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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034826
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 1/024 20060101AFI20240306BHJP
   A47C 7/38 20060101ALI20240306BHJP
   A47C 3/026 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
A47C1/024
A47C7/38
A47C3/026
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139337
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】南 星治
(72)【発明者】
【氏名】十文字 みなみ
(72)【発明者】
【氏名】横山 剛士
【テーマコード(参考)】
3B084
3B091
3B099
【Fターム(参考)】
3B084DA01
3B084DB01
3B091AB02
3B099AA02
3B099BA04
3B099CA36
(57)【要約】
【課題】着座者の頭の姿勢を変えることなくリクライニングできてパソコンの視認性に優れた椅子を、デザイン性や機能を確保した状態で実現する。
【解決手段】背もたれ3は、相対回動可能に連結された上部支持体10と下部支持体7とを備えており、下部支持体7は第1傾動フレーム6に固定されて、上部支持体10の下端は第2傾動フレーム14の上端に連結されている。全体として4点リンク機構を構成しているが、第1傾動フレーム6の回動支点31と第2傾動フレーム14の回動支点45とが前後に相違し、背もたれ3の相対回動支点76と下部支持体7の後部回動支点79とが前後にずれていることにより、リクライニングに際して上部支持体10が下部支持体7に対して相対的に前傾する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性に抗して後傾動する背もたれを有し、
前記背もたれは、連結軸を支点にして前後方向に相対回動するように連結された上部支持体及び下部支持体と、
前記上部支持体及び下部支持体の前面に装着された背板と、
前記下部支持体が取り付けられた第1傾動フレームと、
前記上部支持体と下部支持体とが一緒に後傾しつつ前記上部支持体が前記下部支持体に対して相対的に前向き回動するように前記上部支持体に連結された第2傾動フレームと、を備えており、
前記第2傾動フレームは前記下部支持体の下部に連結されている、
椅子。
【請求項2】
前記上下の支持体は前後に開口した枠状に形成されて、前記背板は、撓み変形可能な素材からなっており、上部支持体に重なった部分と下部支持体に重なった部分とが一連に連続している、
請求項1に記載した椅子。
【請求項3】
前記両傾動フレームは、脚装置の状態に設けたベースに連結されて後傾動するようになっており、
前記第1傾動フレームの回動支点は前記第2傾動フレームの回動支点よりも後ろに位置して、前記第2傾動フレームと下部支持体との連結点は前記上下支持体の連結点よりも後ろに位置している、
請求項1又は2に記載した椅子。
【請求項4】
前記下部支持体の下端には後ろ向き張り出し部を設けており、前記後ろ向き張り出し部 と前記第2傾動フレームの上端とが相対回動可能に連結されている、
請求項3に記載した椅子。
【請求項5】
前記下部支持体は、上下長手の左右のサイドメンバーと、前記サイドメンバーの上端間に繋がったアッパーメンバーと、前記サイドメンバーの始端間に繋がったロアメンバーとを有しており、前記ロアメンバーを後ろ向きに押し曲げられた形態と成すことによって前記後ろ向き張り出し部を形成している、
請求項4に記載した椅子。
【請求項6】
前記第1傾動フレームは、前記下部支持体の左右側端に一体に設けられており、前記第2傾動フレームは、正面視において左右の第1傾動フレームの間に配置されている、
請求項1又は2に記載した椅子。
【請求項7】
前記第2傾動フレームの回動を規制するリクライニング制御装置を備えている、
請求項6に記載した椅子。
【請求項8】
着座した人の頭又は首を支持できるアッパーレストが、少なくとも下部が前記背もたれの上端部の手前に位置するようにして配置されている、
請求項1に記載した椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、リクライニング機能(ロッキング機能)を有する椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
背もたれが弾性手段に抗して後傾するリクライニング式椅子は、執務用(オフィス用)として広く使用されている。そして、このリクライニング式椅子において、使用者が身体を後傾させたリラックス姿勢を取りつつ、机上に置いたパソコンのモニター(ディスプレイ)を疲れることなく視認したいという要請がある。
【0003】
この要請に対しては、リクライニング状態において使用者の頭を前向き姿勢に保持したらよいと云える。すなわち、単に背もたれが後傾するだけであると、使用者の顔は上向きに姿勢が変化するため、視線がパソコンのモニターから外れてしまうことになり、頭を起こして顔をパソコンに向けると首や肩に負担が掛かるが、リクライニング状態で使用者の頭が前向き状態に支持されるように設定すると、リクライニング状態で疲れることなくパソコンのモニターを視認できる。
【0004】
この要請に応えるための技術として、特許文献1には、背もたれを使用者の頭も支持されるハイバック仕様としつつ、使用者の頭が支持され上部とそれより下方の基部とが側面視で屈曲するように構成し、背もたれの上部に連結した傾動フレームと基部が固定された傾動フレームとの回動支点を前後方向にずらすことにより、背もたれが全体としてリクライニングしつつ、背もたれの上部が基部に対して相対体に前傾する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4015236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、リクライニングに際して頭を前向き姿勢に保持できるため、机上に載置したパソコンのモニターを長時間にわたって見続ける上で有益であるが、背もたれの上部と基部とは軸で連結されているため、動きは正確で身体の支持機能にも優れていると云えるが、背もたれの上部に連結された傾動フレームが座の左右両側において傾斜姿勢で配置されているため、人に違和感を与えることが懸念される。
【0007】
本願発明はこのような現状を背景になされたものであり、美感や動きの正確性を確保しつつ、リクライニング状態でのパソコンの視認性に優れた椅子を開示せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は様々な構成を含んでおり、その典型例を各請求項で特定している。このうち請求項1の発明は、
「弾性に抗して後傾動する背もたれを有し、
前記背もたれは、連結軸を支点にして前後方向に相対回動するように連結された上部支持体及び下部支持体と、
前記上部支持体及び下部支持体の前面に装着された背板と、
前記下部支持体が取り付けられた第1傾動フレームと、
前記上部支持体と下部支持体とが一緒に後傾しつつ前記上部支持体が前記下部支持体に対して相対的に前向き回動するように前記上部支持体に連結された第2傾動フレームと、を備えており、
前記第2傾動フレームは前記下部支持体の下部に連結されている」
という構成になっている。
【0009】
本願発明において、背もたれを構成する上部支持体及び下部支持体は強度メンバーを構成するものであり、前後に開口したフレーム構造品も板状のシェル構造品も採用できる。
【0010】
請求項2の発明は請求項1の展開例であり、
「前記上下の支持体は前後に開口した枠状に形成されて、前記背板は、撓み変形可能な素材からなっており、上部支持体に重なった部分と下部支持体に重なった部分とが一連に連続している」
という構成になっている。
【0011】
請求項3の発明は請求項1又は2を具体化したもので、
「前記両傾動フレームは、脚装置の状態に設けたベースに連結されて後傾動するようになっており、
前記第1傾動フレームの回動支点は前記第2傾動フレームの回動支点よりも後ろに位置して、前記第2傾動フレームと下部支持体との連結点は前記上下支持体の連結点よりも後ろに位置している」
という構成になっている。
【0012】
請求項4の発明は請求項3を具体化したもので、
「前記下部支持体の下端には後ろ向き張り出し部を設けており、前記後ろ向き張り出し部 と前記第2傾動フレームの上端とが相対回動可能に連結されている」
という構成になっている。
【0013】
請求項5の発明は請求項4を具体化したもので、
「前記下部支持体は、上下長手の左右のサイドメンバーと、前記サイドメンバーの上端間に繋がったアッパーメンバーと、前記サイドメンバーの始端間に繋がったロアメンバーとを有しており、前記ロアメンバーを後ろ向きに押し曲げられた形態と成すことによって前記後ろ向き張り出し部を形成している」
という構成になっている。
【0014】
請求項6の発明は請求項1~3のうちのいずれかの具体例であり、
「前記第1傾動フレームは、前記下部支持体の左右側端に一体に設けられており、前記第2傾動フレームは、正面視において左右の第1傾動フレームの間に配置されている」
という構成になっている。
【0015】
請求項7の発明は請求項6の具体例であり、
「前記第2傾動フレームの回動を規制するリクライニング制御装置を備えている」
という構成になっている。
【0016】
請求項8の発明は請求項1を具体化したもので、
「前記背もたれはハイバック仕様であり、着座した人の頭又は首を支持できるアッパーレストが、少なくとも下部が前記背もたれの上端部の手前に位置するようにして配置されている」
という構成になっている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明では、リクライニングに際して上部支持体が下部支持体に対して相対的に前向き回動するため、机上に置いたパソコンのモニターに視線を向けた状態に頭の姿勢を保持しつつリクライニングできるため、首や肩に対する負担を抑制した状態で安楽姿勢を採りつつパソコン作業を行える。従って、オフィス用椅子として好適である。また、第2傾動フレームは上部支持体よりも下方に配置されるため、椅子全体としてコンパクトになって見栄えがよい。
【0018】
請求項2のように背板を上下に連続した1枚のみに構成すると、背板は1枚物であるため見た目がよい。また、背板は全体として撓み変形するため、身体との密着性を高めて身体への当たりをソフト化できる。また、上下の支持体は前後に開口した枠状になっているため、背板のベンディング機能を高めてフィット性・クッション性を向上できる。
【0019】
請求項3は4点リンク機構を構成しており、正確かつスムースな動きを実現できる。この点、請求項4の構成を採用すると、上部支持体を有効利用して4点リンク機構を構成できるため、違和感のないデザインとしつつ正確な動きを実現できる。
【0020】
また、請求項5の発明では、上部支持体はループ構造になっているため上部支持体の強度低下を防止できる。また、上部支持体のロアメンバーは人の背に当たらないため、クッション性・フィット性に優れている。
【0021】
請求項6の構成では、後ろにはみ出た第2傾動フレームは左右中間部に寄っているため、コンパクトになって商品性が高い。請求項7の構成では、リンク機構を構成する第2傾動フレームをリクライニング制御手段に兼用できるため、それだけ部材点数を軽減してコストを抑制できる利点がある。
【0022】
請求項8のようにアッパーレストを設けると、リクライニング状態で頭を起きた状態に支持できるため、リラックス姿勢を採りながら机上のパソコン操作を行うにおいて、首や肩の負担を軽減して疲労を軽減することを確実化できる。この場合、背もたれをハイバック仕様としつつ、アッパーレストが背もたれの手前に配置されているため、アッパーレストが背もたれと一体化したかのようなスッキリとした外観を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態の外観を示す図で、(A)は手前上方から見た斜視図、(B)は正面図、(C)は後ろ前上方から見た斜視図である。
図2】(A)は後ろ下方から見た斜視図、(B)は側面図である。
図3】(A)は背面図、(B)は下方から見た斜視図である。
図4】座部を分離した斜視図である。
図5】背部の分離斜視図である。
図6】下部支持体の連結構造を示す図で、(A)は分離斜視図、(B)は分離側面図である。
図7】下部支持体の連結手段を示す図で、(A)は分離斜視図、(B)は下方から見た斜視図である。
図8】傾動制御用ガスシリンダの取り付け構造を示す図で、(A)は後ろ上方から見た分離斜視図、(B)は後ろ下方から見た分離斜視図である。
図9】(A)は傾動フレームと上部支持体との分離図、(B)は第2傾動フレームの上部の分離斜視図、(C)は第2傾動フレームの平面図である。
図10】動きを示すための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下では方向を特定するために前後・左右の文言を使用するが、この方向は、椅子に普通に腰掛けた人から見た方向として定義している。正面図は着座者と対向した方向から見た図である。
【0025】
(1).全体の概要
まず、椅子の概要を説明する。本実施形態は、オフィス用の回転椅子に適用している。椅子は、基本要素として脚装置1と座2と背もたれ3とを備えている。脚装置1は、5本の脚羽根を有する基部の中央にガスシリンダより成る脚支柱4を立設した構造であり、各脚羽根の先端にはキャスタを設けている。
【0026】
図2に示すように、脚支柱4の上端にベース5が固定されており、ベース5に、左右の第1傾動フレーム6の下部先端が連結されている。図2(A)や図3に示すように、第1傾動フレーム6は、ベース5から後ろに延びて立ち上がっているが、左右外側に広がりながら立ち上がっており、左右外側に大きく広がっている部分は下部支持体7を構成している。すなわち、第1傾動フレーム6と下部支持体7とは部材を部分的に共有しており、第1傾動フレーム6の上部は下部支持体7のサイドメンバー8になっている。
【0027】
下部支持体7の下端は、左右長手のロアメンバー9で構成されている。すなわち、左右の第1傾動フレーム6の立ち上がり部をロアメンバー9で連結することによって下部支持体7が構成されている。
【0028】
下部支持体7の上端には上部支持体10の下端が連結されている。上部支持体10は、左右のサイドメンバー11とその上端に繋がったアッパーメンバー12と、左右のサイドメンバー11の下端に繋がったロアメンバー13とを有してループ構造になっている。従って、本実施形態では、上下の支持体7,10は前後に開口した枠体(フレーム体)の形態になっている。
【0029】
上部支持体10の左右サイドメンバー11の下端は、下部支持体7のサイドメンバー8の上端に後傾動可能に連結されている。他方、上部支持体10のロアメンバー13は後ろ向きに張り出しており、後ろ向きに張り出したロアメンバー13に第2傾動フレーム14の上端が後傾動可能に連結されている。第2傾動フレーム14の下端は、ベース5の後部に連結されている。
【0030】
背もたれ3は、エラストマのような柔軟な樹脂素材より成る背板15と、背板15の前面に張られた張地(表皮材)16も備えている。背板15は柔軟な樹脂素材で作られているため、着座した人の身体のフィット性に優れている。また、リクライニングに際して、上部支持体10と下部支持体7とが相対的に回動するが、背板15が弾性変形することによって両支持体10,7の相対回動が許容されている。
【0031】
背もたれ3の上端には、着座者の頭や首を支持するアッパーレスト17が高さ調節可能に取り付けられている。アッパーレスト17は、上部支持体10のアッパーメンバー12にブラケット装置(図示せず)を介して取り付けられている。背もたれ3のリクライニングに際して、上部支持体10は下部支持体7に対して相対的に前向き回動するが、着座者の頭がアッパーレスト17で支持されているため、机上のパソコンのモニターに対する視線を変えることなくリクライニングできる。
【0032】
傾動フレーム6,14及び上部支持体10は、アルミ等の軽金属のダイキャスト品を採用したり、エンジニアリングプラスチックの成型品を使用したりすることができる。第1傾動フレーム6(及び下部支持体7)と第2傾動フレーム14とはアルミ製として、上部支持体10は合成樹脂製とする、といったことも可能である。
【0033】
図2(A)や図3に示すように、下部支持体7を構成するロアメンバー9の左右中間部に上向きのランバー支柱18を一体に形成しており、ランバー支柱18に、背板15に後ろから当たるランバーパッド19が高さ調節自在に装着されている。ランバーパッド19により、着座者の腰部(特に第3腰椎のあたり)が後ろから支えられる。
【0034】
(2).座部・第1傾動フレーム
以下、各部位の詳細を図4以下の図面も参照して説明する。図4に示すように、座2は、樹脂製の座インナーシェル(座板)20とその上面に重なったクッション材21とを備えており、クッション材21は張地22で覆われている。
【0035】
図4に示すように、座2は、その下に配置された樹脂製の座受け板(座アウターシェル)23に固定されており、座受け板23は、その下方に配置された中間部材24に前後動可能で離脱不能に支持されている。中間部材24は、その背雄側部を構成する前後長手の側枠部(土手部)24aを備えており、側枠部24aの前部に、座2の前後移動操作を行うハンドル(ノブ)25を装着している。なお、座2の前後移動調節は、人が着座者した状態のままで行える。
【0036】
図4に示すように、ベース5の前端には、座2の左右幅に近い左右長手のフロント部材26が左右長手の軸心回りに回動するように連結されており、フロント部材26の左右両端に角状のフロント突起27が上向きに突設されている一方、第1傾動フレーム6のうち座2の後部下方に位置した部位には外向き張り出し部6a(例えば図7(B)参照)を設け、外向き張り出し部6aの先端に上向きのリア突起28が形成されている。
【0037】
そして、これら前後の突起27,28に中間部材24の側枠部24aが左右長手のピン(図示せず)で連結されている。従って、第1傾動フレーム6が後傾すると、座2は後退しながら後傾動するが、後傾の程度は第1傾動フレーム6よりも小さい。図6(A)や図8(B)に示すように、ベース5の下面には下カバー5bが装着される。
【0038】
図4に示すように、中間部材24には、上下に開口した大きな逃がし穴29が形成されている。また、座受け板23にも、上下に開口した逃がし穴29が形成されている。なお、座2の前後移動操作を行うハンドル25の後ろには、座2の高さ調節のための昇降操作レバー30が配置されている。
【0039】
図6に示すように、第1傾動フレーム6の前端間には角形(六角)の第1支軸31が装架されている。第1支軸31は第1傾動フレーム6に対して相対回転不能に保持されており、ベース5の側板5aに設けた軸受け穴32に、ブッシュ33を介して回転自在に保持されている。また、第1支軸31の左右中間部には、下向きに延びる荷重受けアーム34が相対回転不能に取り付けられている。荷重受けアーム34は、下に行くに従って前にずれるように、側面視で後傾姿勢になっている。
【0040】
荷重受けアーム34はベース5の内部に配置されているが、ベース5の内部には、後端を荷重受けアーム34の前面に当接させたばねユニット35が配置されている。ばねユニット35の前端部は左右長手の軸36によってベース5に連結されており、ばねユニット35が回動して荷重受けアーム34に対する荷重作用点が上下方向に変化することにより、背もたれ3の後傾動に対する抵抗の強さが変化する。
【0041】
ばねユニット35の角度調節は、図7(A)及び図6(B)に示すカム(周面カム)37の回転によって行われる。カム37は、ベース5の上面のうちばねユニット35よりも後ろの位置に水平回転自在に装着されている一方、ばねユニット35の上面には、スライダ38が前後動自在で上向き離脱不能に装着されており、スライダ38に左右長手のピン39によって連結された中継部材40の後端に、カム37が後ろから当接している。
【0042】
中継部材40は、ベース5に上下動不能で前後動自在に装着されており、カム37が回転すると中継部材40が前後動してばねユニット35の傾斜姿勢が変化し、背もたれ3の後傾動に対する抵抗の強さが変化する。図6(A)、図7(A)に示すとおり、スライダ38は、ばね41によって後退方向に付勢されている。カム37の回転は、図2(A)に示す弾力調節ハンドル42の回転操作によって行われる。弾力調節ハンドル42の回転トルクは、図示しないワイヤー(チューブに挿通されたワイヤー)によってカムに伝達される。
【0043】
(3).第2傾動フレーム
図7に明示するように、第2傾動フレーム14の下部は二股状に形成されており、その先端に左右長手の第2支軸45が固定されている。第2支軸45は、2つ割り方式の上下の軸受け46,47によって抱持されており、上下の軸受け46,47は、ベース5の後部に形成された上向き開口溝48に上から嵌め込まれており、ベース5にビスで固定された蓋板49によって離反不能に保持されている。従って、第2傾動フレーム14は、第2支軸45を支点にして回動(傾動)する。
【0044】
背もたれ3の傾動制御は、図7,8に示す背用ガスシリンダ50によって行われる。すなわち、背もたれ3が自由にリクライニングする状態と、任意の姿勢で保持された状態との切り換えが、背用ガスシンリダ50によって行われる。
【0045】
図8(B)に明示するように、背用ガスシンリダ50を構成するピストンロッドの先端には、左右の側板を有するブラケット51が固定されている一方、ベース5の後端の左右中間部には、背用ガスシンリダ50のブラケット51で挟まれる軸受けリブ52が一体に形成されており、軸受けリブ52とブラケット51とは左右長手の支軸53によって連結されている。他方、背用ガスシンリダ50の上部後端は、第2傾動フレーム14の二股基部に設けた軸受けボス54に左右長手のピン55によって連結されている。
【0046】
背用ガスシンリダ50の下端部には、ケース56が装着されており、このケース56に背用ガスシンリダ50のブッシュバルブを押し操作するテコ部材(図示せず)が装着されており、テコ部材は、チューブ内に挿通された傾動操作用ワイヤの引き操作によって回動する。傾動操作用ワイヤの引き操作は、図2(A)(B)に示す傾動制御レバー57によって行われる。傾動制御レバー57は、中間部材24における右側の側枠部24aのうち、弾力調節ハンドル42の後ろに装着されている。
【0047】
(4).背もたれの構造
図5から理解できるように、上部支持体10を構成するサイドメンバー11とアッパーメンバー12とは、前向きに開口した溝を有するチャンネル状の形態になっている。下部支持体7のサイドメンバー8とロアメンバー9も同様であり、前向き開口のチャンネル状に形成されている。
【0048】
他方、背板15の上半部の外周部の後面に、上部支持体10の溝内に嵌入する下向き開口コ字形の上補強体60がインサート成型によって一体に固定され、他方、背板15の下半部の外周部の後面に、下部支持体7の溝内に嵌入する下向き開口コ字形の下補強体61がインサート成型によって一体に固定されている。上下の補強体60,61はポリプロピレン等の合成樹脂を材料にした成型品であり、上下補強体60,61の間には若干の間隔が空いている。従って、上部支持体10と下部支持体7との相対回動が許容されている。
【0049】
図示は省略しているが、背板15は、当該背板15と補強体60,61とに手前から挿通されたビスによって上部支持体10及び下部支持体7に固定されている。図5に符号62で表示しているのは、ビスがねじ込まれるボスである。
【0050】
背もたれ3は張地16を備えているが、張地16の外周部が、合成樹脂より成る上部縁部材63と中間部縁部材64と下部縁部材65とに縫着に固定されている。上部縁部材63は正面視で下向き開口コ字形に形成されて、左右の中間部縁部材64は板状に形成されて、下部縁部材65は正面視で上向き開口コ字形に形成されている。
【0051】
図示していないが、縁部材63,64,65には後ろ向きに突出した係合爪が形成されている一方、背板15と補強体60,61には、係合爪が係脱する係合穴66を形成している。また、図5から理解できるように、背板15の外周には前向きに突出したリブ67が形成されている。従って、背板15の外周より部位の前面は、リブ67よりも低くなった段差面68になっている。そして、段差面68に縁部材63,64,65が重なっており、張地16はリブ67の手前にはみ出ないように設定されている。
【0052】
図5に示すように、上部縁部材63の上端左右中間部には左右長手で角形の切欠き69が形成されて、背板15の上端左右中間部と上補強体60の上端左右中間部とには、左右長手で角形の逃がし穴70が形成されている。これら切欠き69と逃がし穴70は、アッパーレスト17を取り付けるブラケット(図示せず)を逃がすためのものである。
【0053】
図1に示すように、アッパーレスト17は、エラストマより成る基板71と、基板71の後ろに配置された前後開口のメインフレーム72と、基板71の前面に重ね配置された張地73とを備えており、張地73の外周部はループ形状の縁部材74に縫着等によって固定されている。基板71は、メインフレーム72に対してインサート成型によって固定されている。また、縁部材74は図示しない多数の後ろ向きボス軸を備えており、メインフレーム72には、ボス軸が嵌着するボス筒の群を設けている。
【0054】
なお、アッパーレスト17のデザインは様々に展開できる。例えば、メッシュ仕様のものを採用したり、シェル体に座クッション材が張られた仕様を採用したりすることができる。実施形態のように軟質の基板71を使用する場合、表面は、格子模様や水玉模様、亀甲模様などの様々な模様(パターン)に具体化できる。模様がない無地の構造も採用できる。張地73はなくてもよい。
【0055】
(4).上下枠体の連結構造
図9(A)に示すように、上部支持体10を構成する左右サイドメンバー8の上端に板状の雄形軸受け75aを一体に形成している一方、上部支持体10におけるサイドメンバー11の下端には、雄形軸受け75aが下方から入り込む雌型軸受け部75bが一体に形成されており、上下の軸受け部75a,75bが左右長手の第1ピン76によって連結されている。第1ピン76は、図示しないビスによって上部支持体10に固定されている。
【0056】
図9(B)に示すように、第2傾動フレーム14は前向きに開口した樋状の形態を成しており、その上端に前向きの軸受けボス体77を一体に形成している一方、上部支持体10のロアメンバー13には、軸受けボス体77を左右から挟む軸受けリブ78を下向きに突設し、これら軸受けボス体77と左右の軸受けリブ78とを左右長手の第2ピン79で連結している。
【0057】
第2傾動フレーム14の上端には、連結部囲うカバー(蓋)80が装着されている。 カバー80は、軸受けボス体77及び軸受けリブ78を前から覆う前板81と、軸受けリブ78を左右外側から囲う左右側板82とを有しており、前板81は下向きに大きく切り開かれている。第2傾動フレーム14の内部のうち軸受けボス体77の左右両側には、側面視台形で左右一対ずつの規制板77aを前向きに突設しており、前板81の左右両側部が規制板77aで位置決めされている。
【0058】
カバー80の側板82には、第2ピン79の端部が嵌合する上下一対のガイドリブ83を設けている。また、カバー80における前板81の左右側部を切欠くことにより、上向き係合爪84を形成しており、上向き係合爪84が軸受けリブ78に下方から係合することにより、カバー80は軽い力では抜けない状態に保持されている。
【0059】
(5).まとめ
以上の構成において、図10に示すように、第1傾動フレーム6及び下部支持体7は第1支軸31を支点にして後傾動し、第2傾動フレーム14は第2支軸45を支点にして後傾動し、上部支持体10と下部支持体7との前部は第1ピン76を支点にして側面視で相対回動し、上部支持体10と第2傾動フレーム14とは第2ピン79を支点にして相対回動する(なお、図10では傾動フレーム6,14の連結部の位置を明確化するため、2本の第1傾動フレーム6のうち片方を手前にずらして表示している。)。
【0060】
そして、第1支軸31と第2支軸45とが前後にずれていることと、第2ピン79が第1ピン76の下方でかつ後ろに位置しているため、第1支軸31と第1ピン76とを結ぶ線分に対して上部支持体10が成す角度θ1は、リクライニング角度θ1の増大に比例して小さくなる。従って、背もたれ3は全体として後傾しつつ、上部支持体10が下部支持体7に対して相対的に起きる。
【0061】
その結果、リクライニングに際して頭の側面視姿勢が変わることを防止又は抑制して、机上のパソコンのモニターと正対することができる。実施形態のようにアッパーレスト17を使用すると、頭(或いは首)を安定的に支持できるため、首や肩の負担軽減に貢献できる。
【0062】
すなわち、着座者は頭をアッパーレスト17に当てた状態でパソコンのモニターを適正な角度で視認できるため、首や肩に負担が掛かることを抑制して、安楽状態を維持しつつパソコンによる執務を行える。実施形態のように、アッパーレスト17の高さを調節できると、頭を最適姿勢に保持できるため、特に好適である。
【0063】
本願実施形態では、第1傾動フレーム6と下部支持体7とが一体化しているため、部材点数を抑制できると共に、動きを確実化できる利点がある。また、下部支持体7のロアメンバー13は後ろ向きの張り出し部になっているため、ループ構造の上部支持体10を利用して4点リンク機構を無理なく実現できる。従って、高い強度を確保しつつ、品質も安定化できる。後ろ向きの張り出し部であるロアメンバー13は人が掴むことができるため、椅子を移動させることも容易に行える。すなわち、ロアメンバー13を引手として使用できる。
【0064】
第2傾動フレーム14は下部支持体7の後ろに少しはみ出ているが、第2傾動フレーム14は左右中間部に1本のみ配置しているに過ぎないため、椅子の近くを歩行する人の邪魔になることはない。すなわち、歩行者や荷物が第2傾動フレーム14に引っ掛かることを防止できる。
【0065】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。例えば、必ずしも座を背もたれの後傾動に連動させる必要はない。背もたれは、樹脂製のインナーシェルにクッション材を重ね配置した構造も採用できる。
【0066】
背板の曲がり変形を容易化するために、背板を部分的に薄くしてヒンジ部を形成することも可能である。背フレームにメッシュ材を張った構造も採用可能である。第1傾動フレームや第2傾動フレーム、背もたれを構成する枠体は、その機能を発揮する限り様々に具体化できる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本願発明は、椅子に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0068】
1 脚装置
2 座
3 背もたれ
5 ベース
6 第1傾動フレーム
7 下部支持体
8 下部支持体のサイドメンバー
10 上部支持体
11 上部支持体のサイドメンバー
13 上部支持体の張り出し部であるロアメンバー
14 第2傾動フレーム
15 背板
16 張地(表皮材)
17 アッパーレスト(ヘッドレスト)
31 第1支軸
45 第2支軸
76 第1ピン
79 第2ピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10