撃吸収材1を隙間無く並べていく。衝撃吸収材1を第1方向及び第2方向に幾つか並べたところで、スペーサー部材2を衝撃吸収材1の縁に沿わせて配置する。第1方向に並んだ衝撃吸収材1の縁に沿わせつつ、スペーサー部材2の長手方向が第1方向となるようにしてスペーサー部材2を配置し、そのスペーサー部材2の反対側の縁に沿わせて衝撃吸収材1を第1方向及び第2方向に順に並べていく。
このようにして、
図20に示すように、複数の衝撃吸収材1と、幾つかの衝撃吸収材1の間に介在され且つ第1方向に延在するスペーサー部材2であって、第2方向において間隔を有して配置された複数のスペーサー部材2と、を有する下地層Cが形成される。
第2方向において隣り合うスペーサー部材2の間隔w9は、床シート材3の第2方向長さ以下に設定され、床シート材3の端材を少なくする観点から、床シート材3の第2方向長さ×0.7以上×1以下に設定されることが好ましい。施工場所の外縁(部屋壁B1)とスペーサー部材2の間隔w10についても同様に、床シート材3の第2方向長さ以下に設定され、好ましくは床シート材3の第2方向長さ×0.8以上×1以下に設定される。なお、前記間隔w9,w10は、図示のようにスペーサー部材2の幅方向中心点を基準とする。
【0065】
<表装層形成工程>
<<床シート材の敷設>>
次に、前記下地層Cの上に、床シート材3を敷設する。床シート材3としては、上記のようなものを用いることができるが、中でも、引き剥がし容易で且つ引き剥がした後に材料が残存し難いことから、発泡樹脂製の吸着部32を有する床シート材3を用いることが好ましい。
図21は、下地層Cの上に床シート材3を敷設した状態を表面側から見た平面図であり、衝撃吸収材1の外形を小さい破線で、スペーサー部材2を通常の破線で示している。
図22は、スペーサー部材2の周辺を第2方向に沿って切断した拡大断面図である。なお、
図3、
図22乃至
図26においては、床シート材3のシート本体31の層構成は図示していない。
【0066】
長尺帯状の床シート材3又は枚葉状の床シート材3のいずれを用いてもよいが、1度の作業で第1方向の略全体に床シート材3を敷設できることから、長尺帯状の床シート材3を用いることが好ましい。また、製品として提供された床シート材3は、規格品であり、その第2方向長さは規格長さとなっている。この規格品の床シート材3の第2方向長さが、隣り合うスペーサー部材2の間隔w9及び施工場所の外縁(部屋壁B1)とスペーサー部材2の間隔w10と同じ場合には、前記規格品の床シート材3を切断することなく、第2方向に並べていくことにより、スペーサー部材2の表面上において床シート材3の縁3a,3a同士が突き合って隣接する。もっとも、実際の施工場所にあっては、下地層形成工程において、隣り合うスペーサー部材2の間隔などを、規格品の床シート材3の第2方向長さと同じに設定しながら衝撃吸収材1及びスペーサー部材2を敷設できないことが多い。このため、通常、製品として提供された床シート材3を切断し、適切な長さの床シート材3を形成する。この切断作業は、施工場所以外で行なうことも可能であるが、隣接する床シート材3の縁3a同士を綺麗に且つ平面視で略直線状に突き合わせるために、下地層C上で行なうことが好ましい。
【0067】
衝撃吸収材1は、第1面部111側及び第2面部112側のいずれの側においても全体的に非平坦であって、面方向において凹凸が連続しているので、衝撃吸収材1の上で床シート材3を切断することは困難である。例えば、第2面部112の外面112aを敷設面Bに向けて敷設した場合には、床シート材3の裏面に接する接触部と、前記床シート材3の裏面に接しない非接触部と、を有し、前記接触部と前記非接触部が面方向において交互に存在する下地層Cが形成される。この場合、接触部は、衝撃吸収材1の第1面部111の外面111a及び突出部116の外面116a並びにスペーサー部材2の表面である。
本発明においては、衝撃吸収材1の間に平坦な表面を有するスペーサー部材2を介在させているので、そのスペーサー部材2上において綺麗に且つ簡単に床シート材3を切断することができる。
【0068】
詳しくは、
図21及び
図22に示すように、第1の床シート材3-1の第2方向一方側の端部3bと第2の床シート材3-2の第2方向反対側の端部3cを、スペーサー部材2上に載せて重ね合わせる。以下、第2方向一方側の端部3bを「一端部3b」といい、第2方向反対側の端部3cを「他端部3c」という場合がある。例えば、第1の床シート材3-1の第2方向反対側の縁を部屋壁B1に当接させ、その一端部3bをスペーサー部材2上に重ね、その一端部3bに重なるように第2の床シート材3-2の他端部3cを重ね合わせる。図示例では、第1の床シート材3-1の一端部3bの縁3a及び第2の床シート材3-2の他端部3cの縁3aが、スペーサー部材2上に存在しているが、前記縁3a,3aの少なくとも一方が衝撃吸収材1上に存在して前記一端部3bと他端部3cが重ね合わされていてもよい。
【0069】
また、発泡樹脂からなる上方部を有するスペーサー部材2を使用する場合には、床シート材3を下地層Cに敷設する前に、
図21及び
図22に示すように、スペーサー部材2の表面に、吸着補助層5を設けておくことが好ましい。吸着補助層5は、床シート材3の吸着部32を十分に付着させるために設けられる。発泡樹脂からなる上方部の表面は、通常、微細気泡が露出しているので、床シート材3の吸着部32は、そのスペーサー部材2の表面に十分に付着し難い場合がある。この点、吸着補助層5を設けることにより、床シート材3の端部が十分な吸着力でスペーサー部材2に付着する。なお、本明細書において、「付着」は、人力で剥離可能な状態で付いている状態をいい、「接着」及び「接合」は、人力で分離困難なほどに又は剥離すると材料破壊を生じるほどに強固に付いている状態をいう。
【0070】
吸着補助層5は、下地層Cを形成する前からスペーサー部材2に設けられていてもよく、或いは、下地層Cを形成する過程でスペーサー部材2に設けてもよく、或いは、下地層Cを形成した後且つ床シート材3を敷設する前にスペーサー部材2に設けてもよい。
1つの実施形態では、吸着補助層5として両面粘着テープを用いることができる。両面粘着テープは、両面に粘着剤が設けられた基材又は粘着剤の層からなる粘着本体層51と、その粘着本体層51の両面側に貼付された離型シート52と、を有し、2つの離型シート52が粘着本体層51に剥離可能に付着されている帯状のテープである。前記離型シート52としては、表面が平滑な合成樹脂フィルム、合成紙、紙などが挙げられる。
一方の離型シート(図示せず)を剥離して一方面の粘着剤を露出させ且つもう一方の離型シート52を付けたままで、両面粘着テープをスペーサー部材2の上に貼り付ける。離型シート52を付けたままであるので、スペーサー部材2上で重ね合わされる第1の床シート材3-1の一端部3bと第2の床シート材3-2の他端部3cは、スペーサー部材2上から容易に引き剥がすことができる。以下、粘着本体層51に付けたままの離型シート52を「仮付け離型シート52」という。
なお、図示例では、両面粘着テープ(吸着補助層5)の幅は、スペーサー部材2の幅w6と同じであるが、その幅w6よりも少し大きい又は小さくてもよい。
【0071】
スペーサー部材2上に重ねて載せられた第1の床シート材3-1の一端部3bと第2の床シート材3-2の他端部3cの少なくとも一方を前記スペーサー部材2上で切断することにより、第1の床シート材3-1の縁3aとその縁3aに隣接する第2の床シート材3-2の縁3aとを形成する。
スペーサー部材2上で切断する方式としては、大別して次の2通りがある。
(1)
図23(a)に示すように、スペーサー部材2上で重ね合わされた第1の床シート材3-1の一端部3bと第2の床シート材3-2の他端部3cの幅方向中間部を、すなわち、スペーサー部材2上で重ね合わされた二重端部の幅方向中間部を、カッターなどの切断刃6を用いて、第1方向と略平行にスペーサー部材2上で切断する。この方式によれば、縁3a,3a同士が綺麗に突き合った継ぎ目を形成できる。
前記切断によって、第1の床シート材3-1の一方側の縁3aと第2の床シート材3-2の反対側の縁3aが新たに形成され、隣接する床シート材3,3の縁3a,3a同士が突き合わされた継ぎ目が形成される。
(2)
図23(b)に示すように、スペーサー部材2上で一端部3b及び他端部3cを重ね合わせ、第2の床シート材3-2の他端部3cを、切断刃6を用いて第1の床シート材3-1の一端部3bの縁3aに沿って第1方向と略平行にスペーサー部材2上で切断する。同図の二点鎖線で示すように、第1の床シート材3-1の一端部3bを、第2の床シート材3-2の他端部3cの縁3aに沿ってスペーサー部材2上で切断してもよい。この方式によれば、床シート材3の縁3aを当て木のように利用できる。また、端部3cに固定部材を掛け、それを基準として一端部3bを切断するような切断治具を用いる方法でもよい。
前記切断によって、第2の床シート材3-2の反対側の縁3a又は第1の床シート材3-1の一方側の縁3aが新たに形成され、隣接する床シート材3,3の縁3a,3a同士が突き合わされた継ぎ目が形成される。
【0072】
仮付け離型シート52の表面は平滑であるため、床シート材3の吸着部32がその仮付け離型シート52の表面に十分に付着する。よって、上記切断時に力を加えた際に、床シート材3の端部3b,3cが面方向にずれ難く、容易に且つ綺麗に切断できる。
【0073】
切断後、
図24(a)に示すように、端材39を除去すると共に、第1の床シート材3-1の一端部3b及び第2の床シート材3-2の他端部3cを仮付け離型シート52(スペーサー部材2)から引き剥がし、さらに、仮付け離型シート52を剥離して粘着本体層51の粘着面を露出させる。粘着本体層51に仮付け離型シート52を付けたままにして切断するので、切断後、前記端部3b,3cを容易に引き剥がすことができる。特に、発泡樹脂製の吸着部32は、仮付け離型シート52や衝撃吸収材1から容易に引き剥がすことができる。
仮付け離型シート52を引き剥がした後、同図(b)に示すように、第1の床シート材3-1の一端部3b及び第2の床シート材3-2の他端部3cをスペーサー部材2上に載せることにより、隣接する床シート材3,3の縁3a,3a同士が突き合わされた継ぎ目を再び形成できる。スペーサー部材2上に戻した第1の床シート材3-1の一端部3b及び第2の床シート材3-2の他端部3cは、露出した粘着本体層51に接着する。これらの端部3b,3cを粘着本体層51から剥離しようとすると、吸着部32が材料破壊を起こすほどに、前記端部3b,3cは粘着本体層51に接着している。
【0074】
<<床シート材の縁の接合>>
次に、突き合わされた床シート材3,3の縁3a,3aを、接合剤を用いて接合する。
接合剤としては、熱可塑性樹脂製の溶接棒、シーム液などを用いることができる。ここでは、溶接棒を用いた接合を具体的に説明する。
突き合わされた床シート材3,3の縁3a,3aに溶接棒を接着させて継ぎ目を接合する。
前記接合する前に、継ぎ目に溝部を形成しておくことが好ましい。前記溝部は、溶接棒を接着させる際の案内溝として機能する。
例えば、第1の床シート材3-1の一方側の上縁角部と第2の床シート材3-2の反対側の上縁角部を、U字カッターなどの切除具を用いて切除する。このようにして、
図25(a)に示すように、床シート材3,3の隣接する縁3a,3aの上部に、溝部7が形成される。なお、図示例では、溝部7は、円弧状であるが、略V字状、略台形状などの四角形状などであってもよい。
【0075】
同図(b)に示すように、隣接する縁3a,3aを、加熱して軟化した樹脂製の溶接棒を用いて接合する。上述のように2つの床シート材3,3の隣接する縁3a,3aはスペーサー部材2上に配置されているので、前記溶接棒41による接合は、スペーサー部材2上で行なわれる。
溶接棒41は、熱可塑性樹脂からなる柔軟な棒状体であり、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂製やEVAなどのポリエチレン樹脂製の細長い棒状体が挙げられる。このような溶接棒41は、例えば180℃~200℃などの高温に加熱することによって軟化し、冷却することによって再び固化する。
前記溶接棒41は、例えば、熱溶接機81に装着して使用される。使用時、溶接棒41の先端部は熱溶接機81の先端ノズル82から引き出され、先端ノズル82を床シート材3の縁3a,3a間に押し込みながら第1方向に先端ノズル82を移動させることにより、隣接する縁3a,3a間を溶接棒41の樹脂を介して接合できる。上述のように、溝部7を形成した場合には、その溝部7に沿って先端ノズル82を移動させることにより、隣接する縁3a,3a間を溶接棒41の樹脂を介して確実に接合できる。その後、自然冷却又は送風などによる強制冷却を行うことによって、溶接棒41の樹脂が固化し、同図(c)に示すように、床シート材3,3の縁3a,3aが溶接棒41の樹脂を介して接合される。
事後、同様にして、全ての床シート材3の縁3a,3a間を溶接棒41にて接合する。
【0076】
溶接棒41にて接合する際、その熱によって床シート材3の縁3aを含む端部3b,3cが反り上がることがある。この点、第1の床シート材3-1の一端部3b及び第2の床シート材3-2の他端部3cが粘着本体層51に接着しているので、接合時に、それらの端部3b,3cが反り上がることを確実に防止でき、溶接棒41の樹脂にて床シート材3の縁3a,3a間を綺麗に接合できる。
【0077】
接合後、余分な樹脂を除去するため、剥離用カッターやスパトラナイフなどの切除具を、床シート材3の表面に当てながら、床シート材3の表面上を擦るように動かすことにより、床シート材3の表面から盛り上がった樹脂を削いでいくことが好ましい。前記盛り上がった樹脂を除去することにより、
図3に示すように、床シート材3の表面と略同一平面上にある平坦な表面を有する接合部4を形成できる。必要に応じて、前記除去の後、平坦状に形成された接合部4の表面に、熱風吹き付けなどの加熱処理を行ってもよい。かかる加熱処理により、接合部4の表面を、艶のある滑らかな平坦状に形成できる。
【0078】
このようにして、
図3に示すように、下地層C上に設けられた複数の床シート材3と、前記床シート材3,3の隣接する縁3a,3aが溶接棒41に起因する樹脂を介して接合された接合部4と、を有する表装層Dを形成できる。床シート材3の表面から接合部4の表面にかけて平坦状である表装層Dは、外観も良好であり、また、接合部4にゴミなどが溜まることを抑制できる。
なお、
図3、
図22乃至
図25においては、粘着本体層51を模式的に強調して表現しているため、スペーサー部材2と衝撃吸収材1の境界付近で、床シート材3に段差が生じているように見えている。ただし、実際には、両面粘着テープ(吸着補助層5)は厚み数μmから200μm程度であるため、図示のような段差は生じず、そのような段差は目視にて確認できないことに留意されたい。
【0079】
本実施形態の施工方法によれば、スペーサー部材2上で床シート材3,3の隣接する縁3a,3aを接合するので、溶接棒41を有する先端ノズル82を押し込んでも床シート材3の縁3a,3aが沈み込み難く、容易に接合できる。特に、スペーサー部材2の表面が平坦状であるので、接触部と非接触部を有する衝撃吸収材1上で接合する場合に比して、溶接棒41を面方向に平行に移動させ易くなる。このように接合が容易であるため、良好な外観を有し且つ十分な強度で接合された接合部4を形成できる。
【0080】
[施工方法の第2実施形態]
第2実施形態では、接合剤としてシーム液を用いた場合を説明する。
下地層の形成から床シート材の敷設までは、上記第1実施形態の<下地層形成工程>及び<<床シート材の敷設>>と同様であるので、それを援用する。
上記<下地層形成工程>及び<<床シート材の敷設>>のようにして、突き合わされた床シート材3,3の縁3a,3aを形成した後、その縁間をシーム液を用いて接合する。
【0081】
<<床シート材の縁の接合>>
次に、突き合わされた床シート材3,3の縁3a,3aにシーム液を注入する。
シーム液を注入する前に、第1の床シート材3-1の一端部3b及び第2の床シート材3-2の他端部3cの表面に跨がって、剥離可能なマスキングテープを貼り付けておくことが好ましい。必要に応じて、継ぎ目に溝部を形成した後に、前記マスキングテープを貼り付けることが好ましい。
例えば、
図26(a)に示すように、第1の床シート材3-1の一方側の上縁角部と第2の床シート材3-2の反対側の上縁角部を、切除具を用いて切除する。このようにして、床シート材3,3の隣接する縁3a,3aの上部に、溝部7が形成される。なお、図示例では、溝部7は、両上縁角部を傾斜状に切り欠くことによって形成された、略V字状であるが、略円弧状、略台形状などであってもよい。
【0082】
さらに、第1の床シート材3-1の一端部3b及び第2の床シート材3-2の他端部3cの表面に跨がってマスキングテープ85を貼り付ける。マスキングテープ85としては、基材の片面に粘着剤が設けられた片面粘着テープを用いることができる。前記基材は、シーム液によって浸食され難いものを用いることが好ましい。前記基材は、透明、半透明又は不透明のいずれでもよい。このような基材としては、布シートと、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンシートとが積層された積層シート;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンシート;セルロース繊維などの紙シートなどが例示される。
【0083】
次に、マスキングテープ85を、継ぎ目に沿って分断する。すなわち、床シート材3,3の縁3a,3a間上において、カッターなどの切断具を第1方向に移動させることにより、マスキングテープ85を2つに分断する。分断したマスキングテープ85の向かい合う端部を溝部7に押し込み、マスキングテープ85の端部を溝部7に付着させる。このようにして、同図(b)に示すように、床シート材3,3の隣接する縁3a,3aによって画成される継ぎ目が開放される。
マスキングテープ85を分断する際及び/又はそれを押し込む際には、床シート材3に押込み力が加わることがあるが、スペーサー部材2上に位置する床シート材3の縁3a,3aは沈み込み難く、前記作業を容易に実施できる。
【0084】
前記隣接する縁3a,3aに、シーム液42を注入する。通常、継ぎ目処理用ノズル部材83にシーム液42を充填し、そのノズル部材83の先端部84からシーム液42を出しながら第1方向に移動させることにより、隣接する縁3a,3a間にシーム液42を注入できる。上記溝部7が形成され且つその溝部7にマスキングテープ85を沿わせて付着させているので、その溝部7を通じて床シート材3,3の隣接する縁3a,3aにシーム液42を容易に注入できる。
シーム液42としては、樹脂成分が有機溶剤に溶解した樹脂溶液型、樹脂成分を含まず、有機溶剤の1種又は2種以上の組み合わせからなる溶剤型、樹脂成分が水系溶媒に分散したエマルション型などの公知のものを用いることができ、例えば、特許第6587897号や特許第6619318号などに記載の継ぎ目処理剤を用いることができる。また、継ぎ目処理用ノズル部材としては、例えば、特許第6587897号などに記載の公知のものを用いることができる。
【0085】
シーム液42の粘度によっては、シーム液42が継ぎ目から床シート材の端部3b,3cの裏面側に回り込むことがある。この点、第1の床シート材3-1の一端部3b及び第2の床シート材3-2の他端部3cの裏面が、スペーサー部材2上の両面粘着テープ(吸着補助層)の粘着本体層51に接着されているので、シーム液42が前記端部3b,3cの裏面側に回り込むことを防止できる。
シーム液42を注入後、マスキングテープ85を剥離し、乾燥などを行なうことにより、床シート材3,3の縁3a,3aが接合される。
接合後、床シート材3の表面にシーム液42などの固化物が盛り上がって残存している場合には、剥離用カッターやスパトラナイフなどの切除具を用いて、それを削いでいくことが好ましい。
このようにして、
図3に示すような、床シート材3,3の隣接する縁3a,3aが接合剤に起因して接合された接合部4を有する表装層Dを構築できる。
【0086】
本実施形態の施工方法によれば、スペーサー部材2上で床シート材3,3の隣接する縁3a,3aを接合するので、シーム液42を用いて床シート材3の縁3a,3aを容易に接合できる。
さらに、面方向において凹凸が連続している衝撃吸収材1の上に床シート材3の縁3a,3aを配置し、そこにシーム液を注入すると、衝撃吸収材1の非接触部に対応する凹にシーム液が流れるおそれがあり、多量のシーム液を消費する。この点、表面が平坦なスペーサー部材2上に床シート材3の縁3a,3aを配置し、そこにシーム液42を注入するので、シーム液が多量に流れ出ることを防止でき、特に、上述のように、スペーサー部材2上に吸着補助層が設けられている場合には、シーム液42が床シート材3の端部3b,3cの裏面側に回り込むことを防止できる。
【0087】
[施工方法の他の実施形態]
上記実施形態では、吸着補助層5として両面粘着テープを用いる場合を例示したが、例えば、吸着補助層5として、片面粘着テープを用いることも可能である。
図27(a)に示すように、片面粘着テープは、シート体53と、前記シート体53の裏面に設けられた粘着剤層54と、を有し、シート体53と粘着剤層54が強固に接着している帯状のテープである。前記シート体53としては、表面が平滑な合成樹脂フィルム、合成紙、紙などが挙げられる。
片面粘着テープの粘着剤層54をスペーサー部材2上に貼り付け、その片面粘着テープのシート体53の表面上に、第1の床シート材3-1の一端部3bと第2の床シート材3-2の他端部3cを載せて重ね合わせる。
スペーサー部材2上に重ねて載せられた第1の床シート材3-1の一端部3bと第2の床シート材3-2の他端部3cの少なくとも一方を、上記実施形態と同様にして、スペーサー部材2上で切断した後、端材を除去することにより、同図(b)に示すように、隣接する床シート材3,3の縁3a,3a同士がスペーサー部材2上で突き合わされた継ぎ目を形成できる。本実施形態では、平滑な表面を有するシート体53の上に床シート材3の吸着部32が付着するので、切断時に床シート材3の端部が面方向にずれ難く、容易に且つ綺麗に切断できる。また、吸着部32はシート体53の表面から容易に引き剥がすことができるので、スペーサー部材2上の床シート材3の端部を容易に引き剥がすことができる。このため、床シート材3を切断後に、床シート材3の端部をスペーサー部材2上(シート体53上)から引き剥がし、床シート材3,3の縁3a,3aを容易に突き合わすことができる。
床シート材3の端部3b,3cの吸着部32がシート体53上に付着しているので、溶接棒41を用いた接合時には、それらの端部3b,3cが反り上がることを防止できる。また、シーム液42を用いた接合時には、シーム液42が床シート材3の端部3b,3cの裏面側に回り込むことを防止できる。特に、吸着部32が第1方向に延びる帯状である場合には、床シート材3の縁3aに最も近接する吸着部32がシーム液42の流れを堰き止めるので、シーム液42を無駄なく接合に使用できる。
なお、上記実施形態の両面粘着テープを使用する場合において、仮付け離型シート52を引き剥がすことなく接合作業を行なってもよく、その場合には本実施形態の片面粘着テープを用いた場合と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0088】
A 衝撃吸収床構造
B 敷設面
C 下地層
D 表装層
1 衝撃吸収材
2 スペーサー部材
3,3-1,3-2 床シート材
3a 床シート材の縁
4 接合部
41 溶接棒
42 シーム液